説明

画像処理装置

【課題】 不透明部分および半透明部分によって構成されている二値画像を圧縮条件が異なる多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 MFPは、多値画像72から抽出した画像ではない二値画像であるスタンプ画像を生成するフォントラスタライザーと、圧縮した多値画像72である圧縮多値画像に、圧縮多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮したスタンプ画像である圧縮二値画像を重ね合わせた高圧縮PDFファイルを生成する画像処理部およびファイル生成部とを備えており、画像処理部およびファイル生成部は、スタンプ画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、スタンプ画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像74と、スタンプ画像のうち半透明部分をマスクした半透明部分マスク画像76とを圧縮二値画像にして高圧縮PDFファイルを生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮した多値画像に、多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮した二値画像を重ね合わせた文書ファイルを生成する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮した多値画像に、多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮した二値画像を重ね合わせた文書ファイルを生成する画像処理装置として、文字領域を除いた多値画像をJPEG(Joint Photographic Experts Group)によって圧縮し、多値画像のうち文字領域を二値化した二値画像をMMR(Modified Modified Relative element address designate)によって圧縮し、それらの画像を重ね合わせたPDF(Portable Document Format)ファイルを生成する画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−77633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の画像処理装置は、多値画像から抽出した二値画像を多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができるが、多値画像から抽出した画像ではない二値画像を多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができない。
【0005】
多値画像から抽出した画像ではない二値画像を多値画像に重ね合わせた文書ファイルが生成される場合、不透明部分および半透明部分によって構成されている二値画像が使用される可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、不透明部分および半透明部分によって構成されている二値画像を圧縮条件が異なる多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、多値画像から抽出した画像ではない二値画像を生成する二値画像生成手段と、圧縮した前記多値画像である圧縮多値画像に、前記圧縮多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮した前記二値画像である圧縮二値画像を重ね合わせた文書ファイルを生成するファイル生成手段とを備えており、前記ファイル生成手段は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、前記二値画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像と、前記二値画像のうち半透明部分をマスクした半透明部分マスク画像とを前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成することを特徴とする。
【0008】
この構成により、本発明の画像処理装置は、不透明部分および半透明部分によって構成されている二値画像を圧縮条件が異なる多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができる。
【0009】
また、本発明の画像処理装置は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合の前記文書ファイルの生成方法を利用者から受け付ける生成方法受付手段を備えており、前記ファイル生成手段は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、前記不透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にするとともに、前記二値画像のうち不透明部分の色で前記二値画像全体を塗り潰した不透明画像と、前記二値画像のうち半透明部分が前記多値画像に対して半透明であることを示す情報とを含めて前記文書ファイルを生成する生成方法と、前記不透明部分マスク画像および前記半透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成する生成方法とのうち、前記生成方法受付手段によって受け付けられた生成方法によって、前記文書ファイルを生成しても良い。
【0010】
この構成により、本発明の画像処理装置は、利用者の要求に適した生成方法によって文書ファイルを生成することができる。
【0011】
