説明

画像処理装置及び画像処理プログラム

【課題】より容易に撮影画像中の異物を検出可能な画像処理装置及び画像処理プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置は、第一の撮影画像中における特定位置を選択可能な位置選択部34と、前記第一の撮影画像中において、前記位置選択部34により選択された位置を含む一定の範囲を決定する範囲決定部61と、前記第一の撮影画像と異なる第二の撮影画像を選択する画像選択部62と、前記第二の撮影画像中における、前記第一の撮影画像の前記一定の範囲に対応する対応範囲から、前記第二の撮影画像中に移りこんだ異物影情報を取得する異物影情報取得部63と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラ等により撮像を行う際、光学フィルタ等に異物が付着していると、異物の影が撮像画像に写り込む場合がある。このように画像に写り込んだ異物影等による画像欠損部位を補正するものとして、異物影の写り込んだ基準画像から異物位置の座標等の情報を得て、その情報に基づいて通常撮影された撮影画像に写り込んだ異物影による画像欠損を補正する画像処理装置が知られている。
また、補正対象の画像における異物影による透過率の変化(各画素における輝度情報の変化)から異物を検出し、異物影を削除する補正を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−220553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、異物の写り込んだ基準画像を撮影する必要がある。また、撮影画像と基準画像とにおいて、異物位置の座標等が異なる場合もある。
【0005】
本発明の課題は、より容易に撮影画像中の異物を検出可能な画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、第一の撮影画像(G1)中における特定位置を選択可能な位置選択部(34)と、前記第一の撮影画像(G1)中において、前記位置選択部(34)により選択された位置を含む一定の範囲(E1)を決定する範囲決定部(61)と、前記第一の撮影画像(G1)と異なる第二の撮影画像(G2)を選択する画像選択部(62)と、前記第二の撮影画像(G2)中における、前記第一の撮影画像(G1)の前記一定の範囲(E1)に対応する対応範囲(E2)から、前記第二の撮影画像(G2)中に移りこんだ異物影情報を取得する異物影情報取得部(63)と、を備えること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置(50)であって、前記画像選択部(62)は、前記第二の撮影画像(G2)として、前記第一の撮影画像(G1)の撮影条件に近い撮影条件で撮影された画像を選択すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像処理装置(50)であって、前記撮影条件は、前記第一の撮影画像(G1)を撮影したカメラ本体と同一のカメラ本体であることと、絞り値、撮影距離、レンズ、焦点距離、及び撮影時間のうちの少なくとも1つが同一であることと、を含むこと、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、前記異物影情報取得部(63)は、輝度情報を用いて異物影情報を取得すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、前記画像選択部(62)は、前記第二の撮影画像(G2)として、前記第一の撮影画像(G1)と同じファイル型式にした場合に、前記対応範囲(E2)内に前記異物影情報を有し、かつ、前記対応範囲(E2)周辺の輝度が第一の撮影画像(G1)と同一又はもっとも近い画像を選択すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、前記画像選択部(62)は、前記第二の撮影画像(G2)として、前記第一の撮影画像(G1)と同じファイル型式にした場合に、前記対応範囲(E2)内に前記異物影情報を有し、かつ、前記範囲周辺の色相が第一の撮影象画像と同一又はもっとも近い画像を選択すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、前記画像選択部(62)は、前記第二の撮影画像(G2)として、前記対応範囲(E2)内に前記異物影情報を有し、かつ、前記対応範囲(E2)周辺の輝度の標準偏差が最も小さい画像を選択すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、前記画像選択部(62)は、前記第二の撮影画像(G2)における、前記対応範囲(E2)の平均した輝度のプロファイルから、前記第一の撮影画像(G1)を補正するためのデータを作成すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、前記画像選択部(62)は、前記第一の撮影画像(G1)以外の撮影画像から、シャッタスピードの異なるものを前記第二の撮影画像(G2)として選択すること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項10に記載の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)であって、画像の補正部(51)を備えること、を特徴とする画像処理装置(50)である。
