説明

画像形成装置、地紋印刷方法、および地紋パターン生成方法

【課題】 原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像を背景に形成する。
【解決手段】 記憶装置14は、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータ14bを記憶している。地紋設定部24は、地紋パターンデータにおける複数のパターン組合せから、印刷ジョブによる印刷対象画像に応じたパターン組合せを選択し、印刷処理部21は、選択されたパターン組合せによる潜像部パターンおよび背景部パターンで潜像を印刷対象画像とともに印刷させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、地紋印刷方法、および地紋パターン生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
領収書、証券、証明書などの原本には、原本か複写物かを見分けるために、複写すると文字や画像などの地紋が浮き出るように潜像を背景に印刷することがある(例えば、特許文献1〜3参照)。このような地紋は一般に偽造抑止地紋と呼ばれ、不正目的での原本の複写を心理的に抑止する効果がある。
【0003】
このような潜像を背景に印刷する場合、潜像とそれ以外の背景の一方を、微小ドットのドットパターンで印刷し、他方を大ドットのドットパターンで印刷する。この微小ドットは、複写機の入力解像度および出力解像度でドットが正確に再現されない程度の小ささとされ、この大ドットは、複写機の入力解像度および出力解像度でドットが正確に再現される程度の大きさとされる。これにより、複写物において、微小ドットの一部または全部が抜け落ち大ドットは残るため、潜像が浮かび上がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−197297号公報
【特許文献2】特開2005−231145号公報
【特許文献3】特開2007−129694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように地紋を潜像として印刷する場合、原本における潜像が目立たないようにするために微小ドットの領域の視覚上の平均濃度と大ドットの領域の視覚上の平均濃度との差を十分小さくする必要がある。また、このような地紋を潜像として印刷する対象となる原稿は、文字原稿であることが多い。このため、潜像を含む背景部分が原本上の文字の判読の妨げにならないようにする必要がある。
【0006】
しかしながら、このような地紋を潜像として一律の濃度や色で印刷すると、印刷対象となる原稿内の文字の色や濃度によっては、潜像を含む背景部分が原本上の文字の判読の妨げになる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像を背景に形成することができる画像形成装置および地紋印刷方法、並びにその際に使用可能な地紋パターンを生成する地紋パターン生成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0009】
本発明に係る画像形成装置は、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータを記憶する記憶装置と、地紋パターンデータにおける複数のパターン組合せから、印刷対象画像に応じたパターン組合せを選択する地紋設定部と、地紋設定部により選択されたパターン組合せによる潜像部パターンおよび背景部パターンで潜像を印刷対象画像とともに印刷させる印刷処理部とを備える。
【0010】
これにより、地紋潜像を形成するための潜像部および背景部の濃度(平均濃度)を複数の濃度から選択することができ、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像を背景に形成することができる。
【0011】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、地紋設定部は、少なくとも印刷対象画像内の文字濃度に基づいて、パターン組合せを選択する。
【0012】
これにより、原稿の文字濃度に基づき、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像の濃度が選択される。
【0013】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、地紋設定部は、少なくとも印刷対象画像内の文字濃度および文字色に基づいて、パターン組合せを選択する。
【0014】
これにより、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像の濃度が選択される。
【0015】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、潜像部パターンは、濃度が高いほどドット数が多くなり、背景部パターンは、濃度が高いほどドットサイズが大きくなる。
【0016】
これにより、複写物において潜像が浮き出るようにしつつ、複数の濃度についての潜像部パターンおよび背景部パターンの組合せを設定することができる。
【0017】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、地紋パターンデータは、当該画像形成装置において印刷に使用可能な印刷色材の1または複数の色のそれぞれについて、複数の濃度のそれぞれに対応するパターン組合せを有する。
