説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】スクリーンにおける投射画像の位置をユーザが調整する際、投射レンズを移動させるレンズシフトと、液晶パネル上での画像位置を移動させる画像シフトのいずれかしか行えず、利便性が低かった。
【解決手段】ユーザによる投射位置移動指示に応じて、レンズシフトと画像シフトを連動制御する。例えば、スクリーン201上における画像の画像投射領域204について、まずレンズシフトを行って最大投射領域203ごと移動する。そして、最大投射領域203が投射レンズの可動範囲202を逸脱する場合には、次に画像シフトを実行することで、最大投射領域203内で画像投射領域204を移動する。これにより、スクリーン201上の画像投射領域204を最大限にシフトすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成パネルに表示した画像をスクリーン等の投射面に拡大投射する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テレビジョンの受像機やプレゼンテーション用の大画面表示装置として、投射表示装置が利用されている。投射表示装置は、スクリーン等の投射面に対し、以下のように画像を拡大投射する。すなわち、光源からの照射光を用いて、液晶パネルに代表される、複数の画像形成素子から構成される画像形成パネルをミラーや偏光板等の光学系を介して照明し、該画像形成パネルに形成された画像を投射レンズを介してスクリーンに拡大投射する。
【0003】
この種の投射表示装置において、スクリーンに投射される画像位置(投射位置)を調整する機能として、投射レンズの位置を移動させるレンズシフト機能が知られている。レンズシフトとは例えば、光軸に直交する2軸のうち、少なくとも1軸方向の一定範囲内で投射レンズを移動(シフト)することで投射方向を変更し、スクリーンに対する投射位置を調整する機能である(例えば特許文献1参照)。レンズシフトを行うことによって、ユーザが投射された画像を見ながら、UI(ユーザインタフェース)等を介して投射位置の調整を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第03268886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の投射表示装置においては、液晶パネルに代表される画像形成パネルの多画素化に伴って、画像形成パネルの画素数よりも、該パネルに形成される画像領域(画像形成領域)の画素数が小さい場合がある。この場合、画像形成領域の周辺領域に黒、または単色の画像を付加するなどして、画像形成パネルにマスク領域を形成することが一般的である。
【0006】
投射表示装置においてはまた、上述したように投射レンズをシフトさせて投射位置を調整するレンズシフト機能に対し、画像形成パネル内で画像の画像形成領域を移動(シフト)させる画像シフト機能が知られている。画像シフトとはすなわち、画像形成領域の位置を画像形成パネル内でシフトさせて、スクリーンに対する投射位置を調整する機能である。
【0007】
しかしながら、上記従来の投射表示装置においては、レンズシフト機能と画像シフト機能の両方を有している場合であっても、両者は互いに独立した機能であった。したがって、ユーザが投射位置を調整する場合には、レンズシフトと画像シフトのいずれかを選択して行う必要があり、利便性が低かった。例えば、ユーザがレンズシフト機能を用いて画像形成領域の投射位置を調整する際には、画像シフト機能を用いることでさらに広範囲な調整が可能であるにも関わらず、その調整範囲は投射レンズの可動限界までに制限されていた。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、以下の機能を有する画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。すなわち、投射面に対する画像の投射位置を調整する際に、投射レンズを移動させるレンズシフト機能と画像形成パネルにおける画像形成領域を移動させる画像シフト機能を連続制御することで、より広範囲な調整を行う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。
【0010】
すなわち、光源と画像形成パネル、および投射レンズを用いて画像を投射面に投射する投射手段と、前記投射レンズを移動するレンズシフト手段と、前記画像形成パネルにおける画像形成面において、前記画像が形成される画像形成領域を移動する画像シフト手段と、前記投射面に投射される画像の移動を指示する移動指示情報を入力する指示入力手段と、前記移動指示情報に応じて、前記レンズシフト手段に対する前記投射レンズの移動方向と移動量を示すレンズシフト命令、および前記画像シフト手段に対する前記画像形成領域の移動方向と移動量を示す画像シフト命令を出力する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記移動指示情報に応じて前記レンズシフト手段と前記画像シフト手段のいずれか一方が動作し、該動作の終了後に他方が動作するように、前記レンズシフト命令および前記画像シフト命令を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、投射面に対する画像の投射位置を調整する際に、投射レンズを移動させるレンズシフト機能と画像形成パネルにおける画像形成領域を移動させる画像シフト機能を連続制御することで、より広範囲な調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態における投射表示装置の概略構成を示すブロック図、
