説明

画像処理装置及び方法、並びに画像形成装置

【課題】着弾干渉による粒状の悪化と、着弾位置ずれによるスジの発生を抑制することができるハーフトーン画像を生成する。
【解決手段】記録ヘッドに対する記録媒体の相対移動方向を第1方向、第1方向に垂直な方向を第2方向とするとき、記録ヘッドは、ノズル列が第1方向に複数列配置された2次元ノズル配列を備え、多値化手段は、第1方向にブルーノイズ特性を持ち、第2方向にグリーンノイズ特性を持つドットパターンを表すN値の画像データを生成し、当該周波数特性を持つドットパターンによって階調表現を行う。パターンの周波数成分を第2方向に積算したとき、第1方向では極大がナイキスト周波数付近にあり、パターンの周波数成分を第1方向にナイキスト周波数の1/2よりも高周波側で積算したとき、第2方向では波数0の成分が抑制され、極大がナイキスト周波数よりも低周波の中周波領域にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置及び方法、並びに画像形成装置に係り、特に、インクジェット記録装置など、ドットの配置によって階調表現を行う画像形成装置に好適なデジタルハーフトーニング処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、複数のインク吐出口(ノズル)が配列された記録ヘッドと印刷媒体とを相対移動させ、ノズルからインク滴を吐出することにより、印刷媒体上に所望の画像を形成する。高精細な画像出力を実現するために、記録ヘッドには、多数のノズルを2次元的に配列させたノズルレイアウトにより記録解像度を向上させた2次元ノズル配列ヘッド(以下、「2次元ヘッド」と略記する場合がある。)が用いられる。
【0003】
また、プリント生産性を高めるために、印刷媒体の送り方向(以下「y方向」とする。)と垂直な媒体幅方向(以下「x方向」とする。)について描画領域の全範囲をカバーするノズル配列を備えた長尺のラインヘッド(ページワイドヘッド、或いはフルライン型ヘッドと呼ばれる)を用い、かかる長尺ヘッドを印刷媒体の送り方向(y方向)に対して略垂直方向に延在させる構成を採用し、ヘッドに対して印刷媒体を1回だけ相対移動させることにより、印刷媒体上に所定解像度の画像を形成するシングルパス描画方式の構成も知られている。
【0004】
このような2次元ヘッドを用いたシングルパス描画方式のインクジェット記録装置において、高速印字を行うと、隣接ドット間の着弾時間差が短いため、印刷媒体に吸収されていない着弾液滴同士が印刷媒体上で合一し、粒状が悪化するという課題がある。このような粒状性の課題は、特にシャドウ領域で顕著である。
【0005】
また、通常、インクジェット印刷においては、印刷媒体上の描画領域に対して複数回の描画走査によって所定解像度の画像を完成させる多重スキャン方式(マルチパス印字方式)で描画することにより、ノズル間の特性のばらつきを低減し、画質を確保することが一般的である。
【0006】
高生産性を実現するためにヘッドの長尺化は有効な手段であるが、コスト面からヘッドの数をできるだけ減らすことが望まれる。例えば、印刷媒体上の同じ画素位置に対してドットの記録が可能なノズルを複数個用意するような構成(ノズルの冗長性)やヘッドの多重化度を減らすことが必要である。ただし、このような冗長ノズルやヘッドの多重化度の削減は、個々のノズルの吐出特性が描画結果に反映されやすく、ノズルのばらつきによるスジムラが発生するという課題がある。
【0007】
つまり、低コスト高生産性を実現するために、画質面からは、粒状性とスジムラ低減を両立することが重要である。一般に、スジを良化させるためには、ドットサイズを大きくして、ドット間の隙間を埋めることが有益とされている。ただし、ドットサイズの増大は粒状を悪化させるという課題があり、上記問題(粒状性とスジムラ低減の両立)を解決できない。さらに、ドットサイズを大きくすることは、インク量を増大させるという課題がある。インク量の増大は、特に、高速印字において、乾燥能力の強化の必要性を意味しており、乾燥装置の能力強化など、高コストにつながる。
【0008】
特許文献1では、スジの課題を解決するために、ドットサイズの制御では無く、描画パターンの工夫でスジムラを抑制する技術が開示されている。すなわち、帯状のパターンと分散されたパターンの比率を変化させるハーフトーン手法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4475088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の提案のように、帯状のパターンを使うと、印刷媒体上でドットとドットがつながりやすいため、スジに関しては確かに良化する。しかしながら、帯状パターンと分散パターンの2種類のパターンを単純に混合すると、粒状が悪化するという問題がある。
【0011】
また、特許文献1は、高速印字によって発生する隣接着弾液滴の合一現象に起因する粒状の悪化については考慮されていない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スジムラの低減と粒状を両立させることができるハーフトーン処理が可能な画像処理装置及び方法、並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記目的を達成するために、液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させて前記ノズルからの打滴により前記記録媒体上に画像を形成するための2値又は多値の画像データを生成する画像処理装置であって、多階調(M値)の元画像データに対して量子化処理を行い、前記元画像データよりも低階調のN値の画像データに変換する多値化手段を有し(ただし、M、Nは、M>N≧2を満たす整数)、前記記録ヘッドに対する前記記録媒体の相対移動方向を第1方向、前記記録媒体上の前記第1方向に垂直な方向を第2方向とするとき、前記記録ヘッドは、前記第1方向に前記ノズル列が複数列配置された2次元のノズル配列を備え、前記多値化手段は、前記第1方向にブルーノイズ特性を持ち、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つドットパターンを表すN値の画像データを生成し、当該周波数特性を持つ前記ドットパターンによって階調表現を実現することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0014】
本発明の他の態様については、本明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、着弾干渉による粒状の悪化を抑制できるとともに、着弾位置ずれによるスジムラの視認性を抑えることができるドット配置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】2次元ヘッドと印刷媒体との相対移動によって印刷媒体上の各画素にドットが記録される場合の打滴順の説明図
【図2】本実施形態によるドットパターンの例を示す図
【図3】図2の周波数特性を示す図
【図4】着弾干渉による粒状の悪化とその改善方法を示した模式図
【図5】本例で用いるマスクパターンの例を示す図
【図6】マルチドットによるドット配置の例を示した説明図
【図7】ディザマトリクスの生成手順を示したフローチャート
【図8】ディザマトリクスの他の生成手順を示したフローチャート
【図9】階調パターン生成処理のフローチャート
【図10】画素入れ替え処理のフローチャート
【図11】マスクパターンの周波数特性の特徴の説明図
【図12】評価フィルタ生成処理のフローチャート
【図13】実空間フィルタの一例を示す図
【図14】各画素処理(量子化処理)のフローチャート
【図15】誤差拡散法による誤差拡散マトリクスの例を示す説明図
【図16】量子化処理の具体例を示すフローチャート
【図17】実施例に係るディザマトリクスの一部を示す図
【図18】本実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示すブロック図
【図19】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図
【図20】インクジェットヘッドの構成例を示す平面透視図
【図21】ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図22】図20中のA−A線に沿う断面図
【図23】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<インクジェット印刷機の構成>
図1は、2次元ヘッドと印刷媒体との相対移動によって印刷媒体上にドットが記録される場合の着弾順(打滴順)の説明図である。図1の下から上に向かって印刷媒体(用紙)が搬送される。用紙の送り方向を「y方向」とし、送り方向に垂直な用紙幅方向(送り垂直方向)を「x方向」とする。y方向は「第1方向」に相当し、x方向は「第2方向」に相当する。
【0019】
図中符号10はインク吐出口(ノズル)を表している。ここでは、説明を簡単にするために、ノズル配列の一例として、千鳥配列を例に説明する。図1に示した印刷ヘッド14は、x方向に一定の間隔でノズル10が並ぶノズル列(吐出口列)21、22がy方向に位置を変えて複数列(ここでは2列)並んだ2次元ノズル配列を有する。x方向に沿った直線上にノズル10が並んだ各ノズル列21、22における同一ノズル列内のノズル間ピッチは等しく(2画素周期を例示)、y方向に隣接するノズル列間の送り方向列間隔も一定(6画素間隔を例示)である。
【0020】
y方向に隣接するノズル列同士はx方向に1画素シフトした位置関係で配置されている。なお、画素ピッチは、記録解像度から規定される(例えば、1200dpiのとき、1画素は約21.2μmに相当する)。図示の2列のノズル配列において、用紙搬送方向の上流側(図の下)を第1列目、下流側を第2列目とノズル列の番号を定めるとき、印字媒体上のx方向に並んで連続する画素のライン(x方向走査ライン)は、第1列目のノズル列で記録された1画素おきの画素の間を第2列目のノズル列で記録するように、時間差を持ってドットの記録が行われる。
【0021】
図中で数字1〜20が付された各セルは、印刷媒体上の画素を表し、セル中の数字は打滴の順番(ドットの着弾順)を表す。図示のように、2次元ヘッドによる印字の場合、印刷媒体上のx方向に隣接するドットは、2次元ヘッドのノズル配列上でy方向に数画素ピッチ離れたノズルから、異なるタイミングで吐出されることが通常である。
【0022】
図1の場合、印刷媒体におけるx方向に沿った画素列の第1行目(最上行)に注目すると、左から「1,6,1,6,1,6・・・」の着弾順となっており、x方向に関して、ノズル配列の第1列目のノズル列によって記録される画素(「1」)と第2列目のノズル列によって記録される画素(「6」)の隣接画素の着弾時間差は「5」となっている。また、印刷媒体上のy方向に沿った画素列の最左の列に注目すると、上から「1,2,3,4,5,6,・・・・」の着弾順となっており、y方向に関して隣接画素の着弾時間差は「1」となっている。
【0023】
このように、2次元ヘッド14と印刷媒体との相対移動によって描画を行う構成では、送り方向(y方向)の隣接画素と、送り垂直方向(x方向)の隣接画素とで自画素との着弾時間差が異なる。つまり、送り方向の隣接画素の着弾時間差の方が短く、送り垂直方向の隣接画素の着弾時間差の方が長い。
【0024】
このような構成は、粒状性に関連するドットの合一性と、スジムラに関連する吐出位置精度について、以下の意味合いを持つ。
【0025】
(ドットの合一現象について)
着弾液滴の合一現象は、以下の理由により発生する。
【0026】
[1]先に着弾したインク液滴が印刷媒体(用紙)内に吸収される前に、次の(後続の)インク滴が着弾し、印刷媒体上でこれら2つのインク滴が合一(合体)することによる。
【0027】
[2]クリアインク(前処理液としてのインク)と、色材(顔料)含有インクを凝集反応させて顔料を用紙上に固定する系においては、凝集反応時間が2つのドットの着弾時間差よりも長いときに合一現象が発生する。
【0028】
[1]、[2]のどちらのケースであっても、隣接するドットの着弾時間差は長い方が、合一現象の観点からは有利であり、粒状の観点からも有利である。
【0029】
x方向に隣接画素の着弾時間差が長い図1の構成の場合、仮に、y方向にドットを連ならせると、着弾時間差が短く、合一現象を引き起こすため粒状にとって不利である。したがって、粒状の観点から、縦方向(y)方向にドットを連ならせるよりもむしろ、横方向(x方向)もしくは、斜め方向にドットを連ならせることが望ましい。
【0030】
(吐出位置精度について)