【0018】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像形成装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、画像形成装置は、地紋パターンデータ生成部をさらに備える。地紋パターンデータ生成部は、濃度の異なる複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と濃度の異なる複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを印刷用紙に印刷させ、印刷用紙に印刷された複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを画像スキャンさせ、画像スキャンにより得られたパッチ画像の濃度に基づいて、印刷時に視覚上同一濃度として認識される潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを複数の濃度について特定し、特定した複数のパターン組合せを地紋パターンデータとする。
【0019】
これにより、各画像形成装置の特性の機体差に合わせて潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンが選択されパターン組合せが特定されるため、原本上において潜像部と背景部との濃度差が小さくなり、より潜像が目立たなくなる。
【0020】
本発明に係る地紋印刷方法は、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータにおける複数のパターン組合せから、印刷対象画像に応じたパターン組合せを選択するステップと、選択したパターン組合せによる潜像部パターンおよび背景部パターンで潜像を印刷対象画像とともに印刷するステップとを備える。
【0021】
これにより、地紋潜像を形成するための潜像部および背景部の濃度を複数の濃度から選択することができ、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像を背景に形成することができる。
【0022】
本発明に係る地紋パターン生成方法は、地紋を潜像として印刷する地紋印刷において使用され、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータを生成する地紋パターン生成方法である。そして、この地紋パターン生成方法は、濃度の異なる複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と濃度の異なる複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを印刷用紙に印刷するステップと、印刷用紙に印刷された複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを画像スキャンするステップと、画像スキャンにより得られたパッチ画像の濃度に基づいて、印刷時に視覚上同一濃度として認識される潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを複数の濃度について特定し、特定した複数のパターン組合せを地紋パターンデータとするステップとを備える。
【0023】
これにより、各画像形成装置の特性の機体差に合わせて潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンが選択されパターン組合せが特定されるため、原本上において潜像部と背景部との濃度差が小さくなり、より潜像が目立たなくなる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像を背景に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の一例である画像形成装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、地紋潜像について説明する図である。
【図4】図4は、図1における地紋パターンデータを説明する図である。
【図5】図5は、図1に示す画像形成装置の、地紋印刷時の動作を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、図1に示す画像形成装置の、地紋パターンデータ生成時の動作を説明するフローチャートである。
【図7】図7は、調整用階調パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の一例である画像形成装置を示す斜視図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示す画像形成装置1は、電子写真方式のプリンター機能とスキャナー機能とを有し、図2に示す構成で画像処理を行う。
【0029】
図2に示すように、この画像形成装置1は、印刷装置11、画像読取装置12、操作パネル13、記憶装置14、通信装置15、およびコントローラー16を有する。
【0030】
印刷装置11は、印刷用画像データに基づいて1ページずつ画像を印刷用紙に電子写真方式で印刷する内部装置である。
【0031】
また、画像読取装置12は、例えば、オートドキュメントフィーダー(ADF)12aで印刷物などの原稿を給紙して、その原稿の画像を1ページずつ光学的に読み取り、各ページ画像の画像データを生成する内部装置である。
【0032】
また、操作パネル13は、画像形成装置1の筐体表面に配置され、ユーザーに対して各種情報を表示する表示装置と、ユーザー操作を検出する入力装置とを有する。表示装置としては例えば液晶ディスプレイが使用される。入力装置としては、キースイッチ、タッチパネルなどが使用される。
【0033】
また、記憶装置14は、各種データやプログラムを格納可能な装置である。記憶装置14には、標準階調データ14a、地紋パターンデータ14bなどが記憶されている。記憶装置14としては、不揮発性メモリー、ハードディスクドライブなどの不揮発性の大容量記憶媒体が使用される。
【0034】
標準階調データ14aは、印刷装置11で使用される色材の各色について標準の(つまり、地紋潜像以外の)各階調の濃度補正量を示すデータである。
【0035】
地紋パターンデータ14bは、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有するデータである。潜像部ドットパターンは、潜像部分に使用するドットパターンであって、背景部ドットパターンは、潜像部分以外の背景部分(背景部)に使用するドットパターンである。