また、本発明の画像処理装置の前記ファイル生成手段は、前記二値画像が2色の不透明部分によって構成されている場合、前記二値画像のうち1色の不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にするとともに、その1色で前記二値画像全体を塗り潰した不透明画像を含めて前記文書ファイルを生成しても良い。
【0012】
この構成により、本発明の画像処理装置は、二値画像が2色の不透明部分によって構成されている場合に適した生成方法によって文書ファイルを生成することができる。
【0013】
また、本発明の画像処理装置の前記ファイル生成手段は、前記二値画像が透明部分を含んでいる場合、前記二値画像のうち透明部分をマスクした透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成しても良い。
【0014】
この構成により、本発明の画像処理装置は、二値画像が透明部分を含んでいる場合に適した生成方法によって文書ファイルを生成することができる。
【0015】
本発明の画像処理プログラムは、多値画像から抽出した画像ではない二値画像を生成する二値画像生成手段、および、圧縮した前記多値画像である圧縮多値画像に、前記圧縮多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮した前記二値画像である圧縮二値画像を重ね合わせた文書ファイルを生成するファイル生成手段としてコンピューターを機能させる画像処理プログラムであって、前記ファイル生成手段は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、前記二値画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像と、前記二値画像のうち半透明部分をマスクした半透明部分マスク画像とを前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成することを特徴とする
【0016】
この構成により、本発明の画像処理プログラムを実行するコンピューターは、不透明部分および半透明部分によって構成されている二値画像を圧縮条件が異なる多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像処理装置は、不透明部分および半透明部分によって構成されている二値画像を圧縮条件が異なる多値画像に重ね合わせた文書ファイルを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係るMFPの構成を示すブロック図である。
【図2】高圧縮PDFファイルの生成方法が選択されるときの図1に示すMFPの動作のフローチャートである。
【図3】高圧縮PDFファイルの生成方法が選択されるときに図1に示す表示部に表示されるモード選択画面である。
【図4】高圧縮PDFファイルが生成されるときの図1に示すMFPの動作のフローチャートである。
【図5】図4の続きのフローチャートである。
【図6】(a)図1に示すフォントラスタライザーによって生成されるスタンプ画像であって、透明部分および不透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。(b)は、図6(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。(c)は、図6(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた画像を示す図である。
【図7】(a)図1に示すフォントラスタライザーによって生成されるスタンプ画像であって、透明部分および半透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。(b)は、図7(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。(c)は、図7(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた画像を示す図である。
【図8】(a)図1に示すフォントラスタライザーによって生成されるスタンプ画像であって、2色の不透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。(b)は、図8(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。(c)は、図8(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた画像を示す図である。
【図9】(a)図1に示すフォントラスタライザーによって生成されるスタンプ画像であって、不透明部分および半透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。(b)は、図9(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。(c)は、図9(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた画像を示す図である。
【図10】図9(a)に示すスタンプ画像が多値画像に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成であって、図9(b)に示す構成とは異なる構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
