説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】複数のトナー画像がシート状の記録材に積層可能に、前記トナー画像を形成させる画像形成部が複数設けられた画像形成装置において、定着不良の低減化が期待できる新規な技術的手段を提供すること。
【解決手段】複数の画像形成部2A、2B、2C、2Dのうち、前記記録材Sに対して最表層のトナー画像を形成させる画像形成部2Aは、その最表層のトナー画像を形成させるトナーの熱特性が最表層以外の層のトナーの熱特性よりも低温特性のトナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置、画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのプロセスカラートナーを用いる電子写真方式の画像形成装置は、従来、定着オフセットや定着状態の悪化、定着部材への用紙巻き付きなどの不具合が発生しないように、単位面積(画素)あたりのトナーの総量規制を行なっている(例えば特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したプロセスカラートナーの総量規制は、定着オフセットや定着状態の悪化や、定着部材への用紙巻き付き等の定着にかかる不具合を低減するのに極めて有効な一技術的手段である。しかしながら、その一技術的手段にとどまらず、定着不良の低減化が期待できる新規な技術的手段を提供することは、技術的に極めて意義のあることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明にかかる画像形成装置、画像形成方法は、下記の技術的手段を講じた。
本発明にかかる画像形成装置は、トナー画像を形成させる画像形成部が、シート状の記録材に前記トナー画像を積層可能に複数設けられた画像形成装置であって、複数の前記画像形成部のうち、前記記録材に対して最表層のトナー画像を形成させる画像形成部は、その最表層のトナー画像を形成させるトナーの熱特性が最表層以外の層のトナーの熱特性よりも低温特性のトナーを用いてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、定着不良の低減化が期待できる新規な技術的手段が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】画像形成装置の装置本体の概略を示した模式図である。
【図2】定着部の概略を模式的に示した縦断面図である。
【図3】実施の形態1にかかる制御部と各機構部等との関係を示した説明図である。
【図4】中間転写ベルト上における各トナー画像の積層順を模式的に示した説明図である。
【図5】用紙上における各トナー画像の積層順を模式的に示した説明図である。
【図6】トナーの高付着量時における定着性ランクと定着温度との関係を示す線図である。
【図7】トナーの低付着量時における定着性ランクと定着温度との関係を示す線図である。
【図8】実施の形態2にかかる制御部と各機構部等との関係を示した説明図である。
【図9】低温特性を有するトナー画像が最表層に有る場合における、紙種と各情報との対応付け例を示した表である。
【図10】低温特性を有するトナー画像が最表層に無い場合における、紙種と各情報との対応付け例を示した表である。
【図11】画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を示したフローチャートである。
【図12】実施の形態3にかかる制御部と各機構部等との関係を示した説明図である。
【図13】紙種と各情報との対応付け例を示した表である。
【図14】画像形成パターン(ベタ)と無色透明トナーの載り量との関係を示した説明図である。
【図15】画像形成パターン(直交状;高密度)と無色透明トナーの載り量との関係を示した説明図である。
【図16】画像形成パターン(直交状;低密度)と無色透明トナーの載り量との関係を示した説明図である。
【図17】画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を示したフローチャートである。
【図18】各トナー画像の積層状態を模式的に示した説明図である。
【図19】低温特性を有する無色透明トナー画像の網点面積率を異ならせた場合のトナー画像表面の光沢度を表した折れ線グラフである。
【図20】低温特性を有する無色透明トナー画像の線数を異ならせ、その異ならせた線数毎の網点面積率に対する光沢変化率を示した折れ線グラフである。
【図21】R2乗値を線数毎に示した棒グラフである。
【図22】実施の形態4にかかる制御部と各機構部等との関係を示した説明図である。
【図23】紙種と各情報との対応付け例を示した表である。
【図24】操作表示パネルにおける表面光沢処理設定の表示例を示した説明図である。
【図25】実施の形態5にかかる省エネモード情報を示した表である。
【図26】操作表示パネルにおける省エネモードの表示例を示した説明図である。
【図27】画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を示したフローチャートである。
【図28】実施の形態6にかかる紙種と各情報との対応付け例を示した表である。
【図29】画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明にかかる画像形成装置の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる画像形成装置は、装置本体と、その装置本体に用いる現像剤とを備える。
装置本体は、図1に示すように、中間転写ベルト部1と、画像形成部2A〜2Eと、一次転写部3と、二次転写部4と、シート送り部5と、定着部6と、制御部71とを備える。なお、装置本体を構成するその他の構成体としては、給紙トレイや排紙トレイ、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)、スキャナユニット、原稿排紙トレイ、ディスプレイパネル等が挙げられる。
【0008】
中間転写ベルト部1は、横方向に所要の間隔をおいて設けられた駆動ローラ11及び従動ローラ12と、その駆動ローラ11寄りの下方に設けられた二次対向ローラ13と、従動ローラ12と二次対向ローラ13との間に設けられたテンションローラ14と、これらのローラに架け渡された中間転写ベルト15とを備える。そして、この中間転写ベルト部1は、駆動ローラ11の回転により中間転写ベルト15が時計回りに回転するようになっている。
【0009】
画像形成部2A〜2Eは、中間転写ベルト15の、駆動ローラ11と従動ローラ12との架け渡し区間内に中間転写ベルト15に沿うように、且つ、所定の間隔をおいて、5箇所に設けられている。
【0010】
この5つの画像形成部2A〜2Eは、図1において、左方から右方に向かって順に、低温特性を有する無色透明トナー画像形成用(表面光沢付与用または透かし画像用)の画像形成部2A、イエロートナー画像形成用の画像形成部2B、シアントナー画像形成用の画像形成部2C、マゼンタトナー画像形成用の画像形成部2D、黒トナー画像形成用の画像形成部2Eとなっている。これら5つの画像形成部は、夫々に用いられる二成分現像剤が異なるのみで、機械的な構成は実質的に同じである。なお、低温特性を有する無色透明トナーの詳細は後述する。また、低温特性を有する無色透明トナーは、本実施の形態において、以下、単に無色透明トナーと呼称する。
【0011】
夫々の画像形成部2A〜2Eは、感光ドラム21a〜21eと、帯電器22a〜22eと、露光器23a〜23eと、現像器24a〜24eと、除電器25a〜25eと、清掃器26a〜26eとを備えてなる。
【0012】
感光ドラム21a〜21eは、図1において、反時計回りに回転可能に設けられると共に、中間転写ベルト15に接するように設けられており、ドラムの表面に静電潜像及びトナー画像が形成されるようになっている。
帯電器22a〜22eは、感光ドラム21a〜21eの表面を一様に帯電させるようになっている。
露光器23a〜23eは、帯電器22a〜22eで帯電された感光ドラム21a〜21eの表面に2値の静電潜像形成信号に基づいた光を照射して静電潜像を形成させるようになっている。
【0013】
現像器24a〜24eは、感光ドラム21a〜21eの表面に形成された静電潜像を後述する二成分現像剤のトナーを用いてトナー画像に現像させるようになっている。
除電器25a〜25eは、中間転写ベルト15にトナー画像が一次転写された後の感光ドラム21a〜21eの表面を除電させるようになっている。
清掃器26a〜26eは、その除電器25a〜25eで除電された感光ドラム21a〜21eの表面に残った転写残トナーや紙粉等を除去するようになっている。
【0014】
