説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】電子写真方式の画像形成装置において、どのようなサイズの文字および線幅の線を細線化した場合であっても、原画像の線幅および濃度を再現する。
【解決手段】ラスタライズ部は、外部から受け取ったPDLデータから1200dpiのラスタイメージを生成し解像度変換部に出力する。ラスタイメージは、解像度変換部によって2400dpiに展開され、細線化処理部によって細線化処理を2回施される。その結果、細線化量が「1」、「2」のラスタイメージがそれぞれ画像メモリに記憶される。コントローラのタグ出力部は、外部から受け取ったPDLデータから線幅等に応じたタグを生成して解像度変換部へ出力する。解像度変換部は出力されたタグを2400dpiに展開し、選択部へ出力する。選択部は、展開されたタグに基づいて、画素毎に画像メモリから適切な細線化量のラスタイメージを選択し、その選択結果を制御部へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、感光体の特性のために静電潜像の境界部分がボケることがある。このため、記録材の表面に形成した線画像の幅が太くなり、例えば5ポイント以下の小さな文字は潰れて識字できなくなるおそれがある。静電潜像のボケを改善する方法としては、露光時のビーム径の小径化や感光体膜圧の薄膜化などが一般的に知られているが、これらのほかに、画像データを制御することにより細線や文字の潰れを改善する技術が開発されている。特許文献1には、注目画素を中心とした5画素×5画素のウィンドウ内に含まれる各画素を検査することにより、エッジと呼ばれる画像の境界部分を検出して細線化を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−341249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図16は、画像形成装置における細線化処理の流れの一例を示したフロー図である。この図及び以下の説明では、解像度の指標として「dpi」という単位を用いる。これは、dot/inch、つまり長さ1インチあたりの画素数を意味している。
画像形成装置は、まず、ページ記述言語(以下、PDL:Page Description Languageという)で記述された画像データを1200dpiのラスタイメージに変換するラスタライズを行い(ステップSc01)、次いで、これを解像度変換により2400dpiのラスタイメージに変換する(ステップSc02)。ここで、この解像度変換とは、単純にラスタイメージの解像度を高くするものであり、これにより、画像形成時の解像度に合わせたラスタイメージを得ることができる。1200dpiのラスタイメージを構成する最小単位である1画素は、2400dpiのラスタイメージに変換されると、2画素×2画素、すなわち4画素で表されることになる。このようにして、得られた2400dpiのラスタイメージは、細線化処理により細線化されてから(ステップSc03)、画像形成処理がなされる(ステップSc04)。これにより、細線化されたラスタイメージに応じた2400dpiの画像が用紙などの記録材の表面に形成される。
【0004】
ここで、細線化処理について説明する。細線化処理とは、ラスタイメージを画素毎に検査し、当該画素を含む複数の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合に、当該画素を背景画素、つまり異なる色の画素に置き換えることで、画像の細線化を行う処理である。細線化処理には周知の方法が種々あるが、その例として、収縮アルゴリズムと、Hilditchの細線化アルゴリズムについて説明する。
図17(a)は、細線化処理に用いるウィンドウを示した図である。図に示すウィンドウは、中心の注目画素Pの周囲を、周辺画素P〜Pが取り囲んでいる3画素×3画素(3行3列)のウィンドウである。ここで、細線化処理に用いるウィンドウを構成する画素群の一辺の画素数を「ウィンドウサイズw」とすると、このウィンドウのウィンドウサイズwは「3」である。収縮アルゴリズムやHilditchの細線化アルゴリズムは、周辺画素P〜Pと注目画素Pとの関係を検査して、この関係が所定の条件に合致する場合に、注目画素Pを削除候補、つまり異なる色の画素への置換候補とする。
図17(b)は、ラスタイメージに対する走査を示す図である。図に示す格子は、ラスタイメージを構成する各画素を表している。細線化処理において、ラスタイメージに含まれる各画素を図に示す矢線Rsに沿って1画素ずつ注目画素として順に検査する。すなわち、注目画素を主走査方向(図における左から右へ向けての方向であり、「行」の方向)に検査し、右端まで検査したら左端に戻り、走査線を副走査方向(図における上から下へ向けての方向であり、「列」の方向)に1画素分、移動させて、また注目画素を主走査方向に検査する。このような検査を経て決定した削除候補の画素は、その後の削除処理により、まとめて背景色の画素、例えば白画素に置き換えられる。
図17(c)は、収縮アルゴリズムにおける削除候補の決定方法を示した図である。収縮アルゴリズムにおいては、注目画素Pが黒色の画素(以下、黒画素という)であり、かつ、周辺画素P〜Pのうち、一つでも白色の画素(以下、白画素という)がある場合には、注目画素Pは、削除候補画素となる。例えば、図17(c)の左図に示すように、注目画素Pの左上、すなわち周辺画素Pが白画素の場合には、同右図に示すように、注目画素Pは削除候補画素となり、削除処理を経た後に、白画素に置き換えられる。
【0005】
次に、Hilditchの細線化アルゴリズムについて簡単に説明する。
Hilditchの細線化アルゴリズムとは、図17(a)に示した3画素×3画素のウィンドウにおける注目画素Pが、周辺画素P〜Pとの関係において、以下の6つの条件を満たす場合に、注目画素Pを削除候補とするアルゴリズムである。
<条件1>注目画素Pが図形要素であること(例えば背景の白画素に対して色が異なる黒画素であること)。
<条件2>注目画素Pが、境界点であること。
<条件3>注目画素Pが、端点でないこと。
<条件4>注目画素Pが、孤立点でないこと。
<条件5>注目画素Pを削除しても、周辺画素の連結性が保存されること。
<条件6>注目画素Pが、幅2画素の線を構成している場合であって、これを削除しても、その線の片側だけが削除されること。
【0006】
