説明

画像処理装置

【課題】本発明の目的は、曲線縞模様画像から曲線縞模様ノイズが適切に除去される画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することである。
【解決手段】画像処理装置は、データ記憶部22と、第1画像強調部28とを具備する。データ記憶部22は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データを格納する。第1画像強調部28は、第1領域において第1画像強調処理を実行する。方向分布データは、第1領域内の第1画素の位置としての第1位置と、第1位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向とを関連付ける。第1画像強調部28は、第1方向に基づいて、第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を第1領域に含まれるように決定する。そして、第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、第1画素における第1画像強調処理後の濃度値を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関し、特に、指紋画像や掌紋画像のような曲線縞模様画像を処理する画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
曲線縞模様状の複数の隆線によって構成される指紋は、終生不変及び万人不同という特徴を持っているため、古くから犯罪捜査に利用されている。特に、犯罪現場に残された遺留指紋を用いた照合は、効果的な捜査手段である。近年、多くの警察機関では、コンピュータを利用した指紋照合システムが導入されている。
【0003】
しかし、遺留指紋の画像は低品質でノイズを含むものが多いため、鑑定官による鑑定や鑑定の自動化が困難であった。遺留指紋の画像には、二つの指紋の隆線が重なった重複指紋(overlapped figerprints)の画像や、曲線縞模様を成すかすれ(blur)を含む画像がある。重複指紋の一方を処理対象とすると、他方は曲線縞模様状の背景ノイズと見做すことができる。以下、曲線縞模様状の背景ノイズを曲線縞模様ノイズという。曲線縞模様を成すかすれも、曲線縞模様ノイズに該当する。
【0004】
曲線縞模様ノイズは、曲線縞模様である点が処理対象としての指紋(注目指紋)と共通する。したがって、重複指紋から注目指紋のみを抽出することや、注目指紋が劣化しないように曲線縞模様を成すかすれを除去することは困難であった。
【0005】
本発明に関連する画像処理方法を以下に説明する。
【0006】
非特許文献1は、フーリエ変換を応用して背景ノイズを除去する技術を開示している。この技術は、周期的なノイズが一つの方向に直線的に現れている場合には効果的であるが、曲線縞模様ノイズに対しては限定的な効果しか持たないと考えられる。例えば、注目指紋の隆線の方向と曲線縞模様ノイズの方向とが近い領域においては、曲線縞模様ノイズのみならず注目指紋の隆線も消失してしまうおそれがある。また、ノイズがない領域における注目指紋の隆線まで劣化してしまうおそれがある。
【0007】
特許文献1は、縞紋様の方向分布を求める方法を開示している。この方法において、オペレータは縞紋様の画像中の領域と方向指示線とを指定する。方向指示線に基づいて、領域内における縞紋様の方向分布が求められる。
【0008】
また、指紋隆線の方向及び周期性を抽出し、方向及び周期性に合致したフィルタ処理を行って指紋隆線を強調する様々な方法が提案されている。例えば、非特許文献2及び特許文献2は、このような方法を開示している。しかし、このような方法は、曲線縞模様ノイズの影響で注目指紋の隆線の方向及び周期性を正しく抽出できない場合には有効ではないと考えられる。
【0009】
一方、局所的コントラストストレッチ法(Adaptive Contrast Stretch)や局所的ヒストグラム均等化法(Adaptive Histogram Equalization)のような局所的な画像強調方法が局所的な背景ノイズを除去するために有効であることが知られている。局所的な画像強調方法においては、画像強調のための参照領域を適切に設定することが重要である。
【0010】
特許文献3は、指紋の隆線をトレースする方法を開示している。各画素における隆線方向を示す隆線方向データが隆線をトレースするために用いられる。
【0011】
特許文献4は、濃度が極端に異なる領域を含む背景上の指紋隆線を強調するための画像強調方法を開示している。この方法において、複数参照領域の複数濃度ヒストグラムに基づいて処理対象画素の濃度値が計算される。
【0012】
【特許文献1】特開平7−121723号公報
【特許文献2】特開2002−99912号公報
【特許文献3】特開2007−226746号公報
【特許文献4】特開2008−52602号公報
【非特許文献1】M. Cannon, A. Lehar, AND F. Preston, “Background Pattern Removal by Power Spectral Filtering” Applied Optics, March 15, 1983
【非特許文献2】Lin Hong, Yifei Wan, Anil Jain, “Fingerprint Image Enhancement: Algorithm and Performance Evaluation” IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、曲線縞模様画像から曲線縞模様ノイズが適切に除去される画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による画像処理装置は、データ記憶部と、第1画像強調部とを具備する。データ記憶部は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納する。第1画像強調部は、第1領域において第1画像強調処理を実行する。方向分布データは、第1領域内の第1画素の位置としての第1位置と、第1位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向とを関連付ける。第1画像強調部は、第1方向に基づいて、第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を第1領域に含まれるように決定する。そして、第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、第1画素における第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算する。
【0015】
本発明による画像処理装置は、データ記憶部と、第1画像強調部とを具備する。データ記憶部は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納する。第1画像強調部は、第1領域において第1画像強調処理を実行する。第1画像強調部は、第1領域内の各画素について、その画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に基づいてその画素を含む局所領域としての参照領域を第1領域に含まれるように決定することで、第1領域内の第1画素を含む複数参照領域を決定する。複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、第1画素に関して複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在する。第1画像強調部は、複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、第1画素の第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、第1画素における画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から処理後濃度値を計算する。
