説明

画像取得装置および画像取得方法

【課題】 画像取得装置において被検物を複数回撮像する際に、駆動機構の駆動によって装置内の重心が移動して、装置内部が自重変形することを抑制し、かつ、駆動機構の安定した位置決めを行うことを目的とする。
【解決手段】 被検物101の撮像対象領域を結像する結像光学系102と、結像光学系102により結像された撮像対象領域を撮像する撮像可能領域を有する撮像素子200と、を備える画像取得装置であって、被検物101および撮像素子200の少なくとも一方を結像光学系102の光軸に垂直な面内で回転可能に保持する回転機構(106、107)を備えており、回転機構の駆動によって撮像対象領域と撮像可能領域との相対位置を変更することにより、撮像対象領域のうち回転機構の駆動前の撮像時に撮像されなかった領域を撮像する動作を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検物の複数回撮像を行う画像取得装置およびその画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の病理診断において、体内の組織などの検体を含む被検物(プレパラート)を撮像し、プレパラートのデジタル画像データを取得する画像取得装置の需要が増加している。プレパラートをデジタル画像化することは、検体の経時劣化を考慮せずに済むことや、遠方の病理医と画像データの共有が可能になるなどの利点がある。しかし、病理診断においては高精細な画像が必要となるため、取得するデジタル画像のデータ量が多くなり、画像取得装置による撮像時間が長くなってしまう。そのため、画像データ取得のスループットを向上させることが求められている。
【0003】
画像データ取得のスループットを上げる方法として、大画角の画像取得装置を用いて、一回の撮像で取得できるデータ量を多くすることが考えられるが、単に画角を大きくしても、それに対応する大きな撮像素子が存在しないという問題がある。ここで、複数の撮像素子の二次元配列によって、大画角に対応させるという方法が考えられる。しかし、配線の取り回しや設計上の制約により、各撮像素子同士を敷き詰めて配置することができない場合がある。また、一般的な撮像素子には、実際に光を検知する撮像可能領域の周りに、基盤や実装部分を含む撮像不可能領域が存在するため、各撮像素子同士を敷き詰めて配置しても、撮像できない領域が生じてしまう。そのため、複数の撮像素子によって被検物を撮像したとしても、取得画像には空白領域が生じてしまうことになる。
【0004】
そこで、特許文献1では、複数の撮像素子を有する顕微鏡において、一度に撮像できる領域より大きな被検物を観察する際に、被検物を光軸に垂直な2軸に沿って移動させて複数回撮像している。このようにして取得した複数の画像を合成することで、撮像不可能領域によって生じる画像の空白領域をなくし、被検物全体の画像を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−3016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、被検物を2軸方向に直線駆動しながら複数回撮像する際に、駆動機構によって被検物を移動させることにより装置内の重心が移動し、装置内部が自重変形してしまうことがある。また、2軸方向に直線駆動を行う場合、その可動域内における安定した位置決め制御が容易でないことが課題として存在する。
【0007】
そこで、本発明は、画像取得装置において被検物を複数回撮像する際に、駆動機構の駆動によって装置内の重心が移動して、装置内部が自重変形することを抑制し、かつ、駆動機構の安定した位置決めを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、本発明の一側面としての画像取得装置は、被検物の撮像対象領域を結像する結像光学系と、該結像光学系により結像された前記撮像対象領域を撮像する撮像可能領域を有する撮像素子と、を備え、前記被検物および前記撮像素子の少なくとも一方を前記結像光学系の光軸に垂直な面内で回転可能に保持する回転機構を備えており、該回転機構の駆動によって前記撮像対象領域と前記撮像可能領域との相対位置を変更することにより、前記撮像対象領域のうち該回転機構の駆動前の撮像時に撮像されなかった領域を撮像する動作を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的またはその他の特徴は、以下、添付の図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る画像取得装置によれば、画像取得装置において被検物を複数回撮像する際に、駆動機構の駆動によって装置内の重心が移動して、装置内部が自重変形することを抑制し、かつ、駆動機構の安定した位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像取得装置を示した全体図である。
