説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】観察距離が変化しても高輝度の蛍光領域を変化させることなく表示し、観察の定量性を向上する。
【解決手段】被写体Aに照明光および励起光を照射する照明部4と、被写体Aにおいて発生した蛍光を撮影して蛍光画像Gを取得する蛍光撮像部5と、被写体Aから戻る戻り光を撮影し戻り光画像Gを取得する戻り光撮像部5と、取得された蛍光画像Gおよび戻り光画像Gに、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するカラー画像生成部18と、生成された複数のカラー画像を合成する画像合成部20とを備え、カラー画像生成部18が、蛍光画像Gおよび戻り光画像Gの少なくとも一方に、指数関数に近似させられる蛍光画像Gと戻り光画像Gとの距離特性の指数を一致させる補正処理を施す画像処理装置6を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同一の被写体について取得した蛍光画像および反射光画像に異なる表示色を割り当てて合成し、同一の画面に表示する画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、蛍光画像と反射光画像の輝度の相違によって、蛍光が相対的に高輝度の領域には、反射光が相対的に高輝度の領域とは異なる色が表示されることになり、高輝度の蛍光領域が際立って表示されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5590660号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被写体から発せられる蛍光と、被写体の表面において反射して戻る反射光とでは、内部散乱か表面散乱かの違いによって、光検出器に取得される光量の距離依存性が相違する。このため、同じ被写体を観察している場合においても、対物レンズと被写体との間の距離(観察距離)が変化すると、光検出器に取得される蛍光の光量と反射光の光量の比率が変化し色が変化するという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、観察距離が変化しても光検出器に取得される蛍光の光量と反射光の光量の比率の変化を抑えることにより色の変化を少なくし、観察の精度を向上することができる画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、被写体に照明光および励起光を照射する照明部と、該照明部からの励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して蛍光画像を取得する蛍光撮像部と、前記照明部からの照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影し戻り光画像を取得する戻り光撮像部と、前記蛍光撮像部により取得された蛍光画像および前記戻り光撮像部により取得された戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するカラー画像生成部と、該カラー画像生成部により生成された複数のカラー画像を合成する画像合成部とを備え、前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像および前記戻り光画像の少なくとも一方に、指数関数に近似させられる前記蛍光画像と前記戻り光画像との距離特性の指数を一致させる補正処理を施す画像処理装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、照明部から発せられた照明光が被写体に照射されることにより、被写体からの戻り光が戻り光撮像部により撮影されて戻り光画像が取得され、照明部からの励起光が被写体に照射されることにより、被写体において発生した蛍光が蛍光撮像部において撮影されて蛍光画像が取得される。取得された戻り光画像および蛍光画像はカラー画像生成部において異なる色情報を付与されて複数のカラー画像が生成される。ここで、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するとは、例えば、RGB色空間を構成するRGBそれぞれの次元の情報に対して、蛍光画像または戻り光画像を割り当てることを言う。生成された複数のカラー画像は画像合成部に入力されることにより合成される。
【0008】
この場合において、カラー画像生成部は、蛍光画像および戻り光画像の少なくとも一方に、補正処理を施すことにより、蛍光画像と戻り光画像との距離特性の指数を一致させる。これにより、同一の被写体について、蛍光画像および戻り光画像を撮影する被写体までの距離が変化した場合であっても、蛍光画像および戻り光画像に同等の変化を生じさせ、画像合成部において合成されたカラー画像の色情報の比率の変化を全画面に渡って均一化し、観察の定量性を向上することができる。
【0009】
上記発明においては、前記色情報が、R成分、G成分およびB成分であってもよい。