【0016】
本発明による画像処理装置は、データ記憶手段と、第1画像強調手段とを具備する。データ記憶手段は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納する。第1画像強調手段は、第1領域において第1画像強調処理を実行する。方向分布データは、第1領域内の第1画素の位置としての第1位置と、第1位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向とを関連付ける。第1画像強調手段は、第1方向に基づいて、第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を第1領域に含まれるように決定する。そして、第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、第1画素における第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算する。
【0017】
本発明による画像処理装置は、データ記憶手段と、第1画像強調手段とを具備する。データ記憶手段は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納する。第1画像強調手段は、第1領域において第1画像強調処理を実行する。第1画像強調手段は、第1領域内の各画素について、その画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に基づいてその画素を含む局所領域としての参照領域を第1領域に含まれるように決定することで、第1領域内の第1画素を含む複数参照領域を決定する。複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、第1画素に関して複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在する。第1画像強調手段は、複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、第1画素の第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、第1画素における画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から処理後濃度値を計算する。
【0018】
本発明による画像処理方法は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の第1領域において第1画像強調処理を実行するステップを具備する。第1領域に曲線縞模様ノイズが存在する。第1画像強調処理を実行するステップは、第1領域内の第1画素の位置としての第1位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向に基づいて、第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を第1領域に含まれるように決定するステップと、第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、第1画素における第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算するステップとを備える。
【0019】
本発明による画像処理方法は、濃淡画像としての曲線縞模様画像の第1領域において第1画像強調処理を実行するステップを具備する。第1領域に曲線縞模様ノイズが存在する。第1画像強調処理を実行するステップは、第1領域内の各画素について、その画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に基づいてその画素を含む局所領域としての参照領域を第1領域に含まれるように決定することで、第1領域内の第1画素を含む複数参照領域を決定するステップと、第1画素の第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算するステップとを備える。複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、第1画素に関して複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在する。処理後濃度値を計算するステップにおいて、複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、第1画素における画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から処理後濃度値を計算する。
【0020】
本発明によるプログラムは、上記画像処理方法のいずれかをコンピュータに実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、曲線縞模様画像から曲線縞模様ノイズが適切に除去される画像処理装置、画像処理方法及びプログラムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを以下に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置10のハードウエア構成を示す。画像処理装置10は、パーソナルコンピュータのようなデータ処理装置1と、入力装置としての画像入力装置5及びデータ入力装置8と、出力装置としての表示装置6及びプリンタ7とを備える。画像入力装置5は、例えば、指紋センサ、スキャナー、及び記録媒体読取装置である。データ入力装置8は、例えば、マウスやタブレットのようなポインティングデバイス、又はキーボードである。データ処理装置1は、バス4と、バス4に接続されたCPU(Central Processing Unit)2と、バス4に接続された記憶装置3を備える。記憶装置3は、RAM(Randam Access Memory)又は磁気ディスク装置である。画像入力装置5、表示装置6、プリンタ7、データ入力装置8及び照合装置14の各々は、図示されないインターフェースを介してバス4に接続される。照合装置14は、外部装置である。
【0024】
図2は、画像処理装置10の機能ブロック図である。画像入力部11、画像処理部12、画像出力部13、データ表示部24、及びデータ入力部25の各々は、CPU2がコンピュータプログラムを実行して画像処理装置10のハードウエアを制御することにより実現される。画像処理部12は、データ処理制御部21、データ記憶部22、代表線データ及び領域データ生成部23、方向推定部26、通常画像強調部27、方向利用画像強調部28、及び画像合成部29を備える。画像入力部11は画像入力装置5に対応し、画像処理部12はデータ処理装置1に対応する。データ処理制御部21、代表線データ及び領域データ生成部23、方向推定部26、通常画像強調部27、方向利用画像強調部28、及び画像合成部29は、CPU2に対応する。データ記憶部22は記憶装置3に対応し、データ表示部24は表示装置6に対応し、データ入力部25はデータ入力装置8に対応する。画像出力部13は、表示装置6又はプリンタ7に対応する。
