説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすようにする。
【解決手段】変換座標出力部101は、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標(X,Y座標)を出力する。キー信号縮小率化部105は、キー信号のレベルに応じた縮小率を出力する。フィルタ係数出力部107は、キー信号縮小率化部105からの縮小率に基づき、入力画像のピクセル単位で、キー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数を出力する。レンダリング部108は、ピクセル毎のキー信号のレベルに応じたフィルタ係数で、入力画像データVinにローパスのフィルタリングを施す。そして、レンダリング部108は、出力画像の各ピクセルに対応して、フィルタリング後の入力画像データVinの各画素データのうち、X,Y座標に対応した画素データを用いて、出力画像データVoutを構成する画素データを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、特に、画像に変形処理を施して特殊効果を発生させる画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像編集システムなどでは、2次元空間や3次元空間における座標変換によって画像に縮小、移動、回転などの変形処理を施すことが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図12は、従来の画像処理装置210の構成例を示している。変換座標出力部211には、図示しないシステムコントローラ等の外部機器からどのような画像変形を行うかを示す画像変形パラメータが供給される。画像変形は、例えば、縮小、移動、回転などである。この変換座標出力部211では、画像変形パラメータに基づいて、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標(X,Y座標)が出力される。この変換座標出力部211では、座標変換処理により、入力画像の座標と出力画像の座標との対応関係が決定される。
【0004】
この変換座標出力部211から出力されるX,Y座標は、縮小率算出部212に供給される。縮小率算出部212では、変換座標出力部211から出力されるX,Y座標に基づいて、画像の縮小率が算出される。この縮小率算出部212では、例えば、出力画像の水平方向に隣接する2ピクセルに対応して出力される入力画像の座標の水平方向成分の差に基づいて、水平方向の画像の縮小率が算出される。同様に、縮小率算出部212では、例えば、出力画像の垂直方向に隣接する2ピクセルに対応して出力される入力画像の座標の垂直方向成分の差に基づいて、垂直方向の画像の縮小率が算出される。
【0005】
この縮小率算出部212で算出される水平方向および垂直方向の画像の縮小率は、フィルタ係数出力部213に供給される。このフィルタ係数出力部213からは、画像の縮小率に対応したフィルタ係数が出力される。このフィルタ係数は、画像の縮小に伴って発生するエリアシング(折り返し歪み)を軽減するためのものである。レンダリング部214では、入力画像データVinに対して、水平方向および垂直方向に、例えばFIR(Finite ImpulseResponse)フィルタにより、ローパスのフィルタリングが施される。そのため、フィルタ係数出力部213から出力されるフィルタ係数には、水平方向の所定数のタップ分の係数と、垂直方向の所定数のタップ分の係数が含まれる。
【0006】
レンダリング部214には、入力画像データVinが供給されると共に、変換座標出力部211から出力されるX,Y座標と、フィルタ係数出力部213から出力されるフィルタ係数が供給される。このレンダリング部214では、入力画像データVinに対して、フィルタ係数出力部213から出力されるフィルタ係数を用いたフィルタリングが施される。
【0007】
そして、このレンダリング部214では、出力画像の各ピクセルに対応して、フィルタリング後の入力画像データVinの各画素データのうち、X,Y座標に対応した画素データが用いられて、出力画像データVoutを構成する画素データが得られる。この場合、レンダリング部214では、例えば、複数個の画素データを使用した補間処理が行われることで、各ピクセル位置に精度よく対応した画素データが生成される。
【0008】
図13は、上述の図12に示す画像処理装置210における処理例を示している。入力画像データVinが、例えば、図13(a)に示すような画像を表示する画像データであるとする。縮小の変形処理が行われる場合には、変換座標出力部211からその変形処理のためのX,Y座標が出力されてレンダリング部214に送られる。そのため、レンダリング部214では、例えば、図13(b)に示すような画像を表示する出力画像データVoutが得られる。また、縮小および回転の変形処理が行われる場合には、同様にして、レンダリング部214では、例えば、図13(c)に示すような画像を表示する出力画像データVoutが得られる。
【0009】
また、従来、映像編集システムなどでは、入力画像データ等から作成されたキー信号に基づいて複数の画像データを合成する処理を施すことが行われている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
図14は、従来の画像処理装置220の構成例を示している。キー信号生成部221には、入力画像データVinaが供給される。このキー信号生成部221では、入力画像データVinaに基づいて、キー信号(KEY信号)が生成される。例えば、キー信号生成部221では、ピクセル毎に、入力画像データVinaを構成する輝度データYのレベルに応じた、所定ビットのキー信号が生成される。また、例えば、キー信号生成部221では、ピクセル毎に、入力画像データVinaを構成する青色差データCbおよび赤色差データCrのレベル(彩度、色相)に応じた所定ビットのキー信号が生成される。
【0011】
このキー信号生成部221で生成されるキー信号は、キー信号選択/合成部222に供給される。また、このキー信号選択/合成部222には、図示しないシステムコントローラ等の外部機器から外部キー信号(外部KEY信号)が供給される。この外部キー信号は、上述のキー信号生成部221と同様のキー信号生成部により、入力画像データVinaとは異なる他の画像データに基づいて生成されたものである。
【0012】
このキー信号選択/合成部222では、図示しないシステムコントローラ等の外部機器による制御により、キー信号生成部221で生成されたキー信号および外部キー信号のいずれか、または双方が合成されて得られたキー信号が出力される。キー信号の合成は、例えば、αブレンドにより行われる。
【0013】
このキー信号選択/合成部222から出力されるキー信号は、画像合成部223に供給される。この画像合成部223には、上述したようにキー信号の生成のために使用された入力画像データVinaが入力される共に、入力画像データVinbが入力されている。この画像合成部223では、キー信号選択/合成部222から出力されるキー信号に基づいて、入力画像データVinaと入力画像データVinbとが合成されて、出力画像データVoutが得られる。
【0014】
