説明

画像形成装置、その制御方法、および制御プログラム

【課題】経年変化があっても的確に色ずれ補正を行うことができるようにする。
【解決手段】色ずれ補正の際、転写ベルトに補正用パターンを形成する。この補正用パターンは黒色パターンが黄色パターンの下地パターンの上に存在する。パターン検知センサが転写ベルトの表面および補正用パターンで乱反射した乱反射光を受光して乱反射光の光量に応じた出力レベルを有する受光検知信号を出力する。CPU109は受光検知信号の出力レベルに応じて各色の像の重ね合わせタイミングを補正して色ずれ補正を行う。さらに、CPUは受光検知信号によって黒色パターンが検出できたか否かを判定して、黒色パターンが検出できないと、補正用パターンを形成する際、下地パターンの転写ベルトの搬送方向における幅を拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、その制御方法、および制御プログラムに関し、特に、色ずれ補正用パターンによって色ずれ補正を行う画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、所謂タンデム方式を用いた複写機、プリンタ、又はファクシミリなどのカラー画像形成装置においては、色ずれを補正する際には色ずれ補正用パターンが用いられている。色ずれ補正を行う際には、各色の画像形成部によって色ずれ補正用パターンであるトナー像を中間転写ベルトなどの中間転写体に形成する。そして、この色ずれ補正用パターン(以下単に補正用パターンと呼ぶ)の検出に応じて色ずれ量を算出して色ずれ補正を行う。
【0003】
ところで、補正用パターンを検知する際には、中間転写体の近傍に配置した光学センサなどを用いて検知する手法が用いられている。この検知手法では、光学センサの発光部(発光素子)から光を中間転写体に照射して、中間転写体の表面および補正用パターンからの反射光を受光部であるフォトセンサ(パターン検知センサという)などで受光する。そして、中間転写体からの反射光量と補正用パターンからの反射光量との相違に応じて補正用パターンを認識するようにしている。
【0004】
なお、反射光を検知する際の手法として、正反射光検知方式および乱反射(拡散反射ともいう)光検知方式がある。
【0005】
正反射光検知方式では、中間転写体および補正用パターンからの反射光のうち正反射成分が入射する位置に受光部を配置して、中間転写体および補正用パターンからの正反射光量の差から補正用パターンを検知する。
【0006】
一方、乱反射光検知方式では、中間転写体および補正パターンで反射した反射光のうち乱反射成分が入射する位置にパターン検知センサ(つまり、受光部)を配置する。そして、乱反射光量の差から補正用パターンを検知する。中間転写体表面からの乱反射成分は少ないので、パターン検知センサからの出力レベルは低い。そして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、およびシアン(C)の補正用パターンからの乱反射成分は多いので、パターン検知センサからの出力レベルは高い。 この場合、中間転写体表面の反射率が低下しても、中間転写体からの反射光においては乱反射成分が少ないために反射率低下の影響を受けにくい。よって、乱反射光検知方式では長い間安定して補正用パターンを検知することができる。
【0007】
ところが、ブラック(K)などのように反射率の低い補正用パターン(低明度色パターン)では乱反射成分が少ないため、パターン検知センサからの出力レベルが低い。このため、中間転写体の表面とKのパターンとの見分けが困難となってKのパターンを検知することが難しいことがある。
【0008】
このため、Kのパターンを検知する際、中間転写体に反射率の高いカラートナー像を下地パターン(高明度色パターン)として形成して、当該下地パターン上にKのパターンを重ねたパターンを形成するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
図11は、従来の画像形成装置で用いられる色ずれ補正用パターンの一例を示す図である。
【0010】
図11に示すように、Kのパターンを検知できるようにするために、中間転写ベルト(図示せず)に下地パターン(図示の例ではYパターン)915が形成され、この下地パターン915上の一部にKパターン906が形成される。反射率が高いCおよびMについてはCパターン904およびMパターン905のように下地パターンを使用しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−156159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、画像形成装置を設置する場所などの環境の変化、トナーの劣化、および耐久に起因する現像器の機械的な劣化などによって(つまり、経年変化又は経年劣化によって)、下地パターンからKパターンが大きくずれることがある。そして、このようなずれが生じるとKパターンを検出することができず、結果的に色ずれ補正を的確に行うことができなくなってしまう。