請求項11に記載の発明は、請求項1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置(50)の機能をコンピュータ(30)に実行させること、を特徴とする画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より容易に撮影画像中の異物を検出可能な画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態におけるレンズ交換式のカメラの構成を示す図である。
【図2】カメラと画像処理装置を構成するパーソナルコンピュータ及び周辺装置を示すブロック図である。
【図3】画像欠損補正処理を行う画像処理装置の機能ブロック図である。
【図4】画像処理装置における欠損判定部の機能ブロック図である。
【図5】画像処理装置による異物影情報検出及び画像の補正処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】モニタ上に表示された第一の撮影画像の一例である。
【図7】(a)、(b)共に、第二の撮影画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、レンズ交換式のカメラ1の構成を示す図である。図2は、カメラ1と画像処理装置を構成するパーソナルコンピュータ(PC)30及び周辺装置を示すブロック図である。
カメラ1は、被写体像を電気信号に変換した画像データとして出力する電子スチルカメラである。本実施形態は、カメラ1が撮影した画像データを、画像処理装置として機能するPC30が取得して後述する異物影の検出及び補正処理を行うものである。
【0011】
カメラ1は、カメラボディ2と、カメラボディ2に対して着脱可能な撮像レンズ3とにより構成されている。撮像レンズ3は、複数の光学レンズ群(図1においては1枚のレンズで示す)を有する結像光学系3Lを備えている。
【0012】
カメラボディ2は、シャッタ11、光学フィルタ12、撮像素子13、画像処理部14、操作部15、表示部16、メモリカード用インターフェース(以下、「メモリカードIF」と記す)17、外部インターフェース(以下、「外部IF」と記す)18、電源19、制御部20等を備えている。
【0013】
シャッタ11は、結像光学系3Lから撮像素子13へ向かう撮影光を遮蔽及び通過させることによって、露光時間を調整する。
光学フィルタ12は、撮像に際して偽色(色モアレ)等の発生を防止する光学ローパスフィルタ等によって構成される。なお、図1中の符号4は、この光学フィルタ12の表面に付着した塵や埃などの異物を示す。このような撮影光の光路上にあって撮影光を透過する光学フィルタ12に異物4が付着していると、撮像素子13によって取得される画像データのなかに、異物影の影響を受けた画素が含まれる場合がある。
【0014】
撮像素子13は、CCDやCMOS等の光電変換素子であって、複数の画素から構成される矩形形状の撮像領域を有している。そして、撮像素子13は、その結像面に結像された像を電気信号に変換し、被写体像に対応する画像信号(撮像信号)を出力する。撮像素子13から出力された画像信号は、所定のアナログ信号処理の後、A/D変換されて画像処理部14に入力される。
【0015】
画像処理部14は、撮像素子13から入力された画像データに対して、補間,階調変換や輪郭強調などの画像処理を行う。
操作部15は、撮影者が撮影タイミング等を決定する信号を入力するレリーズボタンや、モード切り換え用の選択ボタン等を備えている。そして、操作部15は、それらの操作情報を制御部に入力する。
【0016】
表示部16は、LCD等によって構成され、カメラ1における各種設定メニュー、撮像素子13による撮像画像やメモリカードに格納された画像データに基づく再生画像を表示する。
【0017】
メモリカード用IF17は、メモリカード(カード状のリムーバブルメモリ)40とのインターフェースをとなる。
外部IF18は、所定のケーブルや無線伝送路を介してPC30等の外部装置とのインターフェースとなる。
電源19は、カメラ1の各機能部に電力を供給する。