この画像合成部223では、例えば、キー信号選択/合成部222から出力されるキー信号がその最大値が1となるように正規化され、正規化されたキー信号を用いたαブレンド処理による合成が行われる。すなわち、画像合成部223では、以下の(1)式に基づいて、入力画像データVinaと入力画像データVinbとが合成される。この(1)式において、sk′は、キー信号の正規化値である。
Vout=Vina*sk′+Vinb*(1−sk′) ・・・(1)
【0015】
図15は、上述の図14に示す画像処理装置220における処理例を示している。入力画像データVinaが、例えば、図15(a)に示すようなブルーバック画像を表示する画像データであるとする。また、入力画像データVinbが、例えば、図15(b)に示すような画像を表示する画像データであるとする。キー信号生成部221が入力画像データVinaのうち、ブルーバック部分を特定してキー信号(KEY信号)とする場合には、キー信号生成部221では、図15(c)に示すようにキー信号が生成される。
【0016】
そして、キー信号選択/合成部222においてキー信号生成部221で生成されるキー信号が選択されて出力される場合、画像合成部223では、例えば、図15(d)に示すような画像を表示する出力画像データVoutが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−83316号公報
【特許文献2】特開2007−13874号公報
【特許文献3】特開平9−65203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
この発明の目的は、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことを可能とした画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明の概念は、
出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標を出力する変換座標出力部と、
キー信号を用いて、上記入力画像のピクセル単位で、該キー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数を出力するフィルタ係数出力部と、
入力画像データに上記フィルタ係数出力部から出力されるフィルタ係数でフィルタリングを施し、上記出力画像の各ピクセルに対応して、上記フィルタリングが施された後の入力画像データを構成する各画像データのうち、上記変換座標出力部から出力される座標に対応した画素データを用いて出力画像データを構成する画素データを得る画像処理部と
を備える画像処理装置にある。
【0020】
この発明においては、変換座標出力部により、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標が出力される。また、フィルタ係数出力部から、入力画像のピクセル単位で、キー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数が出力される。
【0021】
例えば、キー信号として、入力画像データに基づいてキー信号生成部で生成されたキー信号、または入力画像データとは異なる他の画像データに基づいて生成された外部キー信号が用いられる。また、例えば、キー信号として、入力画像データに基づいて生成されたキー信号と外部キー信号とが合成されて得られたキー信号が用いられる。他の画像データは、例えば、自然画像または人工画像の画像データとされる。ここで、自然画像の画像データは、撮影されて得られた画像データを意味する。また、人工画像の画像データは、人工的に作成された画像データを意味する。
【0022】
画像処理部により、入力画像データに、フィルタ係数出力部から出力されるフィルタ係数でフィルタリングが施される。そして、画像処理部により、出力画像の各ピクセルに対応して、フィルタリングが施された後の入力画像データを構成する各画素データのうち、変換座標出力部から出力される変動座標に対応した画素データが用いられて、出力画像データを構成する画素データが得られる。
【0023】
このように、画像処理部では、入力画像のピクセル単位で得られたキー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数が用いられて入力画像データにフィルタリングが施される。そして、画像処理部では、出力画像のピクセル単位で出力画像データを構成する画素データを得る際に、フィルタリングが施された後の入力画像データが用いられる。そのため、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【0024】
この発明において、例えば、入力画像データは輝度データおよび色差データを含み、画像処理部は、輝度データの処理を行う輝度データ処理部と、色差データの処理を行う色差データ処理部とを有し、輝度データ処理部および色差データ処理部のいずれか、または双方において、フィルタ係数出力部から出力されるフィルタ係数でローパスのフィルタリングが施される、ようにしてもよい。これにより、輝度または色についてだけ、あるいは双方について、上述の特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【0025】
この発明において、例えば、フィルタ係数出力部で用いられるキー信号を所定の時間単位で加工するキー信号加工部をさらに備える、ようにしてもよい。この場合、フィルタ係数が所定の時間単位で変化したものとなる。そのため、画像の特定箇所にもたらされる動きや絵画調のような特殊な画像効果を所定の時間単位で変化させることができる。
【0026】
また、この発明において、例えば、変換座標出力部から出力される座標に基づいて縮小率を算出する縮小率算出部と、キー信号を用い、このキー信号のレベルに応じた縮小率を出力するキー信号縮小率化部をさらに備え、フィルタ係数出力部は、縮小率算出部で算出される縮小率とキー信号縮小率化部から出力される縮小率とが合成されて得られた縮小率に応じたフィルタ係数を出力する、ようにしてもよい。これにより、画像処理部で縮小の変形処理が行われる場合、エリアシング(折り返し歪み)の発生を軽減できると共に、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【0027】
また、この発明において、例えば、変換座標出力部から出力される座標に基づいて縮小率を算出する縮小率算出部と、キー信号を用い、該キー信号のレベルに応じた縮小率を出力するキー信号縮小率化部と、縮小率算出部で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部から出力される縮小率のいずれか、または双方が合成されて得られた縮小率を出力する縮小率出力部をさらに備え、フィルタ係数出力部は、縮小率出力部から出力される縮小率に応じたフィルタ係数を出力する、ようにしてもよい。これにより、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことを有効または無効にできる。また、これにより、画像処理部で縮小の変形処理が行われる場合、エリアシング(折り返し歪み)の発生を軽減しつつ、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、出力画像のピクセル単位で出力画像データを構成する画素データを得る際に、入力画像のピクセル単位で得られたキー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数でフィルタリングが施された後の入力画像データが用いられるものであり、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の実施の形態としての画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】変換座標出力部が、画像変形パラメータに基づいて、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標を出力することを説明するための図である。
