説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】溶接欠陥の判別に用いられ、ビードの形状を正確に認識可能であり、画像処理負荷を低減可能とする画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて溶接部分に形成されるビードmの形状を認識する画像処理装置において、レーザ溶接時の残熱発光が生じている溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線Lを設定する基準線設定部11と、残熱発光の輝度Hがビードmの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値hより大きくなっている領域と、残熱発光の輝度Hが輝度閾値hより小さくなっている領域との間の境界が基準線Lと交差する箇所に、輪郭点pを形成する輪郭点形成部12と、同一基準線L上における2つの輪郭点p間に中間点qを形成する中間点形成部13と、複数の輪郭点pに基づいて輪郭線Pを形成する輪郭線形成部14とを備える画像処理装置。当該画像処理装置を用いた画像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ溶接等の溶接の分野においては、溶接品質を高めるために、溶接部分のビードの形状を解析すること、欠陥孔を識別すること等によって、溶接欠陥の有無を検査している。このような検査は、主に生産現場の溶接工程の後工程、又は溶接工程中に行なわれている。
【0003】
溶接工程の後工程の検査については、溶接工程後の溶接対象物に光(いわゆる「バックライト」)を照射することによって、溶接部分の欠陥孔を識別すること(いわゆる「バックライト方式の検査」)等が行なわれている。この検査では、溶接対象物に欠陥孔が発生している場合、照射した光が欠陥孔を透過するので、溶接部分の欠陥孔が識別されることとなる。しかしながら、生産現場では生産効率を高めるために工程数を減らすことが要求されている。そのため、溶接工程中に検査を行うことが望まれている。
【0004】
そこで、溶接工程中の検査として、例えば、特許文献1及び特許文献2のように、溶接中に発せられるレーザ光が大きくなっている間に、溶接部分の光をカメラによって撮影し、撮影した画像を解析することによって、ビードの形状を解析し、溶接部分の欠陥を判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−054879号公報
【特許文献2】特開2004−314087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、溶接中のレーザ光が大きくなっている間にはプラズマ光が発生するので、特許文献1及び特許文献2の検査では、このようなプラズマ光の影響によって、ビードの形状を正確に認識できず、検査装置等の画像上でビードの形状を正確に形成できないことがある。一方で、ビードの形状を正確に認識でき、かつ検査装置等の画像上でビードの形状を正確に形成できたとしても、ビードの形状が鮮明となることによって、処理される画像データが増加し、画像処理の負荷が増加するという問題がある。この画像処理負荷の増加が、画像処理時間の増加をもたらし、かつ検査時間の増加をもたらして、その結果、生産効率が低下することとなる。
【0007】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、溶接欠陥の判別に用いられ、ビードの形状を正確に認識可能であり、画像処理負荷を低減可能である画像処理装置及び画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて前記溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理装置において、レーザ溶接時の残熱発光が生じている前記溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線を設定する基準線設定部と、前記取り込んだ画像の残熱発光の輝度が前記ビードの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値より大きくなっている領域と、前記残熱発光の輝度が前記輝度閾値より小さくなっている領域との間の境界と前記基準線とが交差する箇所に、輪郭点を形成する輪郭点形成部と、同一の前記基準線上における2つの前記輪郭点間に中間点を形成する中間点形成部と、複数の前記輪郭点に基づいて輪郭線を形成する輪郭線形成部とを備えている。
【0009】
課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、下記(a)または(b)のようになっている。
(a)複数の前記中間点に基づいて中心線を形成する中心線形成部をさらに備えている。
(b)前記基準線を設定する前に、前記取り込んだ画像に対応して、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点の近似曲線に基づいて前記ビードの形状の中心線を形成する中心線形成部と、前記輪郭線を形成する前に、前記中心線の湾曲を認識して、前記同一の基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合に、前記同一の基準線上で前記ビードを跨いで間隔を空けて対向し、かつ前記中間点を形成する2つの輪郭点を判別する輪郭点判別部とをさらに備え、前記判別された2つの輪郭点が、前記中間点の形成及び前記輪郭線の形成に用いられるように構成されている。
また、前記基準線に前記中心線の湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように、前記基準線を調節する基準線調節部をさらに備えている。
【0010】
さらに、本発明の画像処理装置は、前記中間点を設定する前に、前記同一の前記基準線上における2つの輪郭点間の線分長さを計算し、前記線分長さの頻度分布を計算し、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点に基づいて前記ビードの幅を計算し、前記頻度分布を用いて前記ビードの幅に基づいて定めた上限線分閾値に対して長い線分、及び該ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値に対して短い線分を判別して、前記長い線分の両端の輪郭点、及び前記短い線分の両端の輪郭点を排除する輪郭点選別部をさらに備えている。
また、前記長い線分を判別する上限線分閾値が前記ビードの幅の2倍となっており、前記短い線分を判別する下限線分閾値が前記ビードの幅の半分となっている。
【0011】
