説明

画像形成材料

【課題】400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光度が十分に低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度が十分に高い画像形成材料を提供する。
【解決手段】Cuターゲットで波長が1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示す特定構造のペリミジン系スクアリリウム色素を含有することを特徴とする画像形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通常の視覚条件では視認性がない不可視的な情報を文書等に記録する技術が注目されている。この技術は、セキュリティー管理、インターネット情報や音声の埋め込み等において有用であり、文書等の付加価値を向上させることができる。
【0003】
不可視情報を記録する方法としては、例えば、シリコンによる受光素子(CCD等)では検出できるが人間の目では判別できない750nm以上1000nm以下の近赤外領域に吸収を有する画像形成材料を使用する方法がある。
【0004】
750nm以上1000nm以下の近赤外領域に吸収を有する画像形成材料としては、ナフタロシアニン色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素などを用いた画像形成材料がある(例えば、下記特許文献1〜6を参照。)。
【特許文献1】特開平09−090547号公報
【特許文献2】特開平09−119867号公報
【特許文献3】特表平09−509503号公報
【特許文献4】特開2000−207512号公報
【特許文献5】特開2001−294785号公報
【特許文献6】特開2002−278023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不可視情報を記録するための画像形成材料には、不可視情報の読み取りやすさ(すなわち赤外発色能力)の観点から、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度が十分に高いことが要求される。その一方で、情報の不可視性の観点からは、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光度が十分に低いことが要求される。
【0006】
そこで本発明は、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光度が十分に低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度が十分に高い画像形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、下記式(I)で表される構造を有し、Cuターゲットで波長が1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示すペリミジン系スクアリリウム色素を含有することを特徴とする画像形成材料にある。
【化1】

【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記ペリミジン系スクアリリウム色素が、前記式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液とを混合し、その混合液について顔料化処理する工程を経て得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成材料にある。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記ペリミジン系スクアリリウム色素が、メジアン径d50が10nm〜300nmの結晶性粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成材料にある。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が0.05〜3重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成材料にある。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版、オフセット、フレキソ、グラビア若しくはシルク印刷用のインクであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成材料にある。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、下記式(II)及び(III)で表される条件を満たすことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成材料にある。
0≦ΔE≦16 (II)
(100−R)≧75 (III)
[式(II)中、ΔEは下記式(IV):
【数1】


(式(IV)中、L、a、bはそれぞれ画像形成前における記録媒体表面のL値、a値、およびb値を示し、L、a、bはそれぞれ前記画像形成材料を用いて付着量4g/mの定着画像を記録媒体表面に形成した時の画像部におけるL値、a値、およびb値を示す。)
で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示し、式(III)中、R(単位:%)は前記画像部における波長850nmの赤外線反射率を示す。]
