説明

画像加熱装置

【課題】外部加熱ベルト手段により定着ローラ表層を加熱する定着装置では、外部加熱ベルトが定着ローラから退避している場合において、外部加熱ベルトに張力を付与することで、外部加熱ベルトと支持ローラとの密着性を向上し、外部加熱ベルトの表面の温度ムラを防止していた。しかしながら、外部加熱ベルトが定着ローラに当接し回転する際に、外部加熱ベルトに付与した張力が負荷となり、外部加熱ベルトの寿命が短くなる問題があった。
【解決手段】外部加熱ベルト105が定着ローラ101から退避している場合において、外部加熱ベルトに張力を付与することで、外部加熱ベルト105と支持ローラ103・104との密着性を向上し、温度ムラを解消する。また、外部加熱ベルトが定着ローラに当接して駆動する際には、外部加熱ベルトに付与する張力を軽減し、外部加熱ベルトの回転時の負荷を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式などの複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置に装着される定着装置として用いて好適な画像加熱装置に関する。より詳しくは、記録材上の画像を加熱する画像加熱回転体を加熱する外部加熱ベルトを有する画像加熱装置に関する。
【0002】
画像加熱装置としては、記録材上に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、複写機、プリンタ、複合機等の画像形成装置に対して、高速化、高画質化、カラー化、省エネルギー化等が要求されている。また、厚紙やラフ紙、エンボス紙、コート紙等の様々な記録材に対応できるマルチメディア対応性、及び高い生産性(単位時間当たりのプリント枚数)も要求されている。
【0004】
電子写真方式を適用した画像形成装置において、特に秤量の大きい記録材での生産性を上げるためには、定着装置の加熱性能を向上させる必要がある。しかし、秤量が大きい記録材(厚紙)の定着に要する熱量は、秤量が小さい記録材(薄紙)に比べて大幅に多い。そのため、定着時に画像加熱回転体としての定着ローラの熱量が多く奪われてその表面温度が低下し、定着不良が生じる。よって、厚紙を定着する際には、定着性(トナーと記録材との接着力)を確保するために、記録材が定着装置を通過する速度を低くして定着処理を行っているのが現状である。
【0005】
このような定着ローラの表面温度低下は、定着ローラが金属製のパイプ状の芯金上にシリコーンゴムやフッ素ゴム等の耐熱性弾性層を形成した構造である場合、この芯金や弾性層の熱伝導率が低いことが原因の一つである。つまり、定着ローラの芯金内に設けられた発熱体(一例として、ハロゲンヒータ)の熱が、この芯金や弾性層に遮られて、定着ローラ表面に伝わりににくくなるのである。
【0006】
なお、定着ローラとしてこのような弾性層を設けない構造もあり、この場合、弾性層が無い分表面温度低下は小さいが、芯金の厚みが大きくなるほど熱を遮るので、同様に表面温度低下が発生する。又、この弾性層が無い場合には、凹凸の大きい記録材において、凹部のトナーと定着ローラが接触しにくく、凹部のトナーが定着不良となってしまう。又、特にカラー画像においては、画像の表面を均一に溶融することができないので、定着ムラ、光沢ムラ及び色ムラが発生して、画像品質が低下してしまう問題が発生する。従って、様々な記録材への対応性、画像品質からこのような弾性層を設けることが好適である。
【0007】
一方、定着ローラの表面温度低下を防止するため、定格電力の大きな発熱体を設けて定着ローラを急激に加熱すると、芯金の温度が急激に上昇し、芯金と弾性層との接着層が熱劣化により破壊される。その結果、弾性層が芯金から剥離してしまうという問題や、弾性層が熱によって軟化劣化又は硬化劣化して破壊される問題が生ずる。
【0008】
そこで、記録材が定着装置を通過する際の速度を遅くすることなく定着する技術として、定着ローラの表面に外部加熱装置を当接させ、定着ローラを外部から加熱する外部加熱構成が知られている。
【0009】
特許文献1には、無端状ベルト状の外部加熱ベルトを用いた構成(外部加熱ベルト構成)が開示されている。これによれば、内部に発熱体としてハロゲンランプを備えた複数の支持ローラに外部加熱ベルトを懸架し、発熱体であるハロゲンランプの熱が支持ローラを介して、外部加熱ベルト、定着ローラ表面の順に伝わり、定着ローラ表面温度の低下を防止する。
【0010】
外部加熱ベルト構成を用いた場合、外部加熱ベルトと支持ローラとの密着性が良くないと、外部加熱ベルトの表面を加熱するのに時間がかかり、電力の消費が多くなる問題がある。この解決方法として、外部加熱ベルトを懸架する支持ローラの間で外部加熱ベルトを外周側より押圧することで外部加熱ベルトに張りを付与し、外部加熱ベルトと支持ローラの密着性を向上する方法がある。外部加熱ベルトと支持ローラとの密着性を向上することで、外部加熱ベルトの表面を効率良く加熱することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−198659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
外部加熱ベルト構成を用いて、定着ローラを効率良く加熱するためには、熱伝導率の高いニッケルやステンレスのような金属のベルトを用いる必要がある。しかしながら、成形されたベルトの内面の表面性は均一でなく、真直度や真円度にばらつきがある。また、外部加熱ベルトを懸架する支持ローラにも同様に、外周の円筒度や真直度にばらつきがある。そのために、加熱源を有する支持ローラとベルトとの密着性が低下する。このように、外部加熱ベルトと支持ローラの密着性が損なわれることで、外部加熱ベルト表面において温度ムラ等の発生してしまう。
【0013】
金属製の外部加熱ベルトと支持ローラとの密着性を上げるためには、外部加熱ベルトに十分な張力を付与する必要がある。そのためには、例えば、外部加熱ベルトを懸架する支持ローラの間で外部加熱ベルトを押圧する押圧部材の外部加熱ベルトへの押圧力を大きくする必要がある。
【0014】
外部加熱ベルトへ付与する張力を大きくした場合、スタンバイ時に外部加熱ベルトが定着ローラから退避しているポジションから、通紙時の外部加熱ベルトが定着ローラに当接するポジションへ移行した際に次ぎのような問題がある。
【0015】
即ち、外部加熱ベルトの張りが強くなっているため、外部加熱ベルトと定着ローラとの間に十分なニップ幅を形成するためには、外部加熱ベルト構成のユニット自体への加圧力を大きくして、定着ローラに外部加熱をならわせる必要がある。この場合、ベルトにかかる応力が大きくなり、定着ローラを駆動した際に外部加熱ベルトに割れ等の破壊が生じる弊害ある。
【0016】
また、外部加熱ベルトが定着ローラに当接して回転している際には、定着ローラと支持ローラの間に形成されたニップにおいて外部加熱ベルトが挟持されることで熱を供給されると伴に、支持ローラが回転する。支持ローラが回転することで、支持ローラ及び外部加熱ベルトの表面形状におけるばらつきの影響が緩和されるため、外部加熱ベルトに付与する張力を大きくすることなく、外部加熱ベルト表面の温度ムラを解消することが可能である。
【0017】