課題を解決するために、本発明の画像処理方法は、レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて前記溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理方法において、レーザ溶接時の残熱発光が生じている前記溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線を設定するステップと、前記取り込んだ画像の残熱発光の輝度が前記ビードの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値より大きくなっている領域と、前記残熱発光の輝度が前記輝度閾値より小さくなっている領域との間の境界と前記基準線とが交差する箇所に、輪郭点を形成するステップと、同一の前記基準線上における2つの前記輪郭点間に中間点を形成するステップと、複数の前記輪郭点に基づいて輪郭線を形成するステップとを含む。
【0012】
課題を解決するために、本発明の画像処理方法は、下記(a)または(b)のようになっている。
(a)複数の前記中間点に基づいて中心線を形成するステップをさらに含む。
(b)前記基準線を設定するステップの前に、前記取り込んだ画像に対応して、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点の近似曲線に基づいて前記ビードの形状の中心線を形成するステップと、前記輪郭線を形成するステップの前に、前記中心線の湾曲を認識して、前記同一の基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合に、前記同一の基準線上で前記ビードを跨いで間隔を空けて対向し、かつ前記中間点を形成する2つの輪郭点を判別するステップとをさらに含み、前記判別された2つの輪郭点が前記中間点の形成及び前記輪郭線の形成に用いられる。
また、前記基準線に前記中心線の湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように、前記基準線を調節するステップをさらに含む。
【0013】
さらに、本発明の画像処理方法は、
前記中間点を設定するステップの前に、前記同一の前記基準線上における2つの輪郭点間の線分長さを計算し、前記線分長さの頻度分布を計算し、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点に基づいて前記ビードの幅を計算し、前記頻度分布を用いて前記ビードの幅に基づいて定めた上限線分閾値に対して長い線分、及び該ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値に対して短い線分を判別して、前記長い線分の両端の輪郭点、及び前記短い線分の両端の輪郭点を排除するステップをさらに含む。
また、前記長い線分を判別する上限線分閾値が前記ビードの幅の2倍であり、前記短い線分を判別する下限線分閾値が前記ビードの幅の半分である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像処理装置によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の画像処理装置は、レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて前記溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理装置において、レーザ溶接時の残熱発光が生じている前記溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線を設定する基準線設定部と、前記取り込んだ画像の残熱発光の輝度が前記ビードの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値より大きくなっている領域と、前記残熱発光の輝度が前記輝度閾値より小さくなっている領域との間の境界と前記基準線とが交差する箇所に、輪郭点を形成する輪郭点形成部と、同一の前記基準線上における2つの前記輪郭点間に中間点を形成する中間点形成部と、複数の前記輪郭点に基づいて輪郭線を形成する輪郭線形成部とを備えている。
そのため、溶接終了直後から溶接に用いられた光が消える前に発生する「残熱発光」に基づいて前記ビードの形状を認識するので、前記ビードの形状を認識する際に、溶接中に発生するプラズマ光の影響が少なくなる。従って、前記取り込んだ画像に基づいて、前記ビードの形状を正確に認識できる。その一方で、前記輪郭点は、前記基準線上のように前記表示する画像上の限られた範囲に形成されるので、前記表示される画像上の前記輪郭点の数が少なくなる。このような少ない数の前記輪郭点に基づいて、前記中間点、前記輪郭点及び前記輪郭線が形成されるので、処理される画像データが少なくなり、その結果、画像処理負荷が低減されることとなる。よって、溶接欠陥の判別に用いられ、ビードの形状を正確に認識可能であり、かつ画像処理負荷を低減可能とする画像処理装置を提供できる。
【0015】
本発明の画像処理装置は、複数の前記中間点に基づいて中心線を形成する中心線形成部をさらに備えているので、少ない数の前記中間点に基づいて前記中心線が形成されるので、処理される画像データがさらに少なくなり、その結果、画像処理負荷がさらに低減されることとなる。
【0016】
本発明の画像処理装置は、前記基準線を設定する前に、前記取り込んだ画像に対応して、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点の近似曲線に基づいて前記ビードの形状の中心線を形成する中心線形成部と、前記輪郭線を形成する前に、前記中心線が湾曲し、かつ前記同一の基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合に、前記同一の基準線上で前記ビードを跨いで間隔を空けて対向し、かつ前記中間点を形成する2つの輪郭点を判別する輪郭点判別部とをさらに備え、前記判別された2つの輪郭点が、前記中間点の形成及び前記輪郭線の形成に用いられるように構成されているので、湾曲した前記ビードの画像処理について、前記基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合でも、前記ビードの形状に対応した前記輪郭線及び前記中心線を正確に認識し、かつ形成できる。
【0017】
本発明の画像処理装置では、前記基準線に前記中心線の湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように、前記基準線を調節する基準線調節部をさらに備えているので、湾曲した前記ビードの画像処理について、前記同一の基準線上に前記ビードの湾曲した輪郭に沿って2つの輪郭点が形成されることを防止できる。すなわち、前記同一の基準線上における2つの輪郭点の組合せが、前記ビードの幅方向に跨る2つの輪郭点に限定されることとなる。このような2つの輪郭点に基づいて、前記中間点が正確に形成されることとなる。従って、画像処理負荷をさらに低減でき、前記輪郭線及び前記中心線をさらに正確に形成できる。
【0018】