【図2】撮像ユニットを示した概要図である。
【図3】実施例1の画像取得方法を示した概念図である。
【図4】実施例1の撮像ユニットにおける撮像可能領域の配置図である。
【図5】実施例2乃至4の撮像ユニットにおける撮像可能領域の配置図である。
【図6】実施例2の画像取得方法を示した概念図である。
【図7】実施例3の画像取得方法を示した概念図である。
【図8】実施例4の撮像可能領域と回転中心との位置関係を示した概念図である。
【図9】実施例4の画像取得方法による撮像終了領域を示した概念図である。
【図10】90度ごとに位置決めを行うための回転機構を示した概要図である。
【図11】被検物を直線駆動するための機構を示した概要図である。
【図12】撮像可能領域回転時の回転中心を変えるための機構を示した概要図である。
【図13】撮像可能領域とそれに対応する画像データの座標系を示した概念図である。
【図14】本実施形態の画像取得を行う際のシーケンスを示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を用いて説明するが、本発明は以下に限られるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態における画像取得装置100の全体を示したものである。画像取得装置100においては、照明ユニット104により照明された被検物101からの光束が結像光学系102に入射し、この結像光学系102によって、撮像ユニット103上に被検物101の拡大された像が形成される。なお、各部材は全体支持構造物105によって支持されている。また、画像取得装置100は、被検物101および撮像ユニット103の少なくとも一方を光軸周りに回転させることができる回転機構を有している。本実施形態における回転機構は、被検物回転機構106および撮像ユニット回転機構107を備えている。この回転機構により、光軸に垂直な面内で被検物101および撮像ユニット103の夫々を自由に回転させることができる。そのため、被検物101または撮像ユニット103の少なくとも一方を回転させて、夫々の相対位置を変更することにより、被検物101の撮像対象領域(撮像したい領域)を変更しながら複数回撮像することができる。
【0014】
このように、被検物の撮像対象領域を変更しながら複数回撮像する際に、被検物および撮像ユニットを回転させる機構を用いることで、被検物を直線駆動する場合と比較して、重心の移動による装置内部の自重変形を抑制することができる。ここで、被検物および撮像ユニットのいずれの回転も等価に考えることができるため、本実施形態において夫々の回転を相互に置き換えたとしても、本発明は成り立つことになる。
【0015】
次に、図1の撮像ユニット103について図2を用いて詳細に説明する。一般的な撮像素子は、フォトダイオードなどによって光を検知する撮像可能領域と、撮像可能領域からの信号の外部出力などを行う実装部分を含む撮像不可能領域とに分けられる。よって、図2に示すように撮像素子200を隙間なく敷き詰めたとしても、各撮像可能領域201同士の間に撮像不可能領域202が存在することになる。そのため、撮像可能領域201を隙間なく敷き詰めることができず、一度の撮像で隙間のない画像データを取得することが不可能となる。そこで、本発明に係る画像取得装置においては、被検物(不図示)および撮像可能領域201を回転させることにより、撮像可能領域201と被検物との相対位置を変更しながら撮像する。このようにして、撮像不可能領域202による空白を埋めるように複数回撮像を行い、取得した画像データを画像処理部108により合成することで、隙間のない被検物全体の画像データを取得することができる。なお、撮像可能領域201のみを回転させることはできないため、本実施形態においては、撮像素子200を複数枚有する撮像ユニット103を回転させている。ここで、図2おいては撮像素子200を4つ配置した撮像ユニット103を示しているが、撮像素子の数はこれに限るものではなく、撮像可能領域201の大きさや形に応じて適宜決定されるものとする。また、本発明は1つの撮像素子200のみを撮像ユニット103に配置する場合にも適用可能である。
