画像処理装置および画像処理方法
【課題】 1つのチップに複数のノズル列が備えられたつなぎヘッドを用いる場合に、つなぎヘッドの重複部のレジずれによる濃度変化を抑制することを目的とする。
【解決手段】 つなぎヘッドの同一の重複部を構成する第1チップと第2チップに、前記複数のプレーンの画像データを分配する際に、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせる。
【解決手段】 つなぎヘッドの同一の重複部を構成する第1チップと第2チップに、前記複数のプレーンの画像データを分配する際に、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル列をノズルの配列する方向と交差する方向に重複部を有するように配列して記録ヘッドを用いて画像を記録するために、前記重複部に対応する領域の多値画像データを処理する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルを配列したノズル列を備えたチップを千鳥状に配列した記録ヘッド、所謂つなぎヘッドを用いた記録装置が知られている。つなぎヘッドを用いた記録装置としては、記録ヘッドを記録素子の配列方向と交差する方向に走査させるともに、記録用紙(記録媒体)を記録素子の配列方向に搬送して記録を行うシリアル方式の記録装置が知られている。他の記録方式の記録装置として、記録用紙の記録幅全体に渡ってノズル(吐出口)を配列した記録ヘッドを固定し、記録素子の配列方向と交差する方向に記録用紙を搬送させて記録を行うフルラインタイプの記録装置も知られているである。特に、フルラインタイプの記録装置では、記録媒体の記録幅全体に渡ってノズル(吐出口)を配列した記録ヘッドを用い、記録媒体の搬送に伴って記録幅分の画像記録を連続して行うことで、高速に記録を行うことができる。
【0003】
しかしながら、つなぎヘッドには次の課題がある。すなわち、つなぎヘッドではノズル配列方向と交差する方向にチップ同士が重複する重複部が存在するが、この重複部において様々な原因によりチップ間のレジストレーション(ドットの相対的な記録位置の関係)がずれることがある。そうすると、重複部で濃度ムラや粒状性のムラが発生し、画像の品位を低下させてしまう。チップ間のレジストレーションがずれる原因には、チップの取り付け精度の問題や記録媒体の搬送精度の問題がある。
【0004】
特許文献1には、つなぎヘッドの重複部分に生じるスジ状の画像欠陥を抑制する方法として、各チップの重複部の記録デューティをマスクにより相補的に増減させる方法(以下、グラデーションマスク)が提案されている。
【0005】
また、レジストレーションのずれ(以下、レジずれとも記す)を補償する技術として、特許文献2には、マルチパス記録におけるパス間のレジずれ時における「ロバスト性」を高めるための画像データの処理方法が開示されている。ここで、「ロバスト性」とは様々な誤差に起因する濃度ムラ等に対する耐性を意味する。同文献によれば、様々な記録条件の変動に伴って引き起こされる画像濃度の変動は異なる記録走査に対応する2値の画像データが互いに完全な補完関係にあることに起因することに着目している。そして、上記補完関係が低減されるように異なる記録走査に対応した画像データを生成すれば、「ロバスト性」に優れたマルチパス記録を実現できる、と認識している。
【0006】
そこで、特許文献1の技術では、画像データを2値化前の多値データの状態で複数のプレーンに分割し、分割後の多値データをそれぞれ独立に2値化している。この構成により、異なる記録走査に対応した画像データ同士が互いにずれて記録されても大きな濃度変動が起こらないようにしている。尚、「プレーン」について補足すると、元の画像データから複数の記録走査や複数のノズル列に対応して画像データを分割する場合、元の画像データは分割された複数の画像データの重ねあわせと考えることができる。そのため、分割された各画像データは1つの「プレーン」と捉えることができる。上記の特許文献1では、1回の記録走査(パス)が1つのプレーンに対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−57965号公報
【特許文献2】特開2000−103088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の発明によれば、パス間でレジずれが発生した場合にも大きな濃度変動が起こらないようにすることができるものの、この特許文献2には、つなぎヘッドの重複部での濃度変化を抑制する方法が明示されていなかった。
【0009】
また、近年では、1つのチップに複数のノズル列を配列させたつなぎヘッドも提案されているが、特許文献2には、このようなつなぎヘッドにおいて、重複部の濃度変動を抑制する手法について何ら言及されていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、つなぎヘッドの重複部のレジずれによる濃度変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配手段と、前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配手段とを有し、前記第2分配手段は、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、つなぎヘッドの重複部のレジずれによる濃度変化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の概略図。
【図2】図1のインクジェット記録装置の制御回路の概略ブロック図。
【図3】図1のインクジェット記録装置でのプリント動作を説明する図。
【図4】図1のインクジェット記録装置のプリント部の概略図。
【図5】第1の実施形態の画像データの処理工程を示す図。
【図6】多値の画像データを各ノズル列へ分配方法を説明する図。
【図7】量子化部J07までに実行される処理の具体例を示した図。
【図8】インデックス展開部J08で用いられる処理を説明する図。
【図9】各プレーンのインデックス展開後の画像データの一例を示す図。
【図10】各プレーンの画像データを列分配した画像データを示す図。
【図11】同一チップ内のプレーン間で異なるマスクの例を示す図。
【図12】マスク処理の概要を説明するための図。
【図13】図11のマスクで処理された各ノズル列の画像データを示す図。
【図14】各ノズル列の画像データをチップ別に重ねた様子を示す図。
【図15】図14の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示した図。
【図16】チップの位置関係と紙面上のドット配置を示す模式図。
【図17】第1の実施形態のマスクを説明する図。
【図18】第1の実施形態のマスクを用いたマスク処理後の画像データを示す図。
【図19】図18の各ノズル列の画像データをチップ別に重ねた様子を示す図。
【図20】図19の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示した図。
【図21】第1の実施形態における、チップの位置関係と紙面上のドット配置を示す模式図。
【図22】比較例における各チップの各列に適用するマスクを示す図。
【図23】比較例のマスクで処理された各ノズル列の画像データを示す図。
【図24】比較例において、各ノズル列の画像データをチップ別に重ねた様子を示す図。
【図25】図24の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示した図。
【図26】比較例における、チップの位置関係と紙面上のドット配置を示す模式図。
【図27】第2の実施形態のつなぎヘッドの概要を説明するための図。
【図28】第2の実施形態においてプレーンとノズル列の対応を示す図。
【図29】第2の実施形態の画像データの処理工程を示す図。
【図30】第2の実施形態において重複部へのマスク適用例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置、またはプリンタとも記す)の概略図である。図1に示すプリンタ100は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対移動させて記録を行うタイプのインクジェット記録装置である。プリンタ100は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、シート巻取部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出トレイ12、制御部13の各ユニットを備える。記録媒体(シート)は、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。
【0015】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを収納して供給するユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させてしごくことでカールを軽減させる。斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0016】
プリント部4は、搬送されるシートに対して記録ヘッド14によりシートの上に画像を形成するユニットである。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。記録ヘッド14は、シートの最大幅をカバーする範囲に対して、ノズルが形成されたフルラインタイプの記録ヘッドである。複数の記録ヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられており、本例では、Bk(ブラック)、Lc(ライトシアン)、Lm(ライトマゼンタ)、Gy(グレー)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の7色の記録ヘッドが配設されている。ノズルからインクを吐出する方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。
【0017】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像を光学的に読み取って、記録ヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査するユニットである。カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さにカットする機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。情報記録部7は、カットされたシートの裏面にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報を記録するユニットである。乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるユニットである。乾燥部8は、シートを次工程に送り出すための搬送ベルト及び搬送ローラも備えている。
【0018】
シート巻取部9は、両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取るユニットである。シート巻取部9はシートを巻き取るための回転する巻取ドラムを備えている。表面のプリントが済んでカットされていない連続シートは巻取ドラムに一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取ドラムが逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0019】
排出搬送部10は、カッタ部6でカットされ乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に排出トレイ12の異なるトレイに振り分けて排出するユニットである。制御部13は、プリンタ全体の各部の制御を司るユニットである。
