説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】エッジの立ち上がりや立下りが鈍っている場合にもエッジの周りに幅の広い縁取りが付くことを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】本発明の画像処理装置は、入力された画像信号をライン毎に2次微分して、輪郭強調信号として出力する手段と、画像信号の画素毎に、その画素を注目画素とし、注目画素を挟む2つの第1画素の画素値の差分の絶対値を第1差分値として算出する手段と、上記2つの第1画素の注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第2画素の画素値の差分の絶対値を第2差分値として算出する手段と、第2差分値に1未満の第1の値を乗算する手段と、第1差分値からその乗算結果を減算し、その下限値を0に制限してエッジ調整係数として出力する手段と、輪郭強調信号をエッジ調整係数を乗算して補正する手段と、画像信号に補正された輪郭強調信号を加算する手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輪郭強調処理を行う画像処理装置及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像の高周波成分を増幅し、画像の鮮鋭感を向上させる輪郭強調処理が行われてきた。しかしながら、輪郭強調処理を行うと、エッジの周りに幅の広いシュートが付加され、エッジの周りに幅の広い白や黒の縁取りが付いてしまう場合があった。この問題に対して、輪郭強調信号(2次微分信号)に補正信号を乗算して、該輪郭強調信号をエッジ周辺の狭い範囲のみ有効な信号に補正することにより、エッジの周りに幅の広いシュートが付加されないようにすることが行われていた(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−222267号公報
【特許文献2】特開平4−284069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、エッジの立ち上がりや立下りの形状に依らず輪郭強調信号の有効範囲(輪郭強調信号の影響を受ける画像の領域)が決まってしまう。そのため、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っている場合に、エッジの周りに幅の広い縁取りが付いてしまうことがあった。
【0005】
本発明は、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っている場合にもエッジの周りに幅の広い縁取りが付くことを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、入力された画像信号に輪郭強調処理を施す画像処理装置であって、前記画像信号をライン毎に2次微分して、輪郭強調信号として出力する輪郭強調信号算出手段と、前記画像信号の画素毎に、その画素を注目画素とし、前記注目画素と同じライン上において該注目画素を挟む2つの第1画素の画素値の差分の絶対値を第1差分値として算出する第1差分値算出手段と、前記注目画素と同じライン上において、前記2つの第1画素の前記注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第2画素の画素値の差分の絶対値を第2差分値として算出する第2差分値算出手段と、前記第2差分値に1未満の第1の値を乗算する乗算手段と、前記第1差分値から前記乗算手段の乗算結果を減算し、その下限値を0に制限してエッジ調整係数として出力するエッジ調整係数算出手段と、前記輪郭強調信号を前記エッジ調整係数を乗算して補正する補正手段と、前記画像信号に前記補正された輪郭強調信号を加算する加算手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の画像処理方法は、入力された画像信号に輪郭強調処理を施す画像処理装置により実行される画像処理方法であって、前記画像信号をライン毎に2次微分して、輪郭強調信号として出力する輪郭強調信号算出ステップと、前記画像信号の画素毎に、その画素を注目画素とし、前記注目画素と同じライン上において該注目画素を挟む2つの第1画素の画素値の差分の絶対値を第1差分値として算出する第1差分値算出ステップと、前記注目画素と同じライン上において、前記2つの第1画素の前記注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第2画素の画素値の差分の絶対値を第2差分値として算出する第2差分値算出ステップと、前記第2差分値に1未満の第1の値を乗算する乗算ステップと、前
