説明

画像処理装置およびプログラム

【課題】画素のエッジ状態に適した階調値変換処理をよりスムーズに行なう。
【解決手段】規則性のないランダムな閾値が配置されたブルーノイズマスクBLと所定間
隔毎の差分が所定の階調値となるよう規則性をもった閾値が配置されたベイヤー型マスク
BYとを記憶手段に記憶しておき、入力された画像データの画素のうち非エッジ画素につ
いてはブルーノイズマスクBLの閾値を用い、エッジ画素についてはベイヤー型マスクB
Yの閾値を用いて2値化する。これにより、エッジ部分以外の部分においては2値化に起
因した模様が現れるのを防止することができると共にエッジ部分においては2値化結果の
離散度合いに偏りが生じるのを防止することができる。また、いずれのマスクの閾値を用
いるかを切り替えるものであり、2値化の手法自体が異なるものではなく、各マスクはい
ずれも記憶手段に記憶されているから、スムーズに2値化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多階調の画像データを入力して2値化処理する画像処理装置およびプログラ
ムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の画像処理装置としては、多階調の画像データを入力して所定の階調
値に変換処理するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、入
力された画像データを構成する各画素がエッジ領域に属するか非エッジ領域に属するかを
判定し、エッジ領域に対しては誤差拡散法を適用し非エッジ領域に対してはブルーノイズ
マスク法を適用して階調値を変換することにより、文字周辺のエッジ領域においてドット
が不自然に飛び散ったような変換結果となるのを防止して各領域に適した変換処理を実現
できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−227759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、誤差拡散法では階調値変換する際に生じる誤差を周囲の画素に分散させて反映
させる必要があるため、閾値と処理対象画素の階調値とを単に比較して階調値を変換する
ブルーノイズマスク法に比して処理時間が掛かるものとなる。このため、画像に含まれる
エッジ領域の程度によっては、誤差拡散法を用いる領域が増えて階調値の変換処理に要す
る時間が長くなってしまう。また、誤差拡散法とブルーノイズマスク法のように処理方法
の異なる2つの処理を切り替えるものとすることにより、装置の構成が複雑なものとなる
ことがある。
【0005】
本発明の画像処理装置およびプログラムは、画素のエッジ状態に適した階調値の変換処
理をよりスムーズに行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置およびプログラムは、上述の主目的を達成するために以下の手段
を採った。
【0007】
本発明の画像処理装置は、
多階調の画像データを入力して2値化処理する画像処理装置であって、
規則性のないランダムな閾値がマトリックス状に配置された第1のマスクと、所定間隔
毎の差分が所定の階調値となるよう規則性をもった閾値がマトリックス状に配置された第
2のマスクとを記憶する記憶手段と、
前記入力された画像データの各画素がエッジ部分に相当するエッジ画素であるか否かを
判定するエッジ画素判定手段と、
前記エッジ画素と判定されない画素については前記第1のマスクの閾値を用いて2値化
し、前記エッジ画素と判定された画素については前記第2のマスクの閾値を用いて2値化
する2値化手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像処理装置では、規則性のないランダムな閾値がマトリックス状に配置
された第1のマスクと、所定間隔毎の差分が所定の階調値となるよう規則性をもった閾値
がマトリックス状に配置された第2のマスクとを記憶しておき、入力された画像データの
画素のうちエッジ画素と判定されない画素については第1のマスクの閾値を用いて2値化
し、エッジ画素と判定された画素については第2のマスクの閾値を用いて2値化する。こ
れにより、エッジ部分以外の部分においては2値化結果に規則性が現れることがなく2値
化に起因した模様が現れるのを防止することができると共にエッジ部分においては2値化
結果に所定間隔毎の規則性が現れるからその離散度合いに偏りが生じるのを防止すること
ができる。また、第1のマスクと第2のマスクとはいずれも記憶手段に記憶されており、