【0020】
図2は、プリンタの制御ブロック図を示す。制御部13は、CPU1501、ROM1502、RAM1503、各種I/Oインターフェース1504を備えたコントローラ15及び電源1301を有する。また、制御部13は、後述する画像処理フローを実行する画像処理機能を有する。プリンタの動作は、コントローラ15又はコントローラ15にI/Oインターフェース1504を介して接続されるホストコンピュータ等の外部機器16からの指令に基づいて制御される。
【0021】
外部機器16からの信号を受けると、コントローラ15は記録ヘッドを用いてシートSに記録するための記録データを作成する。作成された記録データはプリントバッファとしてRAM1503内に蓄えられる。さらに、ヘッドドライバ301にプリントバッファ内のデータを転送する。ヘッドドライバ301は各色の記録ヘッドでインク滴を吐出するためのデータに変換を行い、実際に記録動作が実施される。この様にして、コントローラ15は、後述する画像処理フローを実行する画像処理機能を有する。また、本実施形態の画像処理の詳細については、後述する。
【0022】
また、コントローラ15は搬送系モータドライバ302、検出系モータドライバ303などの各種モータドライバを制御し、搬送モータ304やスキャナモータ305などの駆動源を稼動させることによりシートの搬送動作や検出動作を行う。
【0023】
次に、プリント時の基本動作について説明する。片面プリントと両面プリントとでは、プリント動作が異なるので、それぞれについて説明する。図3(a)は、片面プリント時のプリント動作を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートがプリントされて排出トレイ12に排出されるまでの搬送経路を太線で示している。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面のプリントがなされる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。
【0024】
図3(b)は両面プリント時の動作を説明するための図である。両面プリントでは、表面プリントシーケンスに次いで裏面プリントシーケンスを実行する。表面プリントシーケンスでは、先ず、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6ではカット動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路ではなく、シート巻取部9の側の経路にシートが導入される。導入されたシートは、順方向(図面では逆時計回り方向)に回転するシート巻取部9の巻取ドラムに巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端がカットされる。カット位置を基準に、搬送方向下流側(プリントがされた側)の連続シートは乾燥部8を経てシート巻取部9でシート後端(カット位置)まで全て巻き取られる。一方、カット位置よりも搬送方向上流側の連続シートは、シート先端(カット位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻される。以上で、表面プリントシーケンスが終了する。
【0025】
表面プリントシーケンスが終了すると、裏面プリントシーケンスに切り替わる。裏面プリントシーケンスでは、先ず、シート巻取部9の巻取ドラムが巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)はデカール部2に送り込まれる。デカール部2では先とは逆向きのカール矯正がなされる。これは、巻取ドラムに巻かれたシートは、シート供給部1でのロールとは表裏反転して巻かれ、逆向きのカールとなっているためである。その後は、斜行矯正部3を経て、プリント部4で連続シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。以上で、裏面プリントシーケンスが終了する。
【0026】
次に、プリント部4の構成を説明する。プリント部4には、7色のインクに対応して7つの記録ヘッドが配設されている。各記録ヘッドの吐出口(ノズル)の配列は同一であるため、以下では、1つの記録ヘッドに着目して説明する。
【0027】
図4は、記録ヘッド(つなぎヘッド)のノズル配列を説明する概略図である。記録ヘッド14には、第1チップ31、第2チップ32を含む複数のチップがノズル配列方向(本例では、搬送方向と交差する方向)に千鳥状に並べて配置されている。第1チップ31,第2チップ32には、2列のノズル列A、Bが搬送方向に沿って配置されており、各ノズル列におけるノズル間隔は1200dpiである。また、第1チップ31と第2チップ32は、搬送方向方向において一部のノズルが重複して配置され、重複部を構成している。本例において、重複部のノズル数は16ノズルであるが、重複部のノズル数はこれに限定されるものではない。
【0028】
図5は、多値入力画像データをヘッド駆動データに変換し、この駆動データに基づいて各チップのノズルからインクを吐出するまでの画像データの処理工程を示している。図5(a)は第1チップの画像データ処理フローを示しており、図5(b)は第2チップの画像データ処理フローを示している。図5(a)と図5(b)の画像処理フローで異なる点は、インデックス展開の部分とマスク処理の部分を除いて同じであるので、図5(a)の第1チップの画像データ処理フローについて説明する。
【0029】
先ず、画像入力部J01に、外部に接続されたホスト装置などから記録すべき多値画像データが入力される。本実施形態において、多値画像データの入力解像度は600dpi×600dpiであり、1画素につき8bit256階調で表現される輝度データ(R,G,B)となっている。次に、色変換部J02は、画像入力部J01に入力された多値画像データを、記録装置が使用するインク色に対応した多値の濃度データに変換される。ここでは、各色8bit256階調のデータに変換される。尚、以降の処理は各インク色で共通である。
【0030】
階調補正部J03は、各インク色に分解された多値データに対して階調補正を行う。ムラ補正部J04は、各インク色の多値データを多値データに変換するルックアップテーブルを用いて多値のインク色データの値を変換し、ノズル特性のばらつきに起因したムラの補正を行う。画像データ分割部J05は、第1分配手段に対応し、多値のインク色データを2つのプレーン1、プレーン2に分割する。本例の画像データ分割部J05は、多値のインク色データの値(階調値)によらず、プレーン1:プレーン2=1:1という分割比率に従って画像データを分割する。
【0031】
量子化部J07は、画像データ分割部J05によって分割された多値の画像データJ06それぞれのプレーンに対し量子化処理を行う。ここでは、各プレーンに対し128階調のデータを8階調に低階調化する。インデックス展開部J08は、量子化部J07で低階調化された多値の画像データを、インデックス展開テーブルを参照しながらプレーン毎にそれぞれ2値化処理を行う。列分配処理部J09は、インデックス展開された1200dpi×1200dpiの2階調のデータを各ノズル列に分配する。
【0032】
次に、マスク処理部J11は、各ノズル列に分配されたデータについて、重複部分をマスク処理する。上記の一連の処理を経て、第1チップおよび第2チップのA列およびB列で記録するための2値のデータが完成する。
【0033】
次に、図6から図10を用いて、図5の画像データ処理フローの詳細な説明を行う。図6は、画像データ分割部J05によって分割された多値の画像データ各ノズル列への分配を説明する図である。図6に示すように、多値の画像データJ06のうち、プレーン1用の画像データ50はA列に振り分けられる。一方、プレーン2用の画像データ51はB列に振り分けられる。
【0034】
次に、図7は画像データ分割部J05〜量子化部J07で実行される処理の具体例を示した図である。図7は、画像データ分割部J05に、例えば600dpi×600dpiの解像度で4画素×4画素で構成される記録すべき多値の画像データ(101301)が入力されときに(a)、このデータを2分割する冷を示している。まず、画像データ分割部J05は、多値の画像の画像データ(101301)はプレーン1用の多値の画像データ(101302)とプレーン2用の多値の画像データ(101305)とに分割する(b)。この際、各画素の画像データの階調値に応じて、多値の画像データを2つのプレーンへの分割比率を異ならせることも可能である。その一例としては、低階調部分ではプレーン1:プレーン2=2:1という分割比率に従って画像データを分割し、高階調部分ではプレーン1:プレーン2=1:1という分割比率に従って画像データを分割する。
【0035】
次に、量子化部J07では、画像分割部J05によって分割された多値の画像データ(101302、101305)のそれぞれに対して、誤差拡散法による量子化(低階調化)処理を行う(c)。ここでは、8階調に低階調化を行うものとする。
【0036】
これにより、プレーン1用の低階調化されたデータ(101304)とプレーン2用の低階調化されたデータ(101307)が生成される(d)。尚、本例では、量子化の手段として誤差拡散法を用いているが、他の手段であっても良い。ただし、これらの2つのプレーン間で量子化処理のやり方を異ならせることが好ましく、特に低階調部分では、2つのプレーンを重ねた場合にドット同士が重なる箇所と重ならない箇所が並存するように、量子化処理を行うことが好ましい。例えば、量子化処理として誤差拡散法を用いるのであれば、閾値や誤差分配係数をプレーン間で異ならせるなどして、同じ階調値の画像データが入力されても、量子化処理の結果が同値にならないように配慮することが望ましい。
【0037】
例えば、図7に示したように、プレーン1用多値データ(101302)に対して、誤差拡散係数Aを用いて誤差拡散を行う。、また、プレーン2用多値データ(101305)に対して、誤差拡散係数Aとは異なる誤差拡散係数Bを用いて誤差拡散を行うことにより、量子化後のドット配置をプレーン間で異ならせることができる。尚、図7において※は注目画素を表す。
【0038】
図5に戻るに、量子化部J07で低階調化された多値の画像データは、インデックス展開部J08によって、インデックス展開テーブルを参照しながらプレーン毎にそれぞれ2値化処理を行われる。ここでは、600dpi×600dpiで8階調のデータを1200dpi×1200dpiの3階調のデータに変換する。図8は、インデックス展開部J08で用いられるインデックス展開テーブルの概要を表している。図8(a)はインデックス展開部J07に入力される600dpi×600dpiで8階調の信号値を表している。図8(b)および(c)は、インデックス展開部J07に入力される1200dpi×1200dpiの2階調のテーブルであり、それぞれプレーン1およびプレーン2用のインデックス展開テーブルである。枠内の数字は1200dpi×1200dpiの単位面積に記録されるべきドットの数である。これらのインデックス展開テーブルにより、インデックス展開部J07に入力された600dpi×600dpiで8階調の画像データは、1200dpi×1200dpiの3階調の画像データに変換される。インデックス展開テーブルはプレーン間で同一のものであってもよいが、プレーン間で異なるものであってもよい。また、インデックス展開後の画像データは3階調に限られず、2階調などであってもよい。
【0039】
図9は、重複部における各プレーンのインデックス展開後の画像データの一例を表している。図9(a)はプレーン1の画像データ、図9(b)はプレーン2の画像データであり、1200dpi×1200dpiの解像度で16画像×16画素のサイズを有し、レベル数は3階調である。つまり、1画素にドット2発、ドット1発、ドット0発の3階調で表現される。ここでは、全ての画素でドット1発のデータとなっている。
【0040】
図5に戻るに、インデックス展開された1200dpi×1200dpiの3階調のデータを列分配処理部J09によって各列に分配する。ここでは、ランダムマスクもしくは列分配テーブル等を用いて各列にほぼ均等なドット数になるように分配する。