【0013】
従って、本発明の目的は、経年変化があっても的確に色ずれ補正を行うことのできる画像形成装置、その制御方法、および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するため、本発明による画像形成装置は、各色の像を所定の方向に搬送される像担持体に重ね合わせて前記像担持体にカラー画像を形成する画像形成装置において、明度が低い色の低明度色パターンが、当該低明度色パターンよりも明度の高い色パターンである下地パターンの上に存在する補正用パターンを前記像担持体に形成するパターン形成手段と、前記像担持体の表面および前記補正用パターンに光を照射する発光部および該発光部によって照射された光に基づく前記像担持体の表面および前記補正用パターンの乱反射光を検出する受光部を備える検出手段と、前記検出手段による検出の結果に応じて各色の像の重ね合わせタイミングを補正して色ずれ補正を行う補正手段と、前記検出手段による検出結果に基づいて前記低明度色パターンが検出できたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記低明度色パターンが検出できないと判定されると、前記下地パターンの前記所定の方向における幅を拡大した前記補正用パターンを前記パターン形成手段に形成させる制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、色ずれ補正を行う際に、経年変化又は経年劣化などに起因して下地パターン上の低明度色パターンがずれて低明度色パターンが検出できないと、下地パターンの幅を拡大するようにしたので、確実に低明度色パターンを検出することができる。その結果、的確に色ずれ補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態による画像形成装置の一例についてその構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す画像形成装置において中間転写ベルトに形成される色ずれ補正用パターンの一例を説明するための図である。
【図3】図1に示すパターン検知センサにおいて発光部および乱反射光受光部の光学的な関係を示す図である。
【図4】図1に示す制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図1に示す中間転写ベルトに形成された補正用パターンの一例を検知した際の信号波形を説明するための図である。
【図6】図4に示す制御部で求められた色ずれ量と書き出しタイミングとの関係を説明するための図である。
【図7】図1に示す画像形成装置における画像形成を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示す色ずれ補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図1に示す画像形成装置で用いられる色ずれ補正用パターンの一例を説明するための図である。
【図10】図4に示すCPUが画像形成部に与える信号のタイミングを説明するためのタイムチャートである。
【図11】従来の画像形成装置で用いられる色ずれ補正用パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態による画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。ただし、この実施の形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
図1は、本実施の形態による画像形成装置の一例についてその構成を概略的に示す図である。
【0019】
図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型のカラー画像形成装置であり、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびブラック(K)の画像形成部101a〜101dを有している。画像形成部101aにおいて、露光装置15aは画像データに応じて感光体ドラム1aを露光して、静電潜像を形成する。そして、この静電潜像は現像器16aによって現像されてYトナー像となる。同様に、画像形成部101b〜101dにおいて、露光装置15b、15c、および15dは画像データに応じて感光体ドラム1b、1c、および1dを露光して、静電潜像を形成する。そして、これら静電潜像はそれぞれ現像器16b、16c、および16dによって現像されてCトナー像、Mトナー像、およびKトナー像となる。
