説明

画像形成方法と画像形成装置および画像形成システム

【課題】 低コストで高速の画像形成が可能な画像形成方法と画像形成装置、および画像形成システムを提供する。
【解決手段】 n個(nは2以上の整数)の画像の色分解データを3原色の各色毎に集約し、集約した色分解データに基づいて、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有する熱転写シートを用いて熱転写記録方式によって各色毎にまとめて受像シートに印画することにより、n個の画像が連続した印画物を形成し、その後、印画物を各画像に切り分けてフルカラー画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写記録方式を用いた画像形成に係り、特にフルカラー画像を形成するための画像形成方法と画像形成装置と画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から感熱昇華転写方式あるいは感熱溶融転写方式を用いてフルカラー画像を形成することが行われている。このうち、感熱昇華転写方式は、色材として用いる昇華性染料をバインダ樹脂に溶解あるいは分散させた染料層を基材シ−トに担持させた熱転写シートを受像シートに重ね、熱転写シート上の染料層中に含まれる昇華性染料を受像シートに移行させて画像を形成する方法である。また、感熱溶融転写方式は、基材シート上に顔料等の着色剤およびワックス等のビヒクルを含有する熱溶融性インキ層を設けた熱転写シートを受像シートに重ね、軟化した熱溶融性インキ層成分を受像シートに転写させて画像を形成する方法である。
【0003】
従来のフルカラー画像の形成方法では、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3原色が面順次に形成された熱転写シートを受像シートに重ね、サーマルヘッド等の加熱デバイスに画像の色分解データに応じたエネルギーを印加することにより、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色毎に印画して1画像毎に形成していた(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開平7−304272号公報
【特許文献2】特開平8−300778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフルカラー画像の形成では、使用する熱転写シートのイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色毎の領域間に、検知マークが設けられたり、各色の染料層や熱溶融性インキ層の重なりを防止するための空白領域が設けられ、このため画像形成に使用できない無駄な領域が発生し、フルカラー画像形成のコストダウンに限界があった。また、1枚ずつフルカラー画像を形成していた従来の画像形成方法、画像形成装置では、形成速度が遅く、処理能力的に問題があった。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、低コストで高速の画像形成が可能な画像形成方法と画像形成装置、および、画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的を達成するために、本発明の画像形成方法は、熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成する画像形成方法において、n個(nは2以上の整数)の画像の色分解データを3原色の各色毎に集約し、集約した前記色分解データに基づき熱転写シートを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画することによりn個の画像が連続した印画物を形成し、その後、前記印画物を各画像に切り分ける工程を有し、前記熱転写シートは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであるような構成とした。
【0006】
本発明の好ましい態様として、前記熱転写シートは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、前記着色層は、少なくとも染料とバインダ樹脂を含有するような構成とした。
【0007】
本発明の画像形成装置は、熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成する画像形成装置において、n個(nは2以上の整数)の画像を色分解し該色分解のデータを3原色の各色毎に集約する画像処理部と、該画像処理部から受けた各色毎の色分解データに基づき熱転写シートを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画してn個の画像が連続した印画物を形成する印画部と、前記印画物を各画像に切り分ける切断部と、を少なくとも備え、前記熱転写シートは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、前記熱転写シートは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであるような構成とした。
本発明の好ましい態様として、前記着色層は、少なくとも染料とバインダ樹脂を含有するような構成とした。
【0008】
本発明の画像形成システムは、熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成するための画像形成システムにおいて、熱転写シートAを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものとし、熱転写シートBを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は1個の画像を形成することができる面積を有するものとし、n個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートAを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画してn個の画像が連続した印画物を形成する印画装置Aと、1個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートBを使用して各色毎に受像シートに印画して1画像の印画物を形成する印画装置Bと、を組み合わせ、形成する全画像のうち前記nの倍数分に相当する画像を前記印画装置Aで形成し、端数分の画像を前記印画装置Bで形成するような構成とした。