【0016】
上述したような撮像を行うための回転機構としては、モータとギアもしくはプーリを用いて、被検物や撮像ユニットを任意の回転角に位置決めできる機構を用いることができる。特に、後述する各実施例において用いる、被検物や撮像ユニットを回転させて90度ごとに位置決めするための機構について説明する。例えば、90度ごとに停止するゼネバ機構を設け、回転させたい被検物や撮像ユニットに対して、ギアやプーリなどの機械的接触を行うことで駆動させる方法が考えられる。また、図10に示したように、被検物1001を回転可能に保持する被回転物1002に対して、切り欠き1004を90度ごとに施し、くさび1003が各切り欠き1004に入ることで位置決めするようにしてもよい。なお、回転動作を行う時は、不図示の引き込み機構を用いて、くさび1003を被回転物1002から離れるようにすることができる。
【0017】
以上のように、被検物を複数回撮像するにあたって回転機構を用いることで、被検物や撮像ユニットを駆動する際に、装置内部の重心が移動して自重変形することを抑制でき、かつ安定した位置決めを行うことができる。
【0018】
次に、被検物や撮像ユニットを回転させて複数回撮像を行うことで取得できる、複数の画像データの座標変換について説明する。図13(a)は、被検物における撮像したい領域の座標を表わしている。また、図13(b)は、撮像対象領域(撮像したい領域)のうち2×2の領域を撮像できる撮像可能領域1301(A〜D)を、回転中心1302周りに回転させた時に、夫々が図13(a)におけるどの領域を撮像するのかを示している。図13(b)に示したように、撮像可能領域1301を90度ずつ回転させて撮像した場合、A〜Dの夫々で撮像した画像データの夫々も90度ずつ回転していることがわかる。そのため、A〜Dの夫々において撮像した複数の画像データを合成する際に、画像処理部において各画像データの座標変換の処理が必要となる。具体的には、画像データの回転角をθとしたときに、次の式(1)に示す回転行列R(θ)を、取得した各画像データの座標系にかけることで、回転角に応じた座標変換を行うことができる。
【0019】
【数1】

【0020】
ここで、図13(b)においては、斜線で示す初期状態の回転角θを0度として、90度、180度、270度の夫々を回転行列R(θ)に代入することで、各画像データの回転角に応じた回転行列が得られる。なお、いずれの回転角θに対しても、回転行列R(θ)は0と1と−1で表わされることになり、これは、座標系を入れ替えたり、符号を入れ替えたりするだけで処理することができることを示している。以上のような処理によって、被検物を複数回撮像して取得した画像データを合成して、撮像対象領域全体の隙間のない画像を生成することができる。
【0021】
本実施形態に係る画像取得装置によれば、大きな被検物の領域を高精細に観察したい場合(例えば病理診断などにおいて、10mm四方の領域を0.25μmの分解能で観察する場合など)にも、高いスループットで画像データを取得することができる。
【0022】
以下、本発明における画像取得装置について、各実施例で詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図3は、撮像ユニットが4つの撮像素子を有する場合に、被検物に対して撮像ユニットを回転させて撮像した時の概念図を示している。ここでは、被検物の撮像対象領域を302、撮像素子の撮像可能領域を301、撮像ユニットを回転させる際の回転中心を303としている。また、撮像ユニットを回転させた時に、撮像可能領域301が回転したことが分かりやすいように、撮像可能領域301の夫々にはA〜Dの文字を付している。なお、本実施形態における撮像対象領域とは、被検物における撮像したい領域のことを示しており、それが被検物の全域とは限らないものとする。
【0024】
