説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】 帯電工程を用いずに、更にコントラストを向上させた潜像を形成する。
【解決手段】 透明導電性基体、感光層、及び電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを順に積層した電荷保持部材の微細孤立島状電荷サイトに電圧供給部材が接触された状態で、透明導電性基体と電圧供給部材との間に電圧を印加して、電荷保持部材内に電場を形成した状態で、電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び画像形成方法に係り、特に、電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて感光層上に形成された微細孤立島状電荷サイトを用い、感光層に画像光を照射することで、帯電工程を用いずに微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯電工程を用いない画像形成方法としては、特許文献1に開示されている画像形成方法が知られている。この画像形成方法は、以下の手順により画像を形成するものである。すなわち、(1)両極性に帯電可能な感光体と磁気ブラシ現像器との間に電圧を印加すると共に、磁気ブラシ現像器と対向する側より画像パターンに対応した光照射を行い、感光体にトラップ電荷を形成する。(2)次に、この磁気ブラシ現像器と感光体との間に上記の場合とは逆方向に電圧を印加して、光照射されない箇所に付着したトナーを除去することにより画像形成を行う。
【0003】
この画像形成方法を図1を参照して更に詳細に説明する。図1(1)に示すように、透明基体1上に、透明導電層2、及び光導電層3を順次積層して感光体を形成し、この光導電層3上に絶縁性トナーとキャリヤとからなる二成分現像剤を磁気ブラシ現像器4により搬送し、磁気ブラシ現像器4のスリーブと透明導電層2との間に、透明導電層2側に負の電荷が注入されるような電圧を印加し、透明導電層2に誘導電荷5を発生させ、この状態で、透明基体1の裏面側より矢印Bに示される方向から画像パターンに応じた光を照射する。
【0004】
光導電層3の露光された部分では内部にホトキャリヤが発生し、磁気ブラシ現像器と透明導電層との間の電界によってキャリヤ中の電子が、光導電層3の表面に到着し、透明導電層2と光導電層3との電位がほぼ同じになる。すなわち、この磁気ブラシ現像器での現像は、現像バイアス電圧で金属表面を現像すると同じ現像過程となる。このため、現像されたトナー層が持つ電荷と同じ量の逆極性の電荷(負電荷)が光導電層3に誘起される。この状態で、画像露光を停止すると、キャリヤの移動がほぼ無くなり、光導電層3の抵抗が上昇し、光導電層3はほぼ完全な絶縁体となる。このため、光導電層3表面に誘起された電荷はトラップ電荷となり、移動できなくなる。一方、非露光部では、光導電層3を介して、現像バイアスで感光体が現像されることになる。これが第1現像過程である。
【0005】
第2現像過程では、図1(2)に示すように、現像バイアス電圧を、第1現像過程の場合と比較して、感光体に対して逆バイアスとする。すると非露光部の帯電トナーは電界によって現像器4に回収され始める。これと同時に透明導電層2上に誘起されていた電荷もアース電極側に移動し、遂には透明導電層2上に誘起されていた誘導電荷(電子)は消滅する。
【0006】
一方、露光部では、一部の帯電トナーが現像器4と光導電層3との間の電界の作用により回収される。しかしながら、光導電層3内にトラップされている電子は移動できないため、回収された電荷量に対応して透明導電層2上にトナー7と同じ極性の電荷6が誘起される。
【0007】
光照射しない時の光導電層の容量は小さいため、わずかな正電荷に対しても、光導電層上の表面電位は大きく変化し、現像バイアス電圧と釣り合い、最早これ以上、露光部のトナーは静電的に回収されなくなり、露光部のみ帯電トナー7が残り、トナー画像が形成される。
【0008】
上記が特許文献1の画像形成方法であるが、この画像形成方法においては、トラップ電荷が重要な働きをしている。
【0009】
特許文献2には、トラップ電荷が感光体内部でどの様に分布するかを実験的に確かめることにより、透明導電層と両極性に帯電可能でかつドット状の導電層を被着した光導電層とを透明基体上に積層することによりトラップ電荷サイトを形成した感光体を用い、第1電極と感光体との間に帯電トナーを搬送し、第1電極と透明導電層との間に電圧を印加すると共に、透明基体側より画像パターンに対応して露光することで、帯電トナーを感光体の露光部と非露光部とに付着させ、露光部の位置において帯電トナーの電荷によって、透明導電層より光導電層を介してドット状の導電層に電荷の注入を行って光導電層の表面近傍にトラップ電荷を形成し(第1現像過程)、次いで感光体の露光部を第2電極に対向する位置に搬送した後、第2電極と感光体との間に第1電極に印加した電圧と逆極性の電圧を印加し、非露光部に付着した帯電トナーを静電的に除去する(第2現像過程)画像形成方法が記載されている。
【0010】
次に上記の特許文献1及び特許文献2の各画像形成方法におけるトラップ電荷について、図2を用いて説明する。図2は、特許文献1及び特許文献2の第1現像過程の後の露光部に対応するトナー層上の表面電位(トナー電圧Vt)を横軸に、帯電トナーを窒素ガスにて吹き飛ばした直後の感光体の表面電位(トラップ電圧VS)を縦軸にとったものである。
【0011】
図2において、三角形21A,21B,21C,・・・は、透明導電層及び光導電層を透明基体上に積層した感光体(特許文献1)を用いた場合のトナー電圧とトラップ電圧との関係を実測したものである。また、実線22は付着トナーの電荷量に対応したトラップ電荷が、光導電層の表面に分布したと過程して求めた理論値である。更に、破線で示す曲線23は、付着トナーの電荷量に対応してトラップ電荷が光導電層の厚さ方向に対して、トラップ電荷が均一に分布していると仮定して求めた理論値である。
【0012】
図2より、曲線23と実測値21A,21B,21C,・・・とが良く一致しており、帯電トナー層を除去した後は、トラップ電荷は光導電層内で均一に分布していると考えられる。このことは、特許文献1では光照射した後と、光照射を停止した後との感光体容量が見かけ上2倍になったことに相当し、一定以上の濃度の印字を得るためには、光導電層の表面にトラップ電荷が分布している場合と比較して、現像バイアス電圧を2倍以上高くする必要があることを意味している。
【0013】
これに対して、特許文献2には、感光体の光導電層の表面に銅箔を貼り付けた光導電層を用い、この銅箔上に現像されて付着したトナー層を窒素ガスで吹き飛ばした直後のトラップ電圧を測定した結果が示されている。この実測値を図2で丸印24A,24B,・・・で示す。図より、丸印24A,24B,・・・は曲線22と良く一致し、銅箔を設けた場合(ドット状の導電層が被着された光導電層が形成された感光体を用いた場合)は、トラップ電荷が光導電層の表面に形成されていることが分かる。このように、特許文献2に記載されているように光導電層表面にトラップ電荷サイトを設けることがコントラストを高める上で有効である。
【特許文献1】特開昭61−46961号公報
【特許文献2】特開昭61−144678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献2の場合においても従来のカールソン法に比較して、若干コントラストが低いという問題があった。以下、この問題を感光体表面の潜像電荷量に関して分析を加えた結果に基づいて説明する。
【0015】
先ず、感光体表面にトラップ電荷サイトを構成した場合の潜像電荷量QDに関して考察する。第1現像過程で現像バイアス電位Vbで現像され、帯電トナーの付着によりトナー層の表面電位が現像バイアスと同じ電位Vbになると仮定すると次式が成り立つ。
【0016】
【数1】