まず、本実施の形態に係る画像処理装置の構成について説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態に係るMFP(Multifunction Peripheral)10の構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、MFP10は、MFP10全体を制御するコンピューターであるコントローラー20と、コントローラー20に接続されていて種々の情報を表示する表示部31と、コントローラー20に接続されていて利用者によって種々の操作が入力される操作部32と、コントローラー20に接続されていてPC(Personal Computer)などの図示していない外部の装置と直接またはネットワーク経由で通信を行うための通信インターフェイス33と、コントローラー20に接続されていて用紙に印刷を実行する印刷デバイスであるプリンター34と、原稿から画像を読み取って多値画像を生成するスキャナー35と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性記憶装置36とを備えている。
【0023】
コントローラー20は、CPU(Central Processing Unit)と、本発明の画像処理プログラムを含むプログラムおよび各種のデータを予め記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられる書き換え可能な揮発性の記憶装置であるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMに記憶されているプログラムを実行することによってコントローラー20を動作させる演算処理装置である。RAMは、CPUによってプログラムが実行されるときにプログラムや各種のデータを一時的に記憶するようになっている。
【0024】
コントローラー20は、画像処理プログラムを実行することによって、文字情報からラスターデータを生成するフォントラスタライザー21、画像に対して画質の変更、解像度の変更、サイズの変更、回転、色の変換などの各種の処理を実行する画像処理部22、画像処理部22によって処理された画像に基づいて文書ファイルである高圧縮PDFファイルを生成するファイル生成部23、および、高圧縮PDFファイルの生成方法を利用者から受け付ける生成方法受付部24として機能する。
【0025】
フォントラスタライザー21は、ファイル生成部23による合成対象の多値画像から抽出した画像ではない二値画像としてスタンプ画像を生成するようになっており、本発明の二値画像生成手段を構成している。スタンプ画像の例としては、高圧縮PDFファイルが生成された日付、高圧縮PDFファイルにおける合成対象の多値画像のページ番号、所定の時点からのプリンター34による印刷枚数を示すシリアル番号、利用者によって指定された文字列などがある。なお、文字列は、操作部32を介して利用者によって指定されることや、通信インターフェイス33経由で外部の装置の操作部を介して利用者によって指定されることができる。
【0026】
画像処理部22は、スキャナー35によって生成された多値画像をJPEGによって圧縮して圧縮多値画像を生成する。また、画像処理部22は、フォントラスタライザー21によって生成されたスタンプ画像をJPEGとは異なる圧縮条件であるMMRによって圧縮して圧縮二値画像を生成する。そして、ファイル生成部23は、画像処理部22によって生成された圧縮多値画像に、画像処理部22によって生成された圧縮二値画像を重ね合わせて高圧縮PDFファイルを生成する。したがって、画像処理部22およびファイル生成部23は、本発明のファイル生成手段を構成している。
【0027】
生成方法受付部24は、二値画像であるスタンプ画像のうち1色が不透明であり、残りの1色が半透明である場合の高圧縮PDFファイルの生成方法を、操作部32を介して利用者によって選択されることや、通信インターフェイス33経由で外部の装置の操作部を介して利用者によって選択されることによって受け付けるようになっており、本発明の生成方法受付手段を構成している。
【0028】
表示部31は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである。
【0029】
操作部32は、表示部31とともにタッチパネルを形成するボタンなどの入力デバイスである。
【0030】
通信インターフェイス33は、例えば、プリンター34で印刷されるための印刷データを外部の装置から受信したり、スキャナー35によって生成された画像データを外部の装置に送信したりする。
【0031】
プリンター34は、通信インターフェイス33を介して外部の装置から受信された印刷データ、スキャナー35によって生成された画像データなどのデータに基づいて、用紙に印刷を実行する。
【0032】
スキャナー35は、通信インターフェイス33を介して外部の装置に送信されるための画像データ、プリンター34によって印刷されるための画像データなどの画像データを生成する読取デバイスである。
【0033】
次に、MFP10の動作について説明する。
【0034】
図2は、高圧縮PDFファイルの生成方法が選択されるときのMFP10の動作のフローチャートである。
【0035】
MFP10のコントローラー20は、操作部32を介して利用者によって高圧縮PDFファイルの生成方法の選択が要求されると、図2に示す処理を実行する。
【0036】
図2に示すように、コントローラー20の生成方法受付部24は、図3に示すモード選択画面を表示部31に表示する(S101)。
【0037】
図3は、高圧縮PDFファイルの生成方法が選択されるときに表示部31に表示されるモード選択画面である。
【0038】
図3に示すモード選択画面には、高圧縮PDFファイルの生成方法の選択を利用者に促すメッセージ31aと、ファイルサイズが小さい高圧縮PDFファイルを生成するサイズ優先モードを操作部32を介して利用者に選択させるためのボタン31bと、表示や印刷に最適な高圧縮PDFファイルを生成する表示・印刷最適モードを操作部32を介して利用者に選択させるためのボタン31cとが表示されている。
【0039】