本発明は上記の従来技術に鑑みて提案されたものであり、外部加熱ベルトの支持ローラ(支持部材)に対する密着性の向上と、外部加熱ベルトの長寿命化の両立を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像加熱装置の代表的な構成は、画像を担持した記録材に接して前記画像を加熱する回転可能な画像加熱部材と、ベルト加熱部材を兼ねる複数の支持部材に懸架されていて前記画像加熱部材の表面に接触して回転し前記画像加熱部材を外部より加熱する無端状のベルトを有する外部加熱部材と、を有する画像加熱装置であって、前記外部加熱部材は、前記ベルトを前記画像加熱部材に対して加圧して接触させている当接ポジションと前記ベルトを前記画像加熱部材から非接触に離間させている退避ポジションとに位置切換えが可能であり、前記外部加熱部材が前記当接ポジションに位置切換えされているときと前記退避ポジションに位置切換えされているときとで位置切換えに連動して前記ベルトに作用させる張り力を違わせるベルト張り力可変手段を有し、前記外部加熱部材が前記当接ポジションに位置切換えされているときにおけるベルト張り力は前記外部加熱部材が前記退避ポジションに位置切換えされているときにおけるベルト張り力よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、外部加熱部材が画像加熱部材から退避している場合において、ベルトに対して比較的大きい張力を付与することで、ベルトと支持部材との密着性を向上し、ベルトの温度ムラを解消する。また、ベルトが画像加熱部材に当接して駆動する際には、ベルトに付与する張力を軽減しベルトの回転時の負荷を軽減する。これにより、ベルトの支持部材に対する密着性の向上と、ベルトの長寿命化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る定着装置であって、外部加熱ベルトユニットが当接ポジションに位置切換えされている状態時の要部の横断右側面模式図である。
【図2】画像形成装置の一例の概略構成図である。
【図3】当接ポジションに位置切換えされている状態時の外部加熱ベルトユニットの左側面図である。
【図4】外部加熱ベルトユニットが退避ポジションに位置切換えされている状態時の定着装置の要部の横断右側面模式図である。
【図5】退避ポジションに位置切換えされている状態時の外部加熱ベルトユニットの左側面図である。
【図6】外部加熱ベルトユニットの分解斜視図である。
【図7】定着装置の制御系統のブロック図である。
【図8】ベルト表面の長手方向における温度を表すグラフである。
【図9】実施例1の効果を表す表である。
【図10】実施例2に係る定着装置であって、外部加熱ベルトユニットが当接ポジションに位置切換えされている状態時の要部の左側面模式図である。
【図11】外部加熱ベルトユニットが退避ポジションに位置切換えされている状態時の要部の左側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なおこれらの実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0022】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図2は本発明に関わる画像加熱装置を定着装置9として備える画像形成装置50の一例の概略構成図である。この装置50は中間転写方式でインライン方式の電子写真カラーレーザビームプリンタである。パソコン等のホスト装置70から制御回路部(制御手段)60に入力する画像信号に基づいて記録材Pにフルカラー画像を形成することができる。
【0023】
装置50内には第1乃至第4の4つの画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdが併設され、並行処理により各々異なった色のトナー像を電子写真プロセスにより形成する。画像形成部Pa・Pb・Pc・Pdは、それぞれ、専用の像担持体、本例では電子写真感光ドラム3a・3b・3c・3dを具備し、各ドラム3a・3b・3c・3d上にそれぞれ異なる色のトナー像を形成する。
【0024】
各ドラム3a・3b・3c・3dに隣接して中間転写体としての循環移動する中間転写ベルト130が設置され、ドラム3a・3b・3c・3d上に形成された各色のトナー像がベルト130上に順次に重ね合わされて1次転写される。そして、そのベルト上のトナー像が2次転写ローラ11で記録材P上に2次転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着装置9において加熱及び加圧によりトナー像の定着を受けて、記録画像形成物として装置外のトレイ6に排出される。
【0025】
ドラム3a・3b・3c・3dの外周には、それぞれドラム帯電器2a・2b・2c・2d、現像器1a・1b・1c・1d、1次転写帯電器24a・24b・24c・24d及びクリーナ4a・4b・4c・4dが設けられている。装置内の上方部にはレーザスキャナ5a・5b・5c・5dが設置されている。
【0026】
ドラム3a・3b・3c・3dはそれぞれ矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動されて、帯電器2a・2b・2c・2dにより一様に帯電処理される。レーザスキャナ5a・5b・5c・5dは、光源装置から発せられたレーザ光を、ポリゴンミラーを回転して走査する。その走査光の光束を反射ミラーによって偏向し、fθレンズによりドラム3a・3b・3c・3dの母線上に集光して露光La・Lb・Lc・Ldする。これにより、ドラム3a・3b・3c・3d上に画像信号に応じた潜像が形成される。
【0027】
本実施例において、現像器1a・1b・1c・1dには、現像剤としてそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが、図示しない供給装置により所定量充填されている。現像器1a・1b・1c・1dは、それぞれドラム3a・3b・3c・3d上の潜像を現像して、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、イエロートナー画像及びブラックトナー画像として可視化する。
【0028】
ベルト130は矢示の時計方向にドラム3と同じ周速度をもって回転駆動されている。ドラム3a上に形成担持された第1色のイエロートナー画像は、ドラム3aとベルト130との当接部(1次転写ニップ部)を通過する。その通過過程で、1次転写帯電器24aからベルト130に印加される1次転写バイアスにより形成される電界と圧力により、ベルト130の外周面に1次転写されていく。
【0029】
以下、同様に第2色のマゼンタトナー画像、第3色のシアントナー画像、第4色のブラックトナー画像が順次にベルト130上に重畳転写され、装置50に入力したカラー画像情報に対応した合成カラートナー画像が形成される。
【0030】
1次転写が終了したドラム3a・3b・3c・3dは、それぞれのクリーナ4a・4b・4c・4dにより転写残トナーをクリーニング、除去され、引き続き次の潜像の形成以下に備えられる。ベルト130上に残留したトナー及びその他の異物は、ウエブクリーナ19のクリーニングウエブ(不織布)をベルト130の表面に当接して、拭い取るようにしている。
【0031】
2次転写ローラ11は、ベルト130を懸回張設させた3本のローラ13・14・15のうちのローラ14に対してベルト130を挟ませて圧接させることで、ベルト130との間に2次転写ニップ部を形成している。ローラ11には、2次転写バイアス源によって所定の2次転写バイアスが印加されている。
【0032】
ベルト130上に重畳転写された合成カラートナー画像の記録材Pへの転写は2次転写ニップ部でなされる。即ち、記録材Pが給紙カセット10からレジストローラ12、転写前ガイドを含むシートパスを通過して2次転写ニップ部に対して所定のタイミングで給送され、ニップ部で挟持搬送される。同時にローラ11に所定の2次転写バイアスがバイアス電源からに印加される。この2次転写バイアスによりベルト130から記録材Pへ合成カラートナー画像が転写される。
