説明

画像定着用円筒部材、画像定着装置および画像形成装置

【課題】画質に優れた画像を形成し、且つ離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生を軽減する。
【解決手段】未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体と接触して前記トナー画像を前記記録媒体に定着する画像定着部材として用いられ、円筒状の基材の外周面側に、前記基材側から順に弾性層と離型層とを少なくとも有し、前記離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方のうち、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが、画像定着寄与領域における表面粗さRaよりも大きいことを特徴とする画像定着用円筒部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像定着用円筒部材、画像定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置においては、ベルト基材やロール基材等の円筒状の基材の周囲にゴム等の弾性層を設け、この弾性層の外周にフッ素樹脂等を含有する離型層を形成した定着ベルト(定着ロール)が用いられている。また、画像形成の高速化が進むことで径の大きな定着部材が望まれるようになり、このゴム等の弾性層を有する基材の外周面にフッ素樹脂等を含有する離型層を形成する方法としては、以下の方法が従来採用されている。
【0003】
先ず第1の方法としては、弾性層の外周にフッ素樹脂の粉体または液体の塗料を塗布し、この後に焼成してフッ素樹脂を含有する離型層を形成する方法が知られている。
また、第2の方法としては、弾性層の外周面に接着剤を塗布し、この後にフッ素樹脂製の熱収縮性チューブを被せ、ドライヤー等でこの熱収縮性チューブを加熱溶着して弾性層と接着させる方法が知られている。
【0004】
また、第3の方法としては、中空の円筒状の金型内に、予めフッ素樹脂製のチューブと外周に弾性層を設けていない基材とを同心的に取り付け、フッ素樹脂製のチューブと基材とで挟まれる領域にゴム材料を注入して硬化させる方法が知られている。
また、第4の方法としては、弾性層の外周面に接着剤を塗布し、この後に弾性層を有する基材よりも僅かに小径のフッ素樹脂製のチューブを拡張し、前記基材を挿入して、フッ素樹脂製のチューブの収縮力により被覆する方法がある。
【0005】
上記のようにして弾性層を有する基材に離型層を形成した画像定着用円筒部材において、離型層表面に供給される潤滑材を保持する観点から、耐熱樹脂層の内壁面を表面粗さRzで2μm以上30μm以下に粗面化する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、樹脂と金属との接着界面応力を軽減しつつ、両者の密着性を高める観点から、耐熱樹脂無端状ベルト表面を表面粗さRzで5μm以上に粗面化する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−341143号公報
【特許文献2】特開2002−351238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、画質に優れた画像を形成し、且つ離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1にかかる発明は、
未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体と接触して前記トナー画像を前記記録媒体に定着する画像定着部材として用いられ、
円筒状の基材の外周面側に、前記基材側から順に弾性層と離型層とを少なくとも有し、
前記離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方において、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが、画像定着寄与領域における表面粗さRaよりも大きいことを特徴とする画像定着用円筒部材である。
【0008】
請求項2にかかる発明は、
前記画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ前記画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の画像定着用円筒部材である。
【0009】
請求項3にかかる発明は、
前記弾性層の外周面のうち、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像定着用円筒部材である。
【0010】
請求項4にかかる発明は、
前記弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる凹凸を有することを特徴とする請求項3に記載の画像定着用円筒部材である。
【0011】
請求項5にかかる発明は、
前記弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる、前記基材の軸方向に延びる溝を有することを特徴とする請求項3に記載の画像定着用円筒部材である。
【0012】
請求項6にかかる発明は、
前記弾性層と前記離型層とが接着層を介して形成され、該接着層の外周面のうち、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像定着用円筒部材である。
【0013】
請求項7にかかる発明は、
前記画像定着寄与領域以外の領域における前記接着層が充填剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の画像定着用円筒部材である。
【0014】
請求項8にかかる発明は、
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の画像定着用円筒部材と、
該画像定着用円筒部材に対向して配置され、未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体を前記画像定着用円筒部材とで挟む対向部材と、
前記画像定着用円筒部材および前記対向部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、を有することを特徴とする画像定着装置である。
【0015】
請求項9にかかる発明は、
像保持体と、
該像保持体表面を帯電させる帯電手段と、
前記像保持体表面に潜像を形成させる潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像させトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写させる転写手段と、