一次転写部3は、中間転写ベルト15を挟んで、感光ドラム21a〜21eに対向して設けられており、転写バイアスがかけられることで、感光ドラム21a〜21eの表面に形成された各トナー画像を中間転写ベルト15に転写させるようになっている。
【0015】
二次転写部4は、中間転写ベルト15を挟んで、二次対向ローラ13に対向して設けられた二次転写ローラ41を備える。この二次転写部4は、二次転写バイアスを二次転写ローラ41にかけることで、中間転写ベルト15に転写されているトナー画像を、中間転写ベルト15と二次転写ローラ41とに挟み込まれた搬送中の用紙S(シート状の記録材の一例)に二次転写させるようになっている。
なお、二次転写ローラ41に転写バイアスをかける構成に代えて、二次対向ローラ13に転写バイアスをかけて、中間転写ベルト15上のトナー画像を用紙Sに転写させても良い。
【0016】
シート送り部5は、二次転写部4を基点にして用紙Sの搬送上流側に設けられた一対のローラであり、図示しない給紙部からの搬送された用紙Sの先端部を挟み込んで待機し、所定のタイミングで二次転写部4に向かって、用紙Sを送り出すようになっている。
【0017】
定着部6は、図2に示すように、定着ローラ61と、加圧ローラ62と、誘導加熱部63と、内部コア64と、サーミスタ(図示せず)とを備えて構成され、二次転写部4(図1)を基点にして用紙Sの搬送下流側に設けられている。
【0018】
定着ローラ61は、円筒状の芯金61aに弾性層61bと発熱層61cが設けられてなると共に、図示しない駆動源により回転可能に設けられている。
加圧ローラ62は、アルミニウムや銅等からなる円筒部材62aにフッ素ゴムやシリコーンゴム等の弾性層62bが設けられると共に、定着ローラ61に従動回転可能に押し当てるように設けられている。
【0019】
誘導加熱部63は、定着ローラ61の外周面に沿うように円弧状に形成されたコイルガイド63aと、細線を束ねたリッツ線がそのコイルガイド63aに沿って巻かれるように配置されたコイル部63bと、フェライト等の強磁性体(比透磁率が1000〜3000程度)でコイル部63bを覆うように形成され、発熱層61cに向けた磁束を発生させるコア部63cとを備えて構成される。
この誘導加熱部63は、コイル部63bに高周波交番電流を流すことで、コア部63cと後述する内部コア64との間に交番磁界が形成され、この交番磁界により発熱層61cに渦電流が生じ、発熱層61cの電気抵抗によって誘導加熱される。こうして、定着ローラ61は加熱される。
【0020】
サーミスタ(図示せず)は、定着ローラ61上の温度(定着温度)を検知可能に設けられている。なお、そのサーミスタによる検知結果に基づいて、後述する制御部71が、誘導加熱部63による加熱量を調整するようになっている。
【0021】
なお、本明細書では、加圧ローラ62と定着ローラ61との接触部分を、ニップと呼称する。また、加圧ローラ62と定着ローラ61との周方向の接触長さを、ニップ幅(図2参照)と呼称する。また、定着ローラ61の回転速度でもってニップ幅に相当する距離を通過する時間(用紙S上の任意の一点がニップ幅を通過する時間)を、ニップ時間と呼称する。また、加圧ローラ62の定着ローラ61への押し当て力(用紙Sに加える圧力)を、加圧力と呼称する。
【0022】
このように構成された定着部6は、ニップを通じて、未定着のトナー画像を付着させた用紙Sに熱と圧力を加えて、用紙Sにトナーを溶融、固化させるようになっている。
【0023】
制御部71は、図3に示すように、ADF(Auto Documennt Feeder;原稿自動搬送装置)、スキャナユニット、原稿排紙トレイ、給紙トレイ、プリントエンジン、排紙トレイ等の機構部の動作制御(露光制御含む)、定着部6における定着温度の恒温制御、画像データ(ラスタイメージ(画素の集合で表現された画像))からトナー総量規制を考慮した、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号(例えば網点画像を形成させる信号)の生成を行なう画像データ処理制御、操作表示パネルを介した各情報の入出力制御、ネットワークI/Fを介した外部機器(例えばパーソナルコンピュータ)との入出力制御等の、画像形成装置として機能するための制御を実現可能に構成される。具体的には、CPU(Central Processing Unit)が制御プログラムを実行することにより、各構成部を制御して画像形成装置として機能させている。
【0024】
これらの制御のうち、2値の静電潜像形成信号を生成する画像データ処理制御は、さらに、用紙S上で最表層に位置する無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号も生成する。この無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号による画像形成パターンは、当該トナーで用紙を塗り潰すベタ画像になっている。
また、この画像データ処理制御は、入力データがページ記述言語の場合、ラスタイメージへの展開処理も行なう。
【0025】
また、上述したプリントエンジンとは、中間転写ベルト部1、画像形成部2A〜2E、一次転写部3、二次転写部4、シート送り部5、定着部6等の画像形成にかかる構成部分である。なお、図3において、電気的接続および信号の流れを矢印付の実線で示し、用紙の流れを矢印付の破線で示している。
【0026】
次に、以上のように構成された装置本体による画像の形成動作を説明する。
制御部71は、スキャナユニットやパーソナルコンピュータ等から送られた画像データから、イエロー、シアン、マゼンタ、黒、無色透明の各トナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号を生成する。このうち、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各トナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号は、公知技術であるトナーの総量規制に基づいたものになっている。
露光器23a〜23eは、2値の静電潜像形成信号に対応した光を、帯電器22a〜22eで表面が一様に帯電した回転中の感光ドラム21a〜21e表面に照射して静電潜像を形成する。
【0027】
現像器24a〜24eは、感光ドラム21a〜21eに形成された静電潜像を、トナー画像に現像する。
この静電潜像及び現像の形成動作は、中間転写ベルト15の回転と同期しており、無色透明トナー画像、イエロートナー画像、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、黒トナー画像の順に開始する。
【0028】
一次転写部3は、転写電界を形成し、感光ドラム21a〜21e上に形成した各トナー画像を、回転中の中間転写ベルト15上に、順次、重ね合わさるように転写する(一次転写)。すなわち、無色透明トナー画像、イエロートナー画像、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、黒トナー画像の順に、中間転写ベルト15上に層状に重ね合わさる(図4)。なお、図4においてトナーAは無色透明トナーに相当し、トナーBは、イエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー、黒トナーのプロセスカラー用のトナーに相当している。
中間転写ベルト15は、その表面に転写されたトナー画像を、二次対向ローラ13に向かって回転移動する。
【0029】
このとき、イエロートナー画像、シアントナー画像、マゼンタトナー画像、黒トナー画像の重なり部分の単位面積(画素)あたりの総トナー付着量は、トナーの総量規制によって規制されているが、表面光沢付与用または透かし画像用の無色透明トナー画像が増えたことによって、トナーの総量規制の規制値を超えている部分(画素)も生じている。そのため、定着オフセットや定着状態の悪化、定着部材への用紙巻き付きなどの不具合が発生する虞があるが、しかしながら、後述する無色透明トナーを用いることで、その不具合を回避している。
【0030】
上記の動作と前後して、用紙Sは、ローラやガイド材を備えて構成された図示しない搬送部によってシート送り部5に向かって移動する。
シート送り部5は、その移動してきた用紙Sの先端部を挟んで用紙Sを待機させ、所定のタイミングで、二次対向ローラ13部分の中間転写ベルト15と二次転写ローラ41との間に向けて、その用紙Sを送り出す。
二次転写ローラ41は、転写電界を形成し、中間転写ベルト15上のトナー画像を、用紙Sに一括して転写する(二次転写)。
この二次転写により、無色透明トナー画像は、用紙S上で最表層に位置する(図5)。
【0031】
トナー画像が転写された用紙Sは、図示しない搬送部によって定着部6へ移動する。
定着部6は、トナー画像を載せた用紙Sに熱と圧力を加えて、用紙Sにトナー画像を定着する。