【0041】
図10は、図9で説明した各プレーンのインデックス展開後の画像データを列分配処理部J09によって列分配した画像データを示している。この列分配処理部J09は、プレーン1の画像データを第1チップのノズル列と、第2チップのノズル列に分配する機能を有しており、第2分配手段に相当する。図10(a)は第1チップのA列の画像データ、図10(b)は第1チップのB列の画像データ、図10(c)は第2チップのA列の画像データ、図10(d)は第2チップのB列の画像データをそれぞれ表している。なお、本実施形態では1プレーンに1列のノズル列が相当しているので、列分配処理部J09の前後で画像データは変化がない。
【0042】
次に、マスク処理部J11は、重複部の各列に分配されたデータをマスク処理する。本実施形態のマスクについては、図17以降で説明するものとし、まず、本実施形態のマスクの特徴の1つである、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクを適用することについて、説明を行う。図11は、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクの例を示した図である。同図において、黒塗りで示す画素が画像データの記録を許容する“ON”の画素、白塗りで示す画素が画像データの記録を許容しない“OFF”の画素である。図11(a)は第1チップのA列に適用するマスク52、図11(b)は第1チップのB列に適用するマスク53である。同様に、図11(c)は第2チップのA列に適用するマスク54、図11(d)は第2チップのB列に適用するマスク55である。各マスクの大きさは1200dpi×1200dpiで16画素×16画素であり、搬送方向に繰り返し適用するものとする。これらのマスクは黒色の画素のビットは1であり画像データと論理積を取ることにより“ON”の効果が発生する。また、白色の画素のビットは0であり画像データと論理積を取ることにより“OFF”の効果が発生する。マスク1(52)およびマスク3(54)は排他関係にあり、同様に、マスク2(53)およびマスク4(55)も排他関係にある。
【0043】
図12は、マスク処理の概要を説明するための図である。ここでは、図11で説明したマスクが重複部の各列にそれぞれ適用される。すなわち、第1チップのA列にはマスク1(52)を、第1チップのB列にはマスク2(53)をそれぞれ適用する。同様にして、第2チップのA列にはマスク3(54)を、第2チップのB列にはマスク4(55)をそれぞれ適用する。
【0044】
図13は、マスク処理部J11によってマスクされた各ノズル列の画像データである。同図において、ドットを記録しない画素は白、ドット1発を記録する画素はグレー、ドット2発の画素は黒で示す。ここでは、ドットを記録しない画素またはドット1発の画素のみが発生している。図13(a)は第1チップのA列のマスク後の画像データ、図13(b)は第1チップのB列のマスク後の画像データ、図13(c)は第2チップのB列のマスク後の画像データ、図13(d)は第2チップのB列のマスク後の画像データをそれぞれ表している。
【0045】
ここで、本実施形態のマスク適用方法における特徴の1つは、先にも述べた通り、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクを適用することである。この構成によって、チップ間でドット重なりが存在するように画像データを分配することができ、第1チップと第2チップにレジずれが発生しても、ドットの紙面被覆率の変動を抑えることができる。本実施形態においては、各ノズル列でマスクが異なっているが、複数のノズル列全てでマスクが異なることはドット重なりを作るための必須条件ではない。例えば、1チップに16列が備えられた構成で、これを4プレーンに割り当てて処理する場合は、異なるプレーン間に存在するノズル列のマスクが一部異なればよく、同一プレーン内ではマスクが完全に同じであってもよい。また、本実施形態では、マスクを用いて各チップに画像データを分配する例を取り上げているが、チップ間でドット重なりが存在するように画像データを分配できればよく、分配手段はマスクに限定されるものではない。
【0046】
次に、図14は、図13の各列の画像データをチップ別に重ねたものである。同図において、ドットを記録しない画素は白、ドット1発を記録する画素はグレー、ドット2発の画素(重複して2ドットが記録される画素)は黒で示す。図14(a)は、第1チップ内でのドットの重なりを示しており、図5におけるJ12(第1チップ用記録データ)に相当する。図14(b)は、第2チップ内でのドットの重なりを示しており、同じく第2チップ用記録データに相当する。
【0047】
図15は、図14の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示し、ドットが重なっている画素の位置を説明するための図である。尚、同図では黒塗りの画素が2ドット重なりを示す。図15(a)は、図14(a)から第1チップ内での2ドット重なりを抜き出したものであり、図15(b)は、図14(b)から第2チップ内での2ドット重なりを抜き出したものである。図15(c)はチップ間でのドット重なりを表示したものである。尚、図15(c)の算出に関し、インデックス展開後の画像データは2プレーンを重ねた時に1200dpiで2ドットが重なることから、第1チップ内および第2チップ内で重なっていない画素をチップ間で重なっているものとした。図15によれば、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクを適用した結果、チップ間でのドット重なりを得ることができている。
【0048】
以上の処理により、第1チップと第2チップで記録されるドット配置は完全な排他関係とならず、一部のドットはチップ間で重なり、一部のドットはチップ間で重ならないようなドット配置を作り出すことができる。
【0049】
図16は、チップ間のレジずれが有あるとき、無いときそれぞれについて、チップの位置関係を示す模式図(a)と、紙面上のドット配置(b)を表したものである。図16(a)は、チップ間のレジずれが発生していない場合、図16(b)はノズル配列方向に1200dpiで1画素のレジずれが発生した場合を表している。同図において、ドットを記録しない画素は白、ドット1発を記録する画素はグレー、ドット2発の画素(重複して2ドット記録される画素)は黒で示す。
【0050】
図16(b)の紙面上のドット配置を見ると、チップ間でドット重なりが存在するために、1200dpiで0ドットの画素数が抑制されていることがわかる(後述の比較例を参照)。これは、第1チップと第2チップとの間の排他関係が不完全なため(チップ間のドット重なりが存在するため)、完全に排他の関係にある場合(チップ間のドット重なりが存在しない場合)とは異なるからである。すなわち、レジずれが発生しなければ重ならなかったはずの第1チップのドットと第2チップのドットが重なってしまう反面、レジずれが発生しなければ本来重なるはずだったドット同士がずれて紙面上の0ドットの部分をドットで埋めてしまう。つまり、チップ間のレジずれが発生した際にもドットによる紙面の表面被服率を変動しにくい。そのため、本実施形態によれば、第1チップと第2チップで重複して記録されるドットを発生させることにより、ある程度の広さを持つ領域で判断すれば、重複部の画像濃度の変化も少ない。これにより、チップ取り付け誤差やヘッド取り付け誤差、記録媒体の搬送量の変動が発生しても、これらに伴う画像濃度の変動を抑制することができる。
【0051】
しかし、図16(b)を見るとわかるように、図11のマスクを適用すると、レジずれ時に0ドットの画素がチップつなぎ部の中央部分にある程度集中していることがわかる。これはチップつなぎ部の中央部が、チップ間におけるドット重なりの効果である程度緩和されているとはいえ、表面被覆率が減少してしまい、僅かながら白スジになることを意味している。これは、同一チップの各プレーン(各列)に対して、同じグラデーションマスクを適用して、各ノズル列にデータを分配したために発生した現象である。
【0052】
図17は、本実施形態の第1チップ、第2チップのA列およびB列に適用するマスクを示している。図17(a)は第1チップのA列のマスク、図17(b)は第1チップのB列のマスク、図17(c)は第2チップのA列マスク、図17(d)は第2チップのB列のマスクをそれぞれ表している。
【0053】
ここで、本実施形態のマスクと図11に示すマスクとの一致点と相違点は以下の通りである。すなわち、一致点は同一チップの複数のノズル列(プレーン)のうち少なくとも一部で異なるマスクを適用していることである。また、相違点は同一チップの各プレーン(各列)に勾配の異なるグラデーションマスクを適用し、各列への分配方法を異ならせていることである。
【0054】
図18は、本実施形態のマスクを用いたマスク処理後の画像データを示している。図18(a)は第1チップのA列のマスク後の画像データ、図18(b)は第1チップのB列のマスク後の画像データ、図18(c)は第2チップのA列マスク後の画像データ、図18(d)は第2チップのB列のマスク後の画像データをそれぞれ表している。
【0055】
図19は、図18の各列の画像データをチップ別に重ねたものである。図19(a)は、第1チップ内でのドットの重なりを示しており、図5におけるJ12(第1チップ用記録データ)に相当する。図19(b)は、第2チップ内でのドットの重なりを示しており、同じく第2チップ用記録データに相当する。
【0056】
図20は、図19の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示し、ドットが重なっている画素の位置を説明するための図である。図20(a)は、図19(a)から第1チップ内での2ドット重なりを抜き出したものであり、図20(b)は、図19(b)から第2チップ内での2ドット重なりを抜き出したものである。図20(c)はチップ間でのドット重なりを表示したものである。
【0057】
図20において、2ドットの重なっている画素の位置が図15と異なるのは、同一チップの各列(各プレーン)でグラデーションの勾配を異ならせたために、チップ間でドット重なりの数および分布が変化したことである。具体的には、図20(c)を見ると、チップ間でのドット重なりの量が増加しており、しかも、ドット重なりの画素の位置が重複部の中央部に特に偏って分布していることがわかる。
【0058】
図21は、本実施形態において、チップ間のレジずれが有あるとき、無いときそれぞれについて、チップの位置関係を示す模式図(a)と、紙面上のドット配置(b)を表したものである。図21(a)は、チップ間のレジずれが発生していない場合、図21(b)はノズル配列方向に1200dpiで1画素のレジずれが発生した場合を表している。
【0059】
図21(b)の紙面上のドット配置を見ると、図11のマスクパターンを用いた場合に存在した0ドットが存在しないことがわかる。これは、チップ間のドット重なりがチップつなぎ部の中央部で特に増加しているためである。このように、本実施形態では、同じチップにおける各プレーンの分配方法を異ならせ、プレーン(ノズル列)ごとにマスクのグラデーションの勾配を調整することにより、重複部におけるチップ間でのドット重なりの量を調整することが可能になる。そのため、重複部の中央部ほど、チップ間でレジずれが発生するドット数が多いという課題に対応できる。すなわち、レジずれが発生するドット数が多い個所には重点的にチップ間でのドット重なりが発生するような調整が可能になるということである。
【0060】
グラデーションマスクとは、重複部を構成する2つのチップに関し、一方のチップの記録密度が重複部の一端部に向かって徐々に減少し、他方のチップの記録密度が前記一端部に向かって徐々に増加するものである。尚、グラデーションマスクの勾配とは、マスクにより規定される記録許容率(記録デューティ)の所定ノズル単位の増加率または減少率に相当する。
【0061】
(比較例)