記第1差分値から前記乗算ステップでの乗算結果を減算し、その下限値を0に制限してエッジ調整係数として出力するエッジ調整係数算出ステップと、前記輪郭強調信号を前記エッジ調整係数を乗算して補正する補正ステップと、前記画像信号に前記補正された輪郭強調信号を加算する加算ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っている場合にもエッジの周りに幅の広い縁取りが付くことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に係る画像処理装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】実施例1に係る画像処理装置の動作の一例を示す図。
【図3】実施例1に係る画像処理装置の動作の一例を示す図。
【図4】実施例2に係る画像処理装置の構成の一例を示すブロック図。
【図5】実施例2に係る画像処理装置の動作の一例を示す図。
【図6】実施例2に係る画像処理装置の動作の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施例1>
本発明の実施例1に係る画像処理装置及び該画像処理装置により実行される画像処理方法について図1〜図3を用いて説明する。本実施例に係る画像処理装置は、入力された画像信号に輪郭強調処理を施す。図1は本実施例に係る画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。図中、DLと書かれたブロック101a〜101dは、画像信号を1画素分遅延させる遅延ブロックである。本実施例では、画像処理装置が画像信号YCbCrのうち輝度信号Yに対して輪郭強調処理を行うものとする。なお、以下の説明では、エッジにおいて、低階調値(低輝度値)側から高階調値(高輝度値)側へ向かうことを“エッジの立ち上がり”と呼び、高階調値側から低階調値側へ向かうことを“エッジの立下り”と呼ぶ。
【0011】
まず、画像信号の輝度信号Yは、入力端子から入力され、4つの遅延ブロックDL101a〜101dによって1画素づつ遅延される。以後、入力された輝度信号YをYinまたはYn+2と表記し、遅延ブロックDL101a〜101dで遅延された輝度信号Yを、それぞれ、Yn+1,Y,Yn−1,Yn−2と表記する。本実施例では、輝度信号Yを後述する注目画素の輝度信号として、輪郭強調処理が行われる。
【0012】
2次微分部102は、画像信号をライン毎に2次微分して、輪郭強調信号として出力する(輪郭強調信号算出手段)。具体的には、輝度信号Y,Yn+2,Yn−2から、輪郭強調信号(2次微分信号)enhを算出する。算出式は次式のようになる。
enh=2×Y−(Yn+2+Yn−2
第1差分値算出部103は、画像信号の画素毎に、その画素を注目画素とし、注目画素と同じライン上において該注目画素を挟む2つの第1画素の画素値の差分の絶対値を第1差分値として算出する(第1差分値算出手段)。具体的には、輝度信号Yn+1と輝度信号Yn−1の差分の絶対値を第1差分値grd1として算出する。算出式は次式のようになる。
grd1=|Yn+1−Yn−1
第2差分値算出部104は、注目画素と同じライン上において、上記2つの第1画素の注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第2画素の画素値の差分の絶対値を第2差分値として算出する(第2差分値算出手段)。具体的には、輝度信号Yn+2と輝度信号Yn−2の差分の絶対値を第2差分値grd2として算出する。算出式は次式のようになる。
grd2=|Yn+2−Yn−2
【0013】
エッジ調整係数算出部105は、第1差分値grd1と第2差分値grd2から、エッジ調整係数nor_e_ratioを算出し、出力する。具体的には、エッジ調整係数nor_e_ratioは以下のように算出される。
まず、エッジ調整係数算出部105は、第2差分値grd2を整形して整形後差分値n_ofsを算出する。具体的には、第2差分値grd2に1未満の第1の値a1を乗算することにより、整形後差分値n_ofsを算出する(乗算手段)。このとき、乗算結果が所定の閾値lm1よりも大きい場合には、整形後差分値n_ofsを閾値lm1とする。
