説明

画像処理装置

【課題】照射効率を改善するとともに、撮像範囲内の照度むらを抑制する。
【解決手段】LED13−1は、第1の波長の光を検出対象物21に照射し、LED13−2は、第1の波長よりも長波長である第2の波長の光を検出対象物21に照射し、LED13−1及び13−2それぞれに設けられているアナモルフィックレンズは、検出対象物21に対する光の照度分布を変化させ、撮像部15は、第1の波長の光が検出対象物21に照射されているときに入射される検出対象物21からの反射光に基づいて第1の画像を生成するとともに、第2の波長の光が検出対象物21に照射されているときに入射される検出対象物21からの反射光に基づいて第2の画像を生成し、画像処理部17は、生成された第1及び第2の画像に基づいて、検出対象物21の肌領域を検出する。本発明は、例えば、撮像した画像から人間の肌を表す肌領域を検出する検出装置に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関し、特に、撮影した画像に基づいて、例えば人の手等の肌が露出している部分を検出できるようにした画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人物を撮像して得られる撮像画像上から、顔や手などのように肌が露出している領域(以下、肌領域という)を検出する肌検出技術が存在する(例えば、特許文献1乃至4を参照)。
【0003】
この肌検出技術では、波長λ1の光を出力するLED(light emitting diode)によって照射された状態の被写体(人物)を撮像した第1の画像と、波長λ1とは異なる波長λ2の光を出力するLEDによって照射された状態の被写体を撮像した第2の画像とを取得する。そして、第1の画像と第2の画像との輝度値の差分が所定の閾値よりも大きな領域を肌領域として検出する。
【0004】
なお、波長λ1,λ2は、人間の肌の反射特性に依存して決定される。すなわち、波長λ1,λ2は、人の肌に照射したときの反射率が異なり、かつ、人の肌以外(例えば、髪の毛、衣服など)に照射したときの反射率がほぼ等しいものに決定されている。具体的には、例えば、波長λ1は850nm、波長λ2は970nmとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−47067号公報
【特許文献2】特開平06−123700号公報
【特許文献3】特開平05−329163号公報
【特許文献4】特開2008−27242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、肌検出技術では、LEDから被写体の各部に照射される光の照度に応じて、被写体の各部において肌領域を検出できる検出可能距離が異なるものとなる。
【0007】
具体的には、例えば、被写体の各部として、顔部分に照射される光の照度が小さく、手部分に照射される光の照度が大きい場合、顔部分や手部分が比較的遠距離に存在するときでも、手部分の肌領域は検出できるが、顔部分の肌領域は検出できないことが生じ得る。
【0008】
したがって、いずれの検出可能距離においても肌領域を精度良く検出するためには、被写体の各部を可能な限り均一な照度で照射する必要がある。このため、肌検出技術では、第1及び第2の画像を取得するために撮像される撮像範囲を全体に亘って、ほぼ均一な照度で照射しなければならない。
【0009】
例えば、FWHM(full width at half maximum,半値全幅)=60度の、指向特性の低いLEDを用いた場合、撮像範囲を全体に亘って、ほぼ均一な照度で照射できる。しかしながら、撮像範囲に到達する光束(単位面積を単位時間内に通過する光のエネルギー)は、光源から照射される光の光束の1/5程度となってしまい、非常に照射効率が悪いものとなる。
【0010】
反対に、例えば、FWHM=20度の、指向特性の高いLEDを用いた場合、撮像範囲に到達する光束は、光源から照射される光の光束の1/2程度となり、照射効率が改善されるものとなる。しかしながら、撮像範囲を全体に亘って照射することができず、撮像範囲内に照度むらが生じてしまう。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、照射効率を改善するとともに、撮像範囲内の照度むらを抑制するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面の画像処理装置は、画像上から人間の肌を表す肌領域を検出する画像処理装置であって、第1の波長の光を被写体に照射する第1の照射手段と、前記第1の波長よりも長波長である第2の波長の光を前記被写体に照射する第2の照射手段と、前記第1の照射手段から照射された前記第1の波長の光を屈折させることにより、前記被写体に対する、前記第1の波長の光の照度分布を変化させる第1の照度分布変化手段と、前記第2の照射手段から照射された前記第2の波長の光を屈折させることにより、前記被写体に対する、前記第2の波長の光の照度分布を変化させる第2の照度分布変化手段と、前記第1の波長の光が前記被写体に照射されているときに入射される前記被写体からの反射光に基づいて第1の画像を生成するとともに、前記第2の波長の光が前記被写体に照射されているときに入射される前記被写体からの反射光に基づいて第2の画像を生成する生成手段と、生成された前記第1及び第2の画像に基づいて、前記肌領域を検出する検出手段とを含む画像処理装置である。
【0013】
前記第1及び第2の照度分布変化手段には、前記被写体に対する前記照度分布を水平方向と垂直方向とで異なる照度分布に変化させることができる。
【0014】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、水平方向と垂直方向で異なる曲率となるように形成されたアナモルフィックレンズからなるようにすることができる。
【0015】
前記アナモルフィックレンズの焦点距離は、前記アナモルフィックレンズにより屈折される光を照射する前記照射手段の大きさに基づき規定される範囲内の距離とされるようにすることができる。
【0016】
前記アナモルフィックレンズの焦点距離fは、前記アナモルフィックレンズにより屈折される光を照射する前記照射手段の大きさCに基づき規定される以下の関係を満たす
4.0/C ≦ f ≦ 10.0/C
ようにすることができる。
【0017】
前記第1及び第2の照度分布変化手段には、照射された光を構成する、それぞれ照度分布の異なる複数の光を屈折させ、前記被写体に照射させることにより、前記被写体に対する前記照度分布を変化させることができる。
【0018】