図18は、細線化処理としてHilditchの細線化アルゴリズムを用いたときの入力線幅と出力線幅との関係を細線化処理の回数毎に示した図である。この図では、対比のためにオフセット印刷における入力線幅と出力線幅の関係を示しているが、オフセット印刷の場合には、どの入力線幅であっても出力線幅に略等しいので、原画像(つまりページ記述言語で記述された画像データによって表される画像)に近い画像が印刷されていることがわかる。一方、電子写真方式の印刷は、入力線幅の大きい領域と小さい領域とで、原画像の再現性が著しく異なっている。例えば、図に示すように、入力線幅が84.66μm以上のときには、細線化処理なしの場合と細線化処理を1回行った場合には、出力線幅が入力線幅よりも大きくなるが、細線化処理を2回行った場合には、出力線幅は入力線幅に略近い値となるので、細線化処理を2回行う方が原画像の再現性が高い。しかし、入力線幅が84.66μm未満のときには、細線化処理を2回行った場合には、出力線幅が入力線幅を大きく下回るが、細線化処理を1回行った場合には、出力線幅は入力線幅に略近い値となるので、細線化処理を1回行う方が原画像の再現性が高い。
【0007】
図19は、上述の細線化処理としてHilditchの細線化アルゴリズムを用いた場合における入力線幅と出力濃度との関係を細線化処理の回数毎に示した図である。図に示すように、入力線幅が84.66μm以上のときには、電子写真方式の全ての場合において、出力濃度はオフセット印刷よりやや濃いか同程度である。しかし、入力線幅が84.66μm未満のときには、細線化処理を行うと出力濃度がオフセット印刷に比べて低くなり、特に細線化処理を2回行うと著しく低くなる。
【0008】
以上のことから、電子写真方式では、画像形成装置の特性により、入力線幅と出力線幅の関係および入力線幅と出力濃度の関係は線形比例していないことがわかる。したがって、印刷する原画像の入力線幅に関わらず細線化処理の回数を固定した場合、入力線幅が小さくなると出力線幅が著しく小さくなるとともに、出力濃度が著しく薄くなってしまい、印刷がかすれたり、消失したりする可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、電子写真方式の画像形成装置において、文字のサイズや線幅の大小に関わらず、原画像の線幅および濃度に近い画像を再現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る画像処理装置は、ラスタ形式で表現されたイメージデータであるラスタイメージを取得するラスタイメージ取得手段と、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを用いて、細線化量の異なる複数のラスタイメージを生成するラスタイメージ生成手段と、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージに含まれる画素毎に細線化量を指定する指定情報を取得する指定情報取得手段と、前記ラスタイメージ生成手段により生成された複数のラスタイメージから、取得された前記指定情報により指定される細線化量に応じたラスタイメージを画素毎に選択し、ラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段に対して、選択した前記ラスタイメージを出力する選択手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像処理装置は、ラスタ形式で表現されたイメージデータであるラスタイメージを取得するラスタイメージ取得手段と、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを用いて、細線化量の異なる複数のラスタイメージを生成するラスタイメージ生成手段と、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしているか否かにより、当該ラスタイメージに含まれる画素毎に細線化量を指定する指定情報を生成する指定情報生成手段と、前記ラスタイメージ生成手段により生成された複数のラスタイメージから、生成された前記指定情報により指定される細線化量に応じたラスタイメージを画素毎に選択し、ラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段に対して、選択した前記ラスタイメージを出力する選択手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記ラスタイメージ生成手段は、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを、当該ラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージに変換する解像度変換手段と、前記解像度変換手段の変換によって得られたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第1細線化手段と、前記第1細線化手段によって細線化がなされたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第2細線化手段とを具備するとよい。
【0013】
また、好ましくは、前記ラスタイメージ生成手段は、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを、当該ラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージに変換し、その変換後の当該ラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第1細線化手段と前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行い、細線化されたラスタイメージを、当該ラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージに変換する第2細線化手段とを具備するとよい。
【0014】
また、好ましくは、前記ラスタイメージ生成手段は、複数の画素の配置パターンと、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージとの対応関係を記憶する対応関係記憶手段と、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージの各画素及びその周辺の画素の配置パターンと、前記対応関係記憶手段に記憶されている配置パターンとを照合し、取得された前記入力ラスタイメージを、当該ラスタイメージに一致する配置パターンに対応付けられたラスタイメージに置換する置換手段と、前記置換手段による置換がなされたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第1細線化手段と、前記第1細線化手段による置換がなされたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第2細線化手段とを具備するとよい。
【0015】
また、上述の態様において、前記第1細線化手段及び前記第2細線化手段が細線化を行うときの前記画素群は、前記各画素と当該画素を中心として周囲を取り囲む周辺画素とからなる、3行3列の画素群であることが望ましい。