前記トナー像を記録媒体に定着させる請求項8に記載の画像定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方における画像定着寄与領域およびそれ以外の領域の表面粗さRaを考慮しない場合に比べ、画質に優れた画像が形成され、且つ離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方における画像定着寄与領域およびそれ以外の領域の表面粗さRaの数値範囲を考慮しない場合に比べ、画質に優れた画像が形成され、且つ離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が確実に軽減される。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域およびそれ以外の領域における表面粗さRaを考慮しない場合に比べ、画質に優れた画像が形成され、且つ離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に前記凹凸を有しない場合に比べ、離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に前記軸方向に延びる溝を有しない場合に比べ、離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、接着層の外周面のうち画像定着寄与領域およびそれ以外の領域における表面粗さRaを考慮しない場合に比べ、画質に優れた画像が形成され、且つ離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0022】
請求項7に係る発明によれば、画像定着寄与領域以外の領域における接着層に充填剤を含有しない場合に比べ、離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画質に優れた画像が形成され、且つ長寿命化が図られる。
【0024】
請求項9に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画質に優れた画像が形成され、且つ長寿命化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
<第1実施形態:画像定着用円筒部材>
以下、好ましい実施形態に係る円筒部材について説明する。
第1実施形態に係る画像定着用円筒部材(以下、単に「円筒部材」と称すことがある)は、未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体と接触して前記トナー画像を前記記録媒体に定着する画像定着部材として用いられ、円筒状の基材の外周面側に、前記基材側から順に弾性層と離型層とを少なくとも有し、前記離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方において、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが、画像定着寄与領域における表面粗さRaよりも大きいことを特徴とする。尚、前記画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ前記画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることがより好ましい。
【0026】
ここで、「画像定着寄与領域」とは、画像定着用円筒部材において定着の際に記録媒体と接触する範囲を含む厚み方向(径方向)の全領域を表す。即ち、厚み方向(径方向)の外周側最表面が定着の際に記録媒体と接触する範囲である部分は画像定着寄与領域であり、一方厚み方向(径方向)の外周側最表面が定着の際に記録媒体と接触しない範囲である部分は画像定着寄与領域以外の領域である。
【0027】
また、第1実施形態に係る円筒部材の具体的態様としては、画像定着用ベルトおよび画像定着用ロールが挙げられる。
【0028】
ここで、従来の画像定着用ロールや画像定着用ベルトにおいては、離型層にシワやキズ等の欠陥が生じる欠点があった。具体的には、前記離型層においてシワやキズが発生する場所は記録媒体の端部(記録媒体搬送方向の端部)と接触する場所である。この欠陥発生のメカニズムは必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。まず、定着装置において記録媒体は離型層に押し付けられ、その際離型層および弾性層が撓んで応力集中を受けるため、離型層と弾性層のベルト軸方向のズレが発生する。このズレによって離型層の局部的な剥れや離型層の局部的な塑性変形が起きるために、結果として離型層にシワやキズが入るものと推察される。
【0029】
また、従来の画像定着用ベルトまたは画像定着用ロールとして、上記シワやキズを抑制する観点から、各層の接着力を高めることを目的として、接着力を高めたい層の内周面側に接する層の外周面全体に粗面化処理を施す方法が試されていた。しかし、外周面全体に粗面化処理を施した場合には、ベルトまたはロールの最表層に前記粗面化処理によって形成された凹凸によって、色ムラ等の画質劣化が生じるとの欠点を有していた。
【0030】
上記第1実施形態に係る円筒部材は、前述の通り、離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方において、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが、画像定着寄与領域における表面粗さRaよりも大きい。また前述の通り、前記画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることが好ましい。
即ち画像定着寄与領域以外の領域においては、離型層の内周面または該内周面と接する層(例えば弾性層や接着層等)の外周面が粗面化されて、離型層とその内周面に接する層との接着性が向上され、一方画像定着寄与領域においては、離型層の内周面または該内周面と接する層の外周面が粗面化されておらず、画質の劣化を生じさせる凹凸が形成されていない。その結果、画質に優れた画像が形成されると共に、離型層におけるシワやキズ等の欠陥の発生が軽減される。
【0031】
また、離型機能を有するチューブ(例えばフッ素樹脂製のチューブ)等を被覆することによって前記離型層を形成する態様にあっては、従来、チューブ被覆時に離型層とその内周面側に接する層とで挟まれる領域に空気が残存してしまい、円筒部材表面に膨れが発生するとの欠点があった。
上記第1実施形態に係る円筒部材は、前述の通り好ましい態様として、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下である態様が挙げられている。該態様によれば、粗面化処理によって離型層の内周面側に接する層の表面に形成された隙間から前記空気が効率的に除去され、前記膨れの発生が効果的に抑制される。
【0032】
[表面粗さRa]
離型層の内周面または該内周面と接する層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上であることにより、離型層とその内周面に接する層との高い接着性が得られ、離型層においてシワやキズ等の欠陥が抑制される。また、チューブを被覆することによって離型層を形成する場合には、チューブ被覆時に離型層とその内周面に接する層とで挟まれる領域における空気の残存が抑制され、円筒部材表面での膨れが抑制される。一方、表面粗さRaが5.0以下であることにより、表面を粗す為の処理(例えばサンドペーパーによる研磨等)にかかる時間が抑制され実用的である。
また、離型層の内周面または該内周面に接する層の外周面のうち画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることにより、色ムラ等の画質劣化が抑制される。
【0033】