閾値と単純に比較する2値化手法であるから、誤差拡散法などと併用する場合に比して、
スムーズに2値化することができる。この結果、画素のエッジ状態に適した階調値変換処
理をよりスムーズに行なうことができる。
【0009】
こうした本発明の画像処理装置において、前記第1のマスクは、前記第2のマスクより
もマトリックスのサイズが大きなマスクであり、前記2値化手段は、前記入力された画像
データが前記第1または前記第2のマスクよりもマトリックスのサイズが大きい場合には
、該第1または該第2のマスクを繰り返し用いて2値化する手段であるものとすることが
できる。こうすれば、エッジ部分以外の部分においてマトリックスサイズに基づくブロッ
ク状のパターンが現れるのを抑えることができる。また、この態様の本発明の画像処理装
置において、前記第2のマスクは、前記多階調の各階調値が1度ずつ配置されてなるマス
クであり、前記第1のマスクは、前記第2のマスクの整数倍のサイズのマトリックスに前
記多階調の各階調値が前記整数倍の数ずつ配置されてなるマスクであるものとすることも
できる。ここで、第1のマスクは、ブルーノイズマスクであり、第2のマスクは、ベイヤ
ー型のディザマスクであるものとすることもできる。
【0010】
また、媒体に形成された画像を読み取る画像読取装置を介して前記画像データを入力す
る本発明の画像処理装置において、前記エッジ画素判定手段は、前記エッジ画素であるか
否かの判定対象となる画素に隣接する所定数の画素間の階調値変化に基づいて前記判定を
行なう手段であるものとすることもできる。ここで、このような画像読取装置を介して入
力された画像データにおいては、装置の読取特性によってはエッジ部分の画素における階
調値の変化が本来の急峻な変化よりも緩やかな変化となることがある。そのような緩やか
に変化する部分のエッジ画素に対して第1のマスクの閾値を用いると2値化結果が不自然
に離散したり集合したりしたものとなるが、第2のマスクの閾値を用いることによりその
ような傾向が現れるのを防止することができるから、本発明を適用する意義が高いものと
なる。この態様の本発明の画像処理装置において、前記エッジ画素判定手段は、前記エッ
ジ画素であるか否かの判定対象となる画素の階調値が黒またはグレーを示す場合に前記判
定を行なう手段であるものとすることもできる。黒やグレーなどのエッジ部分は他の色に
比べて濃淡がはっきりとしたものとなり人目につきやすい部分となるから、本発明を適用
する意義がより高いものとなる。
【0011】
本発明のプログラムは、コンピューターを上述したいずれかの本発明の画像処理装置と
して機能させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な
記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていて
もよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータ
ーから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよ
い。このプログラムをコンピューターに実行させれば、上述した画像処理装置と同様の効
果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マルチファンクションプリンター10の構成の概略を示す構成図。
【図2】コピーモード時処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図3】エッジ判定処理の一例を示すフローチャート。
【図4】x方向の階調値Dの変化の一例を示す説明図。
【図5】2値化処理の一例を示すフローチャート。
【図6】ブルーノイズマスクBLの一例を示す説明図。
【図7】ベイヤー型マスクBYの一例を示す説明図。
【図8】画像データが2値化される様子を示す説明図。
【図9】マスクの違いによる2値化結果の違いの様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の画像処理装置の
一実施形態であるマルチファンクションプリンター10の構成の概略を示す構成図である
。本実施形態のマルチファンクションプリンター10は、図示するように、画像データに
基づいて用紙Sに印刷を実行するプリンターユニット20と、ガラス台36に載置された
原稿を読み取るスキャナーユニット30と、メモリーカードスロット40に挿入されたメ
