説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】画像の読み取りに対応して良好な入力画像データを取得することができる画像処理装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の画像処理装置は、画像読取手段と、解析手段と、記憶手段と、補正手段とを備える。前記画像読取手段は、画像を読み取る。前記解析手段は、テスト画像の読み取りにより得られるテスト画像データを解析し、前記テスト画像データの解析結果に基づき、前記テスト画像データに対応するテスト画像領域から基準影発生領域を検出し、前記基準影発生領域に対応する基準影画像データを検出する。前記記憶手段は、前記基準影発生領域を示す基準影発生領域データ、及び前記基準影画像データを記憶する。前記補正手段は、前記基準影発生領域データ及び前記基準影画像データに基づき、入力画像の読み取りにより得られる入力画像データを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スキャナ等の画像読取装置により読み取られた入力画像データの画質改善に関する各種技術提案がなされている。画像読取装置は、原稿台にセットされた原稿画像に対して、光源からの光をミラーなどを使用して照射し、原稿画像からの反射光をCCD等で検出し、検出反射光に基づき入力画像データを取得する。その際、原稿画像に対する光の照射角によって、原稿端部又は画像読取エリアの端部において影が発生することがある。この場合、入力画像データが、影成分のデータを含むことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−74529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、画像の読み取りに対応して良好な入力画像データを取得することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の画像処理装置は、画像読取手段と、解析手段と、記憶手段と、補正手段とを備える。前記画像読取手段は、画像を読み取る。前記解析手段は、テスト画像の読み取りにより得られるテスト画像データを解析し、前記テスト画像データの解析結果に基づき、前記テスト画像データに対応するテスト画像領域から基準影発生領域を検出し、前記基準影発生領域に対応する基準影画像データを検出する。前記記憶手段は、前記基準影発生領域を示す基準影発生領域データ、及び前記基準影画像データを記憶する。前記補正手段は、前記基準影発生領域データ及び前記基準影画像データに基づき、入力画像の読み取りにより得られる入力画像データを補正する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置の概略構成の一例を示す図である。
【図2】テスト画像データの読取結果の一例を示す図である。
【図3】テスト画像データの解析結果の一例、及び入力画像データの解析結果と補正の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る画像処理装置の概略構成の一例を示す図である。図1に示すように、画像処理装置は、画像読取部(スキャナ)1、画像処理部2、画像形成部(プリンタ)3、制御部4、ページメモリ部5、データ記憶部6、操作部7を備える。制御部4は、PCIバス8等を介して、ページメモリ部5及びデータ記憶部6等と接続される。
【0009】
画像読取部1は、原稿台にセットされた原稿画像に対して光源からの光をミラーなどを使用して照射し、原稿画像からの反射光をCCD等で検出し、検出反射光に基づき入力画像データを取得する。
【0010】
画像処理部2は、スキャナ系画像処理部21及びプリンタ系画像処理部22を備える。スキャナ系画像処理部21は、入力画像データ(RGBデータ)を解析し、解析結果に基づき入力画像データに対して各種画像処理を加える。また、スキャナ系画像処理部21は、影補正処理部211を備え、影補正処理部211は、入力画像データの解析結果に基づき、入力画像データに含まれる影成分を検出し、影成分を補正する。影成分の補正については後に詳しく説明する。プリンタ系画像処理部21は、入力画像データを出力画像データ(CMYKデータ)へ変換する。
【0011】
ページメモリ5は、入力画像データ、影補正された入力画像データ、及び出力画像データ等を記憶する。画像形成部3は、出力画像データに基づき画像を形成する。
【0012】
