説明

画像形成装置および画像形成装置用の発光手段の制御方法

【課題】転写前露光ユニットを有する画像形成装置であって、転写リトランスファ現象を防止でき、照射ムラも少なく、チリトナーも少なく、しかもコンパクトで長寿命な転写前露光ユニットを有する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】潜像が形成される感光体と、前記前記潜像を現像する現像装置と、現像された像が転写される一次転写装置と、を有する画像形成装置において、
前記現像装置よりも前記感光体の移動方向下流側かつ前記一次転写装置よりも上流側に、前記感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部と、前記発光源を前記発光列毎に順次発光するように制御する制御部と、を有する発光手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置用の発光手段の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からPTL(=プレ転写露光:Pre-Transfer Lighting以下、転写前露光という。)技術が知られている。この技術は、アナログコピー機のポジ・ポジ・プロセス(感光体を一様に正帯電にして初期化したのち、走査してポジ原稿に対応して感光体に潜像を作成し、正帯電されるポジトナーを用いて現像してポジ画像を形成するプロセス)によく使われている。その目的は、転写前に転写元である感光体を光照射により除電して、感光体の表面に静電力により張り付いたトナーを転写しやすくし、転写ニップ出入口における放電を低減させることにあった。
一方、近年のレーザープリンタ・MFP(Multi Function Printer)で普及したネガ・ポジ・プロセス(感光体を一様に負帯電にして初期化した後、光走査して感光体に潜像を作成し、正帯電されるポジトナーを用いて現像してポジ画像を形成するプロセス)では、感光体表面における地肌電位Vdと、書込部電位VLとの間のポテンシャル井戸(Δ=Vd−VL)が潜像の境界で働き、トナーのチリを抑制する事になっている。前記したPTL(転写前露光)ユニットをネガ・ポジ・プロセスのレーザープリンタ等で行うと、トナーによって遮光され、地肌電位Vdを、書込部電位VLよりも下げてしまう。この結果、潜像の境界では電界が逆向き(Δが負値)となり、トナーのチリが促進されるという問題点が発生する。
【0003】
このため、図9bに示すように画像品質は大幅に悪化し、ネガ・ポジ・プロセスでは、転写前露光(PTL)ユニットは実装されなかったと言ってよい。
他方、画像形成装置ではカラー機が普及し、中間転写体と4ドラムタイプ(中間転写体と、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)および黒(BK)の色の4つの感光体ドラムのタイプ)のものが、その主流となっている。このような画像形成装置では、現在、ネガ・ポジ・プロセスが使われている。ここで、カラー機特有の逆転写現象、すなわちベルト上に一度転移したトナーが別色の感光体(OPC:Organic Photo-Conductor有機感光体)上に戻る、「転写リトランスファ現象」が問題となる。この現象はトナーのリサイクルを邪魔し、かつ転写率を悪化させるなどの不具合となる。この原因の詳細は不明だが、感光体の電位と一次転写電圧との間で、逆帯電トナーを生じさせる放電が生じる事で発生しているようである。この対策には、感光体のPTL(転写前露光)が有効と報告されているが、転写チリが増えると予想されるため、PTLユニットは実装されていないのが実情である。
【0004】
このような状況の下、転写前露光(PTL)ユニットにおける光量を大幅に増加させると、トナー層を透過でき、この透過光が感光体に届いて感光体の除電がなされ、チリが改善される事がわかった。
しかし、普通の民生品のLEDでは連続して大発光量に点灯すると、使用するLEDの寿命が著しく減少してしまうことになる。
このため光量を大幅に増加するには、大電流LEDを使う以外、方法が無かった。
しかしながらこの種のLEDはコンパクト性に乏しく、またコスト(部品のコストおよびランニングコスト)も高いため本数が限定され、その結果、照射ムラなどの問題点があった。
さらに、カラー画像形成装置も小型化・環境対応などが進められており、感光体周りのレイアウト上、転写前露光ユニットを配置するにもコンパクト化が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであって、転写前露光ユニットを有する画像形成装置であって、転写リトランスファ現象を防止でき、照射ムラも少なく、チリトナーも少なく、しかもコンパクトで長寿命な転写前露光ユニットを有する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、潜像が形成される感光体と、前記前記潜像を現像する現像装置と、現像された像が転写される一次転写装置とを有する画像形成装置において、前記現像装置よりも前記感光体の移動方向下流側かつ前記一次転写装置よりも上流側に、前記感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部と、前記発光源を前記発光列毎に順次発光するように制御する制御部と、を有する発光手段を設けたことを特徴とする。
請求項2の発明は、前記発光手段は前記複数列配置した各前記発光源を千鳥状に配置することを特徴とする。