モリーカード42との間でデータを格納したファイルの入出力を行なうメモリーカードコ
ントローラー44と、各種情報を表示部52に表示したりユーザーの指示をボタン群54
の操作を介して入力したりする操作パネル50と、装置全体の制御を司るメインコントロ
ーラー60とを備える。このマルチファンクションプリンター10では、プリンターユニ
ット20やスキャナーユニット30,メモリーカードコントローラー44,メインコント
ローラー60がバス12を介して互いに各種制御信号やデータのやり取りをすることがで
きるよう構成されている。
【0014】
プリンターユニット20は、プリンターASIC22とプリンター機構24とを備える
。プリンターASIC22は、プリンター機構24を制御する集積回路であり、メインコ
ントローラー60から印刷指令を受けると、その印刷指令の対象となる画像データに基づ
いて用紙Sに画像を印刷するようプリンター機構24を制御する。また、プリンター機構
24は、印刷ヘッドから用紙SへC(シアン),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラ
ック(B)の各色のインクを吐出することにより印刷を行なう周知のインクジェット方式
のカラープリンター機構として構成されている。
【0015】
スキャナーユニット30は、スキャナーASIC32とスキャナー機構34とを備える
。スキャナーASIC32は、スキャナー機構34を制御する集積回路であり、メインコ
ントローラー60からの読取指令を受けると、ガラス台36に載置された原稿を画像デー
タとして読み取るようスキャナー機構34を制御する。また、スキャナー機構34は、周
知のイメージスキャナーとして構成され、原稿に向かって発光した後の反射光をレッド(
R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色に分解して画像データとする周知のカラーイ
メージセンサーを備えている。なお、画像データ(RGBデータ)は、縦横のマトリック
ス状に画素が配置され、配置される画素の各値は濃淡に応じて値0〜255の256階調
(8ビット)で表されるものとする。
【0016】
メモリーカードコントローラー44は、メモリーカードスロット40に挿入されたメモ
リーカード42との間でデータを格納したファイルの入出力を行なうものである。このメ
モリーカードコントローラー44は、メモリーカードスロット40にメモリーカード42
が接続されているとき、メモリーカード42に記憶されているファイルを読み出してメイ
ンコントローラー60に送信したりメインコントローラー60からの命令を入力しその命
令に基づいてメモリーカード42にファイルを記憶したりする。
【0017】
メインコントローラー60は、CPU62を中心とするマイクロプロセッサーとして構
成されており、各種処理プログラムや各種データ、各種テーブルなどを記憶したROM6
4と、一時的にスキャンデータや印刷データなどを記憶するRAM66と、電源を切って
もデータを保持可能なフラッシュメモリー68と、操作パネル50との通信を可能とする
内部通信インターフェース(I/F)69とを備える。なお、ROM64には、ディザ法
による2値化処理で用いられるブルーノイズマスクBLとベイヤー型マスクBYとが記憶
されており、これらの詳細については後述する。このメインコントローラー60は、プリ
ンターユニット20やスキャナーユニット30,メモリーカードコントローラー44から
の各種動作信号や各種検出信号を入力したり、操作パネル50のボタン群54の操作に応
じて発生する操作信号を入力したりする。また、メモリーカード42からファイルを読み
出してメインコントローラー60へ出力する読出指令をメモリーカードコントローラー4
4に出力したり、画像データの印刷を実行するようプリンターユニット20に印刷指令を
出力したり、操作パネル50のボタン群54のスキャン指示に基づいてガラス台36に載
置された原稿を画像データとして読み取るようスキャナーユニット30に読取指令を出力
したり、操作パネル50に表示部52の制御指令を出力したりする。なお、操作パネル5
0のボタン群54の操作により各種モードを選択可能となっており、選択可能なモードと
しては、ガラス台36に載置された原稿をスキャンしてコピーするコピーモードやメモリ
ーカード42に記憶された画像データを用いて画像を印刷したり原稿をスキャンしデータ
化してメモリーカード42に保存したりするメモリーカードモードなどがある。
【0018】
次に、こうして構成された本実施形態のマルチファンクションプリンター10の動作、