【図3】フィルタ係数出力部に用意されているモード(縮小率とフィルタ係数の関係)の一例を示す図である。
【図4】フィルタ係数出力部が0倍から1倍の係数リストであるフィルタ係数テーブルを備えていることを示す図である。
【図5】フィルタ係数出力部が備えるフィルタ係数テーブル(0倍から1倍の係数リスト)の一例を示す図である。
【図6】キー信号生成部で生成されたキー信号のレベルに応じて出力されるフィルタ係数の一例を説明するための図である。
【図7】画像処理装置を構成するレンダリング部が輝度データ処理部および色差データ処理部を有していることを示すブロック図である。
【図8】この発明の画像効果例を説明するためのキー信号、入力画像および出力画像の一例を示す図である。
【図9】この発明の他の画像効果例を説明するための入力画像の一例を示す図である。
【図10】この発明の他の画像効果例を説明するための出力画像の一例を示す図である。
【図11】この発明の変形例としての画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図12】2次元空間や3次元空間における座標変換によって画像に縮小、回転などの変形処理を施す従来の画像処理装置の構成例を示す図である。
【図13】2次元空間や3次元空間における座標変換によって画像に縮小、回転などの変形処理を施す従来の画像処理装置における処理例を示す図である。
【図14】入力画像データ等から作成されたキー信号に基づいて複数の画像データを合成する処理を施す従来の画像処理装置の構成例を示す図である。
【図15】入力画像データ等から作成されたキー信号に基づいて複数の画像データを合成する処理を施す従来の画像処理装置の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0031】
<1.実施の形態>
[画像処理装置の構成]
図1は、実施の形態としての画像処理装置100の構成例を示している。画像処理装置100は、変換座標出力部101と、縮小率算出部102と、キー信号生成部103と、キー信号選択/合成部104と、キー信号縮小率化部105と、縮小率選択/合成部106と、フィルタ係数出力部107と、レンダリング部108を有している。
【0032】
変換座標出力部101は、画像変形パラメータに基づいて、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標(X,Y座標)を出力する。画像変形パラメータは、どのような画像変形を行うかを示す。画像変形は、例えば、縮小、移動、回転などである。この画像変形パラメータは、図示しないシステムコントローラ等の外部機器から供給される。
【0033】
変換座標出力部101は、以下のような座標変換処理により、入力画像の座標と出力画像の座標との対応関係を決定する。すなわち、変換座標出力部101は、2次元の入力画像を3次元空間のXY平面上のオブジェクトと見なして3次元に拡張し、この3次元空間で、このオブジェクトに対して画像変形パラメータに応じた変形を施す。その後、変換座標出力部101は、3次元空間で変形されたオブジェクトを2次元のXY平面に投影する。
【0034】
例えば、入力画像の座標を図2(a)に示すようにX,Y座標とし、出力画像の座標を図2(b)に示すようにx,y座標とする。変換座標出力部101は、出力画像の各ピクセルの座標(x,y)に対応した、入力画像の座標(X,Y)を出力する。図2は、画像に縮小の変形処理を施す例を示している。変換座標出力部101は、例えば、出力画像の座標(x1,y1)、(x2,y2),(x3,y3)、(x4,y4)のピクセルで、それぞれ、入力画像の座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、(X4,Y4)を出力する。
【0035】
縮小率算出部102は、変換座標出力部101から出力される座標に基づいて、画像の宿小率を算出する。縮小率算出部102は、例えば、出力画像の水平方向に隣接する2ピクセルに対応して出力される入力画像の座標の水平方向成分の差に基づいて、水平方向の画像の縮小率を算出する。同様に、縮小率算出部102は、例えば、出力画像の垂直方向に隣接する2ピクセルに対応して出力される入力画像の座標の垂直方向成分の差に基づいて、垂直方向の画像の縮小率を算出する。
【0036】
キー信号生成部103は、入力画像データVinに基づいて、キー信号(KEY信号)を生成する。例えば、キー信号生成部103は、ピクセル毎に、入力画像データVinを構成する輝度データYのレベルに応じた、所定ビットのキー信号を生成する。また、例えば、キー信号生成部103は、ピクセル毎に、入力画像データVinを構成する青色差データCbおよび赤色差データCrのレベル(彩度、色相)に応じた所定ビットのキー信号を生成する。ここで、キー信号が1ビットの信号であるとき2値の信号となり、キー信号が2ビット以上であるときは4値以上の信号となる。
【0037】
キー信号選択/合成部104は、図示しないシステムコントローラ等の外部機器からの制御により、キー信号生成部103で生成されたキー信号および外部キー信号(外部KEY信号)のいずれか、または双方が合成されて得られたキー信号を出力する。キー信号の合成は、例えば、αブレンドにより行われる。このキー信号選択/合成部104は、キー信号出力部を構成している。
【0038】
外部キー信号は、上述のキー信号生成部103と同様のキー信号生成部により、入力画像データVinとは異なる他の画像データに基づいて生成されたものである。例えば、入力画像データVinは自然画像の画像データであり、他の画像データは自然画像の画像データまたは人工画像の画像データである。自然画像の画像データとは、撮影されて得られた画像データである。これに対して、人工画像の画像データとは、人工的に作成された画像データである。
【0039】
キー信号縮小率化部105は、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号を用い、このキー信号のレベルに応じた縮小率を出力する。このキー信号縮小率化部105は、例えば、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号skをその最大値が1となるように正規化し、1からその正規化値sk′を差し引いた値(1−sk′)を縮小率とする。なお、キー信号縮小率化部105でキー信号に基づいて縮小率を得る方法は上述した方法に限定されず、予め定義したその他の関数を用いて、キー信号から縮小率を得るようにしてもよい。
【0040】