【0025】
データ処理制御部21は、データ記憶部22、代表線データ及び領域データ生成部23、方向推定部26、通常画像強調部27、方向利用画像強調部28、及び画像合成部29間で行われるデータ及びメッセージの授受を制御する。データ記憶部22は、データ処理制御部21、代表線データ及び領域データ生成部23、方向推定部26、通常画像強調部27、方向利用画像強調部28、及び画像合成部29に作業領域を提供し、これらが生成するデータを格納する。
【0026】
図3を参照して、本実施形態に係る画像処理方法を説明する。画像処理方法は、ステップS1乃至ステップS8を備える。
【0027】
ステップS1において、画像入力部11は、濃淡画像としての指紋画像の指紋画像データを画像処理部12に入力する。指紋画像は曲線縞模様画像であり、指紋画像データはデジタルデータである。画像入力部11は、例えば、指先の指紋を読み取って指紋画像データを生成し、紙などをスキャンして指紋画像データを生成し、又は、磁気ディスクや光ディスクのような記録媒体に記録された指紋画像データを読み取る。データ記憶部22は、指紋画像データを格納する。
【0028】
図4A及び4Bは、指紋画像の例を示す。図4Aの指紋画像は、重複指紋画像であり、注目指紋と、注目指紋に重なった他の指紋(以下、ノイズ指紋という)としての曲線縞模様ノイズを含む。図4Bの指紋画像は、注目指紋と、かすれノイズとしての曲線縞模様ノイズを含む。このような指紋画像は、米国National Institute of Standards and Technologyで標準化されたANSI/NIST−ITL−1−2000 Data Format for the Interchange of Fingerprint, Facial, & Tattoo (SMT) Informationに従って、500dpiの解像度でディジタル化されている。なお、この標準化ドキュメントは、2008年1月現在、以下のURL(Uniform Resource Locator)からダウンロード可能である。
ftp://sequoyah.nist.gov/pub/nist_internal_reports/sp500‐245‐a16.pdf
【0029】
上記標準にしたがって、指紋画像を構成する画素は、0から255までの256階調の濃度値のいずれかを持つ。上記標準による輝度基準では、濃度値が大きいほど輝度が大きい(明るい)ことを示す。
【0030】
しかし、以下の説明においては、濃度値が大きいほど濃度が大きい(濃い)ことを示す。従って、濃度が大きい(濃い)隆線部を構成する画素の濃度値は最大値である255に近く、濃度が小さい(薄い)紙地や隆線溝部を構成する画素の濃度値は最小値である0に近い。ここで、隆線溝は、隣り合う二つの隆線に挟まれた帯状の部分である。
【0031】
以下、図4Aに示された指紋画像に画像処理方法を適用する場合について説明する。
【0032】
次に、ステップS2において、代表線データ及び領域データ生成部23は、データ表示部24にデータ記憶部22に格納された指紋画像データに基づいて指紋画像を表示させる。オペレータは、表示された指紋画像を見て、図5に示されるように、曲線縞模様ノイズの流れを表す代表線30を入力する。また、オペレータは、図6に示されるように、曲線縞模様ノイズが存在するノイズ領域31を入力する。オペレータは、データ入力部25を操作して、代表線30とノイズ領域31の輪郭線31aとを描画する。
【0033】
代表線30は、曲線縞模様ノイズの大まかな流れを代表するものであり、曲線縞模様ノイズを正確にトレースしていなくてもよい。オペレータがデータ入力部25を操作して指定した複数の点を直線で接続することで代表線30が描画されてもよいが、複数の点に基づくスプライン近似等の曲線近似により代表線30が描画されることが望ましい。曲線近似により代表線30を描画することで、後述する方向推定の精度が向上する。図5において代表線は4本であるが、代表線の本数は4本に限定されない。
【0034】
輪郭線31aは、オペレータがデータ入力部25を操作して指定したノイズ領域31の輪郭を代表する複数の代表点に基づいて描画される。輪郭線31aは、複数の代表点を直線で接続することで描画されてもよく、複数の代表点に基づく曲線近似により描画されてもよい。ノイズ領域31は、輪郭線31aの内側の領域として指定される。図6においてノイズ領域31は一つの閉領域であるが、複数の閉領域であってもよい。ノイズ領域外32は、輪郭線31aの外側の領域である。
【0035】
代表線データ及び領域データ生成部23は、オペレータによるデータ入力部25の操作としての入力操作に基づいて、代表線30を示す代表線データとノイズ領域31を示す領域データを生成する。
【0036】
次に、ステップS3において、方向推定部26は、曲線縞模様ノイズの方向分布を推定する。方向推定部26は、代表線データと領域データとに基づいて、ノイズ領域31内の各画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向を計算し、計算結果に基づいて、曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データを生成する。データ記憶部22は、方向分布データを格納する。
【0037】
ここで、方向について説明する。方向は、数学的には、向きを持った傾きと定義される。曲線縞模様ノイズの流れには傾きはあるが向きがないので、「曲線縞模様ノイズの方向」という表現は、数学的定義に従えば適切ではない。しかし、指紋隆線の傾きを隆線方向あるいは単に方向と表現する例が多いので、ここでは方向という用語を使用する。方向のコード化に関しては、π/8ごとに8方向にコード化する例や、π/16ごとに16方向にコード化する例が多い。8方向にコード化する場合よりも16方向にコード化する場合の方が、処理時間がかかるが精度が向上する。ここでは、図7に示すように0〜15の16方向にコード化されている場合について説明する。
【0038】
また、画素ごとに方向を定義してもよく、4×4画素や8×8画素により構成されるブロックごとに方向を定義してもよい。ブロックサイズが小さい方が、処理時間はかかるが精度が向上する。ここでは、画素ごとに方向が定義される場合について説明するが、方向分布を図示するときは、見やすいように、水平方向及び垂直方向とも8画素ごとにサンプリングして方向を示す。
【0039】
特開平7−121723号公報に開示された方法を曲線縞模様ノイズの方向分布の推定に利用することが可能である。代表線30上の画素については、その画素の位置における代表線30の接線の方向をその位置における曲線縞模様ノイズの方向として推定する。代表線30上にない画素については、その画素から8方向に放射状に探索して最初に検出される既に方向が推定されている画素の方向を用いて推定する。最初に検出される既に方向が推定されている画素の数は、1から8のいずれかである。
【0040】
図8Aは、曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果を代表線30と重ねて示す。図8Bは、曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果を入力画像としての指紋画像(図4A)と重ねて示す。図8A及び図8Bでは、方向が線分で表されている。図8A及び図8Bより、曲線縞模様ノイズの方向分布が正しく推定されていることがわかる。