次に、エッジ調整係数算出部105は、第1差分値grd1から整形後差分値n_ofsを減算し、エッジ調整係数e_ratioを算出する(エッジ調整係数算出手段)。このとき、減算結果が0未満の場合には、エッジ調整係数e_ratioを0とする(即ち、エッジ調整係数e_ratioの下限値を0に制限する)。また、減算結果が所定の閾値limit_eよりも大きい場合には、エッジ調整係数e_ratioを閾値limit_eとする。
最後に、エッジ調整係数算出部105は、エッジ調整係数e_ratioを閾値limit_eで除算し、正規化されたエッジ調整係数nor_e_ratioを算出する。
【0014】
エッジ調整係数乗算部106は、輪郭強調信号enhをエッジ調整係数nor_e_ratioを乗算して補正する(補正手段)。補正された輪郭強調信号は、edge_enhと表記する。
加算部107は、画像信号(輝度信号Y)に補正された輪郭強調信号edge_enhを加算し、加算結果(輝度信号Yout)を出力端子から出力する(加算手段)。
【0015】
以上のように、本実施例では、第1差分値grd1から整形後差分値n_ofsを減算して得た補正信号(エッジ調整係数nor_e_ratio)を用いることで、輪郭強調信号の有効範囲(輪郭強調信号の影響を受ける画像の領域)を狭くすることができる。また、整形後差分値n_ofsは、第2差分値grd2から生成されるため、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っていれば広範囲で(0より大きな)値を持ち、エッジの振幅が大きければ大きな値となる特性を持つ。そのため、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っていて、第1差分値grd1が広範囲で値を持ったとしても、整形後差分値n_ofsも広範囲で値を持つことになる。そのため、エッジの立ち上がりや立下りの鈍り具合に応じて輪郭強調信号の有効範囲を狭めることができる。
【0016】
本実施例に係る画像処理装置の動作について、図2,3を用いて説明する。図2,3において、横方向は画像内の位置(水平位置)を表し、縦方向は画像信号(輝度信号Y)の大きさを表す。図2は、輝度段差の大きいエッジ部分の輝度信号Yが入力された場合における、各信号の状態を示す。図3は、図2の場合よりも立ち上がりや立下りが鈍ったエッジ部分の輝度信号Yが入力された場合における、各信号の状態を示す。
【0017】
まず、図2を用いて、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っていない場合の動作を説明する。
図2(A)に示す輝度信号Yinが入力されると、2次微分部102の出力である輪郭強調信号enhは図2(B)のようになる。また、第1差分値算出部103の出力である第1差分値grd1は図2(C)、第2差分値算出部104の出力である第2差分値grd2は図2(D)のようになる。
【0018】
エッジ調整係数算出部105は、この第1差分値grd1と第2差分値grd2からエッジ調整係数nor_e_ratioを算出する。まず、エッジ調整係数算出部105は、上述した方法で第2差分値grd2から整形後差分値n_ofs(図2(E))を算出
する。なお、図2(E)は、第1の値a1=0.25とした場合の例である。そして、第1差分値grd1から整形後差分値n_ofsを減算して、0〜閾値limit_eに値(減算結果)を制限し、正規化を行ってエッジ調整係数nor_e_ratio(図2(F))を得る。エッジ調整係数nor_e_ratioは閾値limit_eで正規化されているため、エッジ調整係数nor_e_ratioの下限は0、上限は1となる。
【0019】
エッジ調整係数乗算部106は、輪郭強調信号enhにエッジ調整係数nor_e_ratioを乗算し、補正された輪郭強調信号edge_enhを算出する(図2(G))。図2(B)と図2(G)から、補正後の輪郭強調信号edge_enhの有効範囲が補正前の輪郭強調信号enhの有効範囲よりも狭くなっていることがわかる。
加算部107は、輝度信号Y(Yin)に輪郭強調信号edge_enhを加算し、輝度信号Yout(図2(H))を出力する。図2(H)から、補正後の輪郭強調信号edge_enhを用いることで、幅の広いシュート(縁取り)が抑制できていることがわかる。
【0020】
次に、図3を用いて、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っていた場合の動作を説明する。
図3(A)に示す輝度信号Yinのエッジは、図2(A)に示す輝度信号Yinのエッジよりも立ち上がりや立下りが鈍っている。そのため、図3(C)に示す第1差分値grd1、図3(D)に示す第2差分値grd2の波形は、それぞれ、図2(C)、図2(D)に示すそれらよりも幅の広い波形になる。
