説明

画像形成方法

【課題】転写メモリを消去する際に、感光層が絶縁破壊することなく、優れた画像特性を長期に渡り維持することができる画像形成装置及びそれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】帯電手段は、接触式の帯電手段であるとともに、帯電手段と除電手段との間には、電子写真感光体表面の粒子をならすための均一化手段が配置してあり、当該均一化手段は、電子写真感光体表面と接触する導電性ブラシと、当該導電性ブラシを電子写真感光体の回転方向と直交する方向に往復動させるための往復動手段と、を含むとともに、導電性ブラシに電圧を印加するための電圧印加手段が電気接続されており、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止している期間における、電圧印加手段による印加電圧の最大値|V1|を、電子写真感光体の絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体を用いた画像形成方法に関する。特に、付着粒子をならすための均一化手段に対して電圧を印加するにあたり、均一化手段及び電子写真感光体の動作状態に対応させて電圧制御することにより、電子写真感光体の絶縁破壊を防止することができる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、コピー等に用いられる画像形成装置は、電子写真感光体の周囲に、電子写真感光体を帯電させるための帯電手段と、この帯電した感光体表面を露光して潜像を形成する露光手段と、この潜像にトナーを転写させて現像する現像手段と、このトナーを記録紙に転写して画像化する転写手段と、転写後の感光体表面に残留する残留電位を消去する除電手段と、を順次配置した画像形成プロセスが採用されている。
ここで、かかる帯電手段としては、電子写真感光体表面に対して帯電ローラ等の帯電部材を直接接触させる接触帯電方式と、コロナ帯電器を用いて感光体表面をコロナ帯電させる非接触帯電方式と、があるが、全体構成が簡易であり、オゾン等の有害物質の発生もないことから、接触帯電方式がより多く実用化されてきている。
しかしながら、この接触帯電方式は、電子写真感光体表面と帯電部材とが直接接触していることに起因して様々な問題が生じる。例えば、電子写真感光体表面に残留した現像剤成分である粒子が帯電部材表面に付着して帯電ムラが発生したり、あるいは、帯電ローラに電圧を印加する際、電子写真感光体及び耐電ローラが停止状態にあるような場合、電子写真感光体表面に過電流が流れ込み、帯電層が絶縁破壊してしまう場合もある。また、このような帯電ムラの問題は、転写後の表面に帯電極性と逆極性の電位が残留する、いわゆる転写メモリの存在によってより顕著になる傾向にある。
【0003】
そこで、このような問題を解決するために、図10に示すように、接触帯電方式を採用した画像形成装置であって、接触式一次帯電ローラ202と、現像手段204と、転写手段206と、前露光ランプ209と、を備えた画像形成装置200において、帯電ローラ202の上流側に、帯電ローラ202と同極性に帯電する接触式前帯電ローラ208を備えることで、接触式一次帯電ローラと逆極性に帯電している感光体表面を、前帯電ローラにより同極性まで引き上げて、転写メモリを消去することができる画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、図11(a)〜(b)に示すように、接触帯電方式を採用した画像形成装置であって、感光体301と、この感光体301と接触した導電性ローラ302と、この導電性ローラ302に電源供給するための電源303と、これらを制御する制御回路304と、から構成される画像形成装置300において、感光体の回転速度vが一定回転速度v0に達した後に、制御回路304から電源303に対して作動信号が送信され、感光体に対して電圧が印加される画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6ー83249号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特公平7−89248号公報(特許請求の範囲、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置は、発生した転写メモリを、前帯電ローラ208により直接的に消去する方法であって、電子写真感光体表面上に残留した異物が帯電ローラ202に付着したような場合には、やはり、帯電ムラや画像上の濃度ムラが発生するという問題が見られた。
また、特許文献2に記載の方法は、感光体表面を所定電位に帯電させるための帯電ローラに対して適用した技術であって、例えば、一定振幅でブラシを往復動させる均一化手段や、転写メモリ消去のための前帯電手段への適用については十分考慮されていなかった。
【0005】
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、導電性ブラシが往復動(スラスト)する均一化手段を備えた画像形成装置を用いることにより、電子写真感光体表面に付着している粒子を均一に平坦化させ、感光体表面の帯電状態を安定化させるとともに、転写メモリ消去のために当該均一化手段に対して電圧を印加するにあたり、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止しているときの電圧値を所定値以下に制御することにより、感光層の絶縁破壊を防止して、帯電特性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、電子写真感光体表面と接触して配置される均一化手段に対して、電子写真感光体表面に付着した微粒子をならす機能と、電子写真感光体上に形成された転写メモリを消去する機能と、の双方を付加するとともに、導電性ブラシから電子写真感光体に対して注入される電流の電流密度が高くなる状態での電圧値を所定値以下に制御することで、感光層が絶縁破壊されることなく、優れた画像特性を長期に渡り維持することができる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、電子写真感光体の周囲に、帯電手段と、現像手段と、転写手段と、除電手段と、が順次配置された画像形成装置を用いた画像形成方法において、帯電手段は、接触式の帯電手段であるとともに、帯電手段と除電手段との間には、電子写真感光体表面の粒子をならすための均一化手段が配置してあり、当該均一化手段は、電子写真感光体表面と接触する導電性ブラシと、当該導電性ブラシを電子写真感光体の回転方向と直交する方向に往復動させるための往復動手段と、を含むとともに、導電性ブラシに電圧を印加するための電圧印加手段が電気接続されており、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止している期間における、電圧印加手段による印加電圧の最大値|V1|を、電子写真感光体の絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくすることを特徴とする画像形成方法が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の画像形成方法によれば、均一化手段により電子写真感光体表面の付着粒子をならして帯電ムラを防止しつつ、当該均一化手段に含まれる導電性ブラシに対して電圧を印加することにより転写メモリを消去することができる。