制御部4は、操作部7からの指示に基づき、画像読取部1、画像処理部2、及び画像形成部3の各動作を制御し、また、画像処理部2、ページメモリ部5、及びデータ記憶部6の間の画像データの送受信等を制御する。つまり、制御部4は、原稿の画像を読み取るための制御、画像を出力するための制御等を実行する。データ記憶部6は、例えばハードディスクドライブ(HDD)であり、入力画像データ、影補正された入力画像データ、及び入力画像データ等を記憶する。
【0013】
次に、影補正処理について説明する。例えば、影補正処理は、影測定処理と入力画像処理により構成される。影測定処理は、テスト画像(例えば全面白紙チャート)を使用して影成分を補正するための基準影データ(以下説明する基準影領域データ及び基準影画像データ)を取得する処理である。入力画像処理は、基準影データを用いて、入力画像データに含まれる入力影画像データを補正する処理である。
【0014】
以下、影測定処理及び入力画像処理の詳細について説明する。
【0015】
(影測定処理)
画像読取部1により取得された入力画像データに対応した入力画像領域上に発生する影の位置は、画像読取部1の構造及び特性等によりある程度予測することができる。そこで、テスト画像を使用して影の発生位置、影の輝度等を測定する。オペレータは、原稿台にテスト画像をセットし、操作部8を介して影測定を指示する。
【0016】
これに対応して、画像読取部1は、テスト画像を読み取り、テスト画像の読み取りにより得られるテスト画像データ(図2)を画像処理部2へ入力する。画像処理部2のスキャナ系画像処理部21は、テスト画像データを解析し、例えば、図3に示すような座標対画像データを取得する。さらに、スキャナ系画像処理部21は、テスト画像データの解析結果(座標対画像データ)に基づき、テスト画像データに対応するテスト画像領域(図2)から影発生領域(以下基準影発生領域)を検出し、基準影発生領域に対応する影画像データ(以下基準影画像データ)を検出する。つまり、影補正処理部211は、テスト画像データの解析結果に基づき、テスト画像領域中のどのあたりにどのような影が発生しているのかを検出する。データ記憶部6は、テスト画像領域上の基準影発生領域を示す基準影発生領域データと、基準影画像データ(基準影発生領域の画像データ)を記憶する。
【0017】
図3は、基準影発生領域データ及び基準影画像データの一例を示す図である。図3に示すように、座標値0から座標値a3に対応する領域の輝度は低く、座標値a3より後の座標値に対応する領域の輝度は高い。スキャナ系画像処理部21は、図3に示すような輝度変化を検出し、例えば輝度差に基づき、座標値0から座標値a3に対応する領域を基準影領域と判定し、座標値a3より後の座標値に対応する領域を基準影無し領域と判定する。
【0018】
なお、本実施形態では、影の発生位置及び影画像を測定し測定結果(測定値)を利用した影補正について説明するが、理論的に影の発生位置及び影画像を予測し予測結果(理論値)を利用した影補正であってもよい。
【0019】
(入力画像処理)
影補正を希望するユーザは、原稿台に入力画像(例えばテスト画像と同サイズの画像)をセットし、操作部8を介して影測定を指示する。これに対応して、画像読取部1は、入力画像を読み取り、入力画像の読み取りにより得られる入力画像データを画像処理部2へ入力する。画像処理部2のスキャナ系画像処理部21は、基準影発生領域データに基づき、入力画像データに対応する入力画像領域から基準影発生領域に対応する入力影発生領域(補正対象領域)を検出し、入力影発生領域に対応する入力影画像データを検出する。つまり、スキャナ系画像処理部21は、予めテスト画像の読み取りにより得られた影発生領域データを用いて、入力画像領域上の影発生領域を特定し、特定した影発生領域の画像データを取得する。即ち、スキャナ系画像処理部21は、予めテスト画像の読み取りにより得られた影発生領域データを用いて、入力画像データから影成分に対応する可能性が高い画像データを取得する。
【0020】
画像処理部2の影補正処理部211は、例えば、基準影画像データの輝度データに基づき、入力影画像データを補正する。図3に示すように、基準影発生領域の輝度値は、基準影無し領域の輝度値に比べて低い。例えば、基準影発生領域のうちの座標値a1の第1の領域の輝度値B1と、基準影無し領域の輝度値B3との差分は、輝度差分値(B3−B1)である。また、基準影発生領域のうちの座標値a2の第2の領域の輝度値B2と、基準影無し領域の輝度値B3との差分は、輝度差分値(B3−B2)である。
【0021】
