説明

画像処理装置

【課題】テレビカメラ等から入力される映像信号により取り込まれる撮影画像を画像処理用の解像度及び画面サイズの画像に変換して内部のメモリに取り込む際に、画像処理に不要な範囲の画像データを削除することにより、その際の処理速度の高速化を図り、また、メモリ容量の低減を図る画像処理装置を提供する。
【解決手段】テレビカメラから画像処理装置16に入力されたHD画質の映像信号(HD信号)は、デコーダ40によりSD画質の画像として読み込まれる。その際に、SD画質の画像内の上下に例えば黒一色のブランク領域が形成される。PLD41はそのブランク領域を含む、画像処理に不要な範囲の画像データを削除し、残りの部分の画像データをRAM46に展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置に係り、特にテレビカメラ等からの映像信号を所定の画像処理に適した解像度及び画面サイズに変換して取り込む画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビカメラに外付けの装置として接続され、テレビカメラにより撮影された映像の映像信号を取り込み、所要の画像処理を実施して、例えば、テレビカメラでのオートフォーカス(AF)の対象範囲であるAF枠による所定被写体の自動追尾、テレビカメラを支持する雲台のパン/チルト駆動による所定被写体の自動追尾、テレビカメラの撮影映像に画像処理の結果を重畳表示させた映像のビューファインダへの出力等の付加的な機能を提供する画像処理装置が使用されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年では、テレビカメラとしてハイビジョンテレビカメラが使用されることが多くなっており、ハイビジョンテレビカメラから出力される映像信号はHD(高精細)画質(解像度1920×1080)の映像に対応したHD映像信号(HD信号)となっている。
【0004】
一方、上記のような画像処理装置では、処理速度やコストパフォーマンスの点から、通常、SD画質(解像度640×480)の画像の画像データに対して所要の画像処理を行うのが一般的である。
【0005】
そのため、上記のようにSD画質の画像に対して画像処理を行う画像処理装置をハイビジョンテレビカメラに使用する場合、画像処理装置では、テレビカメラからのHD画質の映像信号をSD画質の解像度及び画面サイズに変換し、SD画質の画像として取り込む処理が行われている。
【特許文献1】特開2006−267220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、HD信号により取り込まれるフレーム単位の画像(撮影画像)は、解像度が1920×1080で、アスペクト比が16:9の画面サイズとなっている。一方、SD画質の撮影画像は、解像度が640×480で、アスペクト比が4:3の画面サイズとなっている。そのため、上記のようにHD信号からSD画質の撮影画像を取り込む際には、アスペクト比16:9のHD画質の撮影画像の全範囲がアスペクト比4:3の画面サイズの範囲内に収まるように、HD画質の撮影画像の横方向の解像度1920がSD画質の横方向の解像度640に変換される。
【0007】
一方、HD画質の撮影画像の縦方向の解像度は、アスペクト比が16:9を維持するようにSD画質の縦方向の解像度480よりも小さい解像度360(640×9/16)に変換される。
【0008】
そのため、HD信号からSD画質の撮影画像を取り込む場合には、上下部分に撮影画像ではない帯状のブランク領域の画像が含まれることになる。
【0009】
このように、HD信号からSD画質の撮影画像を取り込む場合に生じるブランク領域の画像は、例えば黒一色の画像の画像データとして扱われるため、画像処理を行うために内部のメモリに撮影画像の画像データを取り込む際には、その分の不要な処理時間やメモリ領域を費やしてしまうという問題があった。
【0010】
また、テレビカメラからのHD信号により得られる撮影画像の一部の範囲が、画像処理装置での画像処理の対象に含まれない場合がある。
【0011】
例えば、テレビカメラに搭載されるオートフォーカス(AF)装置において、記録/再生用の映像を撮影するためのカメラ本体内の撮像素子(映像用撮像素子)と同等の撮影画角範囲の映像をその映像用撮像素子とは別のオートフォーカス用の撮像素子(AF用撮像素子)により撮影し、その映像信号に基づいて例えばコントラスト方式のAFを行うものが知られている。このようなオートフォーカス装置に使用されるAF用撮像素子には、カメラ本体の映像用撮像素子がHD画質の画像を撮像するものであっても、アスペクト比4:3の画面サイズ(イメージサイズ)のSD画質の画像を撮像するものが使用される場合がある。