【0041】
図9は、曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果を、各画素をその画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に対応した濃度にして示す。画素の位置における方向が垂直方向に近いほど、その画素が濃い濃度で示されている。
【0042】
次に、ステップS4において、通常画像強調部27は、ノイズ領域外32において濃度を強調する画像強調処理を実行し、画像強調処理後のノイズ領域外32を示す処理後ノイズ領域外データを生成する。通常画像強調部27は、画像強調処理において、ノイズ領域外32の各画素について、その画素を含む局所領域としての参照領域をノイズ領域外32に含まれるように決定し、参照領域の濃度ヒストグラムに基づいてその画素の画像強調処理後の濃度値を計算する。画像強調処理は、例えば、局所的ヒストグラム均等化法及び局所的コントラストストレッチ法の一方に基づく。入力画像のノイズ領域外32に指紋隆線のダイナミックレンジが狭い領域があっても、画像強調処理により、ノイズ領域外32が全領域で一様な濃淡変化を持つ画像に変換される。このような画像強調処理では、参照領域のサイズ設定が重要である。ここでは、参照領域を半径12画素の円に設定した。参照領域のサイズは、隆線の濃淡変動を包含する最小のサイズであることが好ましい。指紋の平均隆線間隔は約10画素(実距離は0.5ミリメートル)であるので、参照領域として平均隆線間隔の2.5倍の長さの直径を持つ円は適切である。
【0043】
図10は、ノイズ領域外32において画像強調処理を行った結果を示す。図10と図6を比較すると、画像強調処理により、ノイズ領域外32における背景濃度が濃い領域も薄い領域も一様に強調されることがわかる。なお、図10では、ノイズ領域31において画像強調処理は行われていない。
【0044】
次に、ステップS5において、方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31において濃度を強調する画像強調処理を実行し、画像処理後のノイズ領域31を示す処理後ノイズ領域データを生成する。方向利用画像強調部28は、画像強調処理において、方向分布データに基づいて、ノイズ領域31の各画素について、その画素を含む局所領域としての参照領域をノイズ領域31に含まれるように決定する。方向分布データは、ノイズ領域31内の各画素の位置と、その位置における曲線縞模様ノイズの方向とを関連付けている。方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31の各画素について、その画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に基づいて参照領域を決定する。参照領域は、曲線縞模様ノイズに含まれる曲線(隆線又は隆線溝)に沿う帯状領域となるように決定される。方向利用画像強調部28は、参照領域の濃度ヒストグラムに基づいてその画素の画像強調処理後の濃度値を計算する。画像強調処理は、例えば、局所的ヒストグラム均等化法及び局所的コントラストストレッチ法の一方に基づく。
【0045】
ステップS5の画像強調処理により、曲線縞模様ノイズが適切に除去され、同時に注目指紋の隆線が強調される。以下、その理由を説明する。
【0046】
図4Aを参照して、ノイズ指紋の隆線に沿う濃度変化を調べると、注目指紋の隆線と重なった部分の濃度は、注目指紋の隆線と重なっていない部分の濃度より大きい。ノイズ指紋の隆線に沿って濃度変化を強調すれば、注目指紋の隆線のノイズ指紋の隆線と重なった部分が強調される。
【0047】
図4Aを参照して、ノイズ指紋の隆線溝に沿う濃度変化を調べると、注目指紋の隆線と重なった部分の濃度は、注目指紋の隆線と重なっていない部分の濃度より大きい。ノイズ指紋の隆線溝に沿って濃度変化を強調すれば、ノイズ指紋の隆線溝のノイズ指紋の隆線と重なった部分が強調される。
【0048】
したがって、曲線縞模様ノイズの曲線に沿うように決定された参照領域を用いる画像強調処理により、曲線縞模様ノイズが消失し、注目指紋が強調される。
【0049】
参照領域の決定は、例えば、以下のように行われる。方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31内の各画素から、その画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に沿う第1の側とその逆の第2の側に12画素ずつ進んだときに通る画素群(合計24画素)を抽出する。参照領域は、この画素群により構成される。この画素数(ここでは12)は、ステップS4における円形の参照領域の半径の場合と同様の理由で選択されている。ステップS5における参照領域の幅が1画素分の幅であることが好ましい。この幅が大きいと、ノイズ指紋の隆線及び隆線溝の両方が参照領域に含まれるため、曲線縞模様ノイズを適切に除去することが難しくなるが、参照領域の幅が2画素分の幅より大きい場合であっても本発明の目的を達成することが可能である。
【0050】
図11は、ノイズ領域31において画像強調処理を行った結果を示す。図11と図6を比較すると、画像強調処理により、ノイズ指紋の隆線がほぼ消失し、注目指紋の隆線が強調されていることがわかる。なお、図11では、ノイズ領域外32において画像強調処理は行われていない。
【0051】
次に、ステップS6において、画像合成部29は、処理後ノイズ領域データ及び処理後ノイズ領域外データに基づいて、合成画像を示す合成画像データを生成する。合成画像は、ステップS4における画像強調処理後の濃度値を持つノイズ領域外32と、ステップS5における画像強調処理後の濃度値を持つノイズ領域31とを含み、ノイズ領域31及びノイズ領域外32の境界においてスムーズ処理が行われている。
【0052】
図12は、合成画像を示す。図から明らかなように、曲線縞模様ノイズが適切に除去され、注目指紋の隆線が強調されている。
【0053】
ステップS4における画像強調処理と、ステップS5における画像強調処理とを同等の処理とすることで、ノイズ領域31とノイズ領域外32とで濃度強調の強さ(ダイナミックレンジ等)を同等にでき、より自然な合成画像を生成することができる。例えば、ステップS4における画像強調処理が局所的ヒストグラム均等化法に基づく場合には、ステップS5における画像強調処理も局所的ヒストグラム均等化法に基づく。又は、ステップS4における画像強調処理が局所的コントラストストレッチ法に基づく場合には、ステップS5における画像強調処理も局所的コントラストストレッチ法に基づく。さらに、ステップS4における参照領域の最大幅とステップS5における参照領域の最大幅を一致させることがより好ましい。より具体的には、ステップS4における円形の参照領域の直径とステップS5における帯状の参照領域の長さとを一致させる。
【0054】
次に、ステップS7において、代表線データ及び領域データ生成部23は、図12に示される合成画像や、図8A及び図8Bに示される曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果をデータ表示部24に表示させ、オペレータに画像処理が妥当であるかの判定を促す。妥当でないと判定された場合、代表線30やノイズ領域31の追加や修正のためにステップS2に戻る。ステップS2〜ステップS6は、オペレータが妥当であると判定するまで繰り返される。オペレータが妥当であると判定した場合、ステップS8に進む。