本発明の画像処理装置は、前記中間点を設定する前に、前記同一の前記基準線上における2つの輪郭点間の線分長さを計算し、前記線分長さの頻度分布を計算し、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点に基づいて前記ビードの幅を計算し、前記頻度分布を用いて前記ビードの幅に基づいて定めた上限線分閾値に対して長い線分、及び該ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値に対して短い線分を判別して、前記長い線分の両端の輪郭点、及び前記短い線分の両端の輪郭点を排除する輪郭点選別部をさらに備えている。
また、前記長い線分を判別する上限線分閾値が前記ビードの幅の2倍となっており、前記短い線分を判別する下限線分閾値が前記ビードの幅の半分となっている。
そのため、例えば、前記ビードの輪郭以外の要素に基づいて形成された前記輪郭点のように、前記輪郭線を形成するために不必要な前記輪郭点が排除されることとなり、より少ない数の正確な前記輪郭点を用いて前記輪郭線を形成できる。従って、画像処理負荷をさらに低減でき、前記ビードの形状をさらに正確に形成できる。
【0019】
本発明の画像処理方法によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明の画像処理方法は、レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて前記溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理方法において、レーザ溶接時の残熱発光が生じている前記溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線を設定するステップと、前記取り込んだ画像の残熱発光の輝度が前記ビードの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値より大きくなっている領域と、前記残熱発光の輝度が前記輝度閾値より小さくなっている領域との間の境界と前記基準線とが交差する箇所に、輪郭点を形成するステップと、同一の前記基準線上における2つの前記輪郭点間に中間点を形成するステップと、複数の前記輪郭点に基づいて輪郭線を形成するステップとを含む。
そのため、溶接終了直後から溶接に用いられた光が消える前に発生する「残熱発光」に基づいて前記ビードの形状を認識するので、前記ビードの形状を認識する際に、溶接中に発生するプラズマ光の影響が少なくなる。従って、前記取り込んだ画像に基づいて、前記ビードの形状を正確に認識できる。その一方で、前記輪郭点は、前記基準線上のように前記表示する画像上の限られた範囲にのみ形成されるので、前記表示される画像上の前記輪郭点の数が少なくなる。このような少ない数の前記輪郭点に基づいて、前記中間点及び前記輪郭線が形成されるので、処理される画像データが少なくなり、その結果、画像処理負荷が低減されることとなる。よって、溶接欠陥の判別に用いられ、ビードの形状を正確に認識可能であり、かつ画像処理負荷を低減可能とする画像処理装置を提供できる。
【0020】
本発明の画像処理方法は、複数の前記中間点に基づいて中心線を形成するステップをさらに含むので、少ない数の前記中間点に基づいて前記中心線が形成されるので、処理される画像データがさらに少なくなり、その結果、画像処理負荷がさらに低減されることとなる。
【0021】
本発明の画像処理方法は、前記基準線を設定するステップの前に、前記取り込んだ画像に対応して、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点の近似曲線に基づいて前記ビードの形状の中心線を形成するステップと、前記輪郭線を形成するステップの前に、前記中心線の湾曲を認識して、前記同一の基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合に、前記同一の基準線上で前記ビードを跨いで間隔を空けて対向し、かつ前記中間点を形成する2つの輪郭点を判別するステップとをさらに含み、前記判別された2つの輪郭点が前記中間点の形成及び前記輪郭線の形成に用いられるので、湾曲した前記ビードの画像処理について、前記基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合でも、前記ビードの形状に対応した前記輪郭線及び前記中心線を正確に認識し、かつ形成できる。
【0022】
本発明の画像処理方法では、前記基準線に前記中心線の湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように、前記基準線を調節するステップをさらに含むので、湾曲した前記ビードの画像処理について、前記同一の基準線上に前記ビードの湾曲した輪郭に沿って2つの輪郭点が形成されることを防止できる。すなわち、前記同一の基準線上における2つの輪郭点の組合せが、前記ビードの幅方向に跨る2つの輪郭点に限定されることとなる。このような2つの輪郭点に基づいて、前記中間点が正確に形成されることとなる。従って、画像処理負荷をさらに低減でき、前記輪郭線及び前記中心線をさらに正確に形成できる。
【0023】
本発明の画像処理方法は、前記中間点を設定するステップの前に、前記同一の前記基準線上における2つの輪郭点間の線分長さを計算し、前記線分長さの頻度分布を計算し、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点に基づいて前記ビードの幅を計算し、前記頻度分布を用いて前記ビードの幅に基づいて定めた上限線分閾値に対して長い線分、及び該ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値に対して短い線分を判別して、前記長い線分の両端の輪郭点、及び前記短い線分の両端の輪郭点を排除するステップをさらに含む。
また、前記長い線分を判別する上限線分閾値が前記ビードの幅の2倍であり、前記短い線分を判別する下限線分閾値が前記ビードの幅の半分である。
そのため、例えば、前記ビードの輪郭以外の要素に基づいて形成された前記輪郭点のように、前記輪郭線を形成するために不必要な前記輪郭点が排除されることとなり、より少ない数の正確な前記輪郭点を用いて前記輪郭線を形成できる。従って、画像処理負荷をさらに低減でき、前記ビードの形状をさらに正確に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】溶接欠陥の判定対象となる溶接部分のビードを示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像処理装置を有する溶接欠陥判定システムを示すブロック図である。
【図3】画像取り込み処理について、溶接直後の時間経過と残熱発光の輝度との関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態において、ビードの形状を表示した画像の一例を示す模式図である。
