説明

画像処理装置

【課題】フレーム生成回路はOSD信号に関係なく、入力映像信号のみに基づいて補間フレーム信号を生成するため、OSD信号を表示させたとき、不自然な補間フレーム信号を生じさせることのない画像処理を行う。
【解決手段】フレーム生成回路52は、公知の構成により入力映像信号51の補間フレーム信号を生成する。セレクタ53は、このフレーム生成回路52で生成された補間フレーム信号と、入力映像信号51とを1フレーム周期内で順次に選択してフレーム周波数120Hzの信号を出力する。合成回路54は、セレクタ53から出力された信号とOSD信号発生器55から出力されたOSD信号とを合成し、合成した信号を出力信号56として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置に係り、特に高フレームレート出力時におけるOSD(On Screen Display)挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表されるホールド型の表示装置は、フレーム毎の書き込みが行われるまで前フレームの画像を保持し続ける。この特性によって、ホールド型の表示装置は動画ぼけを生じることが知られている。すなわち、ホールド型の表示装置は、フレームの変わり目でのみフレーム画像の更新を行うのに対し、人間の目は動画を滑らかに追うように視線を追従させるため、その差が動画ぼけとして認識される。
【0003】
上記の動画ぼけを軽減する方法の一つに、フレームレートを上げ、フレームの間隔を短くする方法がある。入力信号のフレームレートに対し、出力信号のフレームレートを上げるためには、新たなフレームを生成する必要がある。その方法としては、動き補償を利用して補間画像を作成する方法が代表的である(例えば、特許文献1参照)。この方法は補間対象の入力画像信号の前フレーム画像と後フレーム画像との間の動きベクトルを検出し、検出された動きベクトルに基づいて前後のフレーム画像から新たな補間フレームを生成する方法である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−331136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液晶表示装置においては、OSD信号発生器により表示画面にメニュー画面のようなOSD信号を表示させるようにしているが、特許文献1の液晶表示装置には、OSD信号の表示についての言及がない。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、フレーム生成回路はOSD信号に関係なく、入力映像信号のみに基づいて補間フレーム信号を生成するため、前述したOSD信号を表示させたときの不自然な補間フレーム信号を生じさせることのない画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するため、入力映像信号の動きベクトルを検出し、その検出した動きベクトルに基づいて前記入力映像信号のフレーム間の補間信号である補間フレーム信号を(N−1)個(Nは2以上の自然数)生成する補間フレーム生成手段と、前記入力映像信号と前記(N−1)個の補間フレーム信号とを、前記入力映像信号の1フレーム周期内で順次選択して、フレームレートが前記入力映像信号のN倍である出力信号を生成する選択手段と、前記入力映像信号とは異なる映像情報の画像信号を生成する画像信号生成手段と、前記選択手段により生成されたフレームレートが前記入力映像信号のN倍である出力信号と前記画像信号生成手段から出力された前記画像信号とを合成する合成手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フレーム生成回路はOSD信号に関係なく、入力映像信号のみに基づいて補間フレーム信号を生成するため、OSD信号を表示させたとき、不自然な補間フレーム信号を生じさせることのない画像処理ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の画像処理装置の第1の実施の形態のブロック図である。
【図2】本発明の画像処理装置の第2の実施の形態のブロック図である。
【図3】本発明の画像処理装置の第3の実施の形態のブロック図である。
【図4】本発明の画像処理装置の第4の実施の形態のブロック図である。
【図5】本発明の画像処理装置の第5の実施の形態のブロック図である。
【図6】フレーム生成回路にOSD信号と映像信号とを合成した信号を入力したときの問題点を説明する図である。