特に、コピーモードが選択された際の動作について説明する。図2は、メインコントロー
ラー60により実行されるコピーモード時処理ルーチンの一例を示すフローチャートであ
る。このルーチンは、ユーザーによるボタン群54の操作によりコピーモードが選択され
てコピー開始指示がなされたときに実行される。
【0019】
コピーモード時処理ルーチンが実行されると、メインコントローラー60のCPU62
は、まず、スキャナーユニット30に読取指令を出力することによりガラス台36に載置
された原稿を読み取って(スキャン処理して)RGB表色系の画像データを生成する(ス
テップS100)。次に、生成した画像データの画素毎に画像のエッジ部分に相当するエ
ッジ画素であるかエッジ部分に相当しない非エッジ画素であるかを判定するエッジ判定処
理を行なって(ステップS110)、各8ビットのRGB表色系の画像データを各8ビッ
トのCMYK表色系の画像データに色変換処理を行なう(ステップS120)。続いて、
ROM64に記憶されているブルーノイズマスクBLやベイヤー型マスクBYをRAM6
6に展開し、これらのマスクの閾値を用いて色変換処理後のCMYK各8ビットの画像デ
ータをそれぞれ各2ビットの2値化データに変換するディザ法による2値化処理を行なう
(ステップS130)。2値化処理を行なうと、2値化処理後の画像データをプリンター
機構24の印刷ヘッドがドットを形成する順に展開処理して印刷指令の対象となる画像デ
ータを生成し(ステップS140)、プリンターユニット20に印刷指令を出力すること
により展開処理後の画像データに基づく印刷処理を行なって(ステップS150)、本ル
ーチンを終了する。以下、ステップS110のエッジ判定処理とステップS130の2値
化処理の詳細について順に説明する。
【0020】
まず、エッジ判定処理について説明する。図3は、エッジ判定処理の一例を示すフロー
チャートである。このエッジ判定処理では、まず、インデックス値yを値1に設定すると
共に(ステップS200)、インデックス値xを値1に設定し(ステップS210)、設
定したインデックス値xyに相当する画素を処理対象画素に設定する(ステップS220
)。ここで、インデックス値xyは、画像データにおいてマトリックス状に配置された画
素の位置座標を示す値として用いられるものであり、画像データ中の最も左上の画素のイ
ンデックス値x,yをそれぞれ値1とし、右方向をx方向,下方向をy方向として、右端
の画素をインデックス値xmaxとし下端の画素をインデックス値ymaxとして定める
ものとした。次に、設定した処理対象画素のRGBの各階調値が白色を示す階調値を除い
てR=G=Bであるか否かを判定する(ステップS230)。この処理は、処理対象画素
の色が黒やグレーを示すか否かを判定する処理となる。このような判定を行なう理由の詳
細については後述するが、エッジ判定処理で判定されたエッジ画素と非エッジ画素とに対
しては2値化処理時において異なる処理が行なわれ、特に黒やグレーのエッジ画素に対し
て処理を切り替える効果が顕著となることによる。
【0021】
ステップS230でR=G=Bであると判定したときには、次式(1),(2)に基づ
いて処理対象画素のx方向に隣接する2つの画素の階調値Dの差分Δxと処理対象画素の
y方向に隣接する2つの画素の階調値Dの差分Δyとをそれぞれ算出する(ステップS2
40)。なお、いまR=G=Bの場合を考えているから、階調値DはR,G,Bのいずれ
の階調値を用いてもよい。また、処理対象画素が端部の画素に該当し隣接する画素が存在
しない場合には、階調値Dは値0として算出するものとする。次に、算出した差分Δxと
Δyとを用いて次式(3)に基づいてエッジ勾配aを算出し(ステップS250)、算出
したエッジ勾配aが所定の閾値arefを超えるか否かを判定する(ステップS260)
。エッジ勾配aが所定の閾値arefを超えると判定したときには処理対象画素はエッジ
画素であると判定しエッジ判定結果をインデックス値xyに関連付けてRAM66に登録
する(ステップS270)。一方、ステップS260でエッジ勾配aが所定の閾値are
fを超えないと判定したとき、あるいは、上述したステップS230でR=G=Bではな
いと判定したときには、処理対象画素は非エッジ画素であると判定しエッジ判定結果をイ
ンデックス値xyに関連付けてRAM66に登録する(ステップS280)。なお、所定
の閾値arefとしては、例えば、全256階調値に対して差分Δx,Δyのいずれか一
方でも値200を超える場合に処理対象画素がエッジ画素と判定される程度の値に設定す
