説明

画像処理装置及びそれを用いた印刷装置並びにそのプログラム

【課題】低解像度でのコート処理用のデータを生成することにより、処理時間を短縮することができる。
【解決手段】印刷データは、高解像度ラスタライズ処理部23により生成された高解像度ラスターイメージに基づいて印刷データ生成部25により生成される。一方、コート処理用データは、低解像度ラスタライズ処理部27により、高解像度ラスターイメージよりも低解像度の低解像度ラスターイメージが生成され、この低解像度ラスターイメージに基づきオーバーコート処理用データ生成部31により生成される。オーバーコート処理用データは低解像度で扱われるので、高解像度で扱う場合に比較してオーバーコート処理に要する処理時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷された領域を覆うオーバーコート処理や、印刷前に印刷される領域を覆うアンダーコート処理などの画像の形成には直接的には寄与しないコート処理用のデータを生成する画像処理装置及びそれを用いた印刷装置並びにそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置として、印刷用紙に対してインクを吐出する印刷ヘッドと、印刷用紙が送られる方向において印刷ヘッドの下流側に配置されたオーバーコート部とを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この装置では、文字を含む画像の印刷データに応じて印刷ヘッドにより印刷用紙にインクを打滴する。そして、印刷ヘッドの下流側にあるオーバーコート部において、オーバーコート材を転写してインクが打滴された領域に対してオーバーコート処理を行う。これにより、インクが退色することを防止している。この装置では、印刷データに応じて画像の周囲を1画素だけ太らせ処理を行い、インクが打滴された領域より周囲に1画素だけ広くオーバーコート材を転写している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−264304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、オーバーコート処理を行う際に、高解像度のままで画像の周囲を1画素だけ太らせた処理を行うので、その処理時に長時間を要するという問題がある。
【0006】
なお、オーバーコート処理だけでなく、インクを打滴した際にインク滴が滲まないようにしたり、インク滴が印刷用紙中で安定しやすくしたりする等の理由で、インクを打滴する前に印刷用紙にアンダーコート処理を行うことがある。このアンダーコート処理であっても、太らせ処理を行う場合には長時間を要するという同様の問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、低解像度でのコート処理用のデータを生成することにより、処理時間を短縮することができる画像処理装置及びそれを用いた印刷装置並びにそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、入力画像データに基づき、コート処理用データを生成する画像処理装置において、印刷ヘッドの解像度に応じて高解像度で前記入力画像データをラスタライズし、高解像度ラスターイメージを生成する高解像度ラスタライズ処理部と、前記解像度よりも低解像度で前記入力画像データをラスタライズし、低解像度ラスターイメージを生成する低解像度ラスタライズ処理部と、前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷ヘッドに応じた印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記低解像度ラスターイメージに基づいてコート処理用データを生成するコート処理用データ生成部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、印刷データは、高解像度ラスタライズ処理部により生成された高解像度ラスターイメージに基づいて印刷データ生成部により生成される。一方、コート処理用データは、低解像度ラスタライズ処理部により、高解像度ラスターイメージよりも低解像度の低解像度ラスターイメージが生成され、この低解像度ラスターイメージに基づきコート処理用データ生成部により生成される。コート処理用データは低解像度で扱われるので、高解像度で扱う場合に比較してコート処理に要する処理時間を短縮することができる。
【0010】
なお、ここでいうコート処理用データの「コート処理」とは、印刷処理の前に、印刷領域に相当する領域における印刷用紙にコート処理を行う「アンダーコート処理」や、印刷処理の後に、印刷領域に相当する領域における印刷用紙にコート処理を行う「オーバーコート処理」のことである。アンダーコート処理は、印刷用紙の紙質を改善して、例えば、インクが印刷用紙において滲みにくくしたり、印刷用紙内部において安定するようにしたりするための処理である。また、オーバーコート処理は、印刷された画像を安定させる処理であり、例えば、印刷用紙に打滴されたインクが退色するあるいはインクがはがれることを防止するための処理である。
【0011】