スジムラは吐出位置精度(着弾位置精度)の悪化により、ドットが不均一に配置されることで発生する。吐出位置精度の悪化の主な要因は、吐出方向ばらつきである。吐出方向ばらつきは、多くの場合、ノズル内でのばらつきよりも、ノズル間のばらつきの方が顕著である。ノズルが送り垂直方向(x方向)に多数並んでいる本構成の場合、ノズル間のばらつきに起因して、送り垂直方向に、送り方向に向けたスジが発生する。その一方で、これと垂直な方向のスジムラは、以下の理由により発生しにくい。
【0031】
[理由1]ノズル内のばらつきが比較的小さく、そのような方向に発生する着弾位置誤差が生じ難い。
【0032】
[理由2]仮に、その方向に着弾位置誤差が発生したとしても、ノズル間でばらつきがあるので、スジ状にはならない。
【0033】
また、描画パターン(ドットパターン)とスジ、粒状に関しては、一般に以下の関係がある。
【0034】
粒状に関して、ドット配置が高周波分布(空白とドットが空間的に短い周期)に配置されていることが望ましい。低周波(ドットと空白を長い周期)に分布させると粒状を悪化させやすい。
【0035】
スジムラに関して、隣り合うドットとドットにオーバーラップを持たせて配置させることが好ましい。これはドットを低周波に分布させることを意味する。高周波に配置させると、ドットとドットのオーバーラップが失われやすいので、スジが悪化しやすい。
【0036】
上述のような装置構成、並びに、パターンとスジムラ、粒状の関係性を考慮すると、以下のようなドットパターン特性を持たせるように構成することで、スジムラ、粒状の両方を満足させる相乗効果をもたらすことができる。
【0037】
<基本ドットパターン特性(特に中間調について)>
本実施形態では、ドット合一現象を回避するために、送り方向にはドットを高周波に配置する(すなわち、y方向になるべくドットを連ならせない)。なお、送り方向に関しては、ノズル内のばらつきが小さく、吐出位置精度が高いので、非常に高周波にドットを配置しても、スジムラは発生しない。さらに、合一現象が抑制されるだけでなく、パターンとしても高周波なので粒状も良化する。
【0038】
送り垂直方向(x方向)には、なるべくドットを連ならせて(低周波に)配置する。x方向はy方向に比べて着弾時間差が長く、合一現象が発生し難いので、粒状が悪化しない。また、このように配置することで、パターンの特性(隣接ドット同士がオーバーラップして配置される構成)により、スジの悪化を抑制することができる。
【0039】
このような特性を持つドットパターンの一例を図2に示した。図3にはドットパターンの周波数特性を示した。図3はドットパターンを2次元フーリエ変換し、パワー(絶対値の自乗)を濃淡で表したものである。濃い部分ほど成分量が大きいことを示している。
【0040】
図示のように、本実施形態によって実現するパターンは、中間調で送り方向(y方向)に高周波(ナイキスト周波数にピークがあり)、かつ、送り垂直方向(x方向)には低周波なパターンである。すなわち、このパターンは、送り方向にブルーノイズ特性を持ち、送り垂直方向にグリーンノイズ特性を持つ。
【0041】
そして、かかる周波数特性を持つ中間調を基本として、ハイライト域、並びにシャドウ域では、ドットが十分に分散されたパターンが生成される。
【0042】
(シャドウ領域の粒状対策について)
ドットの合一現象により粒状が悪化する問題は既に説明したが、この現象は特に、ドットの配置が密となるシャドウ領域で顕著である。この現象を図4で説明する。
【0043】
図4(a)は、従来のハーフトーン処理に基づく網点パターンの模式図、図4(b)は本発明の実施例によるパターンの模式図である。
【0044】
従来は、ドットの合一現象を回避するために、なるべくドットを分散させて配置させるのが通常であった。例えば、孤立したドットを千鳥配列により2次元的に分布させた網点パターンは、このような配置の代表的な例である。かかる千鳥配置の中央空白画素(図4(a)参照)に、ドットを追加的に配置すると、その周辺4画素のドットは中央のドットに引き寄せられ、中央ドットの周りの白地部分(図中、破線円で示した部分)を増やしてしまう。
【0045】
図4(a)では、小滴のドット40による千鳥配置の中央空白画素に、中滴のドット(中ドット)42を配置した例が示されている。図示のように、分散配置された小滴ドット40の空白画素に中滴ドット42が配置されると、当該中滴ドット42は、これに隣接する周辺4画素の小滴ドット40A、40B、40C、40Dを引っ張り、中央に寄せてしまう。その結果、液滴が合一してかたまり(ダマ)になり、ドット42の周りに白地部分が増え、粒状を悪化させる。
【0046】
これに対し、本発明の実施例による図4(b)のドット配置によれば、横(x)方向に連なる小滴ドット40のドット列44、45が縦(y)方向に離れて(高周波に)配置されている分布の中央空白画素に、中滴ドット42が追加された構成となっている。
【0047】
この場合、中滴ドット42に隣接するドット40E〜Jは中央のドット42に引き寄せられるが、その移動による白地部分の増大は、図4(a)に比べて少ないため、粒状の悪化が抑制される。
【0048】
図4(b)に示すようなパターンは、図2〜3で説明したとおり、送り方向にドットを高周波に配置し、送り垂直方向に低周波に配置したドット配置の空白部分にドットを足していくことで実現できる。
【0049】
本実施形態におけるハーフトーン処理は、図2〜3、図4(b)で説明したような各階調におけるパターンをそれぞれの階調域において実現し、かつこれらをなめらかに接続する必要がある。このため、以下のような多値化処理の構成が採用される。
【0050】
<多値化処理により形成されるパターン>
(1)マスクパターンについて
本例で用いるマスクパターンを図5(a)に示す。これは、図2で説明したパターンと同様のものとなっている。図5(a)に示したように、このマスクパターンは、送り方向に関して高周波(略1画素おき)に領域が分割されており、送り垂直方向は、送り方向と比較して低周波側に重みがおいてあり、かつ低周波成分が抑制されている(図3の周波数特性参照)。
【0051】
図5(b)は、図5(a)のマスクパターンの白部(空白部)にドットを分散させて配置した例である。図5(b)中の灰色の画素が追加されるドットの位置を示している。
【0052】
図5(c)は、図5(b)によるドットの分散配置の結果として得られるシャドウ域のパターンの例である。
【0053】
(2)階調表現について
このように、中間調及びシャドウの少なくとも一部の階調でマスクパターン(図5(a))によって分割された領域のドットを分散させながらドット数を変化させて階調表現を行う。例えば、シャドウにおいては、マスクパターンで分割された片側領域(マスクパターンの黒部の領域)をドットで埋め、残りの領域(白部の領域)のドット数を変化させて階調表現を行う。なお、このときドットは分散配置にする。
【0054】
図5(a)に示したマスクパターンの黒部は「第1領域」に相当し、残りの白部は「第2領域」に相当する。
【0055】
(3)マルチドットによるドット配置の例について
ドットサイズ(吐出液滴量)の異なる複数種類のドットを選択的に記録できる記録ヘッドが用いられる場合には、ドットパターンの形成に際して、以下のような形態とすることが好ましい。ここでは、説明を簡単にするために、大小2種類のドットを打ち分けられる場合を例に説明する。
【0056】
<例1>:図5(a)で示したマスクパターンの横連なり部を小滴ドットにするとともに、残りの部分(白部)に大滴ドットを分散的に配置する(図5(b)の灰色で示した部分に大滴ドットを配置する)。小滴のドット径D1は、送り方向印刷解像度の周期Lyの略2倍、もしくは、2倍以下であることが望ましい。送り方向の着弾干渉による粒状の悪化を抑制するためである(図6の左側参照)。
【0057】
<例2>:図5(a)で示したマスクパターンの横連なり部の中で、小滴ドットと大滴ドットを互い違いに配置する(図6の右側参照)。この場合、小滴のドット径D1と大滴のドット径D2は、両者の平均が、送り方向周期Lyの2倍以上であることが望ましい。
【0058】
なお、横方向に小滴ドットと大滴ドットが交互に(互い違いに)配置されるともに、縦方向についても、小滴ドットと大滴ドットが互い違いに配置されている(同じサイズのドットが連続して並ばないように配置されている。)。
【0059】
上記のように分散されて配置される複数のドットのサイズの平均は、送り方向印刷解像度の周期Lyの略2倍もしくは、2倍以上とすることが好ましい。
【0060】
このような構成によれば、図6の右側に示したように、横連なり部のパターン間の隙間(白地)がきれいに埋まり、粒状が良くなる。また、横(x)方向に大きなドットと小さなドットが互いにオーバーラップを持って分布するため、スジにも強い。
【0061】
(4)本実施形態によって実現されるドット配置による効果
上述したドット配置によれば、隣接ドットの平均的な着弾時間差を比較的長く取れるため、ドット合一現象による粒状悪化を抑制できる。また、この構成によると、送り方向に着弾位置精度(吐出精度)が高く、送り垂直方向に着弾位置精度(吐出精度)が低い画像形成装置について、良好な画像を得ることができる。すなわち、送り方向についてドットは高周波に分布して配置されているが、着弾位置精度が高いのでムラにならず、粒状を良化させることができる。また、送り垂直方向に関して着弾位置精度が多少悪くても、この方向にドットが連なっているため、着弾位置誤差によるスジの視認性を抑制することができる。
【0062】
<具体的なハーフトーン処理の実施方法の例>
(第1の方法:ディザマトリックスによる方法)
上述したドット配置を生成するディザマトリクスの生成方法を以下に示す。
【0063】
図7はディザマトリクスの生成手順の一例を示すフローチャートである。最初に、送り方向に高周波、送り垂直方向に相対的に低周波な周波数特性を持つパターンの2値フィルタを中間調(階調L)にて作成する(ステップS11)。この2値フィルタは、図2及び図3、図5(a)で説明した周波数特性を持つ。
【0064】
そして、この2値フィルタ(パターン)を使い、画像領域を2分割する(図7のステップS12)。分割された領域のそれぞれを領域A(「第1領域」に相当)、領域A’(「第2領域」に相当)とよぶ。
【0065】
中間調階調値(階調L)未満の階調域(階調0〜L−1の範囲)では、領域Aのみにドットを置くという制約条件のもとで各階調のドット配置(つまり、ディザマトリクスの領域Aに対応する各セルの数値)を決定する(ステップS13)。
【0066】
一方、中間調階調値(階調L)より上の階調域(階調L+1〜max)では、領域Aにドットがあると仮定し、領域A’のみにドットを追加するという制約条件のもとで各階調のドット配置を決定する(ステップS14)。なお、ステップS13、S14において、ドットはそれぞれの制約条件を守りながら、なるべく高周波に分散配置させるような条件でディザマトリックスを生成することが望ましい。
【0067】
そして、ステップS13及びS14で得られた各階調のパターンを統合(マージ)することにより(ステップS15)、全階調域の各階調に対応したドット配置を定めるディザマトリクスが得られる。
【0068】
このようにして得られたディザマトリクスは、中間調付近においては送り方向に高周波で、送り垂直方向には比較的低周波な特性を持ち、ハイライト域及びシャドウ域では、ドットが分散されている。また、このディザマトリクスに、各階調ごとに適切な閾値を適用してパターンを抽出し、ドットを割り当てることで、前述の<例1>、<例2>で説明したパターンを実現することができる。
【0069】
なお、ステップS13、14の処理は、適宜順番を入れ替えることも可能であるし、並列に処理することも可能である。図8に、並列処理を行うフローチャートを示す。
【0070】
(他のディザマトリクス生成フロー)
図8は、他の例によるディザマトリクスの生成処理のフローチャートである。
【0071】
最初に、初期階調=L0のパターンを生成する(ステップS21)。この処理は、図7のステップS11と同様の処理である。
【0072】
次に、初期階調L0より上の階調域(L0<Lp<level max)における各階調Lpごとのパターンを生成する処理(図8のステップS22A〜S25A)と、初期階調L0より下の階調域(level min<Lm<L0)における各階調Lmごとのパターンを生成する処理(ステップS22B〜S25B)とが並列に行われる。こうして得られた各階調のパターンを結合することにより(ステップS26)、目的のディザマトリクスが得られる。
【0073】
(各階調のパターン生成方法について)
図7のステップS11、S13〜S14、図8のステップS21、S23A、S23Bで示した各階調パターンの生成処理は、ドットを置ける位置を制限する条件である制約条件をもとに、乱数で発生させた初期パターン(初期パターン生成処理)を、前記制約条件とパターンの評価値にしたがい、ドットを順次入れ替える処理を通じて、評価値に関してパターンを最適化することで生成される。