【0021】
ここで、整形後差分値n_ofsの波形も、第2差分値grd2から算出するため、図3(E)に示すように幅の広い波形になる。そのため、第1差分値grd1から整形後差分値n_ofsを減算する際に、第1差分値grd1の値(>0)を有する部分が整形後差分値n_ofsで減算されることになる。その結果、図3(F)に示すように、幅の狭いエッジ調整係数nor_e_ratioを得ることができる。このnor_e_ratioを図3(B)に示した輪郭強調信号enhに乗算することにより、図3(G)に示す有効範囲の狭い補正された輪郭強調信号edge_enhが得られる。そして、輝度信号Yに輪郭強調信号edge_enhを加算することで、図3(H)に示す幅の広いシュートが抑制された輝度信号Youtが得られる。
即ち、本実施例の方法によれば、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っている場合でも、エッジの周りに幅の広いシュートが付かない輪郭強調処理を行うことができる。
【0022】
<実施例2>
本発明の実施例2に係る画像処理装置及び該画像処理装置により実行される画像処理方法について図4〜図6を用いて説明する。本実施例では、実施例1で述べた輪郭強調信号edge_enhとは別に、エッジに比べ輝度振幅(輝度段差)の小さい“ディテール”のみを強調するディテール強調信号detail_enhを算出する。そして、輪郭強調信号edge_enh、ディテール強調信号detail_enhの両方を用いて輪郭強調処理を行うことで、エッジの周りに幅の広いシュートが付加されることを抑制しつつ、ディテールを強調する。図4に本実施例に係る画像処理装置のブロック図を示す。なお、実施例1と同じ機能については同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0023】
本実施例に係る画像処理装置は、遅延ブロック101aの前段、遅延ブロック101dの後段に、それぞれ、遅延ブロック101e,101fを有する。即ち、本実施例に係る画像処理装置は、合計6つの遅延ブロックを有する。以後、入力された輝度信号YをYinまたはYn+3と表記し、遅延ブロックDL101e,101fで遅延された輝度信号Yを、それぞれ、Yn+2,Yn−3と表記する。
【0024】
第3差分値算出部108は、注目画素と同じライン上において、実施例1で述べた2つの第2画素の注目画素とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第3画素の画素値の差分の絶対値を第3差分値として算出する(第3差分値算出手段)。具体的には、輝度信号Yn+3と輝度信号Yn−3の差分の絶対値を第3差分値grd3として算出する。算出式は次式のようになる。
grd3=|Yn+3−Yn−3
【0025】
ディテール調整係数算出部109は、第3差分値grd3から、ディテール調整係数nor_d_ratioを算出する。ディテール調整係数nor_d_ratioは、エッジ及びその周囲で0となり、それ以外ではほぼ1になる信号である。
まず、ディテール調整係数算出部109は、第2の値limit_dから第3差分値grd3を減算し、ディテール調整係数d_ratioを算出する(ディテール調整係数算出手段)。このとき、減算結果が0未満の場合には、ディテール調整係数d_ratioを0とする。
次に、ディテール調整係数算出部109は、ディテール調整係数d_ratioを第2の値limit_dで除算し、正規化されたディテール調整係数nor_d_ratioを算出する。
【0026】
ディテール調整係数乗算部110は、輪郭強調信号enhにディテール調整係数nor_d_ratioを乗算して、ディテール強調信号detail_enhとして出力する(ディテール強調信号算出手段)。
加算部111は、画像信号(輝度信号Y)に、補正された輪郭強調信号edge_enhとディテール強調信号detail_enhを加算し、加算結果(輝度信号Yout)を出力端子から出力する。
【0027】
以上のように、本実施例では、実施例1の構成に加えて、ディテール強調信号detail_enhを算出し輝度信号Yに加算することで、エッジだけでなくディテールも強調することができる。また、ディテール調整係数nor_d_ratioは、第2の値から第3差分値grd3を減算することにより算出されるため、エッジ及びその周囲で小さな値となる(本実施例では0となる)。それにより、ディテール強調信号の加算によってエッジ周りのシュートの幅が広くなってしまうことを抑制することができる。その結果、エッジの周りに幅の広いシュートが付加されることを抑制しつつ、ディテールを強調することが可能となる。