【0016】
また、本発明に係る画像形成装置は、上述の画像処理装置と、前記画像処理装置の前記選択手段から出力されたラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段とを備えることを特徴とする。
好ましくは、前記像形成手段は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、前記帯電手段による帯電を経た像保持体の表面を露光して潜像を形成する露光手段潜像形成手段と、現像剤を前記潜像の形成された像保持体の表面に供給して当該潜像を現像する現像手段と、前記現像により得た像を記録媒体に転写する転写手段とを備え、前記露光手段潜像形成手段は、前記選択手段が選択したラスタイメージにおける細線化量が大きい場合には、前記像保持体の表面を露光するときの光量を小さくし、前記選択手段が選択したラスタイメージにおける細線化量が小さい場合には、前記像保持体の表面を露光するときの光量を大きくするとよい。
【0017】
また、本発明に係る画像形成装置は、上述の画像処理装置と、画像の内容を記述した記述データを解析して前記ラスタイメージ及び前記指定情報を生成し、当該ラスタイメージデータを前記画像処理装置の前記ラスタイメージ取得手段に供給し、当該指定情報を前記指定情報取得手段に供給する供給手段と、前記画像処理装置の前記選択手段から出力されたラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子写真方式の画像形成装置において、文字のサイズや線幅の大小に関わらず、原画像の線幅および濃度に近い画像を再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
[A.第一実施形態]
[A−1.構成]
図1は、本発明の第一実施形態に係る画像形成装置1の構造を示す図である。
同図に示すように、画像形成装置1は、用紙収容部12と、画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kと、転写部14と、定着部15を備えている。これらの各構成は、後述する制御部1020によって制御され、ラスタ形式のイメージデータであるラスタイメージに基づきトナー像を形成する像形成手段として機能する。この像形成手段が形成する像の解像度は、例えば2400dpiである。なお、符号のY,M,C,Kはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーに対応した構成であることを意味している。用紙収容部12は、A3やA4などの所定サイズにカットされた用紙を収容する。用紙収容部12に収容されている用紙は、ピックアップローラなどにより1枚ずつ取り出され、用紙搬送路を経由して転写部14へと搬送される。
【0020】
画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kは、それぞれ、像保持体である感光体ドラム、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電部、帯電部により帯電を経た感光体ドラムの表面を露光して潜像を形成する潜像形成部、現像剤であるトナーを潜像形成部により潜像の形成された感光体ドラムの表面に供給して潜像を現像する現像部、一次転写ロール及びクリーニング部材を備えており、ラスタイメージに応じたトナー像を形成し、転写部14の中間転写ベルト141に重ねて転写する。転写部14は、中間転写ベルト141と、二次転写ロール142と、中間転写ベルト141を挟んで二次転写ロール142と対向する対向ロール143とを備えており、画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kの現像部により得たトナー像を用紙に転写する転写手段である。中間転写ベルト141は、図示せぬ駆動ロールによって図中のA方向に周回させられており、画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kによってトナー像が重ねて転写されると、そのトナー像を二次転写ロール142及び対向ロール143の位置へと搬送する。二次転写ロール142は、中間転写ベルト141との電位差によって、中間転写ベルト141上のトナー像を用紙収容部12から搬送されてきた用紙に転写させる。中間転写ベルト141からトナー像を転写された用紙は、定着部15へ搬送される。
【0021】
定着部15は、加熱ロール151と加圧ロール152とを備え、二次転写ロール142から搬送されてきた用紙を加熱ロール151及び加圧ロール152の間に挟み込み、その用紙に熱と圧力とを加えて、トナー像を用紙に定着させる。加熱ロール151は、その内部にハロゲンランプなどの熱源を有し、用紙表面の温度を約100度に加熱する。加圧ロール152は、加熱ロール151に押し当てられており、加熱ロール151と加圧ロール152との間を通る用紙に圧力を加える。また、加熱ロール151の表面近傍には、金属や樹脂などで形成された剥離部材153が設けられている。加熱ロール151と加圧ロール152によって熱と圧力とが加えられることで定着工程を経た用紙は、この剥離部材153によって加熱ロール151から剥離され、用紙搬送路を形成する2つのガイド154によって排紙口19へと誘導される。
以上が画像形成装置1の構造である。
【0022】
図2は、画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
画像形成装置1は、コントローラ1000、画像処理部1010、制御部1020、画像メモリ1030、操作部1040、表示部1050、画像形成部1060を備えている。画像形成装置1は、パーソナルコンピュータなどの外部PC2と有線や無線などにより通信可能に接続されており、外部PC2からPDLで記述された画像データ(以下、PDLデータという)を受信する。コントローラ1000は、ラスタライズ部1001とタグ出力部1002を備える。コントローラ1000のラスタライズ部1001は、外部PC2から受信したPDLデータに基づいてラスタライズを行って1200dpiのラスタイメージを生成し、そのラスタイメージを画像処理部1010へ出力する。また、コントローラ1000のタグ出力部1002は、PDLデータから線幅や文字サイズに関する情報を抽出する。そして、このタグ出力部1002は、テーブル記憶部10021に記憶されたタグテーブルを参照することにより、抽出した情報に対応するタグを生成して画像処理部1010へ出力する。このようなタグは、ラスタライズ部1001が出力したラスタイメージの1200dpiの画素毎に生成され、後述する細線化処理における細線化量を指定する指定情報である。すなわち、コントローラ1000は、画像の内容を記述した記述データであるPDLデータを解析してラスタイメージ及びタグを生成し、これらを画像処理部に供給する供給手段である。