本発明の好ましい態様として、前記熱転写シートAは前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであり、前記熱転写シートBは前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備えるような構成とした。
【0009】
また、本発明の画像形成システムは、熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成するための画像形成システムにおいて、熱転写シートAを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は2個の画像を形成することができる面積を有するものとし、熱転写シートBを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は3個の画像を形成することができる面積を有するものとし、2個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートAを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画して2個の画像が連続した印画物を形成する印画装置Aと、3個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートBを使用して各色毎に受像シートに印画して3画像の印画物を形成する印画装置Bとを、組み合わせ、形成する全画像に端数が生じないように印画装置Aと印画装置Bの印画枚数を振り分けて形成するような構成とした。
【0010】
本発明の好ましい態様として、前記熱転写シートAは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層は2個の画像を形成することができる面積を有するものであり、前記熱転写シートBは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層は3個の画像を形成することができる面積を有するような構成とした。
本発明の好ましい態様として、前記着色層は、少なくとも染料とバインダ樹脂を含有するような構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成方法、画像形成装置によれば、1枚ずつフルカラー画像を形成する場合に比べて、複数枚をまとめて形成するので、印画に必要な動作の単純化、機構の簡略化、位置合わせ制御の容易化が可能であり、画像形成に要する時間を短縮することができ、また、熱転写シートの画像形成に使用できない無駄な領域を削減しているので、1画像あたりの熱転写シートの使用量が低減されコストダウンが可能となる。さらに、本発明の画像形成システムによれば、熱転写シートAを使用する印画装置Aと、熱転写シートBを使用する印画装置Bとを組み合わせて使用するので、上述の効果に加えて、形成する画像数に影響されることなく、熱転写シートの無駄を防止(未使用領域の発生を防止)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
先ず、本発明で使用する熱転写シートについて説明する。
図1は、本発明で使用する熱転写シートの一例を示す平面図であり、図2は図1に示される熱転写シートのA−A矢視断面図である。図1および図2において、熱転写シート11は、基材シート12の一方の面にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3原色の着色層13(13Y,13M,13C)と転写性保護層14を面順次に備え、基材シート12の他の面に背面層17を備えている。また、各色の着色層13Y,13M,13Cと転写性保護層14毎に、位置決め用の検知マーク15(図1では鎖線を付して示している)が配設されている。
【0013】
本発明で使用する熱転写シートは、各色の着色層がn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有している。図1および図2に示される熱転写シート11では、各色の着色層13Y,13M,13Cが、それぞれ2個の画像、すなわち、着色層13YではY1とY2の2個の画像、着色層13MではM1とM2の2個の画像、着色層13CではC1とC2の2個の画像を形成することができる面積を有している。また、転写性保護層14は、2個の画像を被覆する領域(OP1とOP2)を有するものである。
【0014】
図3は、本発明で使用する熱転写シートの他の例を示す平面図であり、図4は図3に示される熱転写シートのB−B矢視断面図である。図3および図4において、熱転写シート21は、基材シート22の一方の面にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3原色の着色層23(23Y,23M,23C)と転写性保護層24を面順次に備え、基材シート22の他の面に背面層27を備えている。また、各色の着色層23Y,23M,23Cと転写性保護層24毎に、位置決め用の検知マーク25(図3では鎖線を付して示している)が配設されている。
【0015】
図3および図4に示される熱転写シート21では、各色の着色層23Y,23M,23Cが、それぞれ3個の画像、すなわち、着色層23YではY1、Y2、Y3の3個の画像、着色層23MではM1、M2、M3の3個の画像、着色層23CではC1、C2、C3の3個の画像を形成することができる面積を有している。また、転写性保護層24は、3個の画像を被覆する領域(OP1、OP2、OP3)を有するものである。
このような熱転写シート11、21は、熱転写シートの画像形成に使用できない無駄な領域が削減されており、1画像あたりの熱転写シートの使用量が低減される。