【0036】
図3は、地紋潜像について説明する図である。図3(A)は、潜像部101の一例を示す図であり、図3(B)は、潜像部と背景部との境界部分の一例の拡大図である。図3(A)に示すような潜像部101には、図3(B)に示すように背景部(潜像部以外の背景部分)より小さいドットのパターンが印刷される。
【0037】
図4は、図1における地紋パターンデータ14bを説明する図である。図4に示すように、地紋パターンデータ14bは、例えば3段階の濃度についてのパターン組合せ121〜123を有する。パターン組合せ121は、低濃度の背景部ドットパターン121aと潜像部ドットパターン121bとからなり、パターン組合せ122は、中濃度の背景部ドットパターン122aと潜像部ドットパターン122bとからなり、パターン組合せ123は、高濃度の背景部ドットパターン123aと潜像部ドットパターン123bとからなる。潜像部パターン121b,122b,123bは、濃度が高いほどドット数が多くなり、背景部パターン121a,122a,123aは、濃度が高いほどドットサイズが大きくなる。
【0038】
なお、地紋パターンデータ14bは、当該画像形成装置1において印刷に使用可能な印刷色材の1または複数の色のそれぞれについて、複数の濃度のそれぞれに対応するパターン組合せを有する。例えば、CMYK4色の色材が印刷に使用可能である場合には、CMYK4色のそれぞれの色について3段階の濃度についてのパターン組合せが地紋パターンデータ14bに含まれる。
【0039】
また、通信装置15は、図示せぬコンピューターネットワークに接続され、そのネットワークに接続された他の装置(ホスト装置など)とデータ通信を行う回路である。
【0040】
また、コントローラー16は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有し、ROMや記憶装置14などからRAMへプログラムをロードし、そのプログラムをCPUで実行することにより、各種処理部を実現する。この実施の形態では、コントローラー16において、印刷処理部21、スキャン処理部22、ジョブ管理部23、地紋設定部24、および地紋パターンデータ生成部25が実現される。
【0041】
印刷処理部21は、印刷用画像データに基づいて印刷データを生成して印刷装置11に供給し、印刷を実行させる。印刷用画像データは、ラスター画像データである。印刷データは、例えば、ハーフトーニングなどの画像処理により印刷用画像データから得られるデータである。印刷処理部21は、地紋設定部24により選択されたパターン組合せによる潜像部パターンおよび背景部パターンで潜像を印刷対象画像とともに印刷させる。
【0042】
スキャン処理部22は、画像読取装置12を制御して、ADF12aで原稿を自動給紙して原稿の画像をページごとに読み取らせ、各ページ画像のラスター画像データを生成する。
【0043】
ジョブ管理部23は、通信装置15を介して図示せぬホスト装置から受信されたジョブ要求および操作パネル13に対するユーザー操作に基づくジョブ要求を受け付け、印刷処理部21、スキャン処理部22などを使用して、受け付けたジョブを実行する。
【0044】
地紋設定部24は、地紋パターンデータ14bにおける複数のパターン組合せから、印刷対象画像に応じたパターン組合せを選択する。
【0045】
この実施の形態では、地紋設定部24は、モノクロ印刷の場合、印刷対象画像内の文字濃度に基づいてパターン組合せを選択し、カラー印刷の場合、印刷対象画像内の文字濃度および文字色に基づいてパターン組合せを選択する。文字濃度および文字色は、画像データにおける文字部分の画素値から得られる。
【0046】
地紋パターンデータ生成部25は、濃度の異なる複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と濃度の異なる複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを印刷用紙に印刷させ、印刷用紙に印刷された複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを画像スキャンさせ、画像スキャンにより得られたパッチ画像の濃度に基づいて、印刷時に視覚上同一濃度として認識される潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを複数の濃度について特定し、特定した複数のパターン組合せを地紋パターンデータとする。
【0047】
次に、上記画像形成装置の動作について説明する。
【0048】
ここでは、地紋印刷時の画像形成装置の動作と、地紋パターンデータ生成時の画像形成装置の動作とを説明する。
【0049】
(1)地紋印刷
【0050】
図5は、図1に示す画像形成装置の、地紋印刷時の動作を説明するフローチャートである。
【0051】
ジョブ管理部23は、通信装置15を介してホスト装置などから印刷要求(PDL(page Description Language)データなど)を受信すると(ステップS1)、その印刷要求に基づいて印刷物に地紋潜像を付加するか否かを判定する(ステップS2)。
【0052】
その印刷要求において地紋潜像の付加が指示されていない場合、ジョブ管理部23は、その印刷要求についての印刷ジョブを印刷処理部21に実行させる。印刷処理部21は、その印刷要求から印刷データを生成し印刷装置11を制御して、地紋潜像なしで印刷対象画像の印刷を実行させる(ステップS3)。
【0053】
一方、その印刷要求において地紋潜像の付加が指示されている場合、ジョブ管理部23は、その印刷要求に基づいて、カラー文書の印刷要求か否かを判定し(ステップS4)、カラー文書の印刷要求の場合、カラー印刷が指定されているか否かを判定する(ステップS5)。
【0054】