図3は、テーブル記憶部10021に記憶されたタグテーブルの一例を示す図である。タグテーブルには、タグの種類と、線幅、文字のサイズ(すなわち、ポイント数)が対応付けられて記述されている。例えば、線幅が84.66μm未満の場合は、タグは「1」であり、明朝体の文字が6pt以上である場合には、タグは「2」といった具合である。
【0023】
図2に戻って説明を続ける。画像処理部1010の取得部1019は、コントローラ1000から上述した1200dpiのラスタイメージを取得するとともに、このラスタイメージに含まれる画素毎に細線化量を指定するタグ(指定情報)を取得する。すなわち、画像処理部1010の取得部1019は、ラスタイメージ取得手段として機能するとともに、指定情報取得手段として機能する。画像処理部1010の解像度変換部1012は、コントローラ1000によって出力される1200dpiのラスタイメージをこれよりも高い解像度である2400dpiのラスタイメージに解像度変換して画像メモリ1030に出力する。また、解像度変換部1012は、タグ出力部1002が出力したタグを2400dpiに展開して、選択部1014へ出力する。この処理は、単純に1200dpiの1画素についてのタグを、タグの種類は変えずに、その位置に対応する2400dpiの2画素×2画素(すなわち4画素)についてのタグに置き換えるものである。
【0024】
画像メモリ1030は解像度変換部1012が出力した2400dpiのラスタイメージを記憶する。画像処理部1010の細線化処理部1013は、画像メモリ1030に記憶された2400dpiのラスタイメージに対し、上述したウィンドウサイズw=3のウィンドウを用いてHilditchの細線化アルゴリズムに基づく細線化処理を行い、これにより生成されたラスタイメージを画像メモリ1030に出力する。さらに、画像処理部1010の細線化処理部1013は、この細線化処理が1回施されたラスタイメージに対し、2回目の細線化処理を行い、これにより生成されたラスタイメージを画像メモリ1030に出力する。すなわち、画像処理部1010の細線化処理部1013は、細線化量が「1」のラスタイメージを生成する第1細線化手段として機能するとともに、細線化量が「2」のラスタイメージを生成する第2細線化手段として機能する。そして、画像処理部1010の解像度変換部1012と細線化処理部1013は、取得部1019によって取得されたラスタイメージを用いて、細線化量の異なる複数のラスタイメージを生成するラスタイメージ生成手段として機能する。
【0025】
選択部1014は、コントローラ1000のタグ出力部1002から取得部1019が受け取ったタグに応じて、細線化処理部1013によって細線化処理されたラスタイメージの中から、画素毎に適切な細線化量のラスタイメージを選択し、選択結果を制御部1020に出力する。これは例えば、選択部1014は、ある画素についてのタグが「1」のときには、対応する画素について細線化処理が1回施されたラスタイメージを選択し、そのタグが「2」のときには、対応する画素について細線化処理が2回施されたラスタイメージを選択するということである。
【0026】
制御部1020は、CPU(Central Processing Unit)などであり、画像形成装置1の各部を制御する。また、制御部1020は、上述の選択部1014が選択したラスタイメージを像形成手段に出力する。すなわち、選択部1014と制御部1020は、解像度変換部1012と細線化処理部1013により生成された複数のラスタイメージから、取得部1019が受け取ったタグにより指定される細線化量に応じたラスタイメージを画素毎に選択し、画像形成部1060に対して、選択したラスタイメージを出力する選択手段として機能する。表示部1050は、例えば液晶ディスプレイ装置であり、制御部1020から与えられるデータに基づいて利用者との対話画面や各種の情報を表示する。操作部1040はボタンやスイッチなどを備えており、利用者による操作を受け付けてその操作内容に応じた信号を制御部1020に供給する。画像形成部1060は、上述した用紙収容部12と、画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kと、転写部14と、定着部15などを含む像形成手段であり、制御部1020によって画像メモリ1030から読み出され転送されたラスタイメージに基づいて画像形成処理を行い、記録材(例えば用紙など)の表面に画像を形成する。
【0027】
[A−2.動作]
次に、第一実施形態の画像形成装置1の動作と、画像形成装置1によって奏される効果について説明する。
図4は、この画像形成装置1の処理の流れを示す図である。まず、コントローラ1000のラスタライズ部1001は、外部PC2からPDLデータを受け取ると、ラスタライズを行って、像形成手段の解像度2400dpiよりも低く且つその半分以上である解像度解像度、ここではちょうど半分の1200dpiのラスタイメージを生成する。これにより得られた1200dpiのラスタイメージは、画像形成装置1の画像処理部1010に送られ、解像度変換部1012によって、像形成手段の解像度である2400dpiのラスタイメージに変換される。そして、このラスタイメージは、画像処理部1010の細線化処理部1013によって、細線化処理を施される。ここで、細線化処理は1回行われた後、その細線化処理後のラスタイメージを基にさらに2回目の細線化処理が行われ、細線化処理を1回行った後(すなわち、細線化量が「1」)のラスタイメージと、細線化処理を2回行った後(すなわち、細線化量が「2」)のラスタイメージがそれぞれ画像メモリ1030に記憶される。
【0028】
一方、コントローラ1000のタグ出力部1002は、上述のPDLデータを受け取ると1200dpiの画素毎に、線幅または文字サイズに応じたタグを生成して画像処理部1010の解像度変換部1012へ出力する。画像処理部1010の解像度変換部1012は、タグ出力部1002から出力されたタグを2400dpiに展開し、これを選択部1014へ出力する。選択部1014は、2400dpiに展開されたタグに基づいて、2400dpiの画素毎に、上述した画像メモリ1030に記憶されたラスタイメージから適切な細線化量のラスタイメージを選択し、その選択結果を制御部1020へ出力する。選択部1014の選択結果を受けた制御部1020は、選択されたラスタイメージを画像形成部1060に送り、画像形成部1060は、送られたラスタイメージに基づいて画像形成処理を行う。
【0029】