S101の処理の後、生成方法受付部24は、モードが選択されたと判断するまで、モードが選択されたか否かを判断する(S102)。
【0040】
S102においてモードが選択されたと判断すると、生成方法受付部24は、選択されたモードを不揮発性記憶装置36に記憶して(S103)、図2に示す処理を終了する。
【0041】
なお、以上においては、操作部32を介して利用者によって高圧縮PDFファイルの生成方法の選択が要求される場合について説明したが、生成方法受付部24は、通信インターフェイス33経由で外部の装置の操作部を介して利用者によって高圧縮PDFファイルの生成方法の選択が要求される場合も、通信インターフェイス33経由で外部の装置の表示部にモード選択画面を表示させるなど、以上の動作と同様に動作する。
【0042】
また、高圧縮PDFファイルの生成方法が最初に選択される前、不揮発性記憶装置36には、サイズ優先モードおよび表示・印刷最適モードの何れか一方が初期値として記憶されている。
【0043】
図4は、高圧縮PDFファイルが生成されるときのMFP10の動作のフローチャートである。図5は、図4の続きのフローチャートである。
【0044】
なお、以下においては、スタンプ画像における色と、多値画像における描画内容とを図面において模様によって示す。
【0045】
コントローラー20は、操作部32を介して利用者によって高圧縮PDFファイルの生成が要求されるか、通信インターフェイス33経由で外部の装置の操作部を介して利用者によって高圧縮PDFファイルの生成が要求されると、図4および図5に示す処理を実行する。
【0046】
図4および図5に示すように、コントローラー20は、スキャナー35から多値画像を受信したと判断するまで、スキャナー35から多値画像を受信したか否かを判断する(S111)。利用者が原稿をスキャナー35に読み取らせると、コントローラー20は、スキャナー35が原稿から画像を読み取って生成した多値画像をスキャナー35から受信する。
【0047】
S111において多値画像を受信したと判断すると、コントローラー20の画像処理部22は、S111において受信した多値画像をJPEGによって圧縮する(S112)。ここで、画像処理部22は、従来の画像処理装置と同様に、S111において受信した多値画像を文字領域と、文字領域以外の領域とに分離し、文字領域を二値画像にしてMMRによって圧縮し、文字領域以外の領域をJPEGによって圧縮するようになっていても良い。
【0048】
次いで、フォントラスタライザー21は、多値画像に合成するためのスタンプ画像を生成する(S113)。
【0049】
図6(a)は、透明部分および不透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。
【0050】
図6(a)に示すスタンプ画像41は、透明部分41aおよび不透明部分41bによって構成されている。
【0051】
図7(a)は、透明部分および半透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。
【0052】
図7(a)に示すスタンプ画像51は、透明部分51aおよび半透明部分51bによって構成されている。
【0053】
S113の処理の後、画像処理部22は、S113において生成されたスタンプ画像が図6(a)または図7(a)に示すように透明部分を含んでいるか否かを判断する(S114)。
【0054】
S114において透明部分を含んでいると判断すると、画像処理部22は、S113において生成されたスタンプ画像のうち透明部分をマスクした透明部分マスク画像を生成する(S115)。ここで、マスクは、PDFのImage辞書で指定可能である。
【0055】
次いで、画像処理部22は、S115において生成した透明部分マスク画像をMMRによって圧縮する(S116)。次いで、ファイル生成部23は、S112において圧縮された多値画像に、S116において圧縮された透明部分マスク画像を重ね合わせて高圧縮PDFファイルを生成し(S117)、図4および図5に示す処理を終了する。
【0056】
図6(b)は、図6(a)に示すスタンプ画像41が多値画像42に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。図6(c)は、図6(a)に示すスタンプ画像41が多値画像42に重ね合わされた画像40を示す図である。
【0057】
例えば、S113において生成されたスタンプ画像が図6(a)に示すスタンプ画像41である場合、S117において生成される高圧縮PDFファイルの構成は、図6(b)に示すようになる。図6(b)に示すように、高圧縮PDFファイルは、S112において生成された多値画像42のレイヤーの上に、S116において生成される透明部分マスク画像43と、スタンプ画像41のうち不透明部分41bの色である前景色44とからなるレイヤーが重なって構成されている。図6(b)に示す高圧縮PDFファイルが印刷または表示されると、図6(c)に示す画像40が生成される。スタンプ画像41は、画像40において、不透明部分41bである文字「A」のグリフ部分のみ描画されている。
【0058】
図7(b)は、図7(a)に示すスタンプ画像51が多値画像52に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。図7(c)は、図7(a)に示すスタンプ画像51が多値画像52に重ね合わされた画像50を示す図である。
【0059】
