説明

画像形成方法および画像形成装置

【課題】複数のハードディスクを設けて複数の処理を並行処理する場合に、それぞれの処理の内容に応じて、効率よく処理を行う。
【解決手段】3台以上の記憶部を備えて構成される記憶装置110と、前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて画像形成を行う画像形成部170と、各部を制御する制御部101と、を備え、前記制御部101は、異なる種類の複数のデータについて重複するタイミングで前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記データのそれぞれの処理内容に応じて割り当てる記憶部台数を定めるように制御する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に関するプリントデータや画像データなどを記憶装置に記憶する画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ,プリンタ,複写機,ファクシミリ装置などの機能を1台で備えた複合機(MFP:Multifunction Peripheral と呼ばれる画像形成装置)では、スキャンして得たスキャンデータ、外部機器から送られてきたプリントデータ(RIP前のページ記述言語で記述されたデータ)あるいはラスタライズされたビットマップデータとしての画像データ(RIP後のデータ)など各種のデータを、一時的あるいは一定期間記憶しておく必要がある。
【0003】
このため、画像形成装置において、大容量の画像データを記憶するための不揮発性の記憶装置としてハードディスク装置(HDD;Hard Disk Drive)が搭載されるようになってきている。
【0004】
なお、このような画像形成装置では複数の機能が存在しているため、同一の記憶装置に対して2以上のアクセスが競合する場合がある。このような競合時には、優先度の高いファイルアクセスを優先しつつ、優先度の低いファイルアクセスについても並行実行させる手法が、以下の特許文献に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−097364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
共通のハードディスクを使用しながら複数の処理を並行処理する場合、HDDを時分割でアクセスするのが一般的である。しかし、この手法では、個々のアクセス速度が低下し、速度が必要な処理が発生した場合に十分な速度が得られないという課題がある。
【0007】
その課題に対して、各処理に対するアクセスの時間配分を調整することにより、優先度の高い処理のアクセス速度を維持する手法が上述した特許文献で提案されている。しかしながら、この特許文献の手法では、低優先度の処理中に高優先度の処理を割り込ませるためには、低優先度の処理を必ず小分けにする必要があり、小分けにすることによるパフォーマンス低下が必ず発生してしまうという問題がある。
【0008】
また、並行アクセスが発生しないように各処理ごとに個別にHDDを設ければ、そもそも上記のような並行処理による速度低下の問題は発生しない。しかし、多数のHDDが必要となり、コストアップとなる。また、並行処理でない期間には、多数のHDDのうちで使用されないものが存在していることになり、無駄が多く効率的でないという問題が新たに発生する。
【0009】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、複数のハードディスクを設けて複数の処理を並行処理する場合に、それぞれの処理の内容に応じて、効率よく並行処理が行える画像形成方法および画像形成装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、前記した課題を解決する本発明は、以下の通りである。
【0011】
この発明は、3台以上の記憶部を備えて構成される記憶装置と、前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて画像形成を行う画像形成部と、各部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、異なる種類の複数のデータについて重複するタイミングで前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記データのそれぞれの処理内容に応じて割り当てる記憶部台数を定めるように制御する、ことを特徴とする。
【0012】
ここで、複数の前記データについての前記記憶装置のアクセスが処理時間に与える影響に応じて、前記データに対して割り当てる記憶部台数を定めるように制御する、ことを特徴とする。
【0013】