このようにすると、入力線幅が84.66μm以上の領域では、細線化処理が2回行われたラスタイメージが印刷され、入力線幅が84.66μm未満の領域では、細線化処理が1回行われたラスタイメージが印刷される。そのため、入力線幅が太い領域では、画像形成装置の特性による出力線幅の増加を防止するように充分な細線化が施され、一方、入力線幅が細い領域では、画像の消失やかすれを防止するように細線化量が抑制される。すなわち、どのような入力線幅の原画像に対しても再現性の高い印刷が行われる。
【0030】
[B.第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る画像形成装置1を説明する。以下、第一実施形態と共通する構成については、共通の符号を付し、説明を省略する。
[B−1.構成]
図5は、第二実施形態における画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。
コントローラ1000のラスタライズ部1001は、第一実施形態のラスタライズ部1001と同じくラスタイメージ生成手段ではあるが、外部PC2から受け取ったPDLデータに基づいて生成し、画像処理部1010の取得部1019に出力するラスタイメージの解像度が600dpiである点において、第一実施形態のラスタライズ部1001と異なっている。また、第二実施形態の画像形成装置1は、画像処理部1010にスムージング処理部1011を備えている。このスムージング処理部1011は、パターン記憶部10111を有している。このパターン記憶部10111は、予め定めた複数の画素の配置パターンと、取得部1019によって取得されたラスタイメージの解像度よりも高い解像度である2400dpiのラスタイメージとの対応関係を記憶する対応関係記憶手段である。このパターン記憶部10111が記憶するラスタイメージの最小単位は、2400dpiの1画素である。そして、スムージング処理部1011は、上述した600dpiのラスタイメージを画素毎に検査し、これらの画素とその周辺の画素の組み合わせが一致するパターンを、上述したパターン記憶部10111に記憶されたパターンから抽出して、その画素を、抽出したパターンに対応するラスタイメージで置き換えてから、画像メモリ1030に出力する。すなわち、スムージング処理部1011は、取得部1019によって取得されたラスタイメージの各画素及びその周辺の画素の配置パターンと、対応関係記憶手段に記憶されている配置パターンとを照合し、このラスタイメージを、当該ラスタイメージに一致する配置パターンに対応付けられたラスタイメージに置換する置換手段である。
【0031】
[B−2.動作]
次に、第二実施形態における画像形成装置1の動作について説明する。
図6は、第二実施形態における画像形成装置1の処理の流れを示す図である。第二実施形態の画像形成装置1は、上述したように、600dpiでラスタライズを行う。また、第二実施形態の画像形成装置1は、コントローラ1000のラスタライズ部1001が出力した600dpiのラスタイメージに対して、第一実施形態の解像度変換ではなく、スムージング処理を行う。
【0032】
ここで、スムージング処理について説明する。上述のスムージング処理部1011は、コントローラ1000のラスタライズ部1001によって出力された600dpiのラスタイメージを受け取る。そして、スムージング処理部1011は、このラスタイメージを画素毎に検査し、これらの画素とその周辺の画素の組み合わせが一致するパターンを、パターン記憶部10111に記憶されたパターンから抽出して、その画素を、抽出したパターンに対応するラスタイメージで置き換えてから、画像メモリ1030に出力する。
【0033】
図7(a)は、この600dpiのラスタイメージの一例を示す図である。この図に示すように、600dpiの1画素分の幅を有する斜線画像は、コントローラ1000のラスタライズ部1001によって黒画素同士が互いの頂点のみで接するラスタイメージに変換されている。一方、図7(b)は、スムージング処理部1011のパターン記憶部10111が記憶するパターンの一例を示す図である。また、図7(c)は、図7(b)に示すパターンとパターン記憶部10111において、対応付けて記憶されている2400dpiのラスタイメージである。この図7(b)の格子は600dpiの画素を示しており、中心が注目画素で、0は白画素、1は黒画素、Xは白画素であっても黒画素であってもよい画素を示している。スムージング処理部1011は、上述のラスタイメージに含まれる各画素を検査して、検査した画素を中心とする3画素×3画素が図7(b)に示すようなパターンと一致すると、その画素を図7(c)に示す2400dpiにおける4画素×4画素のラスタイメージに置き換える。
【0034】
このようにして、スムージング処理部1011によるスムージング処理がなされることにより、図7(a)のラスタイメージは、図7(d)に示すようなラスタイメージへと変換される。この図7(d)において斜線で示した部分は、図7(a)のラスタイメージと異なる部分であり、黒画素を示している。図7(a)のラスタイメージは、その全ての画素がスムージング処理部1011によって2400dpiのラスタイメージに置き換えられているため、図7(d)に示すラスタイメージの最小単位は2400dpiの1画素である。
【0035】
図8は、第二実施形態の画像形成装置1における入力線幅と出力線幅との関係を示す図である。また、図9は、第二実施形態の画像形成装置1における入力線幅と出力濃度との関係を示す図である。図に示すように、入力線幅に応じて細線化処理の回数を変えることにより、電子写真方式の印刷において、印刷しようとする画像データがどのような入力線幅のものであっても、オフセット印刷とほぼ同等の出力線幅および出力濃度が得られ、再現性の高い印刷をすることができる。
【0036】
[C.変形例]
上述した実施形態を次の例のように変形してもよい。また、これらの変形例を適宜組み合わせてもよい。
(変形例1)上述した実施形態では、画像形成部の潜像形成部において露光に用いられる光量と、画像処理部で選択されたラスタイメージの細線化量との関係について特に言及しなかったが、画像形成部の潜像形成部は、画像処理部が選択したラスタイメージにおける細線化量が大きい場合には、感光ドラムの表面を露光するときの光量を小さくし、この細線化量が小さい場合には、感光ドラムの表面を露光するときの光量を大きくするようにしてもよい。この場合、例えば、画像形成部は、画像処理部からラスタイメージとともに画像処理部で用いたタグを受け取り、タグの種類に応じて画像形成ユニットの出力強度(光量)を調整するようにすればよい。
図10は、この変形例1における画像形成部の処理の流れを示す図である。画像形成部は、画像処理部から2400dpiのラスタイメージを受け取るとともに、画像処理部からタグを受け取る。このタグは画像形成部の光量制御部によって解析される。具体的には、この光量制御部は、タグの種類と画像形成ユニットの潜像形成部において露光に用いられる光量との対応関係を記憶している。例えば、タグ「1」に対応する光量を「1.4」とすると、タグ「2」に対応する光量は「1」という具合である。そして、受け取ったタグとこの対応関係とを比較して、タグに対応する光量を特定し、パワー変調部に出力する。パワー変調部は光量制御部が特定した光量に応じて、画素毎に露光に用いる光量を変調して画像形成ユニットに出力する。その結果、画像形成ユニットは、パワー変調部によって変調された光量で潜像形成部に対して露光を行い、画像が形成される。