【0055】
ステップS8において、データ処理制御部21は、合成画像データを画像出力部13、照合装置14、又は特徴抽出装置(不図示)に出力する。画像出力部13は、合成画像データに基づいて、図12の合成画像を表示し、又は、印刷する。照合装置14は、合成画像データを指紋の照合に用いる。特徴抽出装置は、合成画像データに基づいて、合成画像から特徴量を抽出する。
【0056】
本実施形態によれば、遺留指紋画像において、曲線縞模様ノイズが除去され、注目指紋の隆線が強調される。したがって、鑑定官による鑑定が容易になる。また、注目指紋の特徴量の抽出が適切に行われるため、特徴量を用いた指紋照合精度が向上する。
【0057】
(第2の実施形態)
図13Aは、第1の実施形態に係る画像処理方法を図4Bに示された指紋画像に適用した処理結果を示す。図13Aを見ると、かすれノイズが除去され、注目指紋の隆線が強調されていることがわかる。しかし、楕円形の破線枠で囲まれた領域に注目すると、濃く表示された領域が残っており、ノイズ除去が不十分であることがわかる。この原因は、黒い部分の近傍に白い部分が存在するノイズのために、注目指紋の隆線を強調できなくなるためである。
【0058】
以下、本発明の第2の実施形態に係る画像処理方法を説明する。第2の実施形態に係る画像処理方法は、このようなノイズを持った指紋画像の画像処理に好適である。
【0059】
第2の実施形態に係る画像処理方法は、画像処理装置10によって実行され、ステップS5を除いて、第1の実施形態に係る画像処理方法と同じである。
【0060】
本実施形態に係るステップS5において、方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31において濃度を強調する画像強調処理を実行し、画像処理後のノイズ領域31を示す処理後ノイズ領域データを生成する。方向利用画像強調部28は、第1の実施形態の場合と同様に、方向分布データに基づいて、ノイズ領域31の各画素について、その画素を含む局所領域としての参照領域をノイズ領域31に含まれるように決定する。その結果、ノイズ領域31内の各画素について、その画素を含むような複数参照領域が存在する。方向利用画像強調部28は、複数参照領域の複数濃度ヒストグラムに基づいて、その画素のステップS5の画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算する。詳細に説明すると、方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31の各画素について、その画素を中心とする局所領域を参照領域として決定する。ノイズ領域31内のある画素Xに着目すると、画素Xを中心とする局所領域として決定された参照領域は画素Xを含み、ノイズ領域31内の残りの画素を中心とする局所領域として決定された参照領域の中にも画素Xを含むものが存在する。方向利用画像強調部28は、画素Xを含む参照領域の全てに基づいて、第1画素の処理後濃度値を計算する。
【0061】
特開2008−52602号公報に開示された方法を、複数参照領域の複数濃度ヒストグラムに基づく処理後濃度値の計算に利用することが可能である。複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、その画素について複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在する。方向利用画像強調部28は、複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、その画素のステップS5の画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、その画素におけるステップS5の画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から処理後濃度値を計算する。
【0062】
局所最大値がPmaxで表され、局所最小値がPminで表され、濃度範囲の最小値がTminで表され、濃度範囲の最大値がTmaxで表され、処理前濃度値がGbで表され、処理後濃度値がGaで表される場合、上述の線形変換は、下記式で与えられる。
【数1】

例えば、指紋画像データのデータ形式が、指紋画像に含まれる各画素が0〜255までの256階調の濃度値のいずれかを持つように定義されている場合、ノイズ領域31内の全ての画素について濃度範囲の最小値は0であり、濃度範囲の最大値は255である。
【0063】
例えば、方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31内の第1画素の位置としての第1位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向に基づいて、第1画素を含む局所領域としての第1参照領域をノイズ領域31に含まれるように決定し、ノイズ領域31内の第2画素の位置としての第2位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第2方向に基づいて、第2画素を含む局所領域としての第2参照領域をノイズ領域31に含まれるように決定する。ここで、第2参照領域は、第1画素を含む。方向利用画像強調部28は、第1参照領域の第1濃度ヒストグラムにおける最大濃度値及び第2参照領域の第2濃度ヒストグラムにおける最大濃度値の小さい方としての局所最大値と第1濃度ヒストグラムにおける最小濃度値及び第2濃度ヒストグラムにおける最小濃度値の大きい方としての局所最小値とを用いた上述の線形変換により、第1画素のステップS5の画像強調処理後の濃度値としての第1処理後濃度値が上述の濃度範囲に含まれるように、第1画素におけるステップS5の画像処理前の濃度値としての第1処理前濃度値から第1処理後濃度値を計算する。
【0064】
図13Bは、本実施形態に係る画像処理方法を図4Bに示された指紋画像に適用した処理結果を示す。図13Bにおいては、図13Aにおいて楕円形の破線枠で囲まれた領域に対応する領域においても、ノイズが適切に除去され、注目指紋の隆線が強調されている。
【0065】
(第3の実施形態)
図14Aは、大きな曲率を持つ曲線縞模様ノイズを含む指紋画像を示す。図14Aの指紋画像は、図14Bに示す指紋画像に同心円状の曲線縞模様ノイズを人工的に付加したものである。図14Cは、第1の実施形態に係る画像処理方法を図14Aの指紋画像に適用した処理結果を示す。図14Cを見ると、曲線縞模様ノイズの曲率が大きい領域(図の左上領域)において、ノイズ除去が不十分であることがわかる。
【0066】
以下、本発明の第3の実施形態に係る画像処理方法を説明する。第3の実施形態に係る画像処理方法は、このような曲率の大きな曲線縞模様ノイズを含む指紋画像の画像処理に好適である。
【0067】
第3の実施形態に係る画像処理方法は、画像処理装置10によって実行され、ステップS5を除いて、第1の実施形態に係る画像処理方法と同じである。
【0068】
本実施形態に係るステップS3において、方向推定部26は、図14Aの指紋画像に含まれる曲線縞模様ノイズの方向分布を推定し、曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データを生成する。図15Aは、図14Aの指紋画像に重ねて表示された曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果を示す。
【0069】