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、請求項1に記載のペリミジン系スクアリリウム色素以外のスクアリリウム色素あるいはナフタロシアニン色素又はクロコニウム色素を用いた場合と比較して、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光度が十分に低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度が十分に高い画像形成材料が実現可能となり、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさ(すなわち赤外発色能力。以下同じ)とを両立することができるようになる。特に、請求項1に記載の発明は、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度に優れるものであり、画像形成材料に含まれる色素の量を低減しても赤外発色能力を高水準に維持することができるものであるため、その結果として不可視性をも高めることができるという優れた効果を有する。さらに、請求項1に記載の発明は、請求項1に記載のペリミジン系スクアリリウム色素以外のスクアリリウム色素あるいはナフタロシアニン色素又はクロコニウム色素を用いた場合と比較して、十分に高い耐光性を有するものであるため、不可視情報が記録された記録媒体における長期安定性を実現することができるようになる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果を容易に且つ確実に得ることができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の各発明と同様の効果が奏されると共に、ペリミジン系スクアリリウム色素の粒子のメジアン径d50が10nm未満又は300nmを超える場合と比較して、粒子表面からの散乱光を低減して赤外発色能力を一層向上させることができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3に記載の各発明と同様の効果が奏されると共に、ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が0.05重量%未満又は3重量%を超える場合と比較して、不可視性、赤外発色能力及び耐光性をより高水準で両立することができるという効果を有する。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷若しくはシルク印刷用のインクの各用途において、不可視情報を記録する際に情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとを両立することが可能となり、さらに、不可視情報が記録された記録媒体における長期信頼性を実現することが可能となる。
【0018】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5に記載の各発明と同様の効果が奏されると共に、画像形成材料の色味によらず、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとを両立することが可能となり、さらに、不可視情報が記録された記録媒体における長期信頼性を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る画像形成材料は、下記式(I)で表される構造を有し、Cuターゲットで波長が1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示すペリミジン系スクアリリウム色素(以下、「本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素」という。)を含有する。
【化2】

【0021】
上記式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素は、例えば以下の反応スキームに従って得ることができる。
【化3】

【0022】
より具体的には、触媒の存在下で、1,8−ジアミノナフタレンと、3,5−ジメチルシクロヘキサノンとを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、ペリミジン中間体(a)を得ることができる((A−1)工程)。(A−1)工程に使用する触媒としては、p−トルエンスルホン酸一水和物、ベンゼンスルホン酸一水和物、4−クロロベンゼンスルホン酸水和物、ピリジン−3−スルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。また、(A−1)工程に使用する溶媒としては、アルコール、芳香族炭化水素などが挙げられる。ペリミジン中間体(a)は高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製することができる。
【0023】
次に、ペリミジン中間体(a)と、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン(「スクアリン酸」又は「四角酸」とも呼ばれる。)とを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を得ることができる((A−2)工程)。(A−2)工程は、窒素ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0024】
(A−2)工程に使用する溶媒としては、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ペンタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類を用いることができる。アルコール類は単独で使用してもよいが、芳香族炭化水素、エーテル類、ハロゲン化炭化水素またはアミド類などの溶媒はアルコール類溶媒と混合して使用することが好ましい。好ましい溶媒としては、具体的には、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、1−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒、1−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、2−ブタノールとトルエンの混合溶媒、2−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒が挙げられる。混合溶媒を使う場合、アルコール類溶媒の濃度は、1容量%以上とすることが好ましく、5容量%以上75容量%以下とすることが特に好ましい。