【0020】
図示はしないが、露光装置15a〜15dの各々は、レーザー、制御用ドライバ、およびポリゴンミラーを備えている。さらに、露光装置15a〜15dの各々はポリゴンミラーの駆動用モーターを備えるとともに、レーザー光をポリゴンミラーを介して感光体ドラムに導くための各種光学ミラーを備えている。
【0021】
感光体ドラム1a〜1dに形成されたトナー像は1次転写ローラ(図示せず)によって順次中間転写体である中間転写ベルト5に転写されて重ね合わされる。これによって、中間転写ベルト5上にカラートナー像6が形成される。
【0022】
中間転写ベルト5は、駆動ローラ2a、従動ローラ2、およびテンションローラ(ベルト支持ローラ)3に張架され、駆動ローラ2aの駆動によって、実線矢印で示す方向に回転駆動される。中間転写ベルト5を挟んでテンションローラ3と転写ローラ(2次転写ローラ)4は対向して配置されている。
【0023】
用紙は搬送ローラ10によって搬送路11を搬送される。搬送されている用紙の先端がレジストセンサ8によって検知されると、レジストローラ13によって用紙が一旦保持される。そして、中間転写ベルト5の回転駆動と同期をとってレジストローラ13によって用紙がテンションローラ3と2次転写ローラ4とのニップ部で規定される2次転写位置に搬送される。
【0024】
2次転写位置において、中間転写ベルト5上のカラートナー像は用紙に転写され、トナー像が転写された用紙は搬送ベルト12によって定着部(図示せず)に搬送される。そして、定着部においてトナー像は用紙上に定着され、トナー像が定着された用紙は排紙トレイなどに排紙される。
【0025】
光学センサ(パターン検知センサ)7は中間転写ベルト5に対向して配置されている。
【0026】
なお、図示はしないが、中間転写ベルト5に残留する残トナーはベルトクリーナーによって回収され、感光体ドラム1a〜1bに残留する各色のトナーは、ドラムクリーナーによって回収される。
【0027】
図示の制御部19は、画像形成部101a〜101dを制御して画像形成を実行するとともに、後述する色ずれ補正の際に、光学センサ(パターン検知センサ)7から出力される受光検知信号に応じて色ずれ量を算出する。そして、制御部19は色ずれ量に基づいて、後述するように色ずれが低減するように画像形成部101a〜101dを制御する。
【0028】
ところで、タンデム型のカラー画像形成装置においては、感光体ドラム1a〜1dおよび露光装置15a〜15dの取り付け誤差、そして、露光装置15a〜15dにおける光学ミラーなどの温度変動による変形などに起因して不可避的に色ずれが発生する。そのため、待機中又は画像形成の合間において色ずれ補正を行う必要がある。
【0029】
図2は、中間転写ベルト5に形成される色ずれ補正用パターン(以下単に補正用パターンと呼ぶ)の一例を説明するための図である。
【0030】
図2に示すように、色ずれ補正を行う際には、まず中間転写ベルト5の搬送方向に交差する方向において少なくとも2ヶ所に補正用パターン990aおよび990bを形成する。補正用パターン990aおよび990bの形成に当たって、制御部19は画像形成部101a〜101dを制御して、パターン検知センサ7によって読み取り可能な位置に補正用パターン990aおよび990bを形成する。なお、補正用パターン990aおよび990bは同一のパターンである。
【0031】
パターン検知センサ7は、補正用パターン990aおよび990bのぞれぞれに対応して備えられている。つまり、2つのパターン検知センサ7が備えられている。これらパターン検知センサ7は中間転写ベルト5の近傍に配置され、中間転写ベルト5に形成された補正用パターン990aおよび990bを読み取る。
【0032】
補正用パターン990aおよび990bの各々は、Y、C、およびKパターンを基準色(基準パターン)であるMパターンで挟むようにして形成され、各色のパターンはベルト搬送方向に直交する方向に対してそれぞれ略45度傾斜した2つのパターンを有している。なお、Y、C、M、およびKパターンの各パターンは色パターンと呼ばれる。
【0033】
図示のように、MパターンにYパターンが続き、その後にMパターン続いている。さらに、このMパターンに続いてCパターン、Mパターン、Kパターンの順にパターンが形成される。