そして、トナー画像が定着した用紙Sは、図示しない排紙トレイに排出されて、一連の動作が終了する。
【0032】
次に、各現像器24a〜24eで用いられる現像剤を説明する。
各現像器24a〜24eで用いられる現像剤は、共にトナーとキャリアの二成分現像剤であり、用紙S上で最表層に位置する無色透明トナーの熱特性が、最表層以外のトナー、すなわち、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各トナーの熱特性よりも低温特性を有している。
【0033】
一般的にトナーは、染料や顔料などの着色剤と、結晶性ポリエステル樹脂と、結着樹脂と、滑剤と、結着樹脂と非相溶のワックスとを備えて構成されている。このうち、滑剤は、結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂との相溶性を調整するためのもので、その滑剤の種類や添加量を調整することで相溶性が変化し、それに伴ってトナーの熱特性が変化する。
【0034】
用紙S上で最表層に位置する無色透明トナーは、上述した構成のうち、着色剤を構成から除いた上に、最表層以外のトナー、すなわち、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各トナーの滑剤の種類や添加量を調整することで相溶性を変化させている。なお、有色のトナーが、結着樹脂や結晶性ポリエステル樹脂が白濁したものがベースになっている場合、無色透明トナーは、これらの樹脂をより透明な樹脂に変更しても良い。
【0035】
この滑剤は、例えば、モンタン酸エチレングリコールエステルワックス、モンタン酸グリセリンエステルワックス、モンタン酸ブチレングリコールエステルワックス、水酸化カルシウム部分ケン化モンタン酸エステルワックス、モンタン酸脂肪族ポリオールエステルワックス、モンタン酸ナトリウムワックス、モンタン酸リチウムワックス等が挙げられる。
【0036】
ワックスは、例えば、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
このうち、好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられるが、これらカルボニル基含有ワックスのうち特に好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。
【0037】
これらの材料を用いて製造するトナーであるが、製造方法は公知な混錬粉砕法でも良いが、好ましくは、有機溶媒中にウレア結合し得る変性されたポリエステル樹脂を含むトナー組成物を溶解させ、水系媒体中で重付加反応させ、この分散液の溶媒を除去、洗浄することによりトナーを得る方法を用いると良い。
【0038】
以上のように実施の形態1にかかる画像形成装置は、用紙上で最表層のトナー画像、すなわち、無色透明トナー画像を形成させるトナーの熱特性を、最表層以外の層のトナー(プロセスカラートナー)の熱特性よりも低温特性のトナーを用いるように構成している。
表面光沢付与用または透かし画像用の無色透明トナー画像が増えることで、プロセスカラートナーの総量規制の規制値を超えている部分(画素)が生じている虞があるにもかかわらず、上述した構成により、定着不良の回避、または定着不良の低減が期待できる。この効果を実証する実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0039】
<トナーの熱特性>
滑剤の調整により、トナーの1/2流出開始温度(T1/2)および定着下限温度が異なる2種類のトナー(以下、トナーA、トナーB)を用意した。トナーAは、無色透明トナーに相当し、トナーBを、イエロー、シアン、マゼンタ、黒のプロセスカラートナーに相当するものとする。
【0040】
トナーAの1/2流出開始温度は概ね110℃であり、トナーBの1/2流出開始温度は概ね125℃である。
トナーの1/2流出開始温度(T1/2)は、以下のように測定した。
すなわち、高架式フローテスタ(CFT−500またはCFT−100:島津製作所製)を用い、ダイス細孔の径1mm、加圧20Kg/cm2、昇温速度6℃/minの条件で1cm3の試料(トナー)を溶融流出させたときの流出開始点から流出終了点の高さの1/2に相当する温度を計測し、1/2流出開始温度とした。
【0041】
定着下限温度(定着不良が発生しない下限の定着温度)は、トナーBよりトナーAが低くなっている。これは、以下の評価方法の結果から得ている。
なお、用紙の上にトナーAのみ、またはトナーBのみを付着したものの定着の状態と、用紙の上にトナーBを付着し、その上にトナーAを付着したものの定着の状態とを比較検討することで、後者の構成による効果を確認している。
【0042】
<定着条件>
定着部6の定着条件を以下に示す。なお、市販の複写機の定着装置を単独で駆動できるように改造したものが測定に便利である。
ニップ幅;14.0mm±0.3mm
ニップ時間;40ms
加圧力;片側468N
定着温度;125〜135℃(トナーの低付着量時)、125〜140℃(トナーの高付着量時)。この定着温度は、段階的に変えている。
【0043】
<サンプルの取得>
用紙の上にトナーAのみを付着したもの、用紙の上にトナーBのみを付着したもの、用紙の上にトナーBを付着し、その上にトナーAを付着したもの、さらに、夫々、トナーの付着量を多くしたもの(高付着量)、トナーの付着量を少なくしたもの(低付着量時)の計6種の夫々に対し、定着温度を段階的に変えながらトナーの定着を実行して、複数枚のサンプルを得た。なお、サンプルに用いた用紙は、70W紙(連量が70kg(用紙1000枚の重さ)となるA4サイズのPPC用紙)である。
【0044】
高付着量時におけるトナーAとトナーBのトナー付着量M/A(mg/cm2)は、以下の通りである。用紙の上にトナーAのみを付着したものを0.32、用紙の上にトナーBのみを付着したものを0.64、用紙の上にトナーB、その上にトナーAを付着したものについては、トナーBを0.64、トナーAを0.32とした(図6)。
【0045】
低付着量時におけるトナーAとトナーBのトナー付着量M/A(mg/cm2)は、以下の通りである。用紙の上にトナーAまたはトナーBのみを付着したものを0.22、用紙の上にトナーB、その上にトナーAを付着したものについてはトナーAとトナーBの夫々を0.233とした(図7)。
【0046】
<サンプルの評価>
次に、得られたサンプルに対して定着状態の評価を行なった。
定着状態の評価方法は、先ず、一定量の荷重をかけた針をサンプルのトナー像に当てて引っ掻き、5段階の描画ランク(引っ掻き部分のトナーの取れ具合)の定着見本を予め作製しておく。この5段階の定着見本は、定着状態の良好状態から不良状態までを段階的にしたもので、描画ランクの数値が高いほど定着状態が良好であることを意味している。
なお、良好や不良といった定着状態の程度は個々の当業者により異なると思われるが、上述した方法により一定のレベルを決めることは可能である。
【0047】
そして、各サンプルに対して、この方法と同じ方法を実行し、サンプルの引っ掻き状態を5段階の定着見本のいずれかに当てはめた。その結果を図6及び図7に示す。
【0048】
先ず、図6の高付着量時について説明する。
例えば、トナーAのみを定着したサンプルが描画ランク“4”を得たときの定着温度は約130℃であり、トナーBのみを定着したサンプルが描画ランク“4”を得たときの定着温度は約140℃であった。また、トナーAのみを定着したサンプルが描画ランク“4”と“5”の間を得たときの定着温度は約135℃であり、トナーBのみを定着したサンプルが描画ランク“4”と“5”の間を得たときの定着温度は約145℃であった。
【0049】
トナーAはトナーBより1/2流出開始温度が低いため、トナーAのみを定着したサンプルは、トナーBのみを定着したサンプルより低い定着温度(定着温度差10℃)で、トナーBのみを定着したサンプルと同じ描画ランクが得られることがわかる。
この結果から、定着下限温度についても、トナーAはトナーBと比較して低温特性であることがわかる。なお、具体的な定着下限温度の評価、すなわち、描画ランクのどの数値のときの定着温度が定着下限温度であるかを判断することは、評価者の主観的な判断に左右されるために省略する。
【0050】
用紙の上にトナーB、その上にトナーAを付着して定着したサンプルの評価であるが、トナーBが付着しているにもかかわらず、トナーAのみを定着したサンプルと略同じ定着温度約135℃で、描画ランクが“4” と“5”の間のランクが得られる結果となった。これは、トナーAのみを定着したサンプルが描画ランク“4”と“5”の間を得たときの定着温度135℃と同じである。
【0051】
次に、低付着量時における結果であるが、図7に示すように、図6と比較して定着性ランクが全体的に下がったものの、図6の高付着量時と同様の傾向となった。