更に、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が同時に停止している期間において、当該期間内における印加電圧の最大値|V1|を、電子写真感光体の絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくすることにより、電子写真感光体表面に存在する感光層の絶縁破壊を防止して、優れた帯電特性を維持することができる。
なお、本発明において、印加電圧の最大値|V1|は、電圧印加手段によって印加された電圧値の絶対値を意味している。したがって、電圧印加手段の極性や、電子写真感光体の帯電極性が正負いずれの場合であっても、その大きさにおいて、絶縁破壊電圧|V2|との大小関係を比較することができる。
【0007】
また、本発明を実施するにあたり、印加電圧の最大値|V1|を0とすることが好ましい。
このように実施することにより、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止しているときに、導電性ブラシから電子写真感光体に対して電流が注入されることなく、感光層の絶縁破壊を確実に防止することができる。
【0008】
また、本発明を実施するにあたり、電圧印加手段による印加電圧は、時間に対して階段状あるいは直線状に変化する印加電圧であることが好ましい。
このように実施することにより、電圧を急峻に変化させた際に生じるオーバーシュート現象の発生を防止して、電子写真感光体表面の絶縁破壊を効果的に防止することができる。
【0009】
また、本発明を実施するにあたり、往復動手段は、電子写真感光体の端部に同心で結合されたドラムギアと、当該ドラムギアと噛合するスラストギアと、当該スラストギアと同心で結合され外側側面に傾斜面を有しているカム円盤と、導電性ブラシの一部に取り付けられ、導電性ブラシをカム円盤の方向に向けて付勢する付勢手段と、一端が傾斜面と当接され他端が導電性ブラシに固定された当接片と、から構成してあることが好ましい。
このように実施することにより、導電性ブラシの往復動が、ギアを介して感光体ドラムの回転動作と連動することとなり、往復動手段として独立した動力源を配置した場合に比べて、部品点数の少ない簡易な構成とすることができる。
【0010】
また、本発明を実施するにあたり、導電性ブラシは導電性基材及び導電性ブラシ繊維から構成され、電圧印加手段と導電性基材とが電気的に接続してあることが好ましい。
このように実施することにより、導電性基材に植え付けるように配置された導電性ブラシ繊維に対して一様に電圧を印加することができる。その結果、転写メモリを消去するための前帯電手段としての機能を更に効果的に発揮して、より高品位の画像特性を維持することができる。
【0011】
また、本発明を実施するにあたり、導電性ブラシ繊維の原糸抵抗を1×1011(Ω・cm)以下の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、電子写真感光体の表面と接触する際に発生する静電気を効果的に除去することができるとともに、均一化手段に電圧を印加した際に、この導電性ブラシ繊維が電気伝導性に優れる導線として機能し、転写メモリをより効果的に消去することができる。
【0012】
また、本発明を実施するにあたり、導電性基材としてステンレス板を用いることが好ましい。
このように実施することにより、導電性及び機械的強度に優れた導電性ブラシとすることができる。したがって、往復動の振動数を変化させた場合であっても、導電性ブラシが塑性変形することなく、優れた均一化効果及び帯電効果を発揮することができる。
【0013】
また、本発明を実施するにあたり、電子写真感光体が単層型電子写真感光体であることを特徴とすることが好ましい。
このように実施することにより、電子写真感光体を簡易な構成とすることができ、その製造工程を簡素化することができる。
【0014】
また、本発明を実施するにあたり、帯電手段による電子写真感光体の初期帯電電位を400(V)以上の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、所望の画像特性を維持したまま、前帯電手段としての均一化手段が転写メモリを消去して、優れた除電効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る画像形成方法として、接触帯電方式を採用した画像形成装置を用いた画像形成方法であって、転写手段と除電手段との間に電子写真感光体表面の粒子をならすための均一化手段が配置してあるとともに、当該均一化手段は、電子写真感光体表面と接触する導電性ブラシと、当該導電性ブラシを電子写真感光体の回転方向と直交する方向に往復動させるための往復動手段と、を含むとともに、導電性ブラシに電圧を印加するための電圧印加手段が電気接続されており、更に、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止している期間における、電圧印加手段による印加電圧の最大値|V1|を、電子写真感光体の絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくする画像形成方法を例に採って、図1〜9を適宜参照しながら具体的に説明する。
【0016】
1.画像形成装置
(1)基本的構成
図1に、本発明に係る画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例を示す。かかる画像形成装置10は、ドラム型の電子写真感光体(以下、感光体と称する場合がある。)11を備えており、この感光体11の周囲には、矢印Aで示す回転方向に沿って、帯電手段12と、感光体表面に潜像を形成するための露光手段13と、この感光体表面に対してトナーを付着させて潜像現像する現像手段14と、このトナーを記録紙20上に転写するための転写手段15と、感光体表面上の残留トナーを除去するクリーニング装置17と、このクリーニング装置17において除去しきれず、感光体表面に不均一に残留した粒子をならすための均一化手段2と、感光体表面の残留電位を除去するための除電手段18と、が順次配置されている。
また、帯電手段12には、帯電印加電圧を印加するための電源19が接続されている。この電源19は、直流成分(DC)のみを印加することもでき、更には、この直流成分に交流成分(AC)を重畳させた重畳電圧とすることもできる。このとき、電源19の極性を帯電手段12側が正極になるように接続することで、かかる画像形成装置を正帯電型とすることができる。
また、転写手段15には、電源22が接続されている。この電源22は、直流成分(DC)を印加することができる電源であって、その極性は転写手段側が負極になるように接続されている。このように接続することで、かかる画像形成装置を反転現像式の画像形成装置とすることができる。
また、均一化手段2は、電子写真感光体11の表面と接触する導電性ブラシ50と、導電性ブラシ50を電子写真感光体の回転方向と直交する方向に往復動させるための往復動手段70とから構成されている。よって、この均一化手段2によってクリーニング装置17で除去し切れなかった粒子、例えば、酸化チタン等の外添剤としての無機微粒子などを電子写真感光体11の表面上において均一にならすことができる。