【0017】
但し、ε0は真空の誘電率、εtは帯電トナー層の比誘電率、ρtは帯電トナー層の帯電電荷密度、xは帯電トナー層の厚さである。
【0018】
また、潜像電荷量QDはこの現像された電荷の総和であるため次式で表される。
【0019】
【数2】

【0020】
式(1)からトナー層厚さxを求め、これを式(2)に代入すると、潜像電荷QDは次式となる。
【0021】
【数3】

【0022】
一方、通常のカールソン法における潜像電荷Qkは次式で表される。
【0023】
【数4】

【0024】
但し、εpは感光体の比誘電率、Lは感光体の厚さ、VSCは感光体の表面電位である。
【0025】
潜像電荷QD、Qkについて通常の有機感光体を例にとり、感光体の厚みL=20μm,感光体の比誘電率εp=3.0、更にトナー層の比誘電率εt=2.2、帯電トナーの電荷密度ρt=6.6C/m3(トナー比電荷10μC/gに相当)として、計算した結果を図3に示す。縦軸は潜像電荷量、横軸はトナー層電圧及び感光体の表面電位を表し、QDは式(3)の理論値を、Qkは式(4)の理論値を示す。
【0026】
図3より明らかなように、トナー層表面電圧が200V以上では通常のカールソン法の方が、潜像電荷量が多くなっている。更に、式(3)から、トナーの帯電電荷密度が高くなる程、潜像電荷が増加することが分かる。しかし、一般に、トナー比電荷が大きくなると画像濃度が小さくなる。このように、通常の使用条件では、カールソン法の潜像電荷量の方が大きく、特許文献2の画像形成方法でも、未だコントラスト不足が否めないことが分かる。
【0027】
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたもので、帯電工程を用いずに潜像を形成して画像を形成する場合に、更にコントラストを向上させることができる画像形成装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために本発明の画像形成装置は、透明導電性基体、該透明導電性基体上に形成された感光層、及び該感光層上に電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを備えた電荷保持部材と、前記微細孤立島状電荷サイトに接触される導電性の電圧供給部材と、前記微細孤立島状電荷サイトに前記電圧供給部材が接触された状態で、前記透明導電性基体と前記電圧供給部材との間に電圧を印加して、前記電荷保持部材内に電場を形成する潜像形成用電源と、前記電荷保持部材内に電場を形成した状態で、前記電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、前記微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する露光手段と、を含んで構成されている。
【0029】
本発明は、コントラストを向上させるために潜像電荷量を増加するには、上記式(3)に基づいて、トナー帯電量を高くする、すなわち、第1現像過程(第1ステップ)での現像トナー量を極力少なくして、充分な大きさのトラップ電荷を形成した後、第2現像過程(第2ステップ)で画像形成すれば良いことに着目して成されたものである。
【0030】
本発明では、電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを備えた電荷保持部材の微細孤立島状電荷サイトに電圧供給部材が接触された状態で、透明導電性基体と電圧供給部材との間に電圧を印加して、電荷保持部材内に電場を形成し、電荷保持部材内に電場を形成した状態で、電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する。このように、本発明では、第1現像過程では、帯電トナーで現像するのではなく、微細孤立島状電荷サイト、すなわち近接電極にて電場を形成し、電場が形成された状態で画像パターンに対応して画像露光を行う。これにより、感光体である電荷保持部材内部に光キャリヤが形成され、この光キャリヤが光導電層を介して微細孤立島状電荷サイトに到達し、透明導電性基体と微細孤立島状電荷サイトとの電位を等しくすることで、感光体の容量が無限大に近い絶縁体に電源電圧から電荷を充電することになり、充分な大きさのトラップ電荷を形成した後、第2現像過程(第2ステップ)で画像形成することができるので、カールソン法以上の潜像コントラストを得ることができる。
【0031】
本発明では、電荷保持部材に導電性トラップサイトである微細孤立島状電荷サイトを設けた場合、第1ステップで電圧を印加すると、画像露光が無い場合でも印加電圧によって導電性トラップサイトが帯電される場合がある。これを回避するためには、微細孤立島状電荷サイトの表面に絶縁層、好ましくは厚みが薄い絶縁層を設ければよい。すなわち、本発明では、透明導電性基体、該透明導電性基体上に形成された感光層、該感光層上に電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイト、及び該微細孤立島状電荷サイト上に形成された絶縁層を備えた電荷保持部材を用いるようにしてもよい。
【0032】
微細孤立島状電荷サイト上に絶縁層を形成した場合には、絶縁層に電圧供給部材が接触された状態で、透明導電性基体と電圧供給部材との間に電圧を印加して、電荷保持部材内に電場を形成し、電荷保持部材内に電場を形成した状態で、電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する。
【0033】
本発明では、透明導電性基体を円筒状に形成し、透明導電性基体の外周面上に感光層、及び微細孤立島状電荷サイトを形成するか、または透明導電性基体を円筒状に形成し、透明導電性基体の外周面上に感光層、微細孤立島状電荷サイト、及び絶縁層を形成することができる。
【0034】
本発明の電圧供給部材は、導電性ゴム部材あるいは導電性磁性粉体で形成することが可能である。
【0035】
透明導電性基体と電圧供給部材との間に印加する電圧は、電荷保持部材と電圧供給部材との間で気中放電が生じない電圧VSとすることが好ましい。この電圧VSは、次のいずれか一方の式を満たすように定めることができる。
【0036】
【数5】