このように、用紙S上で最表層のトナー画像を形成させるトナーの熱特性を、他の層を形成させるトナーの熱特性より低温特性とすることで、トナー層が厚くなったにもかかわらず、無色透明トナーのみの結果と略同じ結果を得られることが確認できた。したがって、定着不良の低減化が期待できる新規な技術的手段と言える。
【0052】
上述したように、この実施の形態1によれば、表面光沢付与用または透かし画像用の無色透明トナー画像が増えたことによって、プロセスカラートナーの総量規制の規制値を超えている部分(画素)も生じている虞があるにもかかわらず、定着不良を回避、または定着不良の低減が期待できる。
【0053】
(実施の形態2)
実施の形態1で説明したように、用紙上で最表層のトナー画像を形成させるトナーの熱特性を、他の層を形成させるトナーの熱特性より低温特性とすることにより、良好な定着状態が期待できる。
【0054】
しかしながら、用紙の種類(坪量や連量の違い、PPC用紙、マット紙、アート紙、コート紙と言った用紙自体の相違など、以下、「紙種」という)によっては良好な定着性を得づらい虞がある。例えば、紙厚が薄いものに比べ、紙厚が厚いものは、定着ローラの熱が用紙に奪われて定着温度が下がってしまい、良好な定着性を得ることが出来ない虞がある。
【0055】
そこで、実施の形態2にかかる画像形成装置は、紙種ごとに定着条件を変更可能に構成したものである。実施の形態1と共通する構成の詳細な説明は省略する。
なお、坪量とは、1平方メートル当たりの紙の重量のことを言い、連量とは、ある規定の寸法に仕上げられた紙1000枚の重量のことを言う。
【0056】
実施の形態2にかかる画像形成装置は、図8に示すように、紙種検知部8と、制御部72とを備える。
【0057】
紙種検知部8は、発光部とその発光部からの光を受光する受光部とを備え、給紙トレイとプリントエンジンとの間の用紙搬送路で、発光部と受光部との間を用紙が通過するように設けられた透過型フォトインタラプタ(図1)と、用紙の透過状態に応じて変化する透過型フォトインタラプタからの出力電圧をA/D変換して被検知情報として制御部72に取り込むインターフェースとを備える。
【0058】
また、上述した透過型フォトインタラプタに代えて、給紙トレイとプリントエンジンとの間の用紙搬送路で、発光部からの光を搬送中の用紙で反射させて受光部で受光されるように設けられた反射型フォトインタラプタでも良い。
また、紙種検知部8は、上述した、透過型フォトインタラプタと反射型フォトインタラプタとを併用して構成しても良い。
さらに、フォトインタラプタに代えて、搬送中の用紙に熱を加える発熱体と、その発熱体で加熱された用紙の温度(熱容量)に応じた電圧を出力する温度センサを備えて紙種検知センサとしても良い。
【0059】
制御部72は、図8に示すように、実施の形態1で例示した構成に加え、情報記憶部721を備える。
情報記憶部721は、紙種検知部8からの被検知情報に基づいて紙種を特定するための閾値情報、定着部6の加圧ローラ62及び定着ローラ61の線速を制御してニップ時間を調整する速度制御情報、定着部6の誘導加熱部63への通電を制御して定着温度を調整する定着温度制御情報等が記憶されている。
【0060】
紙種(坪量の違いによる用紙の種類分け)と各情報との対応付け例を図9及び図10に示す。図9は最表層に低温特性を有するトナー画像(無色透明トナー画像)が有りの場合、図10は最表層に低温特性を有するトナー画像(無色透明トナー画像)が無しの場合を示している。
【0061】
図9及び図10に示すように、紙種を特定する坪量と、定着部6の加圧ローラ62及び定着ローラ61の線速と、定着部6の定着温度とが、“紙種No”に対応付けられている。この対応付け表を元に、制御可能な情報に置き換えられたものが、情報記憶部721に記憶されている。本実施の形態では、図9の対応付け表を元に、制御可能な情報に置き換えられたデータ群を定着条件1とし、図10の対応付け表を元に、制御可能な情報に置き換えられたデータ群を定着条件2とする。
なお、図9及び図10において示した各数値は一例であり、これに限定されるものではないが、最表層のトナー画像が無色透明トナーを用いる場合、用いない場合と比較して定着温度の低減効果があることから(図6、図7)、低めの定着温度設定になっている。
【0062】
また、この制御部72は、操作表示パネルを介して、ユーザーが紙種検知の入り切りが選択設定可能になっている。この紙種検知の入り切りは、給紙トレイと紙種との対応付けを行なうか否かで可能となる。例えば、予め、ユーザーが、給紙トレイ「1」をPPC用紙の普通紙設定にし、給紙トレイ「2」をPPC用紙のハガキ設定にすることで、紙種検知が切りの状態に設定される。給紙トレイと紙種との対応付けを行なわない場合は、紙種検知が入りの状態に設定される。
さらに、この制御部72は、操作表示パネルを介して、最表層のトナー画像を、無色透明トナー画像にするか否かを、ユーザーにより選択可能に構成される。
【0063】
次に、この制御部72による、画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を、図11を参照しながら説明する。
【0064】
制御部72は、先ず、スキャナユニットやパーソナルコンピュータ等からの画像データが入力されると(S1)、その画像データは、最表層のトナー画像を、無色透明トナー画像で形成するものか否かを判断する(S2)。
無色透明トナー画像を形成しない場合(S2;なし)、定着条件1のデータ群を参照対象とする(S3)。無色透明トナー画像を形成する場合(S2;あり)、定着条件2のデータ群を参照対象とする(S8)。
【0065】
次に、紙種検知の要否を判断する(S4、S9)。
紙種検知が不要な場合、すなわち、ユーザーによる、給紙トレイと紙種との対応付けがされている場合(S4、S9;不要)、制御部72は、ユーザー設定値として、その用紙に対応した紙種Noを決定する(S5、S10)。紙種検知が必要な場合、すなわち、ユーザーによる、給紙トレイと紙種との対応付けがされていない場合(S4、S9;必要)、制御部72は、紙種検知を実行する(S6、S11)。
制御部72は、紙種検知部8からの被検知情報と情報記憶部721に記憶された複数の閾値情報とを照合し、紙種検知値に基づいた紙種Noを選択、決定する(S7、S12)。
【0066】
このようにして、紙種Noが決定したら、その紙種Noに対応付けた定着条件に決定し(S13)、その定着条件に対応した画像形成動作を実行する。
例えば、無色透明トナー画像を最表層とし、紙種検知を実行した結果、紙種検知値に基づいた紙種Noが“6”であった場合、定着部6の加圧ローラ62及び定着ローラ61の線速が141(mm/sec)となるように速度制御すると共に、定着部6の定着温度が160(℃)となるように恒温制御を行なう。
【0067】
この実施の形態2にかかる画像形成装置によれば、紙種に応じた定着条件にするから、紙種が異なっても常に良好な定着状態が期待できる。
【0068】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる画像形成装置は、実施の形態2で例示した、紙種ごとに定着条件を変更可能に構成したものに代えて、最表層の無色透明トナーの載り量(無色透明トナーの載り量が無しの場合も含む)を、紙種ごとに、面積階調法により変更可能に構成したものである。この面積階調法とは、トナーの付着部分とトナーの非付着部分の面積の割合を変化させて階調を再現させるものであり、実施の形態3では、網点画像を例示している。なお、実施の形態1、2と共通する構成の詳細な説明は省略する。
【0069】
実施の形態3にかかる画像形成装置は、制御部73と、実施の形態2で例示した紙種検知部8とを備える。
制御部73は、図12に示すように、実施の形態1で例示した構成に加え、情報記憶部731と、画像データ処理制御部732とを備える。
【0070】
情報記憶部731には、紙種検知部8からの被検知情報に基づいて紙種を特定するための閾値情報、最表層のトナー画像を無色透明トナーで形成するか否かを紙種と対応付けた無色透明トナー画像の有無情報(紙種と低温特性のトナーの必要性の有無とを対応付けた情報)、無色透明トナー画像の画像形成パターン(最表層の無色透明トナーの載り量を制御)と紙種とを対応付けた画像形成パターン情報等が記憶されている。
【0071】
紙種(坪量の違いによる用紙の種類分け)と各情報との対応付け例を図13に示す。なお、図13において、画像形成パターンとして紙種No6のみ“網点”とし、紙種No7のみ“ベタ”としたり、坪量の違いによる用紙の種類分けをしたりしたものを図示しているが、これらの各情報は例示であり、この情報に限定されるものではない。
【0072】