【0033】
ニップ部を通ってトナー画像の転写を受けた記録材Pはベルト130から分離されて定着装置9へ導入され、熱と圧力を受けて未定着画像が固着像として定着される。片面コピーモードの場合は、定着装置9を出た記録材Pはフラッパ16の上側のシートパスを通って装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0034】
両面コピーモードが選択されている場合には、定着装置9を出た第1面側画像形成済みの記録材Pがフラッパ16により再循環搬送機構側のシートパス17側に導入される。さらにスイッチバックシートパス18内に入り、次いで該シートパス18から引き出し搬送されて再搬送シートパス20に誘導される。そして、該シートパス20からレジストローラ12、転写前ガイドを通過して2次転写ニップ部に表裏反転状態で所定のタイミングで再導入される。
【0035】
これにより、記録材Pの第2面側に対して、ベルト130上のトナー画像の2次転写がなされる。2次転写ニップ部にて第2面に対するトナー画像の2次転写を受けた記録材Pはベルト130から分離されて定着装置9へ再導入され、トナー画像の定着処理を受けて両面コピーとして装置外の排紙トレイ6に排出される。
【0036】
モノクロなどモノカラーモードは指定された色の画像形成部が画像形成動作することでなされる。他の画像形成部はドラムの回転はなされるが画像形成動作はなされない。
【0037】
(2)定着装置9
以下の説明において、定着装置9またはこれを構成している部材の長手方向とは、回転体の軸線方向(スラスト方向)、又は記録材搬送路面内において記録材搬送方向に直交する方向又はその方向に並行な方向である。また、短手方向とは記録材搬送方向に並行な方向である。また、定着装置9に関して、正面(前側)とは装置を記録材導入側からみた面(またはその側)、左右とは装置を正面から見て左または右、上下とは重力方向において上または下である。
【0038】
図1は外部加熱部材としての外部加熱ベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされている状態時の定着装置9の要部の横断右側面模式図である。図3は当接ポジションAに位置切換えされている状態時の同ユニット128の左側面図である。図4は同ユニット128が退避ポジションBに位置切換えされている状態時の定着装置9の要部の横断右側面模式図である。図5は退避ポジションBに位置切換えされている状態時の外部同ユニット128の左側面図である。図6は同ユニット128の分解斜視図である。図7は定着装置9の制御系統のブロック図である。
【0039】
定着装置9は、画像Kを担持した記録材Pに接して画像Kを加熱する回転可能な画像加熱部材(画像加熱回転体)としての定着ローラ101を有する。また、定着ローラ101と定着ニップ部N1を形成する加圧部材としての加圧ローラ102を有する。また、定着ローラ101を外部より加熱する外部加熱部材としての外部加熱ベルトユニット128を有する。そして、未定着トナー画像Kを担持した記録材Pを定着ニップ部Nで挟持搬送して加熱する。なお、本実施例おいて、定着装置9に対する大小各種幅サイズの記録材の導入は記録材幅中心を基線とする中央基準搬送でなされる。
【0040】
1)定着ローラ101
定着ローラ101は定着装置枠体(装置シャーシー:不図示)の左右の側板間に左右の軸部がそれぞれ軸受部材を介して回転可能に支持されて配設されている。
【0041】
本実施例において、定着ローラ101は、外径74mm、厚み6mm、長さ350mmの円筒状金属製(本実施例では、アルミニウム製)の芯金101aを備える。この芯金の外周面には、耐熱性の弾性層101bとして、シリコンーンゴム(本実施例では、JIS−A硬度20度)の層が3mmの厚さで形成されている。また、この弾性層の外周面には、トナーとの離型性向上のために、耐熱性の離型層101cとしてフッ素系樹脂(本実施例では、PFAチューブ)の層が100μmの厚さで形成されている。
【0042】
定着ローラ101は制御回路部60(図7)で制御される駆動源M1から駆動力が伝達されて図1において矢印R101の時計方向に所定の周速度、例えば500mm/secの周速度で回転駆動される。定着ローラ101の芯金101aの内部には発熱体として、例えば定格電力1200Wのハロゲンヒータ106が配置されている。ハロゲンヒータ106には制御回路部60で制御される電源部S106から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ106が発熱して定着ローラ101が内部から加熱される。
【0043】
定着ローラ101の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ121が弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触されている。このサーミスタ121により定着ローラ101の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0044】
制御回路部60はサーミスタ121から入力する検知温度(検知される温度に関する情報)が所定の目標温度(所定の温度に対応する情報)に維持されるように電源部S106からヒータ106に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ106をON/OFFすることで、定着ローラ101の表面温度が所定の目標温度、例えば画像加熱時温度として200℃に温調制御される。
【0045】
2)加圧ローラ102
加圧ローラ102は定着ローラ101の下側において定着ローラ101に並行に配列されており、定着装置枠体の左右の側板間に左右の軸部がそれぞれ軸受部材を介して回転可能に支持されて配設されている。
【0046】
本実施例において、加圧ローラ102は、外径54mm、厚み5mm、長さ350mmの円筒状金属製(本実施例では、アルミニウム製)の芯金102aを備える。この芯金の外周面には、耐熱性の弾性層101bとして、シリコンーンゴム(本実施例では、JIS−A硬度15度)の層が3mmの厚さで形成されている。また、この弾性層の外周面には、トナーとの離型性向上のために、耐熱性の離型層101cとしてフッ素系樹脂(本実施例では、PFAチューブ)の層が100μmの厚さで形成されている。
【0047】
加圧ローラ102の左右の軸受部材はそれぞれ本体側板に対して上下方向にスライド移動可能であり、加圧手段(不図示)により上方に押し上げ付勢されている。これにより、加圧ローラ102の上面が定着ローラ101の下面に所定の押圧力で押し当ることで、定着ローラ101と加圧ローラ102との間に記録材搬送方向aにおいて所定幅の定着ニップ部Nが形成される。加圧ローラ102は定着ローラ101の回転に伴って矢印の反時計方向R102に定着ローラ101の周速度と同じ周速度で従動回転する。
【0048】
加圧ローラ102の芯金102aの内部には発熱体として、例えば定格電力300Wのハロゲンヒータ107が配置されている。ハロゲンヒータ107には制御回路部60で制御される電源部S107から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ107が発熱して加圧ローラ102が内部から加熱される。
【0049】
加圧ローラ102の長手方向中央部の外面には温度検知手段としてのサーミスタ122が弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触されている。このサーミスタ122により加圧ローラ102の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0050】