前記生成手段には、前記被写体を含む撮像範囲で撮像を行なうことにより、前記撮像範囲に対応する前記第1及び第2の画像を生成させ、前記第1及び第2の照度分布変化手段は、前記撮像範囲と同一の縦横比とされた複数の単レンズにより構成され、少なくとも前記撮像範囲を含む矩形範囲に対して前記複数の光を照射させるフライアイレンズからなるようにすることができる。
【0019】
前記第1の照度分布変化手段に照射される光を屈折させることにより、前記第1の照度分布変化手段に対して垂直に照射させる第1の垂直照射手段と、前記第2の照度分布変化手段に照射される光を屈折させることにより、前記第2の照度分布変化手段に対して垂直に照射させる第2の垂直照射手段とをさらに設けることができる。
【0020】
前記第1及び第2の照度分布変化手段には、前記被写体に対する前記照度分布を同心円状に変化させることができる。
【0021】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、同心円状に同一の曲率となるように形成されているレンズからなるようにすることができる。
【0022】
前記第1及び第2の照度分布変化手段には、照射された光を屈折させることにより、前記被写体に照射される光も増加させるようにすることができる。
【0023】
前記第1の波長λ1及び前記第2の波長λ2は、以下の関係式を満たす
640nm≦λ1≦1000nm
900nm≦λ2≦1100nm
ようにすることができる。
【0024】
前記生成手段には、前記被写体を含む撮像範囲で撮像を行なうことにより、前記撮像範囲に対応する前記第1及び第2の画像を生成させ、前記第1及び第2の照度分布変化手段には、前記被写体を含む前記撮像範囲に対する前記照度分布を変化させることができる。
【0025】
本発明の一側面によれば、第1の波長の光が被写体に照射され、前記第1の波長よりも長波長である第2の波長の光が前記被写体に照射され、照射された前記第1の波長の光が屈折されることにより、前記被写体に対する、前記第1の波長の光の照度分布が変化され、照射された前記第2の波長の光が屈折されることにより、前記被写体に対する、前記第2の波長の光の照度分布が変化され、前記第1の波長の光が前記被写体に照射されているときに入射される前記被写体からの反射光に基づいて第1の画像が生成されるとともに、前記第2の波長の光が前記被写体に照射されているときに入射される前記被写体からの反射光に基づいて第2の画像が生成される。そして、生成された前記第1及び第2の画像に基づいて、前記肌領域が検出される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、照射効率を改善することが可能となる。また、撮像範囲内の照度むらを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態である検出装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】人間の肌に対して想定されている反射特性の一例を示す図である。
【図3】LEDの指向特性に応じて変化する照度分布の一例を示す第1の図である。
【図4】LEDの指向特性に応じて変化する照度分布の一例を示す第2の図である。
【図5】LEDの指向特性に応じて変化する照度分布の一例を示す第3の図である。
【図6】LED13がFWHM=60度であって、球面レンズが設けられていない場合についての光量の分布の一例を示す図である。
【図7】LED13がFWHM=60度であって、球面レンズが設けられている場合についての光量の分布の一例を示す図である。
【図8】非球面レンズの形状の一例を示す図である。
【図9】撮像部の画角を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布の一例を示す第1の図である。
【図10】撮像部の画角における撮像範囲の照度分布の一例を示す第1の図である。
【図11】撮像範囲上の、対角線上の位置における照度分布の一例を示す第1の図である。
【図12】アナモルフィックレンズの外観例を示す図である。
【図13】撮像部の画角を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布の一例を示す第2の図である。
【図14】撮像部の画角における撮像範囲の照度分布の一例を示す第2の図である。
【図15】撮像範囲上の、対角線上の位置における照度分布の一例を示す第2の図である。
【図16】LEDにフライアイレンズを設けた場合の一例を示す図である。
【図17】撮像部の画角を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布の一例を示す第3の図である。
【図18】撮像部の画角における撮像範囲の照度分布の一例を示す第3の図である。
【図19】撮像範囲上の、対角線上の位置における照度分布の一例を示す第3の図である。
【図20】撮像部の撮像範囲を示す図である。
【図21】撮像部における対角方向の半画角の算出方法の一例を示す図である。
【図22】フライアイレンズを構成する単レンズの一例を示す図である。
【図23】アナモルフィックレンズの焦点距離について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(光源に対して非球面レンズを設けた場合の一例)
2.第2の実施の形態(光源に対してアナモルフィックレンズを設けた場合の一例)
3.第3の実施の形態(光源に対してフライアイレンズを設けた場合の一例)
4.変形例
【0029】
<1.第1の実施の形態>
[検出装置の構成例]
図1は、第1の実施の形態である検出装置の構成例を示している。この検出装置1は、撮像した画像から検出対象物21となる人の肌領域(例えば、顔、手など)を検出するものである。また、LEDの前面に、例えば非球面レンズを設けるようにして、LEDの照射光による照射効率を改善するものである。
【0030】
検出装置1は、制御部11、LED制御部12、LED13−1及び13−2、光学フィルタ14、撮像部15、撮像制御部16、並びに画像処理部17から構成される。
【0031】
制御部11は、検出装置1の各部の動作を統括して制御する。LED制御部12は、制御部11からの制御に従い、LED13−1及び13−2の点灯タイミング、消灯タイミング、出力レベルを制御する。LED13−1は、LED制御部12の制御に従い、発光スペクトルのピーク波長がλ1である光(以下、波長λ1の光という)を発光する。LED13−2は、LED制御部12の制御に従い、発光スペクトルのピーク波長がλ2である光(以下、波長λ2の光という)を発光する。なお、詳細は後述するが、波長λ1の値は640nmから1000nm、波長λ1よりも長波長側の波長λ2の値は900nmから1100nmとされる。