図13に示すように、紙種を特定する坪量と無色透明トナー画像の有無と無色透明トナー画像の画像形成パターンとが紙種Noに対応付けられている。この対応付け表を元に、制御可能な情報に置き換えられたデータ群が、情報記憶部731に記憶されている。
【0073】
画像データ処理制御部732は、画像データ(ラスタイメージ)からトナー総量規制を考慮した、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号(例えば網点画像を形成させる信号)の生成、紙種に応じて無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号の生成をするか否か判断を行なうようになっている。さらに、この画像データ処理制御部732は、無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号の生成をする場合における画像形成パターンの選択・決定・生成等を行なうようになっている。この実施の形態3の場合、画像形成パターンは、トナーで用紙を塗り潰した、所謂、ベタ画像か、トナーによる印刷部分と用紙の地部分とが混在した網点画像かの何れかになっている。
【0074】
ここで、上述した画像形成パターンと無色透明トナーの載り量との関係を、図14〜図16を参照しながら説明する。図14はベタ画像の場合を、図15と図16は網点画像の場合を示している。また、図14〜図16において、(a)は、用紙にトナーを付着させただけの定着前の平面図を、(b)は、(a)を定着後の平面図を、(c)は、(b)の正面図または側面図を、夫々示している。なお、説明の便宜上、各図(a)において示したマス目は画素(ピクセル)を表現している。
【0075】
図14(a)に示すように、全ての画素に無色透明トナーCL1を載せる画像形成パターンの場合、その無色透明トナーを用紙に定着すると、図14(b)および(c)に示すように、略一定の厚さで用紙Sの表面全体を覆う無色透明トナー画像CL2が形成される。
【0076】
図15(a)に示すように、例えば、前後左右に一枡を空けて連続した複数の直交状となるように、各画素に無色透明トナーCL1を載せる画像形成パターンの場合、その無色透明トナーを用紙に定着すると、多少の起伏のあるものの、図14で例示したものよりも薄い厚さで用紙Sの表面全体を覆う無色透明トナー画像CL2が形成される。
【0077】
図16(a)に示すように、例えば、前後左右に所定の間隔をおいて連続した複数の直交状となるように、各画素に無色透明トナーCL1を載せる画像形成パターンの場合、その無色透明トナーを用紙に定着すると、図15で例示したものよりも薄い厚さで用紙Sの表面を覆う無色透明トナー画像CL2が形成される。なお、直交状の無色透明トナー部分の間隔を狭めれば、図15で例示したものよりも薄い厚さで用紙Sの表面全体を覆う無色透明トナー画像CL2が形成される。
このように、画像形成パターンを変えることで、最表層の無色透明トナーの載り量を制御可能である。
【0078】
また、この制御部73は、実施の形態2で例示した制御部72と同じく、操作表示パネルを介して、ユーザーが紙種検知の入り切りが選択設定可能になっている。この紙種検知の入り切りは、給紙トレイと紙種との対応付けを行なうか否かで可能となる。例えば、予め、ユーザーが、給紙トレイ「1」をPPC用紙の普通紙設定にし、給紙トレイ「2」をハガキ設定にすることで、紙種検知が切りの状態に設定される。給紙トレイと紙種との対応付けを行なわない場合は、紙種検知が入りの状態に設定される。
【0079】
次に、この制御部73による、画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を、図17を参照しながら説明する。
【0080】
制御部73は、スキャナユニットやパーソナルコンピュータ等からの画像データが入力されると(S15)、先ず、紙種検知の要否を判断する(S16)。紙種検知が不要な場合、すなわち、ユーザーによる、給紙トレイと紙種との対応付けがされている場合(S16;不要)、制御部73は、ユーザー設定値として、その用紙に対応した紙種Noを決定する(S17)。紙種検知が必要な場合、すなわち、ユーザーによる、給紙トレイと紙種との対応付けがされていない場合(S16;必要)、制御部73は、紙種検知を実行する(S18)。
【0081】
制御部73は、紙種検知部8からの被検知情報と情報記憶部731に記憶された複数の閾値情報とを照合し、紙種検知値に基づいた紙種Noを選択、決定する(S19)。
このようにして、紙種Noが決定したら、その決定した紙種Noは図13おける“6”であるか否かを判断する(S20)。紙種No6である場合(S20;Y)、無色透明トナー画像を最表層に形成する。すなわち、図15に示した網点画像を形成する静電潜像形成信号を生成し(S22)、その静電潜像形成信号などをプリントエンジンに出力する(S25)。
【0082】
S20において、紙種No6でない場合(S20;N)、紙種No7であるか否かを判断する(S21)。紙種No7である場合(S21;Y)、無色透明トナー画像を最表層に形成する。すなわち、図14に示したベタ画像を形成する静電潜像形成信号を生成し(S23)、その静電潜像形成信号などをプリントエンジンに出力する(S25)。
S21において、紙種No7でない場合(S21;N)、無色透明トナー画像を最表層に形成しない無処理とし、その旨の制御信号をプリントエンジンに出力する(S25)。
【0083】
この実施の形態3にかかる画像形成装置によれば、紙種に応じた無色透明トナーの載り量(無色透明トナーの載り量が無しの場合も含む)を制御するから、紙種が異なっても常に良好な定着状態が期待できる。
【0084】
(実施の形態4)
本実施の形態は、低温特性を有するトナーを無色透明トナーにしていることで、カラートナー画像の色調などを変えずに表面光沢をも向上させることが可能になっている。
この実施の形態4は、実施の形態3において、面積階調法により階調を変えることにより(トナーの載り量を変化させることにより)、定着不良の低減化を図りつつ、トナー画像の表面光沢をも制御可能とした例である。
【0085】
先ず、面積階調法による階調の変化と、トナー画像の表面光沢との関係について説明する。
無色透明トナー画像CL2を、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナーを用いたカラートナー画像CPの表面に形成し(図18)、且つ、その無色透明トナー画像CL2の網点面積率(用紙上の一画素をなす面積のうちトナーによって網点が形成される面積の割合)を異ならせた場合のトナー画像表面の光沢度(60度光沢、JIS Z 8741)を計測した。さらに、その計測をカラートナー画像の網点面積率を漸次異ならせて行なった。その結果を図19に示す。
【0086】
無色透明トナー画像CL2の網点面積率は、100(%;ベタ画像)、70(%)、50(%)、20(%)、10(%)、5(%)、0(%;なし)とした。また、使用した用紙Sは、PPC用紙(普通紙)である。
また、カラートナー画像の網点面積率とは、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー画像の網点面積率を合計したものである。
【0087】
図19に示すように、カラートナー画像の網点面積率を変えても、常に、無色透明トナー画像CL2の網点面積率が100(%;ベタ画像)、70(%)、50(%)、20(%)、10(%)、5(%)、0(%;なし)の順に、光沢度が高い結果となった。
このことから、トナー画像の表面光沢は、カラートナー画像の網点面積率に依存せず、最表層のトナー画像、すなわち無色透明トナー画像CL2の網点面積率に応じて変化することがわかる。
【0088】
このように、無色透明トナー画像CL2の網点面積率を変えることで、トナー画像の表面光沢が制御可能であるが、トナー画像の表面光沢をより簡単且つ正確に制御するためには、無色透明トナー画像CL2の網点面積率と光沢変化率とが線型関係にあることが好ましい。
そこで、無色透明トナー画像CL2の線数に着目し、網点面積率と光沢変化率とが線型関係となる線数があるか否かの評価を行なった。この評価を、図20、図21を参照しながら説明する。
【0089】
無色透明トナー画像CL2を、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナーを用いたカラートナー画像CPの表面に形成し(図18)、且つ、その無色透明トナー画像CL2の線数を異ならせた場合における光沢変化率を計測した。さらに、その計測を無色透明トナー画像CL2の網点面積率を漸次異ならせて行なった。その結果を図20に示す。
【0090】
無色透明トナー画像CL2の線数は、300(lpi)、210(lpi)、170(lpi)、150(lpi)、75(lpi)とした。また、使用した用紙Sは、PPC用紙(普通紙)である。