制御回路部60はサーミスタ122から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部S107からヒータ107に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ107をON/OFFすることで、加圧ローラ101の表面温度が所定の目標温度、例えば画像加熱時温度として130℃に温調制御される。
【0051】
3)外部加熱ベルトユニット128
外部加熱ベルトユニット(以下、ベルトユニットと記る)128は定着ローラ101の上面側に配設されており、定着ローラ101を外側より加熱する外部加熱部材である。ベルトユニット128は、定着ローラ101に接触して回転し定着ローラ101を外部より加熱する可撓性を有する無端状のベルト(エンドレスベルト)105を有する。ベルト105は、ベルト加熱部材を兼ねる複数の支持部材としての間隔をあけて配列された並行2本の第1支持ローラ103と第2支持ローラ104との間に懸架されている。
【0052】
本実施例において、ベルト105は、外径60mm、厚み50μm、長さ350mmの金属製(ステンレスやニッケル等)の基材層を有する。そして、その基材層の外周面は、トナーとの付着を防止するために、耐熱性の摺動層としてフッ素系樹脂(本実施例では、PFAチューブ)が20μmの厚さで被覆されている。
【0053】
第1及び第2支持ローラ103・104は所定の間隔をあけて配列された並行ローラであり、それぞれ、外径30mm、厚み3mm、長さ350mmの円筒状金属製(本実施例では、アルミニウム製)の芯金を備える。第1及び第2支持ローラ103・104は、それぞれ、左右側の軸受板206L・206R間に左右の軸部103aL・103aR,104aL・104aRが回転可能に支持させて配設されている。
【0054】
軸受板206L・206Rは第1及び第2支持ローラ103・104を両端部において回転自在に支持し一定の軸間距離を維持している。本実施例では、同じ軸受板206L・206Rが複数の支持ローラ103・104を支持している。第2支持ローラ104は定着ローラ101の回転方向において第1支持ローラ103よりも上流側に位置している。
【0055】
第1及び第2の支持ローラ103・104の芯金の内部には、それぞれ、発熱体として例えば定格電力1000Wのハロゲンヒータ114・115が配置されている。ハロゲンヒータ114・115は第1及び第2の支持ローラ103・104を加熱するように配光されている。ハロゲンヒータ114・115には制御回路部60で制御される電源部S114・S115から不図示の給電系統を介して電力が供給される。これにより、ヒータ114・115が発熱して第1及び第2の支持ローラ103・104がそれぞれ内部から加熱される。
【0056】
第1及び第2支持ローラ103・104に懸架されているベルト105はヒータ114・115により加熱される第1及び第2支持ローラ103・104の熱により加熱される。第1及び第2支持ローラ103・104のベルト懸回部において、ベルト105の長手方向中央部の外面にはそれぞれ温度検知手段としてのサーミスタ123・124が弾性支持部材(不図示)により弾性的に接触されている。これらのサーミスタ123・124によりベルト105の表面温度が検知され、その検知温度情報が制御回路部60にフィードバックされる。
【0057】
制御回路部60はサーミスタ123・124から入力する検知温度が所定の目標温度に維持されるように電源部S123・S124から114・115に対する供給電力を制御している。即ち、ヒータ114・115をON/OFFすることで、ベルト105の表面温度が所定の目標温度、例えば220℃で制御される。
【0058】
ベルト105の目標温度を定着ローラ101の目標温度200℃よりも高く設定しているのは次の理由による。ローラ101の外部加熱部材であるベルト105の温度がローラ101の温度よりも高温に保たれていた方が、ローラ101の表面温度の記録材による降下に対してレスポンス(熱の感応精度)良く、ベルト105からローラ101に熱が供給されるためである。
【0059】
左右側の軸受板206L・206Rは矩形板状の加圧アーム127の左右側の端面に対して回動軸136L・136Rと嵌合穴206aL・206aRを介して保持されている。左右側の軸受板206L・206Rは加圧アーム127の左右両側においてそれぞれ回動軸136L・136Rを中心に独立して回動可能とされている。即ち、加圧アーム127はその下面側に第1及び第2支持ローラ103・104を左右側の揺動可能な軸受板206L・206Rを介して回転可能に保持している。
【0060】
また、第1及び第2支持ローラ103・104との間においてこの両ローラに懸架されたベルト105の上方側のベルト部分の外面に接触してベルト表面をクリーニングするクリーニングローラ108が配設されている。ローラ108は芯金の外周表面にスポンジ等の多孔質の材料の層を有している。即ち、ローラ108は多孔質のソフトローラである。ローラ108は左右側の軸部108aL・108Rがそれぞれ左右の軸受板206L・206Rに設けられた上下方向に長い軸受穴206bL・206bRに挿入されて回転可能に支持されると共に上下方向に移動する自由度がある。
【0061】
加圧アーム127はその前側の左右部に回動軸109L・109Rを有する。その回動軸109L・109Rがそれぞれ定着装置枠体の左右の側板に回動可能に保持されている。これにより、加圧アーム127は回動軸109L・109Rを中心に上下方向に回動可能である。
【0062】
加圧アーム127の後側の下方には定着装置枠体の左右の側板間にカム軸130が回転可能に支持されて配設されている。このカム軸130には左右側に一対の偏心加圧カム129L・129Rが固定して配設されている。その左右一対のカム129L・129Rは同形状で同位相である。また、加圧アーム127の後側の上方には定着装置枠体側の左右の不動のバネ受座91L・91Rと加圧アーム127の上面との間に左右一対の加圧バネ(加圧手段、付勢部材)131L・131Rが圧縮されて配設されている。これにより加圧アーム127は回動軸109L・109Rを中心に常に下方に回動付勢されている。
【0063】
左右の軸受板206L・206Rは、それぞれ、加圧アーム127との間に掛け渡した引張バネ128L・128Rの引っ張り力により図3・図4において軸136L・136Rを中心に反時計方向に回動付勢されている。136bL・136bRと206cL・206cRは加圧アーム127側と軸受板206L・206R側とに設けたバネ掛け用のピンと穴である。
【0064】
クリーニングローラ108の左右側の軸部108aL・108Rはそれぞれ左右の軸受板206L・206Rの軸受穴206bL・206bRから外側に突出している。その各突出軸部に対してそれぞれバネ受け座111L・111Rを係合させる。そして、そのバネ受け座111L・111Rと定着装置枠体側の左右の不動のバネ受座92L・92Rとの間に左右一対の加圧バネ(加圧手段、付勢部材)110L・110Rが圧縮されて配設されている。
【0065】
これにより、ローラ108は上下方向に長い軸受穴206bL・206bRに沿って常に下方へ移動付勢されて、第1及び第2支持ローラ103・104との間においてベルト105の上方側のベルト部分の外面に押し当って接触している。ローラ108はベルト105の外面に当接する当接部材であり、本実施例においては、ベルト105に対して加圧付勢されてベルト105に張りを与えるベルトテンションローラとしても機能している。