るものとした。ここで、x方向における階調値Dの変化の一例を図4に示す。図4(a)
は、階調値Dの変化がそれほど大きくなく差分Δxが値200を超えない場合を示してお
り、処理対象画素は非エッジ画素と判定される。一方、図4(b),(c)では、階調値
Dが値0から値255まで大きく変化する場合を示しており、差分Δxが値200を超え
た変化となるために処理対象画素はエッジ画素と判定される。このように処理対象画素に
隣接する2つの画素の階調値Dの差分を用いて処理対象画素がエッジ画素であるか否かを
判定するのである。なお、本実施形態のようにスキャン処理して生成されたRGBデータ
においては、スキャナーユニット30の読取特性などにより、スキャン処理対象の画像に
おけるエッジ部分の画素が本来は階調値0と階調値255とが隣接する場合であっても緩
やかなエッジとなることがある。具体的には、図4(b)に示すような1画素間(ここで
は処理対象画素の左隣の画素から処理対象画素までの間)で急激に立ち上がるようなエッ
ジとはならず、図4(c)に示すような2以上の複数の画素間(ここでは処理対象画素の
左隣の画素から処理対象画図の右隣の画素までの2画素間)に亘って比較的緩やかに立ち
上がるようなエッジとなる。
【0022】
Δx=D(x-1,y)-D(x+1,y) (1)
Δy=D(x,y-1)-D(x,Y+1) (2)
a=√(Δx^2+Δy^2) (3)
【0023】
こうしてエッジ画素であるか非エッジ画素であるかを判定してその結果を登録すると、
インデックス値xを値1だけインクリメントして(ステップS290)、インクリメント
したインデックス値xが最大値xmaxを超えるか否かを判定する(ステップS300)
。最大値xmaxを超えないと判定したときには、ステップS220に戻り処理を繰り返
す。一方、ステップS310で最大値xmaxを超えると判定したときには、インデック
ス値yを値1だけインクリメントして(ステップS310)、インクリメントしたインデ
ックス値yが最大値ymaxを超えるか否かを判定する(ステップS320)。最大値y
maxを超えないと判定したときには、ステップS210に戻り処理を繰り返し、最大値
ymaxを超えると判定したときにはすべての画素のエッジ判定が終了したと判断して、
本処理を終了する。
【0024】
次に2値化処理について説明する。図5は、2値化処理の一例を示すフローチャートで
ある。この2値化処理では、まず、インデックス値yを値1に設定すると共に(ステップ
S400)、インデックス値xを値1に設定し(ステップS410)、設定したインデッ
クス値xyに相当する画素を処理対象画素に設定する(ステップS420)。このインデ
ックス値xyは、色変換処理後のCMYK表色系の画像データにおける画素の位置座標を
示す値として用いられ、図3のエッジ判定処理におけるインデックス値xyと同様に設定
されるものである。次に、図3のエッジ判定処理においてRAM66に登録したエッジ判
定結果から処理対象画素がエッジ画素であるか否かを判定する(ステップS430)。処
理対象画素が非エッジ画素即ちエッジ画素ではないと判定したときには、ブルーノイズマ
スクBLから処理対象画素のインデックス値xyに対応する位置の閾値を抽出し(ステッ
プS440)、抽出した閾値と処理対象画素の階調値との大小を比較して2値化する(ス
テップS460)。このブルーノイズマスクBLの一例を図6に示す。図示するように、
x方向に128画素分の閾値が配置されると共にy方向に64画素分の閾値が配置されて
いる。このブルーノイズマスクBLには、0〜255の全256階調の各階調値がそれぞ
れ32回ずつランダムに出現しており、いわゆるブルーノイズ特性を有するマスクとして
構成されている。なお、ステップS440で抽出されるブルーノイズマスクBLの閾値と
しては、x方向については処理対象画素のインデックス値xをブルーノイズマスクBLの
x方向の画素数(閾値数)である値128で除した余りの数値の位置であって、y方向に
ついてはインデックス値yをブルーノイズマスクBLのy方向の画素数(閾値数)である
値64で除した余りの数値の位置に該当する閾値が抽出されることになる。
【0025】
一方、ステップS430で処理対象画素がエッジ画素であると判定したときには、ベイ
ヤー型マスクBYから処理対象画素のインデックス値xyに対応する位置の閾値を抽出し
(ステップS450)、ステップS460で抽出した閾値と処理対象画素の階調値との大
小を比較して2値化する。このベイヤー型マスクBYの一例を図7に示す。図示するよう