【0074】
図9は各階調のパターンを生成する処理のフローチャートである。図9のフローチャートの構成要素について以下に説明する。
【0075】
ステップS61の階調制約条件設定処理は、後述の画素入れ替え処理(ステップS66)において、ドットの入れ替えが許される領域(すなわち、評価値を指標とする最適化によりドットの配置を変更できる領域)を指定する処理である。例えば、以下に例示する2つの制約条件を設定する。
【0076】
(制約条件1):ディザマトリクス一般に必要な条件である、高階調パターンは低階調パターンを内包するという条件。
【0077】
(制約条件2):画質向上などを目的として、パターンに特定の特性を持たせるために、ドットを置く位置を制限する条件。詳細は後述の<制約条件について>の記載で説明する。
【0078】
ステップS62の評価フィルタ設定処理は、画素入れ替え処理(ステップS66)、評価値算出処理(ステップS67)等で使用する評価フィルタを指定する処理である。評価フィルタとは、周波数成分ごとの重みを示す周波数フィルタであり、ドットパターンに周波数空間で乗算(実空間で畳み込み)する際に使用される。この評価フィルタの特性が、パターンの特性に反映される。
【0079】
この評価フィルタは以下の処理で使用される。
【0080】
(1)画素入れ替え処理(ステップS66)において、入れ替えるドットの位置を指定するために使用される。
【0081】
(2)評価値算出処理(ステップS67)、評価値比較(ステップS68)、保存パターン/評価値更新処理(ステップS69)においてパターンの評価値を決定するために使用される。なお、評価フィルタは、階調ごとに異なるフィルタを設定することが可能である。詳細は後述する。
【0082】
図9におけるステップS63の初期パターン生成処理は、パターン(ドットの配置)を最適化するにあたり初期のパターンを設定する。パターンは以下の処理手順に従い設定される。
【0083】
(手順1)階調に必要なドット/空白数を求める。例えば、8bit の階調Lなら、必要なドット数は(L/2)×マトリクスサイズである。
【0084】
(手順2)マトリクスサイズと同じサイズの乱数を発生させる。
【0085】
(手順3)以下の規則に従ってドットを配置する。
【0086】
[規則1]初期階調(L0)以下の階調の場合:制約条件でドットの入れ替えが許されている領域について、乱数の値が高い箇所から順に、ドットを(手順1)で指定した数配置し、残りを全て空白と設定する。
【0087】
[規則2]初期階調(L0)より上の階調の場合:制約条件でドットの入れ替えが許されている領域について、乱数の値が高い箇所から順に、空白を(手順1)で指定した数配置し、残りを全てドットと設定する。
【0088】
ステップS64では、カウンターの値(n)を「0」にリセットする。
【0089】
ステップS66の画素入れ替え処理では、図10に例示するフローに従い、ドットパターンを更新する。図10では3つのフローチャートを例示した。いずれのフローチャートにおいても、まずドットパターンに評価フィルタを乗算(畳み込み)し、評価用の濃度分布を算出する。次に入れ替え制約条件を満たす領域にあり、かつ濃度が高いドットを、濃度が低い空白と入れ替える、という基本的な流れは共通している。
【0090】
図10(a)は、上記の処理を1ステップで行うフローである。図10(b)、(c)は、2ステップで行う処理の例である。画素入れ替え処理(ステップS66)は最適化の過程で繰り返し行われるが、例えば、常に図10(a)に示す「画素入れ替え処理1」のみ行う構成にしても良いし、図10(b)に示す「画素入れ替え処理2」、図10(c)に示す「画素入れ替え処理3」を含めて各画素入れ替え処理1〜3をランダムに選択しても良い。図10(a)の画素入れ替え処理1は、評価フィルタの畳み込み数が他の処理2〜3より少なく、演算が高速であるため、最適化の初期に多用する構成にしても良い。また階調ごとに処理1〜3の選択方法を変化させても良い。
【0091】
図9におけるステップS67の評価値算出処理、ステップS68の評価値比較処理、ステップS69〜S73の保存パターン/評価値更新処理は、次の通りである。
【0092】
評価値算出処理(ステップS67)は、ステップS66の画素入れ替え処理で変更されたドットパターンに評価フィルタを乗算(畳み込み)し、評価用の濃度分布を算出する。そして、この濃度分布の標準偏差を算出し、これを評価値とする。ステップS66〜S72で画素入れ替え処理(ステップS66)、並びに評価値算出処理(ステップS67)を繰り返し行い、評価値比較(ステップS68)にて評価値が向上した場合は、当該するパターン並びに評価値を保存する(ステップS69)。次回以降は、保存した評価値と算出した評価値を比較して(ステップS68)、良化したか否か判断する。
【0093】
以上の画素入れ替え処理、並びに評価値算出処理をパターン更新がされなくなるまで、繰り返し行うことで(ステップS66〜72)、当該階調のパターンを評価値に関して最適化する。最適化して得られた階調パターンを保存して(ステップS73)、処理を終了する。
【0094】
(評価フィルタ、制約条件並びに該当するパターンについて)
図3で説明した周波数特性を持つパターンを作成するために必要な評価フィルタの設定方法等について以下に説明する。
【0095】
階調レベルによってパターン特性は異なるため、対応する評価フィルタも変える必要がある。以下、階調ごとのパターンと対応するフィルタを説明する。
【0096】
<初期階調について>
初期階調は、図3で説明したように、本実施例におけるマスクパターンの特性を実現するパターンを生成する。すなわち、マスクパターンの実空間の模式図が図2、マスクパターンの周波数特性は図3に示される。
【0097】
図2における横方向(送り垂直方向)に高さ1ピクセル(画素;単位[px]で示す)の横線が、縦方向(送り方向)に1pxの隙間を空けて(2pxおきに)多数配置され、かつ千鳥状のパターンが排除されたパターンである。なお、各横線の線分の長さは、特に限定されず、2px以上、適宜の長さが設定される。
【0098】
周波数特性としては、送り方向に最も高周波(ナイキスト周波数)かつ送り垂直方向には中周波成分の領域に極大が存在し、それ以外の周波数成分、特に低周波成分(濃度平均を示す、kx=0,ky=0成分はここでは無視する。図3の中央)が抑制されたパターンである。
【0099】
図11に示したように、この周波数特性は次のような観点で特徴付けられる。
【0100】
(1)周波数成分をx方向に積算したとき、その積算結果を示すグラフはy方向のナイキスト周波数付近に極大がある(図11の右側に記載したグラフ参照)。
【0101】
(2)周波数成分をy方向について前記ナイキスト周波数の1/2よりも高周波側の周波数域で積算したとき(図11の破線から上の領域で積算したとき)、その積算結果を示すグラフはx方向の波数0の成分は抑制されている。そして、x方向では極大がナイキスト周波数よりも低周波側(中周波領域)にある(図11の上側に記載したグラフ参照)。なお、ここで「抑制されている」とは、値が0に近いということを意味している。
【0102】
(3)y方向にブルーノイズ特性を持ち、x方向にグリーンノイズ特性を持つ。ブルーノイズ特性は、高周波側ほど成分量(強度)が高くなる。グリーンノイズ特性は、特定の周波数(中周波数成分)にピークを持つ。
【0103】
(L0階調に用いる評価フィルタについて)
このようなパターンを生成するための評価フィルタは、図12のフローチャートに従い生成される。すなわち、まず、実空間上でフィルタを設計する(ステップS81)。基本的には中央(=畳み込みの際に、(0,0)となる成分)から距離の関数として減少するような関数とする。
【0104】
しかし、本例においては、送り方向に高周波(送り方向ナイキスト周波数に極大)かつ、送り垂直方向に低周波としたいため、図13に例示したように、中央の画素行(「10」を中心とする横方向の画素行)は、上下の画素行よりも値を小さめに設定し、さらに、その2つ上又は2つ下の行(中央の画素行から上下に1行空けてグレーで示した行)も小さめに設定する。
【0105】
このような特性を持つ実空間フィルタに、さらに低周波強調処理(図12のステップS82)を行うことで評価フィルタを生成する。このようにして得られた評価フィルタを用い、中間調階調にてパターン最適化を行うことにより、目的の周波数特性を持つマスクパターンを生成することができる。
【0106】
本例のマスクパターンは、送り方向にナイキスト周波数で配置する必要があるため、初期階調L0としては、本例の場合、50%前後の階調を選択する。50%丁度にすると、送り方向の位相が広い領域で一致しやすくなる。このようになるとバンディングが発生しやすくなるため、50%から若干ずらすのが望ましい。なお、図11に示したパターンは、(136/256)×100[%]=53.125%で生成したが、この値に限定されない。
【0107】
<その他の階調について>
初期階調以外の他の階調は、ディザの特性上、初期階調の特性が反映される。すなわち、制約条件として、初期階調のパターンを内包するパターンが適用される。したがって、ある程度任意の評価フィルタを使っても所望の特性は実現できる。
【0108】
ただし、シャドウ域並びにハイライト域では、なるべく、ドットを分散させた方が画質上好ましい。したがって、実空間フィルタとして等方的かつ中央から距離の関数として減少するような実空間フィルタを用い、これに低周波フィルタをかけたものを評価フィルタとすることが好ましい。
【0109】
<制約条件について>
上述の評価フィルタを設定すると、制約条件としては、初期階調については、制約条件無し、その他の階調ではディザマトリクス一般に要求される、階調の関係性からくる制約条件のみでディザを作成することによって所望の特性を実現できる。
【0110】
また、別の実施例として、初期階調の制約条件として、1on1offの横万線を設定することで、同様な特性を持つパターンを実現することができる。
【0111】
なお、マスクパターンは、初期階調L0のパターンを使っても良いし、その周辺階調のパターンを使ってもよい。どちらでも所望の特性を得ることができる。
【0112】
<具体的なハーフトーン処理の実施方法の例>
(第2の方法:ディザマトリクスと誤差拡散法を併用する方法)
次に、ディザマトリクスと誤差拡散法を併用して量子化を行うハーフトーン処理の例を説明する。
【0113】
図7で説明したように、送り方向に高周波、送り垂直方向に低周波よりの周波数特性を持つ2値マスクパターンにより、領域を2分割する。2分割した領域をそれぞれ領域A、領域A’とする。なお、この領域は、階調ごとに変えても良い。例えば、図7で生成したディザマトリクスは、中間調の階調域にて、前記周波数特性を持つため、階調ごとにディザマトリクスと比較する閾値を変化させて、領域Aを調整してもよい。
【0114】
図14は、各画素の量子化処理のフローチャートである。図14のステップS91に示した「領域A調整処理」は、階調ごとにディザマトリクスと比較する閾値を変化させて、領域Aを調整する処理工程である。
【0115】
ステップS92では、注目画素(処理対象の画素)の階調値が階調L未満であるか否かの判定を行う。この判定基準となる階調Lは、図7で2値フィルタのパターンを作成したときの中間調階調値である。
【0116】
注目画素の階調値が階調L未満であるとき、すなわち、ハイライトから中間調の領域では、ステップS92でYES判定となり、ステップS93に進む。
【0117】
ステップS93では、領域A内において、多値化処理を行い、領域A’については空白ドット(滴無しに相当)を打つものとする。領域A内において行われる多値化処理は、周辺画素から拡散された量子化誤差(周辺誤差)と、当該注目画素の階調値(元の階調値)との和を計算し、この和の信号値と、誤差拡散の閾値(量子化判定用の閾値)とを比較した結果に基づいて行う。
【0118】
一方、ステップS92の判定において、注目画素の階調値が階調L以上であるとき、すなわち、中間調からシャドウ領域では、ステップS92でNO判定となり、ステップS94に進む。
【0119】
ステップS94では、領域Aについて、「滴有り」としてドットを配置し、領域A’内にて、上記同様に、誤差拡散閾値との比較により多値化を行う。
【0120】
例えば、図6の<例1>を実現する場合は、階調L未満の領域Aの多値化は、小滴又は空白ドットを選択する処理にする(図14のステップS93)。また、階調L以上では、領域Aに小滴を配置し、領域A’において大滴か空白ドットを多値化の結果として選択する(ステップS94)。
【0121】