【0066】
カム軸130は制御回路部60で制御される第2駆動源M2によりカム129L・129Rの大隆起部が下向きとなっている図1・図3の第1回転角と、大隆起部が上向きとなっている図4・図5の第2回転角とに180°間欠回転制御される。カム軸130が第1回転角に転換されることで、ベルトユニット128は図1・図3の当接ポジションAに位置切換えされる。また、カム軸130が第2回転角に転換されることで、ベルトユニット128は図4・図5の退避ポジションBに位置切換えされる。
【0067】
ベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされている状態においては、カム129L・129Rは加圧アーム127に対して非接触に離間している。そのため、加圧アーム127は、第1及び第2支持ローラ103・104がベルト105を介して定着ローラ101の上面に当接して受け止められるまで、回動軸109L・109Rを中心にバネ131L・131Rのバネ力で押し下げ回動されている。この状態において、第1及び第2支持ローラ103・104はベルト105を挟んで定着ローラ101の上面に対してバネ131L・131Rの加圧力にて所定の圧力で均等に押圧される。
【0068】
ベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされている状態において、第1及び第2支持ローラ103・104に懸架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101に対して腹当てに接触する。これにより、ベルト105は定着ローラ105と定着ローラ回転方向において幅広の外部加熱ニップ部Neを形成している。
【0069】
そして、ベルト105は外部加熱ニップ部Neにおける定着ローラ101との摩擦力により定着ローラ101の回転に伴って矢印の反時計方向に従動して回転する。また、第1支持ローラ103、第2支持ローラ104、クリーニングローラ108も、ベルト105の回転に従動して回転する。
【0070】
また、ベルトユニット128が退避ポジションBに位置切換えされている状態においては、カム129L・129Rは加圧アーム127をバネ131L・131Rのバネ力に抗して回動軸109L・109Rを中心に十分に押し上げ回動させた状態に保持している。この状態において、第1及び第2支持ローラ103・104とベルト105は定着ローラ101に対して非接触に持ち上げられている。
【0071】
4)定着動作
制御回路部60は画像形成装置のスタンバイ時(画像形成開始信号の入力待ち状態時)においては画像形成部の動作を停止させている。定着装置9については、定着ローラ101の駆動を停止させている。従って加圧ローラ102の回転も停止している。ベルトユニット128は退避ポジションBに位置切換えされている。ヒータ106・107・114・115に対する通電は、定着ローラ101、加圧ローラ102、ベルト105の表面温度が所定のスタンバイ時温度或いは画像加熱時温度に維持されるように制御されている。
【0072】
制御回路部60に画像形成開始信号が入力すると、制御回路部60は装置の画像形成前動作(前回転動作)を実行してから画像形成ジョブを実行する。定着装置9については、第1駆動源M1をONにする。これにより定着ローラ101の駆動が開始され、加圧ローラ102が従動して回転する。第2駆動源M2を制御してベルトユニット128を当接ポジションAに位置切換えする。定着ローラ101の回転に従動してベルト105が回転する。また、第1及び第2支持ローラ103・104、クリーニングローラ108も、ベルト105の回転に従動して回転する。
【0073】
ヒータ106・107・114・115に対する通電は、定着ローラ101、加圧ローラ102、ベルト105の表面温度が所定の画像加熱時温度に維持されるように制御される。
【0074】
上記の状態において、画像形成部側から未定着トナー画像Kを担持した記録材Pが定着装置9の定着ニップ部Nに導入される。記録材Pはニップ部Nを挟持搬送されることで熱と圧力を受けて未定着トナー画像Kが固着画像として定着される。所定の1枚あるいは連続複数枚の画像形成ジョブが終了したら画像形成装置は次の画像形成開始信号が入力するまでスタンバイモードにされる。
【0075】
5)ベルト張り力可変手段
ベルト張り力可変手段は、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされているときと退避ポジションBに位置切換えされているときとで位置切換えに連動してベルト105に作用させる張り力を違わせる手段機構である。そして、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされているときにおけるベルト張り力はベルトユニット128が退避ポジションBに位置切換えされているときにおけるベルト張り力よりも小さくなるようにベルト張り力を可変する。
【0076】
以下、本実施例におけるベルト張り力可変手段の構成について説明する。前述したように、本実施例においては、ベルト105の外面には当接部材としてのクリーニングローラ108が付勢部材としての加圧バネ110L・110Rのバネ力(加圧付勢力)によって常に押し付けられている。即ち、ローラ108はベルト105に対して加圧付勢されてベルト105に張りを与えるテンションローラを兼ねている。
【0077】
ベルトユニット128が当接ポジションA(図1・図3)から退避ポジションB(図4・図5)に移動する場合は、加圧カム129L・129Rの回転により大隆起部が下向きから上向きとなる。これにより、加圧アーム127がバネ受座91L・91Rとの間に加圧バネ131L・131Rを押し縮めながら回動軸109L・109Rを中心に定着ローラ101から離れる上方に移動する。
【0078】
この加圧アーム127の動きに連動して、加圧アーム127に支持された、軸受板206L・206R、第1及び第2支持ローラ103・104、ベルト105、クリーニングローラ108のアセンブリも定着ローラ101から上方に持ち上げられて退避する。即ち、第1及び第2支持ローラ103・104とベルト105が定着ローラ101に非接触に持ち上げられる。
【0079】
また、ベルトユニット128が退避ポジションBに移動することで、クリーニングローラ108の軸108aL・108aRとバネ受座92L・92Rとの距離LBが、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置している場合の距離LAよりも短くなる。これにより、軸108aL・108aRとバネ受座92L・92Rとの間の加圧バネ110L・110Rが、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置している場合よりも圧縮されることになる。
【0080】
加圧バネ110L・110Rが圧縮されることで、クリーニングローラ108にかかる加圧バネ110L・110Rの加圧力が、例えば、距離LAのときの1kgfから6kgfに大きくなり、それに伴って、ベルト105に加わる加圧力(張り力)も大きくなる。これにより、ベルトユニット128が定着ローラ101に対して退避ポジションBにある場合に、ベルト105に十分な張りを付与し、ベルト加熱源である第1及び第2支持ローラ103・104との密着性を維持することができる。よって、ベルト105を効率良く加熱することが可能になり、ベルト105の表面が均一に加熱される。
【0081】