比較例では、チップ間にドット重なりが存在しない場合を説明する。図22は、比較例における各チップの各列に適用するマスクを示している。図22(a)は第1チップのA列のマスク52、図22(b)は第1チップのB列のマスク52、図22(c)は第2チップのA列マスク54、図22(d)は第2チップのB列のマスク54をそれぞれ表している。上記実施形態との相違点は、同一チップの各プレーン(各列)で同一のマスクを適用している点である。
【0062】
図23は、比較例において、各チップのノズル列に図22で示したマスクを用いてマスク処理した後の画像データを示している。図23(a)は第1チップのA列のマスク後の画像データ、図23(b)は第1チップのB列のマスク後の画像データ、図23(c)は第2チップのA列マスク後の画像データ、図23(d)は第2チップのB列のマスク後の画像データをそれぞれ表している。
【0063】
図24は、図23の各列の画像データをチップ別に重ねたものである。図24(a)は、第1チップ内でのドットの重なりを示しており、図5におけるJ12(第1チップ用記録データ)に相当する。図24(b)は、第2チップ内でのドットの重なりを示しており、同じく第2チップ用記録データに相当する。
【0064】
図25は、図24の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示し、ドットが重なっている画素の位置を説明するための図である。図25(a)は、図24(a)から第1チップ内での2ドット重なりを抜き出したものであり、図25(b)は、図24(b)から第2チップ内での2ドット重なりを抜き出したものである。図25(c)はチップ間でのドット重なりを表示したものである。
【0065】
図25において、第1の実施形態との相違点は、同一チップの各列(各プレーン)で完全に同一のマスクを適用したために、ドット重なりが存在しているのはチップ内のみであり、チップ間では完全にドット重なりが存在していない点である。
【0066】
図26は、比較例において、チップ間のレジずれが有あるとき、無いときそれぞれについて、チップの位置関係を示す模式図(a)と、紙面上のドット配置(b)を表したものである。図26(a)は、チップ間のレジずれが発生していない場合、図26(b)はノズル配列方向に1200dpiで1画素のレジずれが発生した場合を表している。図26(b)の紙面上のドット配置を見ると、チップ間でドット重なりが存在しないために、1200dpiで0ドットの数が多いことがわかる。
【0067】
これは、第1チップと第2チップとの間の排他関係が完全なため(チップ間のドット重なりが存在しないため)、レジずれが発生すれば紙面上の0ドットの領域が増加する方向にしか変化しないためである。つまり、チップ間のレジずれが発生した際には、ドットによる紙面の表面被服率は減少するだけである。従って、ある程度の広さを持つ領域で判断すれば、つなぎ部の画像濃度の低下が顕著になる。これにより、チップ取り付け誤差やヘッド取り付け誤差、記録媒体の搬送量の変動が発生すると、これらに伴う画像濃度の変動が発生することとなる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、第1の実施形態で既に説明した構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0069】
図27は、本実施形態のつなぎヘッドの概要を説明するための図である。同図において、つなぎヘッドには、第1チップ31と第2チップ32を含む複数のチップが、搬送方向と交差する方向に千鳥状に並べて配置されている。各チップは複数のノズル列が搬送方向と垂直に並べて配置されている。各チップは複数のノズル列を有しており、第1チップと第2チップは一部ノズルが重複して配置されている。本例では、ノズル間隔は1200dpi、各チップのノズル列数は8列、重複部のノズル数は128ノズルである。搬送方向の上流側のノズル列から順にA〜Hと称するものとする。
【0070】
次に、図28は、プレーンとノズル列の対応を示す図である。本例では、プレーンの分割数は2であり、プレーン1のデータはA〜D列の4列に、プレーン2のデータはE〜H列の4列にそれぞれ割り当てられる。
【0071】
図29は、本実施形態における第1チップの画像データ処理フローを表す図である。第1の実施例との相違点は、1チップに備えられるノズル列数が8列になっており、それぞれ独立にマスクを適用できる点である。第2のチップの画像データ処理フローも第1チップと同様となっている。
【0072】
図30は、重複部へのマスク適用例として、(a)マスク適用例1と(b)マスク適用例2を示したものである。同図(a),(b)とも、第1チップは図の右端がチップ端部に相当し、左側ほどチップ中央部に近くなる。また、同図(a),(b)とも、第2チップは図の左端がチップ端部に相当し、右側ほどチップ中央部に近くなる。
【0073】
まず、図30(a)のマスク適用例1を説明する。最初に、1200dpiで128画素をノズル列数の8列で割ると1列あたり16画素になる。そこで、マスク適用例1では、ノズル列のノズル配列方向に16画素を1区画として各区画にマスクを適用するか否かをノズル列列毎に独立に決めるものとする。各ノズル列とも、グラデーションマスクが適用されるのはノズル配列方向に任意の1区画のみである。グラデーションマスクが適用される区画よりもチップ中央側は全ビット「ON」のマスクを適用する。一方、グラデーションマスクが適用される区画よりも、チップの端部側は全ビット「OFF」のマスクを適用する。そして、グラデーションマスクを適用する区画を全列でずらすことにより、チップ全体での記録デューティもグラデーションになるようにしている。尚、同図において、全ビット「OFF」のマスクの領域は白、全ビット「ON」のマスクの領域は黒、グラデーションマスクを適用する領域は黒から白への遷移で示す。
【0074】
このマスク適用例1において、グラデーションマスクが適用される区画のグラデーションマスクの形状は、同一チップ内で全列異なっていても、少なくとも1部が異なっていても、全列同じであっても、どの場合にもプレーン間でドット重なりを作ることができる。これは、ある区画で全列のマスクパターンを比較すると、2プレーン間のうち少なくとも各1列は別のマスクが適用されているからである。
【0075】
以上のように、マスク適用例1の特徴は、重複部の中心部において第1チップのプレーン2の記録デューティと第2チップのプレーン1の記録デューティが互いに最大になる点である。これにより、第1チップと第2チップでのドット重なり量を中心部で高めることができるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
次に、図30(b)を用いて、マスク適用例2について説明する。マスク適用例2は、マスク適用例1と同じグラデーションマスクを使用しながらも、グラデーションマスクを適用する区画の位置を変更している。このマスク適用例2の特徴は、マスク適用例1と比較すると、チップつなぎ部中央部においてチップ内におけるドット重なり率が高いため、相対的にチップ間のドット重なり率が低く抑えられている。
【0077】
以上、マスク適用例1および2によれば、グラデーションマスクを適用する区画を変更することにより、チップつなぎ部の中央部におけるチップ間のドット重なり率を適切に調整することが可能となる。従って、チップ間でレジずれが発生したときにも、つなぎ部のスジを低減することができる。
【0078】
尚、本実施形態においては、ノズル列を区画に分けるという考えて方を導入して説明を行ったが、従来のようにグラデーションの勾配を各ノズル列独立に適宜調整することによって、チップ間のドット重なり数を調整することが可能である。また、チップ間のドット重なり率を調整できれば良く、その手段はマスクに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
13 制御部
15 コントローラ
16 外部機器
100 プリンタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノズル列をノズルの配列する方向と交差する方向に重複部を有するように配列して記録ヘッドを用いて画像を記録するために、前記重複部に対応する領域の多値画像データを処理する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のノズルを配列したノズル列を備えたチップを千鳥状に配列した記録ヘッド、所謂つなぎヘッドを用いた記録装置が知られている。つなぎヘッドを用いた記録装置としては、記録ヘッドを記録素子の配列方向と交差する方向に走査させるともに、記録用紙(記録媒体)を記録素子の配列方向に搬送して記録を行うシリアル方式の記録装置が知られている。他の記録方式の記録装置として、記録用紙の記録幅全体に渡ってノズル(吐出口)を配列した記録ヘッドを固定し、記録素子の配列方向と交差する方向に記録用紙を搬送させて記録を行うフルラインタイプの記録装置も知られているである。特に、フルラインタイプの記録装置では、記録媒体の記録幅全体に渡ってノズル(吐出口)を配列した記録ヘッドを用い、記録媒体の搬送に伴って記録幅分の画像記録を連続して行うことで、高速に記録を行うことができる。
【0003】
しかしながら、つなぎヘッドには次の課題がある。すなわち、つなぎヘッドではノズル配列方向と交差する方向にチップ同士が重複する重複部が存在するが、この重複部において様々な原因によりチップ間のレジストレーション(ドットの相対的な記録位置の関係)がずれることがある。そうすると、重複部で濃度ムラや粒状性のムラが発生し、画像の品位を低下させてしまう。チップ間のレジストレーションがずれる原因には、チップの取り付け精度の問題や記録媒体の搬送精度の問題がある。
【0004】
特許文献1には、つなぎヘッドの重複部分に生じるスジ状の画像欠陥を抑制する方法として、各チップの重複部の記録デューティをマスクにより相補的に増減させる方法(以下、グラデーションマスク)が提案されている。
【0005】
また、レジストレーションのずれ(以下、レジずれとも記す)を補償する技術として、特許文献2には、マルチパス記録におけるパス間のレジずれ時における「ロバスト性」を高めるための画像データの処理方法が開示されている。ここで、「ロバスト性」とは様々な誤差に起因する濃度ムラ等に対する耐性を意味する。同文献によれば、様々な記録条件の変動に伴って引き起こされる画像濃度の変動は異なる記録走査に対応する2値の画像データが互いに完全な補完関係にあることに起因することに着目している。そして、上記補完関係が低減されるように異なる記録走査に対応した画像データを生成すれば、「ロバスト性」に優れたマルチパス記録を実現できる、と認識している。
【0006】
そこで、特許文献1の技術では、画像データを2値化前の多値データの状態で複数のプレーンに分割し、分割後の多値データをそれぞれ独立に2値化している。この構成により、異なる記録走査に対応した画像データ同士が互いにずれて記録されても大きな濃度変動が起こらないようにしている。尚、「プレーン」について補足すると、元の画像データから複数の記録走査や複数のノズル列に対応して画像データを分割する場合、元の画像データは分割された複数の画像データの重ねあわせと考えることができる。そのため、分割された各画像データは1つの「プレーン」と捉えることができる。上記の特許文献1では、1回の記録走査(パス)が1つのプレーンに対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−57965号公報
【特許文献2】特開2000−103088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の発明によれば、パス間でレジずれが発生した場合にも大きな濃度変動が起こらないようにすることができるものの、この特許文献2には、つなぎヘッドの重複部での濃度変化を抑制する方法が明示されていなかった。
【0009】
また、近年では、1つのチップに複数のノズル列を配列させたつなぎヘッドも提案されているが、特許文献2には、このようなつなぎヘッドにおいて、重複部の濃度変動を抑制する手法について何ら言及されていなかった。