このようにすることで、それぞれ異なる色情報が付与された複数のカラー画像が合成され、色空間上において、蛍光の強度の強い部分と戻り光の強度が強い部分が異なる色を有する合成画像が生成される。例えば、病変部に特異的に吸着する蛍光薬剤を付与した後に励起光を照射する場合には、蛍光強度の強い領域として病変部を表示することができ、そのような病変部が異なる色を有する合成画像を生成することができ、観察容易性を向上することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数を、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数で除算して得られた第3の指数で前記戻り光画像の階調値を累乗してもよい。
このようにすることで、蛍光画像の距離特性および戻り光画像の距離特性を第1の指数による指数関数に統一することができ、距離特性の差を低減して観察の定量性を向上することができる。
ここで、蛍光画像の距離特性および戻り光画像の距離特性とは、励起光により発光している被写体から撮像部までの距離による受光される蛍光の光量の特性、および照明光により照明された被写体から撮像部までの距離により受光される戻り光の光量の特性をそれぞれ意味している。
【0011】
また、上記発明においては、前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数で、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数を除算して得られた第4の指数で前記蛍光画像の階調値を累乗してもよい。
このようにすることで、蛍光画像の距離特性および戻り光画像の距離特性を第2の指数による指数関数に統一することができ、距離特性を相互に比例する関係にすることでその差を低減して観察の定量性を向上することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数の逆数で前記蛍光画像の階調値を累乗するとともに、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数の逆数で前記戻り光画像の階調値を累乗してもよい。
このようにすることで、蛍光画像の距離特性および戻り光画像の距離特性を1次関数にして、相互に比例する関係にすることができ、距離特性の差を低減して観察の定量性を向上することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記カラー画像生成部が、異なる距離において取得された前記戻り光画像の階調値を第5の指数で累乗した値で前記蛍光画像の階調値を除算した値が同一となる第5の指数で前記戻り光画像の階調値を累乗してもよい。
これによっても同様に、第5の指数を戻り光画像の階調値に累乗することで距離特性の差を低減して観察の定量性を向上することができる。
【0014】
また、本発明は、励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して得られた蛍光画像と、照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影して得られた戻り光画像とを入力するステップと、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数を、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数で除算して得られた第3の指数で、前記戻り光画像の階調値を累乗して補正処理を施すステップと、前記蛍光画像および前記戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するステップと、補正処理が施された複数のカラー画像を合成するステップとを含む画像処理方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して得られた蛍光画像と、照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影して得られた戻り光画像とを入力するステップと、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数で、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数で除算して得られた第4の指数で、前記蛍光画像の階調値を累乗して補正処理を施すステップと、前記蛍光画像および前記戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するステップと、補正処理が施された複数のカラー画像を合成するステップとを含む画像処理方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して得られた蛍光画像と、照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影して得られた戻り光画像とを入力するステップと、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