また、ここで、複数台の前記記憶部が割り当てられた前記データについては分割並行記憶により複数台の前記記憶部にアクセスするように制御する、ことを特徴とする。
【0014】
また、ここで、あるタイミングで1種類のデータのみ前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記記憶部の全台数を割り当てるように制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、以下のような効果が得られる。
【0016】
この発明では、3台以上の記憶部を備えて構成される記憶装置と、前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて画像形成を行う画像形成部と、各部を制御する制御部と、を備えている場合に、異なる種類の複数のデータについて重複するタイミングで前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には前記データのそれぞれの処理内容に応じて割り当てる記憶部台数を定めるように制御部が制御しており、複数のデータについての記憶を含めた処理を並行処理する場合にそれぞれの処理内容に応じて、処理時間に与える影響が大きい処理に多くの台数のハードディスクを割り当てて同時アクセスすることにより、効率よく並行処理が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】記憶装置の構成を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態の画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】記憶装置の動作例を示す説明図である。
【図5】記憶装置の動作例を示す説明図である。
【図6】記憶装置の動作例を示す説明図である。
【図7】画像形成装置の動作を示すタイムチャートである。
【図8】画像形成装置の動作を示すタイムチャートである。
【図9】画像形成装置の動作を示すタイムチャートである。
【図10】画像形成装置の動作を示すタイムチャートである。
【図11】画像形成装置の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)を詳細に説明する。ここでは、複写機、スキャナ、プリンタなどとして動作可能であってデータを記憶する機能を有する画像形成装置100を具体例にして説明する。
【0019】
〈画像形成装置の構成〉
ここで、図1に示される画像形成装置100は、CPU(Central Processing Unit)等により構成されて画像形成装置100内の各部を制御する制御部101と、各種ネットワークを介して他の装置と通信するための通信部102と、液晶表示部とタッチパネルとにより構成されて利用者による操作が入力される操作部103と、光源と読み取り素子とによって原稿を光学的に読み取るスキャナ部105と、不揮発性の記憶部であるハードディスク装置(HDD;Hard Disk Drive)に画像形成装置100で取り扱う各種データを記憶する記憶装置110と、外部機器から受信したRIP前プリントデータを記憶装置110に記憶する処理を行うデータ処理部120、ページ記述言語により記述されたRIP前プリントデータ(以下、単に「プリントデータ」)をRIP(Raster Image Processor)処理によりラスタライズすることでピットマップ形式のRIP後画像データ(以下、単に「画像データ」)を生成するRIP処理部130と、スキャナ部105の読み取り結果に各種処理を施してスキャンデータを生成するスキャナ処理部140と、記憶装置110に記憶する画像データやスキャンデータに圧縮処理を施すと共に記憶装置110に圧縮処理されて記憶されている画像データやスキャンデータを読み出して伸長処理を施す画像処理部150と、画像形成出力について画像データに各種処理を行う出力処理部160と、電子写真方式などにより画像形成出力を実行するプリントエンジンとしての画像形成部170と、を備えて構成されている。
【0020】
また、本実施形態における3台以上の記憶部(HDD)を備えて構成される記憶装置110の構成例を図2に示す。ここでは、記憶装置110は、HDD110A、HDD110B、HDD110C、の3台のHDDにより構成されている具体例を示す。なお、請求項における「3台以上の記憶部を備えて構成」とは、3台以上のHDDを備えて構成されていれば、何台備えていてもよい。なお、この実施形態では、複数のデータについての記憶を含めた処理を並行処理する場合にそれぞれの処理内容に応じて、処理時間に与える影響が大きい処理に多くの台数のハードディスクを割り当てて同時アクセスするため、3台以上のHDDを備えるようにしている。
【0021】
また、各HDDは以下に説明するように複数のパーティション(Partition)と呼ばれる領域毎に記憶領域が論理的に分割されている。