【図2】第1実施形態における投射画像を説明する図、
【図3】第1実施形態におけるシフト調整処理を示すフローチャート、
【図4】第2実施形態におけるシフト調整処理を示すフローチャート、
【図5】第3実施形態における投射表示装置の概略構成を示すブロック図、である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0014】
<第1実施形態>
本実施形態では、光源からの照射光を用いて液晶パネル等の画像形成パネルを照明し、該画像形成パネルに形成された画像を投射レンズを介してスクリーン等の投射面に拡大投射する画像処理装置である、投射表示装置について説明する。
【0015】
●装置構成
図1は、本実施形態における投射表示装置の概略構成を示すブロック図である。同図において、画像シフト部101は、画像形成パネル102の画素数よりも入力画像の画素数が小さい場合に、画像形成パネル102に形成される画像の位置を移動する画像シフト機能を制御する。詳細には、制御部105から出力される画像シフト命令によって示される移動量と移動方向を示す情報に基づいて、画像形成パネル102の各画素に対する入力画像の書き込みタイミングを決定する。画像形成パネル102に入力画像が書き込まれない領域に対しては、黒、または単色の画像を書き込むものとして、出力信号を生成する。以下、画像形成パネル102に形成される入力画像の領域を、画像形成領域と称する。
【0016】
画像形成パネル102は、複数の画像形成素子からなり、その面上に入力した画像を形成する。画像形成パネル102は例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)などの反射型液晶パネルであって、不図示の各種変換回路及びパネルドライバを有する。画像シフト部101からの出力信号は、まず信号レベルに応じて駆動電圧に変換され、さらに極性反転処理によって交流信号に変換される。変換された交流信号は、DA変換処理によってアナログ信号へと変換された後に、パネルドライバを介して液晶パネルへと印加され、画像が形成される。なお、液晶パネルがデジタル入力である場合にはDA変換処理が不要であることは言うまでも無い。また、画像形成パネル102としては、DMD(Digital Micromirror Device)を用いても良いし、透過型の液晶パネルを用いても良い。
【0017】
光源106は、例えば高圧水銀ランプ等の白色光源であって、不図示のダイクロイックミラーによってRGBの3原色に分光される。分光されたそれぞれの光は、不図示の偏光板を介して画像形成パネル102へと入射され、RGBそれぞれの液晶パネルへの照射光となる。光源106として、発光ダイオード(LED)やレーザなどを用いても良い。画像形成パネル102では、液晶パネルの印加電圧に応じたRGBそれぞれの透過光、または反射光を、不図示のクロスダイクロプリズムによって合成し、該合成光を投射レンズ部103へ出力する。投射レンズ部103は投射レンズを有しており、入力された合成光が投射レンズを介して、前方に設置された投射面としてのスクリーン107に拡大投射される。
【0018】
レンズシフト部104は、投射レンズ部103への入射光である合成光の光軸に対する少なくとも1つの直交軸上の所定範囲内で、投射レンズの位置を移動(シフト)するレンズシフト機能を制御する。レンズシフトによって合成光の投射方向を変更することで、スクリーンに対する画像の投射位置を調整することができる。なお、投射レンズのシフト量は、制御部105から出力されるレンズシフト命令によって示される移動量と移動方向を示す情報に基づいて決定される。
【0019】
制御部105は、画像シフト部101とレンズシフト部104におけるシフト動作を連続制御する。すなわち、入力画像の画像領域情報と、ユーザ指示に応じた投射位置移動指示情報に基づいて、画像シフトとレンズシフトのそれぞれに対する移動量と移動方向を示す情報を決定し、それぞれのシフト命令として出力する。その際に、投射位置移動指示情報に応じてレンズシフトと画像シフトのいずれか一方が動作し、該動作の終了後に他方が動作するように、制御する。ここで画像領域情報とは、入力画像のサイズを示す情報である。また投射位置移動指示情報とは、ユーザが投射位置の調整を行う際に、UIを介した指示入力により得られる情報であって、スクリーンに対する投射画像の移動方向(水平または/および垂直)を示す。なお、投射位置移動指示情報はUIからの情報に限らず、例えば投射表示装置に取り付けたカメラ等のセンサによって獲得した、スクリーンと画像の位置関係を示す情報であっても良い。
【0020】
●シフト調整処理
以下、制御部105において、画像シフト及びレンズシフトを連動させて制御するシフト調整処理について、図2及び図3を用いて説明する。
【0021】
図2は、本実施形態における投射画像を説明する図である。同図において、201は投射面としてのスクリーンであり、図1のスクリーン107に相当する。203は、スクリーン201における最大投射領域であり、すなわち、画像形成パネル102の全画素を用いた投射を行った場合にスクリーン201に投射可能な領域である。204は入力画像が投射される画像投射領域であり、最大投射領域203よりも小さい領域である。例えば画像形成パネル102のサイズが水平2048画素×垂直1080画素、入力画像のサイズが水平1280画素×垂直1024画素であって、入力画素と投射画素が1対1対応となるドットバイドット表示を行う場合等に、画像投射領域204が発生する。画像投射領域204は入力画像のサイズ、すなわち画像形成パネル102上の画像形成領域に依存する。なお、最大投射領域203内であって、画像投射領域204の外側である領域(図2において斜線で示す領域)は、黒レベルを示す画像によってマスクされるものとする。202は、レンズシフトによって投射レンズを可動範囲の限界(可動限界)までシフトした際に、最大投射領域203が移動可能な範囲(レンズ可動範囲)を示している。