【0032】
光学フィルタ14は、撮像部15に入射する光を制限するよう撮像部15の前面に設けられており、その分光特性として第1の波長から第2の波長までの光を透過し、それ以外の光を吸収(遮断)するようになされている。
【0033】
なお、第1の波長及び第2の波長は、光学フィルタ14が、波長λ1の光及びλ2の光を透過できるように、波長λ1及びλ2の値に応じて決定される。
【0034】
撮像部15は、集光レンズと、CCD、CMOSなどの撮像素子とを内蔵しており、撮像制御部16からの制御に従い、光学フィルタ14を透過してきた光(被写体からの反射光)を受光して画像を生成する。なお、LED13−1が波長λ1の光を発光しているときに生成される画像を第1の画像とし、LED13−2が波長λ2の光を発光しているときに生成される画像を第2の画像とする。
【0035】
撮像制御部16は、制御部11からの制御に従い、撮像部15の撮像タイミング、輝度増幅のゲインなどを制御する。また、撮像制御部16は、撮像部15により生成された第1及び第2の画像を画像処理部17に出力する。
【0036】
画像処理部17は、第1の画像及び第2の画像に基づいて、被写体の肌領域を検出する。
【0037】
[検出装置の動作]
初めに、LED13−1により波長λ1の光を被写体に照射する。この照射光は外光とともに被写体により反射され、光学フィルタ14を介して撮像部15に入射される。撮像部15は、入射された光を光電変換することにより第1の画像を生成し、撮像制御部16に供給する。
【0038】
次に、LED13−2により波長λ2の光を被写体に照射する。この照射光は外光とともに被写体により反射され、光学フィルタ14を介して撮像部15に入射される。撮像部15は、入射された光を光電変換することにより第2の画像を生成し、撮像制御部16に供給する。
【0039】
撮像制御部16は、撮像部15から供給される第1の画像及び第2の画像を、画像処理部17に供給する。
【0040】
画像処理部17は、第1の画像と第2の画像との対応する画素の輝度値Y1,Y2の差分S=Y1−Y2を算出し、その差分Sを所定の閾値と比較することにより2値化し、2値の一方の領域(所定の閾値以上となる差分Sに対応する領域)を肌領域として検出する。
【0041】
図2は、検出対象物21となる人の肌領域に対して想定されている反射特性を示している。図2に示すように、人の肌領域は波長960nm付近に極小値が存在することが知られている。
【0042】
波長λ1及びλ2の組合せは、肌領域に対応する差分Sが所定の閾値以上となるとともに、肌領域とは異なる領域に対応する差分Sが所定の閾値未満となるような組合せとされる。
【0043】
すなわち、波長λ1及びλ2の組み合わせは、波長λ1の光に対する反射率と波長λ2の光に対する反射率との差が、十分大きくなるような組合せとして、例えば、波長λ1の値は640nmから1000nm、波長λ1よりも長波長側の波長λ2の値は900nmから1100nmとされる。
【0044】
なお、波長λ1及びλ2それぞれに対する反射率が同一の被写体に光を照射した場合、差分Sが0となるように、LED13−1及びLED13−2の照射光量が調整されているものとする。
【0045】
[照度分布について]
次に、図3乃至図5は、LED13−1が波長λ1の光を照射したときの照度分布として、LED13−1の指向特性に応じて変化する照度分布の一例を示している。
【0046】
なお、LED13−2が波長λ2の光を照射したときの照度分布は、LED13−1が波長λ1の光を照射したときの照度分布と同様となるので、図3以降の図面において、LED13−1が波長λ1の光を照射したときの照度分布についてのみ説明することとする。また、LED13−2は、LED13−1と同様に構成されるため、以下において、LED13−1の前面に非球面レンズ等を設ける場合についてのみ説明し、LED13−2の説明は省略する。
【0047】
さらに、図3乃至図5では、図3A乃至図5Aにおいて、FWHM(full width at half maximum,半値全幅)=60度である場合の照度分布を説明する。また、図3B乃至図5Bにおいて、FWHM=20度である場合の照度分布について説明する。
【0048】
図3は、撮像部15の画角θ1を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布を示している。
【0049】
なお、撮像部15の画角θ1は、対角方向の画角、すなわち、撮像部15から、図3において点線で示される対角線の両端に、それぞれ延ばした2本の線分が成す角度を表している。いまの場合、画角θ1は65度である。また、撮像部15の水平方向の画角θHは54度であり、撮像部15の垂直方向の画角θVは42度である。さらに、撮像部15における撮像範囲のアスペクト比は横:縦が4:3である。
【0050】
また、図3に示される照度分布は、撮像部15から0.65mだけ離れた位置における照度の分布を示しており、照度が高い程に濃い色(黒色)で表される。このことは、後述する図4についても同様である。
【0051】
図3Aは、LED13−1がFWHM=60度である場合の照度分布の一例を示している。また、図3Bは、LED13−1がFWHM=20度である場合の照度分布の一例を示している。
【0052】
図3A及び図3Bに示される矩形(黒色の線で示す)は、撮像部15の画角θ1における撮像範囲を示している。図4は、図3A及び図3Bに示される矩形内の範囲、すなわち、撮像部15の撮像範囲の照度分布のみを示している。
【0053】
図5は、図4に示される撮像範囲上の、対角線上(図4のにおいて点線で示す)の位置における照度分布を示している。
【0054】
なお、図5A及び図5Bにおいて、横軸は、対角線上の位置を示しており、縦軸は照度([W/m2])を示している。また、縦軸が示す照度は、LED13−1から照射される出射総和光量を1[W]とした場合に得られる照度を示している。このことは、後述する図11、図15及び図19についても同様である。
【0055】
LED13−1がFWHM=60度である場合(いまの場合、LED13−1からの出射総和光量は1[W])、図5Aに示されるように、撮像範囲内の最大照度は0.83[W/m2]となり、最小照度は0.39[W/m2]となる。また、LED13−1がFWHM=60度である場合、照射効率は約20%となる。なお、照射効率とは、LED13−1から照射される照射光の光束(単位面積を単位時間内に通過する光のエネルギー)を100%とした場合に、撮像範囲内に到達する照射光の光束を表す。
【0056】