【0018】
制御部20は、カメラ1における各機能部を統括制御する。すなわち、制御部20は、操作部15におけるレリーズスイッチから撮影指示信号が入力されると、シャッタ11を駆動制御して露光動作等の撮影動作を制御する。また、制御部20は、撮像素子13で取得されて画像処理部14で画像処理が行われて入力された画像データを、メモリカード用IF17に着脱可能に取り付けられたメモリカード40等に記憶させ、保存する。さらに、制御部20は、メモリカード40等に記憶された画像データを呼び出し、表示部16に表示させる。
【0019】
上記のように構成されたカメラ1は、撮影時において制御部20によって制御されて、下記のように作用する。
操作者によって操作部15のレリーズボタンが押圧操作されると、シャッタ11を所定時間開放する。撮像素子13は、結像光学系3Lにより撮像領域に結像された光学像に対応する画像信号を生成する。撮像素子13によって生成された画像信号は、画像データとして画像処理部14に入力され、画像処理部14によって所定の画像処理が施される。そして、画像処理部14で画像処理された画像データに基づいて表示部16に撮影画像を表示すると共に、その画像データに必要に応じてJPEGやRAW等による圧縮処理を施してメモリカード用IF17に装着されたメモリカード40に記憶・保存する。また、外部IF18を介して接続された後述するPC30に、画像データを送出する。
【0020】
ここで、メモリカード40に記憶・保存され、又は、外部IF18を介してPC30に送出される画像データは、例えば、Exif(EXchange Image File format)ファイルに記録される。Exifファイルには、カメラボディ2の種類、カメラメーカー名、撮像画素情報、絞り値(F値)や焦点、シャッタスピード及び露光補正等の露出条件、撮影時刻、撮影距離などの付加情報が共に記録される。
【0021】
パーソナルコンピュータ(PC)30は、図示しないが、CPU、メモリ、ハードディスク、メモリカード40とのインターフェースとなるメモリカード用IF、ケーブルや無線伝送路を介してカメラ1等の外部装置とのインターフェースとなる外部IF等を備えている。また、PC30には、画像表示部としてのモニタ31やプリンタ32等が接続されていると共に、モニタ31に表示された撮影画像中における異物影等の異物が写り込んだ特定位置をユーザが任意選択的に指し示す選択部としてのマウス34が接続されている。
【0022】
さらに、PC30に接続のCD−ROM33には、異物影等の異物検出及び検出された異物の情報に基づいて画像を補正処理するアプリケーションプログラムが予めインストールされている。
【0023】
つぎに、撮影された第一の撮影画像中における異物影等による異物影情報を検出し、その検出した異物影情報に基づいて第一の撮影画像を補正する処理(異物影情報検出・補正処理)について説明する。
【0024】
異物影情報検出・補正処理は、メモリカード30を介して提供された、又は、カメラ1の外部インターフェース18から伝送された画像処理完了後の画像データに対して、PC30によって行われる。
前述したように、PC30には、異物影情報検出及び画像補正処理のアプリケーションプログラムがインストールされており、PC30は、このプログラムを実行することによって、異物影情報検出及び画像の補正処理を行う画像処理装置50として機能する。
【0025】
図3は、異物影情報検出・補正処理を行う画像処理装置50の機能ブロック図である。図4は、画像処理装置50における異物影検出部60の機能ブロック図である。
PC30とプログラムとによって機能する画像処理装置50は、図3に示すように、異物影情報を検出する異物影検出部60と、異物影検出部60によって検出された異物影情報に基づいて、その異物による異物影を補正する補正部51と、を備えている。
異物影検出部60は、図4に示すように、範囲決定部61と、画像選択部62と、異物影情報取得部63と、を備えている。そして、異物影情報取得部63はさらに、連結領域判定部64と、対象領域抽出部65と、輝度判定部66とを備えている。
【0026】
図5は、画像処理装置50における異物影情報検出及び画像の補正処理の流れを説明するフローチャートである。図5のフローチャートに従って、画像処理装置50における異物影情報検出及び画像の補正処理の流れを説明する。図5及び以下の説明中、ステップを「S」とも略記する。
【0027】
まず、画像処理装置50を含むPC30は、ステップS01において、メモリカード40を介して、又は、カメラ1の外部インターフェース18を介して入力された第一(対象)の撮影画像G1のデータを読み込む。
【0028】
ステップS02では、読み込んだ第一の撮影画像G1をモニタ31上に表示する。図6は、モニタ31上に表示された第一の撮影画像G1の一例を示す。図6の第一の撮影画像G1において、木々に囲まれた部分に異物影4Aがある。このような異物影は、例えば光学フィルタ12の前面に付着した異物(異物4)(図1参照)により生じている。