【0010】
そこで、本発明は、つなぎヘッドの重複部のレジずれによる濃度変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配手段と、前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配手段とを有し、前記第2分配手段は、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、つなぎヘッドの重複部のレジずれによる濃度変化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の概略図。
【図2】図1のインクジェット記録装置の制御回路の概略ブロック図。
【図3】図1のインクジェット記録装置でのプリント動作を説明する図。
【図4】図1のインクジェット記録装置のプリント部の概略図。
【図5】第1の実施形態の画像データの処理工程を示す図。
【図6】多値の画像データを各ノズル列へ分配方法を説明する図。
【図7】量子化部J07までに実行される処理の具体例を示した図。
【図8】インデックス展開部J08で用いられる処理を説明する図。
【図9】各プレーンのインデックス展開後の画像データの一例を示す図。
【図10】各プレーンの画像データを列分配した画像データを示す図。
【図11】同一チップ内のプレーン間で異なるマスクの例を示す図。
【図12】マスク処理の概要を説明するための図。
【図13】図11のマスクで処理された各ノズル列の画像データを示す図。
【図14】各ノズル列の画像データをチップ別に重ねた様子を示す図。
【図15】図14の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示した図。
【図16】チップの位置関係と紙面上のドット配置を示す模式図。
【図17】第1の実施形態のマスクを説明する図。
【図18】第1の実施形態のマスクを用いたマスク処理後の画像データを示す図。
【図19】図18の各ノズル列の画像データをチップ別に重ねた様子を示す図。
【図20】図19の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示した図。
【図21】第1の実施形態における、チップの位置関係と紙面上のドット配置を示す模式図。
【図22】比較例における各チップの各列に適用するマスクを示す図。
【図23】比較例のマスクで処理された各ノズル列の画像データを示す図。
【図24】比較例において、各ノズル列の画像データをチップ別に重ねた様子を示す図。
【図25】図24の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示した図。
【図26】比較例における、チップの位置関係と紙面上のドット配置を示す模式図。
【図27】第2の実施形態のつなぎヘッドの概要を説明するための図。
【図28】第2の実施形態においてプレーンとノズル列の対応を示す図。
【図29】第2の実施形態の画像データの処理工程を示す図。
【図30】第2の実施形態において重複部へのマスク適用例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(以下、単に記録装置、またはプリンタとも記す)の概略図である。図1に示すプリンタ100は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対移動させて記録を行うタイプのインクジェット記録装置である。プリンタ100は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、シート巻取部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出トレイ12、制御部13の各ユニットを備える。記録媒体(シート)は、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。
【0015】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを収納して供給するユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させてしごくことでカールを軽減させる。斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0016】
プリント部4は、搬送されるシートに対して記録ヘッド14によりシートの上に画像を形成するユニットである。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。記録ヘッド14は、シートの最大幅をカバーする範囲に対して、ノズルが形成されたフルラインタイプの記録ヘッドである。複数の記録ヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられており、本例では、Bk(ブラック)、Lc(ライトシアン)、Lm(ライトマゼンタ)、Gy(グレー)、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の7色の記録ヘッドが配設されている。ノズルからインクを吐出する方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッドに供給される。
【0017】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像を光学的に読み取って、記録ヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査するユニットである。カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さにカットする機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。情報記録部7は、カットされたシートの裏面にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報を記録するユニットである。乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるユニットである。乾燥部8は、シートを次工程に送り出すための搬送ベルト及び搬送ローラも備えている。
【0018】
シート巻取部9は、両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取るユニットである。シート巻取部9はシートを巻き取るための回転する巻取ドラムを備えている。表面のプリントが済んでカットされていない連続シートは巻取ドラムに一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取ドラムが逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0019】
排出搬送部10は、カッタ部6でカットされ乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に排出トレイ12の異なるトレイに振り分けて排出するユニットである。制御部13は、プリンタ全体の各部の制御を司るユニットである。
【0020】
図2は、プリンタの制御ブロック図を示す。制御部13は、CPU1501、ROM1502、RAM1503、各種I/Oインターフェース1504を備えたコントローラ15及び電源1301を有する。また、制御部13は、後述する画像処理フローを実行する画像処理機能を有する。プリンタの動作は、コントローラ15又はコントローラ15にI/Oインターフェース1504を介して接続されるホストコンピュータ等の外部機器16からの指令に基づいて制御される。
【0021】
外部機器16からの信号を受けると、コントローラ15は記録ヘッドを用いてシートSに記録するための記録データを作成する。作成された記録データはプリントバッファとしてRAM1503内に蓄えられる。さらに、ヘッドドライバ301にプリントバッファ内のデータを転送する。ヘッドドライバ301は各色の記録ヘッドでインク滴を吐出するためのデータに変換を行い、実際に記録動作が実施される。この様にして、コントローラ15は、後述する画像処理フローを実行する画像処理機能を有する。また、本実施形態の画像処理の詳細については、後述する。
【0022】
また、コントローラ15は搬送系モータドライバ302、検出系モータドライバ303などの各種モータドライバを制御し、搬送モータ304やスキャナモータ305などの駆動源を稼動させることによりシートの搬送動作や検出動作を行う。
【0023】
次に、プリント時の基本動作について説明する。片面プリントと両面プリントとでは、プリント動作が異なるので、それぞれについて説明する。図3(a)は、片面プリント時のプリント動作を説明するための図である。シート供給部1から供給されたシートがプリントされて排出トレイ12に排出されるまでの搬送経路を太線で示している。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面のプリントがなされる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。
【0024】
図3(b)は両面プリント時の動作を説明するための図である。両面プリントでは、表面プリントシーケンスに次いで裏面プリントシーケンスを実行する。表面プリントシーケンスでは、先ず、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6ではカット動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路ではなく、シート巻取部9の側の経路にシートが導入される。導入されたシートは、順方向(図面では逆時計回り方向)に回転するシート巻取部9の巻取ドラムに巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端がカットされる。カット位置を基準に、搬送方向下流側(プリントがされた側)の連続シートは乾燥部8を経てシート巻取部9でシート後端(カット位置)まで全て巻き取られる。一方、カット位置よりも搬送方向上流側の連続シートは、シート先端(カット位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻される。以上で、表面プリントシーケンスが終了する。
【0025】
表面プリントシーケンスが終了すると、裏面プリントシーケンスに切り替わる。裏面プリントシーケンスでは、先ず、シート巻取部9の巻取ドラムが巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)はデカール部2に送り込まれる。デカール部2では先とは逆向きのカール矯正がなされる。これは、巻取ドラムに巻かれたシートは、シート供給部1でのロールとは表裏反転して巻かれ、逆向きのカールとなっているためである。その後は、斜行矯正部3を経て、プリント部4で連続シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11のトレイ12に順次排出され積載されていく。以上で、裏面プリントシーケンスが終了する。
【0026】
次に、プリント部4の構成を説明する。プリント部4には、7色のインクに対応して7つの記録ヘッドが配設されている。各記録ヘッドの吐出口(ノズル)の配列は同一であるため、以下では、1つの記録ヘッドに着目して説明する。
【0027】
図4は、記録ヘッド(つなぎヘッド)のノズル配列を説明する概略図である。記録ヘッド14には、第1チップ31、第2チップ32を含む複数のチップがノズル配列方向(本例では、搬送方向と交差する方向)に千鳥状に並べて配置されている。第1チップ31,第2チップ32には、2列のノズル列A、Bが搬送方向に沿って配置されており、各ノズル列におけるノズル間隔は1200dpiである。また、第1チップ31と第2チップ32は、搬送方向方向において一部のノズルが重複して配置され、重複部を構成している。本例において、重複部のノズル数は16ノズルであるが、重複部のノズル数はこれに限定されるものではない。