縮小率選択/合成部106は、図示しないシステムコントローラ等の外部機器からの制御により、縮小率算出部102で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部105から出力される縮小率のいずれか、または双方が合成されて得られた縮小率を出力する。例えば、縮小率の合成処理として、縮小率算出部102で算出される縮小率にキー信号縮小率化部105から出力される縮小率を乗算することが考えられる。また、例えば、縮小率の合成処理として、縮小率算出部102で算出される縮小率からキー信号縮小率化部105から出力される縮小率を減算することが考えられる。この縮小率選択/合成部106は、縮小率出力部を構成している。
【0041】
フィルタ係数出力部107は、縮小率選択/合成部106から出力された縮小率に対応したローパスのフィルタ係数を出力する。フィルタ係数出力部107には、縮小率とフィルタ係数の関係が関数化された複数のモードが用意されており、各モードが選択的に利用される。
【0042】
図3には、2つのモード例が示されている。図3(a)に示すモードは、縮小率(X)とフィルタ係数(Y)との関係が、Y=aX(a=10)の関数で表される。このモードでは、縮小率Xが0.8であるとき、出力すべきフィルタ係数は「フィルタ係数8」に決定される。また、図3(b)に示すモードは、縮小率(X)とフィルタ係数(Y)との関係が、Y=aX(a=5)の関数で表される。このモードでは、縮小率Xが0.8であるとき、出力すべきフィルタ係数は「フィルタ係数4」に決定される。
【0043】
この「フィルタ係数4」は、図3(a)に示すモードにおいて、縮小率Xが0.4であるときのフィルタ係数である。そのため、図3(b)に示すモードを使用する場合、図3(a)に示すモードを使用する場合に比べて、全体的により深くフィルタ効果がかけられることになる。
【0044】
フィルタ係数出力部107は、図4に示すように、フィルタ係数テーブルを備えている。このフィルタ係数テーブルは、0倍から1倍の係数リストである。図5は、フィルタ係数テーブルの一例を示している。この例では、0倍に対応しているのがフィルタ係数0であり、1倍に対応しているのがフィルタ係数10である。フィルタ係数出力部107は、このフィルタ係数テーブルと、選択されたモード(図3参照)に応じて、水平、垂直の縮小率にそれぞれ対応したフィルタ係数を決定する。
【0045】
図6(a)は、キー信号生成部103で生成されたキー信号のレベルに応じて出力されるフィルタ係数の一例を示している。例えば、10ビットのキー信号skのレベルが「512」であるとき、キー信号縮小率化部105から出力される縮小率は、1からキー信号skの正規化値sk′である「0.5」が差し引かれた値である「0.5」となる。そして、この場合、フィルタ係数出力部107からは、図3(a)に示すモードを使用するときには、図6(b)に示すように、「フィルタ係数5」が出力される。
【0046】
なお、レンダリング部108では、入力画像データVinに対して、水平方向および垂直方向に、例えばFIR(Finite Impulse Response)フィルタにより、フィルタリングが施される。そのため、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数には、水平方向の所定数のタップ分の係数と、垂直方向の所定数のタップ分の係数が含まれる。
【0047】
また、レンダリング部108では、入力画像データVinを構成する輝度データY、青色差データCbおよび赤色差データCrに対して個々にフィルタリングが施される。そのため、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数には、輝度データ用のフィルタ係数と、色差データ用のフィルタ係数が含まれる。
【0048】
レンダリング部108は、入力画像データVinに対して、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数を用いたフィルタリングを施す。また、レンダリング部108は、出力画像の各ピクセルに対応して、出力画像データVoutを構成する画素データを得る。
【0049】
この場合、レンダリング部108は、フィルタリング後の入力画像データVinの各画素データのうち、変換座標出力部101から出力されるX,Y座標に対応した画素データを用いて、出力画像の各ピクセルに対応した画素データを生成する。なお、この場合、レンダリング部108は、例えば、複数個の画素データを使用した補間処理を行うことで、各ピクセル位置に精度よく対応した画素データを生成する。このレンダリング部108は、画像処理部を構成している。
【0050】
図7は、レンダリング部108の構成例を示している。入力画像データVinは、輝度データYおよび色差データC(青色差データCb、赤色差データCr)を含んでいる。レンダリング部108は、入力画像データVinを構成する輝度データYを処理して、出力画像データVoutを構成する輝度データY′を出力する輝度データ処理部108Yを有している。また、レンダリング部108は、入力画像データVinを構成する色差データCを処理して、出力画像データVoutを構成する色差データC′を出力する色差データ処理部108Cを有している。
【0051】
輝度データ処理部108Yは、輝度データYに対して、フィルタ係数出力部107から出力される輝度データ用のフィルタ係数を用いたフィルタリングを施す。そして、輝度データ処理部108Yは、フィルタリング後の輝度データYを構成する各画素データのうち、変換座標出力部101から出力されるX,Y座標に対応した画素データを用いて、輝度データY′を構成する各画素データを生成する。
【0052】
色差データ処理部108Cは、色差データYに対して、フィルタ係数出力部107から出力される色差データ用のフィルタ係数を用いたフィルタリングを施す。そして、色差データ処理部108Cは、フィルタリング後の色差データCを構成する各画素データのうち、変換座標出力部101から出力されるX,Y座標に対応した画素データを用いて、色差データC′を構成する各画素データを生成する。
【0053】
上述したように、輝度データ処理部108Yでは輝度データYに対してフィルタリングが行われ、色差データ処理部108Cでは色差データCに対してフィルタリングが行われる。この場合、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数に応じて、輝度データ処理部108Yおよび色差データ処理部108Cのいずれか、または双方において、ローパスのフィルタリングが施される。
【0054】
輝度データ処理部108Yや色差データ処理部108Cでローパスのフィルタリングが行われるか否かは、フィルタ係数出力部107で出力されるフィルタ係数により決定される。フィルタ係数出力部107は、図示しないシステムコントローラ等の外部機器からの制御により、以下のように、輝度データ用および色差データ用のフィルタ係数を出力する。
【0055】
縮小率選択/合成部106からキー信号縮小率化部105で算出される縮小率が出力されるとき、輝度データ処理部108Yおよび色差データ処理部108Cのいずれか、または双方でローパスのフィルタリングが施される。このとき、フィルタ係数出力部107からは、例えば、以下のように、輝度データ用および色差データ用のフィルタ係数が出力される。
【0056】
輝度データ処理部108Yでのみローパスのフィルタリングを施す場合について説明する。この場合、フィルタ係数出力部107は、輝度データ用のフィルタ係数として縮小率選択/合成部106から出力される縮小率に対応したフィルタ係数を出力する。この場合、フィルタ係数出力部107は、色差データ用のフィルタ係数としては縮小率=1.0のフィルタ係数を出力する。