本実施形態に係るステップS5において、方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31において濃度を強調する画像強調処理を実行し、画像処理後のノイズ領域31を示す処理後ノイズ領域データを生成する。方向利用画像強調部28は、方向分布データに基づいて、ノイズ領域31の各画素について、その画素を含む局所領域としての参照領域をノイズ領域31に含まれるように決定する。方向利用画像強調部28は、ノイズ領域31の各画素について、その画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に基づいて参照領域を決定する。参照領域は、曲線縞模様ノイズに含まれる曲線に沿って曲がった形状の帯状領域となるように決定される。方向利用画像強調部28は、参照領域の濃度ヒストグラムに基づいてその画素の画像強調処理後の濃度値を計算する。
【0070】
特開2007−226746号公報に開示された方法を、曲線縞模様ノイズに含まれる曲線に沿って曲がった形状を有する参照領域の決定に利用することが可能である。
【0071】
図15Bを参照して、参照領域を決定する方法を説明する。図15Bにおいては、曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果が、各画素がその画素の位置における曲線縞模様ノイズの方向に対応した濃度をとることで示されている。方向利用画像強調部28は、画像強調処理後の濃度値を計算すべき画素(例えば、注目画素40又は50)としての第1画素を参照領域に含まれる画素として決定し、第1画素の位置としての第1位置と、第1位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向とに基づいて、第1画素から第1方向の一方側にN番目(Nは自然数)の画素としての第2画素を検出する。方向利用画像強調部28は、第2画素の位置としての第2位置と、第2位置における曲線縞模様ノイズの方向としての第2方向とに基づいて、第2画素から第2方向の一方側にN番目の画素としての第3画素と、第2画素から第2方向の他方側にN番目の画素としての第4画素とを検出する。方向利用画像強調部28は、第3画素及び第4画素から2つ前の画素としての第1画素と第3画素との距離と、第1画素と第4画素との距離を比較し、第3画素及び第4画素のうち第1画素から遠い方の画素を参照領域に含まれる画素として決定する。方向利用画像強調部28は、第1画素と遠い方の画素の間の画素を参照領域に含まれる画素として決定する。方向利用画像強調部28は、上述の処理を繰り返すことで参照領域の第1画素から第1方向の一方側に延びる部分を決定し、同様にして、参照領域の第1画素から第1方向の他方側に延びる部分を決定する。
【0072】
この結果、注目画素40について参照領域41が決定され、注目画素50について参照領域51が決定される。図15A及び図15Bを比較すると、参照領域41及び参照領域51が曲線縞模様ノイズに含まれる曲線に沿って曲がった形状を有していることが分かる。
【0073】
図15Cは、本実施形態に係る画像処理方法を図14Aに示された指紋画像に適用した処理結果を示す。図15Cと図14Cの比較から明らかなように、本実施形態によれば参照領域の形状が曲線縞模様ノイズに更に良く適合するため、曲線縞模様ノイズの曲率が大きい領域(図の左上領域)におけるノイズ除去が向上する。
【0074】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る画像処理方法は、第2の実施形態に係る画像処理方法と第3の実施形態に係る画像処理方法とを組み合わせることにより提供される。第4の実施形態に係る画像処理方法においては、曲がった形状を有する複数の参照領域に基づいて濃度値が計算される。
【0075】
図16は、第4の実施形態に係る画像処理方法を図14Aに示された指紋画像に適用した処理結果を示す。図16と図15Cの比較から明らかなように、本実施形態によれば、ノイズ除去性能が更に向上する。
【0076】
以上、画像処理の対象が指紋画像である場合について説明したが、画像処理の対象は、掌紋画像のような他の曲線縞模様画像であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置のハードウエア構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図である。
【図3】図3は、第1の実施形態に係る画像処理方法のフローチャートである。
【図4A】図4Aは、ノイズ指紋を含む指紋画像である。
【図4B】図4Bは、かすれノイズを含む指紋画像である。
【図5】図5は、図4Aの指紋画像に対して設定された代表線を示す。
【図6】図6は、図4Aの指紋画像に対して設定されたノイズ領域を示す。
【図7】図7は、方向のコード化例を示す。
【図8A】図8Aは、線分を用いて表されたノイズ指紋の方向分布の推定結果を代表線に重ねて示す。
【図8B】図8Bは、ノイズ指紋の方向分布の推定結果を図4Aの指紋画像に重ねて示す。
【図9】図9は、濃淡を用いて表されたノイズ指紋の方向分布の推定結果を示す。
【図10】図10は、通常画像強調処理後のノイズ領域外を示す。
【図11】図11は、方向利用画像強調処理後のノイズ領域を示す。
【図12】図12は、通常画像強調処理後のノイズ領域外と方向利用画像強調処理後のノイズ領域とから合成された合成画像を示す。
【図13A】図13Aは、図4Bの指紋画像に対して第1の実施形態に係る画像処理方法を適用して得られた合成画像を示す。
【図13B】図13Bは、図4Bの指紋画像に対して本発明の第2の実施形態に係る画像処理方法を適用して得られた合成画像を示す。
【図14A】図14Aは、同心円状の曲線縞模様ノイズが人工的に付加された指紋画像を示す。
【図14B】図14Bは、同心円状の曲線縞模様ノイズが人工的に付加される前の指紋画像を示す。
【図14C】図14Cは、図14Aの指紋画像に対して第1の実施形態に係る画像処理方法を適用して得られた合成画像を示す。
【図15A】図15Aは、線分を用いて表された同心円状の曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果を図14Aの指紋画像に重ねて示す。
【図15B】図15Bは、本発明の第3の実施形態に係る画像処理方法において決定された参照領域を同心円状の曲線縞模様ノイズの方向分布の推定結果に重ねて示す。
【図15C】図15Cは、図14Aの指紋画像に対して第3の実施形態に係る画像処理方法を適用して得られた合成画像を示す。
【図16】図16は、図14Aの指紋画像に対して第4の実施形態に係る画像処理方法を適用して得られた合成画像を示す。
【符号の説明】
【0078】
10…画像処理装置
1…データ処理装置
2…CPU
3…記憶装置
4…バス
5…画像入力装置
6…表示装置
7…プリンタ
8…データ入力装置
11…画像入力部
12…画像処理部
13…画像出力部
14…照合装置
21…データ処理制御部
22…データ記憶部
23…代表線データ及び領域データ生成部
24…データ表示部
25…データ入力部
26…方向推定部
27…通常画像強調部
28…方向利用画像強調部
29…画像合成部
30…代表線
31…ノイズ領域
31a…輪郭線
32…ノイズ領域外
40、50…注目画素
41、51…参照領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、前記曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納するデータ記憶部と、