【0028】
図5は、多値入力画像データをヘッド駆動データに変換し、この駆動データに基づいて各チップのノズルからインクを吐出するまでの画像データの処理工程を示している。図5(a)は第1チップの画像データ処理フローを示しており、図5(b)は第2チップの画像データ処理フローを示している。図5(a)と図5(b)の画像処理フローで異なる点は、インデックス展開の部分とマスク処理の部分を除いて同じであるので、図5(a)の第1チップの画像データ処理フローについて説明する。
【0029】
先ず、画像入力部J01に、外部に接続されたホスト装置などから記録すべき多値画像データが入力される。本実施形態において、多値画像データの入力解像度は600dpi×600dpiであり、1画素につき8bit256階調で表現される輝度データ(R,G,B)となっている。次に、色変換部J02は、画像入力部J01に入力された多値画像データを、記録装置が使用するインク色に対応した多値の濃度データに変換される。ここでは、各色8bit256階調のデータに変換される。尚、以降の処理は各インク色で共通である。
【0030】
階調補正部J03は、各インク色に分解された多値データに対して階調補正を行う。ムラ補正部J04は、各インク色の多値データを多値データに変換するルックアップテーブルを用いて多値のインク色データの値を変換し、ノズル特性のばらつきに起因したムラの補正を行う。画像データ分割部J05は、第1分配手段に対応し、多値のインク色データを2つのプレーン1、プレーン2に分割する。本例の画像データ分割部J05は、多値のインク色データの値(階調値)によらず、プレーン1:プレーン2=1:1という分割比率に従って画像データを分割する。
【0031】
量子化部J07は、画像データ分割部J05によって分割された多値の画像データJ06それぞれのプレーンに対し量子化処理を行う。ここでは、各プレーンに対し128階調のデータを8階調に低階調化する。インデックス展開部J08は、量子化部J07で低階調化された多値の画像データを、インデックス展開テーブルを参照しながらプレーン毎にそれぞれ2値化処理を行う。列分配処理部J09は、インデックス展開された1200dpi×1200dpiの2階調のデータを各ノズル列に分配する。
【0032】
次に、マスク処理部J11は、各ノズル列に分配されたデータについて、重複部分をマスク処理する。上記の一連の処理を経て、第1チップおよび第2チップのA列およびB列で記録するための2値のデータが完成する。
【0033】
次に、図6から図10を用いて、図5の画像データ処理フローの詳細な説明を行う。図6は、画像データ分割部J05によって分割された多値の画像データ各ノズル列への分配を説明する図である。図6に示すように、多値の画像データJ06のうち、プレーン1用の画像データ50はA列に振り分けられる。一方、プレーン2用の画像データ51はB列に振り分けられる。
【0034】
次に、図7は画像データ分割部J05〜量子化部J07で実行される処理の具体例を示した図である。図7は、画像データ分割部J05に、例えば600dpi×600dpiの解像度で4画素×4画素で構成される記録すべき多値の画像データ(101301)が入力されときに(a)、このデータを2分割する冷を示している。まず、画像データ分割部J05は、多値の画像の画像データ(101301)はプレーン1用の多値の画像データ(101302)とプレーン2用の多値の画像データ(101305)とに分割する(b)。この際、各画素の画像データの階調値に応じて、多値の画像データを2つのプレーンへの分割比率を異ならせることも可能である。その一例としては、低階調部分ではプレーン1:プレーン2=2:1という分割比率に従って画像データを分割し、高階調部分ではプレーン1:プレーン2=1:1という分割比率に従って画像データを分割する。
【0035】
次に、量子化部J07では、画像分割部J05によって分割された多値の画像データ(101302、101305)のそれぞれに対して、誤差拡散法による量子化(低階調化)処理を行う(c)。ここでは、8階調に低階調化を行うものとする。
【0036】
これにより、プレーン1用の低階調化されたデータ(101304)とプレーン2用の低階調化されたデータ(101307)が生成される(d)。尚、本例では、量子化の手段として誤差拡散法を用いているが、他の手段であっても良い。ただし、これらの2つのプレーン間で量子化処理のやり方を異ならせることが好ましく、特に低階調部分では、2つのプレーンを重ねた場合にドット同士が重なる箇所と重ならない箇所が並存するように、量子化処理を行うことが好ましい。例えば、量子化処理として誤差拡散法を用いるのであれば、閾値や誤差分配係数をプレーン間で異ならせるなどして、同じ階調値の画像データが入力されても、量子化処理の結果が同値にならないように配慮することが望ましい。
【0037】
例えば、図7に示したように、プレーン1用多値データ(101302)に対して、誤差拡散係数Aを用いて誤差拡散を行う。、また、プレーン2用多値データ(101305)に対して、誤差拡散係数Aとは異なる誤差拡散係数Bを用いて誤差拡散を行うことにより、量子化後のドット配置をプレーン間で異ならせることができる。尚、図7において※は注目画素を表す。
【0038】
図5に戻るに、量子化部J07で低階調化された多値の画像データは、インデックス展開部J08によって、インデックス展開テーブルを参照しながらプレーン毎にそれぞれ2値化処理を行われる。ここでは、600dpi×600dpiで8階調のデータを1200dpi×1200dpiの3階調のデータに変換する。図8は、インデックス展開部J08で用いられるインデックス展開テーブルの概要を表している。図8(a)はインデックス展開部J07に入力される600dpi×600dpiで8階調の信号値を表している。図8(b)および(c)は、インデックス展開部J07に入力される1200dpi×1200dpiの2階調のテーブルであり、それぞれプレーン1およびプレーン2用のインデックス展開テーブルである。枠内の数字は1200dpi×1200dpiの単位面積に記録されるべきドットの数である。これらのインデックス展開テーブルにより、インデックス展開部J07に入力された600dpi×600dpiで8階調の画像データは、1200dpi×1200dpiの3階調の画像データに変換される。インデックス展開テーブルはプレーン間で同一のものであってもよいが、プレーン間で異なるものであってもよい。また、インデックス展開後の画像データは3階調に限られず、2階調などであってもよい。
【0039】
図9は、重複部における各プレーンのインデックス展開後の画像データの一例を表している。図9(a)はプレーン1の画像データ、図9(b)はプレーン2の画像データであり、1200dpi×1200dpiの解像度で16画像×16画素のサイズを有し、レベル数は3階調である。つまり、1画素にドット2発、ドット1発、ドット0発の3階調で表現される。ここでは、全ての画素でドット1発のデータとなっている。
【0040】
図5に戻るに、インデックス展開された1200dpi×1200dpiの3階調のデータを列分配処理部J09によって各列に分配する。ここでは、ランダムマスクもしくは列分配テーブル等を用いて各列にほぼ均等なドット数になるように分配する。
【0041】
図10は、図9で説明した各プレーンのインデックス展開後の画像データを列分配処理部J09によって列分配した画像データを示している。この列分配処理部J09は、プレーン1の画像データを第1チップのノズル列と、第2チップのノズル列に分配する機能を有しており、第2分配手段に相当する。図10(a)は第1チップのA列の画像データ、図10(b)は第1チップのB列の画像データ、図10(c)は第2チップのA列の画像データ、図10(d)は第2チップのB列の画像データをそれぞれ表している。なお、本実施形態では1プレーンに1列のノズル列が相当しているので、列分配処理部J09の前後で画像データは変化がない。
【0042】
次に、マスク処理部J11は、重複部の各列に分配されたデータをマスク処理する。本実施形態のマスクについては、図17以降で説明するものとし、まず、本実施形態のマスクの特徴の1つである、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクを適用することについて、説明を行う。図11は、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクの例を示した図である。同図において、黒塗りで示す画素が画像データの記録を許容する“ON”の画素、白塗りで示す画素が画像データの記録を許容しない“OFF”の画素である。図11(a)は第1チップのA列に適用するマスク52、図11(b)は第1チップのB列に適用するマスク53である。同様に、図11(c)は第2チップのA列に適用するマスク54、図11(d)は第2チップのB列に適用するマスク55である。各マスクの大きさは1200dpi×1200dpiで16画素×16画素であり、搬送方向に繰り返し適用するものとする。これらのマスクは黒色の画素のビットは1であり画像データと論理積を取ることにより“ON”の効果が発生する。また、白色の画素のビットは0であり画像データと論理積を取ることにより“OFF”の効果が発生する。マスク1(52)およびマスク3(54)は排他関係にあり、同様に、マスク2(53)およびマスク4(55)も排他関係にある。
【0043】
図12は、マスク処理の概要を説明するための図である。ここでは、図11で説明したマスクが重複部の各列にそれぞれ適用される。すなわち、第1チップのA列にはマスク1(52)を、第1チップのB列にはマスク2(53)をそれぞれ適用する。同様にして、第2チップのA列にはマスク3(54)を、第2チップのB列にはマスク4(55)をそれぞれ適用する。
【0044】
図13は、マスク処理部J11によってマスクされた各ノズル列の画像データである。同図において、ドットを記録しない画素は白、ドット1発を記録する画素はグレー、ドット2発の画素は黒で示す。ここでは、ドットを記録しない画素またはドット1発の画素のみが発生している。図13(a)は第1チップのA列のマスク後の画像データ、図13(b)は第1チップのB列のマスク後の画像データ、図13(c)は第2チップのB列のマスク後の画像データ、図13(d)は第2チップのB列のマスク後の画像データをそれぞれ表している。
【0045】
ここで、本実施形態のマスク適用方法における特徴の1つは、先にも述べた通り、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクを適用することである。この構成によって、チップ間でドット重なりが存在するように画像データを分配することができ、第1チップと第2チップにレジずれが発生しても、ドットの紙面被覆率の変動を抑えることができる。本実施形態においては、各ノズル列でマスクが異なっているが、複数のノズル列全てでマスクが異なることはドット重なりを作るための必須条件ではない。例えば、1チップに16列が備えられた構成で、これを4プレーンに割り当てて処理する場合は、異なるプレーン間に存在するノズル列のマスクが一部異なればよく、同一プレーン内ではマスクが完全に同じであってもよい。また、本実施形態では、マスクを用いて各チップに画像データを分配する例を取り上げているが、チップ間でドット重なりが存在するように画像データを分配できればよく、分配手段はマスクに限定されるものではない。
【0046】
次に、図14は、図13の各列の画像データをチップ別に重ねたものである。同図において、ドットを記録しない画素は白、ドット1発を記録する画素はグレー、ドット2発の画素(重複して2ドットが記録される画素)は黒で示す。図14(a)は、第1チップ内でのドットの重なりを示しており、図5におけるJ12(第1チップ用記録データ)に相当する。図14(b)は、第2チップ内でのドットの重なりを示しており、同じく第2チップ用記録データに相当する。
【0047】