また、本発明において、前記入力画像データがカラーデータで構成され、前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データを各色ごとに前記低解像度ラスターイメージを生成し、各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、前記コート処理用データ生成部に出力する合成部をさらに備えていることが好ましい(請求項2)。
【0012】
入力画像データがカラーデータである場合には、低解像度ラスタライズ処理部は、入力画像データを各色ごとに低解像度ラスターイメージを生成する。そして、合成部は、各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、コート処理用データ生成部に出力する。各色ごとに低解像度ラスターイメージを生成して合成するので、低解像度のラスターイメージであっても、比較的各色の領域に忠実にコート処理用データを生成できる。
【0013】
また、本発明において、前記入力画像データがカラーデータで構成され、前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データをモノクロ画像として前記低解像度ラスターイメージを生成することが好ましい(請求項3)。
【0014】
入力画像データがカラーデータである場合には、低解像度ラスタライズ処理部は、入力画像データをモノクロ画像として低解像度ラスターイメージを生成する。したがって、各色ごとに低解像度ラスタライズを行って構成する必要がなく、より効率的にコート処理用データを生成できる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、入力画像データに基づく印刷用紙への画像の印刷処理と、入力画像データに基づくコート用処理データによる印刷用紙へのコート処理とを行う印刷装置において、印刷ヘッドの解像度に応じて高解像度で前記入力画像データをラスタライズし、高解像度ラスターイメージを生成する高解像度ラスタライズ処理部と、前記解像度よりも低解像度で前記入力画像データをラスタライズし、低解像度ラスターイメージを生成する低解像度ラスタライズ処理部と、前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷ヘッドに応じた印刷データを生成する印刷データ生成部と、前記低解像度ラスターイメージに基づいてコート処理用データを生成するコート処理用データ生成部と、前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷用紙に画像を印刷する印刷ヘッドと、前記コート処理用データに基づいて前記印刷用紙に対してコート処理を行うコート処理ヘッドと、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、印刷データは、高解像度ラスタライズ処理部により生成された高解像度ラスターイメージに基づいて印刷データ生成部により生成される。一方、コート処理用データは、低解像度ラスタライズ処理部により、高解像度ラスターイメージよりも低解像度の低解像度ラスターイメージが生成され、この低解像度ラスターイメージに基づきコート処理用データ生成部により生成される。コート処理用データは低解像度で扱われるので、高解像度で扱う場合に比較してコート処理に要する処理時間を短縮することができる。また、印刷ヘッドは、高解像度ラスターイメージに基づき忠実に画像を印刷し、コート処理ヘッドは、コート処理用データに基づいて大まかにコート処理を行うので、印刷用紙への印刷処理に要する時間を短縮できる。
【0017】
また、本発明において、前記入力画像データがカラーデータで構成され、前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データを各色ごとに前記低解像度ラスターイメージを生成し、各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、前記コート処理用データ生成部に出力する合成部をさらに備えていることが好ましい(請求項5)。
【0018】
また、本発明において、前記入力画像データがカラーデータで構成され、前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データをモノクロ画像として前記低解像度ラスターイメージを生成することが好ましい(請求項6)。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、入力画像データに基づき、コンピュータのCPUとメモリによって実行されるコート処理用データを生成するプログラムにおいて、印刷ヘッドの解像度に応じて高解像度で前記入力画像データをラスタライズし、高解像度ラスターイメージを生成する高解像度ラスタライズ処理と、前記解像度よりも低解像度で前記入力画像データをラスタライズし、低解像度ラスターイメージを生成する低解像度ラスタライズ処理と、前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷ヘッドに応じた印刷データを生成する印刷データ生成処理と、前記低解像度ラスターイメージに基づいてコート処理用データを生成するコート処理用データ生成処理と、を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、印刷データは、高解像度ラスタライズ処理により生成された高解像度ラスターイメージに基づいて印刷データ生成処理により生成される。一方、コート処理用データは、低解像度ラスタライズ処理により、高解像度ラスターイメージよりも低解像度の低解像度ラスターイメージが生成され、この低解像度ラスターイメージに基づきコート処理用データ生成処理により生成される。コート処理用データは低解像度で扱われるので、高解像度で扱う場合に比較してコート処理に要する処理時間を短縮するプログラムを実現できる。