また、ベルトユニット128が退避ポジションBにある場合に、加圧アーム127に支持された、軸受板206L・206R以下のアセンブリは自重によって回動軸136L・136Rを中心に図4において反時計周りに回転しようとする。
【0082】
その回転を規制するために、本実施例においては、加圧アーム127の左右部にストッパー部材140L・139Rを設けている。このストッパー部材139L・139Rに対してそれぞれ左右の軸受板206L・206Rを突き当たらせることで軸受板206L・206Rのそれ以上の回転を阻止する。これと共に、軸受板206L・206Rと加圧アーム127との間に引張バネ138L・138Rを設置して、軸受板206L・206Rをストッパー部材139L・139Rに対して突き当らせる方向に回動付勢させている。
【0083】
この構成により、ベルトユニット128が退避ポジションBにある場合に、ベルト105が定着ローラ101から最も離れた位置になるように、加圧アーム127に支持された軸受板206L・206R以下のアセンブリの姿勢を固定している。
【0084】
次に、ベルトユニット128が定着ローラ101に対して退避ポジションBから当接ポジションAに移動する場合について説明する。この場合は、加圧カム129L・129Rの回転により大隆起部が上向きから下向きとなることにより、加圧アーム127が加圧バネ131L・131Rの圧縮反力により回動軸109L・109Rを中心に定着ローラ101に近づく下方に移動する。
【0085】
この加圧アーム127の動きに連動して、加圧アーム127に支持された軸受板206L・206R以下のアセンブリも下降する。このアセンブリの下降により、ベルト105の下行側のベルト部分が定着ローラ101の上面に接触し、アセンブリの更なる下降により第1及び第2支持ローラ103・104がベルト105を介して定着ローラ101の上面に接触する。
【0086】
この時点で加圧アーム127の下方への移動は止まるが、加圧カム129L・129Rは大隆起部が下向きになるまで回転して加圧アーム127に対して非接触となる。これにより、第1及び第2支持ローラ103・104は加圧バネ131L・131Rのバネ力で所定の押圧力をもって定着ローラ101に対してベルト105を挟んで押し付けられた状態になる。即ち、第1及び第2支持ローラ103・104に張架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101に対して腹当てに接触して定着ローラ105に対して定着ローラ回転方向において幅広の外部加熱ニップ部Neを形成した状態になる。
【0087】
また、ベルトユニット128が当接ポジションAに移動することで、クリーニングローラ108の軸108aL・108aRとバネ受座92L・92Rとの距離LAが、ベルトユニット128が退避ポジションBに位置している場合の距離LBよりも長くなる。これにより、軸108aL・108aRとバネ受座92L・92Rとの間の加圧バネ110L・110Rが、ベルトユニット128が退避ポジションBに位置している場合よりも伸びた状態になる。
【0088】
このバネ110L・110Rの伸びにより、クリーニングローラ108にかかるバネ110L・110Rの加圧力が、例えば、距離LBのときの6kgfから1kgfに小さくなり、それに伴って、ベルト105に加わる加圧力も小さくなる。ベルトユニット128は加圧バネ131L・131Rによって例えば20kgfで定着ローラ101に向かって加圧される。
【0089】
これにより、ベルトユニット128が定着ローラ101に対して当接ポジションAにある場合に、ベルト105に大きな負荷を与えることなくベルト105と定着ローラ101との外部加熱ニップ部Neのニップ幅を十分に確保することができる。これとともにベルト105を回転駆動させることが可能になる。
【0090】
次に、本構成の効果について説明する。図8はベルトユニット128が定着ローラ101に対して退避ポジションBにある場合のベルト105の第2支持ローラ104に接する部分における長手方向の温度の測定結果を示している。
【0091】
実線はベルト105が無い状態で所定の位置の温度を測定した結果である。この場合は、第2支持ローラ104の表面の温度となる。一点鎖線はベルト105を第1及び第2支持ローラ103・104に懸架して加熱した際に、加圧バネ110L・110Rによってクリーニングローラ108を介してベルト105を6kgfで加圧した場合の所定の位置での温度の測定結果を示している。
【0092】
測定結果から、実線と一点鎖線が非常に近い温度を示していることがわかる。この結果より、ベルト105が第2支持ローラ104の表面温度と同じ温度に加熱されたことを意味する。よって、ベルト105が加圧バネ110L・110Rによって、クリーニングローラ108を介して加圧されることでベルト105に張りが付与され、ベルト105と第2支持ローラ104との密着性が高い状態に維持されていることがいえる。
【0093】
破線はベルト105を第1及び第2支持ローラ103・104に懸架して加熱した際に加圧バネ110L・110Rによって、クリーニングローラ108を介してベルト105を1kgfで加圧した場合の所定の位置での温度の測定結果を示している。
【0094】
測定結果から、実線と破線が大きく違う値を示していることがわかる。この結果より、加圧バネ110L・110Rによるクリーニングローラ108を介したベルト105への加圧力が、ベルト105と第1及び第2支持ローラ103・104を密着させるのに不十分であるために、ベルト105への熱の移動が妨げられているといえる。
【0095】
この結果より、スタンバイ時においてベルトユニット128が定着ローラ101に対して退避ポジションBにある場合には次のことが必要があることがわかる。即ち、ベルト105に加熱源である第1及び第2支持ローラ103・104から熱をできるだけ多く供給するためには、ベルト105に例えば6kgfといったある程度の大きさの加圧力を付与する必要がある。
【0096】
しかし、ベルト105に対して例えば6kgfといったある程度の大きさの加圧力を付与している場合、ベルトユニット128が定着ローラ101から退避したポジションBから当接するポジションAに移行する場合において次のことが必要である。即ち、定着ローラ101とベルト105との間に外部加熱ニップ部Neとして十分なニップ幅を得るためには、ベルトユニット128に対し例えば40kgfといった大きな加圧力を加える必要がある。
【0097】
このように、ベルト105がクリーニングローラ108及び定着ローラ101から大きな力で加圧された場合、ベルト105の引張応力が大きくなる。これにより、定着ローラ101の回転によってベルト105を従動回転させた際に、ベルト105が屈曲及び曲げられることで生じる応力との合力が大きくなるために、ベルト105の割れ等の破壊が生じる可能性が大きくなり、寿命が短くなっていた。
【0098】
そこで、本実施例に示す構成によれば、ベルトユニット128が退避ポジションBにあるときのベルト105への加圧力が、ベルトユニット128が当接ポジションAに移行する際に小さくなる。これにより、ベルト105が定着ローラ101に当接した際に定着ローラ101とベルト105との間に十分なニップ幅を得るためのベルトユニット128への加圧力を軽減することが可能になる。
【0099】
本実施例の効果の例を図9に示す。例えば、ベルトユニット128が退避ポジションBにあるときは、ベルト105に対して、加圧バネ110L・110Rによって、クリーニングローラ108を介して6kgfで加圧がなされている。この状態から、ベルトユニット128が当接ポジションAに移行することで、ベルト105に対する加圧バネ110L・110Rからの加圧力が1kgfに減少する。そして、ベルトユニット128に対して加圧バネ131L・131Rにより20kgfで加圧することで、定着ローラ101とベルト105との間に十分なニップ幅を得ることができる。