前記第1領域において第1画像強調処理を実行する第1画像強調部と
を具備し、
前記方向分布データは、前記第1領域内の第1画素の位置としての第1位置と、前記第1位置における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向とを関連付け、
前記第1画像強調部は、
前記第1方向に基づいて、前記第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を前記第1領域に含まれるように決定し、
前記第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、前記第1画素における前記第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算する
画像処理装置。
【請求項2】
データ生成部と、
方向推定部と
を更に具備し、
前記データ生成部は、入力操作に基づいて、前記第1領域を示す第1領域データと前記曲線縞模様ノイズの代表線を示す代表線データとを生成し、
前記方向推定部は、前記第1領域データ及び前記代表線データに基づいて、前記第1領域内の各画素の位置における前記曲線縞模様ノイズの方向の計算を実行し、前記計算の結果に基づいて前記方向分布データを生成する
請求項1の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1画像強調部は、前記第1領域内の第2画素の位置としての第2位置における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第2方向に基づいて、前記第2画素を含む局所領域としての第2参照領域を前記第1領域に含まれるように決定し、
前記第1画素は、前記第2参照領域に含まれ、
前記第1画像強調部は、前記第1濃度ヒストグラムにおける最大濃度値及び前記第2参照領域の第2濃度ヒストグラムにおける最大濃度値の小さい方としての局所最大値と前記第1濃度ヒストグラムにおける最小濃度値及び前記第2濃度ヒストグラムにおける最小濃度値の大きい方としての局所最小値とを用いた線形変換により、前記処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、前記第1画素における前記画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から前記処理後濃度値を計算する
請求項1又は2の画像処理装置。
【請求項4】
前記局所最大値がPmaxで表され、
前記局所最小値がPminで表され、
前記濃度範囲の最小値がTminで表され、
前記濃度範囲の最大値がTmaxで表され、
前記処理前濃度値がGbで表され、
前記処理後濃度値がGaで表され、
前記第1画像強調部は、下記式に基づいて前記処理後濃度値を計算する
Ga=(Gb−Pmin)(Tmax−Tmin)/(Pmax−Pmin)+Tmin
請求項3の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1画像強調部は、前記曲線縞模様ノイズに含まれる曲線に沿って曲がった形状を有するように前記第1参照領域を決定する
請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1画像強調部は、前記第1位置及び前記第1方向に基づいて前記第1領域に含まれる第3画素を検出し、前記第3画素の位置としての第3位置と前記第3画素における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第3方向とに基づいて前記第1領域に含まれる第4画素を検出し、前記第4画素が含まれるように前記第1参照領域を決定する
請求項5の画像処理装置。
【請求項7】
前記曲線縞模様画像の前記第1領域以外の部分としての第2領域において第2画像強調処理を実行する第2画像強調部を更に具備し、
前記第2画像強調部は、
前記第2領域内の第2画素を含む局所領域としての第2参照領域を前記第2領域に含まれるように決定し、
前記第2参照領域の第2濃度ヒストグラムに基づいて、前記第2画素における前記第2画像強調処理後の濃度値を計算し、
前記第1画像強調処理は、局所的ヒストグラム均等化法及び局所的コントラストストレッチ法の一方に基づき、
前記第2画像強調処理は、前記一方に基づき、
前記第1参照領域及び前記第2参照領域は、最大幅が一致するように決定される
請求項1又は2の画像処理装置。
【請求項8】
濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、前記曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納するデータ記憶部と、
前記第1領域において第1画像強調処理を実行する第1画像強調部と
を具備し、
前記第1画像強調部は、前記第1領域内の各画素について、前記画素の位置における前記曲線縞模様ノイズの方向に基づいて前記画素を含む局所領域としての参照領域を前記第1領域に含まれるように決定することで、前記第1領域内の第1画素を含む複数参照領域を決定し、
前記複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、前記第1画素に関して複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在し、
前記第1画像強調部は、前記複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、前記複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、前記第1画素の前記第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、前記第1画素における前記画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から前記処理後濃度値を計算する
画像処理装置。
【請求項9】
濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、前記曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納するデータ記憶手段と、
前記第1領域において第1画像強調処理を実行する第1画像強調手段と
を具備し、
前記方向分布データは、前記第1領域内の第1画素の位置としての第1位置と、前記第1位置における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向とを関連付け、
前記第1画像強調手段は、
前記第1方向に基づいて、前記第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を前記第1領域に含まれるように決定し、
前記第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、前記第1画素における前記第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算する
画像処理装置。
【請求項10】
濃淡画像としての曲線縞模様画像の画像データと、前記曲線縞模様画像の第1領域に存在する曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データとを格納するデータ記憶手段と、