【0057】
この場合、レンダリング部108の輝度データ処理部108Yでは、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数により、輝度データYに対してローパスのフィルタリングが施される。一方、レンダリング部108の色差データ処理部108Cには、フィルタ係数出力部107から縮小率=1.0のフィルタ係数が供給されることから、色差データCに対してローパスのフィルタリングは施されない。
【0058】
また、色差データ処理部108Cでのみローパスのフィルタリングを施す場合について説明する。この場合、フィルタ係数出力部107は、色差データ用のフィルタ係数として縮小率選択/合成部106から出力される縮小率に対応したフィルタ係数を出力する。この場合、フィルタ係数出力部107は、輝度データ用のフィルタ係数としては縮小率=1.0のフィルタ係数を出力する。
【0059】
この場合、レンダリング部108の色差データ処理部108Cでは、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数により、色差データCに対してローパスのフィルタリングが施される。一方、レンダリング部108の輝度データ処理部108Yには、フィルタ係数出力部107から縮小率=1.0のフィルタ係数が供給されることから、輝度データYに対してローパスのフィルタリングは施されない。
【0060】
また、輝度データ処理部108Yおよび色差データ処理部108Cの双方でローパスのフィルタリングを施す場合について説明する。この場合、フィルタ係数出力部107は、輝度データ用および色差データ用のフィルタ係数として縮小率選択/合成部106から出力される縮小率に対応したフィルタ係数を出力する。
【0061】
この場合、レンダリング部108の輝度データ処理部108Yでは、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数により、輝度データYに対してローパスのフィルタリングが施される。また、レンダリング部108の色差データ処理部108Cでは、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数により、色差データCに対してローパスのフィルタリングが施される。
【0062】
縮小率選択/合成部106から縮小率算出部102で算出される縮小率が出力されるとき、輝度データ処理部108Yおよび色差データ処理部108Cの双方でローパスのフィルタリングが施される。縮小率選択/合成部106から縮小率算出部102で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部105で得られる縮小率が合成されて得られた縮小率が出力されるときも同様とされる。このとき、フィルタ係数出力部107からは、例えば、以下のように、輝度データ用および色差データ用のフィルタ係数が出力される。
【0063】
フィルタ係数出力部107は、輝度データ用および色差データ用のフィルタ係数として縮小率選択/合成部106から出力される縮小率に対応したフィルタ係数を出力する。この場合、レンダリング部108の輝度データ処理部108Yでは、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数により、輝度データYに対してローパスのフィルタリングが施される。また、レンダリング部108の色差データ処理部108Cでは、フィルタ係数出力部107から供給されるフィルタ係数により、色差データCに対してローパスのフィルタリングが施される。
【0064】
図1に示す画像処理装置100の動作を説明する。変換座標出力部101には、図示しないシステムコントローラ等の外部機器からどのような画像変形を行うかを示す画像変形パラメータが供給される。画像変形は、例えば、縮小、移動、回転などである。この変換座標出力部101からは、画像変形パラメータに基づいて、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標(X,Y座標)が出力される。この変換座標出力部101では、座標変換処理により、入力画像の座標と出力画像の座標との対応関係が決定される。
【0065】
この変換座標出力部101から出力されるX,Y座標は、縮小率算出部102に供給される。縮小率算出部102では、このX,Y座標に基づいて、水平方向および垂直方向の画像の縮小率が算出される。このように算出される画像の縮小率は、縮小率選択/合成部106に供給される。
【0066】
また、キー信号生成部103には、入力画像データVinが供給される。このキー信号生成部103では、入力画像データVinに基づいて、キー信号(KEY信号)が生成される。例えば、キー信号生成部103では、ピクセル毎に、入力画像データVinを構成する輝度データYのレベルに応じた、所定ビットのキー信号が生成される。また、例えば、キー信号生成部103では、ピクセル毎に、入力画像データVinを構成する青色差データCbおよび赤色差データCrのレベル(彩度、色相)に応じた所定ビットのキー信号が生成される。
【0067】
このキー信号生成部103で生成されるキー信号は、キー信号選択/合成部104に供給される。また、このキー信号選択/合成部104には、図示しないシステムコントローラ等の外部機器から外部キー信号(外部KEY信号)が供給される。この外部キー信号は、上述のキー信号生成部103と同様のキー信号生成部により、入力画像データVinとは異なる他の画像データに基づいて生成されたものである。
【0068】
このキー信号選択/合成部104では、図示しないシステムコントローラ等の外部機器による制御により、キー信号生成部103で生成されたキー信号および外部キー信号のいずれか、または双方が合成されて得られたキー信号が出力される。キー信号の合成は、例えば、αブレンドにより行われる。このキー信号選択/合成部104から出力されるキー信号は、キー信号縮小率化部105に供給される。
【0069】
キー信号縮小率化部105では、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号が用いられ、このキー信号のレベルに応じた縮小率が得られる。例えば、このキー信号縮小率化部105では、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号skがその最大値が1となるように正規化され、1からその正規化値sk′が差し引かれた値(1−sk′)が縮小率とされる。このキー信号縮小率化部105から出力される縮小率は、縮小率選択/合成部106に供給される。
【0070】
縮小率選択/合成部106では、図示しないシステムコントローラ等の外部機器からの制御により、縮小率算出部102で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部105から出力される縮小率の選択または合成が行われる。例えば、縮小率選択/合成部106からは、縮小率算出部102で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部105から出力される縮小率のいずれかが選択されて出力される。
【0071】