【0037】
【数6】

【0038】
但し、ρminは充分な画像濃度を得るために必要な最小潜像電荷密度、ε0は真空の誘電率、L/εpは光導電層の等価厚さ、D/εdは絶縁層の等価厚さである。
【0039】
なお、いずれの場合においても印加電圧VSの下限値は、トナー画像形成を行う際に必要かつ充分な潜像電荷量を得ることができる電圧となる。
【0040】
また、電荷保持部材と電圧供給部材とが接触した状態から剥離する際に、透明導電性基体と電圧供給部材との間に、電荷保持部材と電圧供給部材間での剥離放電を防止する剥離放電防止電圧を印加する剥離放電防止電源を更に含んでもよい。
【0041】
剥離放電防止電圧VNDは、次の式を満たすように定めることができる。
【0042】
【数7】

【0043】
但し、Vthは空隙放電開始電圧である。
【発明の効果】
【0044】
以上説明したように本発明の画像形成装置及び画像形成方法によれば、電荷保持が可能な多数の微細電極を分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを備えた電荷保持部材内に電場を形成した状態で、電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成し、且つ剥離放電防止用の電圧を印加し、導電性物体を感光体から剥離する際に剥離放電を防止することで、微細孤立島状電荷サイトに充分な大きさのトラップ電荷を形成した後、画像形成することができるので、カールソン法以上の潜像コントラストを得ることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図6に示されるように、第1の実施の形態の画像形成装置としてのカラーレーザプリンタ(以下、単にプリンタと言う)は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像をそれぞれ被転写体としての連続紙Pに転写し、各色のトナー画像を重ね合わせて画像を形成するプリント部12Y、12M、12C、12K(以下、「プリント部12Y〜12K」と言う)が搬送方向(矢印T方向)上流から下流側に向かって順に配置されて構成されている。
【0046】
プリント部12Y〜12Kの搬送方向上流側には、用紙搬送部(図示せず)が設けられている。一方、プリント部12Y〜12Kの搬送方向下流側には、プリント部12Y〜12Kで順に転写された未定着トナー画像を連続紙Pに定着させる定着部(図示せず)及び連続紙を排出する排出部(図示せず)が設けられている。
【0047】
プリント部12Y〜12Kの各々は、図8にも示すようにトナー画像が形成される像担持体として機能する電荷保持部材としての感光体ドラム20を備えている。この感光体ドラム20には、プラス極性に帯電可能な高耐刷の有機感光体を使用することができる。
【0048】
感光体ドラム20は、図7(a)に示すように、感光体基板としての円筒状の透明ガラス素管20Bの外周面上に、透明導電性基体としての透明導電層20C、感光層としての光導電層20D、及び電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを形成する微細孤立島状電極20Eを順に積層し、更に微細孤立島状電極20Eの上に絶縁層20Fを積層した5層構造のドラムで構成されている。
【0049】
微細孤立島状電極20Eは、図7(b)に示すように、電荷保持が可能な多数の微細電極を相互に接触しないように1画素より細かく層状に分布させて構成されている。この微細孤立島状電極20Eは、光導電層20Dをコーティング法等により所定厚さに塗布した上に、マスク蒸着法等により画素密度より細かいパターンで、銅等の導電性金属をスッパタして極細の孤立したドット状の電極を所定ドット間隔で多数近接配列して構成した電極層を積層することにより構成することができる。微細孤立島状電極20Eの密度は、画像の解像度に応じて定めることができ、電極の密度を高くすることにより解像度をより高くすることができる。
【0050】
図8に示すように、感光体ドラム20の周りには、感光体ドラムの回転方向(矢印R方向)に沿って順に、転写ローラ30、クリーナ40、光除電ランプ41、導電性ゴムローラ42、LEDを感光ドラムの長さ方向に多数配列したLED列を少なくとも1列配列した画像露光装置44、及び現像装置43が配置されている。
【0051】
現像装置43には、2成分磁気ブラシ現像器が用いられている。この現像装置には、複数の現像ローラ51、掻き揚げ用の磁気ローラ52、及び2軸の攪拌スクリュー53が設けられている。また、現像剤としては、例えば、粒子径約5μmの絶縁トナーと粒子径約60μmの導電性鉄粉のキャリヤとを混合した現像剤を用いることができる。現像装置では、2軸の攪拌スクリュー53で現像剤の攪拌とトナーの摩擦帯電が行なわれる。この2軸攪拌スクリューによって攪拌された現像剤は、掻き揚げ用の磁気ローラ52で、一連の現像ローラ51まで搬送される。現像ローラ51の周速度は、例えばプロセス速度の1.1倍とすることができる。
【0052】
第1の実施の形態では、第1現像過程(第1ステップ)において、従来のように帯電トナーを用いることなく、導電性ゴムローラ42を絶縁層20Fに所定圧力で接触させ、潜像形成用電源を用いて導電性ゴムローラ42と透明導電層20Cとの間に電場を形成して近接電極である微細孤立島状電極20Eで電場を形成し、電場を形成した状態で、ガラス素管20Bの内部に設けた画像露光装置44のLEDを画像パターンに応じて点灯させて画像露光を行い、微細孤立島状電極20Eに静電潜像を形成する。これによって、充分な大きさのトラップ電荷を有する静電潜像が微細孤立島状電極20Eに形成される。
【0053】
その後、第2現像過程(第2ステップ)で現像装置43を用いて現像剤により潜像を現像し、画像形成する。第1の実施の形態によれば、微細孤立島状電極20Eが絶縁層20Fにより被覆されているので、第1ステップで電圧を印加して電場を形成した場合に、画像露光が無いにもかかわらず印加電圧によって電荷トラップサイトが帯電する不具合が回避される。また、本実施例の絶縁層は光導電層にて構成したため、光除電ランプ41での除電効果が有効に作用し、絶縁層表面に蓄積された電荷が充分除去され、感光体ドラムの繰り返し使用に耐えることができる。
【0054】
なお、印加電圧によって電荷トラップサイトが帯電する可能性が少ない場合には、絶縁層20Fは省略することもできる。
【0055】
第1の実施の形態において、絶縁層を感光層20Dと同じ材料で構成することにより、潜像形成過程・現像過程・転写過程にて生じた絶縁層表面に付着した電荷を、光除電ランプ41にて有効に除去でき、絶縁層表面の電荷を略ゼロにすることができる。勿論、この絶縁層を画像露光光源とは別波長に感度を持つ光導電層を形成することも出来る。この場合は、第1ステップの潜像形成過程においては光感度がないため、実質的に絶縁体となる。一方、光除電部では除電光によって、絶縁層が活性化し、十分な除電効果が発揮される。
【0056】
また、上記絶縁層の上に更に感光層を設け、この感光層を利用して除電を行うことも可能である。
【0057】
以下、第1の実施の形態の印加電圧の大きさについて検討する。図4(a)は、導電性ゴムローラ42の導電性基板42Aに潜像形成用電源の負極を接続し、かつ透明導電層20Cに潜像形成用電源の負極を接続することにより導電性ゴムローラ42と透明導電層20Cとの間に印加電圧VSを印加して露光した状態をモデル化して示したものである。また、図4(b)は、導電性ゴムローラ42と絶縁層20Fとの接触を解除したときに、導電性ゴムローラ42と絶縁層20Fとの間に空隙60が生じた状態をモデル化して示したものである。
【0058】
第1ステップでは、図4(a)に示す様に、ガラス素管の内側から透明導電層20Cを介して画像露光を行うと、光導電層20D内に光キャリヤが発生し、図の場合にはプラス電荷が電荷トラップ層である微細孤立島状電極に移動する。この時、電荷トラップ層に蓄積される面電荷密度ρは次式で表される。
【0059】
【数8】