【0034】
Y、C、およびMパターンは中間転写ベルト5上に直接形成されるが、Kパターン(つまり、低明度色パターン)は中間転写ベルト5上に形成した下地パターン上の一部分に形成される。図示の例では、下地パターンとして、Kパターンよりも明度が高い高明度色パターンであるYパターンが用いられている。
【0035】
パターン検知センサ7で補正用パターン990aおよび990bを読み取ると、各色のパターンの間隔からMパターンを基準とするY、M、およびKパターンの主走査方向および副走査方向の色ずれ量を把握することができる。主走査および副走査方向における色ずれ量の算出については後述する。
【0036】
制御部19は、算出した色ずれ量に応じて当該色ずれをなくすように画像形成部101a、101b、および101dを制御する。図3は、図1に示すパターン検知センサ7において発光部208および乱反射光受光部202の光学的な関係を示す図である。
【0037】
図3において、パターン検知センサ7(検出手段)は発光部208および乱反射光受光部202を有している。発光部208から光が中間転写ベルト5および中間転写ベルト5に形成した補正用パターンに照射される。そして、中間転写ベルト5の表面および補正用パターンの反射光のうち乱反射光(拡散反射光ともいう)が乱反射光受光部202で受光される。
【0038】
つまり、発光部208および乱反射光受光部202は、乱反射光受光部202で乱反射光が受光できる位置に配置されている。乱反射光受光部202は、受光した光(乱反射光)の光量に応じた電圧値(出力レベル)のアナログ信号(受光検知信号)301を出力する。
【0039】
図4は、図1に示す制御部19の構成を説明するためのブロック図である。
【0040】
図4において、制御部19はCPU109を有しており、CPU109は図1に示す画像形成装置の制御を司る。なお、CPU109はROM110に格納されたプログラム(制御プログラム)に基づいて制御を実行する。
【0041】
CPU109は画像形成部101a〜101dを制御して、通常の画像形成を行うとともに、色ずれ補正を行う際、前述の補正用パターン990aおよび990bを中間転写ベルト5に形成する。ここでは、前述のように、基準色であるMパターンに対するY、C、およびKパターンの主走査方向および副走査方向のずれ量を検出する。このため、中間転写ベルト5の搬送方向に対して、図2において手前側に補正用パターン990aを形成し、奥側に補正用パターン990bを形成する。
【0042】
パターン検知センサ7は2つ備えられており、ここではパターン検知センサ7aおよび7bとする。そして、パターン検知センサ7aおよび7bはそれぞれ補正用パターン990aおよび990bに対応する。CPU109は、パターン検知センサ7aおよび7aにおいて発光部208の発光制御を行う。
【0043】
中間転写ベルト5の表面および補正用パターン990aに照射された光の乱反射光は、パターン検知センサ7aの乱反射光受光部202に入射する。乱反射光受光部202は入射光(乱反射光)の受光量に応じた電圧値のアナログ信号(受光検知信号)を出力する。
【0044】
この受光検知信号はコンパレータ204aに与えられ、コンパレータ204aは予め規定されたスレッシュレベル(閾値レベル)921と受光検知信号の出力レベルとを比較する。そして、コンパレータ204aはその差分を第1のデジタル信号としてCPU109に与える。
【0045】
同様にして、中間転写ベルト5の表面および補正用パターン990bに照射された光の反射光は、パターン検知センサ7bの乱反射光受光部202に入射する。乱反射光受光部202は入射光の受光量に応じた電圧値の受光検知信号を出力する。この受光検知信号はコンパレータ204bに与えられ、コンパレータ204bは予め規定されたスレッシュレベル(閾値レベル)921と受光検知信号の出力レベルとを比較する。そして、コンパレータ204bはその差分を第2のデジタル信号としてCPU109に与える。
【0046】
なお、図4に示すように、パターン検知センサ7aおよび7bから出力された受光検知信号はCPU109に与えられる。これらの受光検知信号はCPU109に備えられたA/D変換器(図示せず)でデジタル化される。以下、パターン検知センサ7aおよび7bから出力された受光検知信号をデジタル化した信号をそれぞれ第1および第2のデジタル検知信号と呼ぶ。
【0047】