また、光沢変化率(%)とは、無色透明トナー画像CL2がベタのときの画像光沢を100(%)、無色透明トナー画像CL2がないときの画像光沢を0(%)としたとき、無色透明トナー画像CL2の網点面積率に対する百分率換算値である。
【0091】
図20に示すように、無色透明トナー画像CL2の線数によって、無色透明トナー画像CL2の網点面積率に対する光沢変化率の線型性が異なり、210(lpi)や150(lpi)の方が、75(lpi)や170(lpi)や300(lpi)よりも、線型性が優れていた(図20、図21)。
【0092】
従って、無色透明トナーによって、定着不良の低減化を図りつつ、光沢度をも制御する場合、無色透明トナー画像CL2を形成させる線数は、210(lpi)や150(lpi)が、簡単且つ正確性の高い制御を可能とすることから好ましい。なお、図21中におけるR2乗値とは、線型性の度合いを示すもので、“1.00”に近づくほど線型性が高いことを示す。
【0093】
上述したことを踏まえて、実施の形態4を説明する。
実施の形態4にかかる画像形成装置は、制御部74と、実施の形態2で例示した紙種検知部8とを備える。
制御部74は、図22に示すように、実施の形態1で例示した構成に加え、情報記憶部741と、画像データ処理制御部742と、操作表示パネル743とを備える。
【0094】
情報記憶部741は、紙種検知部8からの被検知情報に基づいて紙種を特定するための閾値情報、無色透明トナー画像を最表層のトナー画像として形成するか否かを紙種と対応付けた無色透明トナー画像の有無情報(紙種と低温特性のトナーの必要性の有無とを対応付けた情報)、低温特性のトナーの必要性が有る紙種の場合における無色透明トナー画像の網点面積率の情報等が記憶されている。
【0095】
画像データ処理制御部742は、画像データ(ラスタイメージ)からトナー総量規制を考慮した、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号(例えば網点画像を形成させる信号)の生成、紙種に応じて無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号の生成をするか否か判断、無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号の生成をする場合における網点面積率の選択・決定等、表面光沢処理の有無の判断、表面光沢処理を実行する場合において低温特性のトナーの必要性の有無を加味した網点面積率の選択・決定等を行なうようになっている。
【0096】
ここで、表面光沢処理を実行する場合において低温特性のトナーの必要性の有無を加味した網点面積率の選択・決定について説明する。
例えば、図13において、紙種No6の画像形成パターンは網点画像であるが、図23の紙種No6の欄に示すように、その網点画像の網点面積率は、定着不良の低減化が期待できる最低限の網点面積率を最低値(図22において50%を例示)としている。これに加え、ユーザーが所望する光沢度がある場合、その光沢度が得られる網点面積率を用いる。網点画像を形成する線数は、上述したように、簡単且つ正確に光沢度を制御できる線数、すなわち、210(lpi)や150(lpi)を採用していることが好ましい。
【0097】
また、図13において、紙種No1〜5の画像形成パターンは、実施の形態3では定着不良の低減化を図る必要性が希薄であるとの前提から特に規定していない。しかしながら、この実施の形態4は、図23に示すように、トナー画像の表面光沢の向上をも可能にするために、紙種No1〜5も画像形成パターンも網点画像(網点面積率0〜100%の範囲)としている。この実施の形態4では、網点面積率0〜100%を5段階に分けて、ユーザーの所望に応じて選択可能に構成される。なお、紙種No6の場合は、表面光沢処理の設定をしなくても、定着不良の低減化が期待できる最低限の網点面積率(例えば50%)が選択される。
【0098】
操作表示パネル743は、例えば、上述したような給紙トレイと紙種との対応付けや、光沢処理の設定などの各情報の入力と各情報の表示(出力)が行なわれる等、ユーザーインターフェースとして機能するようになっている。
【0099】
この操作表示パネル743における表面光沢処理設定の表示例を図24に示す。
図24において、表面光沢処理設定の1〜5の数字は、光沢処理の処理レベルを段階的に示したもので、数字が高いほど高光沢処理となる。1〜5の数字の下の“□”部分を触れることで“□”部分が点灯して選択状況が視認できるようになっている。図24は、表面光沢“2”が選択されている状態を示している。
【0100】
なお、この操作表示パネル743は当該画像形成装置に直接組み込むものとして例示しているが、当該画像形成装置をネットワークI/Fを介した外部機器(例えばパーソナルコンピュータ)と接続させる場合、その外部機器側で表示させるように構成しても良い。
【0101】
次に、制御部74による一連の動作を説明する。
先ず、操作表示パネル743を通じて、表面光沢処理の有無、処理レベルを、ユーザーから受け付ける。紙種検知部8からの被検知情報に基づいて紙種を特定し、その特定した紙種は、低温特性のトナーの必要性があるか否かを判断する。また、表面光沢処理の有無を判断する。
【0102】
低温特性のトナーの必要性がある紙種の場合で、表面光沢処理が無い場合は定着不良の低減化が期待できる最低限の網点面積率、表面光沢処理がある場合は、ユーザー指定の処理レベルに応じた網点面積率に設定して、無色透明トナー画像を形成する。
低温特性のトナーの必要性がない紙種の場合で、表面光沢処理が無い場合は無色透明トナー画像の形成を行なわず、表面光沢処理がある場合は、ユーザー指定の処理レベルの網点面積率に設定して、無色透明トナー画像を形成する。
【0103】
この実施の形態4によれば、面積階調法により、無色透明トナー画像の階調を変えることにより(トナーの載り量を変化させることにより)、トナー画像の表面光沢をも制御することができる。
【0104】
(実施の形態5)
上述した実施の形態3は、網点画像を形成する場合、予め設定された網点面積率の網点画像を形成した。この実施の形態5では、網点画像を形成する場合、ユーザーの省エネ要求に応じた網点画像処理を実行する構成(省エネモード)を実施の形態3の制御部73の構成に加えた例である。
なお、画像形成装置の構成の概略は、実施の形態4の説明で用いた図22を流用(実施の形態5の特有の構成は括弧付きの符号で示す)するものとし、上述した実施の形態と共通する構成は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0105】
実施の形態5にかかる制御部75は、図22に示すように、情報記憶部751と、画像データ処理制御部752と、操作表示パネル753とを備える。
【0106】
情報記憶部751は、紙種検知部8からの被検知情報に基づいて紙種を特定するための閾値情報、最表層のトナー画像を、無色透明トナー画像とするか否かと紙種とを対応付けた無色透明トナー画像の有無情報、無色透明トナー画像の画像形成パターン(最表層の無色透明トナーの載り量を制御)と紙種とを対応付けた画像形成パターン情報、さらに、省エネモード情報等が記憶されている。
【0107】
省エネモード情報について説明する。
上述したように、図14(a)はベタ画像の場合を、図15(a)は網点画像を、図16(a)は図15(a)よりも網点面積率を下げた網点画像を示しているが、これらの画像を定着させると、図番順に無色透明トナー画像の厚さが薄くなる。
無色透明トナー画像の厚さが厚いほど、定着温度の低減効果や良好な定着状態が期待できるが、換言すれば、無色透明トナーの使用量が多いということになる。その逆に、無色透明トナーの使用量を抑えると、定着温度を高める必要があることから消費電力が多くなる。
【0108】
省エネモード情報とは、定着温度の低減効果を段階的に分けたデータ群であり、その元となる対応付け表の一例を図25に示す。
【0109】
この対応付け表は、リコー製カラー複合機ImagioNeoC7500を用い、用紙は王子製紙製PODグロスコート128g/cm2紙、無色透明トナーは実施例1で例示したトナーA、無色透明トナー画像より用紙側となる下層画像は実施例1で例示したトナーBを用い画像面積率50(%)のモノクログレースケール、画像RIP処理はAdobe社Photoshop、画像解像度は600dpi、網点角度は45度、ドット形状はラインとし、定着性ランク“4”が得られるように、無色透明トナー画像の網点面積率、線数、定着温度を変えた結果である。
【0110】
網点面積率と線数について上記の下層画像の被覆状態を評価したところ、網点面積率が高く、なおかつ線数が低いほど下層画像の被覆が高い結果となった。つまりこれは無色透明トナー画像の定着時に、下層画像を十分な厚さで被覆している状態であり、定着温度を低減できる。
それに対して網点面積率が低く、線数が高い状態ほど下層画像を薄い厚さで被覆している状態であり、定着温度の低減効果は下がるものの、無色透明トナーの使用量を抑制できる。