そこで、影補正処理部211は、入力影発生領域のうちの座標値a1の第1の領域の輝度値B1’に対して輝度差分値(B3−B1)を加算し、また、入力影発生領域のうちの座標値a2の第2の領域の輝度値B2’に対して輝度差分値(B3−B2)を加算する。つまり、影補正処理部211は、基準影発生領域の各座標値における輝度差分値に基づき、入力画像データを補正する。
【0022】
或いは、画像処理部2の影補正処理部211は、例えば、入力画像データから生成された下地画像データに基づき、入力影画像データを補正する。例えば、スキャナ系画像処理部21は、基準影発生領域データに基づき、入力画像データに対応する入力画像領域から入力影無し領域(入力影発生領域以外の領域)を検出する。さらに、スキャナ系画像処理部21は、入力影無し領域に対応する入力影無し画像データに基づき下地画像データを生成する。例えば、スキャナ系画像処理部21は、入力影無し画像データに基づき、入力影無し領域に対応する濃度ヒストグラムを生成し、濃度ヒストグラムを解析し、下地画像領域を検出し、下地画像領域に対応する下地画像データを生成する。影補正処理部211は、入力画像データから検出された入力影画像データを下地画像データに置き換えることにより、入力画像データを補正することができる。
【0023】
上記した下地画像データに基づく入力画像データの補正は、例えば入力画像の下地(背景)が赤又は青のように白以外であるような場合に、有効である。単純に、入力影画像データを消去し白画像データに置換してしまうと、補正後の入力画像データが、実際の入力画像と異なる画像データになってしまうことがある。上記した下地画像データを利用し入力画像データを補正することにより、補正後の入力画像データは、実際の入力画像に十分に対応した画像データとなる。
【0024】
また、操作部7は、操作入力を受け付けるタッチパネル等で構成された表示部7aを備え、表示部7aは、基準影画像データに基づき入力影画像データを補正(消去)する第1の補正処理、及び下地画像データに基づき入力影画像データを補正(置換)する第2の補正処理の何れか一方の補正処理を選択するための選択画面を表示(出力)することもできる。ユーザは、この選択画面を介して、上記した第1の補正処理及び第2の補正処理のうちの何れか一方の補正処理を選択することができる。制御部4は、スキャナ影補正処理部221に対して、第1の補正処理の選択に対応して第1の補正処理を指示し、第2の補正処理の選択に対応して第2の補正処理を指示する。これにより、ユーザが第1の補正処理を選択した場合には、スキャナ影補正処理部221は、第1の補正処理を実行し、ユーザが第2の補正処理を選択した場合には、スキャナ影補正処理部221は、第2の補正処理を実行する。
【0025】
また、影補正処理部211は、入力影画像領域と入力影無し領域との境界領域(図3)において、画像データの補正量を段階的に変化させることもできる。言い換えれば、影補正処理部211は、境界領域において補正強度を滑らかに変化させることもできる。これにより、境界付近における疑似輪郭の発生を防止することができる。
【0026】
画像形成部3は、補正された入力画像データに基づき画像を形成する。或いは、データ記憶部6は、補正された入力画像データを記憶する。
【0027】
なお、本実施形態の画像処理装置は、様々なサイズのテスト画像を読み取り、様々なサイズ用の基準影領域データ及び基準影画像データを取得することにより、様々なサイズの入力画像に対応した入力画像データを適切に補正することができる。
【0028】
以下、本実施形態についてまとめる。
【0029】
本実施形態の画像処理装置は、予め、テスト画像(例えば白紙チャート)の読み取りにより、テスト画像領域上に発生する影位置及び影画像を測定し、測定により得られた影位置データ及び影画像データを利用し、実際の入力画像の読み取りにより得られる入力画像領域上の影画像を補正する。つまり、画像処理装置は、補正処理により、入力画像領域上の影画像を消去する。
【0030】
これにより、入力画像の端部における影の発生を防止したり、影の影響を抑制したりすることができ、必要な情報が欠落していない良好な入力画像データを得ることができる。また、必要な情報が欠落していない入力画像に対応した良好な画像をプリントすることもできる。即ち、本実施形態の画像処理装置は、高品質なフチ無しスキャン及びフチ無しコピーを実現することができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1…画像読取部(スキャナ)、2…画像処理部、3…画像形成部(プリンタ)、4…制御部、5…ページメモリ部、6…データ記憶部、7…操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を読み取る画像読取手段と、