【0021】
また、本発明において、前記入力画像データがカラーデータで構成され、前記低解像度ラスタライズ処理は、前記入力画像データを各色ごとに前記低解像度ラスターイメージを生成し、各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、前記コート処理用データ生成処理に出力する合成処理をさらに備えていることが好ましい(請求項8)。
【0022】
また、本発明において、前記入力画像データがカラーデータで構成され、前記低解像度ラスタライズ処理は、前記入力画像データをモノクロ画像として前記低解像度ラスターイメージを生成することが好ましい(請求項9)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るインクジェット印刷装置によれば、印刷データは、高解像度ラスタライズ処理部により生成された高解像度ラスターイメージに基づいて印刷データ生成部により生成される。一方、コート処理用データは、低解像度ラスタライズ処理部により、高解像度ラスターイメージよりも低解像度の低解像度ラスターイメージが生成され、この低解像度ラスターイメージに基づきコート処理用データ生成部により生成される。コート処理用データは、低解像度で扱われるので、高解像度で扱う場合に比較してコート処理に要する処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
【図2】実施例1に係る画像処理装置を示すブロック図である。
【図3】低解像度ラスタライズ処理及びコート処理用データ生成処理を示す模式図であり、(a)は入力画像データを示し、(b)はY用データを示し、(c)はC用データを示し、(d)はM用データを示し、(e)はK用データを示し、(f)はオーバーコート処理用データを示す。
【図4】印刷処理を示すフローチャートである。
【図5】実施例2に係る画像処理装置を示すブロック図である。
【図6】低解像度ラスタライズ処理及びオーバーコート処理用データ生成処理を示す模式図であり、(a)は入力画像データを示し、(b)はオーバーコート処理用データを示す。
【図7】印刷処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
画像処理装置及び印刷装置並びにそのプログラムについて、インクジェット印刷システムを例に採って以下に説明する。
【実施例1】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図である。
【0027】
本実施例に係るインクジェット印刷システムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。給紙部1は、例えば、印刷対象であるロール状の連続紙WPを供給する。インクジェット印刷装置3は、供給された連続紙WPに対して印刷を行う。排紙部5は、印刷された連続紙WPをロール状に巻き取る。
【0028】
給紙部1は、ロール状の連続紙WPを水平軸周りに回転可能に保持し、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1はインクジェット印刷装置3の上流側に配置され、排紙部5はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0029】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1からの連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9に沿って下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。
【0030】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷ユニット13と、オーバーコート処理部14と、乾燥部15と、検査部17とを上流側から順に備えている。乾燥部15は、印刷ユニット13によって印刷された部分の乾燥を行う。検査部17は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかについて検査する。
【0031】