【0060】
但し、ε0は真空の誘電率、εdは絶縁層の比誘電率、Dは絶縁層の厚さ、VSは印加電圧である。
【0061】
次の第2ステップで光照射がなくなると、図4(b)に示すように、電荷トラップ層に式(5)に示す電荷密度が保持されたまま、光導電層は再度絶縁体状態となり、この状態で、絶縁層20Fの表面に接触していた電圧供給部材である導電性ゴムローラ42が除々に剥がされて空隙60の空隙距離Gが拡大していく。この時には以下の関係式が成り立つ。
【0062】
【数9】

【0063】
ここで、式(6)から透明導電層上に誘起される面電荷密度ρ0を求めると、次式が得られる。
【0064】
【数10】

【0065】
式(8)に、式(5)の潜像の面電荷密度ρを代入すると次式が得られる。
【0066】
【数11】

【0067】
ここで、L/εpは光導電層の等価厚さ、D/εdは絶縁層の等価厚さを示す。
【0068】
すなわち、第1ステップの直後は、空隙距離G=0の状態であるから、式(9)にG=0を代入すれば、ρ0=0となり、透明導電層上への誘起電荷は無く、式(7)より、全て電圧供給部材上の導電性基板42Aに電荷が誘起されていることが分かる。
【0069】
次に、第2ステップで空隙距離Gが除々に大きくなるに従って、式(9)で示される様に、微細孤立島状電極上に誘起される電荷が除々に増加すると共に、最終的には式(5)と同じ電荷密度で且つ逆極性の電荷が誘起されることになる。一方、電圧供給部材上の導電性基板42Aに誘起されている電荷は除々に小さくなり、最終的にはゼロとなる。
【0070】
この第2ステップにて重要なことは、除々に増加する空隙距離によって気中放電を発生させない条件を求めることにある。そこで、式(6)に式(1)を代入し、空隙電圧Vg求めると次式となる。
【0071】
【数12】

【0072】
この空隙電圧が一般的に良く知られている次式の放電開始電圧Vgth以下であれば、トラップ電荷により形成された静電潜像(ネガ潜像)が、気中放電により壊されることは無い。
【0073】
【数13】

【0074】
すなわち、Vg<Vgthの条件を代入すると、次式となる。
【0075】
【数14】

【0076】
式(12)を整理すると次式になる。
【0077】
【数15】

【0078】
式(13)は空隙距離Gに関する2次方程式であるから、判別式が負になれば気中放電が生じないことになる。判別式から得られる最大印加可能電圧VSmaxabを求めると次式となる。
【0079】
【数16】

【0080】
式(14)は、放電開始電圧が空隙距離の関数で、式(11)で表されるとして求めた最大印加可能電圧である。従って、空中放電させないためには、印加電圧VSを最大印加可能電圧VSmaxab未満とすればよい。
【0081】
通常は、如何なる空隙であっても気中放電させないためには、最小空隙電圧として312Vを考えておけば良い。この方が確実で安全である。以下ではこの条件にて検討を進めると、印加電圧VSは次式となる。
【0082】
【数17】

【0083】
ここで、空隙Gが∞の最終状態を考え、最大印加電圧VSmaxは次式となる。
【0084】
【数18】

【0085】
また、この最大印加電圧VSmaxを印加したときに得られる最大潜像電荷蜜度ρmaxは、式(16)を次(5)に代入して次式となる。
【0086】
【数19】