前記画像読取手段によるテスト画像の読み取りにより得られるテスト画像データを解析し、前記テスト画像データの解析結果に基づき、前記テスト画像データに対応するテスト画像領域から基準影発生領域を検出し、前記基準影発生領域に対応する基準影画像データを検出する解析手段と、
前記基準影発生領域を示す基準影発生領域データ、及び前記基準影画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記基準影発生領域データ及び前記基準影画像データに基づき、前記画像読取手段による入力画像の読み取りにより得られる入力画像データを補正する補正手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記解析手段は、前記基準影発生領域データに基づき、前記入力画像データに対応する入力画像領域から、前記基準影発生領域に対応する入力影発生領域を検出し、
前記補正手段は、前記基準影画像データに基づき、前記入力影発生領域の画像データを補正する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記入力影発生領域に対応する入力影画像データを検出し、
前記補正手段は、前記基準影画像データに基づき、前記入力影画像データを補正する請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記基準影画像データの基準影輝度データに基づき、前記入力影画像データの入力影輝度データを補正する請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記基準影発生領域に含まれた第1の基準影発生領域と、前記入力影発生領域に含まれた第1の入力影発生領域とが対応し、
前記補正手段は、前記第1の基準影発生領域に対応する第1の基準影輝度データに基づき、前記第1の入力影発生領域に対応する第1の入力影輝度データを補正する請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記解析手段は、前記基準影発生領域データに基づき、前記入力画像領域から入力影無し領域を検出し、前記入力影無し領域に対応する入力影無し画像データを検出し、前記入力影無し画像データに基づき下地画像データを生成し、
前記補正手段は、前記基準影発生領域データ及び前記下地画像データに基づき、前記入力画像データを補正する請求項1乃至5の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記解析手段は、前記基準影発生領域データに基づき、前記入力画像領域から前記基準影発生領域に対応する入力影発生領域を検出し、前記入力影発生領域に対応する入力影画像データを検出し、
前記補正手段は、前記入力影画像データを前記下地画像データに置き換え、置き換えられた前記下地画像データを含む前記入力影画像データを出力する請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記基準影画像データに基づき前記入力影画像データを補正する第1の補正処理、及び前記下地画像データに基づき前記入力影画像データを補正する第2の補正処理のうちのどちらか一方の補正処理を選択するための表示情報を出力する出力手段を備える請求項1乃至7の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記補正手段により補正された補正入力画像データに基づき画像を形成する画像形成手段を備えた請求項1乃至8の何れか1項記載の画像処理装置。
【請求項10】
テスト画像の読み取りにより得られるテスト画像データを解析し、
前記テスト画像データの解析結果に基づき、前記テスト画像データに対応するテスト画像領域から基準影発生領域を検出し、
前記基準影発生領域に対応する基準影画像データを検出し、
前記基準影発生領域を示す基準影発生領域データ、及び前記基準影画像データを記憶し、
前記基準影発生領域データ及び前記基準影画像データに基づき、入力画像の読み取りにより得られる入力画像データを補正する画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−188493(P2011−188493A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50482(P2011−50482)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】