数の逆数を前記蛍光画像の階調値に累乗するとともに、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数の逆数で前記戻り光画像の階調値を累乗して補正処理を施すステップと、前記蛍光画像および前記戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するステップと、補正処理が施された複数のカラー画像を合成するステップとを含む画像処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、観察距離が変化しても高輝度の蛍光領域を変化させることなく表示し、観察の定量性を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を含む内視鏡装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の内視鏡装置のフィルタを説明する図である。
【図3】標準試料を用いて作成した蛍光画像の階調値の距離特性のグラフを示す図である。
【図4】標準試料を用いて作成した戻り光画像の階調値の距離特性のグラフを示す図である。
【図5】図3および図4のグラフを作成する手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る画像処理方法を説明するフローチャートである。
【図7】図1の内視鏡装置の変形例を示す全体構成図である。
【図8】図1の内視鏡装置の他の変形例を示す全体構成図である。
【図9】図1の内視鏡装置の他の変形例を示す全体構成図である。
【図10】図1の内視鏡装置の他の変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る画像処理装置および画像処理方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る画像処理装置6は、内視鏡装置1に備えられている。
内視鏡装置1は、図1に示されるように、体内に挿入される細長い挿入部2と、光源部(照明部)3と、該光源部3からの照明光および励起光を挿入部2の先端から観察対象(被写体)Aに向けて照射する照明ユニット(照明部)4と、挿入部2の先端に設けられ、観察対象Aである生体組織の画像情報を取得する撮像ユニット(蛍光撮像部、戻り光撮像部)5と、挿入部2の基端側に配置され、撮像ユニット5により取得された画像情報を処理する本実施形態に係る画像処理装置6と、該画像処理装置6により処理された画像Gを表示するモニタ7とを備えている。
【0020】
光源部3は、キセノンランプ8と、該キセノンランプ8から発せられた照射光から、励起光(例えば、波長帯域480〜500nm)および照明光(例えば、波長帯域540〜580nm)を切り出すフィルタ9a,9bと、フィルタ9a,9bにより切り出された励起光および照明光を集光するカップリングレンズ10とを備えている。
フィルタ9a,9bは、図2に示されるようなターレット9cに備えられていて、ターレット9cを回転させることにより交互に照射光の光路上に配置されて、励起光とを照明光とを時分割に発生させるようになっている。
【0021】
照明ユニット4は、挿入部2の長手方向のほぼ全長にわたって配置され、カップリングレンズ10によって集光された励起光および照明光を導光するライトガイドファイバ11と、挿入部2の先端に設けられ、ライトガイドファイバ11によって導光されてきた励起光および照明光を拡散させて、挿入部2の先端面2aに対向する観察対象Aに照射する照明光学系12とを備えている。
【0022】
撮像ユニット5は、観察対象Aの所定の観察範囲からの励起光の照射により発生する蛍光および照明光の戻り光を集光する対物レンズ13と、該対物レンズ13によって集光された蛍光および戻り光を撮像するCCDのような撮像素子14とを備えている。図中、符号15は、対物レンズ13によって集光された光から励起光を遮断する(例えば、波長帯域520〜600nmの光だけを透過する)励起光カットフィルタである。
【0023】
本実施形態に係る画像処理装置6は、撮像素子14により取得された画像情報Sから蛍光画像Gおよび戻り光画像Gを生成する画像生成部16と、該画像生成部16から出力される画像G,Gからいずれかを選択するセレクタ17と、該セレクタ17により選択された蛍光画像Gおよび戻り光画像Gを別々に入力させて異なる色情報を付与するR,G,Bフレームメモリ18a,18b,18cと、Gフレームメモリ18bから出力された戻り光画像Gに補正処理を施す補正処理部19と、色情報を付与された蛍光画像Gおよび戻り光画像Gを合成する画像合成部20とを備えている。
【0024】
R,G,Bフレームメモリ18a,18b,18cと補正処理部19により、カラー画像生成部18が構成されている。
符号21は、画像生成部16により生成された画像G,Gに基づいて撮像素子14の露光時間調整を自動的に行う自動露光時間調整部であり、符号22は、ターレット9cを駆動するモータ9dおよびセレクタ17を同期させるタイミングジェネレータである。
【0025】