に、x方向,y方向にそれぞれ16画素分の閾値が配置されている。このため、全256
階調の各階調値がそれぞれ1度ずつ出現することになる。また、このベイヤー型マスクで
は、x方向においては、例えば最も上段の閾値が値0,128,32,160,8,13
6,・・・となっており、値0と値128との差分が全256階調の中央値である値12
8となり、値32と値160との差分や値8と値136との差分も同様に値128となる
よう閾値が配置されている。なお最上段以外の閾値も同様に、所定間隔毎に差分が値12
8となるよう閾値が配置されている。一方、y方向においては、例えば最も左端の列の閾
値が値0,192,48,240,・・・となっており、所定間隔毎に差分が値192と
なるよう閾値が配置されている。また、左端から2列目の閾値が値128,64,176
,112,・・・となっており、所定間隔毎に差分が64となるよう閾値が配置されてい
る。このような差分が値192となる列と差分が値64となる列とが交互に配置されてい
る。なお、値192と値64との平均値は、全256階調値の中央値である値128とで
ある。このように、ベイヤー型マスクBYでは、所定間隔毎の差分が所定値(値128や
値196,値64)となるよう規則性をもって閾値が配置されている。なお、ステップS
440で抽出されるベイヤー型マスクBYの閾値としては、x,y方向において処理対象
画素のインデックス値x,yをそれぞれベイヤー型マスクBYのx,y方向の画素数(閾
値数)である値16で除した余りの数値の位置に該当する閾値が抽出されることになる。
【0026】
こうして2値化を行なうと、インデックス値xを値1だけインクリメントして(ステッ
プS470)、インクリメントしたインデックス値xが最大値xmaxを超えるか否かを
判定する(ステップS480)。最大値xmaxを超えないと判定したときには、ステッ
プS420に戻り処理を繰り返す。一方、ステップS480で最大値xmaxを超えると
判定したときには、インデックス値yを値1だけインクリメントして(ステップS490
)、インクリメントしたインデックス値yが最大値ymaxを超えるか否かを判定する(
ステップS500)。最大値ymaxを超えないと判定したときには、ステップS410
に戻り処理を繰り返し、最大値ymaxを超えると判定したときにはすべての画素のエッ
ジ判定が終了したと判断して、本処理を終了する。
【0027】
ここで、画像データを2値化する際の様子について説明する。図8は、画像データが2
値化される様子を示す説明図である。なお、図8では、画像データやブルーノイズマスク
BL,ベイヤー型マスクBYは、一部分のみを拡大して示した。図示するように、エッジ
画素と判定されている画素(図中太線枠内の画素)以外の非エッジ画素については、ブル
ーノイズマスクBLから画素の位置(インデックス値xy)に対応する閾値が用いられる
(図中点線の矢印で示す)。一方、エッジ画素と判定されている画素については、ベイヤ
ー型マスクBYから画素の位置に対応する閾値が用いられる(図中実線の矢印で示す)。
ここで、上述したように、ブルーノイズマスクBLは、ベイヤー型マスクBYに比して大
きなマトリックスに規則性のないランダムな閾値が配置されており、一方、ベイヤー型マ
スクBYは、ブルーノイズマスクBLに比して小さなサイズのマトリックスに所定間隔毎
の差分が所定値となるよう規則性をもった閾値が配置されている。このため、例えば、画
像全体にベイヤー型マスクBYを用いた場合には、小さなマトリックスサイズに起因した
ブロックパターンが目立つものとなり2値化後の画像に擬似的な輪郭が生じたものとなっ
てしまう。一方、画像全体にブルーノイズマスクを用いると、マトリックスサイズが大き
いためにブロックパターンが生じるのを抑制することができる。ただし、文字や線画の周
辺部分などのように、ほぼ同値の階調値を有するエッジ画素が連続する部分であっても規
則性のないランダムな閾値により、2値化結果に不自然に離散したり集合したりする部分
が生じてしまう。そこで、エッジ画素に対しては、ベイヤー型マスクBYの閾値を用いる
ことで、規則性をもった2値化結果とするのである。ここで、図9は、マスクの違いによ
る2値化結果の違いの様子を示す説明図である。図9(1)が階調値Dが値190の画素
に対する違いを示し、図9(2)が階調値Dが値120の画素に対する違いを示す。なお
、2値化結果として、閾値が階調値Dより小さくなる画素を濃い色で図示し、閾値が階調
値Dより大きくなる画素を白色で図示するものとした。図示するように、いずれの場合も
ベイヤー型マスクを適用した方がブルーノイズマスクBLを適用したものに比べて規則的