また、図6の<例2>を実現する場合は、K(ただし、Kは0<K<Lを満たす整数)以下の階調域において、領域Aを狭く調整したうえで、領域Aにおいて小滴又は空白ドットで2値化を行う。そして、K以上L未満の階調域においては、領域A内で小滴又は大滴で多値化する。このとき、領域Aの大きさを広くするように調整してもよいし、K以下のときと同じ領域に固定してもよい。領域Aの広さ、並びに、階調値により、大滴と小滴の発生比率を制御することができる。
【0122】
ステップS93又はS94によって多値化を行った後、当該注目画素の「周辺画素量子化誤差+階調値」と、選択したドット(滴無しも含む)に対応する階調値の差分(量子化誤差)を計算し、この量子化誤差を周辺の未処理画素に拡散する(ステップS95)。
【0123】
図15は誤差拡散マトリクスの例を示している。図中の「x」が量子化対象画素の位置を表し、矢印は量子化処理の処理順を表す。注目画素(量子化対象画素x)に隣接する4つの未処理画素(右横、右斜め下、真下、左斜め下)に対して、それぞれ量子化誤差が配分される。誤差の配分比率を規定する誤差拡散マトリクスの成分A〜Dのうち、横方向に拡散させる誤差成分(図中の「A」)を、均等拡散させる場合の値(例えば、4等分として、それぞれ1/4の配分比率となる)よりも大きい配分とすることが望ましい。つまり、図15の場合、「A」の成分を0.25よりも大きい値とすることが望ましい。このように、量子化誤差を横方向(x方向)に多めに分配することで、横方向にドットが分散され、全体として分散性が向上し、粒状が良化する。
【0124】
<量子化処理のフローチャートの具体例>
ここでは、ディザマトリクスと誤差拡散法を併用する量子化処理の例について説明する。図16は、本実施形態の各画素の量子化処理を示すフローチャートである。図16において、dither[x][y]は二次元ディザマトリクスの成分を表す。th_dth[i][level]はディザマトリクスと比較する閾値を示す(i=0,1,2)。th_edf[level]は誤差拡散閾値を示す。dot[j][level]は階調値(level)ごとに{滴無し、小滴、中滴、大滴}のうちいずれかのドットサイズに対応付けられる(j=0,1,2,3)。
【0125】
各画素量子化処理がスタートすると、最初に、対象画素の元の階調値と、誤差拡散により当該対象画素に拡散された周辺誤差の和をとることで、周辺誤差を含んだ階調値を算出する(ステップS101)。
【0126】
次に、ディザマトリクスの値(dither[x][y])と閾値th_dth[i][level]とを比較することにより、画像の領域を分割する。この閾値th_dth[i][level]は、対象画素の階調値(level)ごとに設定されるものであり、予め所定のメモリに記憶されている。ここでは、第1の閾値th_dth[0][level]、第2の閾値th_dth[1][level]、及び第3の閾値th_dth[2][level]を用いて、4領域に分割される。
【0127】
まず、ディザマトリクスの値と第1の閾値th_dth[0][level]との比較を行う(ステップS102)。比較の結果、ディザマトリクスの値の方が小さい場合は、dot[0][level]で指定されるドットサイズが選択される(ステップS103)。
【0128】
ステップS102において、ディザマトリクスの値が第1の閾値以上の場合は、続いてディザマトリクスの値と第2の閾値th_dth[1][level]との比較を行う(ステップS104)。比較の結果、ディザマトリクスの値の方が小さい場合は、dot[1][level]で指定されるドットサイズが選択される(ステップS105)。
【0129】
ステップS104において、ディザマトリクスの値が第2の閾値以上の場合は、さらにディザマトリクスの値と第3の閾値th_dth[2][level]との比較を行う(ステップS106)。ディザマトリクスの値が第3の閾値th_dth[2][level]以下の場合は、ステップS107に進み、周辺誤差を含んだ階調値と誤差拡散閾値th_edf[level]との比較を行う(ステップS107)。この誤差拡散閾値th_edf[level]についても、対象画素の階調値ごとに設定されるものであり、予め所定のメモリに記憶されている。ステップS107における比較の結果、周辺誤差を含んだ階調値の方が誤差拡散閾値よりも小さい場合は、dot[2][level]で指定されるドットサイズが選択される(ステップS108)。
【0130】
一方、ステップS107において、周辺誤差を含んだ階調値が誤差拡散閾値以上である場合は、dot[3][level]で指定されるドットサイズが選択される(ステップS109)。このように、ディザ閾値が第3の閾値以下(かつ第2の閾値以上)の領域では、誤差拡散法による2値化の処理が行われる。
【0131】
また、ステップS106において、ディザマトリクスの値の方が第3の閾値よりも大きい場合は、dot[4][level]で指定されるドットサイズが選択される(ステップS110)。
【0132】
なお、各dot[j][level]のドットサイズは階調値ごとに適宜決めることができる。例えば、ある階調値に対して、dot[0][level]は小滴、dot[1][level]は中滴、dot[2][level]は滴無し、dot[3][level]は大滴、及びdot[4][level]は大滴、のように決めることができる。基本的に、dot[3][level]>dot[2][level]を満たしていればよく、量子化誤差が大きいと大きいドットを打ち、小さいと小さいドットを打つように各値を定める。
【0133】
具体例として、図6の<例1>を実現する場合は次の通りである。
【0134】
(1) 階調L未満の領域Aの多値化は、小滴又は空白ドットを選択する処理にする(図14のステップS93)。すなわち、図16のフローチャートにおいて、th_dth[0][level]=th_dth[1][level]=0に設定する(使わない)。このとき、ステップS103、S105は使わないのでdot[0][level]、dot[1][level]は何を設定しても良い。
【0135】
th_dth[2][level]は領域Aを実現するような閾値を設定する。この領域では小滴又は空白ドットを選択する処理をすることになっているため、dot[3][level]=小滴、dot[2][level]=滴なし、を設定する。
【0136】
A以外の領域である領域A’は滴を打たないので、dot[4][level]=滴なしと設定する。
【0137】
(2)また、階調L以上では、領域Aに小滴を配置し、領域A’において大滴か空白ドットを多値化の結果として選択する(図14のステップS94)。すなわち、 領域Aを設定するために、図16のフローチャートにおいて、th_dth[0]=0(使わない) に設定する。また、th_dth[1]=領域Aの閾値とし、dot[1][level]=小滴と設定する。領域A’で大滴か空白ドットを多値化するために、th_dth[2][level]=dither_max値 (i.e. A’の領域)とし、dot[3]=大滴、dot[2]=空白と設定する。
【0138】
次に、図6の<例2>を実現する場合の具体例を説明する。
【0139】
図6の<例2>を実現する場合、K(ただし、Kは0<K<Lを満たす整数)以下の階調域において、領域Aを狭く調整したうえで、領域Aにおいて小滴又は空白ドットで2値化を行う。このときの条件は、上記の<例1>の階調L未満の場合(上記(1))と同様である。ただし領域Aが狭いので、th_dth[2]の値が異なっている。
【0140】
また、K以上L未満の階調域においては、領域A内で小滴又は大滴で多値化する。このとき、領域Aの大きさを広くするように調整してもよいし、K以下のときと同じ領域に固定してもよい。そして、th_dth[0]=th_dth[1]=0と設定し、th_dth[2]で領域Aを設定する。この領域は、小滴/大滴で多値化するので、dot[3][level]=大滴 、dot[2][level]=小滴と設定する。領域A’では滴は打たないので、dot[4]=滴なしとする。
【0141】
こうして、分割された領域に応じた量子化が行われる。以上のように対象画素のドットサイズを選択後、量子化誤差を算出する(ステップS111)。量子化誤差は、周辺誤差を含んだ階調値を量子化したことによって発生する誤差であり、周辺画素を含んだ階調値と量子化閾値との差である。量子化閾値は、各dot[0][level]、dot[1][level]、dot[2][level]、dot[3][level]、dot[4][level]にそれぞれ対応付けられた階調値である。
【0142】
この算出した量子化誤差を所定の誤差拡散マトリクスに従って周辺の画素へ拡散する(ステップS112)。続いて量子化の対象画素を隣接画素へ移行し、同様の処理を行うことで、全ての画素の量子化を行う。
【0143】
上記の量子化処理によれば、ステップS103、S105、S110に該当する各領域のdot[0][level]、dot[1][level]、dot[4][level]の記録率は、ディザマトリクスに従って決定され、残りの領域は、誤差拡散法で2値化することによって決定される(ステップS108、S109)。このように量子化を行うことで、4値の記録率を階調ごとに一意に決定することができる。
【0144】
本例では、領域分割のための各閾値th_dth[i][level]は、対象画素の元の階調値における閾値を用いたが、周辺誤差を含んだ階調値における閾値を用いてもよい。
【0145】
<ディザマトリクスの具体例>
参考のために、図17に本実施例により作成したディザマトリクスの具体例を示した。実際に作成したディザマトリクスは、192×192のマトリクスサイズ有するが、図示の都合上、ここでは、その一部(全体における左上部分)の「32×32」の範囲のみを示した。
【0146】
<本実施形態による画像形成装置の構成について>
図18は、本実施形態に係る画像形成装置の要部構成を示すブロック図である。画像形成装置50は、記録ヘッド60と、記録ヘッド60による記録動作を制御するヘッド制御装置70とから構成される。
【0147】
記録ヘッド60は、各ノズルに対応して設けられた吐出エネルギー発生素子としての複数の圧電素子62と、各圧電素子62の駆動/非駆動を切り換えるスイッチIC64と、を備える。
【0148】
ヘッド制御装置70は、記録すべき画像の元画像データ(多階調画像データ)を受け入れる入力インターフェース部として機能する元画像データ入力部72と、入力された元画像データに対して量子化処理を行うハーフトーン処理部74(「多値化手段」に相当)を備える。また、ヘッド制御装置70は、駆動波形生成部76とヘッドドライバ78を備える。
【0149】
元画像データは、インク色別に変換された画像データであってもよいし、インク色別に変換する前のRGBの画像データであってもよい。必要に応じて、元画像データに対して、色変換処理や画素数変換処理、γ変換処理が行われる。
【0150】
ハーフトーン処理部74、元画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換する信号処理手段である。ハーフトーン処理の手段としては、既に説明したディザマトリクスを用いる態様、ディザと誤差拡散法とを組み合わせた態様などを適用できる。ハーフトーン処理は、一般に、M値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も単純な例では、2値(ドットのオン/オフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0151】
すなわち、本例のハーフトーン処理部74は、入力された階調を異なるn−1個(ただし、nはn>2の整数)の滴サイズに対応するn値(n−1個の滴サイズ+滴無し)に量子化する。各n個の異なるサイズのドットが、印刷可能な各画素において、どの程度の割合で打たれるかを示す記録率は、階調ごとに一意に決定される。
【0152】
こうして得られた2値又は多値の画像データ(トットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出制御データ(打滴制御データ)として利用される。ハーフトーン処理部74にて生成されたドットデータ(打滴制御データ)は、ヘッドドライバ78に与えられ、記録ヘッド60のインク吐出動作が制御される。
【0153】
駆動波形生成部76は、記録ヘッド60の各ノズルに対応した圧電素子62を駆動するための駆動電圧信号波形を生成する手段である。駆動電圧信号の波形データは予めROM等の記憶手段に格納されており、必要に応じて使用する波形データが出力される。駆動波形生成部76で生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ78に供給される。なお、駆動波形生成部76から出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0154】