【0022】
図3は、本実施形態におけるシフト制御処理の一例を示すフローチャートである。まず制御部105が、投射位置移動指示情報を参照し、投射位置の移動指示が有るか否かを判定する(S101)。投射位置移動指示情報とは上述したように、例えばUIを介して得られる情報である。ここでUIとは、例えば上下左右の4つのボタンを有したリモートコントローラ(リモコン)として実現され、ユーザはスクリーン107に投射された画像を見ながら、スクリーン107に対して画像をシフトしたい方向のボタンを押下する。なお、ユーザによる投射位置の移動指示は、図2においてスクリーン201上に投射された画像投射領域204に対して行われるものである。
【0023】
S101において投射位置の移動指示があった場合、S102でレンズシフトが実行される。S102ではすなわち、まず制御部105が、投射した画像がユーザの指示に応じた方向にシフトするように、投射レンズの移動方向を決定する。するとレンズシフト部104が、制御部105で決定した投射レンズの移動方向に従って、レンズシフトを実行する。このときのシフト量は、制御部105で予め設定されている移動量に基づいて行われるものとする。この移動量は固定値であっても良いし、画像領域情報によって示される入力画像の投射サイズ(以下に示す画像投射領域のサイズ)に応じて都度算出されても良い。このレンズシフトにより、図2(a)に示す画像投射領域204が、最大投射領域203ごと移動する。
【0024】
制御部105は、S102でのレンズシフトの後、投射レンズが可動限界に達したか否かを判定する(S103)。可動限界に達したか否かの判定は、制御部105において移動方向と移動量の累積値を記憶しておき、最大投射領域203の初期位置に対して該累積値分の移動を施した際に、最大投射領域203がレンズ可動範囲202を超えるか否かを判定すれば良い。また、レンズシフト部104に可動限界を判断する機構を設けても良い。S103で投射レンズが可動限界に達していない場合には、投射位置の移動指示が終了したか否かを判定し(S104)、投射位置の移動指示が終了していればレンズシフトを終了し(S105)、一連のシフト調整処理を完了する。一方、S104で投射位置の移動指示が終了していない場合にはS102へと戻り、レンズシフトを続行する。
【0025】
次に、S103で投射レンズが可動限界に達していた場合の処理について説明する。ここで図2(b)は、図2(a)に示す投射画像に対して、ユーザがリモコンの右ボタンを押下中にレンズ可動限界に達した場合の例を模式的に示しており、最大投射領域203が、レンズシフト可能な限界位置まで達した状態を示している。この場合、制御部105は、まずレンズシフトを終了するよう制御し(S106)、次に画像シフトを実行する(S107)。S107ではまず制御部105が、投射画像がユーザの指示に応じた方向にシフトするように、画像シフトの移動方向を決定する。すると画像シフト部101が、該決定された画像シフトの移動方向に従って、画像シフトを実行する。なお、画像シフトもレンズシフトと同様に、制御部105で予め設定されている移動量に基づいて行われる。この画像シフトにより、図2(b)に示す画像投射領域204が、最大投射領域203内で移動する。
【0026】
S107での画像シフトの後、制御部105は画像領域情報を参照し、入力画像が投射される画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱するか否かを判定する(S108)。この逸脱判定は例えば、画像形成パネル102における、現在の画像の形成位置すなわち画像形成領域に基づいて行われる。詳細には、制御部105において画像形成パネル102の画像形成面上での画像形成領域の移動方向と移動量の累積値を記憶しておき、画像形成領域の初期位置に該累積値分の移動を施した際に、画像形成面を逸脱するか否かを判定すれば良い。画像形成パネル102において画像形成領域が画像形成面を逸脱する場合に、スクリーン201上において画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱すると判定される。逸脱する場合には画像シフトを終了し(S110)、一連のシフト調整処理を完了する。ここで図2(c)は、図2(b)に示すレンズ可動限界にある投射画像に対し、リモコンの右ボタンが押下され続けた状況下で画像シフトを行なうことで、画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱しない限界まで達した状態を示している。すなわち、スクリーン201上で画像投射領域204が最大限にシフトされた状態を示している。
【0027】
S108で画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱しない場合には、投射位置の移動指示が終了したか否かを判定し(S109)、投射位置の移動指示が終了した場合には画像シフトを終了する(S110)。一方、投射位置の移動指示が終了していない場合はS107へと戻り、画像シフトを続行する。
