説明

画像形成装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】効率的に印刷データを処理することのできる画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラムの提供を目的とする。
【解決手段】印刷データを受信する印刷データ受信手段と、画像データの圧縮形式ごとに、当該圧縮形式に応じたデコードを実行する複数のデコード手段と、前記印刷データに含まれる画像データの圧縮形式に対応する前記デコード手段に当該画像データのデコードを実行させ、デコードされた画像データを印刷させるための描画指示を前記複数のデコード手段に対して共通的に実行する描画指示手段と、前記描画指示に応じた描画を記憶装置に対して実行する描画手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像処理方法及びプログラムに関し、特に印刷を実行するための画像形成装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリンタには、受信される印刷データ(プリンタ言語のコマンド等)を解釈し、プリンタエンジンに画像の印刷を実行させるエミュレーションと呼ばれるソフトウェアが実装されている。
【0003】
図1は、従来のエミュレーションの構成例を示す図である。同図には、エミュレーション510a、510b、及び510c等、複数のエミュレーションが示されている。これは、従来のエミュレーションが、印刷データを転送するための通信規格ごとに別個に作成され、それぞれ異なるプロセスとして起動されていたことを表現している。通信規格ごとにエミュレーションが作成されていた要因の一つとして、通信規格に応じてTIFFにおけるタグの構成が異なる点が挙げられる。すなわち、通信規格に応じてTIFFデータの解釈の仕方が異なるからである。
【0004】
図1において、エミュレーション510aは、印刷データ受信部511、データタイプ解析部512、デコード描画部513、及び描画プラットフォーム514等より構成されている。
【0005】
印刷データ受信部511は、通信インタフェースを介して印刷データを受信する。データタイプ解析部512は、受信された印刷データに含まれている画像データを解析し、そのデータタイプ(TIFF、JPEG、BITMAP等の種別)を判定する。デコード描画部513は、圧縮されている画像データをデコードし、デコードされた画像データの描画指示を描画プラットフォーム514に対して行う。描画プラットフォーム514は、描画指示に応じて所定のメモリ領域にプリンタエンジンが解釈可能な形式で印刷画像の描画(レンダリング)を行う。
【0006】
ここで、デコード描画部513は、圧縮形式ごとにモジュール化されていた。図中には、MH形式に対応したMHデコード描画部513a、MR形式に対応したMRデコード描画部513b、及びJPEG形式に対応したJPEGデコード描画部513cが例示されている。したがって、圧縮形式がJPEG形式の場合は、JPEGデコード描画部513cが呼び出され、JPEGファイルデコード描画部513cによってデコード及び描画指示までの一連の処理が行われていた。
【特許文献1】特開2006−192663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、描画プラットフォーム514に対する描画指示自体は、圧縮形式に対する依存度が低い。それにも拘わらず、従来の構成では、各デコード描画部513に同様の描画指示処理が実装されていた。したがって、対応する圧縮形式の増加に応じて開発工数が増大し、また、保守作業が煩雑になるという問題があった。
【0008】
また、通信規格ごとにエミュレーションが作成されることも、開発コストの増大及び保守作業の煩雑化を招いていた。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、効率的に印刷データを処理することのできる画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで上記課題を解決するため、本発明は、印刷データを受信する印刷データ受信手段と、画像データの圧縮形式ごとに、当該圧縮形式に応じたデコードを実行する複数のデコード手段と、前記印刷データに含まれる画像データの圧縮形式に対応する前記デコード手段に当該画像データのデコードを実行させ、デコードされた画像データを印刷させるための描画指示を前記複数のデコード手段に対して共通的に実行する描画指示手段と、前記描画指示に応じた描画を記憶装置に対して実行する描画手段とを有することを特徴とする。
【0011】
このような画像形成装置では、効率的に印刷データを処理することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、効率的に印刷データを処理することのできる画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図2は、本発明の実施の形態におけるプリンタのハードウェア構成例を示す図である。同図において、プリンタ10は、それぞれバスBで相互に接続されている、CPU101、ROM102、RAM103、補助記憶装置104、LANコントローラ105、USBポート106、プリンタエンジン107、及び操作パネル108等より構成される。