図15は、図14の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示し、ドットが重なっている画素の位置を説明するための図である。尚、同図では黒塗りの画素が2ドット重なりを示す。図15(a)は、図14(a)から第1チップ内での2ドット重なりを抜き出したものであり、図15(b)は、図14(b)から第2チップ内での2ドット重なりを抜き出したものである。図15(c)はチップ間でのドット重なりを表示したものである。尚、図15(c)の算出に関し、インデックス展開後の画像データは2プレーンを重ねた時に1200dpiで2ドットが重なることから、第1チップ内および第2チップ内で重なっていない画素をチップ間で重なっているものとした。図15によれば、同一チップ内のプレーン間で少なくとも一部が異なるマスクを適用した結果、チップ間でのドット重なりを得ることができている。
【0048】
以上の処理により、第1チップと第2チップで記録されるドット配置は完全な排他関係とならず、一部のドットはチップ間で重なり、一部のドットはチップ間で重ならないようなドット配置を作り出すことができる。
【0049】
図16は、チップ間のレジずれが有あるとき、無いときそれぞれについて、チップの位置関係を示す模式図(a)と、紙面上のドット配置(b)を表したものである。図16(a)は、チップ間のレジずれが発生していない場合、図16(b)はノズル配列方向に1200dpiで1画素のレジずれが発生した場合を表している。同図において、ドットを記録しない画素は白、ドット1発を記録する画素はグレー、ドット2発の画素(重複して2ドット記録される画素)は黒で示す。
【0050】
図16(b)の紙面上のドット配置を見ると、チップ間でドット重なりが存在するために、1200dpiで0ドットの画素数が抑制されていることがわかる(後述の比較例を参照)。これは、第1チップと第2チップとの間の排他関係が不完全なため(チップ間のドット重なりが存在するため)、完全に排他の関係にある場合(チップ間のドット重なりが存在しない場合)とは異なるからである。すなわち、レジずれが発生しなければ重ならなかったはずの第1チップのドットと第2チップのドットが重なってしまう反面、レジずれが発生しなければ本来重なるはずだったドット同士がずれて紙面上の0ドットの部分をドットで埋めてしまう。つまり、チップ間のレジずれが発生した際にもドットによる紙面の表面被服率を変動しにくい。そのため、本実施形態によれば、第1チップと第2チップで重複して記録されるドットを発生させることにより、ある程度の広さを持つ領域で判断すれば、重複部の画像濃度の変化も少ない。これにより、チップ取り付け誤差やヘッド取り付け誤差、記録媒体の搬送量の変動が発生しても、これらに伴う画像濃度の変動を抑制することができる。
【0051】
しかし、図16(b)を見るとわかるように、図11のマスクを適用すると、レジずれ時に0ドットの画素がチップつなぎ部の中央部分にある程度集中していることがわかる。これはチップつなぎ部の中央部が、チップ間におけるドット重なりの効果である程度緩和されているとはいえ、表面被覆率が減少してしまい、僅かながら白スジになることを意味している。これは、同一チップの各プレーン(各列)に対して、同じグラデーションマスクを適用して、各ノズル列にデータを分配したために発生した現象である。
【0052】
図17は、本実施形態の第1チップ、第2チップのA列およびB列に適用するマスクを示している。図17(a)は第1チップのA列のマスク、図17(b)は第1チップのB列のマスク、図17(c)は第2チップのA列マスク、図17(d)は第2チップのB列のマスクをそれぞれ表している。
【0053】
ここで、本実施形態のマスクと図11に示すマスクとの一致点と相違点は以下の通りである。すなわち、一致点は同一チップの複数のノズル列(プレーン)のうち少なくとも一部で異なるマスクを適用していることである。また、相違点は同一チップの各プレーン(各列)に勾配の異なるグラデーションマスクを適用し、各列への分配方法を異ならせていることである。
【0054】
図18は、本実施形態のマスクを用いたマスク処理後の画像データを示している。図18(a)は第1チップのA列のマスク後の画像データ、図18(b)は第1チップのB列のマスク後の画像データ、図18(c)は第2チップのA列マスク後の画像データ、図18(d)は第2チップのB列のマスク後の画像データをそれぞれ表している。
【0055】
図19は、図18の各列の画像データをチップ別に重ねたものである。図19(a)は、第1チップ内でのドットの重なりを示しており、図5におけるJ12(第1チップ用記録データ)に相当する。図19(b)は、第2チップ内でのドットの重なりを示しており、同じく第2チップ用記録データに相当する。
【0056】
図20は、図19の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示し、ドットが重なっている画素の位置を説明するための図である。図20(a)は、図19(a)から第1チップ内での2ドット重なりを抜き出したものであり、図20(b)は、図19(b)から第2チップ内での2ドット重なりを抜き出したものである。図20(c)はチップ間でのドット重なりを表示したものである。
【0057】
図20において、2ドットの重なっている画素の位置が図15と異なるのは、同一チップの各列(各プレーン)でグラデーションの勾配を異ならせたために、チップ間でドット重なりの数および分布が変化したことである。具体的には、図20(c)を見ると、チップ間でのドット重なりの量が増加しており、しかも、ドット重なりの画素の位置が重複部の中央部に特に偏って分布していることがわかる。
【0058】
図21は、本実施形態において、チップ間のレジずれが有あるとき、無いときそれぞれについて、チップの位置関係を示す模式図(a)と、紙面上のドット配置(b)を表したものである。図21(a)は、チップ間のレジずれが発生していない場合、図21(b)はノズル配列方向に1200dpiで1画素のレジずれが発生した場合を表している。
【0059】
図21(b)の紙面上のドット配置を見ると、図11のマスクパターンを用いた場合に存在した0ドットが存在しないことがわかる。これは、チップ間のドット重なりがチップつなぎ部の中央部で特に増加しているためである。このように、本実施形態では、同じチップにおける各プレーンの分配方法を異ならせ、プレーン(ノズル列)ごとにマスクのグラデーションの勾配を調整することにより、重複部におけるチップ間でのドット重なりの量を調整することが可能になる。そのため、重複部の中央部ほど、チップ間でレジずれが発生するドット数が多いという課題に対応できる。すなわち、レジずれが発生するドット数が多い個所には重点的にチップ間でのドット重なりが発生するような調整が可能になるということである。
【0060】
グラデーションマスクとは、重複部を構成する2つのチップに関し、一方のチップの記録密度が重複部の一端部に向かって徐々に減少し、他方のチップの記録密度が前記一端部に向かって徐々に増加するものである。尚、グラデーションマスクの勾配とは、マスクにより規定される記録許容率(記録デューティ)の所定ノズル単位の増加率または減少率に相当する。
【0061】
(比較例)
比較例では、チップ間にドット重なりが存在しない場合を説明する。図22は、比較例における各チップの各列に適用するマスクを示している。図22(a)は第1チップのA列のマスク52、図22(b)は第1チップのB列のマスク52、図22(c)は第2チップのA列マスク54、図22(d)は第2チップのB列のマスク54をそれぞれ表している。上記実施形態との相違点は、同一チップの各プレーン(各列)で同一のマスクを適用している点である。
【0062】
図23は、比較例において、各チップのノズル列に図22で示したマスクを用いてマスク処理した後の画像データを示している。図23(a)は第1チップのA列のマスク後の画像データ、図23(b)は第1チップのB列のマスク後の画像データ、図23(c)は第2チップのA列マスク後の画像データ、図23(d)は第2チップのB列のマスク後の画像データをそれぞれ表している。
【0063】
図24は、図23の各列の画像データをチップ別に重ねたものである。図24(a)は、第1チップ内でのドットの重なりを示しており、図5におけるJ12(第1チップ用記録データ)に相当する。図24(b)は、第2チップ内でのドットの重なりを示しており、同じく第2チップ用記録データに相当する。
【0064】
図25は、図24の各チップ用記録データから2ドット重なりの部分を抜き出して表示し、ドットが重なっている画素の位置を説明するための図である。図25(a)は、図24(a)から第1チップ内での2ドット重なりを抜き出したものであり、図25(b)は、図24(b)から第2チップ内での2ドット重なりを抜き出したものである。図25(c)はチップ間でのドット重なりを表示したものである。
【0065】
図25において、第1の実施形態との相違点は、同一チップの各列(各プレーン)で完全に同一のマスクを適用したために、ドット重なりが存在しているのはチップ内のみであり、チップ間では完全にドット重なりが存在していない点である。
【0066】
図26は、比較例において、チップ間のレジずれが有あるとき、無いときそれぞれについて、チップの位置関係を示す模式図(a)と、紙面上のドット配置(b)を表したものである。図26(a)は、チップ間のレジずれが発生していない場合、図26(b)はノズル配列方向に1200dpiで1画素のレジずれが発生した場合を表している。図26(b)の紙面上のドット配置を見ると、チップ間でドット重なりが存在しないために、1200dpiで0ドットの数が多いことがわかる。
【0067】
これは、第1チップと第2チップとの間の排他関係が完全なため(チップ間のドット重なりが存在しないため)、レジずれが発生すれば紙面上の0ドットの領域が増加する方向にしか変化しないためである。つまり、チップ間のレジずれが発生した際には、ドットによる紙面の表面被服率は減少するだけである。従って、ある程度の広さを持つ領域で判断すれば、つなぎ部の画像濃度の低下が顕著になる。これにより、チップ取り付け誤差やヘッド取り付け誤差、記録媒体の搬送量の変動が発生すると、これらに伴う画像濃度の変動が発生することとなる。
【0068】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。尚、第1の実施形態で既に説明した構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0069】
図27は、本実施形態のつなぎヘッドの概要を説明するための図である。同図において、つなぎヘッドには、第1チップ31と第2チップ32を含む複数のチップが、搬送方向と交差する方向に千鳥状に並べて配置されている。各チップは複数のノズル列が搬送方向と垂直に並べて配置されている。各チップは複数のノズル列を有しており、第1チップと第2チップは一部ノズルが重複して配置されている。本例では、ノズル間隔は1200dpi、各チップのノズル列数は8列、重複部のノズル数は128ノズルである。搬送方向の上流側のノズル列から順にA〜Hと称するものとする。
【0070】
次に、図28は、プレーンとノズル列の対応を示す図である。本例では、プレーンの分割数は2であり、プレーン1のデータはA〜D列の4列に、プレーン2のデータはE〜H列の4列にそれぞれ割り当てられる。
【0071】
図29は、本実施形態における第1チップの画像データ処理フローを表す図である。第1の実施例との相違点は、1チップに備えられるノズル列数が8列になっており、それぞれ独立にマスクを適用できる点である。第2のチップの画像データ処理フローも第1チップと同様となっている。
【0072】
図30は、重複部へのマスク適用例として、(a)マスク適用例1と(b)マスク適用例2を示したものである。同図(a),(b)とも、第1チップは図の右端がチップ端部に相当し、左側ほどチップ中央部に近くなる。また、同図(a),(b)とも、第2チップは図の左端がチップ端部に相当し、右側ほどチップ中央部に近くなる。
【0073】