セレクタ17は、タイミングジェネレータ22が照明光用のフィルタ9aを光軸上に配置するようにモータ9dに指令するタイミングで、画像生成部16から出力されてきた戻り光画像Gをタイミングジェネレータ22の指令に基づいてGフレームメモリ18bに出力し、他のタイミングで出力されてきた蛍光画像GをB,Rフレームメモリ18a,18cに出力するようになっている。
【0026】
補正処理部19は、Gフレームメモリ18bから出力された戻り光画像Gの各画素の階調値を指数aによって累乗するようになっている。累乗値aは、以下のようにして定められている。
【0027】
すなわち、図3、図4に示されるように、撮像素子14により取得された蛍光画像Gを露光時間で除算した規格化蛍光画像G’の距離特性および戻り光画像Gを露光時間で除算した規格化戻り光画像G’の距離特性を用意する。
規格化蛍光画像G’および規格化戻り光画像G’の距離特性は、図5に示されるように、蛍光色素を含有し生体組織に似た光学特性を有する標準試料に対して、対物レンズ13の距離(観察距離)を異ならせつつ(ステップS1)、蛍光画像Gおよび戻り光画像Gを取得し(ステップS2)、規格化演算を行い(ステップS3)、関心領域の階調値の平均値を算出し(ステップS4)、グラフにプロットすること(ステップS5)を繰り返す(ステップS6)ことにより作成する。
【0028】
そして、作成された2つの距離特性のグラフに対して、それぞれ累乗近似を行う(ステップS7)ことにより、規格化蛍光画像G’の距離特性は、図3に示されるように、観察距離の第1の指数a1の指数関数として表され、規格化戻り光画像G’の距離特性は、図4に示されるように、観察距離の第2の指数a2の指数関数として表される。これらの指数a1,a2を用いて、補正処理部19において用いる指数aは、a=a1/a2により求めている(ステップS8)。
【0029】
以下に、さらに詳細に説明する。
規格化蛍光画像G’の距離特性は、上記方法によって、A1=B1×Ca1、規格化戻り光画像G’の距離特性をA2=B2×Ca2と定められる。
ここで、A1:規格化蛍光画像G’の階調値、A2:規格化戻り光画像G’の階調値、B1,B2:定数、C:観察距離である。
【0030】
ここで、
A3=A2 (1)
を算出することを考える。数式(1)中、A3は、補正された規格化戻り光画像G”の階調値である。
【0031】
数式(1)は以下のように変形することができる。
A3=A2=A2(a1/a2)=B2(a1/a2)×Ca1=B2’×Ca1
すなわち、数式(1)を算出することにより、補正された規格化戻り光画像G”の階調値の距離特性の指数を規格化蛍光画像G’の階調値の距離特性の指数に一致させることができる。
【0032】
したがって、補正処理部19においては、指数aを記憶しておき、入力されてくる戻り光画像Gの階調値を指数aで累乗することにより、戻り光画像Gの階調値の距離特性の指数を蛍光画像Gの階調値の距離特性の指数に概略一致させることができるようになっている。
【0033】
蛍光薬剤としては、蛍光色素であるFITC(Fluoresceinisothiocyanate)に、腫瘍細胞表面に特異的に発現する受容体に結合する抗体をつけたもの、例えば、CD44抗体を挙げることができる。
【0034】
このように構成された本実施形態に係る画像処理装置6を用いた画像処理方法について図6を参照して説明する。
撮像素子14により取得された画像情報Sが入力される(入力ステップS11)と、画像生成部16において蛍光画像Gおよび戻り光画像Gとして生成され(生成ステップS12)、生成された蛍光画像Gと戻り光画像Gが異なるフレームメモリ18a〜18cに入力されることにより色情報が付与される(色付与ステップS13)。Gフレームメモリ18bに入力された戻り光画像Gは、補正処理部19において指数aで累乗されることにより補正処理が行われる(補正ステップS14)。そして、R,Bフレームメモリ18a,18cから出力された蛍光画像GとGフレームメモリ18bから出力され補正処理部19において補正処理された戻り光画像G”とが画像合成部20において合成され(合成ステップS15)、モニタ7に向けて出力される。
【0035】
補正処理部19においては、戻り光画像Gの階調値を指数aで累乗する補正が行われる。
蛍光画像Gの距離特性は指数a1の指数関数で近似され、戻り光画像Gの距離特性は指数a2の指数関数で近似されるが、補正された戻り光画像G”と蛍光画像Gはいずれも、指数a1による指数関数となり、両者は比例関係となる。したがって、対物レンズ13と観察対象Aとの距離が変化しても、蛍光画像Gと補正された戻り光画像G”とは一定の比率を有して変化する。すなわち、合成されたカラー画像は、観察距離の変化に拘わらず一定の比率の色を有し、例えば、蛍光画像Gの蛍光強度の高い領域(例えば、病変部)を常に同様に表示し続けることができる。
【0036】
このように、本実施形態に係る画像処理装置6および画像処理方法によれば、観察距離による蛍光強度の変化の割合と、戻り光強度の変化の割合とが一致するので、観察距離が変化しても、色分けされて表示される合成画像の配色割合が変化しない。したがって、定量性の高い観察を行うことができるという利点がある。
【0037】