また、例えば、縮小率選択/合成部106からは、縮小率算出部102で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部105から出力される縮小率が合成されて得られた縮小率が出力される。この場合、縮小率の合成処理として、例えば、縮小率算出部102で算出される縮小率にキー信号縮小率化部105から出力される縮小率を乗算すること等が行われる。この縮小率選択/合成部106から出力される縮小率は、フィルタ係数出力部107に供給される。
【0072】
フィルタ係数出力部107からは、縮小率選択/合成部106から供給される縮小率に対応したフィルタ係数が出力される。このフィルタ係数は、縮小率選択/合成部106から縮小率算出部102で算出される縮小率が出力される場合、画像の縮小に伴って発生するエリアシング(折り返し歪み)を軽減するためのものとなる。また、このフィルタ係数は、縮小率選択/合成部106からキー信号縮小率化部105で得られる縮小率が出力される場合、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすためのものとなる。
【0073】
さらに、このフィルタ係数は、縮小率選択/合成部106から縮小率算出部102およびキー信号縮小率化部105の双方の縮小率が合成されて得られた縮小率が出力される場合、このフィルタ係数は、以下の目的を持つものとなる。すなわち、このフィルタ係数は、画像の縮小に伴って発生するエリアシング(折り返し歪み)を軽減すると共に、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすためのものとなる。
【0074】
レンダリング部108には、入力画像データVinが供給されると共に、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数および変換座標出力部101から出力されるX,Y座標が供給される。このレンダリング部108では、入力画像データVinに対して、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数を用いたフィルタリングが施される。
【0075】
このフィルタリングにより、画像の縮小変形に伴うエリアシング(折り返し歪み)の発生が軽減され、あるいは画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果がもたらされる。すなわち、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数が縮小率算出部102で算出される縮小率に応じたものである場合、画像の縮小変形に伴うエリアシング(折り返し歪み)の発生が軽減される。
【0076】
また、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数がキー信号縮小率化部105で生成される縮小率に応じたものである場合、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果がもたらされる。この場合、フィルタ係数出力部107において、輝度データ用のフィルタ係数のみがキー信号縮小率化部105で生成される縮小率に応じたものとされることで、輝度についてだけ上述の特殊な画像効果がもたらされる。
【0077】
また、この場合、フィルタ係数出力部107において、色差データ用のフィルタ係数のみがキー信号縮小率化部105で生成される縮小率に応じたものとされることで、色についてだけ上述の特殊な画像効果がもたらされる。さらに、この場合、輝度データ用および色差データ用の双方のフィルタ係数がキー信号縮小率化部105で生成される縮小率に応じたものとされることで、輝度および色の双方について上述の特殊な画像効果がもたらされる。
【0078】
また、このレンダリング部108では、出力画像の各ピクセルに対応して、出力画像データVoutを構成する画素データが得られる。この場合、レンダリング部108では、出力画像の各ピクセルに対応して、フィルタリング後の入力画像データVinの各画素データのうち、変換座標出力部101から出力されるX,Y座標に対応した画素データが用いられる。そのため、レンダリング部108で得られる出力画像データVoutは、画像変形パラメータが示す画像変形が施された出力画像を表示するものとなる。
【0079】
上述したように、図1に示す画像処理装置100において、キー信号縮小率化部105では、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号が用いられ、このキー信号が正規化される等してこのキー信号のレベルに応じた縮小率が得られる。この縮小率が縮小率選択/合成部106を通じてフィルタ係数出力部107に供給される場合、フィルタ係数出力部107からレンダリング部108に供給される入力画像の各ピクセルに対応したフィルタ係数は、ピクセル毎のキー信号のレベルに応じたものとなる。
【0080】
また、縮小率選択/合成部106からフィルタ係数出力部107にキー信号縮小率化部105および縮小率算出部102の双方の縮小率が合成された縮小率が供給される場合も同様である。すなわち、この場合も、フィルタ係数出力部107からレンダリング部108に供給される入力画像の各ピクセルに対応したフィルタ係数は、ピクセル毎のキー信号のレベルに応じたものとなる。
【0081】
したがって、これらの場合、レンダリング部108では、入力画像の各ピクセルに対応して、ピクセル毎のキー信号のレベルに応じたフィルタ係数で、入力画像データVinにローパスのフィルタリングが施される。そのため、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【0082】
また、図1に示す画像処理装置100において、輝度データ用のフィルタ係数のみ、色差データ用のフィルタ係数のみ、あるいはそれら双方のフィルタ係数を、キー信号縮小率化部105で生成される縮小率に応じたものとすることができる。そのため、輝度または色についてだけ、あるいは双方について、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【0083】
また、図1に示す画像処理装置100において、縮小率算出部102で算出される縮小率およびキー信号縮小率化部105から出力される縮小率のいずれか、または双方が合成されて得られた縮小率を出力する縮小率選択/合成部106が備えられる。そのため、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことを有効または無効にできる。また、縮小の変形処理が行われる場合、エリアシング(折り返し歪み)の発生を軽減しつつ、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことができる。
【0084】
図8は、輝度および色の双方について、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果がもたらされる画像効果例を示している。この場合、キー信号生成部103では、例えば、入力画像データVinの色差データCinに基づいて、図8(a)に示すキー信号が生成される。
【0085】
この例では、この図8(a)に示すキー信号がキー信号選択/合成部104を通じてキー信号縮小率化部105に供給され、さらにこのキー信号縮小率化部105で得られた縮小率が縮小率選択/合成部106を通じてフィルタ係数出力部107に供給される。そして、この例では、フィルタ係数出力部107で、輝度データ用および色差データ用の双方のフィルタ係数として、図8(a)に示すキー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数が出力されるものとする。