【0022】
ここで、HDD110Aは、記憶領域110A_1,記憶領域110A_2,記憶領域110A_3,記憶領域110A_4,を備えて構成されている。また、HDD110Bは、記憶領域110B_1,記憶領域110B_2,記憶領域110B_3,記憶領域110B_4,を備えて構成されている。また、HDD110Cは、記憶領域110C_1,記憶領域110C_2,記憶領域110C_3,記憶領域110C_4,を備えて構成されている。
【0023】
ここで、記憶領域110A_1,記憶領域110B_1,記憶領域110C_1,は第1FS領域として割り当てられている。また、記憶領域110A_3,記憶領域110B_3,記憶領域110C_3,は第2FS領域として割り当てられている。
【0024】
このFS領域とは、オペレーティングシステムにおけるファイルシステムによって管理された領域であり、利用者により操作部103を介して記憶を指示されたプリントデータを後から検索して再利用可能に記憶するための領域であり、データの書き込み及び読み出しのスピードはそれほど重視されないが、ファイルシステムによる各種の管理や利用が可能である。
【0025】
また、記憶領域110A_2,記憶領域110B_2,記憶領域110C_2,は第1RAW領域として割り当てられている。また、記憶領域110A_4,記憶領域110B_4,記憶領域110C_4,は第2RAW領域として割り当てられている。
【0026】
このRAW領域とは、制御部101によりRAWデバイスとして管理される領域であって、揮発性メモリの容量不足を補う仮想メモリとして画像データを画像形成部170に所定のタイミングで出力するために一時的に記憶する領域であり、データの書き込み及び読み出しにスピードが要求されるため、制御部101により直接データ管理が行われており、開始クラスタ番号とデータサイズもしくは終了クラスタ番号の管理によって1ページ分の画像データが連続するクラスタに書き込まれる。
【0027】
なお、記憶装置110では、RAID0のストライピングにより複数のHDD(HDD110A〜HDD110Cのうちのいずれか複数のHDD)に対して、データを所定のサイズ毎に区切って分割並行記憶することで、高速な記憶と読み出しとが実現可能に構成されている。
【0028】
また、この図2に示す記憶部110のHDD台数と各記憶領域とは一例であり、各種の変形が可能である。
【0029】
そして、この記憶装置110では、制御部101の制御により、プリントデータや画像データのような異なる種類の複数のデータについて、記憶装置110に重複するタイミングでアクセス要求が発生する場合には、データのそれぞれの処理内容に応じて割り当てるHDD台数を定められ、複数のデータについての記憶を含めた処理を並行処理する場合にそれぞれの処理内容に応じて、処理時間に与える影響が大きい処理に多くの台数のハードディスクを割り当てて同時アクセスし、効率よく並行処理が行えるように制御される。
【0030】
〈画像形成装置の動作(実施形態)〉
ここで、本実施形態の画像形成の動作について説明する。ここでは、図2に構成例を示した記憶装置110を用いた場合について、図3のフローチャート、図4−6の説明図、図7−11のタイムチャートを用いて説明する。
【0031】
制御部101は通信部102を介した外部機器との通信や操作部103からの利用者の操作を監視しており、記憶装置110へのアクセスが発生するか否かを確認する(図3中のステップS101)。なお、この記憶装置110へのアクセス発生確認は、ジョブの実行開始時などにおいて、実行するジョブの一連の動作において記憶装置110へのアクセスがどのように発生するかについての確認である。また、実行中のジョブが存在する状態で他のジョブの追加があった場合にも、同様にして、制御部101は記憶装置110へのアクセスが発生するか否かを確認する(図3中のステップS101)。
【0032】
なお、ここでジョブとは、プリント出力、スキャン、コピー等の画像形成装置100に関する1つのまとまった動作を指し、例えば、プリント出力としてプリントデータに基づいて画像形成出力する場合には、プリントデータのRIP処理とRIP処理された画像データの出力処理との一連の動作が1ジョブに相当する。
【0033】
ここで、制御部101は、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じるか否かを判断する(図3中のステップS102)。
【0034】
なお、この実施形態において、「複数の同時アクセス」とは、異なる種類の複数のデータについて記憶装置110に重複するタイミングでアクセス要求が発生することを意味する。また、重複するタイミングとは、複数のアクセス要求が開始から終了まで完全に一致したタイミングを言うのではなく、一部での重なるタイミングがあれば重複するタイミングに該当する。