【0025】
また、(A−2)工程において、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンに対するペリミジン誘導体(a)のモル比(ペリミジン誘導体(a)のモル数/3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンのモル数)は、1以上4以下であることが好ましく、1.5以上3以下であることがより好ましい。当該モル比が1未満の場合には式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素の収率が低下する傾向にあり、また、4を超えるとペリミジン誘導体(a)の利用効率が悪くなって式(I)で表される化合物の分離・精製が困難となる傾向にある。
【0026】
また、(A−2)工程においては、脱水剤を用いると反応時間が短縮し、また、式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素の収率が向上する傾向にある。脱水剤としては、ペリミジン中間体(a)及び3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンと反応しないものであれば特に制限されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エステル、モレキュラーシーブ等が好適である。
【0027】
(A−2)工程における反応温度は使用する溶媒の種類によって異なるが、反応液の温度は、60℃以上であることが好ましく、75℃以上であることが特に好ましい。例えば、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いる場合は、反応液の温度が75℃以上105℃であることが好ましい。
【0028】
また、(A−2)工程における反応時間は、溶媒の種類又は反応液の温度によって異なるが、例えば1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いて反応液の温度を90℃以上105℃以下として反応させる場合、反応時間は2時間以上4時間以下であることが好ましい。
【0029】
(A−2)工程で生成した式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素は、溶媒洗浄、高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製することができる。
【0030】
上記精製後に得られる式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素を画像形成材料の色材として用いる際には、顔料化処理を行うことが好ましいが、顔料化処理を行うと結晶系が変化しやすい。そのため、顔料化処理の方法及び処理条件は、得られるペリミジン系スクアリリウム色素粒子が、Cuターゲットで波長が1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示すように選定されることが好ましい。
【0031】
好ましい顔料化方法としては、例えば、式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液とを混合し、その混合液について顔料化処理を行う方法が挙げられる。混合液には、必要に応じて水を加えて濃度を調節してもよい。また、顔料化処理に使用する装置としては、ビーズミル加工装置が好適である。
【0032】
本実施形態に係る画像形成材料は、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素を、粒子として含有することが好ましい。当該ペリミジン系スクアリリウム色素は分子間相互作用が大きく、それらの粒子は結晶性が高いため、当該粒子を画像形成材料に含有させることによって、赤外発色能力及び耐光性をより高めることができる。
【0033】
本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の粒子は、例えば(A−2)工程後の精製物をテトラヒドロフランに溶かして、その溶液を、注射器等を用いて、氷冷した蒸留水に撹拌しながら注入して沈殿物を生成させ、その沈殿物を吸引濾過により濾取し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥することによって得ることができる。このとき、溶液中における本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の濃度、溶液の注入速度、蒸留水の量又は温度、撹拌速度等を調整することにより、得られる沈殿物の粒子径を所望の範囲内とすることができる。本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の粒子のメジアン径d50は、10nm以上300nm以下であることが好ましく、20nm以上200nm以下であることがより好ましい。メジアン径d50が10nm未満であると、粒子中の色素分子が単分子分散状態に近付き、分子間相互作用が小さくなって色素粒子の耐光性が低下する傾向にあり、また、300nmを超えると粒子表面からの散乱光が多くなり赤外発色能力が低下する傾向にある。なお、粒子化およびメヂアン径の制御のための上記処理は、処理後のペリミジン系スクアリリウム色素が、Cuターゲットで波長が1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも8.9°、17.1°、18.4°、22.6°、24.2°に回折ピークを示す限りにおいて、上記顔料化処理の前後のいずれで行ってもよい。
【0034】