本実施例では、初期状態を示す図3(a)の撮像可能領域301の回転角を0度として、そこから撮像ユニットを時計回りに90度ずつ回転させながら、撮像対象領域302を撮像する。具体的には、回転角が90度(図3(b))、180度(図3(c))、270度(図3(d))の夫々になる位置で計4回の撮像を行う。なお、図3(b)〜(d)の斜線で示した部分は、撮像の終了した撮像終了領域304である。このように、図3(a)で撮像した後、図3(b)→(c)→(d)の順に撮像可能領域301を時計回りに90度ずつ回転させて、4回の撮像を行うことにより、撮像対象領域302を全て撮像できていることが分かる。なお、本実施例では撮像可能領域301を時計回りに90度ずつ回転させて撮像しているが、その回転角および回転方向は問わず、撮像対象領域302を全て撮像できるように回転させれば良い。また、撮像ユニットと同様に被検物を回転させて撮像を行ってもよい。例えば、撮像ユニットと被検物を同じ回転中心で同時に回転させることで、撮像対象領域302に対する撮像可能領域301の位置を、図3のように90度ずつ変更させるようにしてもよい。
【0025】
次に、図3のように撮像対象領域を全て撮像できるようにするための、撮像素子の配置について説明する。図4には、撮像可能領域401を有する4つの撮像素子を像面上に格子状に配列させた様子を示している。このような4つの撮像素子を用いる場合、撮像可能領域401の横の長さ402および縦の長さ403と、隣接する撮像可能領域までの横の間隔404および縦の間隔405とが、等しくなるように配置することが望ましい。数学的に表わすと、直交座標系であるデカルト座標系上の座標を(x、y)とした時、2NL≦x≦2NL+L、2ML≦y≦2ML+L(N、M:整数、L:理想撮像正方形一辺長)、で表わされる領域が撮像可能領域である。なお、Lは一つの撮像可能領域を理想の正方形としたときの一辺の長さであり、次の式(2)で表わされるとする。
【0026】
【数2】

【0027】
また、回転中心406は、各撮像可能領域401における、対向する頂点のいずれかの位置にすることが望ましい。これは、例えば回転中心を407の位置とした場合、407対して各撮像可能領域401が回転対称性を持ってしまい、90度ずつ回転させても同じ領域しか撮像できないことになるからである。よって、図4のように回転中心406を設定し、それに対して各撮像可能領域401が回転対称性を持たないように配置することで、図3のような回転撮像動作により撮像対象領域を隙間なく撮像することができる。ただし、図4は理想状態を示した図であり、精度よく撮像可能領域を配置でき、かつ精度よく撮像可能領域を回転できた場合を想定したものである。しかし、実際には、撮像ユニットを回転させる際の誤差や、取り付け時の誤差による撮像素子の位置ズレなどにより、4回の撮像を行っても撮像できていない空白領域が生じてしまうことがある。そこで、図3に示すように、図4の理想状態における撮像可能領域401よりも大きい撮像可能領域301を用いて、撮像可能領域同士の間隔を狭めたり、回転中心303が撮像可能領域301の境界または内部に含まれるように設定したりすることが望ましい。このようにすることで、撮像終了領域に重なり部分を生じさせることができ、撮像対象領域を全て撮像した後に生じた重なり部分を画像処理することで、結果として隙間のない画像データを取得することができる。なお、被検物を回転させる場合は、被検物を含む平面上のうち撮像可能領域と光学的に共役である領域が、回転中心を含むように配置することにより、撮像ユニットを回転させる場合と同様に撮像することができる。
【実施例2】
【0028】
本実施例では、撮像可能領域が撮像不可能領域に比べて小さく、撮像素子同士の間隔を詰めることができない場合の、撮像素子の配置について説明する。具体的には、各撮像可能領域同士の間隔が、撮像可能領域の短い一辺の長さの2倍以上4倍以下であり、図3で示したように4回の撮像を行っても空白領域が生じてしまう場合である。この場合、図5に示すように、各撮像可能領域501同士の間隔504および505が、撮像可能領域の一辺の長さ502の三倍の長さとなるように配置することが望ましい。なお、ここでは撮像可能領域501が正方形であり、横の長さ502と縦の長さ503が等しいとする。数学的に表わすと、直交座標系上の座標を(x、y)としたとき、4NL16≦x≦4NL16+L16、4ML16≦y≦4ML16+L16、(N、M:整数、L16:理想撮像正方形一辺長)で表わされる領域に撮像可能領域501が配置できればよい。ここで、L16は一つの撮像可能領域を理想の正方形としたときの一辺の長さであり、次の式(3)で表わされるとする。なお、図5は理想状態を示した図であるため、実際には撮像可能領域501を含むように、撮像可能領域の大きさや配置の設計を行えばよい。