【図5】(a)本発明の第1実施形態において、正常なビードの終端部分における湾曲度の計算を説明するための模式図である。(b)本発明の第1実施形態において、溶接欠陥を有するビードの終端部分における湾曲度の計算を説明するための模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る画像処理装置を有する溶接欠陥判定システムを示すブロック図である。
【図8】本発明の第2実施形態において、ビード領域点に基づいて中心線を形成した画像の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施形態において、基準線同士の交差角度を初期状態から変更した状態を示す模式図である。
【図10】本発明の第2実施形態において、同一基準線上でビードを跨いで間隔を空けて対向する2つの輪郭点と、このような輪郭点以外の不要な輪郭点とが形成された状態を示す模式図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態に係る画像処理装置を有する溶接欠陥判定システムを示すブロック図である。
【図13】本発明の第3実施形態において、同一基準線上の2つの輪郭点間における線分長さの頻度分布の一例を示す図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る画像処理装置を有する溶接欠陥判定システム(以下、「判定システム」という)、及び第1実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法について説明する。
最初に、図1を参照して、欠陥を判定する対象の溶接部分のビードmについて説明する。ビードmは略C字状に形成されており、詳細には、ビードmは、溶接開始地点に形成された始端部分m1と、溶接終了地点に形成された終端部分m2と、始端部分m1及び終端部分m2の間に形成された中間部分m3とを有している。第1実施形態では、ビードmの終端部分m2と、ビードmの中間部分m3における終端部分m2側の部分とを含む領域Jを欠陥判定の対象とする。なお、第1実施形態では、一例として、ビードmは略C字条に形成されているが、直線状、L字状、波状等のようなその他の形状であってもよい。
【0026】
次に、図2を参照して判定システム1を説明する。
判定システム1は画像取り込み装置2を有しており、この画像取り込み装置2は、溶接用のレーザを照射し、レーザ溶接時の残熱発光が生じている溶接部分を撮影し、かつ撮影した溶接部分の画像を取り込むように構成されている。判定システム1は画像処理装置3を有しており、画像処理装置3は、画像取り込み装置2により取り込んだ溶接部分の画像に基づいてビードmの形状を認識するように構成されている。判定システム1はビード形状判定装置4を有しており、このビード形状判定装置4は、画像処理装置3により認識されたビードの形状に基づいて、溶接部分の欠陥を判定するように構成されている。
【0027】
画像取り込み装置2について、図2及び図3を参照して説明する。
図2を参照すると、画像取り込み装置2は、溶接部材Mに溶接用のレーザを照射するレーザ照射部5を有している。画像取り込み装置2は、レーザを照射した溶接部分の画像を連続的に撮影するモニタ部6を有している。画像取り込み装置2は、モニタ部6により撮影した画像を連続的に記憶する記憶部7を有している。画像取り込み装置2は、記憶部7に記憶された画像を取り込む画像取り込み部8を有している。
【0028】
図3を参照すると、画像取り込み部8は、溶接終了直後から所定の時間t内に生じる残熱発光の画像を取り込むように構成されている。また、画像取り込み部8は、画像の平均輝度Gが所定の取り込み開始輝度閾値g1以上である場合に、画像の取り込みを開始し、画像の平均輝度Gが所定の取り込み終了輝度閾値g2以下である場合に、残熱発光が終了したと認識して、画像の取り込みを終了するように構成されている。
【0029】
一例として、画像取り込み装置2の詳細は、次のように構成されていると好ましい。
残熱発光は、溶接終了直後から数十ms(ミリ秒)間生じた後に減衰するので、確認難くなる。そのため、所定の時間tは約20msであると好ましい。この場合、モニタ部6は、フレームレート約500Hz(周期2ms)の高速度カメラであるとよく、約10枚(=20ms÷2ms)の画像が取り込まれることとなる。また、モニタ部6は、高ダイナミックレンジカメラであると好ましく、信号検出のダイナミックレンジが広く、かつ計測可能な輝度の範囲が広くなっているので、溶接中及び溶接直後の画像を撮影できる。画像取り込み部8では、画像の取り込みを開始する開始輝度閾値g1が、溶接中及び溶接直後の平均輝度Gの中間値となっていると好ましい。画像の取り込みを終了する終了輝度閾値g2は、開始輝度閾値g1より小さく、かつ残熱発光を確認できない程に暗くなった状態の画像の平均輝度Gより大きくなっていると好ましい。
【0030】
画像処理装置3について、図2及び図4を参照して説明する。
図2を参照すると、画像処理装置3はビード認識部9を有しており、このビード認識部9は、画像取り込み装置2によって取り込んだ画像に基づいて、ビード領域候補を認識するように構成されている。ビード領域候補は、所定の輪郭輝度閾値hより残熱発光の輝度Hが大きくなっている領域となっており、輪郭輝度閾値hは、ビードmの輪郭線を識別するように設定されている。画像処理装置3はビード判別部10を有しており、このビード判別部10は、複数のビード領域候補が認識された場合に、複数のビード領域候補から実際のビードに対応するビード領域Eを選択するように構成されている。なお、このビード領域Eは、複数のビード領域点eから構成されている。一例として、ビード領域点eは、画像上で1つ以上のピクセルにより表され、複数のビード領域点eは、互いに隣接して配置されるか、又はピクセル単位の間隔で配置されているとよい。また、ビード判別部10は、各ビード領域候補のアスペクト比(縦横比)を計算し、このアスペクト比に基づいて、複数のビード領域候補から実際のビードmに対応するビード領域Eを選択する構成となっている。例えば、アスペクト比が一般的なビードmの横長形状に対応する値より大きくなっている場合に、このようなビード領域候補が実際のビードmに相当すると認識する設定であるとよい。実際のビードmと、溶接時に飛散するスパッタ粒子とにそれぞれ対応するビード領域候補が認識された場合、スパッタ粒子に対応するビード領域候補は、等方的な形状に形成されるのに対して、ビードmは横長形状に形成されることとなる。そのため、実際のビードmに対応するビード領域Eが正確に選択されることとなる。さらに、スパッタ粒子に対応するビード領域候補が、等方的な形状に形成されていない場合を考慮して、ビード判別部10は、複数のビード領域候補が時間を前後して取り込んだ画像にて移動しているか、又は停止しているかを判定し、かつ停止しているビード領域候補が実際のビードmに対応するビード領域Eであると認識するように構成されている。
【0031】