【0087】
また、トナー画像形成を行う際に、最低限必要な潜像電荷密度をρminとすると、この時の最小印加電圧VSminは次式となる。
【0088】
【数20】

【0089】
すなわちトナー画像形成を行う際に必要かつ充分な潜像電荷量を得ることができる印加電圧VSの範囲は次式で表される。
【0090】
【数21】

【0091】
この時の潜像電荷量(面電荷密度)ρは次式となる。
【0092】
【数22】

【0093】
更に、第2ステップが完了した時点でのネガ潜像による感光体表面電位VSiは、式(20)のネガ潜像電荷量ρを感光体の静電容量で割って求めることができ、次式となる。
【0094】
【数23】

【0095】
ここで、式(19)、式(20)、式(21)を用いて、第1の実施の形態の潜像形成方法について、数値的に考察した結果を図5に示す。図5−1は潜像電荷量ρを、図5−2は印加電圧VSを、図5−3は得られた感光体ドラム表面電位VSiを各々示す。横軸は感光体ドラムの厚さL(μm)、パラメータは絶縁層の厚さD(μm)とした。すなわち、パラメータの1,2,3,4,5はそれぞれ、1μm,2μm,3μm,4μm,5μmを意味している。また感光体ドラム及び絶縁層の比誘電率は共に3.0と仮定した。図5−1より、潜像電荷を大きくするには、感光体ドラムの厚さを薄く、且つ絶縁層の厚さも薄くする方が良いことが分かる。また、図5−2より、空隙放電が生じない範囲で、印加電圧をある程度高くするには、感光体ドラムの厚さを薄く、且つ絶縁層の厚さを厚くするほうが良いことが分かる。更に、図5−3より、ネガ潜像で形成される感光層表面電位を大きくするには、感光体ドラムの厚さはある程度必要で、絶縁層の厚さを薄くする必要があることを示している。
【0096】
因みに、通常の電子写真プロセスで必要とされる潜像電荷は、有機感光体の場合、感光体ドラムの厚さL=20μm,比誘電率εp=3.0、感光体ドラムの帯電電位約600Vであるから、潜像電荷量は796μC/m2,すなわち約800μC/m2(8×10-4C/m2)となる。この値を達成できる条件を図5より求めると、一例として、感光体ドラムの厚さ4μm,絶縁層の厚さ1μmとすると、印加電圧約60Vにて、感光体ドラムの表面電位250Vが得られることになる。また、式(14)から最大印加可能電圧VSmaxabを求めると87Vとなり、この時の感光体表面電位は348Vとなり、共に約40%程度増加させることができる。
【0097】
上記の実施の形態では、電圧供給部材として導電性ゴムローラを用いる例について説明したが、導電性磁性粉体で構成した電圧供給部材を用いるようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
以下に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態において、前記第1の実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付して、その構成の説明を省略する。
【0098】
第2の実施の形態の特徴は、潜像形成用電圧を印加する電源とは別に剥離放電防止用電圧を印加する剥離放電防止用の電源を備え、前記第2ステップにおいて、潜像形成用電圧の印加に加え、剥離放電防止用電圧を印加する点にある。
【0099】
まず、第2の実施の形態の動作原理を説明する。
【0100】
図9(a)に示すように、電荷保持部材に、導電性物体である電圧供給手段を介して潜像形成電圧を印加すると、透明導電性基板にプラス電荷が誘導される。この状態で、画像露光を行うと、露光された部分の電荷が電荷サイトに向けて移動し、最終的には電荷サイトに画像パターンに応じてプラス電荷が保持され、ネガ潜像となる。露光後は感光体は絶縁体となるため、ネガ潜像は電荷サイトに留まることになる。即ち、図9(a)に示すように、プラス電荷が留まることになる。また、この電荷と逆極性の電荷が導電性物体の表面に誘導電荷として現れることになる。
【0101】
一方、図9(b)に示すように、剥離過程においては、潜像電荷のプラス電荷に呼応するマイナス電荷を透明電極側に誘起し易くするため、導電性物体に剥離放電防止電圧(潜像形成用電圧より低い電圧、或いは潜像形成用電圧と逆極性の電圧)が正極の電源に接続する第2の導電性基板54Aにより印加される。そして、電荷保持部材と導電性部材とを剥離していくと、潜像電荷のプラス電荷に呼応するマイナス電荷が透明電極側に誘起される。このため、電荷保持部材と導電性部材との間に空隙ができる際にも、当該空隙で剥離放電が生じることなく、潜像形成過程にて形成された高い潜像コントラストが保持されることになる。
【0102】
次に、第2の実施の形態の印加電圧の大きさについて検討する。図10(a)に示されるように、透明導電層20C、光導電層20D、絶縁層20Fからなる電荷保持部材と電圧供給部材との間に、潜像形成用電源で電圧を印加する。この電圧印加状態で、透明導電層20C側から画像露光を行う。当該画像露光の際には、光導電層20D内にて光キャリアが発生し、絶縁層20F界面の微細孤立島状電極層20Eに潜像電荷ρとして保持される。一方、電圧供給部材の表面には逆極性の電荷−ρが誘起される。露光後は、この状態が保持される。
【0103】
図10(b)に示されるように、電荷保持部材から電圧供給部材を剥離する際には、導電基板に剥離放電防止電圧(潜像形成電圧より低い電圧或いは逆極性の電圧)を印加した状態で、除々に剥離を行う。すると、潜像電荷(トラップ電荷)に呼応した逆極性の電荷は電圧供給部材から除々に減少し、対応電荷が透明導電層20C側に誘導電荷となって現れる。こうして空隙電圧は放電開始電圧以下に抑えられるため、第1ステップにて形成された潜像電荷が剥離放電によって壊されること無く、剥離過程後も保持されることになる。
【0104】
図10(a)に示される過程では、透明感光体20Bの裏側から画像露光を行い、感光体内で光キャリヤが発生し、図10(a)に示す様にプラス電荷が微細孤立島状電極層20Eに移動する。この時トラップ電荷に蓄積された面電荷密度ρは、式(22)となる。
【0105】
【数24】