【0012】
一方、上記のような画像処理装置の一例として、AFによりピントを合わせる対象範囲、即ち、AF枠(AFエリア)を、所望の被写体に自動で追尾させる自動追尾装置が提案されている。この種の自動追尾装置によれば、テレビカメラの映像用撮像素子により撮影されている映像の映像信号が取得され、その映像信号に基づいて、撮影映像内における追尾対象の被写体が所定の画像処理(パターンマッチング、顔検出等)により検出される。そして、その被写体を追尾するようにAF枠の位置等が自動で決定され、テレビレンズのオートフォーカス装置にそのAF枠を設定する指示が与えられるようになっている。
【0013】
このようなシステムにおいてカメラ本体の映像用撮像素子がHD画質の画像を撮像するもので、AF用撮像素子がSD画質の画像を撮像するものであったとする。そして、光学系により被写体像が結像される範囲、即ち、イメージサークルに対して、映像用撮像素子とAF用撮像素子の各々が撮像する領域(イメージサイズ)が、イメージサークルに内接するアスペクト比16:9の四角形領域と、アスペクト比4:3の四角形領域であるとする。このとき、映像用撮像素子により得られたHD画質の撮影画像の左右の一部の範囲は、AF用撮像素子では撮影されない範囲となり、AF枠を設定できない範囲となる。
【0014】
そのため、自動追尾装置において、テレビカメラからのHD信号により得られる撮影画像に基づいて追尾対象の被写体の位置を検出する場合に、撮影画像内においてAF枠を設定できない左右の一部の範囲は画像処理の対象範囲に含まれない。
【0015】
このようにテレビカメラからのHD信号により得られる撮影画像の一部の範囲が、画像処理装置での画像処理の対象に含まれていない場合において、画像処理装置では、その範囲の画像データも内部のメモリに取り込むことになるため、その分の不要な処理時間やメモリ領域を費やしてしまうという問題があった。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、テレビカメラ等から入力される映像信号により取り込まれる撮影画像を画像処理用の解像度及び画面サイズの画像に変換して内部のメモリに取り込む際の処理速度の高速化を図り、また、メモリ容量の低減を図ることにより、画像処理を含めた全体処理の速度向上と、コスト低減を図ることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の画像処理装置は、入力される映像信号によりフレーム単位の撮影画像の画像データを取り込み、該画像データに所要の画像処理を施す画像処理装置において、前記映像信号によりフレーム単位の撮影画像の画像データを取り込むと共に、前記撮影画像と異なる解像度及び画面サイズの処理画像であって、該撮影画像の全範囲を含み、且つ、該撮影画像でないブランク領域の画像が付加された処理画像に前記撮影画像を変換する変換手段と、前記処理画像のうち、少なくとも前記ブランク領域の画像の画像データを削除するカット手段と、前記カット手段により少なくともブランク領域の画像の画像データが削除された前記処理画像の画像データを前記画像処理の対象として画像処理用のメモリに記憶させる記憶手段と、を備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の画像処理装置は、請求項1に記載の発明において、前記カット手段は、前記撮影画像の撮影画角範囲のうち、前記画像処理の対象ではない範囲の画像の画像データも前記処理画像の画像データから削除することを特徴としている。
【0019】
請求項3に記載の画像処理装置は、請求項2に記載の発明において、前記画像処理装置は、オートフォーカスにより自動でピントを合わせる被写体の範囲を示すAF枠を、所定の被写体に自動で追尾させるための画像処理を行う装置であり、前記カット手段は、前記撮影画像の撮影画角範囲のうち、前記オートフォーカスによりピントを合わせることが可能な画角範囲を、前記画像処理が対象とする撮影画角範囲とし、該撮影画角範囲外の前記処理画像の画像データを削除することを特徴としている。
【0020】
請求項4に記載の画像処理装置は、請求項1、2、又は、3に記載の発明において、前記入力される映像信号は、HD画質であり、前記変換手段により変換される処理画像はSD画質であることを特徴としている。