印刷ユニット13は、インク滴を吐出するインク吐出ヘッド19を備えている。インク吐出ヘッド19は、連続紙WPの搬送方向に沿って複数個配置されている。例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)イエロー(Y)について個別に4個のインク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yを備えている。また各インク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yは、連続紙WPの搬送方向と直交する水平方向(幅方向)にも複数個のインク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yを備えている。インク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yは、連続紙WPの幅方向における印刷領域を移動することなく印刷できるだけのインク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yを連続紙WPの幅方向に複数個備えている。つまり、本実施例におけるインクジェット印刷装置3は、インク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yが連続紙WPの搬送方向に直交する水平方向に主走査のために移動することがなく、位置固定のままで連続紙WPを送りながら連続紙WPに対して印刷を行う。この方式は、1パス方式と呼ばれる。
【0032】
なお、上記のインク吐出ヘッド19K、19C、19M、19Yが本発明における「印刷ヘッド」に相当する。
【0033】
また、印刷ユニット13の下流側に配置されたオーバーコート処理部14は、インクが打滴された連続紙WPにオーバーコート処理を行う。オーバーコート処理は、印刷ユニット13により画像が印刷された領域に対して、オーバーコート処理を行う。オーバーコート処理は、インクが打滴された領域を広く覆うように、インクの退色を防止するためのオーバーコート材をオーバーコート吐出ヘッド14Cから吐出する。オーバーコート吐出ヘッド14Cは、インク吐出ヘッド19と同様の構成であり、吐出される材料が異なる。
【0034】
なお、オーバーコート吐出ヘッド14Cが本発明における「コート処理ヘッド」に相当する。
【0035】
印刷ユニット13とオーバーコート処理部14は、後述するように画像処理装置21から受け取ったデータに基づいて画像を印刷したり、オーバーコート材を吐出したりする。
【0036】
次に、図2を参照して、画像処理装置21について説明する。なお、図2は、実施例1に係る画像処理装置を示すブロック図である。
【0037】
画像処理装置21は、高解像度ラスタライズ処理部23と、印刷データ生成部25と、低解像度ラスタライズ処理部27と、合成部29と、オーバーコート処理用データ生成部31とを備えている。
【0038】
高解像度ラスタライズ処理部23は、K用の高解像度ラスタライズ処理部23Kと、C用の高解像度ラスタライズ処理部23Cと、M用の高解像度ラスタライズ処理部23Mと、Y用の高解像度ラスタライズ処理部23Yとを備えている。高解像度ラスタライズ処理部23は、入力画像データが入力されると、インク吐出ヘッド19の解像度に合わせて、高解像度で各色のラスタライズを行い、高解像度ラスターイメージを生成する。ラスタライズは、ベクトルイメージ情報を印刷に必要なラスターイメージに変換する処理である。この処理により、高解像度ラスターイメージが各色ごとに生成される。
【0039】
印刷データ生成部25は、高解像度ラスタライズ処理部23の各色に対応するように、K用の印刷データ生成部25Kと、C用の印刷データ生成部25Cと、M用の印刷データ生成部25Mと、Y用の印刷データ生成部25Yとを備えている。各色の印刷用データ生成部25は、高解像度ラスタライズ処理部23の各色に対応して接続されている。印刷データ生成部25は、高解像度ラスタライズ処理部23からの高解像度ラスターイメージに基づいて、各色のインク吐出ヘッド19に応じた印刷データを生成する。より詳細には、高解像度ラスターイメージを各色のインク吐出ヘッド19に合わせてハーフトーン化処理が行われて印刷データが生成される。
【0040】
インク吐出ヘッド19は、K用のインク吐出ヘッド19Kと、C用のインク吐出ヘッド19Cと、M用のインク吐出ヘッド19Mと、Y用のインク吐出ヘッド19Yとが、印刷データ生成部25の各色に対応して接続されている。インク吐出ヘッド19は、ハーフトーン化された印刷データの階調に応じて、インク滴の大きさを調整してインクを連続紙WPに向けて吐出する。
【0041】
低解像度ラスタライズ処理部27は、K用の低解像度ラスタライズ処理部27Kと、C用の低解像度ラスタライズ処理部27Cと、M用の低解像度ラスタライズ処理部27Mと、Y用の低解像度ラスタライズ処理部27Yとを備えている。低解像度ラスタライズ処理部27は、入力画像データに基づいて、インク吐出ヘッド19の解像度より低い解像度で、各色のラスタライズを行い、低解像度ラスターイメージを生成する。低解像度とは、例えば、インク吐出ヘッド19の解像度の1/4である。
【0042】
合成部29は、低解像度ラスタライズ処理部27で生成された各色の低解像度ラスターイメージについて低解像度のままで論理和の演算を行って合成を行う。
【0043】
オーバーコート処理用データ生成部31は、合成された低解像度ラスターイメージに基づいて、オーバーコート処理用データを生成する。詳細には、合成された低解像度ラスターイメージに対して、オーバーコート吐出ヘッド14Cに合わせた水増しハーフトーン化処理が行われる。このようにして生成されたオーバーコート処理用データは、オーバーコート吐出ヘッド14Cに与えられ、水増しハーフトーン化処理されたオーバーコート処理用データに応じた領域にのみオーバーコート材を吐出する。
【0044】