【0035】
そして、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じる場合(図3中のステップS102でYES)、制御部101は、記憶装置110へのアクセスを行う処理内容を詳細に調査する(図3中のステップS103)。
【0036】
ここで、処理内容の調査としては、記憶装置110へのアクセスが、記憶なのか読み出しなのか、データの記憶または読み出しを続行する時間(データ全体の連続アクセスか、データ細分時分割アクセスか)、データのアクセスが連動する他処理と並行して行えるか否か、該当する複数のアクセスにより記憶部アクセス時間増大が発生した場合に連動する他の処理の処理時間がどれだけ増大するか、記憶部アクセス時間と連動する処理時間の合計時間の変化、などを調べることを意味する。なお、連動する他の処理とは、たとえば、記憶装置110に対して記憶させるデータを生成する処理や、記憶装置110から読み出したデータを用いる処理などである。
【0037】
また、制御部101は、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じる際に記憶装置110へのアクセス時間が増大する場合(図3中のステップS104でYES)に、該複数同時アクセスに連動するプリントデータの処理と画像データの処理で、どちらに対して影響が大きいか、すなわち、プリントデータ処理時間と画像データ処理時間の変化はどちらが大きいか、を判断する(図3中のステップS105)。
【0038】
また、制御部101は、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じない場合(図3中のステップS102でNO)、あるいは、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じるものの(図3中のステップS102でYES)複数の同時アクセスが生じる際に記憶装置110へのアクセス時間が増大しない場合(図3中のステップS104でNO)、図4に示すように単独処理用の割り当てとして、複数のアクセスそれぞれに対して全てのHDD110A〜110Cを割り当てる(図3中のステップS106)。この場合、図4に示すように、RIP処理前のプリントデータに対して、第1FS領域としての記憶領域110A_1,記憶領域110B_1,記憶領域110C_1を割り当てる。また、画像形成部170で画像形成に使用する画像データに対しては、第1RAW領域としての記憶領域110A_2,記憶領域110B_2,記憶領域110C_2,を割り当てる。すなわち、あるタイミングにおいて1種類のデータのみ記憶装置110にアクセス要求が発生する場合や、複数同時アクセスを交互に割り当ててもアクセス時間が増大しない場合には、制御部101は記憶装置110中のHDDの全台数を割り当てるように制御する。これにより、各アクセスでは、HDD110A〜HDD110Cに対して、ストライピングによりデータを所定のサイズ毎に区切って分割並行記憶することで、高速な記憶と読み出しとが実現可能になる。
【0039】
また、制御部101は、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じる際に(図3中のステップS102でYES)、プリントデータよりも、画像データについての記憶装置110へのアクセス時間が増大する場合の影響を大きく受けて全体の処理時間が増大する場合(図3中のステップS104でYES、S105でYES)、図5に示すように、画像データ優先の割り当てとして、画像データのアクセスに対して多くのHDDを割り当てる(図3中のステップS107)。図5の場合に示す例では、プリントデータに対して1台のHDD、第2FS領域としての記憶領域110A_3を割り当てる。また、画像データに対しては2台のHDD、第2RAW領域としての記憶領域110B_4,記憶領域110C_4,を割り当てる。ここで、画像データのアクセスでは、記憶領域110B_4〜記憶領域110C_4に対して、ストライピングによりデータを所定のサイズ毎に区切って分割並行記憶することで、高速な記憶と読み出しとが実現可能になる。これにより、記憶装置110への画像データのアクセス時間増大の影響を大きく受けて全体の処理時間が増大するといった事態を回避でき、全体として高速な記憶と読み出しとが実現可能になる。なお、この具体例では、画像データに2台のHDDを割り当て、プリントデータに1台のHDDを割り当てるようにしているが、これに限定されるものではない。たとえば、記憶装置110として5台のHDDを有する場合は、画像データとプリントデータとのHDD割り当て台数を4:1あるいは3:2などとすることができる。
【0040】