尚、上述の例では、各色の着色層13Y,13M,13Cが2個、各色の着色層23Y,23M,23Cが3個の画像を形成することができる面積を有しているが、本発明で使用する熱転写シートは、各色の着色層が4個以上の画像を形成することができる面積を有しているものであってもよい。
【0016】
次に、上述の熱転写シート11、21の構成部材について説明する。
(基材シート)
熱転写シート11,21を構成する基材シート12,22としては、従来の熱転写シートに使用される基材シートを用いることができる。好ましい基材シ−トの具体例は、グラシン紙、コンデンサー紙、パラフィン紙などの薄紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレンの誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテン、アイオノマー等のプラスチックの延伸あるいは未延伸フィルムや、これらの材料を積層したものが挙げられる。この基材シ−ト12,22の厚さは、強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は2〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0017】
(着色層)
熱転写シート11,21を構成する着色層13(13Y,13M,13C)、着色層23(23Y,23M,23C)は、バインダ樹脂に染料を担持させた熱昇華性色材層であってよく、また、熱溶融性インキ層であってもよい。
着色層13(13Y,13M,13C)、着色層23(23Y,23M,23C)が熱昇華性色材層である場合、使用する染料としては、従来公知の感熱昇華転写方式の熱転写シートに使用される染料を使用することができ、特に制限はされない。また、使用するバインダ樹脂としては、従来公知の感熱昇華転写方式の熱転写シートに使用されるバインダ樹脂を使用することができ、特に制限はされない。さらに、染料の色相としては、シアン、マゼンタ、イエローのみではなく、ブラック、その他の種々の色相の染料を使用することができる。
【0018】
このような着色層13,23は、上述の染料とバインダ樹脂の他に、必要に応じて公知の種々の添加剤を含有することができる。着色層(熱昇華性色材層)13,23の形成は、例えば、適当な溶剤中に上記の染料、バインダ樹脂、その他の添加剤を溶解または分散させて調製したインキをグラビアコート法等の公知の手段により塗布、乾燥させることにより行うことができる。このような着色層13,23の厚みは0.1〜3.0μm程度、好ましくは0.2〜1.0μm程度とすることができる。
また、着色層13(13Y,13M,13C)、着色層23(23Y,23M,23C)が熱溶融性インキ層である場合、従来公知の着色剤とバインダよりなり、必要に応じて種々の添加剤を加えたものが使用される。
【0019】
バインダとして用いられるワックス成分としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが用いられる。このなかで、特に融点が50〜85℃であるものが好ましい。50℃以下であると、保存性に問題が生じ、また、85℃以上であると感度不足になる。
また、バインダとして用いられる樹脂成分としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロース又はポリアセタール等が挙げられるが、特に従来より感熱接着剤として使用されている比較的低軟化点、例えば、50〜80℃の軟化点を有するものが好ましい。
【0020】
着色剤としては、公知の有機または無機の顔料、あるいは染料の中から適宜選択することができ、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱等により変色、退色しないものが好ましい。また、着色剤の色としては、シアン、マゼンタ、イエローのみではなく、ブラックやその他の種々の色の着色剤を使用することができる。
着色層(熱溶融性インキ層)13,23の形成は、上記のような着色剤成分とバインダ成分と、さらに、これに必要に応じて、鉱物油、植物油、ステアリン酸等の高級脂肪酸、可塑剤、酸化防止剤、充填剤等の種々の添加剤を加え、水、有機溶剤等の溶媒成分を配合調整した着色層形成用塗工液を、従来公知のホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の方法で行う。また、水系又は非水系のエマルジョン塗液を用いて形成する方法もある。
【0021】
尚、検知マーク15は、金属やカーボン等の導電性物質を含むもので形成して電気的に検知するもの、磁性物質を含むもので形成して磁気的に検知するもの、使用する光源によって識別できる顔料もしくは染料を含むマークで光学的に検知するもの等、いずれであってもよい。また、検知マーク15の形状は図示例に限定されない。
【0022】
(転写性保護層)
熱転写シート11,21を構成する転写性保護層14,24は、印画面上に転写され、印画面に耐擦過性、耐スクラッチ性等の各種耐性、さらに、耐薬品性、耐溶剤性を付与することを目的とする。このような転写性保護層14,24は、単層構成であってよく、また、基材シート12,22に離型層を介して設けた単層構成の保護層でもよく、さらには、基材シート12,22側から剥離層、機能層、接着層とがこの順に積層された多層構成の保護層、あるいは、基材シート12,22に離型層を介して設けた剥離層、機能層、接着層からなる多層構成の保護層等とすることができる。多層構成の保護層を構成する剥離層、機能層、接着層は、それぞれが複数層であってもよく、機能層もしくは接着層、剥離層が兼用でセキュリティ層、ホログラム層、バリア層等の機能層であってもよく、従来公知の各種構成が使用できる。
【0023】