【0111】
これら、無色透明トナー画像の網点面積率、線数、定着温度等の各制御情報を優先度Noに対応づけた対応付け表を予め作成し、この対応付け表を元に、制御可能な情報に置き換えられたデータ群を省エネモード情報として、情報記憶部751に記憶している。なお、図25に示した優先度Noと各制御情報との対応付けは、優先度Noの数字が小さいほど、定着温度の低減を優先させることを意味し、その逆に、優先度Noの数字が大きいほど、無色透明トナーの使用量の削減を優先させることを意味している。
【0112】
画像データ処理制御部752は、画像データ(ラスタイメージ)からトナー総量規制を考慮した、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号(例えば網点画像を形成させる信号)の生成、紙種に応じて無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号の生成をするか否か判断を行なうようになっている。さらに、この画像データ処理制御部752は、無色透明トナー画像用の2値の静電潜像形成信号の生成をする場合における画像形成パターンの選択・決定・生成等を行なうようになっている。
【0113】
この実施の形態5の場合、画像形成パターンは、トナーで用紙を塗り潰した、所謂、ベタ画像か網点画像かの何れかになっている。さらに、画像形成パターンが網点画像の場合、図25に示したように網点面積率等を異ならせた5段階の網点画像となっており、ユーザーの省エネ要求に応じた網点画像を選択するようになっている。
【0114】
操作表示パネル753は、例えば、上述したような給紙トレイと紙種との対応付けや、省エネモードの設定などの各情報の入力と各情報の表示(出力)が行なわれる等、ユーザーインターフェースとして機能するようになっている。
【0115】
この操作表示パネル753による省エネモード設定の表示例を図26に示す。
図26において、省エネモード設定の各数字(1〜5;「省エネモードNo」と呼称する)は、図25で示した優先度Noの各数字(1〜5)と対応付けたものである。各、省エネモードNoの下の“□”部分は、選択時に点灯して選択状況が視認できるようになっている。図26は、省エネモードNo“2”(図25において優先度No“2”)が選択されている状態を示している。
【0116】
なお、この操作表示パネル753は当該画像形成装置に直接組み込むものとして例示しているが、当該画像形成装置をネットワークI/Fを介した外部機器(例えばパーソナルコンピュータ)と接続させる場合、その外部機器側で表示させるように構成しても良い。
【0117】
次に、この制御部75による、画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を、図27を参照しながら説明する。なお、図27のフローチャートは、図17のフローチャートの処理ステップ、S15、S22以外は共通の処理ステップとなっている。
【0118】
制御部75は、スキャナユニットやパーソナルコンピュータ等からの画像データと、操作表示パネル753を介してユーザーによる省エネモードNoが入力されると(S15a)、先ず、紙種検知の要否を判断する(S16)。紙種検知が不要な場合、すなわち、ユーザーによる、給紙トレイと紙種との対応付けがされている場合(S16;不要)、制御部75は、ユーザー設定値として、その用紙に対応した紙種Noを決定する(S17)。紙種検知が必要な場合、すなわち、ユーザーによる、給紙トレイと紙種との対応付けがされていない場合(S16;必要)、制御部75は、紙種検知を実行する(S18)。
【0119】
制御部75は、紙種検知部8からの被検知情報と情報記憶部731に記憶された複数の閾値情報とを照合し、紙種検知値に基づいた紙種Noを選択、決定する(S19)。
このようにして、紙種Noが決定したら、その決定した紙種Noは図13おける“6”であるか否かを判断する(S20)。
【0120】
紙種No6である場合(S20;Y)、制御部75は、ユーザーにより入力された省エネモードNoに対応した省エネモード情報を参照する(S22a)。例えば、ユーザーが省エネモードNo2を入力していた場合、制御部75は、図25の対応付け表において、優先度No2の各情報(網点面積率84(%)、スクリーン線数80(lpi)、ドット形状;ライン、スクリーン角度;45度、定着温度161(℃)等)に基づいた省エネモード情報を参照する。
【0121】
そして、制御部75は、参照した省エネモード情報に基づいて網点画像を形成する静電潜像形成信号を生成し(S22b)、その静電潜像形成信号などをプリントエンジンに出力する(S25)。また、制御部75は、(S22b)定着部における恒温制御の設定温度を、参照した省エネモード情報の定着温度に設定し(S22b)、プリントエンジンを制御する(S25)。
【0122】
S20において、紙種No6でない場合(S20;N)、紙種No7であるか否かを判断する(S21)。紙種No7である場合(S21;Y)、無色透明トナー画像を最表層に形成する。すなわち、図14に示したベタ画像を形成する静電潜像形成信号を生成し(S23)、その静電潜像形成信号などをプリントエンジンに出力する(S25)。
【0123】
S21において、紙種No7でない場合(S21;N)、無色透明トナー画像を最表層に形成しない無処理とし、その旨の制御信号をプリントエンジンに出力する(S25)。
【0124】
この実施の形態5にかかる画像形成装置によれば、実施の形態3にかかる画像形成装置の効果に加え、画像形成パターンが網点画像とする紙種を検知した場合、ユーザーの省エネ要求に応じた網点画像処理を実行するから、実用性、機能性の向上が期待できる。
【0125】
(実施の形態6)
実施の形態6にかかる画像形成装置は、静電潜像の電位(露光部分の電位)を多段階で調整してトナーの付着量を増減する濃度階調法により最表層の無色透明トナーの載り量を変更可能に構成したものである。
なお、画像形成装置の構成の概略は、実施の形態3の説明で用いた図12を流用(実施の形態6の特有の構成は括弧付きの符号で示す)するものとし、上述した実施の形態と共通する構成は、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0126】
実施の形態6にかかる画像形成装置は、制御部76と、実施の形態2で例示した紙種検知部8とを備える。
制御部76は、図12に示すように、実施の形態1で例示した構成に加え、情報記憶部761と、画像データ処理制御部762とを備える。
【0127】
情報記憶部761は、紙種検知部8からの被検知情報に基づいて紙種を特定するための閾値情報、最表層のトナー画像を、無色透明トナー画像とするか否かと紙種とを対応付けた無色透明トナー画像の有無情報、無色透明トナー画像用の静電潜像を形成するための露光量(最表層の無色透明トナーの載り量を制御)と紙種とを対応付けた露光量情報等が記憶されている。
【0128】
ここで、濃度階調法について説明する。
感光体(本実施の形態では感光ドラム)に形成した静電潜像の電位は、露光器から照射した光の量、すなわち露光量に比例して高くなったり低くなったりする。さらに、感光体上へのトナーの付着量は、その静電潜像の電位に比例して量が増減する。したがって、用紙上に付着するトナーの量を制御するためには、露光量を制御すれば良いことになる。
この露光量を制御する方式としては、露光時間を一定にして光の強度を変化させる強度変調(パルス幅一定)と、光の強度を一定にして露光時間を変化させるパルス幅変調とがある。本実施の形態は、いずれの変調方式を用いても良い。
【0129】
紙種(坪量の違いによる用紙の種類分け)と各情報との対応付け例を図28に示す。なお、図28において、紙種No6のみ“露光量50(%)”とし、紙種No7のみ“露光量100(%)”としたり、坪量の違いによる用紙の種類分けをしたりしたものを図示しているが、これらの各情報は例示であり、この情報に限定されるものではない。
【0130】
図28に示すように、紙種を特定する坪量と無色透明トナー画像の有無と無色透明トナー画像用の静電潜像を形成するための露光量とが紙種Noに対応付けられている。この対応付け表を元に、制御可能な情報に置き換えられたデータ群が、情報記憶部761に記憶されている。
なお、紙種No6と紙種No7は露光量が異なるのみで、画像形成パターンはベタ画像である。
【0131】
画像データ処理制御部762(図12)は、画像データ(ラスタイメージ)からトナー総量規制を考慮した、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色のトナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号(例えば網点画像を形成させる信号)の生成、紙種に応じて無色透明トナー画像用の多値の静電潜像形成信号の生成をするか否か判断を行なうようになっている。さらに、この画像データ処理制御部762は、無色透明トナー画像用の多値の静電潜像形成信号の生成をする場合における露光量の選択・決定等を行なうようになっている。