なものとなっていることがわかる。なお、本実施形態における2値化処理は、ブルーノイ
ズマスクBLとベイヤー型マスクBYとのうちいずれのマスクの閾値を用いるかを切り替
えるものであり、2値化の手法自体が異なるものではないから煩雑な処理となることはな
い。また、これらのブルーノイズマスクBLとベイヤー型マスクBYとは、いずれもRO
M64に記憶され2値化処理時にRAM66に展開して閾値を抽出するものであるから、
誤差拡散法などのように2値化の誤差を周囲の画素に拡散させながら2値化するものに比
してスムーズに処理することができる。なお、上述した図3のエッジ判定処理において、
黒やグレーの画素を対象としてエッジ画素であるか否かを判定したのは、黒やグレーのエ
ッジ部分は他の色と比して濃淡がはっきりとしたものとなり、人目につきやすい部分とな
るから、そのような部分において不自然なドットが形成されるのを防止するためである。
【0028】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実
施形態のブルーノイズマスクBLとベイヤー型マスクBYとを記憶するROM64とRA
M66とが本発明の「記憶手段」に相当し、図2のコピーモード時処理ルーチンにおける
ステップS110の処理(図3のエッジ判定処理)を実行するメインコントローラー60
が「エッジ画素判定手段」に相当し、図2のコピーモード時処理ルーチンにおけるステッ
プS130の処理(図5の2値化処理)を実行するメインコントローラー60が「2値化
手段」に相当する。
【0029】
以上詳述した本実施形態のマルチファンクションプリンター10によれば、規則性のな
いランダムな閾値が配置されたブルーノイズマスクBLと所定間隔毎の差分が所定の階調
値となるよう規則性をもった閾値が配置されたベイヤー型マスクBYとを予め記憶してお
き、入力された画像データの画素がエッジ部分に相当するエッジ画素であるかエッジ部分
に相当しない非エッジ画素であるかを判定し、各画素のうち非エッジ画素についてはブル
ーノイズマスクBLの閾値を用い、エッジ画素についてはベイヤー型マスクBYの閾値を
用いて2値化するから、エッジ部分以外の部分においては2値化結果に規則性が現れるこ
とがなく2値化に起因した模様が現れるのを防止することができると共にエッジ部分にお
いては2値化結果に所定間隔毎の規則性が現れてその離散度合いに偏りが生じるのを防止
することができる。また、ブルーノイズマスクBLとベイヤー型マスクBYとはいずれも
予めROM64に記憶されているものであり、誤差拡散法などと併用する場合に比して、
スムーズに2値化することができる。この結果、画素のエッジ状態に適した階調値変換処
理をよりスムーズに行なうことができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に
属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0031】
上述した実施形態では、非エッジ画素についてはブルーノイズマスクBLの閾値を用い
てエッジ画素についてはベイヤー型マスクBYの閾値を用いるものとしたが、ブルーノイ
ズマスクBLとベイヤー型マスクBYとに限定されるものではなく、非エッジ画素につい
ては規則性のないランダムな閾値が配置されたマスクの閾値を用いエッジ画素については
所定間隔毎の差分が所定値となるよう規則性をもった閾値が配置されたマスクの閾値を用
いるものであれば、どのようなマスクを用いるものとしてもよい。また、ブルーノイズマ
スクBLがベイヤー型マスクBYよりもマトリックスサイズが大きいものとしたが、これ
に限られず、同じ大きさのマスクを用いるものとしてもよい。ただし、ブロックパターン
を発生させないことを目的とするため、本実施形態のように、ブルーノイズマスクBLが
比較的大きなマトリックスであることが好ましい。さらに、ブルーノイズマスクBLやベ
イヤー型マスクBYのマトリックスサイズは一例であり、全階調値の倍数に基づくサイズ
であればどのようなサイズであってもよい。特に、ブルーノイズマスクBLとしては、全
階調値が値255の場合には、128画素×128画素のサイズとしたり、256画素×
256画素のサイズとしたりしてもよい。
【0032】
上述した実施形態では、画素の階調値が白色画素を示す階調値を除いてR=G=Bとな
る画素即ち黒またはグレーを示す画素についてエッジ画素であるか否かを判定するものと
したが、これに限られず、画素の色に拘わらずすべての画素についてエッジ画素であるか