このような転写性保護層14,24は、従来公知の保護層形成用樹脂を用いて形成することができる。保護層形成用樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルエステル、ポリスチレン、ポリアクリルスチレン、ポリアクリロニトリルスチレン、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル等のポリビニル系ホモポリマーおよび共重合樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、これら各樹脂をシリコーン変性させた樹脂、脂環族含有ポリオレフィン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース誘導体樹脂等が挙げられる。これらの各種樹脂の混合物や架橋型樹脂としては、電離放射線架橋性樹脂、紫外線遮断性樹脂、上記熱可塑性樹脂のイソシアネート化合物やキレート化合物等の架橋剤による熱架橋樹脂等を挙げることができ、更には、これらの混合物を使用することもできる。
【0024】
また、転写性保護層14,24には、実質的に透明な無機または有機の微粒子を含有させることができる。このような微粒子を含有させることによって、転写時の膜切れが向上し、さらに、保護層の耐擦過性等を向上させることができるとともに、保護層の表面光沢を抑えてマット調の表面を得ることができ、また、筆記性を付与することもできる。上記の微粒子としては、シリカ、テフロンパウダー、ナイロンパウダー、粉末シリカ、コロイダルシリカ等の比較的透明性の高いものが挙げられる。
また、転写性保護層14,24に紫外線遮断樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等の添加剤を含有させることによって、転写された後の保護層で覆われる画像等の光沢、耐光性、耐候性、白色度、帯電防止性等を向上させることができる。
【0025】
基材シート12,22上に転写性保護層14,24を形成する方法としては、合成樹脂に必要に応じて帯電防止剤、ワックス等の添加剤を添加したインキを作製し、このインキを基材シート上、あるいは、既に形成されている離型層上にグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の公知の手段を用いて塗布、乾燥する方法が挙げられる。このような転写性保護層14,24の厚みは0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5.0μm程度とすることができる。
【0026】
(背面層)
熱転写シート11,21を構成する背面層17,27は、サーマルヘッド等の加熱手段と基材シート12,22との熱融着を防止し、走行を滑らかに行う目的で設けられる。この背面層17,27に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性又はフッ素変性ウレタン等の天然又は合成樹脂の単体又は混合物が用いられる。背面層17,27の耐熱性をより高めるために上記の樹脂のうち、水酸基系の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。
【0027】
さらに、サーマルヘッドとの摺動性を付与するために、背面層17,27に固形あるいは液状の離型剤又は滑剤を加えて耐熱滑性をもたせてもよい。離型剤又は滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機カルボン酸およびその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。背面層17,27に含有される滑剤の量は5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%程度である。
このような背面層17,27の厚みは0.1〜5.0μm程度、好ましくは0.2〜2.0μm程度とすることができる。
【0028】
尚、基材シート12,22の耐熱性やスリップ性が良好である場合には、背面層17,27は不要である。
熱転写シートは、上述の実施態様に限定されるものではなく、転写性保護層を備えていないもの、着色層がシアン、マゼンタ、イエローに加えてブラック、その他の色の着色層を含むもの等であってもよい。また、検知マーク15、25を備えていないものであってもよい。
【0029】
[画像形成方法]
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
図5は、本発明の画像形成方法の一実施形態を説明するための工程図であり、上述の熱転写シート11を使用した例として説明する。
【0030】
本発明の画像形成方法は、n個(nは2以上の整数)の画像の色分解データを3原色の各色毎に集約し、集約した色分解データに基づき、熱転写シート11を使用して各色毎にまとめて受像シートに印画することによりn個の画像が連続した印画物を形成し、その後、印画物を各画像に切り分けるものである。図5に示される例では、2個の画像の色分解データを3原色の各色毎、すなわち、イエローの色分解データ(y1、y2)、マゼンタの色分解データ(m1、m2)、シアンの色分解データ(c1、c2)に集約する。そして、集約した色分解データから、先ず、イエローの色分解データ(y1、y2)に基づいて、熱転写シート11を使用し、受像シート2にイエローの画像Y1と画像Y2を印画する(図5(A))。この印画工程では、上述のように2個の画像Y1とY2を形成する面積を有する着色層13Yを用いて、加熱手段1によってイエローの色分解データ(y1、y2)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にイエローの画像Y1と画像Y2を印画する。この場合、熱転写シート11の着色層13Yが、受像シート2の所定の画像形成領域と重ね合わされた状態で加熱手段1を矢印方向に移動する。
【0031】
次に、受像シート2を印画開始位置に戻し(図5(B)に破線矢印で示す)、その後、マゼンタの色分解データ(m1、m2)に基づいて、熱転写シート11を使用し、既にイエローの画像Y1と画像Y2が形成されている受像シート2上にマゼンタの画像M1と画像M2を印画する(図5(B))。この印画工程では、上述のように2個の画像M1と画像M2を形成する面積を有する着色層13Mを用いて、加熱手段1によってマゼンタの色分解データ(m1、m2)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にマゼンタの画像M1と画像M2を印画する。この場合も、熱転写シート11の着色層13Mが、受像シート2の既にイエローの画像Y1と画像Y2が形成されている領域と重ね合わされた状態で加熱手段1を矢印方向に移動する。