尚、上記観点から、離型層の内周面または該内周面に接する層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaは、更に1.2μm以上3.0μm以下であることがより好ましく、1.5μm以上2.0μm以下であることが特に好ましい。また、離型層の内周面または該内周面に接する層の外周面のうち画像定着寄与領域における表面粗さRaは、更に、0.8μm以下であることがより好ましく、0.6μm以下であることが特に好ましい。
【0034】
尚、離型層の内周面または該内周面に接する層の外周面の表面粗さRaは以下の方法により測定され、本明細書に記載の数値は当該方法によって測定したものである。(尚、離型層の内周面における測定、該内周面に接する層(例えば弾性層や接着層または他の層)における測定は、いずれも下記の方法により測定される。)
表面粗さ測定機(東京精密製サーフコム1500DX)により、解析規格:JIS−2001/ISO−1997に準じて測定した。
【0035】
[表面粗さRaの制御方法]
離型層の内周面と接する層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaを1.0μm以上5.0μm以下に制御する方法としては、例えば、
(1)弾性層の画像定着寄与領域以外の領域における外周面に粗面化処理を施し、表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる凹凸を形成する方法
(2)弾性層の画像定着寄与領域以外の領域における外周面に、表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる軸方向に延びる溝を形成する方法
が挙げられる。
例えば、弾性層表面に直接離型層を形成する態様であれば、上記方法により、離型層の内周面と接する層(即ち弾性層)の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが上記範囲に制御される。また、弾性層と離型層とが接着層を介して形成される態様であっても、上記方法によって粗面化された弾性層の外周面に接着層を形成(例えば接着剤を塗布)することで、離型層の内周面と接する層(即ち接着層)の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが上記範囲に制御される。
【0036】
また、弾性層と離型層とが接着層を介して形成される態様にあっては、離型層の内周面と接する層である前記接着層の表面粗さRaを1.0μm以上5.0μm以下に制御する方法として、例えば、
(3)接着層を形成する接着剤中に充填剤を含有させて、表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる凹凸を形成する方法
が挙げられる。
上記方法により、離型層の内周面側に接する層(即ち接着層)の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが上記範囲に制御される。
【0037】
また、離型層の内周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaを1.0μm以上5.0μm以下に制御する方法としては、例えば、
(4)離型層の画像定着寄与領域以外の領域における内周面に粗面化処理を施し、表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる凹凸を形成する方法
(5)離型層の画像定着寄与領域以外の領域における内周面に、表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる軸方向に延びる溝を形成する方法
が挙げられる。
上記方法により、離型層の内周面のうち画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが上記範囲に制御される。
【0038】
尚、特に上記(2)および(5)の方法の場合、軸方向に延びる溝が形成されることによって、第1実施形態に係る円筒部材の周方向におけるグリップ力が増し、前述のシワやキズ等の欠陥の発生がより効率的に抑制される。また、チューブを被覆することによって離型層を形成する場合、軸方向に延びる溝から前記空気がより効率的に除去されるため、前述の膨れの発生がより効果的に抑制される。
【0039】
また、離型層の内周面と接する層の外周面のうち画像定着寄与領域における表面粗さRaを1.0μm未満に制御する方法としては、弾性層の外周面が粗面とならないように形成する方法が挙げられる。例えば、周方向に回転する円筒状の基材の表面に、弾性層用塗布液を塗布し乾燥して弾性層を形成する態様にあっては、前記塗付液にブレード等を押し当てることによってならしながら形成する方法が挙げられる。また、弾性層を形成した後に外周面を研磨してもよい。
更に、離型層と弾性層とが接着層を介して形成される場合においては、該接着層の外周面が粗面とならないように形成される。接着層の外周面が粗面とならないように制御する具体的な方法としては、接着剤塗布時にブレード等を押し当てることによってならしながら形成する方法等が挙げられる。
【0040】
次いで、第1実施形態に係る円筒部材を図を用いてより詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る画像定着用円筒部材(画像定着用ベルト)の一態様を示す模式斜視図である。図1に示すように、円筒状のベルト基材30の表面に、弾性層20と、接着層40と、フッ素樹脂製のチューブ(以下、単に「チューブ」と称す)からなる離型層10と、を有する。尚、図1においては、基材30がベルト形状である画像定着用ベルトの態様を示すが、該基材30をロール形状のものに変更することにより、前記第1実施形態に係る円筒部材を画像定着用ロールの態様として用いてもよい。
【0041】
(基材)
弾性層20が設けられるベルト基材30としては、SUS、ニッケル電鋳等の金属製円筒体、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール等の樹脂製円筒体等が用いられる。
また、基材30をロール形状のものとする場合には、例えば、SUS304等の金属コア等がロール基材として用いられる。
【0042】
(弾性層)
弾性層20は、特に制約されるものではないが、例えば、シリコーンゴムまたはフッ素ゴムから構成される耐熱性弾性層が好ましい。なお、弾性層とは100Paの外力印加により変形しても、もとの形状に復元する材料から構成される層をいう。
【0043】
シリコーンゴムとしては、ビニルメチルシリコーンゴム、メチルシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴム、フルオロシリコーンゴムや、それらの複合材料が挙げられる。またフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン/プロピレン系ゴム、四フッ化エチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、フォスファゼン系ゴム、フルオロポリエーテル等及びその他のフッ素ゴムが使用される。これらは、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上の組み合わせで使用してもよい。
【0044】
弾性層20の膜厚は、50μm以上500μm以下の範囲であることが望ましい。
【0045】