LED13−1がFWHM=20度である場合(いまの場合、LED13−1からの出射総和光量は1[W])、図5Bに示されるように、撮像範囲内の最大照度は5.23[W/m2]となり、最小照度は0.18[W/m2]となる。また、LED13−1がFWHM=20度である場合、照射効率は約56%となる。
【0057】
なお、LED13−1は、ランバート光源であって、cosθの配向分布を有しているものとする。したがって、照射効率は、LED13−1が有するcosθの配向分布を考慮し、LED13−1から照射された光の光量のうち、撮像範囲内に照射された光量を換算することにより算出される。
【0058】
図3A乃至図5Aに示されるように、LED13−1がFWHM=60度である場合、撮像部15の撮像範囲全体を、ほぼ均一の照度で照らすような照度分布となっている。しかしながら、照射効率は約20%となっており、非常に照射効率が悪いものとなっている。
【0059】
図3B乃至図5Bに示されるように、LED13−1がFWHM=20度である場合、照射効率は約56%となっており、照射効率が高いものとなっている。しかしながら、撮像部15の撮像範囲全体を、ほぼ均一の照度で照らすようにはなっておらず、特に、撮像範囲における中央部分と、端部分との照度差が大きく異なるものとなっている。
【0060】
このため、LED13−1がFWHM=20度である場合、撮像範囲の中央部分においては比較的大きな照度となるものの、端部分においては照度が小さくなってしまい、端部分において、肌領域を精度良く検出することができない。なお、このことは、LED13−2についても同様である。
【0061】
検出装置1では、照射効率が高い程に、肌領域の検出可能距離を延ばすことができる。また、検出装置1では、撮像部15の撮像範囲全体をほぼ均一の照度とすることにより、照度の違いに起因して撮像範囲内の検出可能距離が異なることとなる事態を防止できる。
【0062】
そこで、検出装置1のLED13−1及び13−2は、照射効率が高く、撮像部15の撮像範囲全体を、ほぼ同一の照度で照らすことが可能なものであることが望ましい。
【0063】
ここで、FWHM=60度であるLEDは、上述のように、撮像部15の撮像範囲全体を、ほぼ同一の照度で照らすことができるものの、照射効率は悪いものとなっている。
【0064】
[球面レンズ]
次に、図6及び図7を参照して、FWHM=60度であるLEDの照射効率の悪さを、球面レンズを設けるようにして改善する場合について説明する。
【0065】
図6は、LED13−1がFWHM=60度であって、球面レンズが設けられていない場合についての光量の分布を示している。
【0066】
なお、図6において、横軸は、水平方向の画角を表しており、-27度から27度までの間が撮像範囲に対応している。また、縦軸は、0度から90度までの光量を積算して得られる光量積算値を100%とした場合の、光量積算値の割合[%]を表している。さらに、図6において、黒色の矩形は光量の分布を表しており、白色の矩形は光量積算値の割合[%]を表している。これらのことは、後述する図7についても同様である。
【0067】
図6に示されるように、水平方向の画角が27度である場合に、光量積算値の割合は全体の21%となっており、照射効率が悪いものとなっている。
【0068】
次に、図7は、LED13−1がFWHM=60度であって、球面レンズが設けられている場合についての光量の分布を示している。
【0069】
LED13−1の前面に球面レンズを設けた場合には、球面レンズの屈折作用により、図7に示されるように、光量の分布が、-27度から27度までの撮像範囲内に集中し、光量積算値の割合が増加する。これにより、照射効率を改善することが可能となる。
【0070】
ここで、撮像範囲内における照度と、検出可能距離の平方根(√検出可能距離)とは比例する関係にあるため、検出可能距離は、撮像範囲内の照度に応じて決まる。
【0071】
したがって、撮像範囲内すべてにおいて均一の照度で照射されている場合には、撮像範囲内のいずれにおいても、同一距離までの検出が可能となる。
【0072】
LED13−1の前面に球面レンズを設けたとしても、撮像範囲内における中央部分と4隅の部分とでは、照度が均一ではないため、検出可能距離が異なるものとなっている。
【0073】
[非球面レンズ]
次に、図8乃至図11を参照して、球面レンズの代わりに非球面レンズを用いるようにして、照射効率を改善する他、撮像範囲内において照度を均一化する場合について説明する。
【0074】
図8は、LED13−1の前面に設けられる非球面レンズの形状を示している。
【0075】
なお、図8には、非球面レンズの形状(実線で示す)の他、比較のために球面レンズの形状(点線で示す)も示されている。
【0076】
非球面レンズの形状は、レンズ面の頂点から任意のレンズ面までの深さを表すサグ量により表すことができる。具体的には、例えば、非球面レンズのサグ量Z1は、次式(1)により表される。
【0077】
【数1】

【0078】
ここで、式(1)のサグ量Z1は、非球面レンズの中心軸(レンズ半径=0mm)からの距離(レンズ半径)rにおけるサグ量を表す。式(1)の右辺において、定数Nを例えば6とされ、定数c,α246は、それぞれ、c<0,0≦α24≦0,α6≦0という条件を満たす。また、非球面レンズの光束出射面の曲率半径をRとするとc=1/Rとなる。
【0079】
さらに、kはコーニック定数を表し、α2は2次のべき乗項r2の非球面係数、α4は4次のべき乗項r4の非球面係数、α6は6次のべき乗項r6の非球面係数を表す。
【0080】
具体的には、例えば、非球面レンズとしては、その屈折率を1.484998とし、中心軸におけるレンズの厚さを2.9mmとし、式(1)において、Rを-2.91とし、α2を0.05とし、α4を0とし、α6を-0.001とした場合に得られるレンズが採用される。
【0081】
なお、式(1)の右辺では、レンズの形状として、第1項が球面を表し、第2項以上が非球面を表している。
【0082】
図8に示されるように、非球面レンズでは、レンズの中心軸近くにおいて、光を屈折させるためのパワー(屈折力)を小さくし、レンズ端に近づくにつれてパワーが大きくなるような形状とされる。すなわち、非球面レンズでは、レンズの中心軸近くを通過する光の光束の密度を低くし、レンズ端に近づくにつれて、通過する光の光束の密度を高くするような形状とされる。
【0083】
これに対して、球面レンズでは、レンズのいずれの位置においても、パワーが同一となる形状となっている。
【0084】
次に、図9乃至図11を参照して、非球面レンズを設けた場合における照度分布について、球面レンズを設けた場合における照度分布と比較しながら説明する。
【0085】
図9は、撮像部15の画角θ1を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布を示している。