更に、この均一化手段70は、バネ部材を介して電圧印加手段61と電気的に接続されており、転写メモリ消去のための前帯電手段としての機能が付加されている。
【0017】
(2)往復動手段
次いで、図2を用いて往復動手段70の基本的構成について説明する。
図2は、往復動手段70及び導電性ブラシ50を斜め方向から眺めた概略斜視図である。
この図2に示すように、往復動手段70は、電子写真感光体11の端部に同心で結合されたドラムギア71と、このドラムギア71と噛み合うように配置されたスラストギア72と、このスラストギア72と同心に結合され、外側側面に傾斜面73aを有するカム円盤73と、一端が傾斜面73aと当接され他端が導電性ブラシ50に固定された当接片74と、この導電性ブラシ50の一部に固定され、導電性部材50をカム円盤73方向に向けて付勢するバネ部材75と、から構成されている。
また、この当接片74が固定してある導電性ブラシ50は、板状形状を有する導電性基材51と、この導電性基材51に植え付けられるように設けられた導電性ブラシ繊維52と、から構成されている。この導電性ブラシ50は、バネ部材75によって図中矢印X方向に常時押し付けられるように配置され、傾斜面73aの回転中心とずれた位置で当接している当接片74を介して、X方向及び−X方向に往復動(スラスト)することにより、電子写真感光体11表面に残留した粒子をならすことができる。
このように構成される往復動手段70において、バネ部材75は、一端が、支持部材50aを介して導電性ブラシ50と接続してあるとともに、他端が、支持部材30aを介して画像形成装置の筐体30及び電圧印加手段61と接続してある。すなわち、このバネ部材75は、一端が、接点62において所定振幅で往復動する導電性ブラシ50と接続された可動端であり、他端が、接点63において筐体30と接する固定端となっている。
【0018】
(3)電圧印加手段
次いで、導電性ブラシ50に対して電気接続される電圧印加手段61について説明する。
図2に示すように、電圧印加手段61は、導電性ブラシ50に対して電気的に接続された直流電源とすることができる。この電圧印加手段61から所定電圧が印加されると、導電性ブラシ50と電子写真感光体11との間に所定の電位差が生じ、導電性ブラシから電子写真感光体表面に対して電流が流れる。その結果、電子写真感光体表面の感光層に残留した電荷が電気的に中和され、転写メモリを消去することができる。このとき、電圧印加手段61の極性は、導電性ブラシ側が転写手段15と逆極性となるように構成される。すなわち、図1においては、正帯電の電子写真感光体11に対して、転写手段15が電子写真感光体側を負極性として接続された反転現像方式であることから、電圧印加手段61は電子写真感光体側が正極性となるように配置することができる。
また、この電圧印加手段61は、上述したように直流電圧電源とすることが好ましいが、交流電圧電源や、直流電圧と交流電圧とを重畳させた重畳電圧電源とすることもできる。
このように供給電圧の態様を複数種備えることで、転写メモリの発生状況等に合わせて適宜変更することができ、更に効果的な転写メモリの消去ができる。
【0019】
(4)タイミングチャート
次いで、かかる電圧印加手段61による印加電圧の時間的変化と、電子写真感光体の回転動作及び導電性ブラシの往復動と、の関係について説明する。
本発明において、電圧印加手段による印加電圧は、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止している期間内において、その最大値を所定値以下に制御してあることを特徴とする。
すなわち、導電性ブラシの往復動及び電子写真感光体の回転動作が始動する前の状態、あるいはこれらが停止した後の状態、のいずれかの状態において、電圧印加手段による印加電圧が、感光層の絶縁破壊電圧|V2|を常に下回るように制御される。
この理由は、このように、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止しているときの印加電圧の最大値を、絶縁破壊電圧値よりも小さくすることで、最も絶縁破壊が発生しやすい、導電性ブラシ及び電子写真感光体の停止時における電圧値を、絶縁破壊されない範囲で制御することができ、効果的に転写メモリを消去することができるためである。
なお、本発明における電子写真感光体の絶縁破壊電圧|V2|とは、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止していたときに、感光層が絶縁破壊する電圧値を意味している。
また、導電性ブラシから電子写真感光体表面に注入される電流の電流密度とは、電流値を1秒間当たりの印加面積で割ったものを意味している。すなわち、電流値I(A)の電流が、軸長L(mm)、外周速度D(mm/sec)で回転している感光体へ流れている場合、電流密度は、I/(L×D)(μA/m2)で表すことができる。
【0020】
次いで、図3(a)〜(d)を用いて、電子写真感光体の回転が始動して、停止状態から回転状態へ移行するタイミングと、電圧印加手段による印加電圧の時間的変化と、の関係を説明する。
まず、図3(a)は、電子写真感光体の回転数の時間的変化を示したタイミングチャートである。すなわち、かかる電子写真感光体は、初期状態では停止しており、時間t0のときに回転動作を開始し、所定時間経過後に一定回転数ω0に達する。また、このとき導電性ブラシは終始停止している。
次いで、図3(b)は、電圧印加手段61による印加電圧の値の時間的変化を示したタイミングチャートであって、図3(a)とその時間軸(横軸)を共有している。この図3(b)において、電子写真感光体の回転が開始するまでの間、すなわち図3(a)における期間Aの間、電圧印加手段61による印加電圧の最大値|V1|は、絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくしてある。
このとき、かかる期間Aにおける印加電圧の最大値|V1|を0にしておくことが好ましい。すなわち、期間Aにおける印加電圧を終始0Vとしておくことが好ましい。
この理由は、このように、電子写真感光体及び導電性ブラシの双方が停止している期間において、電圧印加手段を停止しておくことで、電子写真感光体に対する電気的な負荷をほぼ無くすことができ、絶縁破壊が起きないばかりか、絶縁性が劣化することも防ぐことができ、長期に渡って安定的な高画質の画像を提供することができるためである。
なお、この図3(b)において、所定時間経過後、すなわち期間Bにおいては、印加電圧が絶縁破壊電圧を越えて印加される場合があるが、このような場合であっても当該電子写真感光体表面の感光層は絶縁破壊されない。これは、かかる絶縁破壊電圧が停止時を基準とした絶縁破壊電圧であって、電子写真感光体が所定値以上の回転数で動作する限りにおいて、上述した電流密度が実質的に低下して、感光層が絶縁破壊に至ることはない。
【0021】
また、図3(c)は、電圧印加手段61による印加電圧の時間的変化の別態様であって、期間Aにおいて印加電圧の最大値|V1|が絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくなるという条件を満足しつつ、時間に対して階段状になるように変化させることが好ましい。
この理由は、このように段階的に電圧を昇圧させていくことにより、急峻に昇圧した瞬間に必然的に発生するオーバーシュート現象を極力抑えて、絶縁破壊の発生を効果的に防止することができるためである。