【0028】
本実施例に係る画像処理装置の動作について、図5,6を用いて説明する。図5,6において、横方向、縦方向は、それぞれ、図2,3と同様に、画像内の位置、画像信号(輝度信号Y)の大きさを表す。図5は、輝度段差の小さいディテール部分の輝度信号Yが入力された場合における、各信号の状態を示す。図6は、輝度段差の大きいエッジ部分の輝度信号Y(図3(A)のYin)が入力された場合における、各信号の状態を示す。なお、説明の都合上、図5は図2,3に対して縦方向を2倍に拡大して図示している。
【0029】
まず、図5を用いて、輝度段差の小さいディテール部分の輝度信号Yが入力された場合の動作を説明する。
図5(A)に示す輝度信号Yinは振幅(図中の最大値と最小値の差)が小さいため、輝度信号Yinから算出される輪郭強調信号enh(図5(B))の振幅も小さくなる。同様に、第1差分値grd1(図5(C))、第2差分値grd2(図5(D))、整形後差分値n_ofs(図5(E))の振幅も小さくなる。そのため、エッジ調整係数nor_e_ratioの振幅も、図5(F)に示すように小さくなる。また、エッジ調整係数nor_e_ratioを用いて補正された輪郭強調信号edge_enhは図5(G)に示すようにほぼ0となる(有効範囲の無い輪郭強調信号となる)。
【0030】
他方、ディテール調整係数nor_d_ratioは、第2の値limit_dから振幅値の小さい第3差分値grd3(図5(H))を減算して得られるため、図5(I)に示すように、ほぼ1となる。そして、ディテール強調信号detail_enhは、輪郭強調信号enhにディテール調整係数nor_d_ratioを乗算して得られるため、図5(J)に示すように、輪郭強調信号enhとほぼ等しくなる。
【0031】
出力する輝度信号Youtは、入力された輝度信号Y(Yin)に輪郭強調信号edge_enhとディテール強調信号detail_enhを加算して得られる。ここで、輪郭強調信号edge_enhはほぼ0であるが、ディテール強調信号detail_enhが値を持っているため、図5(K)に示すように、輝度信号Youtとして、ディテールが強調された信号を得ることができる。
【0032】
次に、図6を用いて、図3(A)の輝度信号Yinが入力された場合の動作を説明する。なお、輝度信号Yin、輪郭強調信号enh、第1差分値grd1、第2差分値grd2、整形後差分値n_ofs、エッジ調整係数nor_e_ratio、輪郭強調信号edge_enhは実施例1で説明した内容(図3)と同様のため、説明は省略する。
【0033】
図3(A)の例では、エッジの輝度段差が大きいため、第3差分値grd3の振幅は、図6(A)に示すように、エッジを含む所定範囲内で大きくなる。ディテール調整係数nor_d_ratioは、第2の値limit_dから第3差分値grd3(図6(A))を減算して得られるため、図6(C)に示すように、エッジを含む所定範囲内で0になる。そして、ディテール強調信号detail_enhは、輪郭強調信号enh(図6(B))にディテール調整係数nor_d_ratioを乗算して得られるため、図6(D)に示すように、0となる。
【0034】
出力する輝度信号Youtは、入力された輝度信号Y(Yin)に輪郭強調信号edge_enhとディテール強調信号detail_enhを加算して得られる。ここで、ディテール強調信号detail_enhは0であるため、輝度信号Youtは実施例1の結果(図3(H))と等しくなる。
即ち、本実施例の方法によれば、実施例1と同様に、エッジの立ち上がりや立下りが鈍っている場合でも、幅の広いシュートが付かない補正を行うことができる。
【0035】
なお、本実施例では、第1画素が注目画素に隣接し、第2画素が第1画素に隣接し、第3画素が第2画素に隣接する場合を例に説明した。しかしながら、第1〜3画素の位置はこれに限らない。注目画素から近い順に第1画素、第2画素、第3画素の順で並んでいれば、注目画素からの距離は特に問わない。少なくとも、そのような順番で並んでいれば、上記効果を得ることができる。
【0036】