【0021】
請求項5に記載の画像処理装置は、請求項1、2、3、又は、4に記載の発明において、前記映像信号は、テレビカメラにより現在撮影されている映像の映像信号であることを特徴としている。
【0022】
本発明によれば、テレビカメラ等から入力された映像信号により取り込んだフレーム単位の撮影画像を異なる解像度及び画面サイズの処理画像に変換して画像処理を施す場合に、少なくとも、その処理画像に含まれるブランク領域等の不要範囲の画像の画像データが削除されてからメモリに記憶されるため、画像データをメモリに取り込む際の処理速度の高速化とメモリ容量の低減が図られる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、テレビカメラ等から入力される映像信号により取り込まれる撮影画像を画像処理用の解像度及び画面サイズの画像に変換して内部のメモリに取り込む際の処理速度の高速化と、メモリ容量の低減が図られる。従って、画像処理を含めた全体処理の速度向上と、コスト低減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る画像処理装置を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る画像処理装置としての追尾装置が使用されたカメラシステムの一実施の形態を示す概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態のカメラシステム1は、例えば放送用又は業務用のテレビカメラのカメラ本体10(カメラヘッド)と、カメラ本体10にマウントによって装着される撮影レンズ12(撮影光学系)と、カメラ本体10に設置された構図の確認等のためのビューファインダ(モニタ)14、及び、オートフォーカス(AF)によりピントを合わせる対象被写体の撮影画像(撮影画面)上での移動に合わせてAFの対象範囲であるAFエリア(AF枠)の位置を自動で変更(自動追尾)する画像処理装置(追尾装置)16とから構成されている。
【0027】
撮影レンズ12には、光軸Oに沿った本線光路においてフォーカスレンズ(群)FL、ズームレンズ(群)ZL、絞りI、前側リレーレンズ(群)RA及び後側リレーレンズ(群)RBからなるリレーレンズ(リレー光学系)等が順に配置されている。フォーカスレンズFLやズームレンズZLは光軸方向に移動可能なレンズ群であり、フォーカスレンズFLが移動するとピント位置(被写体距離)が変化し、ズームレンズZLが移動するとズーム倍率(焦点距離)が変化するようになっている。絞りIは、開閉動作し、絞りIの開閉度によって像の明るさが変化するようになっている。撮影レンズ12に入射してこれらの本線光路の光学系を通過した被写体光はカメラ本体10の光学系に入射する。
【0028】
カメラ本体10の光学系は、色分解光学系18と映像用撮像素子(CCD)20を備えている。色分解光学系18は、撮影レンズ12から入射した被写体光を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の波長に分解するものであり、映像用撮像素子20は、この色分解された各色の被写体光の像を撮像するR、G、Bごとの映像用撮像素子(CCD)からなっている。なお、図1においては光学的に等価な光路長の位置に配置されたR、G、Bの映像用撮像素子を1つの映像用撮像素子20として表している。映像用撮像素子20の撮像面に入射した被写体光は、映像用撮像素子20によって光電変換されてカメラ本体10内の所定の信号処理回路によって記録又は再生用の映像信号が生成されるようになっている。
【0029】
また、本実施の形態の撮影レンズ12は、いわゆる光路長差方式のオートフォーカス(AF)に対応した構成を有しており、撮影レンズ12のリレー光学系の前側リレーレンズRAと後側リレーレンズRBとの間には光分割光学系22が配置されている。光分割光学系22は、第1プリズム22aと第2プリズム22bとから構成されており、第1プリズム22aと第2プリズム22bとが接合する部分にハーフミラー面22Mが形成されている。このハーフミラー面22Mによって撮影レンズ12の本線光路からAF用光路が分岐される。
【0030】