【0029】
【数3】

【0030】
次に、図6を用いて、撮像ユニットと被検物の両方を回転させる場合の撮像手順を説明する。なお、図6における撮像可能領域601の配置は、図5の撮像可能領域501の配置と等しいものとする。602は撮像ユニットを回転させる際の回転中心、603は被検物を回転させる際の回転中心を撮像ユニット上に投影したものであり、夫々が面内で一致しないように設定している。実施例1と同様に、図6(a)の初期状態から、撮像ユニットを回転中心602周りに90度ずつ回転させて4回撮像する動作(604)を行うことによって、図6(b)の斜線で示した部分が撮像終了領域となる。そして、さらに被検物を回転中心603周りに90度回転させた後、先程と同様に、撮像ユニットを回転中心602周りに90度ずつ回転させて4回撮像する。この撮像により、図6(c)の斜線格子で示す部分が撮像終了領域606となる。このようにして、被検物を回転中心602周りに90度ずつ回転させつつ、撮像ユニットを回転中心602周りに回転させて撮像する動作(605)を行う。以上のように、計16回の撮像動作を行うことで、図6(c)で示す領域の全てが撮像終了領域となる。したがって、撮像対象領域よりも撮像可能領域が小さく、撮像ユニットの回転のみでは撮像できない空白領域が生じる場合でも、異なる回転中心で被検物を回転させることで、隙間のない画像データを取得することができる。なお、撮像ユニットと被検物の夫々を回転させる際の回転中心を入れ替えて、撮像ユニットを回転させた各位置において、被検物を4回ずつ回転させて撮像するようにしてもよい。また、実施例1と同様に、撮像ユニットおよび被検物の回転角および回転方向は本実施例に限らない。なお、撮像ユニットおよび被検物の夫々を異なる回転中心で回転させる際は、図11や図12に示すような機構を用いることができる(詳細は後述)。
【実施例3】
【0031】
図7は、撮像ユニットの回転と被検物の直線駆動の組み合わせにより、撮像対象領域を隙間なく撮像する場合を示した図である。本実施例の撮像ユニットにおいても、図5と同様に撮像可能領域を配置している。まず、実施例2と同じように、図6(a)の状態から撮像ユニットを回転させて撮像を行い、図6(b)のように撮像終了領域を得る。この初期撮像終了領域を、図7における701とする。そして、本実施例では、初期撮像終了領域701の撮像を終えた後に、被検物をX軸方向702およびY軸方向703に移動させてから、先程と同様に撮像ユニットを回転させて4回撮像する。さらに、被検物を異なる位置に移動させつつ同様の撮像動作を行うことで、移動後撮像終了領域704を得ることができる。このようにして、被検物をXY軸方向に移動させつつ、撮像ユニットを回転させて撮像し、計16回の撮像動作を行うことで、図7で示す領域の全てが撮像終了領域となる。したがって、実施例2と同様に、撮像対象領域よりも撮像可能領域が小さく、撮像ユニットの回転のみでは撮像できない空白領域が生じる場合でも、被検物の直線駆動を組み合わせることで、隙間のない画像データを取得することができる。なお、実施例1と同様に撮像ユニットの代わりに被検物を回転させてもよく、また、撮像ユニットおよび被検物の回転角および回転方向は本実施例に限らない。
【0032】
本実施例のように、撮像ユニットの回転および被検物の直線駆動を行う場合には、例えば図11に示したような機構を用いてもよい。ここでは、撮像動作後に被検物1104を支持している支持構造物1102をXY軸方向に移動させて、撮像終了領域1101と撮像ユニットの撮像可能領域とをずらすことにより、別の撮像対象領域を撮像することができる。その際、支持構造物1102を外枠1103に突き当てることで、4つのポジションに位置決めすることができ、図7で示すように撮像対象領域を全て撮像することができる。なお、図11の機構は、被検物を回転可能な構成としているが、本実施例に係る画像取得方法を用いる場合は、被回転物1105が回転しないように固定できるものとする。ここで、位置再現性を高めるために、外枠1103に突き当てピン(不図示)を設けてもよい。また、バキュームチャックもしくは磁力による吸着や、メカクランプなどの機械的な機構(不図示)を用いて、任意の複数の位置に位置決めできる機構を持っていてもよい。
【実施例4】
【0033】