【0086】
図8(b)は入力画像データVinによる画像(入力画像)を示しており、図8(c)は出力画像データVoutによる画像(出力画像)を示している。図8(a)に示すキー信号は、入力画像の特定色相(この例では花びらの色相)以外の部分でそのレベルが高くなっている。上述したように、キー信号縮小率化部105では、例えば、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号skがその最大値が1となるように正規化され、1からその正規化値sk′が差し引かれた値(1−sk′)が縮小率とされる。
【0087】
入力画像の特定色相の箇所は縮小率=1.0に近く、逆に、入力画像の特定色相以外の箇所は縮小率=0.0に近くなる。そのため、フィルタ係数出力部107から出力されるフィルタ係数は、入力画像の特定色相以外の箇所に対応してより深くフィルタ効果がかけられるものとされる。したがって、図8(c)に示す出力画像では、特定色相以外の箇所に、より深くフィルタ効果、すなわち動きや絵画調のような特殊な画像効果がかかっている。
【0088】
次に、輝度についてのみ、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果がもたらされる画像効果例を説明する。この場合、キー信号生成部103により入力画像データVinの輝度データYに基づいて生成されたキー信号が、キー信号選択/合成部104を通じてキー信号縮小率化部105に供給される。そして、このキー信号縮小率化部105で得られた縮小率が縮小率選択/合成部106を通じてフィルタ係数出力部107に供給される。そして、この例では、フィルタ係数出力部107で、輝度データ用のフィルタ係数として、キー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数が出力され、色差データ用のフィルタ係数は縮小率が1.0に対応したものとされる。
【0089】
図9は入力画像データVinによる画像(入力画像)を示しており、図10は出力画像データVoutによる画像(出力画像)を示している。キー信号縮小率化部105に供給されるキー信号は入力画像の輝度の高い部分でそのレベルが高くなっている。上述したように、キー信号縮小率化部105では、例えば、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号skがその最大値が1となるように正規化され、1からその正規化値sk′が差し引かれた値(1−sk′)が縮小率とされる。
【0090】
入力画像の低輝度箇所は縮小率=1.0に近く、逆に、入力画像の高輝度箇所は縮小率=0.0に近くなる。そのため、フィルタ係数出力部107から出力される輝度データ用のフィルタ係数は、入力画像の高輝度箇所に対応してより深くフィルタ効果がかけられるものとされる。したがって、図10に示す出力画像では、高輝度箇所の輝度についてより深くフィルタ効果、すなわち動きや絵画調のような特殊な画像効果がかかっている。この場合、色についてはフィルタ効果がかからないので、塗り絵のような絵画調の画像効果が得られる。
【0091】
なお、図8(c)および図10は、「画像変形なし」の場合を示している。しかし、図示は省略するが、縮小、移動、回転などの画像変形が施される場合にあっても、変形された画像の例えば高輝度箇所で動きや絵画調のような特殊な画像効果が強く表れるようになる。
【0092】
<2.変形例>
なお、上述の図1に示す画像処理装置100においては、変換座標出力部101からは、どのような画像変形を行うかを示す画像変形パラメータに基づいて、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標(X,Y座標)が出力される。そのため、レンダリング部108で得られる出力画像データVoutは、画像変形パラメータが示す画像変形が施された出力画像を表示できるものとなる。しかし、この発明は、画像変形の機能を持たない画像処理装置にも適用できる。
【0093】
図11は、画像変換機能を持たない画像処理装置100Aの構成例を示している。この図11において、図1と対応する部分には同一符号を付し、適宜その詳細説明を省略する。この画像処理装置100Aは、変換座標出力部101Aと、キー信号生成部103と、キー信号選択/合成部104と、フィルタ係数出力部107Aと、レンダリング部108を有している。
【0094】
変換座標出力部101Aでは、出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像のX,Y座標が出力される。この変換座標出力部101Aには、図1に示す画像処理装置100の変換座標出力部101とは異なり、画像変形パラメータは供給されない。そのため、この変換画像出力部101Aからは、図1に示す画像処理装置100の変換座標出力部101において、「画像変形なし」の場合と同様のX,Y座標が出力される。つまり、変換座標出力部101Aからは、出力画像の各ピクセルに対して、そのピクセルの座標(x,y)と同じ入力画像の座標(X,Y)が出力される。
【0095】
フィルタ係数出力部107Aには、キー信号選択/合成部104から出力されるキー信号が供給される。このフィルタ係数出力部107Aからは、キー信号選択/合成部105から供給されるキー信号のレベルに応じたフィルタ係数が出力される。このフィルタ係数は画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすためのものとなる。
【0096】
フィルタ係数出力部107Aでは、図1に示す画像処理装置100において、縮小率選択/合成部106からフィルタ係数出力部107にキー信号縮小率化部105で得られる縮小率が供給される場合と同様のフィルタ係数が出力される。この場合、図1に示す画像処理装置100においてキー信号縮小率化部105の処理が省略されたものと考えることができる。
【0097】
レンダリング部108には、入力画像データVinが供給されると共に、フィルタ係数出力部107Aから出力されるフィルタ係数および変換座標出力部101Aから出力されるX,Y座標が供給される。このレンダリング部108では、入力画像データVinに対して、フィルタ係数出力部107Aから出力されるフィルタ係数を用いたフィルタリングが施される。そして、レンダリング部108では、出力画像の各ピクセルに対応して、入力画像データVinの各画素データのうち、変換座標出力部101Aから出力されるX,Y座標に対応した画素データが用いられ、出力画像データVoutを構成する画素データが得られる。
【0098】
この図11に示す画像処理装置100Aのその他は、図1に示す画像処理装置100と同様に構成され、同様の動作をする。
【0099】
この図11に示す画像処理装置100Aにおいては、図1に示す画像処理装置100とは異なって、画像変形の処理は行われない。しかし、フィルタ係数出力部107Aからレンダリング部108に供給される入力画像の各ピクセルに対応したフィルタ係数は、ピクセル毎のキー信号のレベルに応じたものとなる。そのため、レンダリング部108では、入力画像の各ピクセルに対応して、ピクセル毎のキー信号のレベルに応じたフィルタ係数で、入力画像データVinにローパスのフィルタリングが施される。そのため、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことが可能となる。