【0086】
なお、図9Aは、LED13−1に球面レンズを設けた場合に得られた照度分布の一例を示している。また、図9Bは、LED13−1に非球面レンズを設けた場合に得られた照度分布の一例を示している。
【0087】
ここで、図9A及び図9Bに示される矩形(黒色の線で示す)は、撮像部15の撮像範囲を示している。
【0088】
図10は、撮像部15の画角θ1における撮像範囲の照度分布を示している。
【0089】
図10Aは、LED13−1に球面レンズを設けた場合の、撮像部15の撮像範囲における照度分布を示しており、図10Bは、LED13−1に非球面レンズを設けた場合の、撮像部15の撮像範囲における照度分布を示している。
【0090】
図11は、図10に示される撮像範囲上の、対角線上(図10のにおいて点線で示す)の位置における照度分布を示している。
【0091】
なお、図11A及び図11Bにおいて、横軸は、対角線上の位置を示しており、縦軸は照度を示している。
【0092】
LED13−1の前面に球面レンズを設けた場合、図11Aに示されるように、撮像範囲内の最大照度は1.93[W/m2]となり、最小照度は1.07[W/m2]となる。また、照射効率は約50%となる。
【0093】
さらに、LED13−1の前面に非球面レンズを設けた場合、図11Bに示されるように、撮像範囲内の最大照度は1.55[W/m2]となり、最小照度は1.08[W/m2]となる。また、照射効率は約44%となる。
【0094】
このように、LED13−1の前面に非球面レンズを設けた場合、レンズが設けられていない場合の照射効率20%(図5A)と比較して、約2倍程度の照射効率が得られる。また、撮像範囲において、中央部分に対する、端部分の照度の低下量が70%程度に留められ、撮像範囲内で検出可能な距離が均一になりつつある。
【0095】
図9乃至図11に示されるように、LED13−1に非球面レンズを設けた場合(図9B乃至図11B)における照度分布は、LED13−1に球面レンズを設けた場合(図9A乃至図11A)における照度分布と比較して、撮像範囲内においてほぼ均一となっており、撮像部15の撮像範囲内における照度むらが抑制されていることがわかる。
【0096】
ところで、上述した球面レンズ、及び非球面レンズは、レンズの中心を通る中心軸に対して対称な形状となっており、中心軸を中心とする同心円状に同一の曲率となるように形成されている。
【0097】
したがって、上述の球面レンズ、及び非球面レンズは、中心軸を中心とする同心円状に、照度分布を変化させるものとなる。
【0098】
しかしながら、撮像部15における撮像範囲のアスペクト比は、横:縦が4:3又は16:9のいずれかであるものが殆どであるため、一般的に、撮像部15の撮像範囲は、水平方向に長い長方形の形状となる。
【0099】
このため、LED13−1に設けられるレンズは、水平方向に長い撮像範囲に合わせて、照度分布を変化させるものであることが望ましい。
【0100】
<2.第2の実施の形態>
[アナモルフィックレンズ]
次に、図12乃至図15を参照して、水平方向と垂直方向とで異なる照度分布に変化させることが可能なアナモルフィックレンズ31について説明する。
【0101】
図12は、アナモルフィックレンズ31の外観例を示している。
【0102】
アナモルフィックレンズ31の形状は、以下の次式(2)により示されるサグ量Z2で表される。
【0103】
【数2】

【0104】
ここで、式(2)の左辺におけるサグ量Z2は、アナモルフィックレンズ31上の位置(x,y)におけるサグ量を表している。なお、位置(x,y)は、アナモルフィックレンズ31を上面から見た場合に、アナモルフィックレンズ31の中心を原点(0,0)として、原点において互いに直交するX軸及びY軸により定義される。
【0105】
式(2)の右辺において、変数Nは例えば6であり、定数cx,cy224466は、それぞれ、cx<0,cy&#60;0,0≦α2,0≦β24≦0,β4≦0,α6≦0,β6≦0という条件を満たす。また、非球面レンズの光束出射面におけるX軸方向の曲率半径をRxとするとcx=1/Rxとなり、非球面レンズの光束出射面におけるY軸方向の曲率半径をRyとするとcy=1/Ryとなる。
【0106】
さらに、式(2)の右辺において、kxはX方向のコーニック定数を表し、kyはY方向のコーニック定数を表している。また、α2は2次のべき条項x2の非球面係数、α4は4次のべき条項x4の非球面係数、α6は6次のべき条項x6の非球面係数を表す。
【0107】
さらに、式(2)の右辺において、β2は2次のべき乗項y2の非球面係数、β4は4次のべき乗項y4の非球面係数、β6は6次のべき乗項y6の非球面係数を表す。
【0108】
アナモルフィックレンズ31は、X軸方向とY軸方向とで異なる曲率となるように形成されるので、被写体を含む撮像範囲における照度分布を、X軸方向とY軸方向とで異なる照度分布に変化させることができる。
【0109】
具体的には、例えば、アナモルフィックレンズ31は、X軸又はY軸に対して線対称となるようにレンズの曲率(形状)を変化させるように設計できるので、横長の撮像範囲に合わせて、照度分布を変化させることができる。
【0110】
より詳細には、例えば、アナモルフィックレンズ31としては、その屈折率を1.484998とし、レンズの中心を通る中心軸におけるレンズの厚さを2.9mmとし、Rxを-3とし、Ryを-4とする。そして、α2を0.06とし、β2を0とし、α4を-0.01とし、β4を-0.02とし、α6を0とし、β6を0とした場合に得られるレンズとされる。
【0111】
次に、図13乃至図15を参照して、アナモルフィックレンズ31を設けた場合における照度分布について説明する。
【0112】
図13は、撮像部15の画角θ1を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布を示している。
【0113】
なお、図13は、LED13−1にアナモルフィックレンズ31を設けた場合に得られた照度分布の一例を示している。ここで、図13に示される矩形(黒色の線で示す)は、撮像部15の撮像範囲を示している。
【0114】
図14は、撮像部15の画角θ1における撮像範囲の照度分布を示している。
【0115】
図14は、LED13−1にアナモルフィックレンズ31を設けた場合の、撮像部15の撮像範囲における照度分布を示している。
【0116】
図15は、図14に示される撮像範囲上の、対角線上(図14のにおいて点線で示す)の位置における照度分布を示している。
【0117】
なお、図15において、横軸は、対角線上の位置を示しており、縦軸は照度を示している。
【0118】