【0106】
図10(b)に示す過程では、微細孤立島状電極層20Eに前記式(22)の電荷密度が保持されたまま光照射がなくなり、感光体層は絶縁状態となる。この状態で導電性基板42A上に剥離防止電圧VNDが印加される。電圧供給部材は感光体層から除々に剥離され、空隙60が拡大していく。この状態は、以下の式(23)及び式(24)で表される。
【0107】
【数25】

【0108】
但し、ρ0は透明導電層20Cに誘起された面電荷密度、ρ1は電圧供給部材に誘起された面電荷密度、εDは感光層の比誘電率、Lは感光層の厚さ、Gは空隙距離である。
【0109】
式(23)から導電性基板42A上に誘起された電荷ρ0を求めると式(25)となる。
【0110】
【数26】

【0111】
式(25)に式(22)の潜像電荷密度ρを代入すると式(26)となる。
【0112】
【数27】

【0113】
式(26)と式(22)から、剥離過程における空隙電圧VGを求めると式(27)となる。
【0114】
【数28】

【0115】
式(27)から明らかな様に、剥離放電防止電圧を潜像記録電圧に対して小さくするか、或いは潜像記録電圧の逆極性にすることにより、空隙電圧VGを著しく低下させることが可能である。
【0116】
また、式(27)の空隙電圧VGが放電開始電圧Vth以下になればよい。この条件は、|VG|<Vthとなる条件を求めればよい。すると式(28)で与えられる剥離放電防止電圧VNDを印加すれば良いことが分かる。
【0117】
【数29】