まず、図30(a)のマスク適用例1を説明する。最初に、1200dpiで128画素をノズル列数の8列で割ると1列あたり16画素になる。そこで、マスク適用例1では、ノズル列のノズル配列方向に16画素を1区画として各区画にマスクを適用するか否かをノズル列列毎に独立に決めるものとする。各ノズル列とも、グラデーションマスクが適用されるのはノズル配列方向に任意の1区画のみである。グラデーションマスクが適用される区画よりもチップ中央側は全ビット「ON」のマスクを適用する。一方、グラデーションマスクが適用される区画よりも、チップの端部側は全ビット「OFF」のマスクを適用する。そして、グラデーションマスクを適用する区画を全列でずらすことにより、チップ全体での記録デューティもグラデーションになるようにしている。尚、同図において、全ビット「OFF」のマスクの領域は白、全ビット「ON」のマスクの領域は黒、グラデーションマスクを適用する領域は黒から白への遷移で示す。
【0074】
このマスク適用例1において、グラデーションマスクが適用される区画のグラデーションマスクの形状は、同一チップ内で全列異なっていても、少なくとも1部が異なっていても、全列同じであっても、どの場合にもプレーン間でドット重なりを作ることができる。これは、ある区画で全列のマスクパターンを比較すると、2プレーン間のうち少なくとも各1列は別のマスクが適用されているからである。
【0075】
以上のように、マスク適用例1の特徴は、重複部の中心部において第1チップのプレーン2の記録デューティと第2チップのプレーン1の記録デューティが互いに最大になる点である。これにより、第1チップと第2チップでのドット重なり量を中心部で高めることができるので、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
次に、図30(b)を用いて、マスク適用例2について説明する。マスク適用例2は、マスク適用例1と同じグラデーションマスクを使用しながらも、グラデーションマスクを適用する区画の位置を変更している。このマスク適用例2の特徴は、マスク適用例1と比較すると、チップつなぎ部中央部においてチップ内におけるドット重なり率が高いため、相対的にチップ間のドット重なり率が低く抑えられている。
【0077】
以上、マスク適用例1および2によれば、グラデーションマスクを適用する区画を変更することにより、チップつなぎ部の中央部におけるチップ間のドット重なり率を適切に調整することが可能となる。従って、チップ間でレジずれが発生したときにも、つなぎ部のスジを低減することができる。
【0078】
尚、本実施形態においては、ノズル列を区画に分けるという考えて方を導入して説明を行ったが、従来のようにグラデーションの勾配を各ノズル列独立に適宜調整することによって、チップ間のドット重なり数を調整することが可能である。また、チップ間のドット重なり率を調整できれば良く、その手段はマスクに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0079】
13 制御部
15 コントローラ
16 外部機器
100 プリンタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配手段と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配手段とを有し、
前記第2分配手段は、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2分配手段は、少なくとも一部のプレーンで、前記ノズル列のノズル配列方向における記録デューティの増加率もしくは減少率を異ならせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2分配手段は、マスクパターンを用いて画像データを分配することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記マスクパターンは、グラデーションマスクであることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記マスクパターンは、第1チップと第2チップの対応するノズル列の少なくとも一部において、排他関係にあることを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記マスクパターンは、同じチップの異なるノズル列の少なくとも一部において、異なることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配手段と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配手段とを有し、
前記第2分配手段は、前記重複部において、前記第1チップと第2チップで重複して記録されるドットが発生するように画像データを分配することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記第2分配手段は、少なくとも一部のプレーンで、前記ノズル列のノズル配列方向における記録デューティの増加率もしくは減少率を異ならせることを特徴とした請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第2分配手段は、マスクパターンを用いて画像データを分配することを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記マスクパターンは、グラデーションマスクであることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記マスクパターンは、第1チップと第2チップの対応するノズル列の少なくとも一部において、排他関係にあることを特徴とする請求項9または10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記マスクパターンは、同じチップの異なるノズル列の少なくとも一部において、異なることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項13】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配工程と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配工程とを有し、
前記第2分配工程では、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせることを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配工程と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配工程とを有し、
前記第2分配工程では、前記重複部において、前記第1チップと第2チップで重複して記録されるドットが発生するように画像データを分配することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配手段と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配手段とを有し、
前記第2分配手段は、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2分配手段は、少なくとも一部のプレーンで、前記ノズル列のノズル配列方向における記録デューティの増加率もしくは減少率を異ならせることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2分配手段は、マスクパターンを用いて画像データを分配することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記マスクパターンは、グラデーションマスクであることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記マスクパターンは、第1チップと第2チップの対応するノズル列の少なくとも一部において、排他関係にあることを特徴とする請求項3または4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記マスクパターンは、同じチップの異なるノズル列の少なくとも一部において、異なることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理装置であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配手段と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配手段とを有し、
前記第2分配手段は、前記重複部において、前記第1チップと第2チップで重複して記録されるドットが発生するように画像データを分配することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記第2分配手段は、少なくとも一部のプレーンで、前記ノズル列のノズル配列方向における記録デューティの増加率もしくは減少率を異ならせることを特徴とした請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第2分配手段は、マスクパターンを用いて画像データを分配することを特徴とする請求項7または8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記マスクパターンは、グラデーションマスクであることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記マスクパターンは、第1チップと第2チップの対応するノズル列の少なくとも一部において、排他関係にあることを特徴とする請求項9または10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記マスクパターンは、同じチップの異なるノズル列の少なくとも一部において、異なることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項13】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配工程と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配工程とを有し、
前記第2分配工程では、複数のプレーンのうち少なくとも一部のプレーンで分配方法を異ならせることを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
インクを吐出するための複数のノズル列を有する第1チップおよび第2チップを前記ノズル列のノズル配列方向と交差する方向に重複部を有するように配列した記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって前記記録媒体に画像を記録するために、前記重複部に相当する入力画像データを処理するための画像処理方法であって、
前記第1チップおよび第2チップそれぞれの少なくとも1列のノズル列の組を同一のプレーンとし、前記重複部に対応する多値画像データを複数のプレーンに分配する第1分配工程と、
前記複数のプレーンの画像データを前記第1チップおよび第2チップに分配する第2分配工程とを有し、
前記第2分配工程では、前記重複部において、前記第1チップと第2チップで重複して記録されるドットが発生するように画像データを分配することを特徴とする画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2012−6259(P2012−6259A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144213(P2010−144213)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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