また、制御部101は、実行しようとするジョブにおいて記憶装置110に対して複数の同時アクセスが生じる際に(図3中のステップS102でYES)、画像データよりも、プリントデータについての記憶装置110へのアクセス時間が増大する場合の影響を大きく受けて全体の処理時間が増大する場合(図3中のステップS104でYES、S105でYES)、図5に示すように、プリントデータ優先の割り当てとして、プリントデータのアクセスに対して多くのHDDを割り当てる(図3中のステップS108)。図6の場合に示す例では、プリントデータに対して2台のHDD、第2FS領域としての記憶領域110B_3と記憶領域110C_3を割り当てる。また、画像データに対しては1台のHDD、第2RAW領域としての記憶領域110A_4を割り当てる。ここで、プリントデータのアクセスでは、記憶領域110B_3〜記憶領域110C_3に対して、ストライピングによりデータを所定のサイズ毎に区切って分割並行記憶することで、高速な記憶と読み出しとが実現可能になる。これにより、記憶装置110へのプリントデータのアクセス時間増大の影響を大きく受けて全体の処理時間が増大するといった事態を回避でき、全体として高速な記憶と読み出しとが実現可能になる。なお、この具体例では、プリントデータに2台のHDDを割り当て、画像データに1台のHDDを割り当てるようにしているが、これに限定されるものではない。たとえば、全体に5台のHDDを有する場合はプリントデータと画像データとのHDD割り当て台数を4:1あるいは3:2などとすることができる。
【0041】
そして、制御部101は、以上のようにして、記憶装置110のHDDへアクセスが処理時間に与える影響に応じて、各データに対して割り当てるHDD台数を定めるように制御したうえで(図3中のステップS106、S107、S108)、プリントデータや画像データについての画像形成に関する各種処理を実行する。
【0042】
ここで、RIP前のプリントデータとRIP後の画像データとを並行して処理しつつ画像形成についての処理を実行する具体例を図7に示す。ここでは、外部から受信したプリントデータをRIP処理部130でRIP処理して画像データに変換し、画像形成部170で出力処理する場合について説明する。なお、各部での処理について、縦軸方向が処理時間(経過時間)を示している。
【0043】
この場合、1頁目については記憶装置110に記憶してRIP処理部130に送るために、図7一点鎖線領域Aのように記憶装置110はプリントデータのみの単独処理である。しかし、これ以降は、図7一点鎖線領域Bに示すように、RIP処理されたn頁目の画像データの記憶装置110での記憶・読み出しと、n+1頁目のプリントデータの記憶装置110での記憶・読み出しと、複数同時アクセスとなって重なるタイミングとなる。
【0044】
よって、制御部101は、記憶装置110を使用する図7Bの処理において、図3ステップS105〜S108で説明したように、プリントデータ処理と画像データ処理のいずれを優先するかを判断する。
【0045】
ここで、図7一点鎖線領域Bにおける画像データの記憶装置110での記憶、読み出し、画像形成部170での出力処理の様子を図8に示す。ここでは記憶装置110からの画像データの読み出しに要する時間と画像形成部170での出力処理時間とを縦軸方向に示す。
【0046】
RIP処理後のビットマップ形式の画像データを記憶装置110から読み出して画像形成部170で出力処理する場合には、1頁分単位で画像データを記憶装置110のHDDから読み出して画像形成部170に供給する必要がある(図8(a)参照)。ここで、記憶装置110のHDDのアクセスに通常(図8(a))より時間がかかる場合(図8(b))、記憶装置110のHDDのアクセスが遅くて時間がかかる遅延時間が、そのまま処理全体遅延となる。
【0047】
つぎに、図7一点鎖線領域Bにおけるプリントデータの記憶装置110での記憶、読み出し、RIP処理部130でのRIP処理の様子を図9に示す。ここでは記憶装置110からのプリントデータの読み出しに要する時間とRIP処理部130でのRIP処理時間とを縦軸方向に示す。
【0048】
RIP処理前のページ記述言語で記述されたプリントデータを記憶装置110から読み出してRIP処理部130でRIP処理する場合には、1頁分を細分化した部分単位でRIP処理部130でのRIP処理が可能であるため、この細分化した部分単位で画像データを記憶装置110のHDDから読み出してRIP処理部130に供給することができる(図9(a)参照)。ここで、記憶装置110のHDDのアクセスに通常(図9(a))より時間がかかる場合(図9(b))、記憶装置110のHDDのアクセスが遅くて時間がかかる遅延時間は、RIP処理部130でのRIP処理と重なる部分が存在するため、読出遅延の大部分はRIP処理時間に吸収されることになり、処理全体遅延は読出遅延よりも小さくなる。
【0049】