【0029】
ここで、ユーザは異物影部分を認識することが可能であるが、異物影4Aの輝度勾配と木々の輝度勾配とが重なり、輝度勾配から異物影4A情報を検出することは困難な可能性がある。
【0030】
そこで、まず、ステップS03において、モニタ31上に表示された第一の撮影画像G1の、異物影4Aの位置をユーザがマウス34によりクリックすると、範囲決定部61は、マウス34によるクリック位置を中心にして異物影及びその周辺を含めた所定の大きさの検出範囲Eを決定する。
ここで、この検出範囲Eは、予め規定されていてもよく、また、ユーザがマウス34を移動させて任意の大きさを設定できるようにしてもよい。
【0031】
ステップS04で画像選択部62は、記憶部35のデータベース36に保存されている複数の第二の撮影画像のうち、第一の撮影画像G1と撮影条件が同一又は略同一である第二の撮影画像G2を検索し選択する。
【0032】
この場合、撮影条件の同一性の判断は、第一の撮影画像G1及び第二の撮影画像G2のExif情報に代表される撮影情報を基に行う。
具体的には、Exif情報等の撮影情報における、カメラボディ(カメラ種類)2、絞り値(F値)、焦点距離、撮影時刻、レンズ、撮影距離等が同一であることが判断基準である。
これらの撮影条件のうち、カメラボディ2が同一であることとは本実施形態において必須とする。本実施形態は、同一のカメラボディ2で撮影した場合に、異なる撮影画像であっても、カメラボディ2内に配置されている光学フィルタ12に付着した異物は、同じ位置に影として移り込む現象を利用して異物影を補正するものであるからである。
【0033】
その他の撮影条件は、少なくとも1つ以上、特に、絞り値が一致することが好ましく、撮影距離、焦点距離、撮影時間等も同一であることがより好ましい。全ての条件が一致することがさらに好ましい。
画像選択部62により選択される第二の撮影画像G2は、選択条件に応じて、1以上又は複数選択される。なお、1枚も選択されなかった場合は、モニタ31に、選択枚数ゼロ等の警告表示が出るようにしてもよい。
図7は、画像選択部62により第二の撮影画像G2が複数選択された場合の2つの画像G2(1)及びG2(2)を示す図である。
【0034】
次に、ステップS05で異物影情報取得部63は、選択された複数の第二の撮影画像G2中の、第一の撮影画像G1中の所定の検出範囲Eに対応する対応範囲E2を特定する。
【0035】
ステップS06で連結領域判定部64は、対応範囲E2内の画像を形成するRGBによる各画素の画像データより輝度平面を求め、輝度平面に対して逆ガンマ補正をかけ、入出力の関係を線形に戻す。そして、逆ガンマ補正後の輝度平面から、輝度勾配平面を生成する。
輝度勾配平面では、異物影の周縁部では高い画素値を示し、空などの一様な平面では低い画素値を示す。つまり、エッジ部分では高い画素値を示し、これによって異物影のエッジ部分を検出できる。
【0036】
次に、連結領域判定部64は、所定の閾値を設定して、輝度勾配平面を2値画像に変換する。すなわち、閾値より高い輝度勾配値を有する画素を「1」、閾値より低い明度勾配値を有する画素を「0」と置換する。
そして、ステップS07において、連結領域判定部64は、このようにして得られた2値画像から、「1」の画素が連結した領域(連結画素領域)を抽出する。連結画素領域とは、例えば、矩形の画素の4辺の内の少なくとも1辺で連続した(4近傍の)画素領域とする。この連結画素領域が、異物影の可能性のある領域である。
【0037】
ステップS08において、対象領域抽出部65は、連結領域判定部64によって抽出された連結画素領域の中から、異物影のサイズ(大小)に基づいて補正候補領域を抽出する。この対象領域抽出部65における異物影の大きさの判別は、画素数によって規定する。
ここで、対象領域抽出部65は、連結画素領域から補正候補領域を抽出する際において、異物影の絶対的な大きさを基準とする。ここでは、一般的な異物のサイズと異物影のサイズがほぼ等しいものとして、最小100μm×100μm〜最大400μm×400μmの大きさを検出対象とする。
【0038】
そして、対象領域抽出部65では、上記異物影の画素数によって表される面積を閾値として、連結領域判定部64において2値画像から抽出された連結画素領域の大きさ(画素数)がこの閾値内に含まれるものを、補正対象となり得る異物影候補と判定し、選択する。
【0039】
さらにステップS9において輝度判定部66は、先の連結領域判定部64において説明した輝度値と画像平面に対応する輝度平面とを用い、連結画素領域における内外の輝度を比較する。ここで、ゴミ影は、内部の輝度が周辺の輝度に比較して低く、輝度比(内部の輝度/周辺の輝度)は1よりとても小さい。このため、輝度比が小さい所定の閾値を設定し、連結画像領域の輝度比がこの閾値より小さいに場合にのみ、異物影であると判定し、選択する。