このようにすると、入力線幅が細い画像データに対し、画像処理部が細線化処理の回数を減じてもなお、出力濃度が薄くなるような場合であっても、光量を増量させることで、再現性の高い印刷をすることができる。
【0037】
なお、上述の態様においては、細線化処理の回数を示すタグと同じタグを光量調整にも用いていたが、別のタグを用いてもよい。例えば、コントローラ1000のタグ出力部1002は、テーブル記憶部10021に細線化処理の回数とその条件との対応関係が記述されたタグテーブルのほかに、パワー変調部で変調する光量とその条件との対応関係が記述されたタグテーブルを記憶している。そして、タグ出力部1002は、細線化処理の回数を画素毎に指定するタグ(以下、細線化処理用タグという)と、パワー変調部で変調する光量を画素毎に指定するタグ(以下、光量指定用タグという)を、それぞれ解像度変換部に出力する。解像度変換部はこれらのタグをそれぞれ解像度変換する。そして、解像度変換された細線化処理用タグは、画像処理部の選択器に出力され、解像度変換された光量指定用タグは、画像形成部に出力されるようにすればよい。このようにすれば、例えば、細線化処理の回数が切り換えるべき線幅の閾値として、84.66μmを採用し、パワー変調部で変調する光量が切り換えるべき線幅の閾値として、上述の閾値とは異なる42.33μmを採用することができる。すなわち、細線化処理の回数とパワー変調部で変調する光量を、異なる閾値を用いて別々に調整することができる。
【0038】
(変形例2)上述した第一実施形態では、細線化処理の前に解像度変換がされていたが、解像度変換の前に細線化処理を行ってもよい。
図11は、この変形例2における画像処理部の処理の流れを示す図である。この図11において、図4と異なるのは、コントローラ1000のラスタライズ部1001が出力した1200dpiのラスタイメージに対し、まず解像度変換をしてから細線化をする処理の流れに加えて、細線化をしてから解像度変換をする処理の流れがあることである。上述したように、細線化処理とは、ラスタイメージを画素毎に検査し、当該画素を含む複数の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合に、当該画素を背景画素に置き換えることで、画像の細線化を行う処理である。1200dpiのラスタイメージに対して先に2400dpiのラスタイメージに変換する解像度変換をしてから細線化処理をすると、例えば、細線化処理で削除される1画素分の幅の線は2400dpiにおける1画素分の幅の線である。一方、細線化処理を解像度変換に先立って行うと、この細線化処理で削除される1画素分の幅の線は、1200dpiにおける1画素分の幅を有しているから、2400dpiに換算すると2画素分の幅を有している。したがって、細線化処理を解像度変換に先立って行うと、解像度変換をしてから細線化処理を行う場合の2回分に相当する細線化が行われることになる。
このようにすると、コントローラが出力するラスタイメージの解像度、すなわち比較的低い解像度で細線化処理を行うことができるので、必要なメモリや処理ステップ数などの処理規模を小さくすることができる。
【0039】
(変形例3)上述した実施形態では、コントローラ1000のタグ出力部1002は、PDLデータから線幅や文字サイズに関する情報を抽出し、テーブル記憶部10021に記憶されたタグテーブルを参照することにより、抽出した情報に対応するタグを生成して画像処理部1010へ出力していたが、タグを生成するのはコントローラ1000に限られない。例えば、画像処理部1010側でタグを生成してもよい。
図12は、この変形例3に係る画像形成装置1の電気的構成を示すブロック図である。この図12において、図2と異なるのは、コントローラ1000にタグ出力部1002がないことと、画像処理部1010にタグ生成部1015があることである。この画像処理部1010のタグ生成部1015は、細線パターン記憶部10151を備えており、この細線パターン記憶部10151には、細線のパターンが複数記憶されている(詳細は後述する)。
【0040】
図13は、この変形例3に係る画像形成装置1の処理の流れを示す図である。この図に示すように、コントローラ1000からは1200dpiのラスタイメージのみが画像処理部1010に出力されており、タグは出力されていない。このラスタイメージは、図11に示す変形例2と同様、画像処理部1010の取得部1019によって取得され、まず解像度変換をしてから細線化をする処理と、細線化をしてから解像度変換をする処理とが並列して行われる。それとともに、上述したタグ生成部1015は、このラスタイメージに対し、細線パターン記憶部10151に記憶されている細線のパターンを参照して、ターンマッチング処理をすることにより、タグを生成する。
【0041】
図14は、1200dpiの細線を検出するためのパターンである。この図14(a)〜(m)はすべて、ウィンドウサイズ=3のウィンドウであり、この格子はコントローラ1000から出力されるラスタイメージの解像度の大きさである。すなわち、この実施形態において、この格子は1200dpiを表している。タグ生成部1015は、このラスタイメージを画素毎に検査し、注目画素とその周囲の画素の関係が、図14(a)〜(m)のいずれかのパターンに一致する場合には、その画素についてのタグを「1」として記憶する。一方、タグ生成部1015が検査した画素(注目画素)とその周囲の画素の関係が、図14(a)〜(m)のいずれのパターンにも一致しない場合には、タグ生成部1015は、次のパターンとの照合を行う。
【0042】
図15は、600dpiの細線を検出するためのパターンである。この図15(a)〜(d)はすべて、ウィンドウサイズ=5のウィンドウであり、この格子はコントローラ1000から出力されるラスタイメージの解像度の大きさである。タグ生成部1015は、図14に示したパターンのいずれにも一致しない画素に対し、図15(a)〜(d)に示すパターンとの比較を行う。ここで、図15において、内部が白色である格子は白色の画素、黒色である格子は黒色の画素を示す。そして、内部に「X」と描かれている格子は、黒色でも白色でもどちらでもよい画素を示す。これらのパターンは2つの隣接する黒色画素を少なくとも1つずつの白色画素で挟んだパターンを示しており、1200dpiにおける2画素分の幅、すなわち、600dpiにおける1画素分の幅の細線があることを示している。タグ生成部1015は、注目画素とその周辺の画素の関係が図15(a)〜(d)のいずれかのパターンに一致する場合には、その画素についてのタグを「1」として記憶する。一方、タグ生成部1015が検査した画素(注目画素)とその周囲の画素の関係が、図15(a)〜(d)のいずれのパターンにも一致しない場合には、その画素についてのタグを「2」として記憶する。すなわち、タグ生成部1015は、取得部1019によって取得されたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしているか否かにより、このラスタイメージに含まれる画素毎に細線化量を指定する指定情報を生成する指定情報生成手段である。