【0028】
以上説明したように本実施形態によれば、ユーザがスクリーンに投射された画像の位置を調整する際、投射レンズの可動限界を判定することでレンズシフトと画像シフトを連動させつつ、投射位置の調整を行う。これにより、特に画像投射領域204が最大投射領域203よりも小さい場合に、単一のUIで、画像投射領域204の投射位置の調整がレンズシフト限界を超えて最大限に可能となる。すなわち、ユーザがスクリーンに対する画像の投射位置を調整する際、レンズシフトか画像シフトかを意識することなく、単一のUIによる調整が可能となり、利便性が向上する。
【0029】
なお、本発明におけるシフト調整処理は、図2、図3を用いて説明した例に限定されるものではない。例えば図3のS106,S107においてレンズシフトから画像シフトへ移行する間に、所定の待ち時間を設定し、ユーザに対して移行の有無を知らせるような構成としても良い。なお、ここでの待ち時間とはすなわち、レンズシフト及び画像シフトのいずれについてもその移動量を0とする時間である。
【0030】
さらに、S108で画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱した後、画像シフトを終了せず、逸脱した状態での画像形成を続行しても良い。例えば、S110における画像シフト終了の前に所定の待ち時間を設定し、該待ち時間内に投射位置の移動指示が終了しない場合には、そのまま画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱するように画像シフトを行っても良い。
【0031】
また、レンズシフトと画像シフトの処理順を入れ替えても良い。この場合、まず画像シフトを行った後、画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱する場合に、レンズシフトを行えば良い。
【0032】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態においては、画像シフトの実行後に入力画像のサイズに変更があると、画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱してしまう場合が発生しうる。第2実施形態では、第1実施形態におけるシフト調整後に、入力画像のサイズを示す画像領域情報に変更があった場合に、さらなるシフト調整(画像シフト)を行うことを特徴とする。なお、第2実施形態における投射表示装置の構成は上述した第1実施形態で図1に示した構成と同様であるため、説明を省略する。
【0033】
以下、第2実施形態におけるシフト調整処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。上述したように図4のフローチャートに示す処理は、上述した第1実施形態で図3のフローチャートに示す処理の終了後に実行される。
【0034】
まず制御部105が、入力画像の画像領域情報を参照し、現在投射中の画像と次に投射すべき画像との間において画像サイズに変更があるか否かを判定する(S201)。例えば、動画像を投射中に連続するフレームのサイズに変更があった場合に、S201で画像領域情報に変更があったと判定される。変更があれば、変更後の画像領域情報に対応する画像投射領域204が、最大投射領域203を逸脱するか否かを判定する(S202)。逸脱しない場合にはそのままシフト調整処理を終了するが、逸脱する場合には、画像投射領域204が最大投射領域203を逸脱しない限界位置に達するまで、画像シフトを実行する(S203)。S203における画像シフト処理の詳細としては、制御部105が、画像投射領域204が最大投射領域203に収まる位置まで最小限に移動するように、画像シフトの移動方向を決定し、所定の移動量に基づく画像シフトを繰り返し行う。
【0035】
以上説明したように第2実施形態によれば、上述した第1実施形態で得られる効果に加えて、入力画像サイズの変更によって画像投射領域が最大投射領域を逸脱してしまうことを防止することができ、利便性がさらに向上する。
【0036】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。上述した第1および第2実施形態では、画像領域情報として入力画像のサイズ情報を使用する例を示した。しかしながら、入力画像そのものがその周辺部(画像周辺部)に黒レベルの画像(黒マスク)を埋め込んだ画像である、すなわち画像形成領域内に黒マスクが含まれるような、黒マスク画像を投射する手法もある。例えば水平、垂直のサイズ比が16:9である入力画像に対して4:3の画像として投射を行う際に、画像自体の左右に黒マスクを埋め込む場合がある。また、投射表示装置側での処理においても、例えばキーストン(台形歪み補正)処理や縮小処理によって、画像周辺部に黒マスクを埋め込む場合がある。第3実施形態では、画像周辺部に埋め込まれた黒マスク領域については画像形成領域外とみなし、画像シフトが可能な範囲を広げることを特徴とする。
【0037】
図5は、第3実施形態における投射表示装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示す構成は、上述した第1実施形態で図1に示した構成に対し、黒マスク領域判定部501を備えたことを特徴とする。他の構成については図1と同様であるため同一番号を付し、説明を省略する。
【0038】