また、弾性層20の硬さは、JIS−K6253(1997)に規定されるデュロメータ硬さ試験で、タイプAデュロメータによる硬さがA5以上A40以下の範囲とすることが望ましい。弾性層20の硬さは、積層体から弾性層20を切り出して測定される。
【0046】
上記基材30表面に弾性層20を形成する方法としては、上記弾性層20の成分を分散した塗布液(弾性層用の塗布液)をブレードコート法や、塗布液を溶剤で希釈し浸漬塗布する方法等を用いてベルト基材30表面に塗布膜を形成した後、加熱硬化処理を施して形成する方法など、公知の方法が用いられる。
【0047】
尚、弾性層20の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に凹凸を形成する場合、粗面化処理を施すことによって行われる。具体的な粗面化処理法としては、弾性層を形成した後サンドペーパーで荒らす方法、サンドブラスト法、液体ホーニング法等が挙げられる。
また、弾性層20の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に基材30の軸方向に延びる溝を形成する場合、該溝の形成方法としては、マスキング処理をした上でのサンドブラスト法や液体ホーニング法等が挙げられる。
【0048】
図4に示すように、弾性層20が形成された基材30(図4においては弾性ベルト基材25と称す)は、該弾性ベルト基材25内に内型46を緊密に(即ち、径方向のがたつきが実質的に無い状態に)挿入し、内型46によって支持された状態とする。
【0049】
(接着層)
接着層40に用いられる接着剤としては、シリコーンシーラント接着剤等が挙げられ、具体例としては、信越シリコーン(株)製のシーラント40、シーラント45、積水化学(株)製のセキスイシリコーンシーラント等が挙げられる。また、信越化学(株)製のプライマー101や、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のNo.051等も好適に使用される。接着剤は、スプレー塗布、ハケによる塗布、浸漬塗布等により薄く塗布することが有効である。
【0050】
また、接着層40の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域を粗面化する方法として、画像定着寄与領域以外の領域に塗布する接着剤に充填剤を含有させる方法が挙げられる。
該充填剤としては、例えば、SiCフィラー(比重3.18)等が挙げられる。
【0051】
上記充填剤は、外周面の表面粗さRaを1.0μm以上5.0μm以下に制御する観点から、粒径が12μm以上36μm以下であることが好ましく、更には18μm以上26μm以下であることがより好ましい。
【0052】
また、接着剤に上記充填剤を含有する場合には、外周面の表面粗さRaを1.0μm以上5.0μm以下に制御する観点から、充填剤の含有率は20質量%以上40質量%以下とすることが好ましく、25質量%以上35質量%以下とすることがより好ましい。
【0053】
(離型層)
離型層10を形成するフッ素樹脂製のチューブとしては、いかなる方法により成形されたものも用いられるが、特に連続的に長尺なチューブを安定して得られるとの観点から、押出成形により得られたものを用いることが好ましい。
チューブの材質としては、耐熱性等の点よりテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が好ましい。またその他、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の種々のフッ素樹脂を1種あるいは複数種の組み合わせ等により用いられる。
【0054】
上記チューブの厚みは100μm以下であるのが好ましく、また15μm以上であるのが好ましい。尚、チューブとしては弾性層20を形成した基材30の外径よりも小さな内径を有するものが好ましく、具体的なチューブの内径としては、弾性層20を形成した基材30の95%以上99%以下が好ましい。
【0055】
また、離型層10の内周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に凹凸を形成する場合、粗面化処理を施すことによって行われる。具体的な粗面化処理法としては、チューブを形成した後サンドペーパーで荒らす方法、チューブを押出成形により成形する際、押出ダイのチューブ内周面に位置する口金部の粗さを変化させる方法、等が挙げられる。
【0056】
更に、第1実施形態に係る円筒部材が、前述の通り接着層40を有する場合には、チューブの内周面は、ナトリウム−ナフタレン処理、液体アンモニア処理等の化学的な処理、あるいはエキシマレーザー処理、低温プラズマ処理等による物理的な処理により表面改質されていることが好ましい。
【0057】
次いで、上記チューブを被覆して離型層10を形成する際の各工程について説明する。
(1)被覆工程
まず、図2に示すように、上下両面が全面的に開放され、真空引き装置44が備えられた外型パイプ42を用意する。この外型パイプ42の内径は、上記で準備した弾性べルト基材の外径よりも大きく設定されており、具体的には101%以上105%以下であることが好ましい。また、外型パイプ42の幅(軸方向長さ)は、弾性べルト基材の幅よりも長く設定されている。
【0058】
このように構成された外型パイプ42内に、フッ素樹脂製のチューブ11を、その下端が外型パイプ42から下方に突出するように挿入し、図2に示すように、外型パイプ42の下部開口から下方に突出した部分を、径方向外方に径を拡張させながら、外型パイプ42の外周面に折り返すようにする。また、図2に示すように、今度は、チューブ11の、外型パイプ42の上部開口から上方に突出した部分を、径方向外方に径を拡張させながら、外型パイプ42の外周面に折り返すようにする。
【0059】
チューブ11の皺・捩れ等を修正した後、図3に示すように、真空引き装置44を起動して、チューブ11の径を外型パイプ42の内径にまで拡張する。
【0060】
その後、図4に示すように、径を拡張したチューブ11を外型パイプ42と共に、位置合わせの為の凸部48を備えた下蓋50Bに装着する。
【0061】
このチューブの内側に、図4に示すように、弾性べルト基材25(弾性層20が形成された基材30(内型46によって支持されている))を、位置合わせの為の凸部48に沿うように上方から挿入する。
尚、弾性べルト基材25の外周面および/またはチューブの内周面に、接着剤が塗布されている場合であっても、チューブ11は、弾性べルト基材25の外径よりも大きく径が拡張されているので、弾性べルト基材25は、問題なくチューブ11の内側に挿入される。
【0062】
このようにして弾性べルト基材25がチューブ11内側に挿入された後、図5に示すように、真空引き装置44の動作を停止する。これにより、チューブ11は、自身の弾性に基づいて径方向に収縮することとなり、即ち、弾性べルト基材25の外周にチューブ11が密着し被覆した状態となる。そこで、外型パイプ42の外周に折り返されたチューブの折返し部分を元に戻す(図5では上部開口から突出した部分を戻す)。
【0063】
(2)反転工程
上記被覆工程の後、図6に示すように、外型パイプ42の上端に上蓋50Aを嵌め込み、次いで図7に示すように、全体を反転させた後に下蓋50Bを取り外し、外型パイプ42の外周に折り返されたチューブ11の折返し部分を元に戻す。更に外型パイプ42を図7の矢印に示す方向に取り外す。
【0064】
(3)加熱工程