図8は、撮像可能領域を回転させる際の回転中心を変えることにより、撮像対象領域を隙間なく撮像する場合を示した図である。本実施例の撮像ユニットにおいても、図5と同様に撮像可能領域を配置している。801は撮像対象領域、802は撮像ユニット回転時の回転中心であり、図8(a1)〜(d1)は、撮像対象領域801に対する撮像可能領域位置803〜806を表している。図8(a1)〜(d1)の夫々において、撮像可能領域を回転中心802周りに90度ずつ回転させて、計4回の撮像を撮像可能領域位置803〜806の夫々で行うことで、図9(a2)〜(d2)の夫々に示すような撮像終了領域を得ることができる。そして、これらの撮像終了領域を組み合わせることで、図9(e)に示すように、撮像対象領域801の全てが撮像終了領域となることがわかる。このように、回転中心802に対して、撮像可能領域の位置を803〜806のように配置することにより、図5のように撮像可能領域を配置した場合でも、隙間のない画像データを取得することができる。なお、実施例1と同様に撮像ユニットの代わりに被検物を回転させてもよく、また、撮像ユニットおよび被検物の回転角および回転方向は本実施例に限らない。
【0034】
ここで、撮像可能領域回転時の回転中心を変えることができる機構として、例えば図12に示すようなものが挙げられる。ここでは、被回転物1203の上に、XY軸方向に直線駆動可能な撮像ユニット1202を配置している。図12に示した状態では、撮像可能領域1201が回転中心1204周りに回転することになる。そこで、撮像ユニット1202を4つのポジション、つまり移動後に1205の夫々が回転中心1204に一致する位置に移動させる。このように、撮像ユニット1202を直線駆動して撮像可能領域1201を回転させる際の回転中心を変えることで、図8で示したような撮像動作を行うことができる。なお、図12の機構に対しても、図10で示したような位置決め機構を適用することができる。以上より、撮像ユニットを、回転中心を変えながら回転させることにより、隙間のない画像データを取得することができる。
【実施例5】
【0035】
図14は、上記の実施例で説明した画像取得方法を用いて、実際に被検物の撮像を行う際のシーケンスを示している。まず、被検物および撮像ユニットを回転させていない初期状態からスタートし、ステップS1401で最初の撮像を行う。そして、ステップS1402において、被検物または撮像ユニットの回転動作が必要かどうかの判定を行う。例えば、初期状態の撮像可能領域に被検物の像が全て収まる場合など、もしも最初の撮像で撮像対象領域を全て撮像できた場合は、回転動作の必要はないことになる。しかし、回転動作によってより大きな領域を撮像する必要がある場合には、ステップS1403に進んで撮像ユニット(または被検物)を90度回転させ、ステップS1401に戻って撮像を行う(第1回転撮像ループS1404)。この第1回転撮像ループS1404は、ステップS1402において回転動作が必要ないと判定されるまで、最大4回まで行うことができる。そして、ステップS1405において、撮像対象領域の撮像が完了したと判定された場合は、画像取得動作を終了する。しかし、ステップS1405の判定で、4回目の撮像を終えても撮像対象領域の全てを撮像できていない場合は、次のステップS1406へ進む。ステップS1406では、各実施例で説明した画像取得方法で、残りの撮像対象領域を撮像する。具体的には、被検物を(ステップS1403が被検物だったら撮像ユニットを)90度回転させるか、被検物を直線駆動するか、撮像ユニット回転時の回転中心を変えるか、のいずれかの動作を行う。このようにして、撮像対象領域に対する撮像可能領域の位置を移動させ、再び第1回転撮像ループS1404に戻って最大4回の撮像を行う(第2回転撮像ループS1407)。この第2回転撮像ループS1407を繰り返し、被検物における撮像対象領域の全ての撮像が完了したら、画像取得フローは終了することになる。よって、本発明に係る画像取得装置によれば、以上のような画像取得方法のシーケンスを用いることにより、撮像したい領域を全て撮像することができる。
【符号の説明】
【0036】
100 画像取得装置
101 被検物
102 結像光学系
103 撮像ユニット
106 被検物回転機構
107 撮像ユニット回転機構
200 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物の撮像対象領域を結像する結像光学系と、