【0100】
また、上述していないが、例えば、図1、図11に示す画像処理装置100,100Aにおいて、キー信号生成部103で生成されるキー信号(KEY信号)を、所定の時間単位、例えば1フレームあるいは複数フレームの単位などで加工することも考えられる。この場合、キー信号生成部103は、入力画像データVinに基づいて生成されたキー信号を、所定の時間単位で加工して出力する。この意味で、キー信号生成部103は、キー信号加工部を構成する。
【0101】
キー信号生成部103は、キー信号の加工処理として、例えば入力画像データVinに基づいて生成されたキー信号に加算するオフセット値を、所定の時間単位で変化させる。あるいは、キー信号生成部103は、キー信号の加工処理として、例えば、入力画像データVinに基づいて生成されたキー信号に乗算する係数値を、所定の時間単位で変化させる。
【0102】
このようにキー信号生成部103で生成されるキー信号が所定の時間単位で加工されることで、フィルタ係数出力部107Aから出力されるキー信号のレベルに応じたフィルタ係数が所定の時間単位で変化したものとなる。そのため、画像の特定箇所にもたらされる動きや絵画調のような特殊な画像効果を所定の時間単位で変化させることができる。
【0103】
なお、キー信号の加工処理は、上述したようにキー信号生成部103で生成されるキー信号に対して行う他に、外部キー信号(外部KEY信号)に対して、あるいはキー信号選択/合成部104から出力されるキー信号に対して行う構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
この発明は、画像の特定箇所に動きや絵画調のような特殊な画像効果をもたらすことができ、例えば放送局等の映像編集システム等に適用できる。
【符号の説明】
【0105】
100,100A・・・画像処理装置
101,101A・・・変換座標出力部
102・・・縮小率算出部
103・・・キー信号生成部
104・・・キー信号選択/合成部
105・・・キー信号縮小率化部
106・・・縮小率選択/合成部
107,107A・・・フィルタ係数出力部
108・・・レンダリング部
108Y・・・輝度データ処理部
108C・・・色差データ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標を出力する変換座標出力部と、
キー信号を用いて、上記入力画像のピクセル単位で、該キー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数を出力するフィルタ係数出力部と、
入力画像データに上記フィルタ係数出力部から出力されるフィルタ係数でフィルタリングを施し、上記出力画像の各ピクセルに対応して、上記フィルタリングが施された後の入力画像データを構成する各画像データのうち、上記変換座標出力部から出力される座標に対応した画素データを用いて出力画像データを構成する画素データを得る画像処理部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
上記入力画像データは輝度データおよび色差データを含み、
上記画像処理部は、上記輝度データの処理を行う輝度データ処理部と、上記色差データの処理を行う色差データ処理部とを有し、
上記輝度データ処理部および上記色差データ処理部のいずれか、または双方において、上記フィルタ係数出力部から出力されるフィルタ係数でローパスのフィルタリングが施される
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記入力画像データに基づいて、キー信号を生成するキー信号生成部をさらに備え、
上記フィルタ係数出力部は、上記キー信号生成部で生成されたキー信号を用いて、上記フィルタ係数を出力する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記フィルタ係数出力部は、上記入力画像データとは異なる他の画像データに基づいて生成された外部キー信号を用いて上記フィルタ係数を出力する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記他の画像データは、撮影されて得られた自然画像の画像データまたは人工的に作成された人工画像の画像データである
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記入力画像データに基づいて、キー信号を生成するキー信号生成部と、
上記キー信号生成部で生成されたキー信号および上記入力画像データとは異なる画像データに基づいて生成された外部キー信号のいずれか、または双方が合成されて得られたキー信号を出力するキー信号出力部とをさらに備え、
上記フィルタ係数出力部は、上記キー信号出力部から出力されたキー信号を用いて、上記フィルタ係数を出力する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記フィルタ係数出力部で用いられるキー信号を所定の時間単位で加工するキー信号加工部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
上記変換座標出力部から出力される座標に基づいて縮小率を算出する縮小率算出部と、
上記キー信号を用い、該キー信号のレベルに応じた縮小率を出力するキー信号縮小率化部をさらに備え、
上記フィルタ係数出力部は、上記縮小率算出部で算出される縮小率と上記キー信号縮小率化部から出力される縮小率とが合成されて得られた縮小率に応じたフィルタ係数を出力する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
上記変換座標出力部から出力される座標に基づいて縮小率を算出する縮小率算出部と、
上記キー信号を用い、該キー信号のレベルに応じた縮小率を出力するキー信号縮小率化部と、
上記縮小率算出部で算出される縮小率および上記キー信号縮小率化部から出力される縮小率のいずれか、または双方が合成されて得られた縮小率を出力する縮小率出力部をさらに備え、
上記フィルタ係数出力部は、上記縮小率出力部から出力される縮小率に応じたフィルタ係数を出力する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
出力画像のピクセル単位で、対応する入力画像の座標を出力する変換座標出力ステップと、
キー信号を用いて、上記入力画像のピクセル単位で、該キー信号のレベルに応じたローパスのフィルタ係数を出力するフィルタ係数出力ステップと、
入力画像データに上記フィルタ係数出力ステップで出力されるフィルタ係数でフィルタリングを施し、上記出力画像の各ピクセルに対応して、上記フィルタリングが施された後の入力画像データを構成する各画像データのうち、上記変換座標出力ステップで出力される座標に対応した画素データを用いて出力画像データを構成する画素データを得る画像処理ステップと
を備える画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109280(P2011−109280A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260407(P2009−260407)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】