【0040】
そしてステップS11において、異物影情報取得部63は、異物影であると判定された影を有する第二の撮影画像G2の範囲E2における、ゲインマップと異物位置情報(座標)を取得する。
【0041】
ここで、異物影が存在すると検出された画像が複数である場合、それらの複数の第二の撮影画像G2中における、範囲E2の輝度の標準偏差をそれぞれ演算する。そして、第二の撮影画像G2のなかで、範囲E2の標準偏差の分散が所定閾値以下となる撮影画像を選択する。
【0042】
分散が所定閾値以下ということは、範囲E2が平坦な画像、すなわち輝度のばらつきが少ない画像であり、異物影の判断が容易であるからである。
なお、本実施形態では分散が所定値以下であることを用いるが、エッジが少ない画像、ヒストグラムが均一な画像であることを利用してもよい。
【0043】
なお、本実施形態では、輝度の分散が少ないことを画像枚数の絞込みに利用するが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像枚数を絞りこまずに、複数画像のゲインマップを平均することによりゲインマップと異物位置情報(座標)を得てもよい。
また、第一の撮影画像G1の検出範囲Eとの輝度が最も近い画像を選択してもよい。
さらに、第一の撮影画像G1の検出範囲Eとの色相が最も近い画像を選択してもよい。
また、撮影条件が最も近いものの画像を選択してもよい。
さらに、シャッタ速度が違うものを選択してもよい。シャッタ速度が異なるということは、シーンが違う可能性が高く、異なる被写体を撮影している可能性が高いため、両方に付着している異物であれば、より異物影である可能性が高いからである。
また、上述の各条件(輝度、色相、標準偏差)に重み付けを行って、総合的に判断して第二の撮影画像G2を選択してもよい。
【0044】
次に、ステップS11において、補正部51は、上述のように選択された第二の撮影画像G2中に写り込んだ異物影情報としてのゲインマップと異物位置情報(座標)を用いて第一の撮影画像を補正して異物影の輝度を低減又は削除する補正を行う。
【0045】
すなわち、補正部51は、第一の撮影画像G1中の所定の検出範囲Eについて、第二の撮影画像G2中の所定の検出範囲Eから取得したゲインマップを用い、第一の撮影画像G1の所定の検出範囲Eの輝度に、輝度信号の逆数を掛け算して、ゲイン補正を行う。これにより、第一の撮影画像G1中の所定の検出範囲Eに出現する異物影等の異物による輝度の変化を低減もしくは除去する画像補正を行う。
【0046】
ここで、画像補正が行われた第一の撮影画像G1をモニタ31上に再び表示させて、ユーザにおいて再度、異物影情報検出及び画像の補正処理を行なうか否かを選択させることも可能である。
【0047】
以上、本実施形態の画像処理装置50は、撮影画像中に異物影等の異物が写りこんでいる特定位置を任意に選択可能な選択部(マウス)34と、選択された位置を含む一定の範囲を決定する範囲決定部61と、撮影画像と異なる第二の撮影画像を選択する画像選択部62と、を備えている。これにより、通常撮影の前に、異物影等の異物の写り込んだ基準画像を撮影するといった面倒な手数は不要であり、例えば、モニタ31に表示された検出対象となる第一の撮影画像を視て、異物影等が写り込んだ特定位置をマウス34によりクリック(選択)するという簡単な操作を行うだけで、異物検出機能を実行することができる。
【0048】
画像処理装置50における異物影情報取得部63は、画像選択部62に選択された撮影条件の近い第二の撮影画像中における、範囲決定部61により決定された範囲Eから、第二の撮影画像中に写り込んだ異物影情報を取得する。これにより、第一の撮影画像中の欠陥となる異物影情報を高い精度で検出することができる。また、検出された異物影情報に基づいて撮影画像中における欠陥を適正に補正することができる。
【0049】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
【0050】
(1)上記実施形態では、電子スチルカメラであるカメラ1によって撮影した画像データを処理する例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。本発明は、動画を扱うビデオカメラで撮影した画像データにも適用できる。また、カメラつき携帯電話などで撮影した画像データにも適用できる。さらに、コピー機やスキャナ等にも適用できる。すなわち、撮像素子を使用して撮像したあらゆる画像データに対して、本発明を適用することができる。
【0051】