【0043】
図13に戻って、説明を続ける。このようにして、タグ生成部1015によって1200dpiの画素毎にタグが生成されると、このタグは解像度変換部によって2400dpiに変換され、選択部1014に出力される。選択部1014は、受け取ったタグに応じて、細線化処理部1013によって細線化処理されたラスタイメージの中から、画素毎に適切な細線化量のラスタイメージを選択し、選択結果を制御部1020に出力する。
このようにすると、従来のコントローラをそのまま画像処理部に用いても、画像処理部が適切にPDLデータから細線を解析・抽出するので、どのような入力線幅に対しても、適切な細線化量を選択して画像を形成することができる。
なお、この変形例3において、コントローラ1000が受け取るデータはPDLデータでなくてもよい。例えば、他の装置が出力したラスタイメージを受け取って、ラスタイメージを出力してもよい。要するにコントローラ1000はラスタイメージを出力することができればよい。また、第二実施形態のコントローラ1000においては、スムージング処理に用いる解像度と同じ解像度のラスタイメージを出力するのであれば、入力するデータはPDLデータでなくてもよい。例えば、コントローラ1000は、入力されたデータを自動的に検知して、PDLデータであれば上述したラスタライズを行い、ラスタイメージであれば、必要に応じて解像度変換を行って、所定の解像度のラスタイメージを生成して出力すればよい。
【0044】
(変形例4)上述した実施形態では、コントローラ1000のラスタライズ部1001は、外部PC2から受け取ったPDLデータをラスタライズしていたが、これらのコントローラは、外部PC2以外からPDLデータを受け取ってもよい。例えば、原画像を読み取ってPDLデータを出力する画像読取装置からPDLデータを受け取ってもよい。
【0045】
(変形例5)また、上述した実施形態では、画像形成装置1は、細線化処理において、Hilditchの細線化アルゴリズムを用いていたが、他の細線化アルゴリズムを用いてもよい。例えば、上述した収縮アルゴリズムを用いてもよい。
特に、ウィンドウサイズ=3で細線化を行う細線化アルゴリズムは、処理に必要となるメモリ量やステップ数などの計算資源を最低限に抑えることができるため、望ましい。
【0046】
(変形例6)また、上述した実施形態では、細線化処理が行われる回数、すなわち細線化量は「1」または「2」のうちいずれかであるが、細線化量として細線化処理を全く行わない「0」を選択するようにしてもよい。この場合は、例えば、以下のような具合である。画像メモリ1030には、細線化量「1」および「2」のラスタイメージとともに、全く細線化を行っていない(つまり細線化量「0」の)ラスタイメージが記憶されている。そして、テーブル記憶部10021のタグテーブルには、タグ「0」の条件が記述されている。ここで、PDLデータに記述されたある領域の線幅や文字のサイズがこの条件に合致した場合には、コントローラ1000のタグ出力部1002は、その領域について「0」のタグを出力し、これを受けた選択部1014が図4に一点鎖線で示すように、上述した細線化量「0」のラスタイメージを選択する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第一実施形態に係る画像形成装置の構造を示す図である。
【図2】画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】テーブル記憶部に記憶されたタグテーブルの一例を示す図である。
【図4】画像形成装置の処理の流れを示す図である。
【図5】第二実施形態における画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】第二実施形態における画像形成装置の処理の流れを示す図である。
【図7】第二実施形態における600dpiのラスタイメージの一例と、これに対して施すスムージング処理を説明するための図である。
【図8】第二実施形態の画像形成装置における入力線幅と出力線幅との関係を示す図である。
【図9】第二実施形態の画像形成装置における入力線幅と出力濃度との関係を示す図である。
【図10】変形例1における画像形成部の処理の流れを示す図である。
【図11】変形例2における画像処理部の処理の流れを示す図である。
【図12】変形例3に係る画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図13】変形例3に係る画像形成装置の処理の流れを示す図である。
【図14】1200dpiの細線を検出するためのパターンである。
【図15】600dpiの細線を検出するためのパターンである。
【図16】本発明の発明者らが先に発明した画像形成装置における細線化処理の流れの一例を示したフロー図である。
【図17】細線化処理に用いるウィンドウおよび細線化処理の方法を説明するための図である。
【図18】従来の細線化処理における、入力線幅と出力線幅との関係を細線化処理の回数毎に示した図である。
【図19】従来の細線化処理における、入力線幅と出力濃度との関係を細線化処理の回数毎に示した図である。
【符号の説明】
【0048】
1…画像形成装置、1000…コントローラ、1001…ラスタライズ部、1002…タグ出力部、10021…テーブル記憶部、1010…画像処理部、1011…スムージング処理部、10111…パターン記憶部、1012…解像度変換部、1013…細線化処理部、1014…選択部、1015…タグ生成部、10151…細線パターン記憶部、1020…制御部、1030…画像メモリ、1040…操作部、1050…表示部、1060…画像形成部、12…用紙収容部、14…転写部、141…中間転写ベルト、142…二次転写ロール、143…対向ロール、15…定着部、151…加熱ロール、152…加圧ロール、153…剥離部材、154…ガイド、19…排紙口、2…外部PC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラスタ形式で表現されたイメージデータであるラスタイメージを取得するラスタイメージ取得手段と、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを用いて、細線化量の異なる複数のラスタイメージを生成するラスタイメージ生成手段と、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージに含まれる画素毎に細線化量を指定する指定情報を取得する指定情報取得手段と、