【0118】
また、最適な、剥離放電防止電圧VNDは、式(29)で表される。
【0119】
【数30】

【0120】
前述の剥離放電防止電圧VNDを印加するために、第2の実施の形態では、図11及び図12に示すように、導電性ゴムローラ42に加え、正極の電源に接続する第2の導電性基板54Aを備える第2の導電性ゴムローラ54を更に備える。第2の実施の形態では、導電性ゴムローラ42と第2の導電性ゴムローラ54とで導電性ベルト56を形成し、感光体ドラム20を押圧し、それぞれのローラが、電圧を印加するようになっている。
【0121】
第2の導電性ゴムローラ54による感光体ドラム20への剥離放電防止電圧の印加は、感光体ドラム20から導電性ゴムローラ42が離れるよりも前から始まっており、感光体ドラム20から導電性ゴムローラ42が離れる際には、既に第2の導電性ゴムローラ54は感光体ドラム20に接触しているようになっている。
【0122】
このように、第2の実施の形態は、微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成した後、剥離放電防止用の電圧を印加し、導電性物体を感光体から剥離する際に剥離放電を防止することで、微細孤立島状電荷サイトに充分な大きさのトラップ電荷を形成した後、画像形成することができるので、カールソン法以上の潜像コントラストを得ることができる。
【実施例】
【0123】
(実施例1−1)
まず、第1の実施の形態の実施例1−1について説明する。実施例1−1の感光体ドラム20は、光導電層として単層有機感光層をコーティング法にて4μm塗布し、その上にマスク蒸着法にて、画素密度より細かいパターンで、銅をスッパタしてドット間隔2μm、孤立ドット電極直径1μmの層を0.5μm厚にて構成し、更に、その上に絶縁性樹脂を1μmコーティングして作成した。感光体ドラム20の直径は、240mmとした。実施例1−1のプロセス速度、すなわち用紙搬送速度は、1.0m/sとした。
【0124】
導電性ゴムローラ42は、ローラ軸となる芯金に弾性部材を被覆して構成した。弾性部材は導電性カーボンを分散した1層構造で、抵抗値は108〜109Ωとした。ローラ径は、直径30mm(従来のコロナ帯電器では、周長20cm程度必要である)とし、硬度は約30°とした。この導電性ゴムローラを感光体ドラム20に対して、総圧約1kgfで押圧した。
【0125】
現像剤としては、粒子径約5μmの絶縁トナーと粒子径約60μmの導電性鉄粉のキャリヤとを混合した現像剤を用い、現像ローラ51の周速度は、プロセス速度の1.1倍とした。
感光体ドラム20は、先ず未転写残留トナーをクリーナ40で除去した後、感光体ドラム20の裏面に置かれた光除電ランプ41で全面露光を行い、感光体ドラム20の表面電位(前の潜像電荷)をゼロにリセットする。次に、導電性ゴムローラ42と感光体ドラム20間に、潜像形成用電源電圧VSで電圧を印加する。実施例1−1では60Vを印加した。この時、画像露光手段であるLEDを備えた画像露光装置44(例えば、解像度600dpi,ドット間距離42.5μm)を用いて画像パターンに応じて画像露光を行った。すると、光導電層20D内において光キャリヤが発生し、実施例1−1では、電子が光導電層の表面に移動し、電荷トラップサイトに電子を与え、潜像電荷が形成される。感光体ドラム20の回転に伴い、この潜像電荷部分が導電性ゴムローラから離れると、このマイナス極性のネガ潜像電荷に呼応して、除々に透明基体側にプラスの電荷が誘起される。これによって、画像露光部は、感光体表面電位はマイナス電位の潜像電位が形成されることになる。
【0126】
因みに実施例1−1では、導電性ゴムローラ42と現像装置43との間に表面電位計を設置し、潜像電位を測定した所、理論検討した値と略同じ−250Vが得られていることが確認できた。
【0127】
次に、現像装置43の現像バイアスを0Vとして、このネガ潜像を現像した。するとネガ潜像部(図示せず)にプラス帯電トナーが付着し、良好なトナー画像が得られていた。また、現像後のトナー層表面電位は略ゼロになっていることも確認した。その後、転写ローラ30にマイナス600Vの電圧を印加し、静電的にトナー画像を用紙に転写させた。これを定着部(図示せず)にて定着し印字とした。
【0128】
この様にして、本実施例によると"かぶり"のない、良好な印字が得られると共に、従来の電子写真プロセスの前段階として必須であった感光体の帯電プロセスが省略できるため、コロナ帯電器に纏わるオゾンフィルターや、帯電器設置スペースが不要となり、装置の小型化が可能である。実施例1−1では印字濃度として、OD=1.5以上、かぶり濃度としてOD=0.02以下の良好な印字が得られた。
【0129】
更に、微細孤立島状電極によりドット状導電層を光導電層の上に形成しているため、ドット状電極の周辺部に見かけ上高い電界が形成されることになる。このため、いわゆるエッジ効果が有効に作用し、ベタ黒に関しても印字の中央部の濃度が薄くなるような、いわゆる印字の中抜け現象が現れることも無く、濃い鮮明な印字が形成できる効果がある。
(実施例1−2)
次に、感光体ドラム20の光導電層をa−Si感光体にて構成した実施例1−2について説明する。本実施例では、ガラス素管20B上に、酸化インジュームを蒸着して透明導電層20Cを形成し、その上にa−Si膜を気層成長させて光導電層20Dを16μm形成した。この光導電層20Dの膜厚は、a−Si感光体の比誘電率が有機感光体の4倍であることから等価的膜厚を同じにするために設定した。その後、実施例1−1と同様の微細孤立島状電極層20E、及び絶縁層を1μm形成した。この感光体ドラム20を用いて、実施例1−1と同じ実験を行い、同じ結果を得た。
(実施例1−3)
実施例1−3として、導電性ゴムローラ42の代わりに、粒子径約60μmの導電性キャリヤのみからなる現像器を設置して、実施例1−1と同じ実験を行った。この時にも、実施例1−1と同じ結果を得ることができた。
(実施例2−1)
次に、第2の実施の形態の実施例2−1について説明する。
【0130】
図11及び図12に示すように、実施例2−1の感光体ドラム20の周りには、感光体ドラム20の回転方向(矢印R方向)の順に、転写ローラ30、クリーナ40、光除電ランプ41、導電性ゴムローラ42、画像露光装置44、現像装置43が順に配置されている。
【0131】
現像装置43は2成分磁気ブラシ現像機を用いた。粒子径約5μmの絶縁トナーと粒子径欲60μmの導電性鉄粉キャリヤとを混合した現像剤で、2軸の攪拌スクリュー53による攪拌とトナーの摩擦帯電とを行った。この2軸攪拌スクリューにて搬送された現像剤は、掻き揚げ用の磁気ローラ52で、一連の現像ローラ51に現像剤を搬送される。現像ローラ51の周速度は、プロセス速度の1.1倍とした。
【0132】
電圧供給部材としては、導電性カーボンを分散させたポリイミド樹脂で、抵抗層は108〜109Ωcm、厚さ200μmの半導電性ベルト56を用い、両端に直径30mmの導電性ゴムローラを設けた状態で感光体ドラム20に総圧1kgfで押圧した。
【0133】
まず、感光体ドラム20の未転写残留トナーをクリーナ40で除去する。その後、感光体ドラム20の裏面に置かれた光除電ランプ41で全面露光を行い、感光体ドラム20の表面電位(前の潜像電荷による)をゼロにリセットする。次に、電圧供給部材である半導電性ベルト56に導電性ゴムローラ42を介して潜像形成用電圧VSを印加する。実施例2−1では−100Vを印加した。第2の導電性ゴムローラ54には剥離放電防止用電圧として+200Vを印加した。画像露光手段であるLED光学系(解像度600dpi、ドット間距離42.5μm)を用いて、画像パターンに応じて画像露光を行う。すると、導電性ゴムローラ42に印加された潜像形成用電圧にて、光動電層20内で光キャリヤが発生する。すると、正孔が光導電層の表面に移動し、電荷トラップサイトに正孔を与え、潜像電荷が形成される。感光体ドラム20の回転に伴い、この潜像電荷部分が半導電性ベルト56部分から離れる際には、剥離放電防止用電圧が潜像形成用電圧とは逆極性で印加されるため、剥離時の空隙電圧の上昇が抑制され、剥離放電が発生せず、正味の潜像電荷が電荷保持部材に残る。
【0134】
本実施例では電圧供給部材56と現像ローラ51との間に表面電位計を設置し、潜像電位を測定した所、約650Vの潜像電位が得られた。この値は通常のカールソン法と同じ潜像電位である。
【0135】
次に、現像装置43の現像バイアスを+200Vとして、このネガ潜像を現像した。すると、ネガ潜像部にマイナス帯電トナーが付着し、良好なトナー画像が得られた。その後、転写ローラ30に+600Vの電圧を印加して、静電的にトナー画像を用紙に転写させた。これを定着部(図示せず)にて定着し、印字を行なった。
(実施例2−2)
次に、感光体ドラム20の光導電層をa−Si感光体にて構成した。ガラス基板20B上に、酸化インジュームを蒸着して透明動電層20Cを形成し、その上にa−Si膜を気相成長させて光導電層20Dを16μm形成した。その後、実施例2−1と同様に微細孤立島状電極層20E、及び絶縁層を1μm形成した。この感光体ドラム20を用いて、実施例2−1と同様な実験を行った。但し今回はプラス帯電感光体であるため、印加電圧、等の極性はすべて逆にして行った。その結果、実施例2−1と同様の結果を得た。
(実施例2−3)
電圧供給部材として、実施例2−1の半導電性ベルト56の代わりに、粒子径約60μmの導電性磁性キャリアのみからなる現像剤を用い、図13に示すように、回転可能な磁気ローラ70(Φ60mm)に、金属スリーブからなるアルミの固定スリーブ72を設け、その上に帯状の絶縁膜74(幅10mm×長さ460mm)を設け、さらに、その上に帯状の導電層76(幅3mm×長さ460mm)を設け、当該導電層66に潜像形成用電圧VSを印加し、前記固定スリーブ62には、剥離放電防止用印加電圧VNDを設けた構成の現像装置43を用いた。
【0136】
この電圧供給部材を第2の実施の形態に置き換えて実験を行った。この時も第2の実施の形態と同様の結果を得ることができた。
【0137】
なお、実施例2−3の形態の場合には、潜像形成部が現像ローラ1本で可能となるため、小型化に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】従来の画像形成方法の概要説明図である。
【図2】トラップ電荷の分布の実験結果と理論値の比較説明図である。
【図3】カールソン法の潜像電荷Qkと従来技術のトナー現像法の場合の潜像電荷QDとを比較して示す線図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態の潜像形成方法の概説図である。
【図5−1】本発明の第1の実施の形態の潜像形成方法の設計条件である潜像電荷の特性を説明する概説図である。
【図5−2】本発明の第1の実施の形態の潜像形成方法の設計条件である印加電圧の特性を説明する概説図である。
【図5−3】本発明の第1の実施の形態の潜像形成方法の設計条件であるネガ潜像による感光体表面電電位の変化を説明する概説図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るカラーレーザプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの一部分を示す図であり、(a)は、軸方向に直角に切断した断面の一部分を模式的に示した部分断面図、(b)は、微細孤立島状電極の様子を模式的に示す部分平面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態のプリント部の概略構成を示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の潜像形成方法の原理を説明する図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態の潜像形成方法の概説図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るカラーレーザプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態のプリント部の概略構成を示す断面図である。
【図13】本発明の実施例2−3の形態のプリント部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0139】
20 感光体ドラム
20B ガラス素管
20C 透明導電層
20D 光導電層
20E 微細孤立島状電極
20F 絶縁層
40 クリーナ
41 光除電ランプ
42A 導電性基板
43 現像装置
44 画像露光装置
54A 第2の導電性基板
56 導電性ベルト
60 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性基体、該透明導電性基体上に形成された感光層、及び該感光層上に電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを備えた電荷保持部材と、
前記微細孤立島状電荷サイトに接触される導電性の電圧供給部材と、
前記微細孤立島状電荷サイトに前記電圧供給部材が接触された状態で、前記透明導電性基体と前記電圧供給部材との間に電圧を印加して、前記電荷保持部材内に電場を形成する潜像形成用電源と、
前記電荷保持部材内に電場を形成した状態で、前記電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、前記微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する露光手段と、
を含む画像形成装置。
【請求項2】
透明導電性基体、該透明導電性基体上に形成された感光層、該感光層上に電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイト、及び該微細孤立島状電荷サイト上に形成された絶縁層を備えた電荷保持部材と、
前記絶縁層に接触される導電性の電圧供給部材と、
前記絶縁層に前記電圧供給部材が接触された状態で、前記透明導電性基体と前記電圧供給部材との間に電圧を印加して、前記電荷保持部材内に電場を形成する潜像形成用電源と、
前記電荷保持部材内に電場を形成した状態で、前記電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、前記微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する露光手段と、
を含む画像形成装置。
【請求項3】
前記透明導電性基体を円筒状に形成し、該透明導電性基体の外周面上に前記感光層、及び前記微細孤立島状電荷サイトを形成した請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電圧供給部材を導電性ゴム部材あるいは導電性磁性粉体で形成した請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記透明導電性基体と前記電圧供給部材との間に、前記電荷保持部材と前記電圧供給部材との間で気中放電が生じない電圧VSを印加した請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電圧VSが次式を満たすようにした請求項5記載の画像形成装置。
【数1】