撮影レンズ12に入射した被写体光のうち、光分割光学系22のハーフミラー面22Mを透過した被写体光は、本線用の被写体光としてそのまま光軸Oに沿った本線光路を通過してカメラ本体10へと導かれる。一方、光分割光学系22のハーフミラー面22Mで反射した被写体光は、AF用の被写体光として上記光軸Oに略垂直な光軸O’に沿ったAF用光路へと導かれる。なお、ハーフミラー面22Mに入射した入射光に対してハーフミラー面22Mで分割される透過光と反射光の光量比は必ずしも等価(1対1)ではなく、例えばAF用の被写体光となる反射光の光量の方が透過光よりも少なくしてもよい。
【0031】
AF用光路には、縮小光学系やリレーレンズ群等からなる光学系24、第1プリズム26a及び第2プリズム26bからなる光分割光学系26、AF用撮像素子(CCD)28a、28b等が配置されている。
【0032】
本線光路に配置された光分割光学系22で分割されてAF用光路へと導かれた被写体光は、光学系24を通過した後、光分割光学系26に入射する。光分割光学系26に入射した被写体光は、第1プリズム26aと第2プリズム26bとが接合する部分のハーフミラー面26Mで光量が等価な2つの被写体光に分割され、ハーフミラー面26Mで反射した被写体光は一方のAF用撮像素子28aの撮像面に入射し、ハーフミラー面26Mを透過した被写体光は他方のAF用撮像素子28bの撮像面に入射する。
【0033】
また、撮影レンズ12には、オートフォーカス(AF)処理を実行するAF処理部30が設けられている。
【0034】
撮影レンズ12は、AF用撮像素子28a、28bの撮像面におけるイメージサークル(被写体像が結像される円形範囲)内の被写体像と、カメラ本体10の映像用撮像素子20の撮像面におけるイメージサークル内の被写体像とが略一致するように構成されている。即ち、これらの撮像素子によって撮影される撮影画角は略一致している。
【0035】
また、AF用撮像素子28a、28bの撮像面の各々に対してピントが合う被写体の距離は、映像用撮像素子20の撮像面に対してピントが合う被写体の距離に対して至近側と無限遠側にずれるように構成されている。即ち、AF用撮像素子28a、28bの撮像面は、光路長差を有する位置に配置されると共に、映像用撮像素子20の撮像面に対して光路長が微少量分だ長くなる位置と短くなる位置に配置されている。
【0036】
AF処理部30は、AF用撮像素子28a、28bから映像信号を取得し、その映像信号に基づいて被写体画像のコントラストの高低を示す焦点評価値を算出する。例えば、AF用撮像素子28a、28bから得られた映像信号の高域周波数成分の信号をハイパスフィルタによって抽出した後、その高域周波数成分の信号のうちAFの対象範囲であるAFエリアに対応する範囲の信号を1画面分ずつ積算する。このようにして1画面分ごとに得られる積算値はAF用撮像素子28a、28bの各々の撮像面により撮像されたAFエリア内の被写体画像のコントラストの高低を示す。
【0037】
このようにしてAF用撮像素子28a、28bの各々の映像信号により求められたこれらの焦点評価値は、撮影レンズ12のフォーカス(フォーカスレンズFL)を現在位置から至近側と無限遠側に一定微少量分だけ変位させたときに映像用撮像素子20の撮像面により撮像されるAFエリア内の被写体像のコントラストを示す焦点評価値に相当する。
【0038】
従って、それらの焦点評価値の大小関係により、ピント状態が、合焦状態、前ピン状態、後ピン状態のいずれであるかを判断することができる。図示しないフォーカスレンズFLの駆動部は、このピント状態に基づいて、合焦状態となる方向にフォーカスレンズFLをモータで移動させ、合焦状態となる位置にフォーカスレンズFLを設定するようになっている。尚、AF用撮像素子28a、28bの各々の映像信号により求められた焦点評価値が一致するときに合焦状態となるようにAF用撮像素子28a、28bの各々の撮像面の位置が配置されており、フォーカスレンズFLはそれらの焦点評価値が一致する位置に設定される。
【0039】
図2に、AFエリアの輪郭であるAF枠の例を示す。図2に示すように、AF枠は、カメラ本体10の映像用撮像素子20の撮影画像(撮像エリア)の範囲内において、四角形状の範囲を示す枠として設定され、この範囲内の被写体に対してAFによりピントが合わせられるようになっている。
【0040】
画像処理装置(追尾装置)16は、ユーザが指定した対象物(対象被写体)の画像を撮影画像の画面上で検出しながらその対象物の画面上での移動に合わせてAFエリア(その輪郭を示すAF枠)の位置を自動で変更(自動追尾)する自動追尾機能を実現するための装置である。尚、対象被写体の撮影画像内での位置、大きさ、形状に応じてAFエリアの位置、大きさ、形状(縦横比)も自動で変更することが可能であるが、本実施の形態では、AFエリアの位置のみが変更されるものとして説明する。