アナモルフィックレンズ31では、図15に示されるように、撮像範囲内の最大照度は1.74[W/m2]となり、最小照度は1.26[W/m2]となる。また、照射効率は約51%となる。
【0119】
このように、アナモルフィックレンズ31を採用した場合には、比較的、照射効率が高くすることができる。また、撮像範囲内における中央部分と四隅の部分とで、照度がある程度均一となるので、照度むらが抑制されたものとすることができる。
【0120】
なお、アナモルフィックレンズ31のサグ量Z2は、上述した式(2)の他、次式(3)によっても表すことができる。
【0121】
【数3】

【0122】
ここで、式(3)において、係数群Aは対称係数を表し、係数群Bは非対称係数を表す。それ以外については、式(2)と同様である。
【0123】
具体的には、例えば、アナモルフィックレンズ31としては、その屈折率を1.533301とし、レンズの中心を通る中心軸におけるレンズの厚さを2.9mmとし、Rxを-3.3とし、Ryを-4とする。そして、kx及びkyを0とし、α2を0.07とし、β2を0とし、α4を-0.005とし、β4を-0.015とし、α6を0とし、β6を0とされる。なお、計数群A及びBは、適宜、適切な値とされる。
【0124】
その他、例えば、アナモルフィックレンズ31としては、その屈折率を1.484998とし、レンズの中心を通る中心軸におけるレンズの厚さを2.9mmとし、Rxを-4.329971とし、Ryを-3.934582とする。そして、kxを1.168205とし、kyを-0.237213とし、A4を-0.002274とし、B4を1.780398とし、A6を-0.002139とし、B6を-0.197166とする。さらに、A8を0.000271とし、B8を-0.150654とし、A10を1.16E-08(=1.16×10-8)とし、B10を0.458473とし、A12を-2.42E-06(=-2.42×10-6)とし、B12を-0.119662とし、A14を1.16E-07(=1.16×10-7)とし、B14を-0.124731とされる。なお、α2,β2,α4,β4,α6及びβ6は、適宜、適切な値とされる。
【0125】
<3.第3の実施の形態>
[フライアイレンズを用いる場合の一例]
次に、図16乃至図19を参照して、アナモルフィックレンズ31に代えて、フライアイレンズ41を用いる場合について説明する。
【0126】
図16は、LED13−1にフライアイレンズ41を設けた場合を示している。
【0127】
フライアイレンズ41は、複数の単レンズ41a乃至41gにより構成されている。複数の単レンズ41a乃至41gは、それぞれ、入射された光を屈折させることにより、撮像範囲内に照射する。
【0128】
これにより、複数の単レンズ41a乃至41gから、照度分布の異なる光が、それぞれ、撮像範囲に照射されることにより、撮像範囲の照度が均一化されることとなる。
【0129】
すなわち、例えば、LED13−1が発光する第1の波長の光は、それぞれ異なる照度分布からなる複数の光(例えば、LED13−1の中心軸近辺の光の照度は大きく、中心軸から離れる程に光の照度は小さくなる)により構成されており、複数の光が、それぞれ、単レンズ41a乃至41gに入射される。
【0130】
そして、単レンズ41a乃至41gそれぞれにおいて、照度の大きな光が入射された場合には、全体的に照度が大きい照度分布で、撮像範囲が照射され、照度の小さな光が入射された場合には、全体的に照度が小さい照度分布で、撮像範囲が照射されることとなる。
【0131】
これにより、単レンズ41a乃至41gそれぞれに入射された、異なる照度分布の光が、撮像範囲の全体に亘って照射されることとなるので、撮像範囲内のいずれの照度もほぼ均一となる。
【0132】
ところで、入射された光を、単レンズ41a乃至41gにより撮像範囲に照射するためには、LED13−1からの照射光を、単レンズ41a乃至41gそれぞれのレンズ面に対して垂直に入射する必要がある。
【0133】
このため、LED13−1は、LED13−1から照射される光を、単レンズ41a乃至41gそれぞれのレンズ面に対して垂直に入射させるために屈折させるための補正用レンズ13aを設けることが望ましい。
【0134】
次に、図17乃至図19を参照して、フライアイレンズ41を設けた場合における照度分布について説明する。
【0135】
図17は、撮像部15の画角θ1を1.5倍にした場合に得られる拡大撮像範囲の照度分布を示している。
【0136】
なお、図17は、LED13−1にフライアイレンズ41を設けた場合に得られた照度分布の一例を示している。ここで、図17に示される矩形(黒色の線で示す)は、撮像部15の撮像範囲を示している。
【0137】
図18は、撮像部15の画角θ1における撮像範囲の照度分布を示している。
【0138】
図18は、LED13−1にフライアイレンズ41を設けた場合の、撮像部15の撮像範囲における照度分布を示している。
【0139】
図19は、図18に示される撮像範囲上の、対角線上(図18のにおいて点線で示す)の位置における照度分布を示している。
【0140】
なお、図19において、横軸は、対角線上の位置を示しており、縦軸は照度を示している。
【0141】
図16に示されるように構成した場合、図19に示されるように、撮像範囲内の最大照度は2.43[W/m2]となり、最小照度は0.89[W/m2]となる。また、照射効率は約55%となる。このように、フライアイレンズ41を採用した場合には、比較的、照射効率を高く保つことが可能となる。
【0142】
なお、フライアイレンズ41は、以下の条件(a)及び(b)を満たすものとする。
(a)各単レンズ41a乃至41gからの光が、撮像範囲に照射されるように、各単レンズ41a乃至41gについての横と縦との比率は、撮像部15の撮像範囲におけるアスペクト比と一致する。
(b)各単レンズ41a乃至41gからの光が、少なくとも撮像範囲を照らすように、各単レンズ41a乃至41gは、次式(4)を満たす。
【0143】
【数4】

【0144】
なお、式(4)の右辺において、arctan[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2(1/2乗は√を表す)は、撮像部15の対角方向の画角θ1の半画角θ1/2であり、sin[arctan[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2]については、図20及び図21を参照して後述する。
【0145】
また、式(4)の左辺におけるNAFlyは、フライアイレンズ41を構成する各単レンズ41a乃至41gにおける開口数を表している。なお、開口数NAFlyについては、図22を参照して後述する。
【0146】