但し、L/εpは光導電層の等価厚さ、D/εdは絶縁層の等価厚さである。
【請求項7】
前記電圧VSが次式を満たすようにした請求項5記載の画像形成装置。
【数2】

但し、ρminは充分な画像濃度を得る為に必要な最小潜像電荷密度、ε0は真空の誘電率、L/εpは光導電層の等価厚さ、D/εdは絶縁層の等価厚さである。
【請求項8】
前記電荷保持部材と前記電圧供給部材とが接触した状態から剥離する際に、前記透明導電性基体と前記電圧供給部材との間に、前記電荷保持部材と前記電圧供給部材間での剥離放電を防止する剥離放電防止電圧を印加する剥離放電防止電源を更に含む請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記剥離放電防止電圧VNDが次式を満たすようにした請求項8記載の画像形成装置。
【数3】

但し、Vthは放電開始電圧である。
【請求項10】
透明導電性基体、該透明導電性基体上に形成された感光層、及び該感光層上に電荷保持が可能な多数の微細電極を1画素より細かく分布させて形成された微細孤立島状電荷サイトを備えた電荷保持部材内、または該微細孤立島状電荷サイト上に絶縁層を更に形成した電荷保持部材内に電場を形成し、
前記電荷保持部材内に電場を形成した状態で、前記電荷保持部材の透明導電性基体側から画像パターンに応じた画像露光を行い、前記微細孤立島状電荷サイトに静電潜像を形成する画像形成方法。
【請求項11】
前記透明導電性基体と前記絶縁層に接触される導電性の電圧供給部材との間に、前記電荷保持部材と前記電圧供給部材との間で気中放電が生じない電圧VSを印加して前記電荷保持部材内に電場を形成した請求項10項記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記電圧VSが次式を満たすようにした請求項11記載の画像形成方法。
【数4】

但し、L/εpは光導電層の等価厚さ、D/εdは絶縁層の等価厚さである。
【請求項13】
前記電圧VSが次式を満たすようにした請求項12記載の画像形成方法。
【数5】

但し、ρminは充分な画像濃度を得る為に必要な最小潜像電荷密度、ε0は真空の誘電率、L/εpは光導電層の等価厚さ、D/εdは絶縁層の等価厚さである。
【請求項14】
前記電荷保持部材と前記電圧供給部材とが接触した状態から剥離する際に、前記透明導電性基体と前記電圧供給部材との間に、前記電荷保持部材と前記電圧供給部材間での剥離放電を防止する剥離放電防止電圧を印加する請求項10〜請求項13のいずれか1項記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記剥離放電防止電圧VNDが次式を満たすようにした請求項14記載の画像形成装置。
【数6】

但し、Vthは放電開始電圧である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−17927(P2007−17927A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298034(P2005−298034)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】