よって、この場合には、図8(b)の処理全体遅延と図9(b)の処理全体遅延を比較すると、図8(b)の画像データの読出遅延の影響が処理全体遅延に大きく影響することがわかる。したがって、制御部101は、この影響を考慮し、記憶装置110に対する画像データのアクセスを優先させるように決定する。すなわち、処理全体遅延に対して影響の大きい画像データについて、記憶装置110へのアクセスを優先させて、HDDの台数を多く割り当てるように制御部101が決定する。なお、ここで図8と図9に示した具体例に限られず、処理全体遅延に対して影響の大きいデータについて記憶装置110へのアクセスを優先させて、HDDの台数を多く割り当てるようにすればよい。これにより、記憶部110に複数のHDDを設けて複数の処理を並行処理する場合に、それぞれの処理の内容に応じて、効率よく並行処理が行えるようになる。
【0050】
ここで、画像形成装置100においてボックスプリントを実行する場合について、図10を参照して説明する。ここで、ボックスプリントとは、プリントデータをRIP処理部130でRIP処理して生成した画像データをボックスと呼ばれる記憶装置110の記憶領域に保存しておき、後に記憶装置110から画像データを読み出して画像形成部170で出力処理する機能である。この場合、画像データを箱(ボックス)に保存しておいて、必要なときに取り出すようにして使用することができる。
【0051】
このボックスプリントの入力時において、プリントデータのRIP処理と画像データの記憶とは、図7のフローチャートと同様にして処理することができる。従って、画像データは記憶装置110の2台のHDDに記憶された状態となる。
【0052】
そして、このボックスプリントの出力時においては、既に画像データとして記憶されているためRIP処理は不要であり、記憶装置110からの画像データの読み出しと画像形成部170での出力処理を行う。このため、ボックスプリントの出力時には、記憶装置110に対するアクセスは画像データの読み出しだけであり、記憶装置110中のHDDの全台数を割り当て(図4)が可能である。
【0053】
よって、ボックスプリントの入力時と出力時との間のタイミングにおいて、図10に示すように、制御部101の画像データ移動指示により、2台のHDDに記憶された画像データを読み出し、3台のHDDに振り分けて記憶させる。なお、このデータの移動については、他の処理による記憶装置110へのアクセスが無いタイミングで行うことが望ましい。
【0054】
そして、このようにデータの移動を実行することで、ボックスプリントの出力時に記憶装置110中のHDDの全台数を割り当て(図4)によって、高速な読み出しによる出力処理が実現可能になる。
【0055】
ここで、画像形成装置100においてバリアブルプリントを実行する場合について、図11を参照して説明する。ここで、バリアブルプリントとは、本文などのプリントデータ固定部と、宛先などのプリントデータ可変部とを組み合わせて画像形成する手法である。この場合、プリントデータ可変部としては、郵便番号、住所、属性、氏名、などデータが種別毎に別領域にデータが保存されている。
【0056】
図11において、一点鎖線領域A、一点鎖線領域Bについては、図7と同じである。これに加え、一点鎖線領域Cがプリントデータ可変部を記憶装置110から繰り返し読み出す様子を示している。この場合、郵便番号、住所、属性、氏名、など種別毎のデータを読み出すたびに、HDDのシークが発生し、処理時間がかかるようになる。さらに、プリントデータ可変部として、郵便番号、住所、属性、氏名、など種別毎に別領域のデータを読み出してデータが揃ってから、可変部のRIP処理を実行するようにする場合には、更に処理時間がかかるようになる。
【0057】
よって、この場合には、一点鎖線領域Bによって発生する遅延よりも、バリアブルプリントの可変部のRIP処理のための一点鎖線領域Cの影響による遅延が大きいと制御部101が判断し、記憶装置110に対するプリントデータのアクセスを優先させるように決定する。すなわち、処理全体遅延に対して影響の大きいプリントデータについて、記憶装置110へのアクセスを優先させて、HDDの台数を多く割り当てるように制御部101が決定する。
【0058】
なお、ここで図11に示した具体例に限られず、処理全体遅延に対して影響の大きいデータについて記憶装置110へのアクセスを優先させて、HDDの台数を多く割り当てるようにすればよい。これにより、記憶部110に複数のHDDを設けて複数の処理を並行処理する場合に、それぞれの処理の内容に応じて、効率よく並行処理が行えるようになる。
【0059】
〈その他の実施形態〉
