説明

画像処理装置

【課題】移動ユニットが強い衝撃が受けて性能や信頼性が低下することを抑制し、且つ、電源容量を大きくする必要がない画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像の印刷もしくは読み取りを行うための移動ユニットと、前記移動ユニットの移動が所定範囲を超えないよう阻止する阻止手段と、前記阻止手段で前記移動ユニットの移動が阻止されたときの衝撃を吸収する吸収手段と、前記衝撃を検出する検出手段とを有し、前記吸収手段は前記検出手段の一部をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを駆動して往復移動を行なうキャリッジやスキャナを備えた画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置において、往復移動を行うキャリッジのホームポジションを決める方法が、特許文献1に開示されている。
【0003】
キャリッジの移動範囲の一端にホームポジションが設定され、このホームポジション側にキャリッジを移動させる。そして、キャリッジのホームポジションを検出するために、キャリッジの移動経路の端部に配置されているフレームに、キャリッジを衝突(接触)させる。キャリッジが移動阻止手段に接触したときの位置、または当該位置に基づき設定された位置が、以降のキャリッジ位置決めの基準となるホームポジション(基準位置)となる。
【0004】
キャリッジとフレームとの接触は、「突き当て」または「ぶつかり」と呼ばれている。キャリッジがホームポジション側に移動し、フレームに突き当たると、キャリッジを駆動する直流モータの電流値が増加する。キャリッジの移動の過程で、直流モータの電流値が所定値以上になったときに、キャリッジがホームポジション側のフレームに突き当たったと推定される。そして、キャリッジモータの回転状態を検出するエンコーダ等から、ON−OFF信号を受信しなくなったことと合わせて、キャリッジが停止したと判定する。キャリッジが停止したと判定されると、直流モータで構成されているキャリッジモータへの通電を止め、キャリッジが停止した位置を、ホームポジションとして設定する。または、キャリッジが停止したと判定すると、キャリッジモータを、逆方向へ回転させるように制御し、停止位置からある距離を戻った位置を、キャリッジのホームポジションとして設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−4713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、キャリッジの移動経路の端部に配置されているフレームにキャリッジが強く突き当てられるので、精密部品を搭載するキャリッジに衝撃が加わり、キャリッジの性能、信頼性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
また、特許文献1の方法では、キャリッジモータの駆動電流値が所定値以上になったときに、キャリッジがホームポジション側のフレームに突き当たったと判定するので、判定のためにキャリッジモータに過大な電流を供給する必要がある。過負荷状態での電流供給を電源に強いるので、大きな電源容量が必要になってしまう。
【0008】
これらは、プリンタにおいて印刷ヘッドを搭載するキャリッジの場合に限らず、原稿読み取りのための読取センサを搭載するスキャナの場合にも生じる問題である。
【0009】
本発明は、画像処理装置が有するキャリッジやスキャナ等の移動ユニットが強い衝撃を受けて性能や信頼性が低下することを抑制し、且つ、電源容量を大きくする必要がない画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置は、画像の印刷もしくは読み取りを行うための移動ユニットと、前記移動ユニットの移動が所定範囲を超えないよう阻止する阻止手段と、前記阻止手段で前記移動ユニットの移動が阻止されたときの衝撃を吸収する吸収手段と、前記衝撃を検出する検出手段とを有し、前記吸収手段は前記検出手段の一部をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャリッジやスキャナ等の移動ユニットが強い衝撃を受けて性能や信頼性が低下することを抑制することができ、且つ、電源容量を大きくする必要がない優れた画像処理装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】複合型のインクジェットプリンタPR1を示す外観である。