【0032】
さらに、受像シート2を印画開始位置に戻し(図5(C)に破線矢印で示す)、シアンの色分解データ(c1、c2)に基づいて、熱転写シート11を使用し、既にイエローとマゼンタの画像YM1と画像YM2が形成されている受像シート2上にシアンの画像C1と画像C2を印画する(図5(C))。この印画工程では、上述のように2個の画像C1と画像C2を形成する面積を有する着色層13Cを用いて、加熱手段1によってシアンの色分解データ(c1、c2)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にシアンの画像C1と画像C2を印画する。この場合も、熱転写シート11の着色層13Cが、受像シート2の既にイエローとマゼンタの画像YM1と画像YM2が形成されている領域と重ね合わされた状態で加熱手段1を矢印方向に移動する。これにより、受像シート2に画像YMC1と画像YMC2の2個の画像が連続した印画物が形成される。
次いで、同様にして、2個の画像YMC1と画像YMC2を被覆するように、転写性保護層を転写して保護層を形成し、その後、印画物を各画像に切り分けて、画像YMC1が形成された印画物P1と、画像YMC2が形成されたP2が得られる。
【0033】
このような本発明の画像形成方法では、1枚ずつフルカラー画像を形成する場合に比べて、複数枚をまとめて形成するので、印画に必要な動作の単純化、機構の簡略化、位置合わせ制御の容易化が可能であり、画像形成に要する時間の短縮が可能であるとともに、熱転写シートの画像形成に使用できない無駄な領域が削減されており、1画像あたりの熱転写シートの使用量を低減できる。
【0034】
ここで、比較として、上述の熱転写シート11を使用するものの、従来の画像形成方法を使用した例を図6および図7を参考として説明する。
まず、1個の画像のイエローの色分解データ(y1)に基づいて、熱転写シート11を使用し、受像シート2にイエローの画像Y1を印画する(図6(A))。この印画工程では、上述のように2個の画像Y1とY2を形成する面積を有する着色層13Yの一方の領域(Y1)を用いて、加熱手段1によってイエローの色分解データ(y1)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にイエローの画像Y1を印画する。この場合、熱転写シート11の着色層13Yが受像シート2の所定の画像形成領域と重ね合わされた状態で加熱手段1を矢印方向に移動する。
【0035】
次に、受像シート2を印画開始位置に戻し(図6(B)に破線矢印で示す)、また、熱転写シート11を着色層13Mの一方の領域(M1)を用いて印画する位置まで進行させ、その後、マゼンタの色分解データ(m1)に基づいて、熱転写シート11を使用し、既にイエローの画像Y1が形成されている受像シート2上にマゼンタの画像M1を印画する(図6(B))。この印画工程では、上述のように2個の画像M1とM2を形成する面積を有する着色層13Mの一方の領域(M1)を用いて、加熱手段1によってマゼンタの色分解データ(m1)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にマゼンタの画像M1を印画する。この場合も、熱転写シート11の着色層13Mが受像シート2の既にイエローの画像Y1が形成されている領域と重ね合わされた状態で加熱手段1を矢印方向に移動する。
【0036】
さらに、受像シート2を印画開始位置に戻し(図6(C)に破線矢印で示す)、また、熱転写シート11を着色層13Cの一方の領域(C1)を用いて印画する位置まで進行させ、シアンの色分解データ(c1)に基づいて、熱転写シート11を使用し、既にイエローとマゼンタの画像YM1が形成されている受像シート2上にシアンの画像C1を印画する(図6(C))。この印画工程では、上述のように2個の画像C1とC2を形成する面積を有する着色層13Cの一方の領域(C1)を用いて、加熱手段1によってシアンの色分解データ(c1)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にシアンの画像C1を印画する。この場合も、熱転写シート11の着色層13Cが受像シート2の既にイエローとマゼンタの画像YM1が形成されている領域と重ね合わされた状態で加熱手段1を矢印方向に移動する。これにより、受像シート2に画像YMC1が形成される。
次いで、同様にして、画像YMC1を被覆するように、転写性保護層を転写して保護層を形成する。
【0037】
次に、受像シート2を次の領域への印画開始位置にセットし、また、熱転写シート11を着色層13Yの他方の領域(Y2)を用いて印画する位置まで大きく戻す(図7(A)に破線矢印で示す)。そして、1個の画像のイエローの色分解データ(y2)に基づいて、熱転写シート11を使用し、受像シート2にイエローの画像Y2を印画する(図7(A))。この印画工程では、上述のように2個の画像Y1とY2を形成する面積を有する着色層13Yの他方の領域(Y2)を用いて、加熱手段1によってイエローの色分解データ(y2)に応じたエネルギーを印加することにより、受像シート2にイエローの画像Y2を印画する。
その後、上述の画像M1の形成と同様に、マゼンタの色分解データ(m2)に基づき、熱転写シート11の着色層13Mの他方の領域(M2)を用いて、既にイエローの画像Y2が形成されている受像シート2上にマゼンタの画像M2を印画する(図7(B))。
【0038】
さらに、上述の画像C1の形成と同様に、シアンの色分解データ(C2)に基づき、熱転写シート11の着色層13Cの他方の領域(C2)を用いて、既にイエローとマゼンタの画像YM1が形成されている受像シート2上にシアンの画像C2を印画する(図7(C))。これにより、受像シート2に画像YMC2が形成される。
次いで、上記と同様にして、画像YMC2を被覆するように、転写性保護層を転写して保護層を形成する。
次に、印画物を各画像に切り分けて、画像YMC1が形成された印画物P1と、画像YMC2が形成されたP2が得られる。
【0039】