なお、上記のオーバーコート処理用データ生成部31が本発明における「コート処理用データ生成部」に相当する。
【0045】
次に、図3を参照して、低解像度ラスタライズ処理及びオーバーコート処理用データ生成処理について説明する。なお、図3は、低解像度ラスタライズ処理及びオーバーコート処理用データ生成処理を示す模式図であり、(a)は入力画像データを示し、(b)はY用データを示し、(c)はC用データを示し、(d)はM用データを示し、(e)はK用データを示し、(f)はオーバーコート処理用データを示す。
【0046】
入力画像データを対象にして、低解像度ラスタライズ処理部27が解像度を1/4に変換する。例えば、低解像度ラスタライズ処理部27は、図3(a)に点線で示すように、入力画像データの解像度の1/4となるメッシュを想定し、そのメッシュの一つに入力画像データが1画素でも存在すれば、そのメッシュの一つにデータが存在するように変換する。したがって、図3(a)において横に細長い長方形を呈する入力画像データのY用データは、図3(b)に示すように縦方向に大きく引き延ばされ、右横方向にも引き延ばされる。同様に、入力画像データのC用データは、図3(c)に示すように、上下に引き延ばされ、左横方向にも引き延ばされる。また、入力画像データのM用データは、図3(d)に示すように、左右に引き延ばされ、縦方向の下に引き延ばされる。入力画像データのK用データは、図3(e)に示すように、上下方向及び左方向に引き延ばされる。これらのデータの論理和をとると、図3(f)に示すようなオーバーコート処理用データが生成される。
【0047】
本実施例におけるオーバーコート処理用データは、入力画像データについて1画素だけ周囲に太らせ処理を行うのではなく、単に、低解像度ラスタライズイメージを生成した後、それらの論理和をとるだけであるので、高速にオーバーコート処理用データを生成することができる。
【0048】
次に、図4を参照して、上述したインクジェット印刷システムにおける印刷処理について説明する。なお、図4は、印刷処理を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS1
高解像度ラスタライズ処理を行う。入力画像データに基づき、高解像度ラスタライズ処理部23(23K、23C、23M、23Y)は、インク吐出ヘッド19の解像度に合わせて、高解像度で各色のラスタライズを行い、高解像度ラスターイメージを生成する。
【0050】
ステップS2
各色ごとの低解像度ラスタライズ処理を行う。低解像度ラスタライズ処理部27(27K、27C、27M、27Y)は、入力画像データに基づき、インク吐出ヘッド19の解像度より低い解像度で各色のラスタライズを行い、低解像度ラスターイメージを生成する。
【0051】
ステップS3
印刷データ生成処理を行う。印刷データ生成部25(25K、25C、25M、25Y)は、高解像度ラスタライズ処理部23からの高解像度ラスターイメージに基づいて、各色のインク吐出ヘッド19に応じた印刷データを生成する。
【0052】
ステップS4
合成処理を行う。合成部29は、低解像度ラスタライズ処理部27で生成された各色の低解像度ラスターイメージについて合成を行う。
【0053】
ステップS5
オーバーコート処理用データ生成部31は、合成された低解像度ラスターイメージに基づいて、オーバーコート処理用データを生成する。
【0054】
ステップS6
印刷処理を行う。インク吐出ヘッド19(19K、19C、19M、19Y)は、各色の印刷データに応じてインク滴の吐出を行い、連続紙WPに対して画像を形成する。
【0055】
ステップS7
オーバーコート処理を行う。オーバーコート吐出ヘッド14Cは、オーバーコート処理用データに応じてオーバーコート材の吐出を行い、連続紙WPのうち画像が形成された領域を覆うように、かつ、大まかにオーバーコート処理を施す。
【0056】
上述したように、本実施例装置によると、印刷データは、高解像度ラスタライズ処理部23により生成された高解像度ラスターイメージに基づいて印刷データ生成部25により生成される。一方、オーバーコート処理用データは、低解像度ラスタライズ処理部27により、高解像度ラスターイメージよりも低解像度の低解像度ラスターイメージが生成され、この低解像度ラスターイメージに基づきオーバーコート処理用データ生成部31により生成される。オーバーコート処理用データは低解像度で扱われるので、高解像度で扱う場合に比較してオーバーコート処理に要する処理時間を短縮することができる。また、インク吐出ヘッド19は、高解像度ラスターイメージに基づき忠実に画像を印刷し、オーバーコート吐出ヘッド14Cは、オーバーコート処理用データに基づいて大まかにオーバーコート処理を行うので、印刷用紙への印刷処理に要する時間を短縮できる。
【0057】
また、各色ごとに低解像度ラスターイメージを生成して合成するので、低解像度のラスターイメージであっても、比較的各色の領域に忠実にオーバーコート処理用データを生成できる。
【実施例2】
【0058】
次に、図面を参照して本発明の実施例2について説明する。
図5は、実施例2に係る画像処理装置を示すブロック図である。なお、インクジェット印刷システムとしては、上述した実施例1と同様の構成であり、図示を省略する。また、上述した実施例1と同じ構成については同符号を付すことで詳細な説明については省略する。
【0059】