【図2】インクジェットプリンタPR1のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】インクジェットプリンタPR1のキャリッジ駆動部CRD1を示す。
【図4】キャリッジ9と、移動阻止部材7、8の位置関係と構造とを示す図である。
【図5】キャリッジ9の突き当てを検出する動作を示すフローチャートである。
【図6】キャリッジ9の突き当てを検出する検出手段の説明図である。
【図7】キャリッジ9が移動阻止部材7に突き当たった場合の電圧遷移を示す。
【図8】スキャナ部66のスキャナ駆動部32を示す図である。
【図9】スキャナ67の突き当てを検出する検出手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細な説明を行なう。図1は、画像処理装置の一例としての、印刷機能と原稿読み取り機能を兼ね備えた複合型のインクジェットプリンタPR1を示す外観図である。
【0014】
インクジェットプリンタPR1は、内部に印刷部(キャリッジ部)を、上面にスキャナ部66を備え、その他、メモリカードスロット部74、ホストインタフェース部73、排紙部5を有する。
【0015】
図2は、インクジェットプリンタPR1のシステム構成を示すブロック図である。
【0016】
インクジェットプリンタPR1は、キャリッジ部56、キャリッジモータ制御部60、キャリッジ9用の移動阻止部材7、8、キャリッジ位置管理部62、CPU63、ROM64、RAM65、スキャナ部66を有する。また、インクジェットプリンタPR1は、スキャナモータ制御部70、スキャナ用の移動阻止部材33、34、スキャナ位置管理部72、ホストインタフェース部73、メモリカードスロット部74を有する。
【0017】
キャリッジ部56は、往復移動ユニットとしてのキャリッジ9、キャリッジ9を駆動するキャリッジモータ58、キャリッジモータ58の回転を検出するエンコーダ59を有する。また、キャリッジ9は、印刷ヘッドを搭載して往復移動を行なう。
【0018】
ホームポジションの検出及び設定時に、移動阻止部材7の検出信号とエンコーダ59の検出信号とを用いて、キャリッジ位置管理部62がキャリッジ9の検出動作を行なう。キャリッジ位置管理部62が、検出データをCPU63へ送出し、CPU63は、前記検出データに応じて、キャリッジモータ制御部60を制御する。キャリッジ9のホームポジションと反対側の位置検出、設定時も、移動阻止部材8を使用しながら、上述と同様に制御する。
【0019】
次に、通常動作時の突き当て検出動作について説明する。図3は、インクジェットプリンタPR1の印刷部であるキャリッジ駆動部CRD1を示す図である。
【0020】
キャリッジ駆動部CRD1は、匡体6と、移動阻止部材7、8と、キャリッジ9と、キャリッジモータ58と、ベルト13と、コードストリップ14と、キャリッジ制御線15と、紙送り部16と、キャッピング機構部17とを有する。
【0021】
移動阻止部材7、8は、キャリッジ9を、ホームポジションに設定するために移動する場合に、キャリッジ9の移動を所定範囲外で阻止する部材であり、匡体6に設けられている。
【0022】
キャリッジ9は、往復移動ユニットの1つであり、印刷ヘッドとインクタンクを含む複数のインクカートリッジ10、11を搭載し、直流モータ(DCモータ)で構成されているキャリッジモータ58とベルト13とによって副走査方向に往復移動する。
【0023】
キャリッジ9にエンコーダ59が組み込まれ、エンコーダ59がコードストリップ14を読み取り、エンコーダ59の出力信号を、キャリッジ9の位置データとして用いる。
【0024】