本実施形態に係る画像形成材料は、後述するように本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素以外の成分を更に含有することができるが、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が、画像形成材料の全重量を基準として、0.05重量%以上3重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上2重量%以下がより好ましい。
【0035】
本実施形態に係る画像形成材料の用途は特に制限されないが、電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、あるいは、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシルク印刷用のインクなどの用途に好適である。
【0036】
本実施形態に係る画像形成材料が電子写真用トナーである場合、本実施形態に係る画像形成材料は、1成分現像剤として単独で用いても、あるいはキャリアと組み合わせた2成分現像剤として用いてもよい。キャリアとしては、公知のキャリアを用いることができる。例えば、芯材上に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。この樹脂被覆層には導電粉等が分散されていてもよい。
【0037】
また、本実施形態に係る画像形成材料が電子写真用トナーである場合、当該画像形成材料は結着樹脂を含有することができる。使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も結着樹脂として使用することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る画像形成材料が電子写真用トナーである場合、当該画像形成材料は、必要に応じて帯電制御剤、オフセット防止剤等を更に含有することができる。帯電制御剤としては正帯電用のものと負帯電用のものがあり、正帯電用には、第4級アンモニウム系化合物がある。また、負帯電用には、アルキルサリチル酸の金属錯体、極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤等が挙げられる。オフセット防止剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等が用いられる。
【0039】
また、本実施形態に係る画像形成材料が電子写真用トナーである場合、流動性、粉体保存性の向上、摩擦帯電制御、転写性能、クリーニング性能向上等のために、無機粉粒子あるいは有機粒子を外添剤としてトナー表面に添加してもよい。無機粉粒子としては、公知のもの、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム等を挙げることができる。また目的に応じて無機粉粒子に公知の表面処理を施してもよい。また、有機粒子としては、フッ化ビニリデン、メチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート等を構成成分とする乳化重合体、あるいはソープフリー重合体等を挙げることができる。
【0040】
本実施形態に係る画像形成材料がインクジェットプリンター用インクである場合、本実施形態に係る画像形成材料は、水を含有する水性インクとしての態様をとることができる。また、本実施形態に係る画像形成材料は、インクの乾燥防止及び浸透性を向上させるために、水溶性の有機溶剤を更に含有することができる。水としては、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。また、有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−アルキルピロリドン類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、メタノール、ブタノール、フェノールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等のグリコールエーテル類等が挙げられる。使用される有機溶媒は1種類でも2種類以上でもよい。有機溶媒は、吸湿性、保湿性、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の溶解度、浸透性、インクの粘度、氷点等を考慮して適宜選択される。インクジェットプリンター用インク中の有機溶媒の含有率は1重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態に係る画像形成材料がインクジェットプリンター用インクである場合、インクジェットプリンターのシステムに要求される諸条件を満たすために、本実施形態に係る画像形成材料は、インクの成分として従来知られている添加物を含有することができる。このような添加物としては、pH調製剤、比抵抗調製剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、金属封鎖剤等が挙げられる。pH調整剤としては、アルコールアミン類、アンモニウム塩類、金属水酸化物等が挙げられる。また、比抵抗調製剤としては、有機塩類、無機塩類が挙げられる。金属封鎖剤としては、キレート剤等が挙げられる。
【0042】
また、本発明の画像形成材料がインクジェットプリンター用インクである場合、噴封ノズル部の閉塞やインク吐出方向の変化等が生じない程度に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂等の水溶性樹脂を含有することもできる。
【0043】