図2を参照すると、画像処理装置3は基準線設定部11を有しており、この基準線設定部11は、取り込んだ画像にて複数の基準線Lを格子状に設定するように構成されている(図4を参照)。一例として、複数の基準線Lは、ピクセル単位の間隔を空けて配置されているとよく、複数の基準線L同士の間隔は、複数のビード領域点eの間隔より大きくなっていると好ましい。画像処理装置3は輪郭点形成部12を有しており、この輪郭点形成部12は、基準線L上にビードmの輪郭点pを形成するように構成されている(図4を参照)。画像処理装置3は中間点形成部13を有しており、この中間点形成部13は、同一の基準線L上に形成された2つの輪郭点p間の中間点qを形成するように構成されている(図4を参照)。画像処理装置3は輪郭線形成部14を有しており、この輪郭線形成部14は、複数の輪郭点pに基づいて輪郭線Pを形成するように構成されている(図4を参照)。画像処理装置3は第1の中心線形成部15を有しており、この第1の中心線形成部15は、複数の中間点qに基づいて中心線Qを形成するように構成されている(図4を参照)。
【0032】
輪郭点形成部12及び中間点形成部13の詳細について、図4を参照して説明する。
輪郭点形成部12は、基準線L上に輪郭点pを形成する構成となっている。輪郭点pは、画像取り込み装置2によって取り込んだ画像に基づいて、ビードmの輪郭に相当する境界が基準線Lと交差する箇所に形成される。ビードmの輪郭に相当する境界は、残熱発光の輝度Hが、ビードmの輪郭線を識別するように設定した輪郭輝度閾値hより大きくなっている領域と、残熱発光の輝度Hが、輪郭輝度閾値hより小さくなっている領域との間に位置している。すなわち、輪郭輝度閾値hは、ビードmの輪郭に対応するように、ビードmの輪郭の内側領域に対応する残熱発光の輝度Hより小さく、かつビードmの輪郭の外側領域に対応する残熱発光の輝度Hより大きな値に設定されている。なお、一例として、輪郭輝度閾値g3は、ビードmの輪郭と残熱発光の輝度Hとの関係を予め求めておくことによって、設定されているとよい。さらに、中間点形成部13は、同一の基準線L上に形成された2つの輪郭点p同士の中点を中間点qとして形成するように構成されている。
【0033】
輪郭線形成部14及び第1の中心線形成部15の詳細について、図4を参照して説明する。
輪郭線形成部14は、フィッティング関数f1を用いて、複数の輪郭点pに基づく輪郭線Pを形成する。一例として、互いに直角に交差するX軸及びY軸を定めた場合、フィッティング関数f1は、Y=aX+bX+c、又はX=a’Y+b’Y+c’であるとよく、これらの係数a、b及びc、又は係数a’、b’及びc’は、フィッティング関数f1と複数の輪郭点pとの距離の二乗和を最小とするように定められるとよい(最小二乗法)。さらに、フィッティング関数f1については、Y=aX+bX+c、及びX=a’Y+b’Y+c’のそれぞれの計算式に基づいて計算し、これらの内でフィッティング誤差が小さい方の計算式を選択し、この選択した計算式を用いて輪郭線Pを形成するとよい。なお、フィッティング関数f1は、3次関数、4次関数等の多項式関数、指数関数、対数関数等であってもよい。また、フィッティング関数f1は、輪郭点pに基づいて輪郭線Pを形成できれば、その他のフィッティングに用いられる関数であってもよい。
【0034】
また、第1の中心線形成部15は、フィッティング関数f2を用いて、複数の中間点qに基づいて中心線Qを形成するように構成されている。一例として、フィッティング関数f2は、フィッティング関数f1と同様になっているとよい。
【0035】
ビード形状判定装置4について、図2、図5(a)、及び図5(b)を参照して説明する。
ビード形状判定装置4は、画像処理装置3によって得られた輪郭点p、中間点q、輪郭線P、及び中心線Qに基づいて、ビードmの欠陥の有無を判定するように構成されている。ビード形状判定装置4の詳細について、図2を参照して説明すると、ビード形状判定装置4は代表点形成部16を有しており、代表点形成部16は、直角に交差するX軸及びY軸を定めた場合、複数の中点qの平均位置である代表中間点q1を形成するように構成されている(図5(a)及び図5(b)を参照)。この代表中間点q1のX座標は、複数の中間点qのX座標平均値となっており、代表中間点q1のY座標は、複数の中間点qのY座標平均値となっている。ビード形状判定装置4は終端点形成部17を有しており、終端点形成部17は、ビードmの終端部分m2にて輪郭線Pと中心線Qとが交差する点である終端中間点q2を形成するように構成されている(図5(a)及び図5(b)を参照)。ビード形状判定装置4は副代表点形成部18を有しており、副代表点形成部18は、代表中間点q1と終端中間点q2との間の中点である副代表中間点q3を形成するように構成されている(図5(a)及び図5(b)を参照)。ビード形状判定装置4は直線形成部19を有しており、直線形成部19は、終端中間点q2と副代表中間点q3とを結ぶ直線Rに対して垂直な方向に距離dの間隔を空けて、かつ直線Rに対して平行に配置される一対の直線U,Vを形成するように構成されている(図5(a)及び図5(b)を参照)。
【0036】
一例として、図5(a)及び図5(b)に示すように、距離dは、ビードmの幅の半分以下であるとよい。この場合、ビードmの幅は、ビード領域E、及び/又はこのビード領域E内の複数のビード領域点eと、ビード領域E及び/又はビード領域点eから計算されたアスペクト比とに基づいて計算された代表幅であるとよい。ビード形状判定装置4は湾曲度計算部20を有しており、湾曲度計算部20は、ビードmの終端部分m2の溶接欠陥を判別するように構成されている。
【0037】
湾曲度計算部20の詳細について、図5(a)及び図5(b)を参照して説明する。
湾曲度計算部20は、ビードmの終端部分m2にて直線U,Vと輪郭線Pとがそれぞれ交差する点である境界点u,vを計算するように構成されている。湾曲度計算部20は、直線UVと終端中間点q2との距離を湾曲度Wとして計算するように構成されている。湾曲度Wは、図5(a)に示すように、境界点u,vを結ぶ直線UVを基準として終端中間点q2が副代表中間点q3と反対側に位置する場合、プラスの値であると識別される一方で、図5(b)に示すように、直線UVを基準として終端中間点q2が副代表中間点q3側に位置する場合、マイナスの値であると識別される。湾曲度Wがプラスの値である場合、図5(a)に示すように、終端部分m2は凸形状である。その一方で、湾曲度Wの値がマイナスである場合、図5(b)に示すように、終端部分m2は凹形状である。また、湾曲度計算部20では、終端部分m2にて欠陥の有無を判定するための湾曲度閾値wが設定されており、湾曲度Wが湾曲度閾値w以上である場合、終端部分m2は正常と判定される。その一方で、湾曲度Wが湾曲度閾値w以下である場合、終端部分m2には孔等の欠陥が発生していると判定される。一例として、湾曲度閾値wは0であると好ましい。
【0038】
第1実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法について、図6を参照して説明する。