【0041】
上記AF処理部30において設定されるAFエリア(AF枠)の位置は、追尾装置16からの指示により設定、変更されるようになっており、追尾装置16では、図示しないマニュアル操作部によりユーザがAF枠の変更のためのマニュアル操作を行っている場合には、そのマニュアル操作に従ってAF枠の位置を決定し、その決定したAF枠の情報をAF処理部30に送信する。
【0042】
一方、ユーザがAF枠の変更のためのマニュアル操作を行っていない場合には、AF枠の自動追尾処理を行ってAF枠の位置を決定し、その決定したAF枠の情報をAF処理部30に送信する。
【0043】
AF処理部30では、追尾装置16から与えられたAF枠の情報に従ってAF枠が設定され、そのAF枠内の被写体にピントが合わせられるようになっている。
【0044】
また、追尾装置16には、カメラ本体10の映像用撮像素子20により撮影されている映像の映像信号がカメラ本体10から入力されるようになっており、上記の自動追尾処理は、その映像信号から映像用撮像素子20で撮像されたフレーム単位(1コマ単位)の撮影画像を適宜取り込み、所定の画像処理により、撮影画像の中から追尾する対象被写体を検出する。そして、その検出した対象被写体の位置に基づいて、AF枠の位置を決定し、対象被写体がAFによるピント合わせの対象となるようにAF枠を対象被写体に追尾させる。
【0045】
ここで、カメラ本体10から取り込んだ撮影画像の中から対象被写体を検出する周知の方法がいくつか知られており、上記の自動追尾処理では、それらの内の任意の方法が採用されているものとする。例えば、パターンマッチングを利用した方法として、対象被写体の画像が基準パターンとして自動追尾を開始する前に事前に登録しておき、順次取り込まれる撮影画像の中からその基準パターンを周知のパターンマッチング処理により検出することにより対象被写体を検出する方法が知られている。このとき、例えば、自動追尾を開始する直前のAF枠内、または、そのAF枠を基準とした一定範囲内の画像を基準パターンとして登録することや、事前に撮影した対象被写体の画像を基準パターンとして予め登録しておくことが可能である。
【0046】
また、対象被写体が人物の顔である場合には、周知の顔検出処理を利用する方法も知られている。例えば、順次得られる撮影画像の中に含まれる1又は複数の顔画像を顔検出処理により検出するものとし、初期においてユーザが追尾対象として選択した顔画像を対象被写体として検出する方法が知られている。更に、この顔検出処理において検出された顔画像の中から、事前に登録された特定の人物の顔画像を周知の顔認証処理により検出することによって、その特定の人物の顔画像を対象被写体として検出する方法も知られている。
【0047】
上記追尾装置16は、このように対象被写体の検出を所要の画像処理を用いて行うことによって対象被写体を追尾するためのAF枠の位置を決定する自動追尾処理を行っている。
【0048】
また、追尾装置16は、カメラ本体10から取り込んだ映像信号に対して、AF枠の情報を合成し、その合成した映像の映像信号をビューファインダ14に出力し、表示させるための処理も行っている。例えば、カメラ本体10から取り込んだ映像信号の映像(リアルタイムの撮影映像)に対して、現在設定されているAF枠の画像を重畳した映像を生成し、その合成映像の映像信号をビューファインダ14に出力する。これによって、ビューファインダ14の画面上には、構図の確認等のための現在撮影中の映像とともに、AFの対象範囲であるAF枠も図2のように表示される。
【0049】
図3は、上記の追尾装置のようにカメラシステムに使用される本発明に係る画像処理装置16の基本的な構成を示したブロック図である。同図に示すように画像処理装置16は、カメラ本体10からシリアルに入力される映像信号をフレーム単位(1コマ単位)の撮影画像の画像データとして展開(変換)するデコーダ40と、デコーダ40により展開された撮影画像の画像データのうち、詳細を後述するように画像処理の対象としない不要な部分をカット(切除)するためのPLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)41と、所要の画像処理を行うと共に、その処理結果の情報を撮影画像(カメラ本体10からの映像信号)に合成する処理等を行うCPU42と、この処理結果が合成された撮影画像をモニタ表示用の映像信号に変換して出力するエンコーダ44と、上記デコーダ40によって展開されてPLD41により処理された1フレーム分(又は所定フレーム数分)の撮影画像の画像データを格納するRAM46、及び、CPU42のプログラムデータ等が格納されたROM48等を備えている。