本実施形態に係る画像形成材料が活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシルク印刷用のインクである場合、当該画像形成材料はポリマーや有機溶剤を含有する油性インクの態様をとることができる。ポリマーとしては、一般的には、蛋白質、ゴム、セルロース類、シエラック、コパル、でん粉、ロジン等等の天然樹脂;ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂;レゾール型フェノール樹脂尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。また、有機溶媒としては、上記インクジェットプリンター用インクの説明において例示された有機溶媒が挙げられる。
【0044】
また、本発明の画像形成材料が活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシルク印刷用のインクである場合、当該画像形成材料は印刷皮膜の柔軟性や強度を向上させるための可塑剤、粘度調整、乾燥性向上のための溶剤、乾燥剤、粘度調整剤、分散剤、各種反応剤等の添加剤を更に含有することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素は耐光性に優れるものであるが、上記の各用途において耐光性をより向上させるために、本実施形態に係る画像形成材料は安定化剤を更に含有することできる。安定化剤は励起状態の有機近赤外吸収色素からエネルギーを受け取る必要があり、近赤外吸収色素の吸収帯よりも長波長側に吸収帯を有することが好ましい。また、安定化剤は、一重項酸素による分解が起こり難く、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素と相溶性が高いことが好ましい。このような安定化剤としては、有機金属錯体化合物が挙げられる。好ましい安定化剤としては下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【化4】

【0046】
一般式(V)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のフェニル基を示す。R〜Rで示されるフェニル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、H、NH、OH、N(C2h+1、OC2h+1、C2h−1、C2h+1、C2hOH又はC2hOC2i+1(hは1から18の整数を示し、iは1から6の整数を示す)などが挙げられる。また、X〜Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれO、S、Seを示し、YはNi、Co、Mn、Pd、Cu、Pt等の遷移金属を示す。
【0047】
上記一般式(V)で表される化合物の中でも、下記式(VI)で表される化合物が特に好ましい。
【化5】

【0048】
安定化剤の濃度は、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の重量に対して1/10以上2倍以下程度が好ましい。
【0049】
本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素は、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光度が十分に低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光度が十分に高いものである。本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素は、耐光性に優れるものである。したがって、かかるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する本実施形態に係る画像形成材料によれば、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとを両立することができ、更には不可視情報が記録された記録媒体における長期安定性を達成することができる。
【0050】
本実施形態に係る画像形成材料は、下記式(II)及び(III)で表される条件を満たすことが好ましい。下記式(II)及び(III)で表される条件を満たすことで、画像形成材料の色味によらず、情報の不可視性と不可視情報の読み取りやすさとを両立することが可能となり、さらに、不可視情報が記録された記録媒体における長期信頼性を実現することが可能となる。
0≦ΔE≦16 (II)
(100−R)≧75 (III)
[式(II)中、ΔEは下記式(IV):
【数2】


(式(IV)中、L、a、bはそれぞれ画像形成前における記録媒体表面のL値、a値、およびb値を示し、L、a、bはそれぞれ前記画像形成材料を用いて付着量4g/mの定着画像を記録媒体表面に形成した時の画像部におけるL値、a値、およびb値を示す。)
で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示し、式(III)中、R(単位:%)は前記画像部における波長850nmの赤外線反射率を示す。]
【0051】
、a、b、L、a、bは反射分光濃度計を用いて得ることができる。本発明におけるL、a、b、L、a、bは、反射分光濃度計としてエックスライト株式会社製、x−rite939を用いて測定されたものである。
【0052】
本実施形態に係る画像形成材料を用いて記録された不可視情報は、例えば750nm以上1000nm以下のいずれかの波長で発光する半導体レーザーまたは発光ダイオードを光学読み取り用の光源として用い、近赤外光に高い分光感度を有する汎用の受光素子を使用することにより、非常に簡易にかつ高感度に読み出すことが可能である。受光素子としては、例えばシリコンによる受光素子(CCD等)が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
(ペリミジン系スクアリリウム色素の調製:二段階合成)