【0014】
ROM102や補助記憶装置104には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記録されている。RAM103は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられる。CPU101は、RAM103にロードされたプログラムを処理することにより、後述される機能を実現する。
【0015】
LANコントローラ105は、ネットワーク40を介した通信を実現する。USBポート106は、USB(Universal Serial Bus)ケーブルを差し込む接続口である。プリンタエンジン107は、描画された印刷画像を印刷用紙に印刷するためのハードウェア一式である。操作パネル108は、ユーザからの入力の受け付けやユーザに対する情報の通知等を行うめのボタン又はキー等の操作手段や、液晶パネル等の表示手段等を備えたハードウェアである。
【0016】
なお、プリンタ10は、スキャナ及びFAX装置等を更に備えた複合機として構成されていてもよい。少なくとも印刷機能を備えた画像形成装置であればよい。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態におけるプリンタの機能構成例を示す図である。同図において、プリンタ10は、ネットワーク等を介して受信される印刷データを解釈し、プリンタエンジン107に画像の印刷を実行させるプログラムであるエミュレーション11を有する。エミュレーション11は、印刷データ受信部111、データタイプ解析部112、デコード描画部113、描画プラットフォーム114、TIFF解析部115、デコーダ116、TIFF解析部管理テーブル117、及びデコーダ管理テーブル118等より構成される。これら各部は、プリンタ10にインストールされた(組み込まれた)プログラムが、プリンタ10のCPU101に実行させる処理によってその機能を実現する。但し、TIFF解析部管理テーブル117及びデコーダ管理テーブル118は、プリンタ10の補助記憶装置104に記録された情報である。
【0018】
印刷データ受信部111は、通信インタフェースを介して印刷データを受信する。データタイプ解析部112は、受信された印刷データに含まれている画像データを解析し、そのデータタイプ(TIFF、JPEG、BITMAP等の種別)を判定する。デコード描画部113は、圧縮されている画像データをデコードし、デコードされた画像データの描画指示を描画プラットフォーム114に対して行う。描画プラットフォーム114は、描画指示に応じて所定のメモリ領域にプリンタエンジン107が解釈可能な形式で印刷画像の描画(レンダリング)を行う。
【0019】
ところで、本実施の形態におけるデコード解析部112は、画像データがTIFF形式の場合、印刷データを受信するための通信規格の種別(例えば、BMLinkS、PictBridge等の別)に応じ、当該通信規格に対応したTIFF解析部115に以降の処理制御を委譲する。これは、当該通信規格ごとにTIFFにおけるタグの定義(タグの構成)が異なるからである。したがって、TIFF解析部115は、通信規格の種別(換言すれば、TIFFのタグの構成の別)に応じて複数存在する。なお、通信規格とTIFF解析部115との対応関係は、TIFF解析部管理テーブル117に定義されている。
【0020】
また、デコード描画部113は、画像データの圧縮形式の種別(例えば、MH形式、MR形式、MMR形式、又はJPEG形式の別)に応じ、当該圧縮形式に対応したデコーダ116にデコード処理を委譲する。図中では、MH形式に対応したMHデコーダ116a、MR形式に対応したMRデコーダ116b、MMR形式に対応したMMR形式デコーダ116c、JPEG形式に対応したJPEGデコーダ116dが例示されている。なお、圧縮形式とデコーダ116との対応関係は、デコーダ管理テーブル118に定義されている。
【0021】
以下、プリンタ10の処理手順について説明する。図4は、エミュレーションによって実行される処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0022】
例えば、ネットワーク又はUSBケーブル等を介して接続される装置(コンピュータ、デジタルカメラ等)より、印刷データ受信部111が印刷データを受信すると(S101)、データ解析部112は、印刷データに含まれている画像データの内部を参照し、当該画像データのデータ形式を判定する(S102)。
【0023】
画像データのデータ形式がTIFFである場合(S103でYes)、データタイプ解析部112は、印刷データの転送に用いられた通信規格に対応するTIFF解析部115をTIFF解析部管理デーブル117に基づいて判定し、判定されたTIFF解析部117を動的に呼び出す(S104)。呼び出されたTIFF解析部117は、当該画像データを印刷させるための処理制御(TIFF解析処理)を実行する(S105)。
【0024】