例えば、S113において生成されたスタンプ画像が図7(a)に示すスタンプ画像51である場合、S117において生成される高圧縮PDFファイルの構成は、図7(b)に示すようになる。図7(b)に示すように、高圧縮PDFファイルは、S112において生成された多値画像52のレイヤーの上に、S116において生成される透明部分マスク画像53と、スタンプ画像51のうち半透明部分51bの色である前景色54とからなるレイヤーが重なって構成されている。図7(b)に示す高圧縮PDFファイルが印刷または表示されると、図7(c)に示す画像50が生成される。画像50において、スタンプ画像51の半透明部分51bの色は、多値画像52の色とアルファブレンディングによって合成されている。スタンプ画像51は、画像50において、半透明部分51bである文字「A」のグリフ部分のみ描画されている。
【0060】
図8(a)は、2色の不透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。
【0061】
図8(a)に示すスタンプ画像61は、不透明部分61aおよび不透明部分61bによって構成されている。
【0062】
S114において透明部分を含んでいないと判断すると、画像処理部22は、S113において生成されたスタンプ画像が図8(a)に示すように2色の不透明部分によって構成されているか否かを判断する(S118)。
【0063】
S118において2色の不透明部分によって構成されていると判断すると、画像処理部22は、S113において生成されたスタンプ画像のうち1色の不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像を生成し(S119)、その1色でスタンプ画像全体を塗り潰した不透明画像、すなわち、矩形のベクター画像を生成する(S120)。ここで、マスクは、PDFのImage辞書で指定可能である。
【0064】
次いで、画像処理部22は、S119において生成した不透明部分マスク画像をMMRによって圧縮する(S121)。次いで、ファイル生成部23は、S112において圧縮された多値画像に、S120において生成された不透明画像と、S121において圧縮された不透明部分マスク画像とを順に重ね合わせて高圧縮PDFファイルを生成し(S122)、図4および図5に示す処理を終了する。
【0065】
図8(b)は、図8(a)に示すスタンプ画像61が多値画像62に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。図8(c)は、図8(a)に示すスタンプ画像61が多値画像62に重ね合わされた画像60を示す図である。
【0066】
例えば、S113において生成されたスタンプ画像が図8(a)に示すスタンプ画像61である場合、S122において生成される高圧縮PDFファイルの構成は、図8(b)に示すようになる。図8(b)に示すように、高圧縮PDFファイルは、S112において生成された多値画像62のレイヤーの上に、S120において生成される不透明画像63のレイヤーと、S121において生成される不透明部分マスク画像64と、スタンプ画像61のうち不透明部分61bの色である前景色65とからなるレイヤーとが順に重なって構成されている。図8(b)に示す高圧縮PDFファイルが印刷または表示されると、図8(c)に示す画像60が生成される。スタンプ画像61は、画像60において、不透明部分61bである文字「A」のグリフ部分だけでなく、不透明部分61a、すなわち、文字「A」の矩形の背景部分も描画されている。
【0067】
S118において2色の不透明部分によって構成されていないと判断すると、画像処理部22は、不揮発性記憶装置36にアクセスして、高圧縮PDFファイルの生成方法として選択されている生成方法を判断する(S123)。
【0068】
S123においてサイズ優先モードが選択されていると判断すると、画像処理部22は、S113において生成されたスタンプ画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像を生成し(S124)、スタンプ画像のうち不透明部分の色でスタンプ画像全体を塗り潰した不透明画像、すなわち、矩形のベクター画像を生成する(S125)。ここで、マスクは、PDFのImage辞書で指定可能である。
【0069】
次いで、画像処理部22は、S124において生成した不透明部分マスク画像をMMRによって圧縮する(S126)。次いで、ファイル生成部23は、S112において圧縮された多値画像に、S125において生成された不透明画像と、S126において圧縮された不透明部分マスク画像とを順に重ね合わせるとともに、スタンプ画像のうち半透明部分が多値画像に対して半透明であることを示す情報(以下「半透明対象情報」という。)を含めて高圧縮PDFファイルを生成し(S127)、図4および図5に示す処理を終了する。ここで、半透明対象情報は、S112において圧縮された多値画像と、S126において圧縮された不透明部分マスク画像とをグループ化して、このグループに対してアルファブレンディングを指定するという、PDFの機能による情報である。
【0070】
図9(a)は、不透明部分および半透明部分によって構成されているスタンプ画像の一例を示す図である。図9(b)は、図9(a)に示すスタンプ画像71が多値画像72に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成を示す図である。図9(c)は、図9(a)に示すスタンプ画像71が多値画像72に重ね合わされた画像70を示す図である。
【0071】
図9(a)に示すスタンプ画像71は、不透明部分71aおよび半透明部分71bによって構成されている。例えば、S113において生成されたスタンプ画像が図9(a)に示すスタンプ画像71であって、不揮発性記憶装置36に記憶されている生成方法がサイズ優先モードである場合、S127において生成される高圧縮PDFファイルの構成は、図9(b)に示すようになる。図9(b)に示すように、高圧縮PDFファイルは、S112において生成された多値画像72のレイヤーの上に、S125において生成される不透明画像73のレイヤーと、S126において生成される不透明部分マスク画像74と、スタンプ画像71のうち半透明部分71bの色である前景色75とからなるレイヤーとが順に重なって構成されている。また、高圧縮PDFファイルには、半透明対象情報も含まれている。図9(b)に示す高圧縮PDFファイルが印刷または表示されると、図9(c)に示す画像70が生成される。画像70において、スタンプ画像71の半透明部分71bの色は、多値画像72の色とアルファブレンディングによって合成されている。スタンプ画像71は、画像70において、半透明部分71bである文字「A」のグリフ部分だけでなく、不透明部分71a、すなわち、文字「A」の矩形の背景部分も描画されている。