【図7】不自然な補間フレーム信号が生じる可能性のある画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面と共に詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明になる画像処理装置の第1の実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、補間フレームを生成する機能を備えた画像処理装置の一例である。この画像処理装置は、OSD信号発生器33により表示画面にメニュー画面のようなOSD信号を表示させる場合の画像処理装置である。図1において、周波数60Hzの入力映像信号31は、合成回路32に供給され、ここでOSD信号発生器33からのメニュー画面等のOSD信号と合成されて合成信号となる。合成回路32から出力された合成信号は、フレーム生成回路34とセレクタ35にそれぞれ供給される。
【0012】
なお、上記の周波数60Hzは、入力映像信号31がNTSC方式映像信号の場合はフィールド周波数であるが、この画像処理装置をホールド型の表示装置に適用した場合は、一画面の表示周波数であるので、本明細書ではフレーム周波数と呼ぶものとする(以下、同様)。
【0013】
フレーム合成回路34は、特許文献1に記載されているように、入力合成信号を遅延して、その入力合成信号に対して互いにmフレーム(mは自然数)異なる一又は二以上の遅延映像信号を得る第1の遅延手段と、入力合成信号と上記の遅延映像信号との相関を検出し、その相関検出結果を出力する相関検出手段と、上記の相関検出結果から得られる複数の動きベクトル候補のうち、参照動きベクトルに基づいて、一方向の動きベクトル候補を動きベクトルとして検出する動きベクトル検出手段と、上記の検出動きベクトルを1フレーム遅延して動きベクトル検出手段へ上記の参照動きベクトルとして供給する第2の遅延手段と、上記の検出動きベクトルに合わせて、入力合成信号と1フレーム遅延合成信号との間に来るであろうフレームを予測し、補間フレーム信号を出力する補間フレーム回路とを有する。
【0014】
セレクタ35は、合成回路32から出力される合成信号と、フレーム生成回路34から出力される補間フレーム信号とを、元の入力映像信号31よりも高い周波数で交互に選択して、フレーム周波数120Hzの倍速処理した出力信号36を出力する。この出力信号36は、入力映像信号31とOSD信号との合成信号と、補間フレーム信号とが交互に時系列的に合成された信号である。
【0015】
しかしながら、この画像処理装置におけるフレーム生成回路34は、前後フレームから動きベクトルを検出し、それに基づいて補間フレームを生成するため、動きベクトルの検出精度が補間フレームの質に大きく関わることとなる。特に、同一画面上に異なる動きが複数存在するような複雑な映像は、正確な動きベクトルの検出が難しく、不自然な補間フレームを生成することもあり得る。
【0016】
その一つの例として、テレビのメニュー画面を表示させている際の映像が挙げられる。テレビのメニュー画面は、入力された映像信号に関わらず大半は静止した状態で画面上に映し出される。動きのある映像でメニュー画面を表示させた場合、入力された映像とメニュー画面は異なる動きをしていることとなる。
【0017】
例えば、図6(a)において、ボールが61、62、63で示すように、左から右へ動く様が三枚の連続したフレームではっきりと分かる画像信号の場合は、上記の特許文献1記載の方法により動きベクトルを正しく検出することは難しくない。しかし、図6(b)に示すように、メニュー画面65によってボール62が隠されてしまうと、上記の特許文献1記載の方法により動きベクトルを正しく検出することは困難である。正確な動きベクトルが検出されなかった場合、不自然な補間フレームが生成されることとなる。
【0018】
すなわち、この画像処理装置では、OSD信号を表示させているとき、入力映像信号31がOSD信号の動きと異なっていて動きの予測が困難な映像、例えば図7に示すように、動きの多いシーンの映像71の中にOSD画像72としてメニューなどを表示している
映像の場合は、フレーム生成回路34において動きベクトルを正確に検出することが困難なため、不自然な補間フレーム信号を生じる可能性が高い。
【0019】
そこで、OSD信号を表示させたときに不自然な補間フレーム信号を生じさせない方法として、OSD表示時には動きベクトルに基づく補間フレーム信号を生成しない、すなわち、入力信号と同様の補間フレームを生成する方法が考えられる。
【0020】
図2は、本発明になる画像処理装置の第2の実施の形態で、入力信号と同様の補間フレームを生成する方法による画像処理装置の一例のブロック図を示したものである。同図中、図1と同一構成部分には、同一符号を付してある。
【0021】
図2に示す画像処理装置は、図1に示した画像処理装置と同様に、入力映像信号31とOSD信号とを合成回路32で合成した合成信号と、その合成信号からフレーム生成回路34で生成される補間フレーム信号の計2つの信号を用意する。
【0022】