このような画像形成方法では、着色層13Y,13M,13C、および転写性保護層14の一方の領域が画像YMC1の形成に供された熱転写シート11を、次の画像YMC2の形成のために大きく戻す動作が必要である。しかし、熱転写シート11は既に熱ダメージを受けており、上記のような戻し動作によってシワが発生し易く、画像形成に支障を来たすおそれがある。また、熱転写シート11の搬送動作、位置合わせ制御が煩雑である。
【0040】
上述の画像形成方法の実施形態は一例であり、本発明の画像形成方法はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、上述の熱転写シート21、あるいは、各色の着色層が4個以上の画像を形成することができる面積を有する熱転写シートを使用し、受像シートに3個、あるいは4個以上の画像が連続した印画物を形成して、その後、印画物を各画像に切り分けてもよい。また、保護層を形成しないものであってもよい。さらに、画像の色分解データとして、シアン、マゼンタ、イエローに加えてブラック、その他の色の色分解データを使用して各色毎に印画してもよいし、印画色の順番を入れ替えてもよい。
【0041】
尚、受像シート2は特に制限はなく、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート等のプラスチックシートからなる受像シートやカード基材、あるいは、染料受容性のある樹脂層(受像層)を基材シート上に設けた熱転写受像シートや、これらの樹脂類からなるフィルム、シート、成形物等であってよい。染料受容性のある樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、各種ポリアクリレート等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレンまたはその共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、これらの樹脂層中に、熱転写シートとの融着を防止するためのシリコーンオイル等の離型剤を含有させてもよい。
【0042】
受像シート2に使用するシート基材としては、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系);上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打ち用紙、合成樹脂溶液あるいはエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、その他セルロース繊維紙等の天然繊維紙;ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の各種プラスチックのフィルム、シートが使用でき、これらの任意の複合体も使用することができる。上記の中、合成紙は、その表面に熱伝導率の低い(断熱性の高い)ミクロボイド層を有するものが好ましい。
【0043】
また、受像シート2の染料受容面には、着色顔料、白色顔料、体質顔料、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等も任意に含有させることができる。
尚、本発明の画像形成方法に使用する加熱手段1は、画像情報に応じて加熱量をコントロールできる従来公知のものがいずれも使用できる。例えば、熱転写方式プリンターに用いられるサーマルヘッドや、レーザー印字方式プリンターに用いられるレーザーヘッド等を用いることができる。
【0044】
[画像形成装置]
次に、本発明の画像形成装置について説明する。
図8は、本発明の画像形成装置の一実施形態を示すブロック図である。本発明の画像形成装置31は、上述の本発明の画像形成方法によりフルカラー画像を形成する装置であり、画像処理部32、印画部33、切断部34を備えている。
画像処理部32は、記録媒体41あるいはパーソナルコンピュータ(以下、パソコンとする)42からの画像情報を、イエロー、マゼンタ、シアンの3原色の色分解データとし、この色分解データをn個(nは2以上の整数)の画像毎に、3原色の各色毎に集約するものである。この画像処理部32は、データ処理を行うメモリおよびCPU等により構成されている。記録媒体41としては、例えば、SDカード、CFカード、PCカード、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光磁気ディスク等の情報記録媒体である。尚、画像処理部32は、記録媒体41からの画像情報の中から、形成する画像を選択するための画像選択部を備えるものであってもよい。
【0045】
印画部33は、画像処理部32から送られたn個の画像の色分解データに基づいて各色毎にまとめて受像シートに印画して、n個の画像が連続した印画物を形成するものである。この印画部33は、上述の本発明の画像形成方法によってフルカラー画像を形成するものである。尚、印画部33は複数であってもよく、これにより、上記のようなn個の画像が連続した印画物の形成を、同時に複数の印画部で行なうことができる。
切断部34は、印画部33において形成されたn個の画像が連続した印画物を、各画像に切り分けて、個々のフルカラー画像を得るものである。
このような本発明の画像形成装置では、1枚ずつフルカラー画像を形成する場合に比べて、複数枚をまとめて形成するので、印画に必要な動作の単純化、機構の簡略化、位置合わせ制御の容易化が可能であり、画像形成に要する時間を短縮することができ、また、熱転写シートの画像形成に使用できない無駄な領域を削減しているので、1画像あたりの熱転写シートの使用量が低減される。
【0046】
[画像形成システム]
次に、本発明の画像形成システムについて説明する。
図9は、本発明の画像形成システムの一実施形態を説明するためのフローチャートである。図9において、ステップS1では、全ての画像情報を読み取る。次いで、ステップS2では、全画像情報の中から印画する画像情報を選択する。次いで、ステップS3では、選択した全画像をn(nは2以上の整数)で除して端数があるか否かの判断を行う。端数がある場合には、ステップS4に進み、端数がない場合には、ステップS5に進む。
ステップS4では、選択した全画像のうちnの倍数分に相当する画像を印画装置Aで形成し、端数分の画像を印画装置Bで形成する。
一方、ステップS5では、選択した全画像を印画装置Aで形成する。
【0047】