前記ラスタイメージ生成手段により生成された複数のラスタイメージから、取得された前記指定情報により指定される細線化量に応じたラスタイメージを画素毎に選択し、ラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段に対して、選択した前記ラスタイメージを出力する選択手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
ラスタ形式で表現されたイメージデータであるラスタイメージを取得するラスタイメージ取得手段と、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを用いて、細線化量の異なる複数のラスタイメージを生成するラスタイメージ生成手段と、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしているか否かにより、当該ラスタイメージに含まれる画素毎に細線化量を指定する指定情報を生成する指定情報生成手段と、
前記ラスタイメージ生成手段により生成された複数のラスタイメージから、生成された前記指定情報により指定される細線化量に応じたラスタイメージを画素毎に選択し、ラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段に対して、選択した前記ラスタイメージを出力する選択手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記ラスタイメージ生成手段は、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを、当該ラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージに変換する解像度変換手段と、
前記解像度変換手段の変換によって得られたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第1細線化手段と、
前記第1細線化手段によって細線化がなされたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第2細線化手段と
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ラスタイメージ生成手段は、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージを、当該ラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージに変換し、その変換後の当該ラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第1細線化手段と
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行い、細線化されたラスタイメージを、当該ラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージに変換する第2細線化手段と
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ラスタイメージ生成手段は、
複数の画素の配置パターンと、前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージの解像度よりも高い解像度のラスタイメージとの対応関係を記憶する対応関係記憶手段と、
前記ラスタイメージ取得手段によって取得されたラスタイメージの各画素及びその周辺の画素の配置パターンと、前記対応関係記憶手段に記憶されている配置パターンとを照合し、取得された前記ラスタイメージを、当該ラスタイメージに一致する配置パターンに対応付けられたラスタイメージに置換する置換手段と、
前記置換手段による置換がなされたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第1細線化手段と、
前記第1細線化手段による置換がなされたラスタイメージに含まれる各画素及びその周辺の画素からなる画素群が所定の条件を満たしている場合には、当該各画素を異なる色の画素に置換して画像の細線化を行う第2細線化手段と
を具備することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1細線化手段及び前記第2細線化手段が細線化を行うときの前記画素群は、前記各画素と当該画素を中心として周囲を取り囲む周辺画素とからなる、3行3列の画素群である
ことを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置の前記選択手段から出力されたラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記像形成手段は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段による帯電を経た像保持体の表面を露光して潜像を形成する潜像形成手段と、
現像剤を前記潜像の形成された像保持体の表面に供給して当該潜像を現像する現像手段と、
前記現像により得た像を記録媒体に転写する転写手段と
を備え、
前記潜像形成手段は、
前記選択手段が選択したラスタイメージにおける細線化量が大きい場合には、前記像保持体の表面を露光するときの光量を小さくし、前記選択手段が選択したラスタイメージにおける細線化量が小さい場合には、前記像保持体の表面を露光するときの光量を大きくする
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像処理装置と、
画像の内容を記述した記述データを解析して前記ラスタイメージ及び前記指定情報を生成し、当該ラスタイメージデータを前記画像処理装置の前記ラスタイメージ取得手段に供給し、当該指定情報を前記指定情報取得手段に供給する供給手段と、
前記画像処理装置の前記選択手段から出力されたラスタイメージに基づき像を形成する像形成手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−211546(P2009−211546A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55375(P2008−55375)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】