セレクタ41は、合成回路32で合成して得た合成信号と、フレーム生成回路34で生成された補間フレーム信号の一方を選択してセレクタ42に入力する。セレクタ42は、合成回路32で合成して得た合成信号と、セレクタ41で選択された信号とを1フレーム周期内で順次に選択してフレーム周波数120Hzの出力信号43を出力する。
【0023】
ここで、メニュー画面などのOSD信号を表示しない場合、OSD信号発生器33はOSD信号を出力しないため、合成回路32で生成される合成信号は入力映像信号31と等しい。このときは、セレクタ41は、フレーム生成回路34で生成された補間フレーム信号を選択する。一方、OSD信号を表示する場合は、セレクタ41は、合成回路32で得たOSD信号と入力映像信号31との合成信号を選択する。
【0024】
この画像処理装置によれば、OSD信号の表示時には動きベクトルに基づく補間フレームを生成しないため、前述したOSD信号を表示させたときの不自然な補間フレーム信号を生じさせることはない。
【0025】
図3は、本発明になる画像処理装置の第3の実施の形態で、OSDを表示させたときに不自然な補間フレームを生じさせない他の例の画像処理装置のブロック図を示したものである。同図において、フレーム周波数60Hzの入力映像信号51は、特許文献1記載の構成のフレーム生成回路52に供給されて補間フレーム信号とされる。セレクタ53は、このフレーム生成回路52で生成された補間フレーム信号と、入力映像信号51とを1フレーム周期内で順次に選択してフレーム周波数120Hzの信号を出力する。合成回路54は、セレクタ53から出力された信号とOSD信号発生器55から出力されたOSD信号とを合成し、合成した信号を出力信号56として出力する。
【0026】
この画像処理装置によれば、フレーム生成回路52はOSD信号に関係なく、入力映像信号51のみに基づいて補間フレーム信号を生成するため、前述したOSD信号を表示させたときの不自然な補間フレーム信号を生じさせることはない。
【0027】
図4は、本発明になる画像処理装置の第4の実施の形態のブロック図を示す。本実施の形態の画像処理装置10は、フレーム周波数60Hzの入力映像信号11に対してフレーム周波数120Hzの出力信号16を生成する倍速処理装置で、フレーム生成回路12、合成回路131、132、OSD信号発生器14、及びセレクタ15から構成されている。フレーム生成回路12は、前記特許文献1記載の構成により入力映像信号11のフレーム間の補間信号である補間フレーム信号を生成する回路である。OSD信号発生器14は、入力映像信号11の画像情報とは異なる別画像情報のOSD信号を発生する。
【0028】
次に、本実施の形態の動作について説明する。第1の合成回路131は、入力映像信号11とOSD信号発生器14から出力されるOSD信号とを合成し、得られた第1の合成信号をセレクタ15に供給する。第2の合成回路132は、フレーム生成回路12により生成された補間フレーム信号と、OSD信号発生器14から出力されるOSD信号とを合成し、得られた第2の合成信号をセレクタ15に供給する。
【0029】
ここで、入力映像信号11及びフレーム補間信号は、それぞれフレーム周波数60Hzであるので、これらの信号と第1、第2の合成回路131、132で合成されるOSD信号も60Hzであり、よってOSD信号発生器14として既存の60HzのOSD信号を発生するものを使用することができる。
【0030】
セレクタ15は、1フレーム周期内で上記の第1の合成信号と第2の合成信号とを順次に選択して、第1の合成信号と第2の合成信号とが時系列的に合成されたフレーム周波数120Hzの倍速処理した信号を出力信号16として出力する。ここで、この画像処理装置10では、OSD信号と入力信号との合成は、フレーム生成回路12の後段の第2の合成回路132で行うようにしているため、フレーム生成回路12では、OSD信号に関係なく、入力映像信号11のみに基づいて補間フレーム信号を生成するため、前述したOSD信号を表示させたときの不自然な補間フレーム信号を生じさせることはなく、OSD信号の表示時も動画ぼけの改善効果を得ることができる。
【0031】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図5は、本発明になる画像処理装置の第5の実施の形態のブロック図を示す。本実施の形態の画像処理装置20は、フレーム周波数αHzの入力映像信号21に対してフレーム周波数α×NHz(Nは2以上の自然数)の出力信号27を生成するN倍速処理装置で、フレーム生成回路22、リモートコントローラ(以下、リモコン装置)23、OSD信号発生器24、合成回路251、合成回路群252、及びセレクタ26から構成されている。
【0032】