【0100】
このように、定着ローラ101にベルト105が当接した際に、ベルト105に対する加圧バネ110L・110Rからの加圧力を減少させることで、加圧バネ131L・131Rからの加圧力も小さく設定することが可能になる。よって、ベルト105にかかる引張応力が小さくなり、定着ローラ101が回転することでベルト105が従動した際のベルト105の割れや破損といった破壊が生じる可能性を小さくすることが可能になる。
【0101】
[実施例2]
第2の実施例を図10・図11を用いて説明する。図10は本実施例の定着装置において当接ポジションAに位置切換えされている状態時のベルトユニット128の左側面図である。図11は退避ポジションBに位置切換えされている状態時のベルトユニット128の左側面図である。定着装置の基本的な構成は実施例1の定着装置9と同様であるから共通する構成部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。また、ベルトユニット128の左側と右側は左右対称構造である。以下、本実施例の定着装置について実施例1の定着装置9とは異なる構成について説明する。
【0102】
本実施例においては、ベルト105を懸架させている複数の支持部材としての第1及び第2支持ローラ103・104のうちの1つである第1支持ローラ103をベルト105に張りを与える移動可能なベルトテンションローラに兼用している。
【0103】
ベルト張り力可変手段は、この第1支持ローラ103をベルト105に張りを与える方向に移動させる移動付勢力をベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされているときと退避ポジションBに位置切換えされているときとで違わせる。これにより、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置切換えされているときにおけるベルト張り力はベルトユニット128が退避ポジションBに位置切換えされているときにおけるベルト張り力よりも小さくなるようにベルト張り力を可変する。
【0104】
以下、本実施例におけるベルト張り力可変手段の構成について説明する。第1支持ローラ103は左右の軸受板206L・(206R)間に第2支持ローラ104に近づく方向と離れる方向とに並行移動可能に配設してある。即ち、第1支持ローラ103の左右の軸部103aL・(103aR)の軸受部材であるベアリング132L・(132R)を、それぞれ、左右の軸受板206L・(206R)に設けた前後方向に長いスライド穴206dL・(206dR)に係合させてある。これにより、第1支持ローラ103を第2支持ローラ104に対して軸間距離を可変にできるようにしている。
【0105】
ベアリング132L・(132R)にはワイヤー133L・(133R)の一端を係止してある。ワイヤー133L・(133R)は左右の軸受板206L・(206R)にそれぞれ設けたプーリ134L・(134R)に引っ掛けて下方に引き回し引張バネ(加圧手段)135L・(135R)の上端部に係止してある。引張ばね(加圧手段、付勢部材)135L・(135R)の下端部は不動のバネ受座136L・(136R)に係止させてある。
【0106】
この構成により、第1支持ローラ103が第2支持ローラ104に対して離れ方向に移動付勢されて第1及び第2支持ローラ103・104に懸回されているベルト105に張りが与えられる。
【0107】
サーミスタ123・124は、それぞれ、ベルト105の内側において第1支持ローラ103と第2支持ローラ104の外面に対して接触させて設けてある。この構成により、ベルト105の外面に対してサーミスタ123・124を接触させて配設する構成の場合に生じる可能性があるベルト表面の傷付きが防止される。クリーニングローラ108は第2支持ローラ104のベルト掛け回し部においてベルト105の外面に加圧バネ110L・(110R)により押し付けて配設してある。
【0108】
ベルトユニット128が当接ポジションA(図10)から退避ポジションB(図11)に移動する場合は、実施例1の定着装置9と同様に、加圧カム129L・(129R)の回転により大隆起部が下向きから上向きとなる。これにより、加圧アーム127がバネ受座91L・(91R)との間に加圧バネ131L・(131R)を押し縮めながら回動軸109L・(109R)を中心に定着ローラ101から離れる上方に移動する。
【0109】
この加圧アーム127の動きに連動して、加圧アーム127に支持された、軸受板206L・206R、第1及び第2支持ローラ103・104、ベルト105、クリーニングローラ108のアセンブリも定着ローラ101から上方に持ち上げられて退避する。
【0110】
この加圧アーム127の動きに連動して、加圧アーム127に支持された、軸受板206L・206R、第1及び第2支持ローラ103・104、ベルト105、クリーニングローラ108のアセンブリも定着ローラ101から上方に持ち上げられて退避する。即ち、第1及び第2支持ローラ103・104とベルト105が定着ローラ101に非接触に持ち上げられる。
【0111】
また、ベルトユニット128が退避ポジションBに移動することで、プーリ134L・(134R)とバネ受座136L・(136R)との距離LBが、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置している場合の距離LAよりも長くなる。そのために、引張バネ135L・(135R)が、ベルトユニット128が当接ポジションAに位置している場合よりも引き伸ばされる。
【0112】
これにより、ベルト105にかかる張力が、例えば、距離LAのときの1kgfから6kgfに大きくなる。これにより、ベルトユニット128が定着ローラ101に対して退避ポジションBにある場合に、ベルト105に十分な張りを付与し、ベルト加熱源(ベルト加熱部材)である第1及び第2支持ローラ103・104との密着性を維持することができる。よって、ベルト105を効率良く加熱することが可能になり、ベルト105の表面が均一に加熱される。
【0113】
また、ベルトユニット128が退避ポジションBにある場合に、加圧アーム127に支持された、軸受板206L・206R以下のアセンブリは自重によって回動軸136L・136Rを中心に図11において時計周りに回転しようとする。
【0114】
この回転によってアセンブリの姿勢が崩れ、ベルト105が定着ローラ101に接することを防ぐために、加圧アーム127の左右部にストッパー部材140L・(140R)を設けている。このストッパー部材140L・(140R)に対してそれぞれ左右の軸受板206L・(206R)を突き当たらせることで軸受板206L・(206R)のそれ以上の回転を阻止している。
【0115】
次に、ベルトユニット128が定着ローラ101に対して退避ポジションBから当接ポジションAに移動する場合について説明する。この場合は、実施例1の定着装置9と同様に、加圧カム129L・129Rの回転により大隆起部が上向きから下向きとなる。これにより、加圧アーム127が加圧バネ131L・131Rの圧縮反力により回動軸109L・109Rを中心に定着ローラ101に近づく下方に移動する。
【0116】
この加圧アーム127の動きに連動して、加圧アーム127に支持された軸受板206L・206R以下のアセンブリも下降する。このアセンブリの下降により、ベルト105の下行側のベルト部分が定着ローラ101の上面に接触し、アセンブリの更なる下降により第1及び第2支持ローラ103・104がベルト105を介して定着ローラ101の上面に接触する。