ここで、接着剤の加熱硬化を行って接着層40を硬化させるため、加熱工程を設けることが好ましい。該加熱工程は、内型46を引抜く前に行うことが好ましく、その場合耐熱性を有する内型46を用いることが好ましい。
上記加熱工程における加熱温度は、用いる接着剤によっても異なるものであるが、前記に列挙した接着剤を用いる場合であれば、100℃以上200℃以下にて加熱することが好ましく、更には120℃以上180℃以下がより好ましい。また加熱時間としては、通常30分以上180分以下が好ましい。尚、加熱手段としては、加熱槽、熱風乾燥機等が挙げられる。
【0065】
(4)引抜きおよび仕上げ工程
その後、内型46を弾性べルト基材25の内側から引抜き、フッ素樹脂被覆ベルトを得る。尚、内型46は、図8に示すように、シリコーンゴムやフッ素樹脂等の材質からなる薄片状のブレード52にてしごきながら引抜いてもよい。
【0066】
また、仕上げ工程として、余分なチューブ11を切断する工程を、前記内型46を引き抜いた後に設けてもよい。該仕上げ工程は、上記加熱工程の後に行うことが好ましい。
【0067】
尚、離型層10の形成においては、上述した手順に限定されることなく、要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
例えば、弾性べルト基材25にチューブ11を被覆する方法として、チューブ11を拡張させた後、チューブ11を弾性べルト基材25に覆い被せていってもよいし、あるいは被覆前と被覆時とで段階的に拡張させて被覆させてもよい。
【0068】
更には、離型層10の形成は、必ずしもチューブを被覆する方法には限定されず、弾性層20の外周面にフッ素樹脂の粉体または液体の塗料を塗布し、この後に焼成してフッ素樹脂を含有する離型層10を形成する方法を適用してもよい。
また、弾性層20の外周面に接着剤を塗布して接着層40を形成し、この後にフッ素樹脂製の熱収縮性チューブを被せ、ドライヤー等でこの熱収縮性チューブを加熱溶着して弾性層20と接着させる方法を適用してもよい。
更には、中空の円筒状の金型内に、予めフッ素樹脂製のチューブと外周面に弾性層20を設けていない基材30とを同心的に取り付け、フッ素樹脂製のチューブと基材30とで挟まれる領域にゴム材料を注入して硬化させる方法を適用してもよい。
【0069】
<第2実施形態:画像形成装置>
次いで、前記第1実施形態に係る円筒部材を、画像定着装置における定着ベルトとして用いた第2実施形態に係る画像形成装置について詳細に説明する。
図9は第2実施形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図9に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト115に順次転写(一次転写)させる一次転写部110、中間転写ベルト115上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部120、二次転写された画像を用紙P上に定着させる画像定着装置160を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部140を有している。
【0070】
第2実施形態において、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム111の周囲に、これらの感光体ドラム111を帯電する帯電器112、感光体ドラム111上に静電潜像を書込むレーザ露光器113(図中露光ビームを符号Bmで示す)、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム111上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器114、感光体ドラム111上に形成された各色成分トナー像を一次転写部110にて中間転写ベルト115に転写する一次転写ロール116、感光体ドラム111上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ117、などの電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト115の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、直線状に配置されている。
【0071】
中間転写体である中間転写ベルト115は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は10Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは例えば0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト115は、各種ロールによって図9に示すB方向に定められた速度で循環駆動されている。この各種ロールとしては、定速性に優れたモータ(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト115を駆動させる駆動ロール131、各感光体ドラム111の配列方向に沿って直線状に延びる中間転写ベルト115を支持する支持ロール132、中間転写ベルト115に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト115の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール133、二次転写部120に設けられるバックアップロール125、中間転写ベルト115上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール134が配設されている。
【0072】
一次転写部110は、中間転写ベルト115を挟んで感光体ドラム111に対向して配置される一次転写ロール116で構成されている。一次転写ロール116は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10Ωcm以上10Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール116は中間転写ベルト115を挟んで感光体ドラム111に圧接配置され、さらに一次転写ロール116にはトナーの帯電極性(マイナス極性とし、以下同じである。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム111上のトナー像が中間転写ベルト115に順次、静電吸引され、中間転写ベルト115上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0073】
二次転写部120は、中間転写ベルト115のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール122と、バックアップロール125とによって構成される。バックアップロール125は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRとのブレンドゴムのチューブ、内部がEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が10Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は例えば70°(アスカーC)に設定される。このバックアップロール125は、中間転写ベルト115の裏面側に配置されて二次転写ロール122の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール126が接触配置されている。