本例に示すインクジェット画像形成装置50は、記録ヘッド60の各圧電素子62に対して、スイッチIC64を介して共通の駆動電力波形信号を供給し、各ノズルの吐出タイミングに応じて、該当する圧電素子62の個別電極に接続されたスイッチ素子のオン/オフを切り換えることで、各圧電素子62に対応するノズルからインクを吐出させる駆動方式が採用されている。
【0155】
図18における元画像データ入力部72とハーフトーン処理部74の組み合わせが「画像処理装置」に相当する。
【0156】
<本実施形態の利点>
本実施形態で説明した画像処理技術は、以下のような装置構成に適用することができる。
【0157】
[1]記録ヘッドと印刷媒体(記録媒体)を相対的に移動させて、1度のスキャンで印字(記録)を行う画像形成装置。
【0158】
[2]記録ヘッドに対して印刷媒体を相対移動させる方向を「送り方向」(y方向)とするとき、送り方向の隣接画素の着弾時間差が、送り垂直方向(x方向)の隣接画素との着弾時間差と比較して短い画像形成装置。
【0159】
[3]送り方向の印刷精度(着弾位置精度)が送り垂直方向に比較して高い画像形成装置。
【0160】
[4]送り方向にノズルの冗長性が無い2次元ノズル配列となっている記録ヘッドを用いた画像形成装置。すなわち、送り垂直方向(x方向)の各画素の記録を担うノズルとして1画素につき1ノズルのみが割り当てられており、x方向の同一画素位置の記録を行うノズルは複数個存在しない2次元ノズル配列を有する記録ヘッドを用いた画像形成装置。
【0161】
<画像形成装置の具体的な構成例>
図19は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す全体構成図である。本例のインクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部(プレコート部)114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122から構成されている。インクジェット記録装置100は、描画部116のドラム(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(以下、便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するシングルパス方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたドロップオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0162】
(給紙部)
給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されており、給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。本例では、記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0163】
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0164】
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム(「プレコート胴」とも言う)154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
【0165】
処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラ(計量ローラ)と、該アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0166】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
【0167】
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(「描画胴」或いは「ジェッティング胴」とも言う)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。各色のインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Y及びその制御装置として、図18で説明した記録ヘッド60とヘッド制御装置70の構成が採用されている。
【0168】
描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170の周面には、図示しない吸着穴が所定のパターンで多数形成されており、この吸着穴からエアが吸引されることにより、記録媒体124が描画ドラム170の周面に吸着保持される。なお、負圧吸引によって記録媒体124を吸引吸着する構成に限らず、例えば、静電吸着により、記録媒体124を吸着保持する構成とすることもできる。
【0169】
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドであり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列(2次元配列ノズル)が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0170】
各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yには、対応する色インクのカセット(インクカートリッジ)が取り付けられる。インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、描画ドラム170の外周面に保持された記録媒体124の記録面に向かってインク滴が吐出される。
【0171】
これにより、予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。インクと処理液の反応の一例として、本実施形態では、処理液に酸を含有させPHダウンにより顔料分散を破壊し凝集するメカニズムを用い、色材滲み、各色インク間の混色、インク滴の着弾時の液合一による打滴干渉を回避する。こうして、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
【0172】
各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yの打滴タイミングは、描画ドラム170に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図19中不図示、図23の符号294)に同期させる。このエンコーダの検出信号に基づいて吐出トリガー信号(画素トリガー)が発せされる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。また、予め描画ドラム170のフレなどによる速度変動を学習し、エンコーダで得られた打滴タイミングを補正して、描画ドラム170のフレ、回転軸の精度、描画ドラム170の外周面の速度に依存せずに打滴ムラを低減させることができる。さらに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのノズル面の清掃、増粘インク排出などのメンテナンス動作は、ヘッドユニットを描画ドラム170から退避させて実施するとよい。
【0173】
本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定は無い。
【0174】
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0175】
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、乾燥ドラム(「乾燥胴」とも言う)176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0176】
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。各温風噴出しノズル182から記録媒体124に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ180の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
【0177】
(定着部)
定着部120は、定着ドラム(「定着胴」とも言う)184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0178】
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
【0179】
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0180】
また、定着ローラ188は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体124を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体124の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0181】
インラインセンサ190は、記録媒体124に記録された画像(テストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや画像の濃度、画像の欠陥などを計測するための読取手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0182】
上記の如く構成された定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。
【0183】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、紫外線(UV)露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置100は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0184】
(排紙部)
定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
【0185】
また、図19には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0186】
<インクジェットヘッドの構成例>
次に、インクジェットヘッドの構造について説明する。各色に対応するインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号250によってヘッドを示すものとする。
【0187】
図20(a) はヘッド250の構造例を示す平面透視図であり、図20(b) はその一部の拡大図である。図21はヘッド250を構成する複数のヘッドモジュールの配置例を示す図である。また、図22は記録素子単位(吐出素子単位)となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル251に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図20中のA−A線に沿う断面図)である。
【0188】
図22に示したように、本例のヘッド250は、インク吐出口であるノズル251と、各ノズル251に対応する圧力室252等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)253をマトリクス状に2次元配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0189】
記録媒体124の送り方向(矢印S方向;「第1方向」に相当)と略直交する方向(矢印M方向;「第2方向」に相当)に記録媒体124の描画領域の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル配列を構成するために、例えば、図21(a)に示すように、複数のノズル251が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール250’を千鳥状に配置して、長尺のライン型ヘッドを構成する。或いはまた、図21(b)に示すように、ヘッドモジュール250”を一列に並べて繋ぎ合わせる態様も可能である。図21に示した各ヘッドモジュール250’又は250”が図18で説明した記録ヘッド60に該当する。
【0190】
なお、シングルパス印字用のフルライン型プリントヘッドは、記録媒体124の全面を描画範囲とする場合に限らず、記録媒体124の面上の一部が描画領域となっている場合(例えば、用紙の周囲に非描画領域(余白部)を設ける場合など)には、所定の描画領域内の描画に必要なノズル列が形成されていればよい。