なお、2次微分の方法は上記方法に限らない。例えば、本実施例では、2次微分部102が1つの画素に対する輪郭強調信号を算出する際に注目画素及び第2画素を参照する構成としたが、それら以外の画素を参照してもよい。具体的には、注目画素から5画素分離れた位置までの画素を参照する構成であってもよい。その場合には、上記2つの第3画素間の間隔は、2次微分部102が1つの画素に対する輪郭強調信号enhを算出する際に参照する画素の範囲よりも大きければよい。それにより、ディテール調整係数nor_d_ratioを、エッジ及びその周囲で小さな値とすることができる。
【0037】
なお、本実施例では、画面水平方向に並ぶ複数の画素を1ラインの画素として説明したが、ラインの方向は水平方向に限らない。例えば、画面垂直方向に並ぶ複数の画素を1ラインとしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
102 2次微分部
103 第1差分値算出部
104 第2差分値算出部
105 エッジ調整係数算出部
106 エッジ調整係数乗算部
107 加算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号に輪郭強調処理を施す画像処理装置であって、
前記画像信号をライン毎に2次微分して、輪郭強調信号として出力する輪郭強調信号算出手段と、
前記画像信号の画素毎に、その画素を注目画素とし、前記注目画素と同じライン上において該注目画素を挟む2つの第1画素の画素値の差分の絶対値を第1差分値として算出する第1差分値算出手段と、
前記注目画素と同じライン上において、前記2つの第1画素の前記注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第2画素の画素値の差分の絶対値を第2差分値として算出する第2差分値算出手段と、
前記第2差分値に1未満の第1の値を乗算する乗算手段と、
前記第1差分値から前記乗算手段の乗算結果を減算し、その下限値を0に制限してエッジ調整係数として出力するエッジ調整係数算出手段と、
前記輪郭強調信号を前記エッジ調整係数を乗算して補正する補正手段と、
前記画像信号に前記補正された輪郭強調信号を加算する加算手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記注目画素と同じライン上において、前記2つの第2画素の前記注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第3画素の画素値の差分の絶対値を第3差分値として算出する第3差分値算出手段と、
第2の値から前記第3差分値を減算し、その下限値を0に制限してディテール調整係数として出力するディテール調整係数算出手段と、
前記輪郭強調信号に前記ディテール調整係数を乗算して、ディテール強調信号として出力するディテール強調信号算出手段と、
を更に有し、
前記加算手段は、前記画像信号に前記補正された輪郭強調信号と前記ディテール強調信号を加算する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記2つの第3画素間の間隔は、前記輪郭強調信号算出手段が1つの画素に対する輪郭強調信号を算出する際に参照する画素の範囲よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
入力された画像信号に輪郭強調処理を施す画像処理装置により実行される画像処理方法であって、
前記画像信号をライン毎に2次微分して、輪郭強調信号として出力する輪郭強調信号算出ステップと、
前記画像信号の画素毎に、その画素を注目画素とし、前記注目画素と同じライン上において該注目画素を挟む2つの第1画素の画素値の差分の絶対値を第1差分値として算出する第1差分値算出ステップと、
前記注目画素と同じライン上において、前記2つの第1画素の前記注目画素側とは反対の側にそれぞれ位置する2つの第2画素の画素値の差分の絶対値を第2差分値として算出する第2差分値算出ステップと、
前記第2差分値に1未満の第1の値を乗算する乗算ステップと、
前記第1差分値から前記乗算ステップでの乗算結果を減算し、その下限値を0に制限してエッジ調整係数として出力するエッジ調整係数算出ステップと、
前記輪郭強調信号を前記エッジ調整係数を乗算して補正する補正ステップと、
前記画像信号に前記補正された輪郭強調信号を加算する加算ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−250238(P2011−250238A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122451(P2010−122451)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】