【0074】
一方、二次転写ロール122は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10Ωcm以上10Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール122は中間転写ベルト115を挟んでバックアップロール125に圧接配置され、さらに二次転写ロール122は接地されてバックアップロール125に挟まれる領域に二次転写バイアスが形成され、二次転写部120に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
【0075】
また、中間転写ベルト115の二次転写部120の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト115上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト115の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ135が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)142が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ143が配設されている。この基準センサ142は、中間転写ベルト115の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部140からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0076】
さらに、第2実施形態の画像形成装置では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙供給部150、この用紙供給部150に集積された用紙Pを定められたタイミングで取り出して搬送するピックアップロール151、ピックアップロール151により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール152、搬送ロール152により搬送された用紙Pを二次転写部120へと送り込む搬送部材153、二次転写ロール122により二次転写された後に搬送される用紙Pを画像定着装置160へと搬送する搬送ベルト155、用紙Pを画像定着装置160に導く定着入口ガイド156を備えている。
【0077】
次に、第2実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。図9に示す画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器113に出力される。
【0078】
レーザ露光器113では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体ドラム111に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体ドラム111では、帯電器112によって表面が帯電された後、このレーザ露光器113によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの現像器114によって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0079】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体ドラム111上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム111と中間転写ベルト115とが接触する一次転写部110において、中間転写ベルト115上に転写される。より具体的には、一次転写部110において、一次転写ロール116により中間転写ベルト115の基材に対しトナーの帯電極性と逆極性(プラス極性)の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト115の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0080】
トナー像が中間転写ベルト115の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト115は移動してトナー像が二次転写部120に搬送される。トナー像が二次転写部120に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部120に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール151が回転し、用紙供給部150から用紙Pが供給される。ピックアップロール151により供給された用紙Pは、搬送ロール152により搬送され、搬送部材153を経て二次転写部120に到達する。この二次転写部120に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト115の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0081】
二次転写部120では、中間転写ベルト115を介して、二次転写ロール122がバックアップロール125に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト115と二次転写ロール122とに挟み込まれる。その際に、給電ロール126からトナーの帯電極性と同極性(マイナス極性)の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール122とバックアップロール125とで挟まれる領域に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト115上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール122とバックアップロール125とによって押圧される二次転写部120において、用紙P上に一括して静電転写される。
【0082】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール122によって中間転写ベルト115から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール122の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト155へと搬送される。搬送ベルト155では、画像定着装置160における搬送速度に合わせて、用紙Pを最適な搬送速度で画像定着装置160まで搬送する。画像定着装置160に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、画像定着装置160によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙部(不図示)に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト115上に残った残留トナーは、中間転写ベルト115の駆動に伴って搬送され、クリーニングバックアップロール134および中間転写ベルトクリーナ135によって中間転写ベルト115上から除去される。