【0191】
各ノズル251に対応して設けられている圧力室252は、その平面形状が概略正方形となっており(図21(a)、(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル251への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)254が設けられている。なお、圧力室252の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0192】
図22に示すように、ヘッド250(ヘッドモジュール250’、250”)は、ノズル251が形成されたノズルプレート251Aと圧力室252や共通流路255等の流路が形成された流路板252P等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート251Aは、ヘッド250のノズル面(インク吐出面)250Aを構成し、各圧力室252にそれぞれ連通する複数のノズル251が2次元的に形成されている。
【0193】
流路板252Pは、圧力室252の側壁部を構成するとともに、共通流路255から圧力室252にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口254を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図22は簡略的に図示しているが、流路板252Pは一枚又は複数の基板を積層した構造である。
【0194】
ノズルプレート251A及び流路板252Pは、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0195】
共通流路255はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路255を介して各圧力室252に供給される。
【0196】
圧力室252の一部の面(図22おいて天面)を構成する振動板256には、個別電極257を備えたピエゾアクチュエータ(圧電素子)258が接合されている。本例の振動板256は、ピエゾアクチュエータ258の下部電極に相当する共通電極259として機能するニッケル(Ni)導電層付きのシリコン(Si)から成り、各圧力室252に対応して配置されるピエゾアクチュエータ258の共通電極を兼ねる。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様も可能であり、この場合は、振動板部材の表面に金属などの導電材料による共通電極層が形成される。また、ステンレス鋼(SUS)など、金属(導電性材料)によって共通電極を兼ねる振動板を構成してもよい。
【0197】
個別電極257に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ258が変形して圧力室252の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル251からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ258が元の状態に戻る際、共通流路255から供給口254を通って新しいインクが圧力室252に再充填される。
【0198】
かかる構造を有するインク室ユニット253を図20(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル251が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
【0199】
また、本発明の実施に際してヘッド250におけるノズル251の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0200】
なお、インクジェットヘッドにおける各ノズルから液滴を吐出させるための吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、ピエゾアクチュエータ(圧電素子)に限らず、静電アクチュエータ、サーマル方式(ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させる方式)におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な圧力発生素子(吐出エネルギー発生素子)を適用し得る。ヘッドの吐出方式に応じて、相応のエネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
【0201】
<制御系の説明>
図23は、インクジェット記録装置100のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース270、システムコントローラ272、プリント制御部274、画像バッファメモリ276、ヘッドドライバ278、モータドライバ280、ヒータドライバ282、処理液付与制御部284、乾燥制御部286、定着制御部288、メモリ290、ROM292、エンコーダ294等を備えている。
【0202】
通信インターフェース270は、ホストコンピュータ350から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース270にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ350から送出された画像データは通信インターフェース270を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ290に記憶される。
【0203】
メモリ290は、通信インターフェース270を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ272を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ290は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0204】
システムコントローラ272は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ272は、通信インターフェース270、プリント制御部274、モータドライバ280、ヒータドライバ282、処理液付与制御部284等の各部を制御し、ホストコンピュータ350との間の通信制御、メモリ290の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ296やヒータ298を制御する制御信号を生成する。
【0205】
ROM292にはシステムコントローラ272のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM292は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ290は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0206】
モータドライバ280は、システムコントローラ272からの指示に従ってモータ296を駆動するドライバである。図23では、装置内の各部に配置される様々なモータを代表して符号296で図示している。例えば、図23に示すモータ296には、図19の給紙胴152、処理液ドラム154、描画ドラム170、乾燥ドラム176、定着ドラム184、渡し胴194などの回転を駆動するモータ、描画ドラム170の吸引孔から負圧吸引するためのポンプの駆動モータ、インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのヘッドユニットを、描画ドラム170外のメンテナンスエリアに移動させる退避機構のモータ、などが含まれている。
【0207】
ヒータドライバ282は、システムコントローラ272からの指示に従って、ヒータ298を駆動するドライバである。図23では、装置内の各部に配置される様々なヒータを代表して符号298で図示している。例えば、図23に示すヒータ298には、給紙部112において記録媒体124を予め適温に加熱しておくための不図示のプレヒータ、などが含まれている。
【0208】
プリント制御部274は、システムコントローラ272の制御に従い、メモリ290内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ278に供給する制御部である。
【0209】
図18で説明したように、ドットデータは、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置100で使用するインクの各色の色データ(本例では、KCMYの色データ)に変換する処理である。
【0210】
プリント制御部274において所要の信号処理が施され、得られたドットデータに基づいて、ヘッドドライバ278を介してヘッド250のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。ここで言うドットデータは、「ノズル制御データ」に相当している。
【0211】
プリント制御部274には画像バッファメモリ(不図示)が備えられており、プリント制御部274における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリに一時的に格納される。また、プリント制御部274とシステムコントローラ272とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0212】
エンコーダ294は、描画ドラム170の回転速度を検出するものであり、例えば光電方式のロータリエンコーダが用いられる。システムコントローラ272は、エンコーダ294からの信号に基づいて描画ドラム170の回転速度を算出し、算出した回転速度に基づいて各色のインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのノズル251の吐出タイミング信号を生成し、プリント制御部274へ供給する。
【0213】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース270を介して外部から入力され、メモリ290に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データがメモリ290に記憶される。インクジェット記録装置100では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、メモリ290に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ272を介してプリント制御部274に送られ、該プリント制御部274においてハーフトーニング処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部274は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部274で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ(不図示)に蓄えられる。
【0214】
ヘッドドライバ278は、プリント制御部274から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリ276に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド250の各ノズルに対応するアクチュエータを駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ278にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0215】
ヘッドドライバ278から出力された駆動信号がヘッド250に加えられることによって、該当するノズルからインクが吐出される。記録媒体124を所定の速度で搬送しながらヘッド250からのインク吐出を制御することにより、記録媒体124上に画像が形成される。
【0216】
処理液付与制御部284は、システムコントローラ272からの指示に従い、処理液塗布装置156(図19参照)の動作を制御する。乾燥制御部286は、システムコントローラ272からの指示に従い、溶媒乾燥装置178(図19参照)の動作を制御する。
【0217】
定着制御部288は、システムコントローラ272からの指示に従い、定着部120のハロゲンヒータ186や定着ローラ188(図19参照)から成る定着加圧部299の動作を制御する。
【0218】