カラー印刷が指定されている場合、地紋設定部24は、その印刷要求から生成される印刷対象画像内の文字の色および濃度を特定し(ステップS6)、地紋パターンデータ14bにおけるパターン組合せから、その特定した色および濃度に応じた色および濃度のパターン組合せを選択する(ステップS7)。そして、印刷処理部21は、その印刷要求に基づく印刷対象画像とともに、その印刷対象画像の背景に、選択されたパターン組合せで地紋潜像を印刷するための印刷データを生成し、印刷装置11を制御して、地紋潜像ありで印刷対象画像の印刷を実行させる(ステップS8)。
【0055】
例えば、印刷対象画像内に、中濃度の赤い文字と高濃度の黒い文字が存在する場合、赤い文字の視認性を確保するためにシアン色かブラック色が好ましく、かつ黒い文字に対してシアン色が好ましいので、シアン色の高濃度のパターン組合せが選択される。ただし、ブラック色でも、赤い文字の視認性が確保され、文字より濃度が低ければ使用可能であるので、ブラック色の中濃度のパターン組合せが選択されるようにしてもよい。なお、複数のパターン組合せが使用可能な場合、複写時に潜像をより強く浮き出させるために、濃度の最も高いパターン組合せが使用される。
【0056】
一方、カラー文書の印刷要求ではない場合(つまり、モノクロ文書の印刷要求の場合)、地紋設定部24は、そのモノクロ文書の印刷対象画像内の文字の濃度を特定し(ステップS10)、地紋パターンデータ14bにおけるパターン組合せから、モノクロ印刷時におけるその濃度に応じた濃度のパターン組合せを選択する(ステップS11)。印刷処理部21は、その印刷要求に基づく印刷対象画像とともに、その印刷対象画像の背景に、選択されたパターン組合せで地紋潜像を印刷するための印刷データを生成し、印刷装置11を制御して、地紋潜像ありで印刷対象画像の印刷を実行させる(ステップS8)。
【0057】
また、カラー文書の印刷要求であるが、カラー印刷が指定されていない場合(つまり、モノクロ印刷が指定されている場合)、ジョブ管理部23は、図示せぬ画像処理部によりカラー文書をモノクロ文書に変換させ(ステップS9)、モノクロ文書の場合と同様にして、地紋潜像ありで印刷対象画像の印刷を実行させる(ステップS10,S11)。
【0058】
なお、モノクロ印刷の場合でも、文字濃度より低い複数のパターン組合せが使用可能であるときには、複写時に潜像をより強く浮き出させるために、濃度の最も高いパターン組合せが使用される。
【0059】
このようにして、印刷対象画像内の文字の濃度などに適した濃度の地紋パターンが選択され、地紋潜像が背景に形成される。
【0060】
(2)地紋パターンデータの生成
【0061】
図6は、図1に示す画像形成装置の、地紋パターンデータ生成時の動作を説明するフローチャートである。
【0062】
地紋パターンデータ14bを初期登録または更新する場合、ユーザーまたはサービスパーソンは、操作パネル13に対して所定の操作を行う。ジョブ管理部23は、その操作を受け付けると、地紋パターンデータ生成部25に地紋パターンデータ14bの生成を行わせる。
【0063】
地紋パターンデータ生成部25は、まず、調整用階調パターンを、印刷処理部21および印刷装置11を使用して印刷用紙に印刷させる(ステップS21)。調整用階調パターンには、平均濃度の異なる複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と平均濃度の異なる複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とが含まれている。
【0064】
図7は、調整用階調パターンの一例を示す図である。図7において、階調パターン141は、地紋潜像以外の通常の印刷に使用される標準的な各階調の濃度調整用の(つまり、標準階調データ14aを生成するための)パッチ画像列であって、使用される色材(ここでは、CMYK4色)のそれぞれに対応するパッチ画像列141C,141M,141Y,141Kを有する。階調パターン142は、背景部の濃度調整用のパッチ画像列であって、使用される色材(ここでは、CMYK4色)のそれぞれに対応するパッチ画像列142C,142M,142Y,142Kを有する。階調パターン142内の各濃度のパッチ画像は、その濃度に対応するドットパターン(図4参照)で印刷される。階調パターン143は、潜像部の濃度調整用のパッチ画像列であって、使用される色材(ここでは、CMYK4色)のそれぞれに対応するパッチ画像列143C,143M,143Y,143Kを有する。階調パターン143内の各濃度のパッチ画像は、その濃度に対応するドットパターン(図4参照)で印刷される。
【0065】
その後、パッチ画像が印刷される印刷用紙がユーザーにより画像読取装置12に載置され画像スキャン開始の操作が検出されると、地紋パターンデータ生成部25は、画像読取装置12に、印刷用紙に印刷された複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを画像スキャンさせる(ステップS22)。
【0066】
地紋パターンデータ生成部25は、画像スキャンにより得られた画像データに基づいて各パッチ画像の濃度(平均濃度)を計算し(ステップS23)、各パッチ画像の濃度に基づいて、印刷時に視覚上同一濃度として認識される潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを複数の濃度について特定し、特定した複数のパターン組合せを地紋パターンデータとする(ステップS24)。なお、印刷時に視覚上同一濃度として認識される潜像部ドットパターンの平均濃度と背景部ドットパターンの平均濃度との差を示すデータを予め実験などにより求めておき、地紋パターンデータ生成部25は、そのデータに基づいて上述のパターン組合せを特定する。
【0067】
そして、地紋パターンデータ生成部25は、生成した地紋パターンデータを地紋パターンデータ14bとして記憶装置14に記憶させる(ステップS25)。
【0068】
以上のように、上記実施の形態によれば、記憶装置14は、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータ14bを記憶している。地紋設定部24は、地紋パターンデータにおける複数のパターン組合せから、印刷ジョブによる印刷対象画像に応じたパターン組合せを選択し、印刷処理部21は、選択されたパターン組合せによる潜像部パターンおよび背景部パターンで潜像を印刷対象画像とともに印刷させる。