キャリッジ制御線15には、CPUからのキャリッジ制御信号とキャリッジ9のエンコーダ59の出力信号とが伝搬される。紙送り部16は、印刷用紙を搬送する紙送りローラ等で構成されている。キャッピング機構部17は、キャリッジ9に備わる印刷ヘッドのノズル部分を封止する。
【0025】
図4は、キャリッジ9と、移動阻止部材7、8の位置関係と構造とを示す図である。ホームポジションと反対側の移動阻止部材7には、衝撃吸収部材18、19、20が設けられている。衝撃吸収部材18、19、20は、キャリッジ9が移動阻止部材7に与える衝撃を吸収して和らげる吸収手段としての機能を持っている。さらに、衝撃吸収部材18、19、20は、キャリッジ9と移動阻止部材7との突き当てによる接触の衝撃の大きさを検出する検出手段の一部をなしている。
【0026】
具体的には、衝撃吸収部材18、19、20として、たとえばゴム等の衝撃吸収材を使用し、ゴムに金属粒子を分散させた素子を使用する。つまり、非導電体の弾性物質中に導電物質の粒子を分散させた構造である。これによって、キャリッジ9と移動阻止部材7との突き当てによる衝撃が生じたときに、ゴム中の金属粒子間の間隔が短くなり、素子内部の電気抵抗値が小さくなる。キャリッジ9と移動阻止部材7との突き当てによる衝撃の大きさに応じて、衝撃吸収部材18、19、20は、電気抵抗値(部材の内部抵抗の値)が変化する特性を具備する。このように、接触の衝撃を和らげる手段である衝撃吸収部材18、19、20は、その内部電気抵抗値が変化することで、キャリッジ9と移動阻止部材7との接触の衝撃の大きさを検出するための衝撃センサとして機能し、検出手段の一部をなす。
【0027】
これと同様に、ホームポジション側の移動阻止部材8にも、衝撃吸収部材21、22、23が設けられている。衝撃吸収部材21、22、23の構造及び機能(衝撃吸収機能と検出機能)は、衝撃吸収部材18、19、20と同じである。
【0028】
ホームポジション検出動作時に、キャリッジ9は、図4において矢印25の方向に移動し、移動阻止部材8に突き当たる。また、ホームポジションと反対側の位置検出時に、キャリッジ9は、図4において矢印24の方向に移動し、移動阻止部材7に突き当たる。
【0029】
次に、実施例1において、移動阻止部材7にキャリッジ9が突き当たった場合について説明する。
【0030】
ホームポジション検出動作において、キャリッジモータ58がベルト13を駆動し、ベルト13が動くことによって、キャリッジ9が移動阻止部材7に突き当たる。
【0031】
図5は、実施例1において、キャリッジ9の突き当てを検出する動作を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS0で、キャリッジ9のホームポジション設定動作を開始し、ステップS1で、キャリッジモータ58を駆動、つまり、キャリッジモータ58の通電をONする。ステップS2で、キャリッジモータ58を定速度動作させた後に、ステップS3で、キャリッジ9が衝撃吸収部材18に接触したかどうかを、CPU63が判断する。衝撃吸収部材18の内部抵抗の値の変化に基づいて、キャリッジ9が衝撃吸収部材18に接触したかどうかを、CPU63が判断する。
【0033】
ステップS3でキャリッジ9が衝撃吸収部材18に接触したと判断されると、ステップS4で、キャリッジ9が停止したかどうかを、CPU63が判断する。衝撃吸収部材18の内部抵抗の値の変化と、エンコーダ59からの信号との両者に基づいて、キャリッジ9が停止したかどうかを、CPU63が判断する。
【0034】
キャリッジ9がまだ停止していなければ、ステップS5で、CPU63がキャリッジモータ58を低速動作に移行する。そして、ステップS4でキャリッジ9が停止したと判断されれば、ステップS6で、CPU63が、キャリッジモータ58の駆動を停止し、ステップS7で、キャリッジに位置決めの基準位置となるホームポジションの位置設定を行う。
【0035】