【0132】
この制御部76による、画像データの入力から定着条件の決定に至る一連の動作例を、図29に示す。この図29のフローチャートは、図17のフローチャートの処理ステップS22、S23以外は共通の処理ステップとなっているため、その共通の処理ステップの説明は省略する。
【0133】
制御部76は、紙種検知部8からの被検知情報と情報記憶部731に記憶された複数の閾値情報とを照合し、紙種検知値に基づいた紙種Noを選択、決定を決定したら、その決定した紙種Noは図28おける“6”であるか否かを判断する(S20)。紙種No6である場合(S20;Y)、露光器23aの露光量を50(%)に設定(S22c)し、帯電器22aにより帯電した感光ドラム21aの表面にベタ画像の静電潜像を形成する静電潜像形成信号などをプリントエンジンに出力する(S25)。
【0134】
S20において、紙種No6でない場合(S20;N)、紙種No7であるか否かを判断する(S21)。紙種No7である場合(S21;Y)、露光器23aの露光量を100(%)に設定(S23a)し、帯電器22aにより帯電した感光ドラム21aの表面にベタ画像の静電潜像を形成する静電潜像形成信号などをプリントエンジンに出力する(S25)。
S21において、紙種No7でない場合(S21;N)、無色透明トナー画像を最表層に形成しない無処理とし、その旨の制御信号をプリントエンジンに出力する(S25)。
【0135】
この実施の形態6にかかる画像形成装置によれば、紙種に応じた無色透明トナーの載り量(無色透明トナーの載り量が無しの場合も含む)を制御するから、紙種が異なっても常に良好な定着状態の維持が期待できる。
なお、この実施の形態6の濃度階調法と、実施の形態3の面積階調法とを組み合わせても良い。
【0136】
(実施の形態7)
例えば、カラー写真部と文章部とが混在している印刷原稿などの場合、特段の処理を施さなくても定着性が確保された文章部は無処理とし、トナー総量規制がかかりやすい写真部分のみ、定着性や表面光沢を向上させたほうが効率的である。
そこで、実施の形態7にかかる画像形成装置は、最表層のトナー画像である無色透明トナー画像CL2を、用紙の任意の領域に形成可能に構成したものである。なお、この実施の形態7は、上述した各実施の形態との併用を前提にしている。
【0137】
例えば、この実施の形態7にかかる画像形成装置は、以下のように動作する制御部を備えて構成する。
先ず、画像データからトナー総量規制を考慮した各色のトナー画像形成用の2値の静電潜像形成信号の生成を行なう際、画像データに基づいて、例えば、カラー写真部と文章部とを判別する。そして、カラー写真部と同一領域となる無色透明トナー画像CL2形成用の2値の静電潜像形成信号を生成する。そして、その信号を、無色透明トナー画像CL2形成用の露光器23aへ送信する。
【0138】
上述したものは、ユーザーに何ら意識をさせないで、無色透明トナー画像CL2を、用紙の任意の領域に形成するものであるが、当該画像形成装置の操作表示パネルや、当該画像形成装置をネットワークI/Fを介して接続した外部機器を通じて、ユーザーによる領域指定させるように構成しても良い。
【0139】
この実施の形態7にかかる画像形成装置によれば、最表層のトナー画像である無色透明トナー画像CL2を、用紙の任意の領域に形成するから、定着オフセットや定着状態の悪化、定着ローラへの用紙巻き付きなどの不具合が発生する虞を、効果的に回避または低減することが期待できる。
【0140】
以上、本実施の形態にかかる画像形成装置を説明したが、上述した実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、種々変形実施が可能である。
例えば、本実施の形態では、プロセスカラー用の画像形成部と無色透明用の画像形成部とで5つの画像形成部とし、無色透明用の画像形成部で用いる無色透明トナーをプロセスカラーより低温特性を持たせたものを例示したが、このものに限定されない。すなわち、プロセスカラー用の画像形成部のみの画像形成装置で、最表層のトナー画像を形成させるトナーを他のトナーより低温特性を持たせても良い。また、本実施の形態のように5つの画像形成部の場合、無色透明トナー以外の特色トナー(例えば、金属色等)でも良い。
【0141】
また、本実施の形態は、画像形成装置を例示したが、シート状の記録材に対して最表層のトナー層を、最表層以外のトナー層のトナーの熱特性よりも低温特性のトナーで形成する、とした画像形成方法でも良い。
【0142】
また、本実施の形態にかかる画像形成装置は、中間転写ベルトを用いたものを例示しているが、用紙を用紙搬送ベルトで搬送しながら各感光体から直接トナー画像を転写するタイプの画像形成装置でも良い。
【符号の説明】
【0143】
1 中間転写ベルト部
11 駆動ローラ
12 従動ローラ
13 二次対向ローラ
14 テンションローラ
15 中間転写ベルト
2A 無色透明トナー画像形成用の画像形成部
2B イエロートナー画像形成用の画像形成部
2C シアントナー画像形成用の画像形成部
2D マゼンタトナー画像形成用の画像形成部
2E 黒トナー画像形成用の画像形成部
21a〜21e 感光ドラム
22a〜22e 帯電器
23a〜23e 露光器
24a〜24e 現像器
25a〜25e 除電器
26a〜26e 清掃器
3 一次転写部
4 二次転写部
41 二次転写ローラ
5 シート送り部
6 定着部
61 定着ローラ
62 加圧ローラ
71、72、73、74、75、76 制御部
S 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0144】
【特許文献1】特開2004−77807号公報
【特許文献2】特開2004−191853号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を形成させる画像形成部が、シート状の記録材に前記トナー画像を積層可能に複数設けられた画像形成装置であって、
複数の前記画像形成部のうち、前記記録材に対して最表層のトナー画像を形成させる画像形成部は、その最表層のトナー画像を形成させるトナーの熱特性が最表層以外の層のトナーの熱特性よりも低温特性のトナーを用いてなることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記熱特性は、定着下限温度、または、1/2流出開始温度、または、定着下限温度及び1/2流出開始温度であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録材に積層された複数の前記トナー画像を、所要の定着条件で前記記録材に定着させる定着部と、
前記定着条件を前記記録材の種類ごとに制御する制御部と
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記最表層のトナー画像を形成させる前記画像形成部に対し、前記低温特性のトナーの載り量を面積階調法で制御する制御部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記低温特性のトナーは、無色透明トナーであり、
前記制御部は、ユーザーが所望する光沢度をも考慮して制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、ユーザーの所望に応じて前記低温特性のトナーの載り量を制御することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記面積階調法に代えて濃度階調法としたことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録材の種類ごとに制御することを特徴とする請求項4乃至7の何れか記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記最表層のトナー画像を前記記録材の任意の領域に形成可能に制御することを特徴とすることを請求項1乃至8の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
シート状の記録材に複数のトナー層を形成してトナー画像を形成する画像形成方法であって、前記記録材に対して最表層のトナー層を、最表層以外のトナー層のトナーの熱特性よりも低温特性のトナーで形成することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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