また、図3(d)は、電圧印加手段61による印加電圧の時間的変化の更なる別態様であって、期間Aにおいて印加電圧|V1|が絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくなるという条件を満足しつつ、時間に対して直線状になるように変化させることが好ましい。
この理由は、このように直線的に電圧を昇圧させることにより、昇圧レートを一定にすることができ、上述したオーバーシュート現象を抑えることができるためである。
なお、図3(a)〜(d)においては、導電性ブラシを停止させ、電子写真感光体を回転させたときを例に採って説明しているが、逆に、電子写真感光体を停止させ、導電性ブラシを始動させた場合も同様とすることができる。
【0022】
次いで、図4(a)〜(d)を用いて、電子写真感光体の回転が停止動作に入り、回転状態から停止転状態へ移行するタイミングと、電圧印加手段による印加電圧の時間的変化と、の関係を説明する。
まず、図4(a)は、電子写真感光体の回転数の時間的変化を示したタイミングチャートである。すなわち、かかる電子写真感光体は、初期状態では一定回転数ω0で回転しており、所定時間経過後に回転が停止し始めて、時間tsのときに回転が完全に停止する。また、図3の場合と同様に導電性ブラシは終始停止している。
次いで、図4(b)は、電圧印加手段61による印加電圧の値の時間的変化を示したタイミングチャートであって、図4(a)とその時間軸(横軸)を共有している。この図4(b)において、電子写真感光体の回転が停止した以降の期間、すなわち図4(a)における期間Cにおいて、電圧印加手段61による印加電圧の最大値|V1|は、絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくしてある。
このとき、かかる期間Cにおける印加電圧の最大値|V1|を0にしておくことが好ましい。すなわち、期間Cにおける印加電圧を終始0Vとしておくことが好ましい。
この理由は、上述した回転開始時の場合と同様、停止時においても、電子写真感光体に対する電気的な負荷をほぼ無くすことができ、絶縁破壊が起きないばかりか、絶縁性が劣化することも防ぐことができ、長期に渡って安定的な高画質の画像を提供することができるためである。
また、図4(c)は、電圧印加手段61による印加電圧の時間的変化の別態様であって、期間Cにおいて印加電圧の最大値|V1|が絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくなるという条件を満足しつつ、時間に対して階段状になるように変化させることが好ましい。
この理由は、このように段階的に電圧を降圧させていくことにより、急峻に降圧した瞬間に加わる、感光層への電気的な負荷を極力抑えて、絶縁破壊の発生を効果的に防止することができるためである。
また、図4(d)は、電圧印加手段61による印加電圧の時間的変化の更なる別態様であって、期間Cにおいて印加電圧|V1|が絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくなるという条件を満足しつつ、時間に対して直線状になるように変化させることが好ましい。
この理由は、このように直線的に電圧を降圧させることにより、降圧レートを一定にすることができ、上述した感光層への負荷を抑えることができるためである。
なお、図4(a)〜(d)においては、導電性ブラシを停止させておき、電子写真感光体を停止させるときを例に採って説明しているが、逆に、電子写真感光体を停止させておき、導電性ブラシを停止させた場合も同様とすることができる。
【0023】
(5)動作原理
次いで、図5(a)〜(c)を用いて、往復動手段70の動作原理について説明する。
この図5(a)〜(c)は、図2を図中矢印Y方向から眺めたときの概略平面図であり、それぞれ導電性ブラシの位置変化を順次時系列に沿って示した図である。
まず、図5(a)は、傾斜面73aを有するカム円盤73の長軸位置(A)が最上部にきたときの状態を図示してある。
このとき、カム円盤73の長軸位置(A)と当接している当接片74は、可動範囲内において最も右側に位置することとなる。
すなわち、図5(a)における導電性ブラシ50は、バネ部材75によって図中左方向に付勢されつつ、電子写真感光体11から見て、最も右側に位置した状態を示していると言える。
次いで、図5(b)は、図5(a)の状態から、カム円盤73が90°回転したときの状態を図示している。つまり、当接片74は、カム円盤73の長軸位置と短軸位置の中間位置(B)で当接していることとなる。したがって、当接片74は、可動範囲内の中心に位置することとなる。
すなわち、図5(b)における導電性ブラシ50は、バネ部材75によって図中左方向に付勢されつつ、電子写真感光体11から見て振動中心に位置した状態を示していると言える。
次いで、図5(c)は、図5(b)の状態から、更にカム円盤73が90°回転したときの状態を図示している。つまり、当接片74は、カム円盤73の短軸位置(C)で当接していることとなる。したがって、当接片74は、可動範囲内において最も左側に位置することとなる。
すなわち、図5(c)における導電性ブラシ50は、バネ部材75によって図中左方向に付勢されつつ、電子写真感光体11から見て最も左に位置した状態を示していると言える。
つまり、この図5(a)〜(c)の一連の作業を連続的に実施することで、導電性ブラシ50は、電子写真感光体11の軸方向に、所定の振幅で往復動することとなる。
【0024】
また、このように動作する往復動手段において、その振幅を1mm以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように往復動の振幅を所定値以上に設定することにより、電子写真感光体表面に付着した粒子に、所定値以上の外力を加えることができ、効果的な均一化ができるためである。しかしながら、かかる振幅が大き過ぎるような場合には、電子写真感光体表面と導電性ブラシとの接触回数が過度に増加して感光体表面を摩耗させてしまう場合がある。更に、導電性ブラシの可動域が広がりすぎて、装置の小型化を阻害する場合がある。また、逆にかかる振幅が小さ過ぎるような場合には、粒子の付着状態によっては、感光体表面から引き剥がすことができない場合がある。
したがって、往復動の振幅の範囲としては、1.3〜5.0(mm)の範囲内の値とすることが好ましく、1.5〜3.0(mm)の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0025】
(6)導電性ブラシ
また、本発明に用いられる導電性ブラシは、図2に示すように、板状形状を有する導電性基材51と、この導電性基材51に植え付けられるように設けられた導電性ブラシ繊維52と、から構成され、その一部には当接片74及び付勢手段75が取り付けてある。このように構成される導電性ブラシ50は、当接片74を介して往復動手段70と連結して往復動することにより、導電性ブラシ繊維52が、電子写真感光体表面に付着した粒子を均一に散して均一化させることができる。
このような導電性ブラシ50において、電子写真感光体11表面と直接接触する部材である導電性ブラシ繊維52の材料としては、導電性粒子を含有したポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂とすることが好ましい。
この理由は、このような導電性繊維を用いることで、摩擦による静電気を効率的に除去することができるとともに、均一化手段に電圧を印加した際に、この導電性ブラシ繊維が導線として機能し、転写メモリをより効果的に除去することができるためである。
また、導電性ブラシ繊維の原糸抵抗を調整するにあたり、カーボン等の導電性粒子の添加量を調整することにより、容易にその導電性を制御することができるためである。
【0026】
また、このような導電性ブラシ繊維を用いた場合には、その原糸抵抗を1×1011(Ω・cm)以下の値とすることが好ましい。
この理由は、導電性ブラシ繊維の原糸抵抗の値を過度に高くした場合には、転写メモリを消去するために高い電圧を印加する必要が生じ、導電性ブラシ繊維と感光体表面との接触部分近傍において異常放電が起こり、画像特性を低下させる場合があるためである。また、逆に、導電性ブラシ繊維の原糸抵抗を過度に低くした場合には、放電現象が生じにくくなり、転写メモリを十分消去しきれない場合が生じるためである。
したがって、かかる原糸抵抗の範囲としては、1×103〜1×1010(Ω・cm)の範囲内の値とすることが好ましく、1×105〜1×109(Ω・cm)の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0027】
また、導電性ブラシ繊維における毛足長さを2〜7(mm)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このような範囲内の値とすることによって、感光体表面と接触した際の導電性ブラシ繊維の湾曲状態を所定範囲内に規定することができ、導電性ブラシと感光体との間の異常放電を効果的に防止することができるためである。
また、かかる毛足長さが2(mm)未満となった場合には、感光体のドラム径によっては、導電性ブラシの端部において、非接触領域が形成され、異常放電の発生原因となり得る。また逆に、7(mm)を超えたような場合には、導電性ブラシ繊維の湾曲部分が過度に長くなり、やはり異常放電の発生原因となり得る。
したがって、導電性ブラシ繊維における毛足長さとしては、3〜6(mm)の範囲内の値とすることがより好ましく、4〜5(mm)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0028】
また、導電性ブラシにおける導電性ブラシ繊維の繊維密度を180kF/inch2(≒28kF/cm2)以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このような範囲内の値とすることにより、導電性ブラシ繊維相互の接触状態を規定することができ、導電性ブラシ繊維間における不均一な接触から生じる異常放電を防止できるためである。
【0029】
また、導電性ブラシを構成する導電性ブラシ繊維の太さを規定するにあたり、当該ブラシ繊維の単糸繊度を6(デニール)以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このような範囲内の値とすることにより、導電性ブラシ繊維と感光体との接触面積を所定値以上とすることができ、異常放電の発生を効果的に防止することができるためである。また、ブラシ繊維の原糸抵抗の値を、かかる単糸繊度の値を用いて制御することができ、より精度良くブラシ繊維の抵抗値を制御することができるためである。
【0030】
(7)導電性基材
また、本発明に係る導電性基材としては、導電性、及び十分な機械的強度を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ステンレス、銅、及びアルミニウム等の金属板を用いることが好ましく、特にステンレス板が好ましい。
この理由は、ステンレス板であれば、導電性、及び機械的強度において特に優れるため、導電性ブラシの変形を防止して、長期に渡り安定的な均一化効果が得られるためである。
また、本発明において、電圧印加手段は、当該導電性基材に対して電気接続してあることが好ましい。すなわち、上述したバネ部材の一端が、当該導電性基材と電気接続してあることが好ましい。
この理由は、導電性ブラシに電圧を印加するにあたり、導電性ブラシを構成する材料の中で比較的強度が高く、安定的な接点を容易に形成することができるためである。したがって、本発明のように、導電性ブラシが所定振幅で連続的に往復動するような場合であっても、長期に渡り安定的に導通状態を維持することができる。
【0031】
(8)帯電特性
次いで、本発明における均一化手段2を、転写メモリを消去するための前帯電手段として用いた場合の、電子写真感光体表面の帯電特性について説明する。
この均一化手段2を前帯電手段として機能させるにあたり、電圧印加手段61を用いて導電性ブラシ50に所定の電圧を印加することにより、導電性ブラシ繊維51を介して、電子写真感光体感光体表面に所定量の電荷が注入され、転写手段によって発生した転写メモリを消去することができる。
このとき、均一化手段2に適用される印加条件としては、導電性ブラシ50から感光体11に流れる電流の電流密度(Ib)を700(μA/m2)以上の値とすることができる。
ここで、図6に、感光体として正帯電の電子写真感光体を用いた場合の、導電性ブラシから注入される電流の電流密度(Ib)と、転写メモリ電位(Vt)と、の関係を表す特性図を示す。
この図6において、横軸は、導電性ブラシから注入される電流の電流密度(Ib)を表し、縦軸は、転写メモリ電位(Vt)を表している。
すなわち、縦軸においては、上側にいく程、均一化手段により転写メモリが消去されていることを意味し、下側にいく程、均一化手段による転写メモリの消去が不十分であることを意味している。
また、図6中の曲線(A)〜(D)は、それぞれ原糸抵抗の異なる導電性ブラシ繊維を用いたときの特性曲線である。より具体的には、順に1×1012.5(Ω・cm)、1×1010.5(Ω・cm)、1×108.5(Ω・cm)、1×106.5(Ω・cm)の時の曲線を表している。
また、本発明において、転写メモリ電位(Vt)とは、連続印刷を実施した場合の、現像位置における感光体表面の表面電位の変化量として定義される。
より具体的には、感光体を連続的に回転させて白紙画像を印刷した場合に、第1周目のときの現像位置における感光体表面の表面電位を(|V1|)とし、第3周目のときの現像位置における感光体表面の表面電位を(V3)とした場合に、(|V1|)−(V3)で表される値として定義される。
【0032】
この図6から理解できるように、導電性ブラシ繊維の原糸抵抗の値に関わらず、電流密度(Ib)を高くするほど、残留している転写メモリ電位は小さくなり、特に、700(μA/m2)以上の範囲で、安定的に消去されると言える。
また逆に、この電流密度(Ib)を過度に高くした場合には、導電性ブラシと感光体表面との接触部分近傍において異常放電が起こり、帯電特性に不具合を生じさせる場合がある。
したがって、かかる電流密度(Ib)の範囲としては、700〜2000(μA/m2)の範囲内の値とすることが好ましく、1000〜1500(μA/m2)の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、本発明において電流密度とは、電流値を1秒間当たりの印加面積で割ったものを意味している。すなわち、電流値I(A)の電流が、軸長L(mm)、外周速度D(mm/sec)で回転している感光体へ流れている場合、電流密度は、I/(L×D)(μA/m2)で表すことができる。