【0072】
S123において表示・印刷最適モードが選択されていると判断すると、画像処理部22は、S113において生成されたスタンプ画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像を生成し(S128)、スタンプ画像のうち半透明部分をマスクした半透明部分マスク画像を生成する(S129)。ここで、半透明部分マスク画像は、不透明部分マスク画像が複製されて、そのビットの0,1が反転されることによって生成される。マスクは、PDFのImage辞書で指定可能である。
【0073】
次いで、画像処理部22は、S128において生成した不透明部分マスク画像およびS129において生成した半透明部分マスク画像をMMRによって圧縮する(S130)。次いで、ファイル生成部23は、S112において圧縮された多値画像に、S130において生成された不透明部分マスク画像および半透明部分マスク画像を重ね合わせて高圧縮PDFファイルを生成し(S131)、図4および図5に示す処理を終了する。
【0074】
図10は、図9(a)に示すスタンプ画像71が多値画像72に重ね合わされた高圧縮PDFファイルの構成であって、図9(b)に示す構成とは異なる構成を示す図である。
【0075】
例えば、S113において生成されたスタンプ画像が図9(a)に示すスタンプ画像71であって、不揮発性記憶装置36に記憶されている生成方法が表示・印刷最適モードである場合、S131において生成される高圧縮PDFファイルの構成は、図10に示すようになる。図10に示すように、高圧縮PDFファイルは、S112において生成された多値画像72のレイヤーの上に、S130において生成される不透明部分マスク画像74と、スタンプ画像71のうち半透明部分71bの色である前景色75とからなるレイヤーと、S130において生成される半透明部分マスク画像76と、スタンプ画像71のうち不透明部分71aの色である前景色77とからなるレイヤーとが重なって構成されている。図10に示す高圧縮PDFファイルが印刷または表示されると、図9(c)に示す画像70が生成される。
【0076】
以上に説明したように、MFP10は、不透明部分および半透明部分によって構成されているスタンプ画像を圧縮条件が異なる多値画像に重ね合わせた高圧縮PDFファイルを生成することができる(S127、S131)。
【0077】
また、MFP10は、サイズ優先モードと、表示・印刷最適モードとのうち、生成方法受付部24によって受け付けられたモードによって高圧縮PDFファイルを生成する(S123〜S131)ので、利用者の要求に適した生成方法によって高圧縮PDFファイルを生成することができる。
【0078】
ここで、サイズ優先モード(S124〜S127)によって生成された高圧縮PDFファイルは、表示や印刷が実行される際にRIP(Raster Image Processor)処理される時に、背景画像である多値画像がCPUの作業領域であるRAMに常に記憶されている必要があるので、表示や印刷が実行されるまでの時間が長いという問題や、RAMの使用効率が悪いという問題が生じる可能性がある。また、PDFのViewerの機能が制限されていて、上述した半透明対象情報を解釈することができないViewerである場合、そのようなViewerでは、サイズ優先モードによって生成された高圧縮PDFファイルを開くことができないという問題が生じる。これらの問題の対策として、利用者は、MFP10に表示・印刷最適モード(S128〜S131)によって高圧縮PDFファイルを生成させることができる。
【0079】
表示・印刷最適モードによって生成された高圧縮PDFファイルは、不透明部分マスク画像だけでなく、半透明部分マスク画像をも含んでいるので、サイズ優先モードによって生成された高圧縮PDFファイルと比較して、ファイルサイズが大きい。しかしながら、スタンプ画像は、通常、ハーフトーン画像ではなく、ある程度の範囲がベタに描かれた画像であるので、MMRによる圧縮の効率が良い。また、スタンプ画像は、通常、背景画像である多値画像と比較して画像サイズが小さいので、高圧縮PDFファイルのファイルサイズに殆ど影響しない。したがって、表示・印刷最適モードによって生成された高圧縮PDFファイルは、サイズ優先モードによって生成された高圧縮PDFファイルと比較して、ファイルサイズが極端に大きいわけではない。例えば、本願発明者が用意したある画像は、サイズ優先モードによって生成された高圧縮PDFファイルのファイルサイズが272KBであったのに対し、表示・印刷最適モードによって生成された高圧縮PDFファイルのファイルサイズが282KBであった。つまり、ファイルサイズの増加は、僅か3%程度であった。
【0080】
MFP10は、スタンプ画像が2色の不透明部分によって構成されている場合、スタンプ画像のうち1色の不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像と、その1色でスタンプ画像全体を塗り潰した不透明画像とを使用して高圧縮PDFファイルを生成する(S119〜S122)ので、スタンプ画像が2色の不透明部分によって構成されている場合に適した生成方法によって高圧縮PDFファイルを生成することができる。
【0081】