図5は、図1に示す中間転写ベルト5に形成された補正用パターンの一例を検知した際の信号波形を説明するための図である。なお、前述のように、補正パターンは2つ形成されるが、ここでは説明の便宜上1つのみが示されており、図示の補正パターンに対応するパターン検知センサ7aからの受光検知信号を受けた場合について説明する。パターン検知センサ7bからの受光検知信号を受けた際の動作も同様である。
【0048】
図4および図5を参照して、コンパレータ204aは、前述のように、受光検知信号の出力レベルとスレッシュレベルとを比較して第1のデジタル信号を出力する。なお、スレッシュレベルはY、M、およびCパターンに対応する出力レベルよりも低く、中間転写ベルト5の表面およびKパターンに対応する出力レベルよりも高く設定されている。
【0049】
CPU109は第1のデジタル信号を受けて、色毎の時間間隔を計測する。CPU109には補正パターンにおける各色バターンの順および間隔(つまり、配列)を示すパターンデータが予め設定されているものとする。ここでは、図5の第1のデジタル信号で示すように、CPU109は時間間隔Y1、Y2、M1、M2、K1、K2、Y3、Y4・・・を測定して、時間間隔データとしてRAM119に格納する。なお、Mパターンが基準色となっているので、Mと他の色との時間間隔が計測される。
【0050】
CPU109は、時間間隔データ(検出結果)に応じてMパターンに対する他の色パターンの色ずれ量を求める。例えば、Mパターンに対するYパターンの色ずれは次の式(1)および式(2)で求められる。
【0051】
主走査方向ずれ量ΔHy={(Y4‐Y3)/2‐(Y2‐Y1)/2}/2 (1)
副走査方向ずれ量ΔVy={(Y4‐Y3)/2+(Y2‐Y1)/2}/2 (2)
図6は、図4に示す制御部19で求められた色ずれ量と書き出しタイミングとの関係を説明するための図である。
【0052】
いま、Y、M、C、およびKについて幅1画素、縦1画素の線分を引くとする。この場合に、色ずれがなければY、M、C、およびKは重なる。一方、色ずれがある場合には、前述のように、CPU109は主走査方向ずれ量ΔHyおよび副走査方向ずれ量ΔVyなどを求めることになる。これらずれ量ΔHyおよびΔVyによる色ずれは画像にあらわれる。
【0053】
CPU109は主走査方向ずれ量に応じて画像クロック単位又は画像クロックを1/16分割した単位で露光タイミングを制御して、主走査方向における色ずれを補正する。さらに、CPU109は副走査方向ずれ量に応じてBD周期単位又はBD周期を1/16分割した単位で露光タイミングを制御して、副走査方向における色ずれを補正する。
【0054】
このようにして、CPU109は、主走査方向ずれ量ΔHyおよび副走査方向ずれ量ΔVyに応じて、画像形成部101aを制御してその画像書き出しタイミングを調整して色ずれを補正する。同様にして、CPU109はCおよびKについても画像形成部101bおよび101dを色ずれ補正量に応じて制御して色ずれの補正を行う。
【0055】
さらに、前述のように、CPU109は、受光検知信号をデジタル化した第1のデジタル検知信号に応じて中間転写ベルト5の表面状態(グロス)を検知する。パターン検知センサ7aでは、グロスが高い(表面状態が粗い)と、乱反射光受光部202で受光する乱反射光が少なくなって、乱反射光受光部202から出力される受光検知信号の出力レベルが低くなる。一方、グロスが低いと受光する乱反射光が多くなるので、受光検知信号の出力レベルは高くなる。
【0056】
図7は図1に示す画像形成装置における画像形成を説明するためのフローチャートである。
【0057】
いま、画像形成装置はスタンバイ状態にあるものとする。CPU109はユーザからプリントジョブ(JOB)の指示(投入)を受けたか否かを判定する(ステップS601)。プリントジョブが投入されるまで(ステップS601において、NO)、判定を繰り返す。
【0058】
一方、プリントジョブが投入されると(ステップS601において、YES)、画像形成装置はプリント動作を開始し(ステップS602)、画像形成装置はプリントの出力を行う(ステップS603)。CPU109はプリント枚数をカウントしており、そのカウント値が所定値以上となったか否かを判定する(ステップS604)。
【0059】
プリント枚数が所定値以上となると(ステップS604において、YES)、CPU109は色ずれ補正処理を実行させる(ステップS605)。そして、色ずれ補正が終了すると、CPU109はプリントジョブが終了したか否かを判定する(ステップS606)。プリントジョブが終了していなければ(ステップS606において、NO)、CPU109はステップS603のプリント処理を実行する。一方、プリントジョブが終了していると(ステップS606において、YES)、CPU109は次のプリントジョブが存在しないか否かを判定する(ステップS607)。