(2)上記実施の形態では、電子スチルカメラであるカメラ1で撮影した画像データをPC(パソコン)30で処理して異物の影響を除去する例を説明したが、この内容に限定するものではない。カメラ1にそのようなプログラムを備えてもよい。その場合、カメラ1の液晶画面での欠陥位置の特定は、タッチパネル方式や、カメラ背面に設けられた十字キー等で行ってもよい。
また、プリンタや投影装置などにそのようなプログラムを備えてもよい。すなわち、本発明は、画像データを扱うあらゆる装置に適用することができる。
【0052】
(3)PC30で実行するプログラムは、CD−ROMなどの記録媒体に限らず、インターネットなどのデータ信号を通じて提供することができる。
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0053】
1:カメラ、2:カメラボディ、12:光学フィルタ、13:撮像素子、17:メモリカード用IF、18:外部IF、30:パーソナルコンピュータ(PC)、33:CD−ROM、34:マウス(選択部)、36:メモリカード、50:画像処理装置、51:補正部、60:異物影情報検出部、61:範囲決定部、62:画像選択部、63:異物影情報取得部、G1:第一の撮影画像、G2:第二の撮影画像、E:検出範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の撮影画像中における特定位置を選択可能な位置選択部と、
前記第一の撮影画像中において、前記位置選択部により選択された位置を含む一定の範囲を決定する範囲決定部と、
前記第一の撮影画像と異なる第二の撮影画像を選択する画像選択部と、
前記第二の撮影画像中における、前記第一の撮影画像の前記一定の範囲に対応する対応範囲から、前記第二の撮影画像中に移りこんだ異物影情報を取得する異物影情報取得部と、を備えること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記画像選択部は、前記第二の撮影画像として、前記第一の撮影画像の撮影条件に近い撮影条件で撮影された画像を選択すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記撮影条件は、前記第一の撮影画像を撮影したカメラ本体と同一のカメラ本体であることと、絞り値、撮影距離、レンズ、焦点距離、及び撮影時間のうちの少なくとも1つが同一であること、を含むこと、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記異物影情報取得部は、輝度情報を用いて異物影情報を取得すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記画像選択部は、前記第二の撮影画像として、前記第一の撮影画像と同じファイル型式にした場合に、前記対応範囲内に前記異物影情報を有し、かつ、前記対応範囲周辺の輝度が第一の撮影画像と同一又はもっとも近い画像を選択すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記画像選択部は、前記第二の撮影画像として、前記第一の撮影画像と同じファイル型式にした場合に、前記対応範囲内に前記異物影情報を有し、かつ、前記範囲周辺の色相が第一の撮影象画像と同一又はもっとも近い画像を選択すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記画像選択部は、前記第二の撮影画像として、前記対応範囲内に前記異物影情報を有し、かつ、前記対応範囲周辺の輝度の標準偏差が最も小さい画像を選択すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記画像選択部は、前記第二の撮影画像における、前記対応範囲の平均した輝度のプロファイルから、前記第一の撮影画像を補正するためのデータを作成すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
前記画像選択部は、前記第一の撮影画像以外の撮影画像から、シャッタスピードの異なるものを前記第二の撮影画像として選択すること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の画像処理装置であって、
画像の補正部を備えること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置の機能をコンピュータに実行させること、
を特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−222509(P2012−222509A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84573(P2011−84573)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】