フレーム生成回路22は、前記特許文献1記載の構成と同様の構成により入力映像信号21のフレーム間の補間信号である(N−1)個の補間フレーム信号からなる補間フレーム信号群を生成する回路である。図5の画像処理装置20は、α=60、N=2の場合は、リモコン装置23以外は図4の画像処理装置10の構成と同様になる。なお、OSD信号発生器24は、リモコン信号を受信・解析する受信部を備えている。
【0033】
次に、本実施の形態の動作について説明する。フレーム生成回路22は、入力映像信号21を入力として受け、(N−1)個の補間フレーム信号からなる補間フレーム信号群を生成して合成回路群252に供給する。一方、ユーザはメニュー画面等の所望のOSDを表示させるために、リモコン装置23を操作して、所定のコードのリモコン信号をOSD信号発生器24に送信する。OSD信号発生器24は、リモコン装置23から送信されたリモコン信号を内部の受信部で受信・解析して、受信リモコン信号に対応した情報内容の、周波数αHzのOSD信号を発生する。
【0034】
合成回路251は、入力映像信号21とOSD信号発生器24から出力されたOSD信号とを合成して第1の合成信号を生成し、その第1の合成信号をセレクタ26に供給する。また、これと同時に、合成回路群252は、フレーム生成回路22から出力された(N−1)個の補間フレーム信号のそれぞれと、OSD信号発生器24から出力されたOSD信号とを合成して(N−1)個の第2の合成信号群を生成し、その第2の合成信号群をセレクタ26に供給する。
【0035】
セレクタ26は、上記の第1の合成信号と第2の合成信号群とからなる全部でN個(Nフレーム分)の合成信号を、入力映像信号21の1フレーム周期内で、順次選択して出力することにより、それらの合成信号が時系列的に合成されたフレーム周波数α×N(Hz)の出力信号27を出力する。
【0036】
ここで、この画像処理装置20では、OSD信号と入力信号との合成は、フレーム生成回路22の後段の合成回路群252で行うようにしているため、フレーム生成回路22では、OSD信号に関係なく、入力映像信号21のみに基づいて補間フレーム信号を生成するため、前述したOSD信号を表示させたときの不自然な補間フレーム信号を生じさせることはなく、OSD信号の表示時も動画ぼけの改善効果を得ることができる。また、この画像処理装置20では、リモコン装置23によりユーザが所望のタイミングで、所望の情報内容のOSD信号を発生させて表示させることができる。
【0037】
上述のように、本発明の第4の実施形態、及び、本発明の第5の実施形態では、入力映像信号とは異なる映像情報の画像信号の表示時も、動画ぼけの改善効果を得ることができ、本発明の第2の実施形態に較べ、動画ぼけの改善効果が期待できる。
【0038】
また、本発明の第4の実施形態、及び、本発明の第5の実施形態では、本発明の第2の実施形態に較べ、高いフレームレートの画像信号を発生する特別な構成の画像信号発生器を必要とすることないという効果が期待できる。
【符号の説明】
【0039】
10、20 画像処理装置
11、21 入力映像信号
12、22 フレーム生成回路
14、24 OSD信号発生器
15、26 セレクタ
16、27 出力信号
23 リモートコントローラ(リモコン装置)
131、132、251 合成回路
252 合成回路群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力映像信号の動きベクトルを検出し、その検出した動きベクトルに基づいて前記入力映像信号のフレーム間の補間信号である補間フレーム信号を(N−1)個(Nは2以上の自然数)生成する補間フレーム生成手段と、
前記入力映像信号と前記(N−1)個の補間フレーム信号とを、前記入力映像信号の1フレーム周期内で順次選択して、フレームレートが前記入力映像信号のN倍である出力信号を生成する選択手段と、
前記入力映像信号とは異なる映像情報の画像信号を生成する画像信号生成手段と、
前記選択手段により生成されたフレームレートが前記入力映像信号のN倍である出力信号と前記画像信号生成手段から出力された前記画像信号とを合成する合成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像信号生成手段により生成される前記入力映像信号とは異なる映像情報の画像信号は、フレームレートが前記入力映像信号のN倍であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−31195(P2013−31195A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188445(P2012−188445)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【分割の表示】特願2008−105718(P2008−105718)の分割
【原出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】