黒マスク領域判定部501は、画像周辺部において、その信号レベルが黒を示す、すなわち黒レベルに相当する所定レベル以下である領域を、黒マスク領域と判定する。なお、ここで画像周辺部としては、入力画像に対して黒マスクが埋め込まれる可能性のある、該画像の端辺から該画像内の所定範囲にある領域とし、予め設定されているものとする。そして、入力画像から黒マスク領域を除外した領域を、新たな画像形成領域として設定する。そして、該設定された新たな画像形成領域の画像サイズを示す情報を画像領域情報として、制御部105へ出力する。制御部105およびその他の構成によるシフト調整処理については、上述した第1または第2実施形態と同様に実行される。
【0039】
以上説明したように第3実施形態によれば、画像周辺部に埋め込まれた黒マスク領域を判定し、該黒マスク領域を画像形成領域外とみなして画像シフトを行う。これにより、最大投射領域内における画像投射領域が小さくなるに伴ってその可動範囲がより広いものとなり、すなわち画像シフトが可能な範囲を広げることができる。
【0040】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と画像形成パネル、および投射レンズを用いて画像を投射面に投射する投射手段と、
前記投射レンズを移動するレンズシフト手段と、
前記画像形成パネルにおける画像形成面において、前記画像が形成される画像形成領域を移動する画像シフト手段と、
前記投射面に投射される画像の移動を指示する移動指示情報を入力する指示入力手段と、
前記移動指示情報に応じて、前記レンズシフト手段に対する前記投射レンズの移動方向と移動量を示すレンズシフト命令、および前記画像シフト手段に対する前記画像形成領域の移動方向と移動量を示す画像シフト命令を出力する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記移動指示情報に応じて前記レンズシフト手段と前記画像シフト手段のいずれか一方が動作し、該動作の終了後に他方が動作するように、前記レンズシフト命令および前記画像シフト命令を出力することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は前記移動指示情報に応じて、まず前記レンズシフト命令を出力し、該レンズシフト命令に応じて移動した前記投射レンズの位置が所定の可動範囲を逸脱する場合に、前記画像シフト命令を出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記移動指示情報に応じて、まず前記画像シフト命令を出力し、該画像シフト命令に応じて移動した前記画像形成領域が前記画像形成面を逸脱する場合に、前記レンズシフト命令を出力することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記画像のサイズ情報を入力する入力手段を有し、
前記制御手段は、前記サイズ情報に基づき、前記画像形成領域が前記画像形成面を逸脱しないように、前記画像シフト命令を出力することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
さらに、前記画像の端辺から該画像内の所定範囲にある画像周辺部において、信号レベルが所定レベル以下である領域を黒マスク領域とし、該画像から該黒マスク領域を省いた新たなサイズ情報を設定する黒マスク領域判定手段、を有し、
前記制御手段は、前記黒マスク領域判定手段で設定された新たなサイズ情報に基づいて、前記画像シフト命令を出力することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記レンズシフト手段は、前記レンズシフト命令に基づいて、前記投射レンズを入射光の光軸に対する直交軸上の所定範囲内で移動することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像シフト手段は、前記画像シフト命令に基づいて、前記画像形成面の各画素に対して前記画像の書き込みタイミングを制御することで、前記画像形成面における前記画像形成領域を移動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
光源と画像形成パネル、および投射レンズを用いて画像を投射面に投射する投射手段、前記投射レンズを移動するレンズシフト手段、前記画像形成パネルにおける画像形成面において、前記画像が形成される画像形成領域を移動する画像シフト手段、指示入力手段、および制御手段を有する画像処理装置における画像処理方法であって、
前記指示入力手段が、前記投射面に投射される画像の移動を指示する移動指示情報を入力し、
前記制御手段が、前記移動指示情報に応じて、前記レンズシフト手段に対する前記投射レンズの移動方向と移動量を示すレンズシフト命令、および前記画像シフト手段に対する前記画像形成領域の移動方向と移動量を示す画像シフト命令を、前記レンズシフト手段と前記画像シフト手段のいずれか一方が動作し、該動作の終了後に他方が動作するように出力することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
コンピュータ装置で実行されることにより、該コンピュータ装置を請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−37082(P2013−37082A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171318(P2011−171318)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】