【0060】
次のプリントジョブが存在しないと(ステップS607において、YES)、画像形成装置はプリント動作を終了して、スタンバイ状態に戻る。次のプリントジョブが存在すると(ステップS607において、NO)、ステップS602の処理に戻る。なお、プリント枚数が所定の値未満であると(ステップS604において、NO)、CPU109はステップS606の処理に移行する。
【0061】
図8は、図7に示す色ずれ補正処理を説明するためのフローチャートである。
【0062】
図7に示すステップS605において、色ずれ補正処理が開始されると、CPU109はプリントジョブを一時中断して、前述のように、画像形成部101a〜101dを制御して補正用パターンを中間転写ベルト5に形成させる(ステップS622)。続いて、パターン検知センサ7aおよび7bは補正用パターンを検出する(ステップS623)。そして、CPU109は受光検知信号に応じて基準色であるMパターンに対するY、C、およびKパターンのずれ量を算出する(ステップS624)。
【0063】
続いて、CPU109はKパターンのずれ量を算出できたか否かを判定する。つまり、CPU109はKパターンを検知することができたか否かを判定する(ステップS628)。Kパターンを検知することができたと判定された場合(ステップS628において、YES)、CPU109は算出したずれ量をメモリ(例えば、図4に示すRAM119)に保存した後、ずれ量に基づいて画像形成部101a、101b、および101d(つまり、Y、C、およびK)における画像形成タイミングを補正する(ステップS629)。そして、CPU109は図7に示すステップS606の処理に進む。
【0064】
Kパターンを検知するこができないと判定された場合(ステップS628において、NO)、CPU109は再度Kパターンの検知を行う(ステップS625)。この際、CPU109はKパターンの下地パターン(ここでは、Yパターン)の幅(搬送方向の長さ)を所定の幅だけ大きくする。つまり、CPU109は下地パターンの幅を前回の幅よりも所定の幅だけ大きくする(ステップS626:幅拡大設定)。
【0065】
下地パターンの幅を拡大設定した後、CPU109は画像形成部101a〜101dを制御して、中間転写ベルト5上の補正用パターンを形成する(ステップS627)。この補正用パターンでは下地パターンの幅は前回よりも所定の幅拡大されている。そして、CPU109はステップS623の処理に移行する。
【0066】
そして、再びステップS628においてKパターンが検出できないと、CPU109はステップS626でさらに下地パターンの幅を所定の幅だけ拡大する。このように、Kパターンが検出できるまで、CPU109は下地パターンの幅を所定の幅ずつ拡大することになる。
【0067】
ところで、画像形成装置の経年劣化などに起因して画像形成部101a〜101dによる補正用パターン形成の際、Kパターンが下地パターンの中心からずれる。つまり、図11に示すように、Kパターン906が下地パターン(Yパターン915)の中央に対してずれて搬送方向前側に形成されると、Kパターン906の前側に位置する下地パターン部分915aの面積が極めて小さくなる。
【0068】
このため、パターン検知センサ7で補正用パターンを検知した際、下地パターン部分915aを検知した結果である受光検知信号(アナログ信号)の出力レベルがスレッシュレベル以下となってしまうことがある。このため、CPU109は下地パターン部分915aを認識(識別)することができず、この結果、CPU109はKパターン906も認識(識別)することができない。
【0069】
図9は、図1に示す画像形成装置で用いられる色ずれ補正用パターンの一例を説明するための図である。
【0070】
図8で説明したように、Kパターン906が検出できないと、CPU109は下地パターン(Yパターン915)の幅を拡大して、再度Kパターン906の検知をリトライする。このため、画像形成装置の経年劣化などに起因して画像形成部101a〜101dによる補正用パターン形成の際、Kパターン906が下地パターン(Yパターン915)の中心からずれて搬送方向前側に形成されても、下地パターンの幅を拡大しているから、Kパターンの前側に位置する下地パターン部分915aの面積は検知に十分な大きさとなる。
【0071】
この結果、パターン検知センサ7で補正用パターンを検知した際、下地パターン部分915aを検知した結果である受光検知信号の出力レベルがスレッシュレベルを超えるから、CPU109は下地パターン部分915aを認識して、Kパターン906も認識することができる。
【0072】