前記第1領域において第1画像強調処理を実行する第1画像強調手段と
を具備し、
前記第1画像強調手段は、前記第1領域内の各画素について、前記画素の位置における前記曲線縞模様ノイズの方向に基づいて前記画素を含む局所領域としての参照領域を前記第1領域に含まれるように決定することで、前記第1領域内の第1画素を含む複数参照領域を決定し、
前記複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、前記第1画素に関して複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在し、
前記第1画像強調手段は、前記複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、前記複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、前記第1画素の前記第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、前記第1画素における前記画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から前記処理後濃度値を計算する
画像処理装置。
【請求項11】
濃淡画像としての曲線縞模様画像の第1領域において第1画像強調処理を実行するステップを具備し、
前記第1領域に曲線縞模様ノイズが存在し、
前記第1画像強調処理を実行するステップは、
前記第1領域内の第1画素の位置としての第1位置における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第1方向に基づいて、前記第1画素を含む局所領域としての第1参照領域を前記第1領域に含まれるように決定するステップと、
前記第1参照領域の第1濃度ヒストグラムに基づいて、前記第1画素における前記第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算するステップと
を備える
画像処理方法。
【請求項12】
前記曲線縞模様ノイズの方向分布を示す方向分布データを生成するステップを更に具備し、
前記方向分布データは、前記第1位置と前記第1方向とを関連付け、
前記方向分布データを生成するステップは、
オペレータの入力操作に基づいて、前記第1領域を示す第1領域データと前記曲線縞模様ノイズの代表線を示す代表線データとを生成するステップと、
前記第1領域データ及び前記代表線データに基づいて、前記第1領域内の各画素の位置における前記曲線縞模様ノイズの方向を計算するステップと
を備える
請求項11の画像処理方法。
【請求項13】
前記第1画像強調処理を実行するステップは、
前記第1領域内の第2画素の位置としての第2位置における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第2方向に基づいて、前記第2画素を含む局所領域としての第2参照領域を前記第1領域に含まれるように決定するステップを備え、
前記第1画素は、前記第2参照領域に含まれ、
前記処理後濃度値を計算するステップにおいて、前記第1濃度ヒストグラムにおける最大濃度値及び前記第2参照領域の第2濃度ヒストグラムにおける最大濃度値の小さい方としての局所最大値と前記第1濃度ヒストグラムにおける最小濃度値及び前記第2濃度ヒストグラムにおける最小濃度値の大きい方としての局所最小値とを用いた線形変換により、前記処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、前記第1画素における前記画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から前記処理後濃度値を計算する
請求項11又は12の画像処理方法。
【請求項14】
前記局所最大値がPmaxで表され、
前記局所最小値がPminで表され、
前記濃度範囲の最小値がTminで表され、
前記濃度範囲の最大値がTmaxで表され、
前記処理前濃度値がGbで表され、
前記処理後濃度値がGaで表され、
前記処理後濃度値を計算するステップにおいて、
前記処理後濃度値は下記式に基づいて計算される
Ga=(Gb−Pmin)(Tmax−Tmin)/(Pmax−Pmin)+Tmin
請求項13の画像処理方法。
【請求項15】
前記第1参照領域を決定するステップにおいて、
前記第1参照領域は、前記曲線縞模様ノイズに含まれる曲線に沿って曲がった形状を有するように決定される
請求項11乃至14のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項16】
前記第1参照領域を決定するステップは、
前記第1位置及び前記第1方向に基づいて、前記第1領域に含まれる第3画素を検出するステップと、
前記第3画素の位置としての第3位置と、前記第3画素における前記曲線縞模様ノイズの方向としての第3方向とに基づいて、前記第1領域に含まれる第4画素を検出するステップと
を備え、
前記第1参照領域は、前記第4画素を含むように決定される
請求項15の画像処理方法。
【請求項17】
前記曲線縞模様画像の前記第1領域以外の部分としての第2領域において第2画像強調処理を実行するステップを更に具備し、
前記第2画像強調処理を実行するステップは、
前記第2領域内の第2画素を含む局所領域としての第2参照領域を前記第2領域に含まれるように決定するステップと、
前記第2参照領域の第2濃度ヒストグラムに基づいて、前記第2画素における前記第2画像強調処理後の濃度値を計算するステップと
を備え、
前記第1画像強調処理は、局所的ヒストグラム均等化法及び局所的コントラストストレッチ法の一方に基づき、
前記第2画像強調処理は、前記一方に基づき、
前記第1参照領域及び前記第2参照領域は、最大幅が一致するように決定される
請求項11又は12の画像処理方法。
【請求項18】
濃淡画像としての曲線縞模様画像の第1領域において第1画像強調処理を実行するステップを具備し、
前記第1領域に曲線縞模様ノイズが存在し、
前記第1画像強調処理を実行するステップは、
前記第1領域内の各画素について、前記画素の位置における前記曲線縞模様ノイズの方向に基づいて前記画素を含む局所領域としての参照領域を前記第1領域に含まれるように決定することで、前記第1領域内の第1画素を含む複数参照領域を決定するステップと、
前記第1画素の前記第1画像強調処理後の濃度値としての処理後濃度値を計算するステップと
を備え、
前記複数参照領域の複数濃度ヒストグラムの各々に最大濃度値及び最小濃度値が存在するため、前記第1画素に関して複数最大濃度値及び複数最小濃度値が存在し、
前記処理後濃度値を計算するステップにおいて、
前記複数最大濃度値のうちで最小のものとしての局所最大値と、前記複数最小濃度値のうちで最大のものとしての局所最小値とを用いた線形変換により、前記処理後濃度値が所定の濃度範囲に含まれるように、前記第1画素における前記画像処理前の濃度値としての処理前濃度値から前記処理後濃度値を計算する
画像処理方法。
【請求項19】
請求項11乃至18のいずれかに記載の画像処理方法をコンピュータに実行させる
プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−223562(P2009−223562A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66555(P2008−66555)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】