【0033】
また、図7に、導電性ブラシへの印加電圧(Vb)と、転写メモリ電位(Vt)と、の関係を表す特性図を示す。
この特性図において、横軸は、導電性ブラシへの印加電圧(Vb)を表し、縦軸は、転写メモリ電位(Vt)を表している。
すなわち、図7は、図6における電流密度(Ib)を、特性曲線(A)〜(D)のそれぞれの原糸抵抗の値を用いて電圧に換算したものに相当する。
この図7から理解できるように、導電性ブラシの原糸抵抗の値が高いほど、転写メモリを消去するために高い電圧を印加する必要があると言える。特に、同じ印加電圧で比較した場合には、導電性ブラシ繊維の原糸抵抗が1×1011(Ω・cm)を超えると、転写メモリ電位の消去が著しく不十分になることが分かる。
したがって、かかる原糸抵抗の範囲としては、1×103〜1×1010(Ω・cm)の範囲内の値とすることが好ましく、1×105〜1×109(Ω・cm)の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0034】
また、導電性ブラシへの印加電圧(Vb)を直流電圧で1100(V)以上の値とすることが好ましい。この理由は、図7に示すように、導電性ブラシの固有抵抗値に関わらず、転写メモリ電位(Vt)を下げることができるためである。
その一方で、かかる印加電圧(Vb)を過度に上げた場合には、導電性ブラシと感光体との間で異常放電が発生し、帯電特性に悪影響を与える場合がある。
したがって、かかる印加電圧(Vb)を、1100〜3000(V)の範囲内の値とすることが好ましく、1100〜2000(V)の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0035】
また、導電性ブラシから注入される電流の電流密度をIb(μA/m2)とし、転写手段から注入される電流の電流密度をIt(μA/m2)とした場合に、|Ib/It|で表される値を2以上とすることが好ましい。
ここで、図8に、導電性ブラシとして所定の原糸抵抗を有する導電性ブラシ繊維を用いたときの、導電性ブラシから注入される電流の電流密度(Ib)と、転写メモリ電位(Vt)と、の関係を、転写手段15から注入される電流の電流密度(It)毎に表した特性図を示す。また、図8中の曲線(E)〜(G)は、転写手段から注入される電流の電流密度(It)が、順に、−395(μA/m2)、−316(μA/m2)、−237(μA/m2)のときの特性曲線を表している。
また、図9には、図8における横軸を、|Ib/It|に換算した特性図を示す。
これらの特性図から理解できるように、転写手段から注入される電流の電流密度(It)の絶対値が大きいほど、転写メモリ電位(Vt)は高く、更にいえば、|Ib/It|で表される値を2以上とした場合に、転写メモリ電位(Vt)は十分下がることが分かる。
すなわち、特性曲線(E)においては、導電性ブラシから注入される電流の電流密度(Ib)の絶対値が790以上のときに、転写メモリ電位が下がっている。また、特性曲線(F)においてはIbの絶対値が632以上、特性曲線(G)においてはIbの絶対値が474以上で、それぞれ転写メモリが十分消去されていることが分かる。
また逆に、この電流密度(Ib)を過度に高くした場合には、導電性ブラシと感光体表面との接触部分近傍において異常放電が起こり、帯電特性に不具合を生じさせる場合がある。
したがって、|Ib/It|で表される値を2.5〜8.0の範囲内の値とすることが好ましく、3.0〜6.0の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0036】
(9)帯電手段
また、本発明において、感光体表面を所定電位に帯電させるための帯電手段は、接触式の帯電手段であることを特徴とする。
この接触式の帯電手段は、コロナ帯電のような非接触帯電式を採用した場合に比べて、小型であるとともに、コロナ帯電の際に発生するオゾン等の有害物質を発生させることもなく、対環境性に優れた帯電手段である。
しかしながら、電子写真感光体表面と直接接触する構成であることから、印刷後に電子写真感光体表面に不均一に残留している現像剤成分、例えば、酸化チタン等の外添剤などが、帯電部材の表面に不均一に付着して、帯電ムラを生じさせる場合がある。
そこで、本発明においては、所定の振幅で往復動する均一化手段を設けるとともに、当該均一化手段に転写メモリ消去のための前帯電手段としての機能を付加し、更にその導通安定性に優れる構造を有することにより、帯電手段として接触式の帯電手段を用いた場合であっても、帯電手段の前段階で、不均一に残留している粒子を均一にならすとともに、転写メモリも同時に消去して、帯電ムラの発生を抑制することができる。
また、本発明に用いられる電子写真感光体は、単層型及び積層型のいずれも用いることができるが、単層型の電子写真感光体とすることが好ましい。
この理由は、積層型に比べて製造工程を簡素化することができるためである。また、帯電方式として、感光体表面をプラス極性に帯電させる正帯電方式を採用した場合であっても、帯電印加電圧として重畳電圧を用いた場合に生じる帯電飽和領域の狭小化という問題を解決し、安定的に電子写真感光体表面を帯電させることができるためである。
【0037】
また、この帯電手段による電子写真感光体の初期帯電電位を400(V)以上の値とすることが好ましい。
この理由は、初期帯電電位を所定値以上することで、画像ムラを抑制したまま、所望の画像濃度を得ることができるためである。
【0038】
また、帯電手段において、感光体表面との接触部分の部材としては、導電性ゴム又は導電性スポンジを用いることが好ましい。
より具体的には、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)等の半導電性を有する極性ゴム(イオン導電系ゴム)や、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等にイオン導電剤を添加して半導電性を付与したイオン導電系ゴム等を用いる事ができる。このとき、体積固有抵抗としては、1×103〜1×1010(Ω・cm)の範囲内の値とすることが好ましい。
【0039】
(10)移動手段
また、均一化手段2には、この導電性ブラシ50と、電子写真感光体11表面と、の距離を変更することができる移動手段が設けてあることが好ましい。この理由は、このような移動手段を用いることで、導電性ブラシと感光体表面との押圧力を調整することができ、粒子の付着状態に応じて、導電性ブラシと電子写真感光体との接触状態を適宜調整することができるためである。
このとき、導電性ブラシの感光体表面に対する押圧力としては、0.1〜100(kgf/cm2)の範囲内の値とすることが好ましい。このような範囲内の値であれば、感光体の駆動に過剰な負荷をかけることなく、付着粒子を効果的に均一化させることができる。
【0040】
2.画像形成方法
次いで、上述した画像形成装置を用いた画像形成方法について図1を参照しつつ、その動作について順を追って説明する。
まず、画像形成装置10の感光体11を、矢印Aで示す方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転させた後、その表面を帯電手段12によって所定電位に帯電させる。
次いで、露光手段13により、画像情報に応じて光変調されながら反射ミラー等を介して、感光体11の表面を露光する。この露光により、感光体11の表面に静電潜像が形成される。