レーザ照射部5が溶接部材Mに溶接用のレーザを照射し、モニタ部6が、レーザを照射された溶接部分の画像を連続的に撮影し、記憶部7が、撮影された画像を記憶し、画像取り込み部8が、記憶部7から残熱発光が生じている画像を取り込む(S1)。ビード認識部9が、取り込んだ画像におけるビード領域候補を認識する。複数のビード領域候補が認識された場合、ビード判別部10が、実際のビードmに対応するビード領域Eを判別する。画像取り込み部8によって取り込まれた画像に対応して、基準線設定部11が複数の基準線Lを格子状に設定する(S2)。輪郭点形成部12が、基準線L上にビードmの輪郭点pを形成する(S3)。中間点形成部13が、同一の基準線L上に形成された2つの輪郭点p間の中間点qを形成する(S4)。輪郭線形成部14が、複数の輪郭点pに基づいて輪郭線Pを形成する(S5)。第1の中心線形成部15が、複数の中間点qに基づいて中心線Qを形成する(S6)。画像処理装置3により得られた中間点q、輪郭線P、及び中心線Qに基づいて、ビードmの欠陥の有無を判定する(S7)。
【0039】
ビードmの欠陥の有無を判定することについての詳細を説明する。代表点形成部16が、互いに直角に交差するX軸及びY軸を定めて、複数の中点qの平均位置である代表中間点q1を形成する。終端点形成部17が、ビードmの終端部分m2における輪郭線Pと中心線Qとの交点である終端中間点q2を形成する。副代表点形成部18が、代表中間点q1と終端中間点q2との間の中点である副代表中間点q3を形成する。直線形成部19が、終端中間点q2と副代表中間点q3とを結ぶ直線RSに対して垂直な方向に距離dの間隔を空けて、かつ直線Rに対して平行に配置される一対の直線U,Vを形成する。湾曲度計算部20が、終端部分m2にて直線U,Vと輪郭線Pとが交差する点である境界点u,vをそれぞれ計算する。さらに、湾曲度計算部20では、終端部分m2の湾曲度Wが湾曲度閾値w以上である場合、終端部分m2は正常と判定される。その一方で、湾曲度Wが湾曲度閾値w以下である場合、終端部分m2には孔等の欠陥が発生していると判定される。
【0040】
以上のように本発明の第1実施形態によれば、残熱発光に基づいてビードmの形状を認識するので、ビードmの形状を認識する際に、溶接中に発生するプラズマ光の影響が少なくなる。従って、取り込んだ画像に基づいて、ビードmの輪郭線P及び中心線Qを正確に認識できる。その一方で、輪郭点p及び中間点qは、基準線L上のように限られた範囲に形成されるので、輪郭点p及び中間点qの数が少なくなる。このような少ない数の輪郭点pに基づいて中間点q及び輪郭線Pが形成され、かつ少ない数の中間点qに基づいて中心線Qが形成されるので、処理される画像データが少なくなり、その結果、画像処理負荷が低減されることとなる。よって、溶接欠陥の判別に用いられ、ビードmの形状を正確に認識可能であり、かつ画像処理負荷を低減可能とする画像処理装置3を提供できる。
【0041】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法について以下に説明する。第2実施形態の画像処理装置及び画像処理方法の基本的な構成要素は、第1実施形態の画像処理装置及び画像処理方法の構成と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0042】
図7〜図10を参照して、判定システム21について説明する。
図7を参照すると、判定システム21は、第1実施形態と同様の画像取り込み装置2、及びビード形状判定装置4を有している。判定システム21は、画像取り込み装置2により取り込んだ溶接部分の画像に基づいて、この溶接部分に形成されるビードmの形状を認識する画像処理装置22を有している。
【0043】
図7を参照すると、画像処理装置22は、第1実施形態と同様のビード認識部9、ビード判別部10、基準線設定部11、輪郭点形成部12、中間点形成部13、及び輪郭線形成部14を有している。画像処理装置22は第2の中心線形成部23を有しており、この第2の中心線形成部23は、ビード認識部9及びビード判別部10により得られたビード領域E内の複数のビード領域点eに基づいて中心線Qを形成するように構成されている(図8を参照)。中心線形成部23では、複数のビード領域点eに基づいて近似曲線が計算され、この近似曲線が中心線Qとして形成される。例えば、この近似曲線は、対数近似曲線、多項式近似曲線、累乗近似曲線、指数近似曲線、移動平均曲線等であるとよい。画像処理装置22は湾曲形状認識部24を有しており、湾曲形状認識部24は、中心線Qに基づいてビードmの湾曲形状を認識するように構成されている(図8を参照)。画像処理装置22は基準線調節部25を有しており、この基準線調節部25は、図9に示すように基準線Lに中心線Qの湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように構成されている。詳細には、基準線調節部25は、初期状態で直角となっている基準線L同士の交差角度zを変更可能とするように構成されている。再び、図7を参照すると、画像処理装置22は輪郭点判別部26を有しており、輪郭点判別部26は、中心線Qが湾曲し、かつ同一の基準線L上に2つより多くの輪郭点が形成された場合に、同一の基準線L上でビードmを跨いで間隔を空けて対向する2つの輪郭点pを判別し、このような輪郭点p以外の不要な輪郭点p’を排除するように構成されている(図10を参照)。
【0044】
第2実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法について、図10を参照して説明する。
第1実施形態と同様に、レーザ溶接時の残熱発光が生じている画像を取り込む(S21)。ビード認識部9が、取り込んだ画像におけるビード領域候補を認識する。複数のビード領域候補が認識された場合、ビード判別部10が、実際のビードmに対応するビード領域Eを判別する。第2の中心線形成部23が、ビード領域E内のビード領域点eに基づいて近似曲線を計算し、この近似曲線を中心線Qとして形成する(S22)。湾曲形状認識部24が、中心線Qに基づいてビードmの湾曲形状を認識する(S23)。基準線設定部11が、複数の基準線Lを格子状に設定する(S24)。基準線調節部25が、基準線Lに中心線Qに対して平行となる部分が生じることを防止するように、初期状態で直角となっている基準線L同士の交差角度zを変更する(S25)。輪郭点形成部12が、基準線L上にビードmの輪郭点pを形成する(S26)。輪郭点判別部26が、中心線Qが湾曲し、かつ同一の基準線L上に2つより多くの輪郭点pが形成された場合に、同一の基準線L上でビードmを跨いで間隔を空けて対向する2つの輪郭点pを判別する(S27)。中間点形成部13が、同一の基準線L上に形成され、かつ輪郭点判別部26により判別された2つの輪郭点p間の中間点qを形成する(S28)。輪郭線形成部14が、複数の輪郭点pに基づいて輪郭線Pを形成する(S29)。第1実施形態と同様に、画像処理装置22により得られた中間点q、輪郭線P、及び中心線Qに基づいて、ビードmの欠陥の有無を判定する(S30)。
【0045】
以上のように本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。本発明の第2実施形態によれば、輪郭点判別部26が、中心線Qが湾曲し、かつ同一の基準線L上に2つより多くの輪郭点pが形成された場合に、同一の基準線L上でビードmを跨いで間隔を空けて対向する2つの輪郭点pを判別する。そのため、湾曲したビードmの画像処理について、基準線L上に2つより多くの輪郭点pが形成された場合でも、ビードmの形状に対応した輪郭線P及び中心線Qを正確に認識し、かつ形成できる。