また、MFP10は、スタンプ画像が透明部分を含んでいる場合、スタンプ画像のうち透明部分をマスクした透明部分マスク画像を使用して高圧縮PDFファイルを生成する(S115〜S117)ので、スタンプ画像が透明部分を含んでいる場合に適した生成方法によって高圧縮PDFファイルを生成することができる。
【0082】
なお、画像処理装置は、本実施の形態においてMFPであるが、スキャナー専用機など、MFP以外の装置であっても良い。
【0083】
また、文書ファイルは、本実施の形態において高圧縮PDFファイルであるが、PDFファイル以外の形式のファイルであっても良い。
【0084】
また、多値画像の圧縮方式は、本実施の形態においてJPEGであるが、JPEG以外の圧縮方式であっても良い。
【0085】
また、二値画像の圧縮方式は、本実施の形態においてMMRであるが、MMR以外の圧縮方式であっても良い。
【0086】
また、多値画像は、本実施の形態においてスキャナー35から受信しているが、通信インターフェイス33を介して外部の装置から受信するようになっていても良い。
【符号の説明】
【0087】
10 MFP(画像処理装置)
20 コントローラー(コンピューター)
21 フォントラスタライザー(二値画像生成手段)
22 画像処理部(ファイル生成手段)
23 ファイル生成部(ファイル生成手段)
24 生成方法受付部(生成方法受付手段)
41 スタンプ画像(二値画像)
41a 透明部分
42 多値画像
43 透明部分マスク画像
51 スタンプ画像(二値画像)
51a 透明部分
52 多値画像
53 透明部分マスク画像
61 スタンプ画像(二値画像)
61a 不透明部分
61b 不透明部分
62 多値画像
63 不透明画像
64 不透明部分マスク画像
71 スタンプ画像(二値画像)
71a 不透明部分
71b 半透明部分
72 多値画像
73 不透明画像
74 不透明部分マスク画像
76 半透明部分マスク画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値画像から抽出した画像ではない二値画像を生成する二値画像生成手段と、圧縮した前記多値画像である圧縮多値画像に、前記圧縮多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮した前記二値画像である圧縮二値画像を重ね合わせた文書ファイルを生成するファイル生成手段とを備えており、
前記ファイル生成手段は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、前記二値画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像と、前記二値画像のうち半透明部分をマスクした半透明部分マスク画像とを前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合の前記文書ファイルの生成方法を利用者から受け付ける生成方法受付手段を備えており、
前記ファイル生成手段は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、前記不透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にするとともに、前記二値画像のうち不透明部分の色で前記二値画像全体を塗り潰した不透明画像と、前記二値画像のうち半透明部分が前記多値画像に対して半透明であることを示す情報とを含めて前記文書ファイルを生成する生成方法と、前記不透明部分マスク画像および前記半透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成する生成方法とのうち、前記生成方法受付手段によって受け付けられた生成方法によって、前記文書ファイルを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ファイル生成手段は、前記二値画像が2色の不透明部分によって構成されている場合、前記二値画像のうち1色の不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にするとともに、その1色で前記二値画像全体を塗り潰した不透明画像を含めて前記文書ファイルを生成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ファイル生成手段は、前記二値画像が透明部分を含んでいる場合、前記二値画像のうち透明部分をマスクした透明部分マスク画像を前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成することを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
多値画像から抽出した画像ではない二値画像を生成する二値画像生成手段、および、圧縮した前記多値画像である圧縮多値画像に、前記圧縮多値画像とは異なる圧縮条件で圧縮した前記二値画像である圧縮二値画像を重ね合わせた文書ファイルを生成するファイル生成手段としてコンピューターを機能させる画像処理プログラムであって、
前記ファイル生成手段は、前記二値画像が不透明部分および半透明部分によって構成されている場合、前記二値画像のうち不透明部分をマスクした不透明部分マスク画像と、前記二値画像のうち半透明部分をマスクした半透明部分マスク画像とを前記圧縮二値画像にして前記文書ファイルを生成することを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−213082(P2012−213082A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78212(P2011−78212)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】