次いで、この静電潜像に基づいて、現像手段14により潜像現像が行われる。この現像手段14の内部にはトナーが収納されており、このトナーが感光体11表面の静電潜像に対応して付着することで、トナー像が形成される。
また、記録紙20は、所定の転写搬送経路に沿って、感光体下部まで搬送される。このとき、感光体11と転写手段15との間に、所定の転写バイアスを印加することにより、記録材20上にトナー像を転写することができる。
【0041】
次いで、トナー像が転写された後の記録紙20は、分離手段(図示せず)によって感光体11表面から分離され、搬送ベルトによって定着器に搬送される。次いで、この定着器によって、加熱、加圧処理されて表面にトナー像が定着された後、排出ローラによって画像形成装置10の外部に排出される。
一方、トナー像転写後の感光体11はそのまま回転を続け、転写時に記録紙20に転写されなかった残留トナー(付着物)が感光体11の表面から、本発明のクリーニング装置17によって除去される。
また、このクリーニング装置17で除去できなかった粒子、例えば酸化チタン等の外添剤としての無機微粒子は、均一化手段2によって均一にならされ、平坦化される。
また、感光体11の表面に残留した電荷は、バネ部材75を介して電気接続してある均一化手段2により均一な帯電電位まで引き上げられ、その後、除電器18からの除電光の照射によって完全に消去され、次の画像形成に供されることになる。
従って、本発明の画像形成装置を用いることで、帯電手段として接触帯電方式を採用した場合であっても、往復動する均一化手段を用いて、感光体表面に不均一に付着している粒子を均一にならすとともに、電子写真感光体表面に残留した転写メモリを消去して、優れた画像特性を長期に渡り維持することができる。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
1.電子写真感光体の作成
電荷発生物質としてX型無金属フタロシアニン2.7重量部と、正孔輸送剤としてスチルベンアミン化合物50重量部と、電子輸送剤としてアゾキノン系化合物35重量部と、結着樹脂として平均分子量30000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂100重量部と、テトラヒドロフラン700重量部と、を攪拌容器内に収容した後、ボールミルで50時間混合分散し、塗布液を作成した。次いで、得られた塗布液をアルマイト素管からなる導電性支持体上にディップコート法にて塗布した後、130℃、45分間の条件で熱風乾燥し、膜厚30μm、直径30mmの単層型電子写真感光体を得た。
【0043】
2.導電性ブラシの作成
また、導電性ブラシ繊維として、導電性ナイロンブラシ(単糸繊度6.2(デニール)、毛足長さ3mm、原糸抵抗1×108.5(Ω・cm))を用い、導電性基材としてステンレス板を用いた。
【0044】
3.始動時における絶縁破壊評価
得られた感光体を、京セラミタ(株)製プリンタKM1500改造機に搭載するとともに、導電性ブラシを感光体表面に対してニップ幅5mm、毛先食い込み量0.5mmとなるように圧接させた。また、感光体表面と帯電手段との間に1200(V)の直流電圧を印加して、感光体表面を約400(V)に帯電させた。
次いで、常温常湿環境下(23℃、50%Rh)において、電子写真感光体を外周速度110(mm/sec)の周速で回転させるとともに、導電性ブラシを振幅1(mm)で振動させた後、約1秒経過後に、電圧印加手段に2200(V)の直流電圧を印加した。
この状態で、帯電手段と電子写真感光体との間の電流値をモニターし、リーク電流値が30(μA)を超えた場合を絶縁破壊有りとして評価した。
また、評価サンプル数を20とし、そのうち絶縁破壊された感光体の本数を、絶縁破壊されたサンプル数としてカウントした。得られた結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
[実施例2]
実施例2では、電子写真感光体を回転させずに停止させておきつつ、導電性ブラシを振幅1(mm)で振動させた後、約1秒経過後に、電圧印加手段に2200(V)の直流電圧を印加した。それ以外の条件は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
[実施例3]
実施例3では、導電性ブラシを振動させずに停止させておきつつ、電子写真感光体を外周速度110(mm/sec)の周速で回転させた後、約1秒経過後に、電圧印加手段に2200(V)の直流電圧を印加した。それ以外の条件は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
比較例1では、電子写真感光体及び導電性ブラシを共に停止させた状態で、電圧印加手段に2200(V)の直流電圧を印加した。それ以外の条件は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表1に示す。
【0049】
[実施例4〜6、比較例2]
実施例4〜6及び比較例2では、常温常湿環境下から高温高湿環境下へと変更した以外は、実施例1〜3及び比較例1と同様にして評価した。得られた結果を表2に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
[実施例7]
4.停止時における絶縁破壊評価
実施例1と同様にして作成し得られた感光体を、京セラミタ(株)製プリンタKM1500改造機に搭載するとともに、導電性ブラシを感光体表面に対してニップ幅5mm、毛先食い込み量0.5mmとなるように圧接させた。また、感光体表面と帯電手段との間に1200(V)の直流電圧を印加して、感光体表面を約400(V)に帯電させた。
次いで、常温常湿環境下(23℃、50%Rh)において、電子写真感光体を外周速度110(mm/sec)の周速で回転させるとともに、導電性ブラシを振幅1(mm)で振動させた後、約1秒経過後に、電圧印加手段に2200(V)の直流電圧を印加した。
次いで、所定時間経過後、電子写真感光体及び導電性ブラシの双方が動作している間に、電圧印加手段による印加電圧を0(V)まで落とし、その後、電子写真感光体及び導電性ブラシをそれぞれ停止させた。
この状態で、帯電手段と電子写真感光体との間の電流値をモニターし、リーク電流値が30(μA)を超えた場合を絶縁破壊有りとして評価した。得られた結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
[実施例8]
実施例8では、電子写真感光体及び導電性ブラシの双方が動作している状態から、先に電子写真感光体の回転動作のみを停止させ、その後、電圧印加手段による印加電圧を0(V)に落とした。それ以外の条件は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表3に示す。
【0054】
[実施例9]
実施例9では、電子写真感光体及び導電性ブラシの双方が動作している状態から、先に導電性ブラシの振動のみを停止させ、その後、電圧印加手段による印加電圧を0(V)に落とした。それ以外の条件は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表3に示す。
【0055】
[比較例3]
比較例3では、電子写真感光体及び導電性ブラシの双方が動作している状態から、双方をそれぞれ停止させ、その後、電圧印加手段による印加電圧を0(V)に落とした。それ以外の条件は実施例1と同様にして評価した。得られた結果を表3に示す。