ここで、印画装置Aは、本発明の画像形成方法によりフルカラー画像を形成する装置であり、n個の画像の各色毎の色分解データに基づき、熱転写シートAを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画してn個の画像が連続した印画物を形成するものである。使用する熱転写シートAは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものである。具体的には、上述の熱転写シート11,21等の熱転写シートである。
また、印画装置Bは、1個の画像の各色毎の色分解データに基づき、熱転写シートBを使用して各色毎に受像シートに印画して1画像の印画物を形成するものである。使用する熱転写シートBは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は1個の画像を形成することができる面積を有するものである。
【0048】
このような本発明の画像形成システムは、熱転写シートAを使用する印画装置Aと、熱転写シートBを使用する印画装置Bとを組み合わせて使用するので、印画に必要な動作の単純化、機構の簡略化、位置合わせ制御の容易化が可能であり、画像形成に要する時間の短縮が可能である。
また、形成する画像数による熱転写シートの無駄をなくすことができる。すなわち、n個の画像が連続した印画物を形成することができる上記の熱転写シートAは、n個の画像を形成せずに、1〜(n−1)個の範囲で画像を形成して一連の操作が終了すると、残りの(n−1)〜1個の未使用の領域は、次回の画像形成では使用されず無駄となる。しかし、本発明では、上述のように、全画像をnで除し、端数がある場合には、この端数分の画像を印画装置Bで形成するので、熱転写シートの無駄を防止することができる。
【0049】
図10は、本発明の画像形成システムの他の実施形態を説明するためのフローチャートである。図10において、ステップS1では、全ての画像情報を読み取る。次いで、ステップS2では、全画像情報の中から印画する画像情報を選択する。次いで、ステップS3では、選択した全画像(2以上の画像)を端数が生じないように2画像と3画像に振り分けを行なう。例えば、選択した全画像が15画像の場合、2画像が3個(計6画面)、3画像が3個(計9画面)となるように振り分けを行い、また、選択した全画像が48画像の場合、2画像が9個(計18画面)、3画像が10個(計30画面)となるように振り分けを行なうことができる。尚、選択した全画像の2画像と3画像への振り分けが1通りではない場合には、適宜振り分けを行なうことができるが、例えば、選択した全画像の形成時間が最短となるように振り分けることが好ましい。
次に、ステップ4では、選択した全画像のうち、2画像に振り分けられた画像を印画装置Aで形成し、3画像に振り分けられた画像を印画装置Bで形成する。
【0050】
ここで、印画装置Aは、本発明の画像形成方法によりフルカラー画像を形成する装置であり、2個の画像の各色毎の色分解データに基づき、熱転写シートAを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画して2個の画像が連続した印画物を形成するものである。使用する熱転写シートAは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は2個の画像を形成することができる面積を有するものである。具体的には、上述の熱転写シート11等の熱転写シートである。
また、印画装置Bは、3個の画像の各色毎の色分解データに基づき、熱転写シートBを使用して各色毎に受像シートに印画して3画像の印画物を形成するものである。使用する熱転写シートBは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は3個の画像を形成することができる面積を有するものである。具体的には、上述の熱転写シート21等の熱転写シートである。
【0051】
このような本発明の画像形成システムは、熱転写シートAを使用する印画装置Aと、熱転写シートBを使用する印画装置Bとを組み合わせて使用するので、印画に必要な動作の単純化、機構の簡略化、位置合わせ制御の容易化が可能であり、画像形成に要する時間の短縮が可能である。特に、選択した全画像の2画像と3画像への振り分けを、全画像の形成時間が最短となるように振り分けることにより、画像形成に要する時間を更に短縮することができる。
【0052】
また、形成する画像数による熱転写シートの無駄をなくすことができる。例えば、3個の画像が連続した印画物を形成することができる上記の熱転写シートBは、3個の画像を形成せずに、1〜2個の範囲で画像を形成して一連の操作が終了すると、残りの2〜1個の未使用の領域は、次回の画像形成では使用されず無駄となる。これは、2個の画像が連続した印画物を形成することができる上記の熱転写シートAにおいても同様である。しかし、本発明では、上述のように、熱転写シートAを使用する印画装置Aと、熱転写シートBを使用する印画装置Bとを組み合わせて使用するので、一連の操作が終了した段階で熱転写シートA、Bに未使用の領域を生じることはなく、熱転写シートの無駄を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
熱転写記録方式によるフルカラー画像形成において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明で使用する熱転写シートの一例を示す平面図である。
【図2】図1に示される熱転写シートのA−A矢視断面図である。
【図3】本発明で使用する熱転写シートの他の例を示す平面図である。
【図4】図3に示される熱転写シートのB−B矢視断面図である。
【図5】本発明の画像形成方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図6】比較の画像形成方法の一例を説明するための工程図である。
【図7】比較の画像形成方法の一例を説明するための工程図である。