本実施例は、画像処理部21Aが上述した実施例1とは相違する。具体的には、低解像度ラスタライズ処理部27Aが相違する。
【0060】
低解像度ラスタライズ処理部27Aは、入力画像データをモノクロ画像として扱い、低解像度ラスターイメージを生成する。
【0061】
オーバーコート処理用データ生成部31は、生成された低解像度ラスターイメージに基づいて、オーバーコート処理用データを生成する。詳細には、生成された低解像度ラスターイメージに対して、オーバーコート吐出ヘッド14Cに合わせた水増しハーフトーン化処理が行われる。オーバーコート吐出ヘッド14Cは、水増しハーフトーン化処理されたオーバーコート処理用データに応じた領域にのみオーバーコート材を吐出する。
【0062】
次に、図6を参照して、低解像度ラスタライズ処理及びオーバーコート処理用データ生成処理について説明する。なお、図6は、低解像度ラスタライズ処理及びオーバーコート処理用データ生成処理を示す模式図であり、(a)は入力画像データを示し、(b)はオーバーコート処理用データを示す。
【0063】
入力画像データを対象にして、低解像度ラスタライズ処理部27Aが解像度を1/4に変換する。但し、入力画像データを各色ごとに変換するのではなく、モノクロとして扱った上で変換する。その際には、入力画像データの各色Y、C、M、Kについて同等に扱い、図6(a)に示すように、単に画素値が1以上のものがメッシュの一つにあるか否かで判断して低解像度ラスターイメージが生成され、図6(b)に示すようにオーバーコート処理用データが生成されるようにすればよい。
【0064】
次に、図7を参照して、上述したインクジェット印刷システムにおける印刷処理について説明する。なお、図7は、印刷処理を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS1,S3,S5〜S7については、上述した実施例1と同様である。本実施例装置では、ステップS2Aと、実施例1におけるステップS4がない点が異なる。
【0066】
ステップS2A
モノクロでの低解像度ラスタライズ処理を行う。低解像度ラスタライズ処理部27は、入力画像データに基づき、インク吐出ヘッド19の解像度より低い解像度でモノクロのラスタライズを行い、低解像度ラスターイメージを生成する。
【0067】
このようにして生成された低解像度ラスターイメージに基づきオーバーコート処理用データ生成処理を行い(ステップS5)、印刷処理を行った後(ステップS6)、オーバーコート処理を行う(ステップS7)。
【0068】
本実施例装置によると、入力画像データがカラーデータである場合には、低解像度ラスタライズ処理部27Aは、入力画像データをモノクロ画像として低解像度ラスターイメージを生成する。したがって、各色ごとに低解像度ラスタライズを行って構成する必要がなく、より効率的にオーバーコート処理用データを生成できる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0070】
(1)上述した各実施例1,2では、コート処理として、オーバーコート処理を例に採って説明したが、本発明はアンダーコート処理にも適用することができる。その場合には、オーバーコート吐出ヘッド14Cに代えて、印刷ユニット13の上流側にアンダーコート吐出ヘッドを備えればよい。なお、オーバーコート処理とアンダーコート処理とを両方備えるようにしてもよい。また、オーバーコート処理やアンダーコート処理以外の、印刷における画像形成に寄与しないコート処理にも本発明を適用できる。
【0071】
(2)上述した各実施例1,2では、インクジェット式の印刷システムを例に採って説明したが、コート処理を行う印刷装置であれば本発明を適用することができる。
【0072】
(3)上述した各実施例1,2では、連続紙WPに対して印刷を行うものとして説明したが、例えば、単票用紙に対して印刷を行う印刷装置にも本発明を適用することができる。
【0073】
(4)上述した各実施例1,2では、低解像度としてインク吐出ヘッド19の解像度の1/4としたが、本発明はインク吐出ヘッド19の解像度よりも低ければよく、このような解像度に限定されるものではない。
【0074】
(5)上述した各実施例1,2では、いわゆる1パス方式のインクジェット印刷装置3を例に採ったが、本発明はその方式に限定されるものではなく、いわゆるマルチパス方式のインクジェット印刷装置3にも適用できる。
【符号の説明】
【0075】
3 … インクジェット印刷装置
13 … 印刷ユニット
14 … オーバーコート処理部
14C … オーバーコート吐出ヘッド
19(19K、19C、19M、19Y) … インク吐出ヘッド
21 … 画像処理装置
23(23K、23C、23M、23Y) … 高解像度ラスタライズ処理部
25(25K、25C、25M、25Y) … 印刷用データ生成部
27(27K、27C、27M、27Y) … 低解像度ラスタライズ処理部
29 … 合成部
31 … オーバーコート処理用データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに基づき、コート処理用データを生成する画像処理装置において、
印刷ヘッドの解像度に応じて高解像度で前記入力画像データをラスタライズし、高解像度ラスターイメージを生成する高解像度ラスタライズ処理部と、
前記解像度よりも低解像度で前記入力画像データをラスタライズし、低解像度ラスターイメージを生成する低解像度ラスタライズ処理部と、