すなわち、式(4)は、各単レンズ41a乃至41gが、そこに入射された光を、撮像部15の半画角θ1/2以上の角度で照射することを表している。
【0147】
次に、図20及び図21を参照して、式(4)の右辺について説明する。
【0148】
図20は、撮像部15の撮像範囲を示している。
【0149】
図20に示される矩形は、撮像部15の撮像範囲を示している。また、図20において、撮像範囲の中心(重心)を原点OpとするXYZ座標が定義されている。
【0150】
図20において、点Zpは、撮像部15の位置を表している。
【0151】
半画角θv/2は、撮像部15における垂直方向の画角θvの1/2を表している。すなわち、半画角θv/2は、点Zpと点Opとを結ぶ線分と、点Zpと点ypとを結ぶ線分とが成す角度を表す。
【0152】
半画角θH/2は、撮像部15における水平方向の画角θHの1/2を表している。すなわち、半画角θH/2は、点Zpと点Opとを結ぶ線分と、点Zpと点xpとを結ぶ線分とが成す角度を表す。
【0153】
距離Lは、撮像部15から被写体までの距離、すなわち、点Zpから点Opまでの距離を表す。また、距離aは点Opから点apまでの距離を、距離xは点ypから点apまでの距離を、距離yは点xpから点apまでの距離をそれぞれ表す。
【0154】
ここで、距離x=L×tan(θH/2)であり、距離y=L×tan(θV/2)である。また、三平方の定理より、距離a2=x2+y2である。
【0155】
したがって、距離a2={L×tan(θH/2)}2+{L×tan(θV/2)}2となり、距離a>0であることを考慮すると、距離a=[{L×tan(θH/2)}2+{L×tan(θV/2)}2]1/2が導出される。
【0156】
次に、図21は、対角方向の半画角θ1/2の算出方法の一例を示している。
【0157】
図21に示されるような、点zp,点Op,点apの各点を頂点とする直角三角形から、tan(θ1/2)=a/L=[{L×tan(θH/2)}2+{L×tan(θV/2)}2]1/2/L=[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2が導出される。
【0158】
そして、tan(θ1/2)=[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2を、θ1/2について解くと、θ1/2=arctan[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2となる。なお、arctanは、tanの逆写像を表す。
【0159】
したがって、式(4)の右辺は、撮像部15の半画角θ1/2についてsinをとった値sin(θ1/2)である。
【0160】
次に、図22を参照して、式(4)の左辺について説明する。図22は、単レンズ41aを示している。
【0161】
なお、単レンズ41b乃至41gは、単レンズ41aと同様に構成されているため、図22においては、単レンズ41aのみを説明し、単レンズ41b乃至41gの説明は省略している。
【0162】
単レンズ41aは、単レンズ41aに対して垂直に入射される光を屈折させて、矩形範囲に光を照射させる。
【0163】
なお、単レンズ41aにおいて、角度θ2は、対角方向の角度を表す。すなわち、角度θ2は、単レンズ41aから、単レンズ41aからの光が照射される矩形範囲の対角線上の両端それぞれに延ばした2本の線分α及びβが成す角度を表す。
【0164】
したがって、単レンズ41aに入射される光が、撮像範囲全体に照射されるためには、単レンズ41aにおける角度θ2の半角度θ2/2が、撮像部15における半画角θ1/2以上である必要がある。
【0165】
具体的には、θ2/2≧θ1/2= arctan[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2を満たす必要がある。これを、両辺についてsinをとれば、sin(θ2/2)≧sin[arctan[tan2H/2)+tan2V/2)]1/2]となり、上述した式(4)となる。なお、sin(θ2/2)は開口数NAflyを表す。
【0166】
[アナモルフィックレンズの焦点距離]
次に、図23を参照して、第2の実施の形態におけるアナモルフィックレンズ31の焦点距離fについて説明する。
【0167】
図23において、横軸は、アナモルフィックレンズ31の焦点距離fと、アナモルフィックレンズ31が設けられたLED13−1の発光チップサイズCとの積f×Cを表しており、縦軸は、照射効率(集光効率)を表している。
【0168】
なお、発光チップサイズCとは、LED13−1が円形の形状である場合には、その直径を表し、LED13−1が正方形の形状である場合には、その一辺の長さを表す。
【0169】
LED13−1から照射される、LED13−1の光軸近傍の照射光に対しては、焦点距離fが長くなるに従って、アナモルフィックレンズ31により光を屈折させるためのパワーD=n/fが小さくなる(弱くなる)ため、LED13−1の光軸近傍の照射光を集光する集光効率が低下するものとなる。なお、nはアナモルフィックレンズ31の屈折率を表す。
【0170】
これに対して、LED13−1から照射される、LED13−1の光軸近傍以外の照射光に対しては、焦点距離fが長くなるに従って、LED13−1の光軸近傍以外の照射光を集光する集光効率が向上するものとなる。
【0171】
したがって、図23に示されるように、焦点距離fとLED13−1のチップサイズCに応じて、集光効率が変化するものとなる。このことは、LED13−2についても同様である。
【0172】
図23に示されるように、f×Cが、4.0 ≦ f×C ≦ 10.0である場合に、集光効率が概ね50%となる。
【0173】
したがって、アナモルフィックレンズ31の焦点距離fは、より集光効率を向上させるために、例えば、集光効率が50%以上となる4.0/C ≦ f ≦ 10.0/Cを満たすようにすることが望ましい。
【0174】
<4.変形例>
第3の実施の形態において、フライアイレンズ41は、7個の単レンズ41a乃至41gにより構成されるものとしたが、単レンズの個数は7個に限定されず、複数個であれば、何個により構成されていてもよい。また、LED13−1及びLED13−2は、それぞれ1個ではなく、必要に応じて複数個設けるようにしてもよい。
【0175】
また、上述した検出装置1は、例えば、テレビジョン受像機等に内蔵するように構成することができる。この場合、テレビジョン受像機において、内蔵された検出装置1により肌領域が検出され、検出された肌領域の形状等に対応する処理が行われる。
【0176】