【0046】
本発明の第3実施形態によれば、基準線調節部25は、基準線Lに中心線Qの湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止する。そのため、湾曲したビードmの画像処理について、同一の基準線L上にビードmの湾曲した輪郭に沿って2つの輪郭点pが形成されることを防止できる。すなわち、同一の基準線L上における2つの輪郭点pの組合せが、ビードmの幅方向に跨る2つの輪郭点pに限定されることとなる。このような2つの輪郭点pに基づいて、中間点qが正確に形成されることとなる。従って、画像処理負荷をさらに低減でき、輪郭線P及び中心線Qをさらに正確に形成できる。
【0047】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る画像処理装置及び画像処理方法について以下に説明する。第3実施形態の画像処理装置及び画像処理方法の基本的な構成要素は、第1実施形態の画像処理装置及び画像処理方法の構成と同様になっている。第1実施形態と同様な要素は、第1実施形態と同様の符号および名称を用いて説明する。ここでは、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0048】
図12及び図13を参照して、判定システム31について説明する。
図12を参照すると、第1実施形態と同様の画像取り込み装置2、及びビード形状判定装置4を有している。判定システム31は画像処理装置32を有しており、この画像処理装置32は、画像取り込み装置2により取り込んだ溶接部分の画像に基づいて、この溶接部分に形成されるビードmの形状を認識するように構成されている。
【0049】
図12を参照すると、画像処理装置32は、第1実施形態と同様のビード認識部9、ビード判別部10、基準線設定部11、輪郭点形成部12、中間点形成部13、輪郭線形成部14、及び中心線形成部15を有している。さらに、画像処理装置32は輪郭点選別部33を有しており、この輪郭点選別部33は、同一の基準線L上に位置する2つの輪郭点p間の線分長さKを計算するように構成されている。また、輪郭点選別部33は、図15に示すように、この線分長さKの頻度Nの分布を計算するように構成されている。さらに、輪郭点選別部33は、ビード認識部9及びビード判別部10により得られたビード領域E内の複数のビード領域点eに基づいて、ビードmの幅を計算するように構成されている。輪郭点選別部33は、ビードmの幅に基づいて定めた上限線分閾値k1に対して長い線分と、ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値k2に対して短い線分とを判別して、この長い線分の両端の輪郭点pと、この短い線分の両端の輪郭点pとを排除するように構成されている。この場合、ビードmの幅は、ビード領域E、及び/又はこのビード領域E内の複数のビード領域点eと、ビード領域E及び/又はビード領域点eから計算されたアスペクト比とに基づいて計算された代表幅であるとよい。上限線分閾値k1はビードの幅の2倍に設定されているとよく、下限線分閾値k2がビードの幅の半分に設定されているとよい。
【0050】
第3実施形態に係る画像処理方法を用いた溶接欠陥判定方法について、図14を参照して説明する。
第1実施形態と同様に、レーザ溶接時の残熱発光が生じている画像を取り込む(S31)。ビード認識部9が、取り込んだ画像におけるビード領域候補を認識し、複数のビード領域候補が認識された場合、ビード判別部10が、実際のビードmに対応するビード領域Eを判別する。画像取り込み部8によって取り込まれた画像に対応して溶接部分のビードmの形状を、基準線設定部11が複数の基準線Lを格子状に設定する(S32)。輪郭点形成部12が、基準線L上にビードmの輪郭点pを形成する(S33)。輪郭点選別部33が、同一の基準線L上に位置する2つの輪郭点p間の線分長さKを計算し、線分長さKの頻度分布を計算し、複数のビード領域点eに基づいてビードmの幅を計算し、この頻度分布上で、ビードmの幅に基づいて定めた上限閾値k1に対して長い線分と、ビードmの幅に基づいて定めた下限閾値k2に対して短い線分とを判別し、この長い線分の両端の輪郭点と、この短い線分の両端の輪郭点とを排除する(S34)。中間点形成部13が、同一の基準線L上に形成された2つの輪郭点p間の中間点qを形成する(S35)。輪郭線形成部14が、複数の輪郭点pに基づいて輪郭線Pを形成する(S36)。第1の中心線形成部15が、複数の中間点qに基づいて中心線Qを形成する(S37)。第1実施形態と同様に、画像処理装置32により得られた中間点q、輪郭線P、及び中心線Qに基づいて、ビードmの欠陥の有無を判定する(S38)。
【0051】
以上のように本発明の第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、次のような効果が得られる。本発明の第3実施形態によれば、輪郭点選別部33が、同一の基準線L上に位置する2つの輪郭点p間の線分長さKを計算し、線分長さKの頻度分布を計算し、ビードmの幅を計算し、この頻度分布上で、ビードmの幅に基づいて定めた上限線分閾値k1に対して長い線分と、ビードmの幅に基づいて定めた下限線分閾値k2に対して短い線分とを判別し、この長い線分の両端の輪郭点と、この短い線分の両端の輪郭点とを排除する。また、一例として、上限線分閾値k1はビードの幅の2倍に設定され、下限線分閾値k2がビードの幅の半分に設定されている。そのため、例えば、ビードmの輪郭以外の要素に基づいて形成された輪郭点のように、輪郭線Pを形成するために不必要な輪郭点が排除されることとなり、より少ない数の正確な輪郭点pを用いて輪郭線Pを形成できる。従って、画像処理負荷をさらに低減でき、前記ビードの形状をさらに正確に形成できる。
【0052】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0053】
例えば、本発明の実施形態の第1変形例として、第2実施形態に係る画像処理装置22において、第3実施形態の輪郭点選別部33が設けられてもよい。第3実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
本発明の実施形態の第2変形例として、第1実施形態〜第3実施形態において、複数の基準線Lが、ビード領域E内の一点で互いに交差し、かつこの交差した点から放射状に延びるように設定されてもよい。本発明の第1実施形態〜第3実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
1,21,31 溶接欠陥判定システム(判定システム)
2 画像取り込み装置
3,22,32 画像処理装置
4 ビード形状判定装置
11 基準線設定部
12 輪郭点形成部
13 中間点形成部
14 輪郭線形成部