1,8−ジアミノナフタレン4.843g(98%,30.0mmol)、3,5−ジメチルシクロヘキサノン3.886g(98%,30.2mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物10mg(0.053mmol)とトルエン45mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、5時間還流させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体はアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製し、乾燥してから、茶色固体7.48g(収率93.6%)を得た。得られた茶色固体のH−NMRスペクトル(CDCl)による分析結果を以下に示す。
H−NMRスペクトル(CDCl): δ=7.25、7.23、7.22、7.20、7.17、7.15(m,4H,Harom);6.54(d×d,J=23.05Hz,J=7.19Hz,2H,Harom);4.62(br s,2H,2×NH);2.11(d,J=12.68Hz,2H,CH);1.75、1.71、1.70、1.69、1.67、1.66(m,3H,2×CH、CH2);1.03(t,J=12.68Hz,2H,CH);0.89(d,J=6.34Hz,6H,2×CH);0.63(d,J=11.71Hz,1H,CH
【0055】
上記の茶色固体4.69g(17.6mmol)、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン913mg(8.0mmol)、n−ブタノール40mlとトルエン60mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、3時間還流反応させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、大部分の溶媒を窒素ガスの雰囲気中に蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、120mlのヘキサンを加えた。できた黒茶色沈殿物を吸引濾過し、ヘキサンで洗浄し、乾燥後黒青色固体を得た。この固体を順次にエタノール、アセトン、60%エタノール水溶液、エタノールおよびアセトンで洗浄し、目的の化合物(黒青色固体)4.30g(収率88%)を得た。
【0056】
得られた色素化合物を、赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)、H−NMR(DMSO‐d6)、FD−MS、元素分析、可視近赤外吸収スペクトルなどの分光法により同定した。同定データを以下に示す。可視近赤外吸収スペクトルを図1に示す。同定の結果、得られた化合物が上記式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素であることが確認できた。
赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法):
νmax=3487、3429、3336(NH),3053(=C−H),2947(CH),2914、2902(CH),2864(CH),2360,1618、1599、1558、1541(C=C ring),1450、1421、1363(CH、CH),1315、1223、1201(C−N),1163、1119(C−O),941,924,822,783,715cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d):
δ=10.52(m,2H,NH);7.80、7.78(d,2H,Harom);7.35、7.33(m,2H,Harom);7.25(m,2H,NH);6.82、6.80、6.78(m,4H,Harom);6.74、6.72、6.52、6.50(m,2H,Harom);2.17(m,5H,CH);1.91(m,3H,CH);1.71(m,2H,CH、CH2);1.15、1.12(m,4H,CH);0.92、0.91(m,12H,4×CH);0.66(m,2H,CH
マススペクトル(FD):
m/z=610(M,100%),611(M+1,47.5%)
元素分析:
C:78.6%(実測値)、78.66%(計算値)
H:6.96%(実測値)、6.93%(計算値)
N:9.02%(実測値)、9.17%(計算値)
O:5.42%(実測値)、5.24%(計算値)
可視近赤外吸収スペクトル(図1):
λmax=809nm(テトラヒドロフラン溶液中)
εmax=1.68×10−1cm−1(テトラヒドロフラン溶液中)
【0057】
(顔料化処理)
次に、得られたペリミジン系スクアリリウム色素51gと、12%ドデシルベンゼンスルホンサンナトリウム水溶液25gと、水425gをビーズミル加工装置(アシザワファインテック製・ミニサー)に投入し、0.1mmφビーズ485g、周速12m/sで3時間の運転を行った。回収したベリミジン系スクアリリウム色素(以下、「ISQ−10(A)粒子」という。)の粒度分布を測定したところ、メジアン径は65.9nmであった。
【0058】
[比較例1]
実施例1における顔料化処理前のペリミジン系スクアリリウム色素粒子(以下、「原料」という。)50mgとテトラヒドロフラン(THF)1mL、直径1mmのジルコニアビーズ10gをボールミル用容器に入れ、1時間ミリング処理を行った。ボールミル用容器に水を加え、50nmフィルターでろ過して、ペリミジン系スクアリリウム色素粒子(以下、「粒子(B)」という。)を回収した。
【0059】
(粉末X線回折の測定)
実施例1における顔料化処理前のペリミジン系スクアリリウム色素粒子(以下、「原料」という)、ISQ−10(A)粒子、およびISQ−10(B)粒子について、X線回折装置(「D8 DISCOVER」、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用い、Cuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射による粉末X線回折の測定を行った。得られた粉末X線回折スペクトルを図1及び図2に示す。図1から、ISQ−10(A)粒子は、ブラッグ角(2θ±2°)で、強度が大きい順に22.1°、23.2°、19.9°、24.9°、17.7°に回折ピークを示し、原料と同じ結晶系であることがわかる。一方、図2から、ISQ−10(B)粒子は、ブラッグ角(2θ±2°)で、強度が大きい順に22.6°、24.2°、8.9°、17.1°、18.4°に回折ピークを示し、原料及びISQ−10(A)粒子とは結晶系が異なることがわかる。