具体的には、例えば、テレビジョン受像機において、ユーザが、チャンネルや音量の変更を指示するポスチャやジェスチャの動作を行なった場合に、内蔵された検出装置が、検出した肌領域に基づいて、ユーザのポスチャやジェスチャを検出し、その検出結果に対応して、チャンネルや音量の変更が制御される。
【0177】
なお、上述した照度分布における照度は、例えば、近赤外の波長域に感度を有するパワーメータを用いて、照射光を受光し、照射光を受光する受光部の面積と、受光部により受光された照射光の光とに基づいて算出することができる。
【0178】
また、受光した照射光を電気信号に変換する光電変換(O/E変換)を行なうディテクタ等とオシロスコープとを組み合わせることにより、電気的なレベルから、受光した照射光に対応する照度を算出することが可能である。
【0179】
ディレクタ等とオシロスコープとを組み合わせて照度を算出する場合には、ディテクタの受光感度から照射光の光量(照度)の絶対値を換算することにより、比較的正確な照度を算出できる。
【0180】
このような照度の算出方法を用いることにより、撮像部15の撮像範囲内の照度分布を算出することができる。
【0181】
なお、本実施の形態は、上述した第1乃至第3の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0182】
1 検出装置, 11 制御部, 12 LED制御部, 13−1,13−2 光源部, 13a 補正用レンズ, 14 光学フィルタ, 15 撮像部, 16 撮像制御部, 17 画像処理部, 31 アナモルフィックレンズ, 41 フライアイレンズ, 41a乃至41g 単レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像上から人間の肌を表す肌領域を検出する画像処理装置において、
第1の波長の光を被写体に照射する第1の照射手段と、
前記第1の波長よりも長波長である第2の波長の光を前記被写体に照射する第2の照射手段と、
前記第1の照射手段から照射された前記第1の波長の光を屈折させることにより、前記被写体に対する、前記第1の波長の光の照度分布を変化させる第1の照度分布変化手段と、
前記第2の照射手段から照射された前記第2の波長の光を屈折させることにより、前記被写体に対する、前記第2の波長の光の照度分布を変化させる第2の照度分布変化手段と、
前記第1の波長の光が前記被写体に照射されているときに入射される前記被写体からの反射光に基づいて第1の画像を生成するとともに、前記第2の波長の光が前記被写体に照射されているときに入射される前記被写体からの反射光に基づいて第2の画像を生成する生成手段と、
生成された前記第1及び第2の画像に基づいて、前記肌領域を検出する検出手段と
を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、前記被写体に対する前記照度分布を水平方向と垂直方向とで異なる照度分布に変化させる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、水平方向と垂直方向で異なる曲率となるように形成されたアナモルフィックレンズからなる
請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記アナモルフィックレンズの焦点距離は、前記アナモルフィックレンズにより屈折される光を照射する前記照射手段の大きさに基づき規定される範囲内の距離とされる
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記アナモルフィックレンズの焦点距離fは、前記アナモルフィックレンズにより屈折される光を照射する前記照射手段の大きさCに基づき規定される以下の関係を満たす
4.0/C ≦ f ≦ 10.0/C
請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、照射された光を構成する、それぞれ照度分布の異なる複数の光を屈折させ、前記被写体に照射させることにより、前記被写体に対する前記照度分布を変化させる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記被写体を含む撮像範囲で撮像を行なうことにより、前記撮像範囲に対応する前記第1及び第2の画像を生成し、
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、前記撮像範囲と同一の縦横比とされた複数の単レンズにより構成され、少なくとも前記撮像範囲を含む矩形範囲に対して前記複数の光を照射させるフライアイレンズからなる
請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の照度分布変化手段に照射される光を屈折させることにより、前記第1の照度分布変化手段に対して垂直に照射させる第1の垂直照射手段と、
前記第2の照度分布変化手段に照射される光を屈折させることにより、前記第2の照度分布変化手段に対して垂直に照射させる第2の垂直照射手段と
をさらに含む請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、前記被写体に対する前記照度分布を同心円状に変化させる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、同心円状に同一の曲率となるように形成されているレンズからなる
請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、照射された光を屈折させることにより、前記被写体に照射される光も増加させる
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第1の波長λ1及び前記第2の波長λ2は、以下の関係式を満たす
640nm≦λ1≦1000nm
900nm≦λ2≦1100nm
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記生成手段は、前記被写体を含む撮像範囲で撮像を行なうことにより、前記撮像範囲に対応する前記第1及び第2の画像を生成し、
前記第1及び第2の照度分布変化手段は、前記被写体を含む前記撮像範囲に対する前記照度分布を変化させる
請求項1に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−53649(P2012−53649A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195376(P2010−195376)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】