なお、図7のタイムチャートにおいて、一点鎖線領域Aの部分では複数同時アクセスが発生していないためHDD全台数割り当て(図3中のステップS106)として、一点鎖線領域B以降で複数同時アクセスに応じたHDD割り当て(図3中のステップS106またはS107)としてもよい。但し、処理中に記憶されたデータが残っている状態では、単独処理のHDD全台数割り当て(図3中のステップS106)から並行処理へのHDD割り当て(図3中のステップS107)に瞬時に切り替えることはできないため、図7の場合には複数同時アクセスに対応したHDD割り当てを最初から実行することが望ましい。
【0060】
また、本実施形態の記憶装置110において、プリントデータと画像データとを具体例にして説明したが、スキャンデータやファクシミリ受信データなどのデータが存在する場合にも、処理全体遅延に対して影響の大きいデータについて記憶装置110へのアクセスを優先させて、HDDの台数を多く割り当てるようにすればよい。これにより、記憶部110に複数のHDDを設けて複数の処理を並行処理する場合に、それぞれの処理の内容に応じて、効率よく並行処理が行えるようになる。
【0061】
また、以上の実施形態では、記憶装置110内の複数の記憶部としてHDDを具体例にしているが、フラッシュメモリなどを用いたSSDと呼ばれるソリッドステートドライブを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
100 画像形成装置
101 制御部
102 通信部
103 操作部
105 スキャナ部
110 記憶装置
120 データ処理部
130 RIP処理部
140 スキャナ処理部
150 画像処理部
160 出力処理部
170 画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3台以上の記憶部を備えて構成される記憶装置と、
前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて画像形成を行う画像形成部と、を備え、
複数のデータについて重複するタイミングで前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記データのそれぞれの処理内容に応じて割り当てる記憶部台数を定めるように制御する、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
複数の前記データについての前記記憶装置のアクセスが処理時間に与える影響に応じて、前記データに対して割り当てる記憶部台数を定めるように制御する、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成方法。
【請求項3】
複数台の前記記憶部が割り当てられた前記データについては分割並行記憶により複数台の前記記憶部にアクセスするように制御する、
ことを特徴とする請求項1−2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
あるタイミングで1種類のデータのみ前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記記憶部の全台数を割り当てるように制御する、
ことを特徴とする請求項1−3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
3台以上の記憶部を備えて構成される記憶装置と、
前記記憶装置に記憶されたデータに基づいて画像形成を行う画像形成部と、
複数のデータについて重複するタイミングで前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記データのそれぞれの処理内容に応じて割り当てる記憶部台数を定めるように制御する制御部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、複数の前記データについての前記記憶装置のアクセスが処理時間に与える影響に応じて、前記データに対して割り当てる記憶部台数を定めるように制御する、
ことを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、複数台の前記記憶部が割り当てられた前記データについては分割並行記憶により複数台の前記記憶部にアクセスするように制御する、
ことを特徴とする請求項5−6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、あるタイミングで1種類のデータのみ前記記憶装置にアクセス要求が発生する場合には、前記記憶部の全台数を割り当てるように制御する、
ことを特徴とする請求項5−7のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−216909(P2012−216909A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79071(P2011−79071)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】