ここで、CPU109が画像形成部101a〜101dに与える信号のタイミングについて説明する。
【0073】
図10は、図4に示すCPU109が画像形成部101a〜101dに与える信号のタイミングを説明するためのタイムチャートである。
【0074】
ユーザが操作部(図示せず)からコピースタートを入力すると、CPU109は画像形成部101a〜101dに与えるコピースタート信号をオンとする。続いて、CPU109はY画像書き出し信号、M画像書き出し信号、C画像書き出し信号、およびK画像書き出し信号を順次オンとして、画像形成部101a〜101dにそれぞれY画像データ信号、M画像データ信号、C画像データ信号、およびK画像データ信号を送る。
【0075】
この際、CPU109メモリに保存された色ずれ量(つまり、色ずれ補正データ)に応じて1次転写タイミングであるY画像書き出し信号、M画像書き出し信号、C画像書き出し信号、およびK画像書き出し信号のオンタイミング(t1、t2、t3、t4)時間を調整する。
【0076】
このように、上述の実施の形態では、下地パターン上にKパターンを形成する補正用パターンを用いて色ずれ補正を行う際、画像形成装置の経年変化などに起因して下地パターンとKパターンとの位置関係がずれて、Kパターンが検出されないと、下地パターンの幅を拡大する。従って、画像形成装置の経年変化などに拘わらず、Kパターンを検出することができ、常に的確に色ずれ補正を行うことができる。
【0077】
なお、上述の実施の形態では、中間転写ベルト5(つまり、像担持体)に補正用パターンを形成して色ずれ補正を行う例について説明したが、連続紙に補正用パターンを形成するタイプ又は用紙搬送ベルトで搬送される用紙に補正用パターンを形成するタイプにも、同様にして適用することができる。
【0078】
さらに、上述の実施の形態では、電子写真プロセスを用いた画像形成装置について説明したが、電子写真プロセスに限定されるものではなく、例えば、インクジェット方式の印刷装置にも適用することができる。
【0079】
また、上述の実施の形態では、受光検知信号の出力レベルとスレッシュレベルとを比較して、その比較結果(差分)に応じて色ずれ量を検出するようにしたが、受光検出信号におけるパルスの重心位置又はピーク位置を算出して色ずれ量を算出するようにしてもよい。
【0080】
上述の説明から明らかなように、図1および図4において、CPU109および画像形成部101a〜101dがパターン形成手段および補正手段として機能する。また、CPU109は判定手段として機能する。さらに、CPU109は制御手段としても機能する。
【0081】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0082】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を画像形成装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、この制御プログラムを画像形成装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
【0083】
この際、制御方法および制御プログラムは、少なくともパターン形成ステップ、発光ステップ、受光ステップ、補正ステップ、判定ステップ、および制御ステップを有することになる。
【0084】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0085】
1a〜1d 感光体ドラム
5 中間転写ベルト
7 パターン検知センサ
101a〜101d 画像形成部
109 CPU
110 ROM
119 RAM
204a,204b コンパレータ
202 乱反射光受光部
208 発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各色の像を所定の方向に搬送される像担持体に重ね合わせて前記像担持体にカラー画像を形成する画像形成装置において、
明度が低い色の低明度色パターンが、当該低明度色パターンよりも明度の高い色パターンである下地パターンの上に存在する補正用パターンを前記像担持体に形成するパターン形成手段と、
前記像担持体の表面および前記補正用パターンに光を照射する発光部および該発光部によって照射された光に基づく前記像担持体の表面および前記補正用パターンの乱反射光を検出する受光部を備える検出手段と、
前記検出手段による検出の結果に応じて各色の像の重ね合わせタイミングを補正して色ずれ補正を行う補正手段と、