否かを判定するものとしてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、処理対象画素に隣接する画素の階調値Dの差分から算出したエ
ッジ勾配aに基づいてエッジ画素であるか否かを判定するものとしたが、単に階調値Dの
差分に基づいて判定するものとしてもよい。あるいは隣接する画素間の階調値Dの差分に
基づくものに限られず、Sobelフィルターなどの他の1次微分系のフィルターやLaplacian
フィルターなどの2次微分系のフィルターなどを用いて処理対象画素を中心とした上下左
右の4近傍や斜めを含む8近傍の画素の階調値Dに対してフィルター係数を乗じた演算結
果に基づいて判定を行なうものなどとしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 マルチファンクションプリンター、12 バス、20 プリンターユニット、2
2 プリンターASIC、24 プリンター機構、30 スキャナーユニット、32 ス
キャナーASIC、34 スキャナー機構、36 ガラス台、40 メモリーカードスロ
ット、42 メモリーカード、44 メモリーカードコントローラー、50 操作パネル
、52 表示部、54 ボタン群、60 メインコントローラー、62 CPU、64
ROM、66 RAM、68 フラッシュメモリー、69 内部通信インターフェース(
I/F)、BL ブルーノイズマスク、BY ベイヤー型マスク、S 用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多階調の画像データを入力して2値化処理する画像処理装置であって、
規則性のないランダムな閾値がマトリックス状に配置された第1のマスクと、所定間隔
毎の差分が所定の階調値となるよう規則性をもった閾値がマトリックス状に配置された第
2のマスクとを記憶する記憶手段と、
前記入力された画像データの各画素がエッジ部分に相当するエッジ画素であるか否かを
判定するエッジ画素判定手段と、
前記エッジ画素と判定されない画素については前記第1のマスクの閾値を用いて2値化
し、前記エッジ画素と判定された画素については前記第2のマスクの閾値を用いて2値化
する2値化手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像処理装置であって、
前記第1のマスクは、前記第2のマスクよりもマトリックスのサイズが大きなマスクで
あり、
前記2値化手段は、前記入力された画像データが前記第1または前記第2のマスクより
もマトリックスのサイズが大きい場合には、該第1または該第2のマスクを繰り返し用い
て2値化する手段である
画像処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像処理装置であって、
前記第2のマスクは、前記多階調の各階調値が1度ずつ配置されてなるマスクであり、
前記第1のマスクは、前記第2のマスクの整数倍のサイズのマトリックスに前記多階調
の各階調値が前記整数倍の数ずつ配置されてなるマスクである
画像処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の画像処理装置であって、
前記第1のマスクは、ブルーノイズマスクであり、
前記第2のマスクは、ベイヤー型のディザマスクである
画像処理装置。
【請求項5】
媒体に形成された画像を読み取る画像読取装置を介して前記画像データを入力する請求
項1ないし4いずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記エッジ画素判定手段は、前記エッジ画素であるか否かの判定対象となる画素に隣接
する所定数の画素間の階調値変化に基づいて前記判定を行なう手段である
画像処理装置。
【請求項6】
前記エッジ画素判定手段は、前記エッジ画素であるか否かの判定対象となる画素の階調
値が黒またはグレーを示す場合に前記判定を行なう手段である請求項5記載の画像処理装
置。
【請求項7】
コンピューターを、請求項1ないし6いずれか1項に記載の画像処理装置として機能さ
せるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−223082(P2011−223082A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86759(P2010−86759)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】