【0069】
これにより、地紋潜像を形成するための潜像部および背景部の濃度を複数の濃度から選択することができ、原本上の文字の判読の妨げにならないように適切な地紋潜像を背景に形成することができる。
【0070】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0071】
例えば、上記実施の形態においては、潜像部のドットサイズが背景部のドットサイズより小さく設定されているが、上述の潜像部のドットパターンを背景部のドットパターンとして、上述の背景部のドットパターンを潜像部のドットパターンとして使用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、例えば、プリンター、複写機、複合機などの画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
14 記憶装置
14b 地紋パターンデータ
21 印刷処理部
24 地紋設定部
25 地紋パターンデータ生成部
101 潜像部
121,122,123 パターン組合せ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地紋を潜像として印刷する画像形成装置において、
所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータを記憶する記憶装置と、
前記地紋パターンデータにおける複数の前記パターン組合せから、印刷対象画像に応じた前記パターン組合せを選択する地紋設定部と、
前記地紋設定部により選択された前記パターン組合せによる前記潜像部パターンおよび前記背景部パターンで前記潜像を前記印刷対象画像とともに印刷させる印刷処理部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記地紋設定部は、少なくとも前記印刷対象画像内の文字濃度に基づいて、前記パターン組合せを選択することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記地紋設定部は、少なくとも前記印刷対象画像内の文字濃度および文字色に基づいて、前記パターン組合せを選択することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記潜像部パターンは、前記濃度が高いほどドット数が多くなり、
前記背景部パターンは、前記濃度が高いほどドットサイズが大きくなること、
を特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記地紋パターンデータは、当該画像形成装置において印刷に使用可能な印刷色材の1または複数の色のそれぞれについて、複数の濃度のそれぞれに対応する前記パターン組合せを有することを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
濃度の異なる複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と濃度の異なる複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを印刷用紙に印刷させ、前記印刷用紙に印刷された前記複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と前記複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを画像スキャンさせ、前記画像スキャンにより得られた前記パッチ画像の濃度に基づいて、印刷時に視覚上同一濃度として認識される前記潜像部ドットパターンと前記背景部ドットパターンとのパターン組合せを前記複数の濃度について特定し、特定した複数のパターン組合せを前記地紋パターンデータとする地紋パターンデータ生成部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項7】
地紋を潜像として印刷する地紋印刷方法において、
所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータにおける複数の前記パターン組合せから、印刷対象画像に応じた前記パターン組合せを選択するステップと、
選択した前記パターン組合せによる前記潜像部パターンおよび前記背景部パターンで前記潜像を前記印刷対象画像とともに印刷するステップと、
を備えることを特徴とする地紋印刷方法。
【請求項8】
地紋を潜像として印刷する地紋印刷において使用され、所定の複数の濃度のそれぞれに対応する潜像部ドットパターンと背景部ドットパターンとのパターン組合せを有する地紋パターンデータを生成する地紋パターン生成方法であって、
濃度の異なる複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と濃度の異なる複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを印刷用紙に印刷するステップと、
前記印刷用紙に印刷された前記複数の潜像部ドットパターンのパッチ画像と前記複数の背景部ドットパターンのパッチ画像とを画像スキャンするステップと、
前記画像スキャンにより得られた前記パッチ画像の濃度に基づいて、印刷時に視覚上同一濃度として認識される前記潜像部ドットパターンと前記背景部ドットパターンとのパターン組合せを前記複数の濃度について特定し、特定した複数のパターン組合せを前記地紋パターンデータとするステップと、
を備えることを特徴とする地紋パターン生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204861(P2012−204861A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64611(P2011−64611)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】