インラインセンサ190は、図19で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体124に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をシステムコントローラ272及びプリント制御部274に提供する。
【0219】
プリント制御部274は、インラインセンサ190から得られる情報に基づいてヘッド250に対する各種補正(不吐出補正や濃度補正など)を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0220】
図23のシステムコントローラ272、プリント制御部274(画像バッファメモリ内蔵)、ヘッドドライバ278の部分が図18で説明したヘッド制御装置70に相当する。なお、図23で説明したシステムコントローラ272が担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ350側に搭載する態様も可能である。
【0221】
<変形例>
上記実施形態では、記録媒体124に直接インク滴を打滴して画像を形成する方式(直接記録方式)のインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、一旦、中間転写体上に画像(一次画像)を形成し、その画像を転写部において記録紙に対して転写することで最終的な画像形成を行う中間転写型の画像形成装置についても本発明を適用することができる。
【0222】
また、上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置(1回の副走査によって画像を完成させるシングルパス方式の画像形成装置)を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用できる。
【0223】
<ヘッドと用紙を相対移動させる手段について>
上述の実施形態では、停止したヘッドに対して記録媒体を搬送する構成を例示したが、本発明の実施に際しては、停止した記録媒体(被描画媒体)に対してヘッドを移動させる構成も可能である。なお、シングルパス方式のフルライン型の記録ヘッドは、通常、記録媒体の送り方向(搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿ってヘッドを配置する態様もあり得る。
【0224】
<記録媒体について>
「記録媒体」は、記録素子によってドットが記録される媒体の総称であり、印字媒体、被記録媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものが含まれる。本発明の実施に際して、被記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、配線パターン等が形成されるプリント基板、ゴムシート、その他材質や形状を問わず、様々な媒体に適用できる。
【0225】
<本発明の応用例について>
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルター製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを描画するインクジェットシステムに広く適用できる。
【0226】
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0227】
(発明1):液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させて前記ノズルからの打滴により前記記録媒体上に画像を形成するための2値又は多値の画像データを生成する画像処理装置であって、多階調(M値)の元画像データに対して量子化処理を行い、前記元画像データよりも低階調のN値の画像データに変換する多値化手段を有し(ただし、M、Nは、M>N≧2を満たす整数)、前記記録ヘッドに対する前記記録媒体の相対移動方向を第1方向、前記記録媒体上の前記第1方向に垂直な方向を第2方向とするとき、前記記録ヘッドは、前記第1方向に前記ノズル列が複数列配置された2次元のノズル配列を備え、前記多値化手段は、前記第1方向にブルーノイズ特性を持ち、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つドットパターンを表すN値の画像データを生成し、当該周波数特性を持つ前記ドットパターンによって階調表現を実現することを特徴とする画像処理装置。
【0228】
第1方向についてドットを高周波に(連なりを少なく)配置する一方、第2方向については、ある程度ドットを連ならせて(低周波に)配置する。かかる態様によれば、第1方向の合一現象が抑制される。また、パターンとしても高周波であるため、粒状も良化する。
【0229】
第2方向については、隣接ドット間の着弾時間差が比較的長いため、合一現象が発生しにくく、粒状が悪化しない。また、第2方向にドットを連ならせるパターンの特性から、隣接ドット同士が互いに一部重なり合い、スジムラが発生しにくい。
【0230】
中間調における特定階調域について、上記のような周波数特性を持つドットパターンが生成されることが好ましい。
【0231】
(発明2):発明1に記載の画像処理装置において、前記ドットパターンの周波数成分を前記第2方向に積算したとき、前記第1方向では極大がナイキスト周波数付近にあり、前記ドットパターンの周波数成分を前記第1方向について前記ナイキスト周波数の1/2よりも高周波側の周波数域で積算したとき、前記第2方向では波数0の成分が抑制され、極大がナイキスト周波数よりも低周波の中周波領域にあることを特徴とする。
【0232】
パターンを2次元フーリエ変換して周波数空間の座標系で成分を調べたときに、上記のような特性を示すものが好ましい。ナイキスト周波数は、記録解像度(印刷解像度)によって規定される。
【0233】
(発明3):発明1又は2に記載の画像処理装置において、前記ドットパターンは、前記第2方向に複数個のドットが連続して連なる第2方向線分パターンが前記第1方向に関して記録解像度の2倍の周期で配置された構成からなることを特徴とする。
【0234】
かかる態様によれば、第1方向について概ね1画素おきに第2方向線分パターンが配置される。
【0235】
(発明4):発明3に記載の画像処理装置において、前記第1方向に隣り合って並ぶ前記第2方向線分パターンの間に、これら第2方向線分パターン同士をつなぐドットが配置されることを特徴とする。
【0236】
第1方向について高周波に配置される第2方向線分パターンの間にドットを分散配置することによって、シャドウ側の階調域の階調表現を行う態様が好ましい。
【0237】
(発明5):発明4に記載の画像処理装置において、前記記録ヘッドは前記ノズルから吐出する液滴の量を異ならせることによってドットサイズの異なる複数種類のドットを記録することができ、前記多値化手段は、前記記録ヘッドによって記録可能なドットの大きさの種類数に応じたN値の画像データを生成し、前記第2方向線分パターンは、前記複数種類のドットのうち、相対的に小さなドットによって形成され、前記第1方向に隣り合って並ぶ前記第2方向線分パターン同士をつなぐ前記ドットとして、前記複数種類のドットのうち、相対的に大きなドットが形成されることを特徴とする。
【0238】
2種類以上のドットサイズ(滴量)を打ち分けることができる場合、第2方向に連ならせる第2方向線分パターンは小ドット(小滴)とし、第2方向線分パターンの間に分散配置するドットは、より大きなドットとすることが好ましい。
【0239】
(発明6):発明3から5のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記第2方向線分パターンを記録するドットのドット径は、前記第1方向の記録解像度周期の2倍以下であることを特徴とする。
【0240】
かかる態様によれば、第1方向のドットが干渉しないため、粒状の悪化が抑制される。
【0241】
(発明7):発明3又は4に記載の画像処理装置において、前記記録ヘッドは前記ノズルから吐出する液滴の量を異ならせることによってドットサイズの異なる複数種類のドットを記録することができ、前記多値化手段は、前記記録ヘッドによって記録可能なドットの大きさの種類数に応じたN値の画像データを生成し、前記第2方向線分パターンは、前記複数種類のドットのうち、相対的に小さなドットと大きなドットが前記第2方向に沿って交互に並んで配置されことを特徴とする。
【0242】
かかる態様によれば、第2方向に沿って小さなドットと大きなドットが互いに部分的にオーバーラップを持って分布するため、スジが発生しにくい。
【0243】
(発明8):発明7に記載の画像処理装置において、前記第2方向線分パターンを構成する前記相対的に小さなドットと大きなドットの平均ドット径が、前記第1方向の記録解像度の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0244】
かかる態様によれば、第2方向線分パターン間の白地が概ねきれいに埋まり、粒状がよくなる。
【0245】
(発明9):発明1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記第1方向にブルーノイズ特性、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つマスクパターンによって画像領域を複数の領域に分割する領域分割手段を備え、前記領域分割手段により分割された少なくとも一部の領域内に配置するドットの密度を変化させることで前記階調表現が行われることを特徴とする。
【0246】
例えば、上述の周波数特性(第1方向に高周波、第2方向に低周波よりの周波数特性)を持つ2値マスクパターンを用いて、領域を2分割する。
【0247】
(発明10):発明9に記載の画像処理装置において、前記分割された領域のうち、前記マスクパターンと重なる領域を第1領域、前記第1領域の外側の領域を第2領域とするとき、前記多値化手段は、相対的に低い階調域では、前記第1領域内に限ってドットを配置するという制約のもと前記第1領域内でドットの密度を変化させ、相対的に高い階調域においては、前記第1領域の全てにドットを配置するとともに、前記第2領域のドットの密度を変化させることで前記階調表現が行われ、かつ前記第2の領域に配置されるドットは前記第2方向に分散して配置されることを特徴とする。
【0248】
第1方向に高周波にドットが配置されるため、着弾干渉による中間調並びにシャドウ部の粒状の悪化を抑制できるとともに、着弾位置ずれによるスジムラを抑制できる。また、第2方向に連なった帯状のパターンと、その間をつなぐようにドットが分散したパターンが混合されているため、粒状が良い。
【0249】
(発明11):発明10に記載の画像処理装置において、前記第2領域に配置されるドットは、第1領域に配置されるドットとは異なるサイズのドットであることを特徴とする。
【0250】
第1領域に配置するドットに比べて第2領域に配置するドットのドットサイズを大きいものとすることが好ましい。
【0251】
(発明12):発明10又は11に記載の画像処理装置において、前記第1領域を埋めるドットのドット径は、前記第1方向の記録解像度の2倍以下であることを特徴とする。
【0252】
かかる態様によれば、第1方向の隣接ドット同士が干渉しにくい。
【0253】
(発明13):発明9に記載の画像処理装置において、前記分割された領域のうち、前記マスクパターンと重なる領域を第1領域、前記第1領域の外側の領域を第2領域とするとき、前記多値化手段は、相対的に低い階調域では、前記第1領域内に限ってドットを配置するという制約のもと前記第1領域内でドットの密度を変化させ、相対的に高い階調域においては、前記第1領域内で、異なるサイズのドットの使用比率を変化させることで前記階調表現が行われ、前記異なるサイズのドットは前記第2方向に連なる際にサイズが高周波に変化するように配置されることを特徴とする。
【0254】
かかる態様によれば、着弾干渉による粒状の悪化防止とスジムラの抑制の両方を両立できるドットパターンの生成が可能である。
【0255】
(発明14):発明13に記載の画像処理装置において、前記第2方向に連なって配置される前記異なるサイズの複数のドットのサイズの平均は、前記第1方向の記録解像度の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0256】
かかる態様によれば、ドット同士がオーバーラップを持って分布し、スジが発生しにくい。
【0257】
(発明15):発明9から14のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記領域分割手段は、前記第1方向にブルーノイズ特性、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つディザマトリクスを用いて実現されていることを特徴とする。