衝撃吸収部材18の内部抵抗Ra1の値の変化と、エンコーダ59からの信号との両者に基づいて、キャリッジ9が停止したかどうかを瞬時に判断し、キャリッジ9がまだ停止していなければ、キャリッジモータ58を直ちに低速動作に移行させる。衝撃吸収部材18が衝撃を吸収して和らげるので、キャリッジ9に強い衝撃が加わることがなく、キャリッジ9の性能、信頼性に悪影響を及ぼさない。また、キャリッジ9を停止させる必要があるときに、キャリッジモータ58を直ちに低速動作に移行するので、キャリッジモータ58に不必要な大電流が流れることを抑制することができ、電源の電流容量を大きくする必要がない。
【0036】
キャリッジ9が、ホームポジション側の移動阻止部材8に突き当たった場合の動作も、上述したキャリッジ9が移動阻止部材7に突き当たった場合の動作と同様である。
【0037】
次に、キャリッジ9の突き当て検出について具体的に説明する。図6は、キャリッジ9の突き当てを検出する検出手段の説明図である。図6(a)に示すように、検出手段の一部をなす衝撃吸収部材18は、内部抵抗Ra1を持ち、外付け抵抗R1と内部抵抗Ra1との直列抵抗が、回路電源Vccに接続されている。衝撃吸収部材18の内部抵抗Ra1の一端は、回路のGND28に接続され、衝撃吸収部材18と外付け抵抗R1との接続点に、電圧検出部29が接続されている。
【0038】
衝撃吸収部材18が有する内部抵抗Ra1は、物体による接触力が加わると抵抗値が減少する特性を具備し、接触力が加わらないときに、つまりキャリッジ9が突き当たらないときに、内部抵抗Ra1の抵抗値は、ほぼ無限大(∞)である抵抗特性を有する。また、衝撃吸収部材18にキャリッジ9が突き当たったときに、内部抵抗Ra1の抵抗値は、数KΩ程度に減少する抵抗特性を有する。
【0039】
衝撃吸収部材19、20の構成、抵抗特性は、衝撃吸収部材18の構成、抵抗特性と同様である。
【0040】
図6(b)に示すように、衝撃吸収部材21は、内部抵抗Ra2を持ち、外付け抵抗R1と内部抵抗Ra2との直列抵抗が、回路電源Vccに接続されている。つまり、衝撃吸収部材21の内部抵抗Ra2の一端は、回路のGND31に接続され、衝撃吸収部材21と外付け抵抗R1との接続点に、電圧検出部29が接続されている。
【0041】
衝撃吸収部材21が有する内部抵抗Ra2は、物体による接触力が加わると抵抗値が減少する特性を具備し、接触力が加わらないときに、つまりキャリッジ9が突き当たらないときに、内部抵抗Ra2の抵抗値は、ほぼ無限大(∞)である抵抗特性を有する。また、衝撃吸収部材21にキャリッジ9が突き当たったときに、内部抵抗Ra2の抵抗値は、数KΩ程度に減少する抵抗特性を有する。
【0042】
衝撃吸収部材22、23の構成、抵抗特性は、衝撃吸収部材21の構成、抵抗特性と同様である。
【0043】
前記のように、衝撃吸収部材の内部抵抗の抵抗値変化を利用して、電圧検出部29の電圧変化に基づいて、キャリッジ9の突き当てを検出し、また、エンコーダ59のコードストリップ14の読み取りデータに基づいて、キャリッジモータ58を制御する。このようにして、ホームポジションの検出、設定を行なう。
【0044】
ホームポジションと反対側の位置を検出する場合、図6(c)に示すように、電圧検出部29の電圧は、Vcc×Ra1/(Ra1+R1)であり、Ra1=∞であるので、電圧検出部29の電圧は、ほぼVccである。
【0045】
キャリッジ9の移動阻止部材7への突き当て動作の終了状態(停止状態)では、内部抵抗Ra1の抵抗値が、∞から数KΩに変化するので、電圧検出部29の電圧は、Vcc×Ra1/(Ra1+R1)から、回路電圧Vccよりも低い電位になる。外付け抵抗R1の値を4.7KΩ程度に設定すると、Ra1≒R1になるので、電圧検出部29の電位は、Vcc/2になる。
【0046】
そして、エンコーダ59のコードストリップ14の読み取りデータに基づいて、キャリッジモータ58を制御することによって、ホームポジションと反対側の位置を検出する。
【0047】
キャリッジ9が移動阻止部材8に突き当たっていない状態(移動状態)では、図6(d)に示すように、電圧検出部29の電圧は、Vcc×Ra2/(Ra2+R1)であり、Ra2=∞であるので、電圧検出部29の電圧は、ほぼVccである。
【0048】
キャリッジ9の移動阻止部材8への突き当て動作の終了状態(停止状態)では、内部抵抗Ra2の抵抗値が、∞から数KΩに変化するので、電圧検出部29の電圧は、Vcc×Ra2/(Ra2+R1)から、回路電圧Vccよりも低い電位になる。外付け抵抗R1の値を4.7KΩ程度に設定すると、Ra2≒R1になるので、電圧検出部29の電位は、Vcc/2になる。