前記検出手段による検出結果に基づいて前記低明度色パターンが検出できたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記低明度色パターンが検出できないと判定されると、前記下地パターンの前記所定の方向における幅を拡大した前記補正用パターンを前記パターン形成手段に形成させる制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記各色はイエロー、シアン、マゼンタ、およびブラックであり、
前記補正用パターンは前記イエロー、前記シアン、前記マゼンタ、および前記ブラックのパターンを有しており、
前記パターン形成手段によって前記補正用パターンを前記像担持体に形成する際、前記低明度色パターンとして前記ブラックのパターンが用いられ、前記下地パターンとして前記イエロー、前記シアン、又は前記マゼンタのパターンのいずれかが用いられ、
前記補正手段には前記イエロー、前記シアン、および前記マゼンタのパターンを識別するための閾値レベルが設定され、
前記補正手段は、前記補正用パターンが前記像担持体に形成された際には、前記検出手段による検出結果である受光検知信号の出力レベルと前記閾値レベルとを比較して、その比較結果に応じて前記イエロー、前記シアン、前記マゼンタ、および前記ブラックのパターンを検出して、その結果に応じて前記色ずれ補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記下地パターンは前記イエローのパターンであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記補正用パターンは前記マゼンタのパターンを基準パターンとして、残りの色のパターンの間に前記基準パターンが配置されていることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
各色の像を所定の方向に搬送される像担持体に重ね合わせて前記像担持体にカラー画像を形成する画像形成装置の制御方法であって、
明度が低い色の低明度色パターンが、当該低明度色パターンよりも明度の高い色パターンである下地パターンの上に存在する補正用パターンを前記像担持体に形成するパターン形成ステップと、
センサから前記像担持体の表面および前記補正用パターンに光を照射する発光ステップと、
前記センサで前記像担持体の表面および前記補正用パターンの乱反射光を検出する受光ステップと、
前記受光ステップによる検出の結果に応じて各色の像の重ね合わせタイミングを補正して色ずれ補正を行う補正ステップと、
前記受光ステップによる検出結果に基づいて前記低明度色パターンが検出できたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記低明度色パターンが検出できないと判定されると、前記パターン形成ステップによって前記下地パターンの前記所定の方向における幅を拡大した前記補正用パターンを形成させる制御ステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
各色の像を所定の方向に搬送される像担持体に重ね合わせて前記像担持体にカラー画像を形成する画像形成装置で用いられる制御プログラムであって、
前記画像形成装置が備えるコンピュータに、
明度が低い色の低明度色パターンが、当該低明度色パターンよりも明度の高い色パターンである下地パターンの上に存在する補正用パターンを前記像担持体に形成するパターン形成ステップと、
センサから前記像担持体の表面および前記補正用パターンに光を照射する発光ステップと、
前記センサで前記像担持体の表面および前記補正用パターンの乱反射光を検出する受光ステップと、
前記受光ステップによる検出の結果に応じて各色の像の重ね合わせタイミングを補正して色ずれ補正を行う補正ステップと、
前記受光ステップによる検出結果に基づいて前記低明度色パターンが検出できたか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記低明度色パターンが検出できないと判定されると、前記パターン形成ステップによって前記下地パターンの前記所定の方向における幅を拡大した前記補正用パターンを形成させる制御ステップとを実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−15721(P2013−15721A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149230(P2011−149230)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】