【0083】
次に、第2実施形態の画像形成装置に用いられる画像定着装置160について説明する。
図10は第2実施形態における画像定着装置160の概略構成を示す側断面図である。この画像定着装置160は、加熱部材の一例としての定着ベルトモジュール161と、定着ベルトモジュール161に対して圧接して配置された加圧部材の一例としての加圧ロール162とで主要部が構成されている。
定着ベルトモジュール161は、ベルト部材の一例としての定着ベルト610、定着ベルト610を張架しながら回転駆動する定着ロール611、内側から定着ベルト610を張架する張架ロール612、外側から定着ベルト610を張架する張架ロール613、定着ロール611と張架ロール612とに挟まれる領域で定着ベルト610の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール614により主要部が構成されている。
【0084】
定着ベルト610は、周長314mm、幅340mmのフレキシブルなエンドレスベルトであって、厚さ80μmのポリイミド樹脂で形成された基材と、基材の表面側(外周面側)に積層された厚さ200μmのシリコーンゴムからなる弾性層と、さらに弾性層の上に、離型層として厚さ30μmのテトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)チューブで形成された離型層とからなる多層構造で構成された、前述の第1実施形態にかかる円筒部材が用いられている。
【0085】
定着ロール611は、外径65mm、長さ360mm、厚さ10mmのアルミニウムで形成された円筒状ロールである。そして定着ロール611は、図示しない駆動モータからの駆動力を受けて、300mm/sの表面速度で矢印C方向に回転する。
また、定着ロール611の内部には、加熱源として定格900Wのハロゲンヒータ616aが配設され、定着ロール611の表面に接触するように配置された温度センサ617aの計測値に基づき、画像形成装置の制御部140(図9参照)が定着ロール611の表面温度を150℃に制御している。
【0086】
張架ロール612は、外径30mm、肉厚2mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円筒状ロールである。そして、張架ロール612の内部には加熱源として定格1000Wのハロゲンヒータ616bが配設されており、温度センサ617bと制御部140(図9参照)とによって、張架ロール612の表面温度が190℃に制御されている。したがって、張架ロール612は、定着ベルト610を張架する機能とともに、定着ベルト610を加熱する機能をも併せ持っている。
また、張架ロール612の両端部には定着ベルト610を外側に押圧するバネ部材(不図示)が配設され、定着ベルト610全体の張力を15kgfに設定している。その際に、定着ベルト610の張力を幅方向に亘って均一にするとともに、定着ベルト610の軸方向の変位をできる限り小さく抑えるため、張架ロール612は、外径が端部よりも中央部のほうを100μmだけ大きくした所謂クラウン形状で形成されている。
【0087】
張架ロール613は、外径25mm、肉厚2mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円筒状ロールである。また、張架ロール613の表面には厚さ20μmのPFAが被覆されて離型層が形成されている。この離型層は、定着ベルト610の外周面からのオフセットトナーや紙粉が張架ロール613に堆積するのを防止するために形成されるものである。また、張架ロール613も張架ロール612のように、外径が端部よりも中央部の方を100μmだけ大きくしたクラウン形状で形成されている。なお、張架ロール612と張架ロール613の双方をクラウン形状で形成する場合のみならず、張架ロール612または張架ロール613のいずれか一方のみをクラウン形状で形成してもよい。
張架ロール613の内部には、加熱源としての定格1000Wのハロゲンヒータ616cが配設されており、温度センサ617cと制御部140(図9参照)とによって表面温度が190℃に制御されている。したがって、張架ロール613は、定着ベルト610を張架する機能とともに、定着ベルト610を外表面から加熱する機能をも併せ持っている。したがって、第2実施形態では、定着ロール611と張架ロール612および張架ロール613とによって定着ベルト610が加熱される構成を採用している。
【0088】
姿勢矯正ロール614は、外径15mm、長さ360mmのアルミニウムで形成された円柱状ロールである。姿勢矯正ロール614の周辺には、定着ベルト610のエッジ位置を検知するベルトエッジ位置検知機構(不図示)が配置されている。そして、姿勢矯正ロール614は、ベルトエッジ位置検知機構の検知結果に応じて定着ベルト610の軸方向における接触位置を変位させる軸変位機構が配設され、定着ベルト610の蛇行(ベルトウォーク)を制御するように構成されている。
【0089】
次に、加圧ロール162は、直径45mm、長さ360mmのアルミニウムからなる円柱状ロール621を基体として、基体側から順に、ゴム硬度30°(JIS−A)のシリコーンゴムからなる厚さ10mmの弾性層622と、膜厚100μmのPFAチューブからなる離型層623とが積層されて構成されている。そして、加圧ロール162は、定着ベルトモジュール161に押圧されるように設置され、定着ベルトモジュール161の定着ロール611が矢印C方向へ回転するのに伴い、定着ロール611に従動して矢印E方向に駆動する。その進行速度は、定着ロール611の表面速度と同じ300mm/sである。
【0090】
続いて、定着ベルトモジュール161と加圧ロール162とが圧接された押圧部Nについて説明する。
定着ベルトモジュール161と加圧ロール162とが圧接された押圧部Nには、定着ベルト610が定着ロール611に巻き付けられた(ラップされた)領域(ラップ領域)内において、加圧ロール162が定着ベルト610の外周面に圧接するように配置されることにより、ロール押圧部Nが形成されている。
【0091】
ここで、第2実施形態の画像定着装置160では、上述したように定着ロール611がアルミニウムで形成されたハードロールで構成され、加圧ロール162が弾性層622を被覆されたソフトロールで構成されている。
なお、第2実施形態の画像定着装置160では、ロール押圧部Nは定着ベルト610の進行方向に沿って15mmの幅に設定されている。
【0092】
次に、第2実施形態の画像定着装置160における定着動作について説明する。
画像形成装置の二次転写部120(図9参照)において未定着トナー像が静電転写された用紙Pは、搬送ベルト155および定着入口ガイド156により、画像定着装置160の押圧部Nに向けて(図10参照:矢印F方向)搬送されてくる。そして、押圧部Nを通過する用紙P表面の未定着トナー像は、ロール押圧部Nに作用する圧力と熱とにより用紙Pに定着される。
【0093】
このとき、第2実施形態の画像定着装置160では、押圧部Nに作用する熱は、主として定着ベルト610によって供給される。定着ベルト610は、定着ロール611の内部に配置されたハロゲンヒータ616aから定着ロール611を通じて供給される熱と、張架ロール612の内部に配置されたハロゲンヒータ616bから張架ロール612を通じて供給される熱と、張架ロール613の内部に配置されたハロゲンヒータ616cから張架ロール613を通じて供給される熱とによって加熱されるように構成されている。