【0258】
中間調の階調域にて、上記の周波数特性を持つディザマトリクスを用い、閾値と比較することによって、領域を分けることができる。
【0259】
(発明16):発明9から15のいずれか1項に記載の画像処理装置において、前記元画像データの画素の量子化によって発生する量子化誤差を周辺の未量子化画素に拡散し、当該拡散された前記量子化誤差と、各画素の階調値と、前記領域分割手段によって分割される領域に応じた処理の制約条件とに基づいて、各画素の量子化が行われることを特徴とする。
【0260】
領域分けを行うマスクパターン(例えば、ディザマトリクス)と誤差拡散法とを併用して目的のパターンを実現することができる。
【0261】
(発明17):発明16に記載の画像処理装置において、前記量子化誤差の拡散は、前記周辺画素に対して均等に誤差を分配するときと比較して、前記第2方向により多くの誤差が拡散されることを特徴とする。
【0262】
かかる態様によれば、第2方向にドットが分散され、全体として分散性が向上し、粒状が良化する。
【0263】
(発明18):液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させて前記ノズルからの打滴により前記記録媒体上に画像を形成するための2値又は多値の画像データを生成する画像処理方法であって、多階調(M値)の元画像データに対して量子化処理を行い、前記元画像データよりも低階調のN値の画像データに変換する多値化工程を有し(ただし、M、Nは、M>N≧2を満たす整数)、前記記録ヘッドに対する前記記録媒体の相対移動方向を第1方向、前記記録媒体上の前記第1方向に垂直な方向を第2方向とするとき、前記記録ヘッドは、前記第1方向に前記ノズル列が複数列配置された2次元のノズル配列を備え、前記多値化工程は、前記第1方向にブルーノイズ特性を持ち、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つドットパターンを表すN値の画像データを生成し、当該周波数特性を持つ前記ドットパターンによって階調表現を実現することを特徴とする画像処理方法。
【0264】
発明2から17に記載の特徴を発明18に組み合わせる態様も可能である。
【0265】
(発明19):液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる相対移動手段と、発明1から17のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像処理装置で生成された前記N値の画像データに基づいて前記記録ヘッドの前記ノズルからの液滴の吐出動作を制御する記録制御手段と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【符号の説明】
【0266】
10…ノズル、21,22…ノズル列、50…画像形成装置、60…記録ヘッド、62…圧電素子、70…ヘッド制御装置、74…ハーフトーン処理部、78…ヘッドドライバ、100…インクジェット記録装置、124…記録媒体、170…描画ドラム、172M,172K,172C,172Y…インクジェットヘッド(記録ヘッド)、250’,250”…ヘッドモジュール、251…ノズル、272…システムコントローラ、280…プリント制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させて前記ノズルからの打滴により前記記録媒体上に画像を形成するための2値又は多値の画像データを生成する画像処理装置であって、
多階調(M値)の元画像データに対して量子化処理を行い、前記元画像データよりも低階調のN値の画像データに変換する多値化手段を有し(ただし、M、Nは、M>N≧2を満たす整数)、
前記記録ヘッドに対する前記記録媒体の相対移動方向を第1方向、前記記録媒体上の前記第1方向に垂直な方向を第2方向とするとき、前記記録ヘッドは、前記第1方向に前記ノズル列が複数列配置された2次元のノズル配列を備え、
前記多値化手段は、前記第1方向にブルーノイズ特性を持ち、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つドットパターンを表すN値の画像データを生成し、当該周波数特性を持つ前記ドットパターンによって階調表現を実現することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ドットパターンの周波数成分を前記第2方向に積算したとき、前記第1方向では極大がナイキスト周波数付近にあり、前記ドットパターンの周波数成分を前記第1方向について前記ナイキスト周波数の1/2よりも高周波側の周波数域で積算したとき、前記第2方向では波数0の成分が抑制され、極大がナイキスト周波数よりも低周波の中周波領域にあることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ドットパターンは、前記第2方向に複数個のドットが連続して連なる第2方向線分パターンが前記第1方向に関して記録解像度の2倍の周期で配置された構成からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1方向に隣り合って並ぶ前記第2方向線分パターンの間に、これら第2方向線分パターン同士をつなぐドットが配置されることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは前記ノズルから吐出する液滴の量を異ならせることによってドットサイズの異なる複数種類のドットを記録することができ、
前記多値化手段は、前記記録ヘッドによって記録可能なドットの大きさの種類数に応じたN値の画像データを生成し、
前記第2方向線分パターンは、前記複数種類のドットのうち、相対的に小さなドットによって形成され、
前記第1方向に隣り合って並ぶ前記第2方向線分パターン同士をつなぐ前記ドットとして、前記複数種類のドットのうち、相対的に大きなドットが形成されることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2方向線分パターンを記録するドットのドット径は、前記第1方向の記録解像度周期の2倍以下であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは前記ノズルから吐出する液滴の量を異ならせることによってドットサイズの異なる複数種類のドットを記録することができ、
前記多値化手段は、前記記録ヘッドによって記録可能なドットの大きさの種類数に応じたN値の画像データを生成し、
前記第2方向線分パターンは、前記複数種類のドットのうち、相対的に小さなドットと大きなドットが前記第2方向に沿って交互に並んで配置されることを特徴とする請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第2方向線分パターンを構成する前記相対的に小さなドットと大きなドットの平均ドット径が、前記第1方向の記録解像度の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1方向にブルーノイズ特性、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つマスクパターンによって画像領域を複数の領域に分割する領域分割手段を備え、
前記領域分割手段により分割された少なくとも一部の領域内に配置するドットの密度を変化させることで前記階調表現が行われることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記分割された領域のうち、前記マスクパターンと重なる領域を第1領域、前記第1領域の外側の領域を第2領域とするとき、
前記多値化手段は、相対的に低い階調域では、前記第1領域内に限ってドットを配置するという制約のもと前記第1領域内でドットの密度を変化させ、
相対的に高い階調域においては、前記第1領域の全てにドットを配置するとともに、前記第2領域のドットの密度を変化させることで前記階調表現が行われ、かつ前記第2の領域に配置されるドットは前記第2方向に分散して配置されることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第2領域に配置されるドットは、第1領域に配置されるドットとは異なるサイズのドットであることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1領域を埋めるドットのドット径は、前記第1方向の記録解像度の2倍以下であることを特徴とする請求項10又は11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記分割された領域のうち、前記マスクパターンと重なる領域を第1領域、前記第1領域の外側の領域を第2領域とするとき、
前記多値化手段は、相対的に低い階調域では、前記第1領域内に限ってドットを配置するという制約のもと前記第1領域内でドットの密度を変化させ、
相対的に高い階調域においては、前記第1領域内で、異なるサイズのドットの使用比率を変化させることで前記階調表現が行われ、前記異なるサイズのドットは前記第2方向に連なる際にサイズが高周波に変化するように配置されることを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記第2方向に連なって配置される前記異なるサイズの複数のドットのサイズの平均は、前記第1方向の記録解像度の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記領域分割手段は、前記第1方向にブルーノイズ特性、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つディザマトリクスを用いて実現されていることを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記元画像データの画素の量子化によって発生する量子化誤差を周辺の未量子化画素に拡散し、当該拡散された前記量子化誤差と、各画素の階調値と、前記領域分割手段によって分割される領域に応じた処理の制約条件とに基づいて、各画素の量子化が行われることを特徴とする請求項9から15のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記量子化誤差の拡散は、前記周辺画素に対して均等に誤差を分配するときと比較して、前記第2方向により多くの誤差が拡散されることを特徴とする請求項16に記載の画像処理装置。
【請求項18】
液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと記録媒体とを相対移動させて前記ノズルからの打滴により前記記録媒体上に画像を形成するための2値又は多値の画像データを生成する画像処理方法であって、
多階調(M値)の元画像データに対して量子化処理を行い、前記元画像データよりも低階調のN値の画像データに変換する多値化工程を有し(ただし、M、Nは、M>N≧2を満たす整数)、
前記記録ヘッドに対する前記記録媒体の相対移動方向を第1方向、前記記録媒体上の前記第1方向に垂直な方向を第2方向とするとき、前記記録ヘッドは、前記第1方向に前記ノズル列が複数列配置された2次元のノズル配列を備え、
前記多値化工程は、前記第1方向にブルーノイズ特性を持ち、前記第2方向にグリーンノイズ特性を持つドットパターンを表すN値の画像データを生成し、当該周波数特性を持つ前記ドットパターンによって階調表現を実現することを特徴とする画像処理方法。
【請求項19】
液滴を吐出する吐出口としての複数のノズルが配列されたノズル列を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを相対的に移動させる相対移動手段と、
請求項1から17のいずれか1項に記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置で生成された前記N値の画像データに基づいて前記記録ヘッドの前記ノズルからの液滴の吐出動作を制御する記録制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図3】
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【図5】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−186714(P2012−186714A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49252(P2011−49252)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】