15 第1の中心線形成部
23 第2の中心線形成部
24 湾曲形状認識部
25 基準線調節部
26 輪郭点判別部
33 輪郭点選別部
m ビード
H 残熱発光の輝度
h 輪郭輝度閾値
e ビード領域点
L 基準線
p 輪郭点
q 中間点
P 輪郭線
Q 中心線
K 線分長さ
k1 上限線分閾値
k2 下限線分閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて前記溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理装置において、
レーザ溶接時の残熱発光が生じている前記溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線を設定する基準線設定部と、
前記取り込んだ画像の残熱発光の輝度が前記ビードの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値より大きくなっている領域と、前記残熱発光の輝度が前記輝度閾値より小さくなっている領域との間の境界と前記基準線とが交差する箇所に、輪郭点を形成する輪郭点形成部と、
同一の前記基準線上における2つの前記輪郭点間に中間点を形成する中間点形成部と、
複数の前記輪郭点に基づいて輪郭線を形成する輪郭線形成部と
を備えている画像処理装置。
【請求項2】
複数の前記中間点に基づいて中心線を形成する中心線形成部をさらに備えている請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記基準線を設定する前に、前記取り込んだ画像に対応して、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点の近似曲線に基づいて前記ビードの形状の中心線を形成する中心線形成部と、
前記輪郭線を形成する前に、前記中心線の湾曲を認識して、前記同一の基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合に、前記同一の基準線上で前記ビードを跨いで間隔を空けて対向し、かつ前記中間点を形成する2つの輪郭点を判別する輪郭点判別部と
をさらに備え、
前記判別された2つの輪郭点が、前記中間点の形成及び前記輪郭線の形成に用いられるように構成されている、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記基準線に前記中心線の湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように、前記基準線を調節する基準線調節部をさらに備えている請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記中間点を設定する前に、前記同一の前記基準線上における2つの輪郭点間の線分長さを計算し、前記線分長さの頻度分布を計算し、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点に基づいて前記ビードの幅を計算し、前記頻度分布を用いて前記ビードの幅に基づいて定めた上限線分閾値に対して長い線分、及び該ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値に対して短い線分を判別して、前記長い線分の両端の輪郭点、及び前記短い線分の両端の輪郭点を排除する輪郭点選別部をさらに備えている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記長い線分を判別する上限線分閾値が前記ビードの幅の2倍となっており、
前記短い線分を判別する下限線分閾値が前記ビードの幅の半分となっている、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
レーザ溶接の溶接部分の画像に基づいて前記溶接部分に形成されるビードの形状を認識する画像処理方法において、
レーザ溶接時の残熱発光が生じている前記溶接部分を撮影し、かつ取り込んだ画像に対応して、複数の基準線を設定するステップと、
前記取り込んだ画像の残熱発光の輝度が前記ビードの輪郭線を識別するように設定した輝度閾値より大きくなっている領域と、前記残熱発光の輝度が前記輝度閾値より小さくなっている領域との間の境界と前記基準線とが交差する箇所に、輪郭点を形成するするステップと、
同一の前記基準線上における2つの前記輪郭点間に中間点を形成するステップと、
複数の前記輪郭点に基づいて輪郭線を形成するステップと
を含む画像処理方法。
【請求項8】
複数の前記中間点に基づいて中心線を形成するステップをさらに含む請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記基準線を設定するステップの前に、前記取り込んだ画像に対応して、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点の近似曲線に基づいて前記ビードの形状の中心線を形成するステップと、
前記輪郭線を形成するステップの前に、前記中心線の湾曲を認識して、前記同一の基準線上に2つより多くの前記輪郭点が形成された場合に、前記同一の基準線上で前記ビードを跨いで間隔を空けて対向し、かつ前記中間点を形成する2つの輪郭点を判別するステップと
をさらに含み、
前記判別された2つの輪郭点が前記中間点の形成及び前記輪郭線の形成に用いられる、請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記基準線に前記中心線の湾曲形状に対して平行となる部分が生じることを防止するように、前記基準線を調節するステップをさらに含む請求項9に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記中間点を設定するステップの前に、前記同一の前記基準線上における2つの輪郭点間の線分長さを計算し、前記線分長さの頻度分布を計算し、前記輝度閾値より大きくなっている複数のビード領域点に基づいて前記ビードの幅を計算し、前記頻度分布を用いて前記ビードの幅に基づいて定めた上限線分閾値に対して長い線分、及び該ビードの幅に基づいて定めた下限線分閾値に対して短い線分を判別して、前記長い線分の両端の輪郭点、及び前記短い線分の両端の輪郭点を排除するステップをさらに含む請求項7〜10のいずれか一項に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記長い線分を判別する上限線分閾値が前記ビードの幅の2倍であり、
前記短い線分を判別する下限線分閾値が前記ビードの幅の半分である請求項11に記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−234255(P2012−234255A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100799(P2011−100799)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】