なお、本実施形態においては、補正処理部19に指数a=a1/a2を記憶しておき、入力されてくる戻り光画像Gを補正処理部19に入力し、指数aで累乗することとしたが、これに代えて、図7に示されるように、補正処理部19に指数aの逆数a2/a1を記憶しておき、蛍光画像Gを補正処理部19に入力し、指数a2/a1で累乗することにしてもよい。
【0038】
また、図8に示されるように、2種類の補正処理部19a,19bを設け、一方の補正処理部19aには、指数1/a1を記憶し、他方の補正処理部19bには指数1/a2を記憶しておくことにしてもよい。このようにすることで、補正処理部19aは入力されてくる蛍光画像Gを指数1/a1で累乗し、他方の補正処理部19bは入力されてくる戻り光画像Gを指数1/a2で累乗し、それぞれの距離特性を1次関数に近似させることができる。これにより、蛍光画像Gの階調値の距離特性と戻り光画像Gの階調値の距離特性とを比例関係にすることができ、観察距離が変化しても観察結果が変化せず、精度の高い観察を行うことができるという利点がある。
【0039】
また、内視鏡装置1の挿入部2は観察方法や観察条件を変更するときに適宜着脱されるが、挿入部2の個体差による距離特性の相違を補償するために、図9に示されるように、挿入部2側に識別情報保持部23を設け、画像処理装置6側に識別情報読取部24を設け、補正処理部19が、識別情報と指数とを対応づけて記憶しておくことにしてもよい。挿入部2が画像処理装置6に接続されたときに、識別情報保持部23に記憶されている識別情報を識別情報読取部24が読み取って補正処理部19に送り、補正処理部19が識別情報に適した指数aで戻り光画像Gを累乗することにより、挿入部2の個体差による距離特性の相違を補償して、挿入部2が交換されても精度の高い観察を行うことができるという利点がある。
【0040】
また、本実施形態においては、単一の撮像素子14を用いて時分割に蛍光画像Gと戻り光画像Gとを取得することとしたが、これに代えて、図10に示されるように、照明光と励起光とを観察対象Aに同時に照射し、観察対象Aから戻る戻り光と蛍光とをダイクロイックミラー25で分割して、2つの異なる撮像素子14a,14bにより撮影することとしてもよい。符号16aは撮像素子14aによって取得された画像信号Sから蛍光画像Gを生成する蛍光画像生成部、符号16bは撮像素子14bによって取得された画像信号Sから戻り光画像Gを生成する戻り光画像生成部、符号9は励起光(例えば、730〜750nm)および照明光(630〜650nm)を切り出すフィルタである。
【0041】
また、本実施形態においては、標準試料に対して観察距離を異ならせつつ複数の蛍光画像Gおよび戻り光画像Gを取得し、これらをプロットすることで得られた距離特性から指数aを算出することとした。これに代えて、2つの異なる観察距離d,dにおいて、それぞれ蛍光画像Gおよび戻り光画像Gを取得し、その階調値(例えば、所定の関心領域の階調値の平均値)G(d),G(d),G(d),G(d)を用いて、以下の式(2)が成立するように指数aを求めることとしてもよい。
【0042】
a=log(G(d)/G(d))/log(G(d)/G(d)) (2)
これにより、近似計算を行うことなく指数aを直接算出することができる。
また、2つの標準試料を用いて、これらの標準試料が同一視野内に配置されるようにして撮像素子14により撮影することにより、1回の撮影によって上記指数aを得ることができる。
【0043】
また、撮像素子14の露光時間調整を自動的に行う自動露光調整部21に代えて、撮像部のゲインを調節する自動ゲイン調節(AGC)25や、光源部3からの照射光の強度を自動調節する自動調光を行うことにしてもよい。
また、補正処理部19に指数a,a1,a2を記憶して、その都度累乗計算を行うことに代えて、蛍光画像Gおよび/または戻り光画像Gの階調値と、該階調値を指数a,a1,a2で累乗した累乗値とを対応づけたルックアップテーブル(図示略)を記憶しておき、入力されてきた蛍光画像Gおよび/または戻り光画像Gの階調値に応じて、累乗値を出力することにしてもよい。
【0044】
また、R、G、B原色信号を画像信号に割り付けるだけではなく、画像合成部20にカラーマトリクス回路を用いて、蛍光輝度の高い領域と低い領域との色づけを変更することにしてもよい。
また、色情報を付与するR,G,Bフレームメモリ18a〜18cと補正処理を施す補正処理部19との順序は入れ替えてもよい。
【符号の説明】
【0045】
A 観察対象(被写体)
蛍光画像
戻り光画像
4 照明ユニット(照明部)
5 撮像ユニット(蛍光撮像部、戻り光撮像部)
6 画像処理装置
18 カラー画像生成部
20 画像合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に照明光および励起光を照射する照明部と、
該照明部からの励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して蛍光画像を取得する蛍光撮像部と、
前記照明部からの照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影し戻り光画像を取得する戻り光撮像部と、