【0050】
デコーダ40には、カメラ本体10の映像用撮像素子20により撮像されて生成された映像信号(コンポジット信号)がシリアルに入力される。本実施の形態のカメラ本体10ではHD(高精細)画質の映像が撮影されており、デコーダ40には、HD画質の映像信号(HD信号)が入力される。デコーダ40は、このHD信号を輝度信号Yと色差信号Cr、Cbとに分解して、フレーム単位の撮影画像の画像データに展開する。
【0051】
また、本実施の形態の画像処理装置16は、SD(標準)画質程度の撮影画像に対して所要の画像処理を施すものとし、デコーダ40は、HD画質の撮影画像をSD画質に変換する。詳細は後述する。
【0052】
デコーダ40によりHD信号から得られた撮影画像の画像データは続いてPLD41に取り込まれ、PLD41は、本画像処理装置16における画像処理の対象でない範囲(不要範囲)の画像データをカットする処理を行う。このカット処理の詳細についても後述する。
【0053】
PLD41の処理により、不要範囲の画像データがカットされて画像処理に有効な範囲のみ抽出された画像データは、CPU42を介して、又は、直接、RAM46に送られ、一時的に格納される。CPU42は、RAM46の格納された画像データを使用して所要の情報を得るための画像処理を行う。
【0054】
上記のように自動追尾処理を行う場合には、撮影画像の中から対象被写体を検出するためのパターンマッチング処理、顔検出処理、又は、顔認証処理等の画像処理がRAM46に記憶された撮影画像の画像データを用いて行われる。
【0055】
画像処理の結果得られた情報は、CPU42において、文字、記号、図形等により表される画像データとして生成されると共に、その画像データとPLD41から1フレーム単位で順次読み込まれる撮影画像の画像データとにより、画像処理の結果を表す情報画像が撮影画像に合成(重畳)される。
【0056】
このようにして情報画像が合成された撮影画像は、順次、エンコーダ44に送られ、エンコーダ44において、その撮影画像をビューファインダ14に表示させるための映像信号に変換されてビューファインダ14に出力される。
【0057】
尚、画像処理装置16が上記の追尾装置の場合、自動追尾処理の結果決定されたAF枠の位置に、そのAF枠の画像(枠画像)が撮影画像に重畳され、その撮影画像を表示する映像信号がビューファインダ14に出力される。
【0058】
次に、上記PLD40の処理について詳説する。上記のように本実施の形態においてカメラ本体10からデコーダ40に入力される映像信号はHD(高詳細)画質のHD信号であるとする。一方、画像処理装置16において画像処理の対象とする画像はSD(通常)画質程度のものとする。
【0059】
デコーダ40は、カメラ本体10から入力されるHD信号の映像信号より得られるフレーム単位のHD画質の撮影画像を画像処理のためのSD画質の撮影画像(画像処理用の処理画像)に変換する。このとき、図4のように画面サイズが変更される。
【0060】
即ち、デコーダ40に入力されるHD信号から得られるHD画質の撮影画像のHD画面は、解像度が1920×1080で、アスペクト比が16:9の画面サイズ(イメージサイズ)である。一方、図4のSD画面62で示すSD画質の画像の画面は、解像度が640×480で、アスペクト比が4:3の画面サイズとなっている。
【0061】
そこで、デコーダ40は、HD画質の撮影画像の全範囲がSD画面62内の画像として収まるように、HD画質の撮影画像の横方向の解像度1920をSD画質の横方向の解像度640に変換する。また、アスペクト比16:9が維持されるように、HD画質の撮影画像の縦方向の解像度をSD画質の縦方向の解像度480よりも小さい解像度360(640×9/16)に変換する。
【0062】
従って、デコーダ40からは、解像度640×480で、アスペクト比が4:3の画面サイズのSD画質の画像データが出力されると共に、そのSD画面62内において、HD信号から得られるHD画質の撮影映像が、図4のように中央部の解像度680×360のHD画面60で示す範囲の画像データとして出力される。そして、そのHD画面60の範囲を除く、上下の各々の解像度680×60の範囲にブランク領域64、64の画像として例えば黒一色の画像の画像データが付加されて出力される。
【0063】