【0049】
図7は、キャリッジ9が通常駆動している場合と、キャリッジ9が異常動作に陥り、移動阻止部材7に突き当たった場合とにおける電圧検出部29の電圧遷移を示す図である。
【0050】
キャリッジ9が移動阻止部材7に突き当たっていない状態(移動状態)では、衝撃吸収部材18の電圧検出部29の電圧は、Vcc×Ra1/(Ra1+R1)であり、Ra1=∞であるので、電圧検出部29の電圧は、ほぼVccである。
【0051】
図7(a)は、通常の状態の突き当て動作の説明図である。キャリッジ9が移動阻止部材7に突き当たった状態(停止状態)では、衝撃吸収部材18の電圧検出部29の電圧は、Vcc×Ra1/(Ra1+R1)であり、抵抗R1の値を4.7KΩ程度に設定すると、Ra1≒R1になる。したがって、キャリッジ9が通常駆動している場合、衝撃吸収部材18の電圧検出部29の電圧は、Vcc/2になる。
【0052】
ところで、キャリッジモータ58の異常動作によって、キャリッジ9が移動阻止部材7に激しく突き当った場合は、衝撃吸収部材18へのキャリッジ9の突き当ての力(接触力)は、通常状態の突き当て動作に比べて、大きな力(衝撃)である。突き当ての衝撃が大きければ大きいほど、衝撃吸収部材18の内部抵抗Ra1の抵抗値が減少するので、電圧検出部29の検出電位は、図7(b)に示すように、小さくなる。
【0053】
たとえば、Ra1<<4.7KΩになるので、キャリッジ9が異常動作している場合、電圧検出部29の検出電圧は、通常動作時の検出電圧Va1’に対して異常動作時の検出電圧Va1’’とすれば、Va1’’<<Va1’になる。
【0054】
前記のように、接触による衝撃の大きさが、所定値以上であるか否かを、CPU63が判断し、所定値以上であることを判断すると、キャリッジモータ58である直流モータの駆動を、CPU63が停止させる。
【0055】
実施例1では、キャリッジ9の突き当て動作において、検出電圧Va1、Va2を用いることによって、キャリッジ9の駆動が正常であるか否かを判別することができる。また、衝撃吸収部材18、19、20、または、衝撃吸収部材21、22、23は、キャリッジ9の衝撃を和らげる効果も併せ持つ。
【0056】
なお、キャリッジモータ58の駆動を停止することによってキャリッジ9を停止すると、この停止内容を表示や音声によってユーザに知らせる通知手段を設けるようにしてもよい。
【0057】
以上の説明は、往復移動する移動ユニットが画像を印刷する印刷ヘッドを搭載するキャリッジの例である。本発明はこれに限定されず、移動ユニットが画像を読み取る読取センサを搭載して往復移動するスキャナであっても同様に適用することができる。図2に示すインクジェットプリンタPR1を構成するスキャナ部66に適用した例を以下説明する。
【0058】
図2において、スキャナ部66、スキャナモータ制御部70、スキャナ用の移動阻止部材33、34、スキャナ位置管理部72、CPU63、ROM64、RAM65によって構成されている。
【0059】
スキャナ部66は、スキャナ67、スキャナモータ68、エンコーダ69を有する。スキャナ67は、原稿を読み取る。スキャナモータ68は、スキャナを駆動する。エンコーダ69は、スキャナモータ68の回転を検出する。
【0060】
図8(a)は、スキャナ部66のスキャナ駆動部32を示す図であり、スキャナ部66をガラス越しに描いた図面である。図8(b)は、スキャナ67と、移動阻止部材33、34の位置関係を示す図である。
【0061】
スキャナ67は、往復移動ユニットであり、ホームポジション側に、移動阻止部材33が設けられ、ホームポジションと反対側に、移動阻止部材34が設けられている。移動阻止部材33には、衝撃吸収部材43、45、47が設けられ、移動阻止部材34には、衝撃吸収部材44、46、48が設けられている。
【0062】