前記蛍光撮像部により取得された蛍光画像および前記戻り光撮像部により取得された戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するカラー画像生成部と、
該カラー画像生成部により生成された複数のカラー画像を合成する画像合成部とを備え、
前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像および前記戻り光画像の少なくとも一方に、指数関数に近似させられる前記蛍光画像と前記戻り光画像との距離特性の指数を一致させる補正処理を施す画像処理装置。
【請求項2】
前記色情報が、R成分、G成分およびB成分である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数を、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数で除算して得られた第3の指数で前記戻り光画像の階調値を累乗する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数で、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数を除算して得られた第4の指数で前記蛍光画像の階調値を累乗する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記カラー画像生成部が、前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数の逆数で前記蛍光画像の階調値を累乗するとともに、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数の逆数で前記戻り光画像の階調値を累乗する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記カラー画像生成部が、異なる距離において取得された前記戻り光画像の階調値を第5の指数で累乗した値で前記蛍光画像の階調値を除算した値が同一となる第5の指数で前記戻り光画像の階調値を累乗する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して得られた蛍光画像と、照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影して得られた戻り光画像とを入力するステップと、
前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数を、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数で除算して得られた第3の指数で、前記戻り光画像の階調値を累乗して補正処理を施すステップと、
前記蛍光画像および前記戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するステップと、
補正処理が施された複数のカラー画像を合成するステップとを含む画像処理方法。
【請求項8】
励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して得られた蛍光画像と、照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影して得られた戻り光画像とを入力するステップと、
前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数で、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数で除算して得られた第4の指数で、前記蛍光画像の階調値を累乗して補正処理を施すステップと、
前記蛍光画像および前記戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するステップと、
補正処理が施された複数のカラー画像を合成するステップとを含む画像処理方法。
【請求項9】
励起光の照射により被写体において発生した蛍光を撮影して得られた蛍光画像と、照明光の照射により被写体から戻る戻り光を撮影して得られた戻り光画像とを入力するステップと、
前記蛍光画像の距離特性を累乗近似して得られる第1の指数の逆数を前記蛍光画像の階調値に累乗するとともに、前記戻り光画像の距離特性を累乗近似して得られる第2の指数の逆数で前記戻り光画像の階調値を累乗して補正処理を施すステップと、
前記蛍光画像および前記戻り光画像に、色空間を構成する異なる色情報を付与して複数のカラー画像を生成するステップと、
補正処理が施された複数のカラー画像を合成するステップとを含む画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−11082(P2012−11082A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152210(P2010−152210)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】