PLD41には、このようにしてデコーダ40により出力されたSD画質の処理画像の画像データが入力される。PLD41は、入力された処理画像の画像データに対してブランク領域64、64の画像データをカットする処理を行う。
【0064】
即ち、図4のSD画面62で示した構成の処理画像の画像データがPLD41に入力されると、その画像データのうち、上下のブランク領域64、64の画像データは画像処理のデータとしては不要な画像データとなる。そこで、PLD41は、そのブランク領域64、64の画像データをカット(削除)し、撮影画像の画像データが有効に存在するHD画面60で示す範囲の画像データのみを抽出する。
【0065】
また、このブランク領域64、64以外に、処理画像の画像データには、画像処理に不要な範囲となる画像データが含まれる場合があり、その画像データもカットする。
【0066】
例えば、画像処理装置16が上述した追尾装置の場合において、図1に示したAF用撮像素子28a、28bがSD画質の画像を撮像するものであるとする。この場合には、PLD41に入力されたSD画質の処理画像の画像データのうち左右の一部の範囲の画像データも不要な画像データとなる。
【0067】
即ち、カメラ本体10の映像用撮像素子20の撮像面と、AF用撮像素子28a、28bの撮像面において、撮影レンズ12により像が結像される範囲を示すイメージサークル内の被写体像は略同等のものであるとする。図5(A)に示すようにそのイメージサークル70に対して、映像用撮像素子20の撮像エリア72は、アスペクト比16:9のイメージサイズでイメージサークル70に対して内接し、AF用撮像素子28a、28bの撮像エリア74は、アスペクト比4:3のイメージサイズでイメージサークル70に対して内接しているものとする。
【0068】
AF処理部30は、AF用撮像素子28a、28bの撮像エリア内で撮影される被写体に対してのみピントを合わせることが可能であり、AF枠により追尾可能な被写体の範囲もAF用撮像素子28a、28bの撮像エリア内で撮影されている被写体に制限される。
【0069】
従って、映像用撮像素子20の撮像エリア72のうち、AF用撮像素子28a、28bの撮像エリア74と重なる領域の撮像エリアによって撮影される画像の範囲(撮影画角範囲)のみでAF枠を移動させることが適切である。
【0070】
ここで、映像用撮像素子20の撮像エリア72により撮影されている画像のうち、AF用撮像素子28a、28bの撮像エリア74により撮影されていない画像の範囲は、図5(A)に示すように映像用撮像素子20の撮像エリア72の左右の一部の斜線で示す範囲(不要範囲)76、76で撮影された画像の範囲となる。
【0071】
そこで、PLD41は、入力された処理画像の画像データのうち、その映像用撮像素子20の撮像エリア72における不要範囲76、76で撮像された画像の画像データもカットする。
【0072】
即ち、図4と同様に図5(B)に示したPLD41に入力される処理画像のSD画面62において、HD画面60の左右に示されている不要範囲78、78の画像が、図5(A)の撮像エリア72の不要範囲76、76で撮影された画像の範囲、即ち、AF用撮像素子28a、28bの撮影画角範囲内でない範囲であるとする。このとき、PLD41はその不要範囲78、78の画像データもカットする。
【0073】
従って、以上のPLD41のカット処理により、PLD41に入力されるSD画質の処理画像の画像データのうち、ブランク領域64、64の画像データ及び不要範囲76、76の画像データがカットされ、それらの範囲以外の画像データのみがPLD41により抽出されて出力される。
【0074】
そして、以上のようにしてPLD41により、画像処理に不要な画像データがカットされた処理画像の画像データ、即ち、画像処理に有効に使用される画像データのみが、CPU42を介して、又は、直接、RAM46に格納される。
【0075】
このようなPLD41のカット処理によれば、画像データをRAM46に書き込む処理に不要な時間を費やすことなく、また、RAM46のメモリ容量を低減することができるため、処理の高速化やコストの低減を図ることができるようになる。
【0076】