インクジェットプリンタPR1は、ADF機能を具備し、したがって、スキャナ67のホームポジションは、通常のシートスキャン時のホームポジション38と、ADF時のホームポジション39との2つ、存在する。シートスキャン時のホームポジション38、ADF時のホームポジション39のいずれかに、スキャナ67が設置されている場合、シェーデイング用パターン40を読み取る。
【0063】
スキャナモータ68は、直流モータであり、エンコーダ69も備えている。ホームポジションの検出動作時に、スキャナモータ68を駆動することによって、スキャナ67は、矢印41の方向に移動する。これと同様に、ホームポジションと反対側位置の検出動作時に、スキャナモータ68を駆動することによって、スキャナ67は、矢印42の方向に移動する。
【0064】
移動阻止部材33に設けられている衝撃吸収部材43、45、47は、スキャナ67の突き当て時の突き当て力(接触力)が大きくなると、電気抵抗値が減少する特性(内部抵抗)を具備している。衝撃吸収部材44、46、48も、上述した形態と同様に、接触力が大きくなると、電気抵抗値が減少する特性(内部抵抗)を具備している。
【0065】
図9は、スキャナ67の突き当てを検出する検出手段の説明図である。ホームポジション検出動作において、スキャナモータ68の駆動によって、スキャナ67は、移動阻止部材33の衝撃吸収部材43に突き当たる。
【0066】
検出手段の一部をなす衝撃吸収部材43は、内部抵抗Ra3を持ち、図9(a)に示すように、外付け抵抗R1と内部抵抗Ra3との直列抵抗が、回路電源Vccに接続されている。衝撃吸収部材43の内部抵抗Ra3の一端は、回路のGND51に接続され、衝撃吸収部材43と外付け抵抗R1との接続点に、電圧検出部49が接続されている。
【0067】
衝撃吸収部材43が有する内部抵抗Ra3は、物体による接触力が加わると抵抗値が減少する特性を具備し、接触力が加わらないときに、つまりスキャナ67が突き当たらないときに、内部抵抗Ra3の抵抗値は、ほぼ無限大(∞)である抵抗特性を有する。また、衝撃吸収部材43にスキャナ67が突き当たったときに、内部抵抗Ra3の抵抗値は、数KΩ程度に減少する抵抗特性を有する。
【0068】
衝撃吸収部材45、47の構成、抵抗特性は、衝撃吸収部材43の構成、抵抗特性と同様である。また、衝撃吸収部材44、46、48の構成、抵抗特性は、衝撃吸収部材43の構成、抵抗特性と同様である。ただし、衝撃吸収部材44、46、48においては、図9(b)に示すように、内部抵抗Ra3の代わりに、内部抵抗Ra4を有し、回路のGND51の代わりに、回路のGND54に接続されている。
【0069】
次に、スキャナ67の移動阻止部材33への突き当て動作を、衝撃吸収部材43が検出する動作について説明する。
【0070】
スキャナ67が移動阻止部材33に突き当たっていない状態(移動状態)では、Ra3=∞であり、衝撃吸収部材43の電圧検出部49の電圧は、Vcc×Ra3/(Ra3+R1)である。したがって、電圧検出部49の電圧Va3は、図9(c)に示すように、ほぼVccである。
【0071】
スキャナ67の移動阻止部材33への突き当て動作が終了状態(停止状態)では、Ra3≒R1であり、衝撃吸収部材43の電圧検出部49の電圧は、Vcc×Ra3/(Ra3+R1)である。ここで、外付け抵抗R1の値を4.7KΩ程度に設定すると、衝撃吸収部材43の電圧検出部49の電圧Va3=Vcc×Ra3/(Ra3+R1)≒Vcc/2程度になる。
【0072】
衝撃吸収部材45、47による動作も、衝撃吸収部材43の動作と同様である。さらに、ホームポジションと反対側位置を検出する場合も、移動阻止部材34、衝撃吸収部材44、46、48を用いて、前記手法と同様に検出することができる(図9(d)参照)。
【0073】
なお、衝撃吸収部材43、44、45、46、47、48のそれぞれに設けられている内部抵抗Ra3、Rb3、Rc3、Ra4、Rb4、Rc4の抵抗値変化、つまり、電圧変化が、スキャナ位置管理部72に送られる。スキャナ位置管理部72は、エンコーダ69から受信した位置データと合わせた検出データをCPU63に送出し、CPU63は、前記検出データに応じて、スキャナモータ制御部70を制御し、スキャナモータ68を介して、スキャナ67の速度、位置を制御する。
【0074】