【0060】
(可使近赤外吸収スペクトルの測定)
ISQ−10(A)粒子またはISQ−10(B)粒子9.2mgを、12%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液46μl及び蒸留水5.52mlと共に超音波分散し、スラリーを調製した( 超音波出力:4−5W、1/4インチホーン使用、照射時間30分)。スラリー中の試料濃度は、0.165wt%であった。得られたスラリーの可視近赤外吸収スペクトルを図3に示す。図3に示したように、ISQ−10(A)粒子のスラリーのスペクトルにおいては、ISQ−10(B)粒子のスラリーのスペクトルとは異なる吸収パターンが得られた。
【0061】
以上の結果から、ISQ−10(A)粒子については、ドデシルベンゼンスルホンサンナトリウム水溶液及び水と混合してビーズミル加工を行ったことによって、結晶系変化が起こらず、原料と同じ晶系で粉砕することができ、その結果、スラリースペクトルにおいて発色性を向上できたと考えられる。
【0062】
(ペンの赤外線出力スペクトルの測定)
まず、ペンの赤外線出力スペクトル(ペンのLEDの発光スペクトル)を図4に示す。
【0063】
(読み取り性の評価)
ISQ−10(A)粒子及びISQ−10(B)粒子を用いてトナーを調製した。具体的には、上記で得られた結晶A、結晶Bを含んでなる色材をトナーの構成材料として用いた場合を想定して、以下の手順で評価用サンプルを作製し、その反射スペクトルを測定した。
まず、上記で得られた結晶A、結晶Bを含むスラリーと、樹脂を分散させた水溶液との混合液を、ウルトラタックス(イカジャパン社製)で分散化処理し、混合スラリーとした。この混合スラリーに、硫酸アルミニウム凝集剤を更に添加して、攪拌・混合することにより擬似トナー分散液を調製した。
上記で得られた擬似トナー分散液を、フィルター紙(商品名「GSWP04700」、MILLIPORE社製、孔径:220nm)上にろ過堆積させ、空気中で乾燥した後、これを120℃で熱圧着することによりフィルター紙上に樹脂膜を形成し、評価用サンプルを得た。このサンプルは、色材及び結着樹脂からなるトナーを隙間なく印刷した状態に相当する。なお、評価用サンプルは、混合分散液に含まれる色材及び樹脂の配合量を調節することにより、色材及び樹脂の合計量(固形分質量)が1平方メートル当たりのグラム数(TMA)で4.0g/mとなるように固定し、このときの単位面積当たりの色材量(PMA)が0.04g/m(色材の、含有割合1質量%に相当)となる樹脂膜を有するものをそれぞれ作成した。次に、得られたトナーの吸収率(1−反射率)およびPENデバイス発光スペクトルの出力感度に基づき読み取り性を評価した。図5は、波数と、PENデバイス発光スペクトルの出力感度とトナーの吸収率(1−反射率)との積との関係を示すグラフである。図5に示すグラフの積分値は、トナーのPEN読み取り性能の指標であり、積分値が大きい方が、PENデバイスで認識しやすい。図5から、ISQ−10(A)粒子を用いたトナーの方が、Bよりも読み取り性が高いことがわかる。
【0064】
(耐用年数グラフ)
ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子を用いたトナーについて、蛍光灯照射加速実験を行い、オフィス環境での時間換算をし、XEPHY用PENデバイスの耐用年数としてシミュレートした。図6は、光照射時間と、PEN読み取り感度との関係を示すグラフであり、トナープリントの退色性を示している。なお、図6には、PEN読み取り感度の上限値及びPEN認識不可となる感度を併せて示した。図6から、ISQ−10(A)粒子の方が、ISQ−10(B)粒子よりも耐用年数が高くなることがわかる。
【0065】
(測色評価)
ISQ−10(A)粒子又はISQ−10(B)粒子のスラリー(試料濃度0.165wt%)40.4μL、40wt%ラテックス(ポリスチレンアクリル酸n−ブチル)液15μLおよび蒸留水5gの混合液をウルトラタラックスで分散化処理して、混合スラリーとした。得られた混合スラリーにPAC凝集剤を加えて擬似トナー分散液とし、220nmフィルターでろ過、空気乾燥、熱圧着(120℃ モード1)して、TMA=4.5g/m、単位面積当たりの顔料量PMA=0.045g/m(1wt.%に相当)の評価用ラテックスパッチを作製した。得られた塗布紙をサンプルとして、反射分光濃度計(エックスライト株式会社製、x−rite939)を用いて測定を行い、式(II)中のΔEおよび式(III)中のRを求めた。塗布紙サンプルの評価結果を表1に示す。なお、表1中の「読み取り性」および「不可視性」の評価基準は以下の通りである(以下、同様である。)。
(読み取り性)
A:850nmの初期反射率R(%)≦22
B:22<850nmの初期反射率R(%)≦30
C:850nmの初期反射率R(%)>30
(不可視性)
A:0≦ΔE≦7
B:7<ΔE≦16
C:ΔE>16。
【0066】
[比較例2]
従来のバナジルナフタロシアニン色素(以下、「VONPc」という。)について、ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子の場合と同様に測色評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0067】
[比較例3]
下記式(VII)で表される色素化合物について、以下の方法により微粒子化処理を行った。
【化6】


(再沈法)