【図8】本発明の画像形成装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図9】本発明の画像形成システムの一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の画像形成システムの他の実施形態を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
11,21…熱転写シート
12,22…基材シート
13(13Y,13M,13C),23(23Y,23M,23C)…着色層
14,24…転写性保護層
17,27…背面層
31…画像形成装置
32…画像処理部
33…印画部
34…切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成する画像形成方法において、
n個(nは2以上の整数)の画像の色分解データを3原色の各色毎に集約し、集約した前記色分解データに基づき熱転写シートを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画することによりn個の画像が連続した印画物を形成し、その後、前記印画物を各画像に切り分ける工程を有し、前記熱転写シートは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記熱転写シートは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記着色層は、少なくとも染料とバインダ樹脂を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成する画像形成装置において、
n個(nは2以上の整数)の画像を色分解し該色分解のデータを3原色の各色毎に集約する画像処理部と、該画像処理部から受けた各色毎の色分解データに基づき熱転写シートを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画してn個の画像が連続した印画物を形成する印画部と、前記印画物を各画像に切り分ける切断部と、を少なくとも備え、前記熱転写シートは、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記熱転写シートは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記着色層は、少なくとも染料とバインダ樹脂を含有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成するための画像形成システムにおいて、
熱転写シートAを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものとし、熱転写シートBを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は1個の画像を形成することができる面積を有するものとし、
n個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートAを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画してn個の画像が連続した印画物を形成する印画装置Aと、1個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートBを使用して各色毎に受像シートに印画して1画像の印画物を形成する印画装置Bと、を組み合わせ、
形成する全画像のうち前記nの倍数分に相当する画像を前記印画装置Aで形成し、端数分の画像を前記印画装置Bで形成することを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
前記熱転写シートAは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層はn個(nは2以上の整数)の画像を形成することができる面積を有するものであり、前記熱転写シートBは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備えることを特徴とする請求項7に記載の画像形成システム。
【請求項9】
熱転写記録方式によってフルカラー画像を形成するための画像形成システムにおいて、
熱転写シートAを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は2個の画像を形成することができる面積を有するものとし、熱転写シートBを、基材シートの一方の面に少なくともイエロー、マゼンタ、シアンの3原色の着色層を面順次に備え、各色の着色層は3個の画像を形成することができる面積を有するものとし、
2個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートAを使用して各色毎にまとめて受像シートに印画して2個の画像が連続した印画物を形成する印画装置Aと、3個の画像の各色毎の色分解データに基づき前記熱転写シートBを使用して各色毎に受像シートに印画して3画像の印画物を形成する印画装置Bとを、組み合わせ、
形成する全画像に端数が生じないように印画装置Aと印画装置Bの印画枚数を振り分けて画像を形成することを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
前記熱転写シートAは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層は2個の画像を形成することができる面積を有するものであり、前記熱転写シートBは、前記基材シート上に前記着色層と転写性保護層を面順次に備え、該転写性保護層は3個の画像を形成することができる面積を有するものであることを特徴とする請求項9に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記着色層は、少なくとも染料とバインダ樹脂を含有することを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−230095(P2008−230095A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74221(P2007−74221)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】