衝撃吸収部材44のたとえば内部抵抗Ra4の値を示す信号と、エンコーダ69からの信号とに基づいて、スキャナ67が停止したかどうかを瞬時に判断し、スキャナ67がまだ停止していなければ、スキャナモータ68を直ちに低速動作に移行させる。
【0075】
衝撃吸収部材が接触の衝撃を吸収して和らげるので、スキャナ67に強い衝撃が加わることがなく、スキャナ67の性能、信頼性に悪影響を及ぼさない。また、スキャナ67を停止させる必要があるときに、スキャナモータ68を直ちに低速動作に移行するので、スキャナモータ68に不必要な大電流が流れることを抑制することができ、インクジェットプリンタPR1の電源の電流容量を大きくする必要がない。
【0076】
ところで以上の実施形態はいずれも、衝撃吸収部材が移動阻止部材に設けられた形態であるが、本発明はこれに限定されない。接触の衝撃の検出は、移動阻止部材と往復移動ユニットとが接触したことを検出することができればよいので、衝撃吸収部材はどこに設けられていてもよい。したがって、検出手段の一部である衝撃吸収部材を、往復移動ユニットの側に設けた形態、あるいは、移動阻止部材と往復移動ユニットの両方に設けた形態としても同じ作用効果を得ることができる。これらの形態をとるなら、上述したものと同様の検出機能を有する衝撃吸収部材を、往復移動ユニット(キャリッジまたはスキャナ)の往復移動する方向の両脇において、移動阻止部材に接触する部位に設ける構成となる。
【符号の説明】
【0077】
9…キャリッジ
7、8、33、34…移動阻止部材
18〜23、43〜48…衝撃吸収部材
58…キャリッジモータ
67…スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の印刷もしくは読み取りを行うための移動ユニットと、
前記移動ユニットの移動が所定範囲を超えないよう阻止する阻止手段と、
前記阻止手段で前記移動ユニットの移動が阻止されたときの衝撃を吸収する吸収手段と、
前記衝撃を検出する検出手段と、
を有し、前記吸収手段は前記検出手段の一部をなすことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記吸収手段は、前記阻止手段の一部として設けられていることを特徴とする、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記吸収手段は、前記移動ユニットに設けられていることを特徴とする、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記検出手段による検出に基づいて、前記移動ユニットを移動させるモータの駆動を制御する制御手段をさらに有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記検出手段の検出に基づいて、前記移動ユニットの移動の基準位置を決めることを特徴とする、請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記吸収手段は、前記衝撃の大きさに応じて電気抵抗値が変化する特性を持ち、前記検出手段は、前記電気抵抗値の変化から衝撃を検出することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記吸収手段は、非導電体の弾性物質中に導電物質の粒子を分散させた構造を有し、前記衝撃の大きさに応じて内部の電気抵抗値が変化することを特徴とする、請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記移動ユニットは、往復移動を行なう印刷ヘッドを搭載するキャリッジ、または原稿を読み取るセンサを搭載するスキャナであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−111842(P2013−111842A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259878(P2011−259878)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】