該結像光学系により結像された前記撮像対象領域を撮像する撮像可能領域を有する撮像素子と、を備える画像取得装置であって、
前記被検物および前記撮像素子の少なくとも一方を前記結像光学系の光軸に垂直な面内で回転可能に保持する回転機構を備えており、
該回転機構の駆動によって前記撮像対象領域と前記撮像可能領域との相対位置を変更することにより、前記撮像対象領域のうち該回転機構の駆動前の撮像時に撮像されなかった領域を撮像する動作を行う
ことを特徴とする画像取得装置。
【請求項2】
前記撮像素子は、前記回転機構の駆動時における回転中心に対して、前記撮像可能領域が回転対称性を持たないように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像取得装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、前記撮像可能領域が前記回転中心を含むように配置され、
前記被検物は、前記被検物を含む面内の前記撮像可能領域と光学的に共役である領域が前記回転中心を含むように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の画像取得装置。
【請求項4】
前記回転機構は、駆動前の前記撮像対象領域に対する前記撮像可能領域の回転角を0度とした時、駆動後の前記回転角が90度、180度、270度のいずれか1つとなる位置で位置決め可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項5】
前記回転機構は、前記被検物および前記撮像素子の少なくとも一方を前記結像光学系の光軸に垂直な面内で直線駆動することが可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項6】
前記撮像可能領域が前記撮像対象領域を複数回撮像して取得した複数の画像データの夫々の回転角が等しくなるように、前記複数の画像データの座標変換を行う画像処理部を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、座標変換を行った前記複数の画像データを合成して、前記撮像対象領域の全域の画像データを生成可能であることを特徴とする請求項6項に記載の画像取得装置。
【請求項8】
前記撮像素子を複数備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像取得装置。
【請求項9】
結像光学系によって結像された被検物の撮像対象領域を、撮像素子の撮像可能領域で撮像する撮像ステップと、
前記被検物および前記撮像素子の少なくとも一方を前記結像光学系の光軸に垂直な面内で回転させる第1回転ステップと、を有しており、
前記第1回転ステップを行う毎に前記撮像ステップを行うことにより、前記撮像対象領域のうち前記第1回転ステップを行う前の前記撮像ステップで撮像されなかった領域を撮像する
ことを特徴とする画像取得方法。
【請求項10】
前記第1回転ステップは、前記撮像対象領域に対する前記撮像可能領域の回転角を90度ずつ変更するステップであることを特徴とする請求項9に記載の画像取得方法。
【請求項11】
前記被検物および前記撮像素子の少なくとも一方を前記結像光学系の光軸に垂直な面内で直線駆動する直動ステップを有しており、
前記直動ステップを行う毎に前記撮像ステップを行うことにより、前記撮像対象領域のうち前記直動ステップを行う前の前記撮像ステップで撮像されなかった領域を撮像する
ことを特徴とする請求項9または10に記載の画像取得方法。
【請求項12】
前記被検物および前記撮像素子の少なくとも一方を、前記結像光学系の光軸に垂直な面内で前記第1回転ステップにおける回転中心とは異なる回転中心周りに回転させる第2回転ステップを有しており、
前記第2回転ステップを行う毎に前記撮像ステップを行うことにより、前記撮像対象領域のうち前記第2回転ステップを行う前の前記撮像ステップで撮像されなかった領域を撮像する
ことを特徴とする請求項9または10に記載の画像取得方法。
【請求項13】
前記第2回転ステップは、前記撮像対象領域に対する前記撮像可能領域の回転角を90度ずつ変更するステップであることを特徴とする請求項12に記載の画像取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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