前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷ヘッドに応じた印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記低解像度ラスターイメージに基づいてコート処理用データを生成するコート処理用データ生成部と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記入力画像データがカラーデータで構成され、
前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データを各色ごとに前記低解像度ラスターイメージを生成し、
各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、前記コート処理用データ生成部に出力する合成部をさらに備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記入力画像データがカラーデータで構成され、
前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データをモノクロ画像として前記低解像度ラスターイメージを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
入力画像データに基づく印刷用紙への画像の印刷処理と、入力画像データに基づくコート用処理データによる印刷用紙へのコート処理とを行う印刷装置において、
印刷ヘッドの解像度に応じて高解像度で前記入力画像データをラスタライズし、高解像度ラスターイメージを生成する高解像度ラスタライズ処理部と、
前記解像度よりも低解像度で前記入力画像データをラスタライズし、低解像度ラスターイメージを生成する低解像度ラスタライズ処理部と、
前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷ヘッドに応じた印刷データを生成する印刷データ生成部と、
前記低解像度ラスターイメージに基づいてコート処理用データを生成するコート処理用データ生成部と、
前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷用紙に画像を印刷する印刷ヘッドと、
前記コート処理用データに基づいて前記印刷用紙に対してコート処理を行うコート処理ヘッドと、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記入力画像データがカラーデータで構成され、
前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データを各色ごとに前記低解像度ラスターイメージを生成し、
各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、前記コート処理用データ生成部に出力する合成部をさらに備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記入力画像データがカラーデータで構成され、
前記低解像度ラスタライズ処理部は、前記入力画像データをモノクロ画像として前記低解像度ラスターイメージを生成することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
入力画像データに基づき、コンピュータのCPUとメモリによって実行されるコート処理用データを生成するプログラムにおいて、
印刷ヘッドの解像度に応じて高解像度で前記入力画像データをラスタライズし、高解像度ラスターイメージを生成する高解像度ラスタライズ処理と、
前記解像度よりも低解像度で前記入力画像データをラスタライズし、低解像度ラスターイメージを生成する低解像度ラスタライズ処理と、
前記高解像度ラスターイメージに基づいて印刷ヘッドに応じた印刷データを生成する印刷データ生成処理と、
前記低解像度ラスターイメージに基づいてコート処理用データを生成するコート処理用データ生成処理と、
を備えていることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムにおいて、
前記入力画像データがカラーデータで構成され、
前記低解像度ラスタライズ処理は、前記入力画像データを各色ごとに前記低解像度ラスターイメージを生成し、
各色ごとの低解像度ラスターイメージを低解像度のまま合成して、前記コート処理用データ生成処理に出力する合成処理をさらに備えていることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項7に記載のプログラムにおいて、
前記入力画像データがカラーデータで構成され、
前記低解像度ラスタライズ処理は、前記入力画像データをモノクロ画像として前記低解像度ラスターイメージを生成することを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−71426(P2013−71426A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214335(P2011−214335)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】