【0056】
[実施例10〜12、比較例4]
実施例10〜12及び比較例4では、常温常湿環境下から高温高湿環境下へと変更した以外は、実施例7〜9及び比較例3と同様にして評価した。得られた結果を表4に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
表1〜4に示す結果から理解されるように、実施例1、4、7、10においては、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止している状態での印加電圧が終始0Vとなっていることから、電子写真感光体の感光層に対して過電流が流入することなく、良好な電気絶縁性が維持されている。
また、実施例2、3、5、6、8、9においては、導電性ブラシ及び電子写真感光体のいずれか一方が動作している状態で電圧印加していることから、電子写真感光体の感光層に対して過電流が流入することなく、良好な電気絶縁性が維持されている。
また、比較例1〜4においては、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止した状態で、感光層の絶縁破壊電圧|V2|に相当する電圧を印加していることから、感光層に絶縁破壊が発生する場合が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る画像形成方法によれば、導電性ブラシが往復動して電子写真感光体感光体表面に付着した粒子を均一化させることができるため、後の帯電手段において、帯電手段の表面には、均一化された粒子が付着することから、帯電ムラの発生が少なく、優れた帯電特性を維持することができるようになった。
また、均一化手段に含まれる往復動手段に対して電圧を印加するにあたり、導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止した状態での電圧の最大値|V1|が、絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくしてあることから、かかる均一化手段を、転写メモリ消去のための前帯電手段として用いる場合にも、感光層を絶縁破壊させることなく、確実に転写メモリを消去することができるようになった。
したがって、本発明の画像形成装置及びそれを用いた画像形成方法は、画像形成装置の高画質化、小型化等に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明に係る均一化手段及び導電性ブラシの概略斜視図である。
【図3】(a)〜(d)は、電子写真感光体の回転動作と印加電圧との関係を説明するためのタイミングチャートである。(その1)
【図4】(a)〜(d)は、電子写真感光体の回転動作と印加電圧との関係を説明するためのタイミングチャートである。(その2)
【図5】(a)〜(c)は、均一化手段の動作原理を説明するための断面図である。
【図6】導電性ブラシから感光体表面に流れる電流の電流密度(Ib)と転写メモリ電位(Vt)との関係を示す特性図である。
【図7】導電性ブラシに印加した印加電圧(Vb)と転写メモリ電位(Vt)との関係を示す特性図である。
【図8】転写手段から感光体表面へ流れる電流の電流密度(It)と転写メモリ電位(Vt)との関係を示す特性図である。
【図9】電流密度の比|Ib/It|と転写メモリ電位(Vt)との関係を示す特性図である。
【図10】従来の画像形成装置の構成を説明するために供する図である。(その1)
【図11】(a)〜(b)は、従来の画像形成装置の構成を説明するために供する図である。(その2)
【符号の説明】
【0061】
2:均一化手段、10:画像形成装置、11:電子写真感光体、12:帯電手段、13:露光手段、14:現像手段、15:転写手段、17:クリーニング装置、20:記録紙、30:筐体、50:導電性ブラシ、51導電性基材、52:導電性ブラシ繊維、61:電圧印加手段、62、63:接点、70:往復動手段、71:ドラムギア、72:スラストギア、73:カム円盤、73a:傾斜面、74当接片、75:バネ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体の周囲に、帯電手段と、現像手段と、転写手段と、除電手段と、が順次配置された画像形成装置を用いた画像形成方法において、
前記帯電手段は、接触式の帯電手段であるとともに、前記帯電手段と除電手段との間には、前記電子写真感光体表面の粒子をならすための均一化手段が配置してあり、
当該均一化手段は、前記電子写真感光体表面と接触する導電性ブラシと、当該導電性ブラシを前記電子写真感光体の回転方向と直交する方向に往復動させるための往復動手段と、を含むとともに、前記導電性ブラシに電圧を印加するための電圧印加手段が電気接続されており、
前記導電性ブラシ及び電子写真感光体の双方が停止している期間における、前記電圧印加手段による印加電圧の最大値|V1|を、前記電子写真感光体の絶縁破壊電圧|V2|よりも小さくすることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記印加電圧の最大値|V1|を0とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記電圧印加手段による印加電圧は、時間に対して階段状あるいは直線状に変化する印加電圧であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記往復動手段は、前記電子写真感光体の端部に同心で結合されたドラムギアと、当該ドラムギアと噛合するスラストギアと、当該スラストギアと同心で結合され外側側面に傾斜面を有しているカム円盤と、前記導電性ブラシの一部に取り付けられ、前記導電性ブラシを前記カム円盤の方向に向けて付勢する付勢手段と、一端が前記傾斜面と当接され他端が前記導電性ブラシに固定された当接片と、から構成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記導電性ブラシは導電性基材及び導電性ブラシ繊維から構成され、前記電圧印加手段と導電性基材とが電気的に接続してあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記導電性ブラシ繊維の原糸抵抗を1×1011(Ω・cm)以下の値とすることを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記導電性基材としてステンレス板を用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記電子写真感光体が単層型電子写真感光体であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記帯電手段による前記電子写真感光体の初期帯電電位を400(V)以上の値とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−293008(P2007−293008A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120506(P2006−120506)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】