上記式(VII)で表される色素化合物40mgをTHF30mLに溶かし、その溶液をマイクロシリンジを用いて氷冷した蒸留水2000mLに一気に注入し、再沈を行った。数分後、混合液を室温に戻して沈殿物を50nmフィルターで濾過し、蒸留水で洗浄、真空乾燥し、再沈した色素化合物(以下、「ISQ−3(A)」という。)を回収した。ISQ−3(A)の粒径は、メジアン径d50が約90nmであった。ISQ−3(A)について、ISQ−10(A)粒子と同様にCuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射による粉末X線回折を測定したところ、スペクトルにおいて結晶由来の回折ピークはほとんど認められず、再沈法で得られたISQ−3(A)は非結晶であることがわかった。
【0068】
[比較例4]
(再沈法+ミル法)
比較例2において、再沈法で得られたISQ−3(A)40mgとヘキサン5mL、直径1mmのめのうビーズ10gをボールミル用容器に入れ、8時間ミリング処理を行った。ボールミル用容器に水を加え、50nmフィルターでろ過して、微粒子化した色素化合物(以下、「ISQ−3(B)粒子」という。)を回収した。ISQ−3(B)粒子の粒径は、メジアン径d50が約90nmであった。ISQ−3(B)粒子について、実施例2と同様にCuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射により測定された粉末X線回折スペクトルを図8に示す。この粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも11.9°,13.1°,15.4°,19.0°,20.4°,23.0°,23.9°,24.6°,26.4°に回折ピークを示す。この結果から、得られたISQ−3(B)が高い結晶性を有することがわかった。
【0069】
比較例2におけるISQ−3(A)および比較例3におけるISQ−3(B)について、ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子の場合と同様に測色評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ISQ−10(A)粒子および原料の粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図2】ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子の粉末X線回折スペクトルを示すグラフである。
【図3】ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子を用いて得られたスラリーの可視近赤外吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】ISQ−10(A)粒子に関する、ペンの赤外線出力スペクトルを示すグラフである。
【図5】ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子に関する、波数と、PENデバイス発光スペクトルの出力感度とトナーの吸収率(1−反射率)との積との関係を示すグラフである。
【図6】ISQ−10(A)粒子およびISQ−10(B)粒子を用いたトナーについての蛍光灯照射加速実験から得られた、光照射時間と、PEN読み取り感度との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される構造を有し、Cuターゲットで波長が1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示すペリミジン系スクアリリウム色素を含有することを特徴とする画像形成材料。
【化1】

【請求項2】
前記ペリミジン系スクアリリウム色素が、前記式(I)で表される構造を有するペリミジン系スクアリリウム色素と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液とを混合し、その混合液について顔料化処理する工程を経て得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成材料。
【請求項3】
前記ペリミジン系スクアリリウム色素が、メジアン径d50が10nm〜300nmの結晶性粒子であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成材料。
【請求項4】
前記ペリミジン系スクアリリウム色素の含有量が0.05〜3重量%であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成材料。
【請求項5】
電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、又は活版、オフセット、フレキソ、グラビア若しくはシルク印刷用のインクであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成材料。
【請求項6】
下記式(II)及び(III)で表される条件を満たすことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成材料。
0≦ΔE≦16 (II)
(100−R)≧75 (III)
[式(II)中、ΔEは下記式(IV):
【数1】


(式(IV)中、L、a、bはそれぞれ画像形成前における記録媒体表面のL値、a値、およびb値を示し、L、a、bはそれぞれ前記画像形成材料を用いて付着量4g/mの定着画像を記録媒体表面に形成した時の画像部におけるL値、a値、およびb値を示す。)
で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示し、式(III)中、R(単位:%)は前記画像部における波長850nmの赤外線反射率を示す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−90340(P2010−90340A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264157(P2008−264157)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】