一方、画像データのデータ形式がTIFF以外である場合(S103でNo)、データタイプ解析部112は、デコード描画部113を呼び出す。デコード描画部113は、当該画像データについてデコード及び描画処理を実行する(S106)。
【0025】
続いて、ステップS105の詳細について説明する。図5は、TIFF解析部によって実行される処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0026】
呼び出されたTIFF解析部115は、画像データ(TIFFデータ)のヘッダ情報を解析することによりページ数等を確認する(S201)。続いて、最初のページを処理対象とし、当該ページのタグ数を取得する(S202)。続いて、取得されたタグ数に係る各タグ情報を解析し、デコードに必要な情報(データサイズ、圧縮形式、画像幅(dot)、画像高さ(dot)、使用色単位、及び色深さ等)を取得する(S203、S204)。ここで、使用色単位は、RGBの場合は「3」とされ、モノクロの場合は「1」とされる。また、色深さは、カラー(RGB)の場合は「8」とされ、モノクロの場合は「1」とされる。
【0027】
タグの情報の解析が完了すると(S203でYES)、デコード描画部113を呼び出し処理対象とされているページのデコード及び描画処理を実行させる(S205)。ここで、デコード描画部113には、デコードに必要な情報(デコード情報)が引き渡される。なお、ステップS202からS205まではページごとに実行される(S206)。全てのページについて処理が完了すると(S206でYES)、TIFF解析部115の処理は終了する。
【0028】
なお、タグの構成は、通信規格に応じて異なる。したがって、タグ情報の取得やタグ情報の解析において処理される具体的なタグは、呼び出されるTIFF解析部115に応じて異なる。
【0029】
続いて、図4のステップS106や図5のステップS205において呼び出されるデコード描画部113によって実行される処理について説明する。図6は、デコード描画部によって実行される処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0030】
ステップS301において、デコード描画部113は、ジョブの開始を描画プラットフォーム114に通知(宣言)する。続いて、デコード描画部113は、画像データよりデコード情報を取得する(S302)。但し、デコード情報がTIFF解析部115より引き渡されている場合(すなわち、図6の処理が図5のステップS205より呼び出された場合)、改めてデコード情報は取得されず、引き渡されたデコード情報が利用される。
【0031】
続いて、デコード描画部113は、デコードの初期化処理(例えば、利用される変数の初期化や、デコード後の画像データが格納されるメモリ領域の確保等)を実行する(S303)。続いて、デコード描画部113は、ページの開始を描画プラットフォーム114に通知する(S304)。
【0032】
続いて、デコード描画部113は、デコード情報に含まれている圧縮形式を示す情報とデコーダ管理テーブル118とに基づいて、当該圧縮形式に対応するデコーダ116を呼び出すことにより、当該デコーダ116に画像データのデコード(復元)を実行させる(S305)。これにより、予め確保されているメモリ領域に、デコードされた画像データが展開される。
【0033】
続いて、デコード描画部113は、展開された画像データの描画指示を描画プラットフォーム114に出力する(S306)。これにより、描画プラットフォーム114は、例えば、RAM103に確保されるページメモリに印刷画像を描画する。ページメモリに描画された印刷画像に基づいてプリンタエンジン107によって印刷用紙への印刷が実行される。なお、ステップS305及びS306は、ページを複数に分割した所定のライン数(例えば、256ライン)ごとに実行される(S307)。したがって、1ページあたり複数回実行されうる。
【0034】
1ページに含まれる全てのラインについて処理が完了すると(S307でYES)、デコード描画部113は、デコード処理の終了化処理(確保したメモリ領域の解放等)を実行する(S308)。続いて、デコード描画部117は、ページの終了及びジョブの終了を描画プラットフォーム114に通知する(S309、S310)。
【0035】
上述したように、本実施の形態におけるプリンタ10によれば、画像データのデコードは、各圧縮形式に応じたデコーダ116が実行し、デコードされた画像データの描画指示は、一つのデコード描画部113によって共通的に実行される。したがって、描画指示処理を圧縮形式ごとに実装する必要はない。
【0036】
また、複数のTIFF解析部115を有し、印刷データの受信に用いられた通信規格に対応するTIFF解析部115にタグ情報の解析を動的に実行させる。したがって、通信規格ごとにエミュレーション11全体を実装する必要はなく、また、プロセス化する必要はない。
【0037】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来のエミュレーションの構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプリンタのハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるプリンタの機能構成例を示す図である。