【0094】
そして、定着ベルト610から分離された用紙Pは、排紙ガイド165および排紙ロール166によって機外に排出されて、定着処理が完了する。
【実施例】
【0095】
<実施例1>
・基材
基材として、ポリイミドワニス(ユニチカTX)を硬化させたポリイミド基材を準備した。
【0096】
・弾性層
次いで、上記基材上に、酢酸ブチルで希釈したシリコーンゴムX−1053−A/B(信越化学工業製、シリコン:酢酸ブチル=85:15)をブレードコート法により、乾燥膜厚が200μmの厚さとなるようコートし、加熱硬化を行って弾性層を形成した。
【0097】
形成された弾性層の画像定着寄与領域以外の領域(具体的には、軸方向の両端部から各々35mmまでの領域)に、#400のサンドペーパーにより研磨し粗面化処理を施した。
画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaは1.48μmであった。また、画像定着寄与領域における表面粗さRaは0.5μmであった。
【0098】
・接着層
次いで、前記弾性層上に、接着剤として、プライマーNo.101−A/B(信越化学工業製)を8μmフローコート法により塗布した。
【0099】
・離型層
次いで、厚さ30μm、内径29.6mmのPFAチューブを押出成形法により形成した。前述の図2〜図8に示す方法に基づき、弾性層を形成した基材に、PFAチューブを被覆して離型層を形成し、実施例1に係る円筒部材を得た。
【0100】
上記実施例1に係る円筒部材を定着用ベルトとして用いて画像形成装置に装着し、画像を形成した。その結果、画質に優れた画像が形成された。また、前記離型層におけるシワ・キズの発生は発見されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】第1実施形態に係る円筒部材の一例を示す模式斜視図である。
【図2】チューブを被覆して離型層を形成する際において、チューブを外型パイプに挿入した状態を示す模式断面図である。
【図3】チューブを被覆して離型層を形成する際において、チューブの径を拡張した状態を示す模式断面図である。
【図4】チューブを被覆して離型層を形成する際において、弾性べルト基材をチューブ内に挿入する状態を示す模式断面図である。
【図5】チューブを被覆して離型層を形成する際において、チューブの径の拡張を解き、弾性べルト基材に密着させる状態を示す模式断面図である。
【図6】チューブを被覆して離型層を形成する際において、上蓋を設置した状態を示す模式断面図である。
【図7】チューブを被覆して離型層を形成する際において、全体を反転させ、下蓋および外型パイプを取り外す状態を示す模式断面図である。
【図8】チューブを被覆して離型層を形成する際において、ブレードでしごきながら内型を引抜く状態を示す模式断面図である。
【図9】第2実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す模式断面図である。
【図10】図11に示す画像定着装置を拡大して示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1Y,1M,1C,1K 画像形成ユニット
10 離型層
11 フッ素樹脂チューブ
20 弾性層
25 弾性べルト基材
30 基材
40 接着層
42 外型パイプ
44 真空引き装置
46 内型
48 凸部
50A 上蓋
50B 下蓋
52 ブレード
115 中間転写ベルト
160 定着装置
161 定着ベルトモジュール
162 加圧ロール
610 定着ベルト
611 定着ロール
612,613 張架ロール
616a,616b,616c ハロゲンヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体と接触して前記トナー画像を前記記録媒体に定着する画像定着部材として用いられ、
円筒状の基材の外周面側に、前記基材側から順に弾性層と離型層とを少なくとも有し、
前記離型層の内周面および該内周面と接する層の外周面の少なくとも一方において、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが、画像定着寄与領域における表面粗さRaよりも大きいことを特徴とする画像定着用円筒部材。
【請求項2】
前記画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ前記画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする請求項1に記載の画像定着用円筒部材。
【請求項3】
前記弾性層の外周面のうち、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像定着用円筒部材。
【請求項4】
前記弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる凹凸を有することを特徴とする請求項3に記載の画像定着用円筒部材。
【請求項5】
前記弾性層の外周面のうち画像定着寄与領域以外の領域に表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下となる、前記基材の軸方向に延びる溝を有することを特徴とする請求項3に記載の画像定着用円筒部材。
【請求項6】
前記弾性層と前記離型層とが接着層を介して形成され、該接着層の外周面のうち、画像定着寄与領域以外の領域における表面粗さRaが1.0μm以上5.0μm以下であり、且つ画像定着寄与領域における表面粗さRaが1.0μm未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像定着用円筒部材。
【請求項7】
前記画像定着寄与領域以外の領域における前記接着層が充填剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の画像定着用円筒部材。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の画像定着用円筒部材と、
該画像定着用円筒部材に対向して配置され、未定着のトナー画像が表面に形成された記録媒体を前記画像定着用円筒部材とで挟む対向部材と、
前記画像定着用円筒部材および前記対向部材の少なくとも一方を加熱する加熱手段と、を有することを特徴とする画像定着装置。
【請求項9】
像保持体と、
該像保持体表面を帯電させる帯電手段と、
前記像保持体表面に潜像を形成させる潜像形成手段と、
前記潜像をトナーにより現像させトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写させる転写手段と、
前記トナー像を記録媒体に定着させる請求項8に記載の画像定着装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−152110(P2010−152110A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330526(P2008−330526)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】