尚、上記実施の形態の場合に限らず、画像処理装置16に入力される映像信号により得られる撮影画像の撮影画角範囲に対して画像処理装置16における画像処理が対象とする画角範囲(有効に使用する撮影画像の範囲)が一部に限定される場合には、その有効に使用される画角範囲の画像データ以外をPLD41でカットして、画像処理で有効に使用される画角範囲の画像の画像データのみをRAM46に格納すればよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、画像処理装置16の一例としてAF枠を所定の被写体に追尾させるための画像処理を行う追尾装置をテレビカメラシステムで使用した場合について説明したが、本発明は追尾装置以外の種類の画像処理装置にも適用できる.例えば、カメラ本体10からの映像信号を取得して所定の画像処理により被写体の位置等を検出し、その被写体が常に撮影範囲内となるように雲台に搭載したカメラの撮影方向を自動で変更するための画像処理装置、カメラ10からの映像信号を取得してAFの処理をカメラ本体10や撮影レンズ12の外部で行うための画像処理装置等に適用することができる。
【0078】
また、本発明は、画像処理装置16に入力される映像信号がカメラ本体10からの直接与えられるものでなくても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る画像処理装置としての追尾装置が使用されたカメラシステムの一実施の形態を示す概略構成図である。
【図2】AF枠の例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る画像処理装置の基本的な構成を示したブロック図である。
【図4】画像処理装置におけるデコーダの処理の説明に使用した説明図である。
【図5】画像処理装置におけるPLDの処理の説明に使用した説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1…カメラシステム、10…カメラ本体、12…撮影レンズ、14…ビューファインダ、16…画像処理装置(追尾装置)、20…映像用撮像素子、28a、28b…AF用撮像素子、30…AF処理部、40…デコーダ、41…PLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)、42…CPU、44…エンコーダ、46…RAM、48…ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される映像信号によりフレーム単位の撮影画像の画像データを取り込み、該画像データに所要の画像処理を施す画像処理装置において、
前記映像信号によりフレーム単位の撮影画像の画像データを取り込むと共に、前記撮影画像と異なる解像度及び画面サイズの処理画像であって、該撮影画像の全範囲を含み、且つ、該撮影画像でないブランク領域の画像が付加された処理画像に前記撮影画像を変換する変換手段と、
前記処理画像のうち、少なくとも前記ブランク領域の画像の画像データを削除するカット手段と、
前記カット手段により少なくともブランク領域の画像の画像データが削除された前記処理画像の画像データを前記画像処理の対象として画像処理用のメモリに記憶させる記憶手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記カット手段は、前記撮影画像の撮影画角範囲のうち、前記画像処理の対象ではない範囲の画像の画像データも前記処理画像の画像データから削除することを特徴とする請求項1の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理装置は、オートフォーカスにより自動でピントを合わせる被写体の範囲を示すAF枠を、所定の被写体に自動で追尾させるための画像処理を行う装置であり、前記カット手段は、前記撮影画像の撮影画角範囲のうち、前記オートフォーカスによりピントを合わせることが可能な画角範囲を、前記画像処理が対象とする撮影画角範囲とし、該撮影画角範囲外の前記処理画像の画像データを削除することを特徴とする請求項2の画像処理装置。
【請求項4】
前記入力される映像信号は、HD画質であり、前記変換手段により変換される処理画像はSD画質であることを特徴とする請求項1、2、又は、3の画像処理装置。
【請求項5】
前記映像信号は、テレビカメラにより現在撮影されている映像の映像信号であることを特徴とする請求項1、2、3、又は、4の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−109438(P2010−109438A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276762(P2008−276762)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】