【図4】エミュレーションによって実行される処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】TIFF解析部によって実行される処理手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】デコード描画部によって実行される処理手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
10 プリンタ
11 エミュレーション
12 プリンタエンジン
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 補助記憶装置
105 LANコントローラ
106 USBポート
107 プリンタエンジン
108 操作パネル
111 印刷データ受信部
112 データタイプ解析部
113 デコード描画部
114 描画プラットフォーム
115 TIFF解析部
116 デコーダ
117 TIFF解析部管理テーブル
118 デコーダ管理テーブル
B バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データを受信する印刷データ受信手段と、
画像データの圧縮形式ごとに、当該圧縮形式に応じたデコードを実行する複数のデコード手段と、
前記印刷データに含まれる画像データの圧縮形式に対応する前記デコード手段に当該画像データのデコードを実行させ、デコードされた画像データを印刷させるための描画指示を前記複数のデコード手段に対して共通的に実行する描画指示手段と、
前記描画指示に応じた描画を記憶装置に対して実行する描画手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
複数の前記圧縮形式と複数の前記デコード手段との対応関係を示す情報を管理する第一の対応管理手段を有し、
前記描画指示手段は、前記第一の対応管理手段を用いて前記印刷データに含まれる画像データの圧縮形式に対応する前記デコード手段を判定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
TIFFデータのタグ情報の構成の別ごとに、前記タグ情報の解析を実行する複数の解析手段と、
前記印刷データに含まれる画像データがTIFFデータである場合に、当該TIFFデータのタグ情報の構成に対応する前記解析手段にタグ情報の解析を実行させる選択手段とを有することを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記印刷データの転送に用いられうる複数の通信規格と複数の前記解析手段との対応関係を示す情報を管理する第二の対応管理手段を有し、
前記選択手段は、前記第二の対応管理手段を用いて、前記印刷データの転送に用いられた通信規格に対応する前記解析手段にタグ情報の解析を実行させることを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
画像形成装置が実行する画像処理方法であって、
印刷データを受信する印刷データ受信手順と、
画像データの圧縮形式ごとに当該圧縮形式に応じたデコードを実行する複数のデコード手段の中で、前記印刷データに含まれる画像データの圧縮形式に対応する前記デコード手段に当該画像データのデコードを実行させ、デコードされた画像データを印刷させるための描画指示を前記複数のデコード手段に対して共通的に実行する描画指示手順と、
前記描画指示に応じた描画を記憶装置に対して実行する描画手順とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
前記描画指示手順は、複数の前記圧縮形式と複数の前記デコード手段との対応関係を示す情報を管理する第一の対応管理手段を用いて前記印刷データに含まれる画像データの圧縮形式に対応する前記デコード手段を判定することを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記印刷データに含まれる画像データがTIFFデータである場合に、TIFFデータのタグ情報の構成の別ごとに前記タグ情報の解析を実行する複数の解析手段の中で当該TIFFデータのタグ情報の構成に対応する前記解析手手段にタグ情報の解析を実行させる選択手順を有することを特徴とする請求項5又は6記載の画像処理方法。
【請求項8】
前記選択手順は、前記印刷データの転送に用いられうる複数の通信規格と複数の前記解析手段との対応関係を示す情報を管理する第二の対応管理手段に基づいて、前記印刷データの転送に用いられた通信規格に対応する前記解析手段にタグ情報の解析を実行させることを特徴とする請求項7記載の画像処理方法。
【請求項9】
請求項5乃至8いずれか一項記載の画像処理方法を画像形成装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−184227(P2009−184227A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26599(P2008−26599)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】