【0117】
この時点で加圧アーム127の下方への移動は止まるが、加圧カム129L・129Rは大隆起部が下向きになるまで回転して加圧アーム127に対して非接触となる。これにより、第1及び第2支持ローラ103・104は加圧バネ131L・131Rのバネ力で所定の押圧力をもって定着ローラ101に対してベルト105を挟んで押し付けられた状態になる。即ち、第1及び第2支持ローラ103・104に張架されているベルト105の下行側部分が定着ローラ101に対して腹当てに接触して定着ローラ105に対して定着ローラ回転方向において幅広の外部加熱ニップ部Neを形成した状態になる。
【0118】
また、ベルトユニット128が当接ポジションAに移動することで、プーリ134L・(134R)とバネ受座136L・(136R)との距離LAが、ベルトユニット128が退避ポジションBに位置している場合の距離LBよりも短くなる。そのために、引張バネ135L・(135R)が、ベルトユニット128が退避ポジションBに位置している場合よりも縮まる。
【0119】
このバネ110L・110Rの縮みにより、ベルト105にかかる張り力が、例えば、距離LBのときの6kgfから1kgfに小さくなり、それに伴って、ベルト105に加わる張り力も小さくなる。ベルトユニット128は加圧バネ131L・131Rによって例えば20kgfで定着ローラ101に向かって加圧される。
【0120】
これにより、実施例1の場合と同様に、ベルトユニット128が定着ローラ101に対して当接ポジションAにある場合に、ベルト105に大きな負荷を与えることなくベルト105と定着ローラ101とのニップ部Neの幅を十分に確保することができる。これとともにベルト105を回転駆動させることが可能になる。
【0121】
本構成を用いることで、ベルトユニット128が定着ローラ101から退避しているときは、第1支持ローラ103が強い力で第2支持ローラ104から離れる方向に引っ張られる。これにより、ベルト105に張りが付与され、ベルト105と第1及び第2支持ローラ103・104とで作られるスペースを維持したまま、第1及び第2支持ローラ103・104との密着性を向上することが可能となる。
【0122】
また、ベルト105が定着ローラ101に当接しているときは、第1支持ローラ103を引っ張る力を軽減する。これにより、ベルト105と定着ローラ101との間に十分なニップ幅を得るためのベルトユニット128への加圧力を軽減し、ベルト105が定着ローラ101にかかる応力を小さくすることが可能となる。従って、スタンバイ時のベルト105が定着ローラ101から退避した位置において、ベルト105を効率良く加熱する。
【0123】
これとともに、通紙時のベルト105が定着ローラ101に当接し、定着ローラ101が回転することで定着ローラ101に従動して回転する際には、ベルト105に過剰な負荷をかけることなく、駆動させることが可能となる。
【0124】
[その他の装置構成]
1)本発明に係る画像加熱装置は、実施例の定着装置としての使用に限られない。記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢増大装置(画像改質装置)としても有効に使用することができる。
【0125】
2)画像加熱部材101はローラ体に限られない。回転駆動されるエンドレスベルト体にすることもできる。
【0126】
3)ベルト105を懸架する複数の支持部材としての支持ローラは実施例の第1と第2の2本のローラ103・104に限られない。3本以上の支持ローラでベルト105を張架する構成とすることもできる。また、支持部材はローラ形状でなくともよい。ベルト内面との摺動性がよい非回転の部材にすることもできる。
【0127】
4)画像加熱部材101、加圧部材102、支持部材103・104を加熱する加熱手段は実施例のヒータ106・107・114・115による加熱に限られない。電磁誘導加熱する構成にすることもできる。
【0128】
5)加圧部材102はローラ体に限られない。回転駆動されるエンドレスベルト体にすることもできる。また、表面(定着ローラや記録材との当接面)の摩擦係数が小さい非回転部材(加圧パッドなど)の形態にすることもできる。
【符号の説明】
【0129】
9・・画像加熱装置(定着装置)、101・・画像加熱部材(定着ローラ)、103・104・・支持部材、105・・ベルト、129・・外部加熱部材(外部加熱ベルトユニット)、A・・当接ポジション、B・・退避ポジション、108・110・111・92,103・206・133〜136・・ベルト張り力可変手段、P・・記録材、K・・画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を担持した記録材に接して前記画像を加熱する回転可能な画像加熱部材と、ベルト加熱部材を兼ねる複数の支持部材に懸架されていて前記画像加熱部材の表面に接触して回転し前記画像加熱部材を外部より加熱する無端状のベルトを有する外部加熱部材と、を有する画像加熱装置であって、
前記外部加熱部材は、前記ベルトを前記画像加熱部材に対して加圧して接触させている当接ポジションと前記ベルトを前記画像加熱部材から非接触に離間させている退避ポジションとに位置切換えが可能であり、
前記外部加熱部材が前記当接ポジションに位置切換えされているときと前記退避ポジションに位置切換えされているときとで位置切換えに連動して前記ベルトに作用させる張り力を違わせるベルト張り力可変手段を有し、前記外部加熱部材が前記当接ポジションに位置切換えされているときにおけるベルト張り力は前記外部加熱部材が前記退避ポジションに位置切換えされているときにおけるベルト張り力よりも小さいことを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
前記ベルト張り力可変手段は、前記ベルトの外面に当接する当接部材と、前記当接部材を前記ベルトに加圧付勢して前記ベルトに張りを与える付勢部材と、を有し、前記付勢部材による前記当接部材の前記ベルトに対する加圧付勢力を前記外部加熱部材が前記当接ポジションに位置切換えされているときと前記退避ポジションに位置切換えされているときとで違わせることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項3】
前記当接部材は回転可能なローラであることを特徴とする請求項2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記ローラは多孔質のソフトローラであることを特徴とする請求項3に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
前記ベルト張り力可変手段は、前記複数の支持部材のうちの1つの支持部材を前記ベルトに張りを与える方向に移動可能な支持部材とし、前記移動可能な支持部材を前記ベルトに張りを与える方向に移動付勢する付勢部材を有し、前記付勢部材による前記移動可能な支持部材の移動付勢力を前記外部加熱部材が前記当接ポジションに位置切換えされているときと前記退避ポジションに位置切換えされているときとで違わせることを特徴とする請求項1に記載の画像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−109057(P2013−109057A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252381(P2011−252381)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】