請求項3の発明は、各前記発光源の前記感光体回転方向上流側に遮光手段を設けた請求項1または2に記載の画像形成装置であることを特徴とする。
請求項4の発明は、感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部と、前記発光源を前記発光列毎に順次発光するように制御する制御部とを有する画像形成装置用の発光手段の制御方法であって、前記発光手段の発光源を、定格電流を超えるオーバードライブ駆動により電流を前記各発光源に流して間隙的に発光させ、前記感光体のトナー像を透過させて前記トナー像の電位と前記透過させた前記感光体表面との電位を同電位になるようにすることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載の画像形成装置用の発光手段の制御方法において、前記感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部を、排他的に駆動させて前記発光列毎に配置された発光源を発光させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写リトランスファ現象を防止でき、照射ムラも少なく、チリトナーも少なく、しかもコンパクトで長寿命な転写前露光ユニットを提供できる。また、この転写前露光ユニットを有する画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】(A)及び(B)は、本発明に用いられる転写前露光ユニットの発光部の構成例を示す図である。
【図2】本発明に用いられる転写前露光ユニットの制御部と発光部との回路構成を説明するための図である。
【図3】本発明に用いられる転写前露光ユニットを用いた露光方法を説明するための基本駆動シーケンス図である。
【図4】本発明に用いられる転写前露光ユニットを配置した画像形成装置の周辺部を示した図である。
【図5】本発明の方法と他の方法とを対比して説明するための図であり、縦軸が感光体の表面電位を表している。(a)は転写前露光無しの場合を示す図であり、(b)は従来の転写前露光を行った場合の図であり、(c)は全露光量は高いが低強度の露光光を長時間照射した場合の図であり、(d)は高強度の露光光を短時間で露光した本発明の場合の図である。
【図6】本発明の方法を用いた効果を従来の転写前露光と比較して説明した図であり、(A)は転写チリの関係を示したものであり、(B)は転写率の関係を示したものであり、(C)は逆転写量の関係を示したものである。
【図7】(A)〜(C)は本発明に用いられる転写前露光ユニットでの露光時間と光量との関係を説明するための模式図であり、(D)は本発明の転写前露光における感光体面の走査方向を示す図である。
【図8】本発明に用いられる転写前露光ユニットの光源部分の他の構成例を示す図である。
【図9】本発明に用いられる転写前露光ユニットを装着可能な画像形成装置の構成を説明した図である。
【図10】本発明に用いられる転写前露光ユニットを装着可能な画像形成装置の1次転写部を説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[転写前露光(PTL)ユニット]
以下、図面を参照しながら、まず、本発明に用いられる転写前露光(PTL)ユニットについて、まず説明する。
図1を用いて、転写前露光(PTL)ユニットの各構成要素について説明する。
本発明に用いられる転写前露光ユニットは、感光体上に形成された潜像を、トナーを用いた現像により像が形成された感光体面のトナー像を2次転写体に転写する前に露光して感光体の表面電位を低下させると共にチリなどを低下させるためのユニットである。
図1(A)は、本発明の転写前露光ユニット100の構成を示す図である。本発明の転写前露光ユニットは、光源部100−1と、制御部100−2とからなる。光源部100−1は露光光度を高くでき、しかも印加された電流に対してON−OFF応答のよい光源が用いられる。このような光源としてはLED(Light Emitting Diode)が好ましく用いられ、本発明では図1に示すように、複数の発光素子を列に並べて複数の列に構成している。また制御部100−2は、発光部100−1の複数の列に並べられた発光素子111を、列毎に短時間に発光させるように制御する制御手段100−2を有して構成されている。
【0010】
図1(B)はこのような本発明の転写前露光ユニットの発光部100−1について、その構成を例示した図である。この図1(B)に示すように、110は基板であり、この基板110はエポキシ、ガラスエポキシなどが用いられる。図1に示すように、基板110は長尺、狭幅の矩形状となっている。ここで、d1とd2は、それぞれ、LED間の距離を示す。また111は発光素子であり、民生用LEDが使用できる。例えば、涙滴型、赤色670nm、If=30mA、指向性60°のLED(OptSupply社製、商品名OSUB516A−PQ)を使用する。このようなLEDを、図1(B)では、主走査方向にA個(A行)、副走査方向にB個(B列)を、1つの基板110に配置した例を示す。なお本発明では、使用するLEDの使用個数は複数であれば良く、その数は任意であり、特に制限されない。また説明上、A行を15個とし、B列を3列としたLEDアレイを用いて以後の説明を行う。しかしながらこれらの数は説明のためのものである。また図1におけるコーン状のセード113も、LEDの指向性に合わせて作られている。
【0011】
フレーム112はLEDを黒色モールドで高精度に成型してLEDが配置される。そのモールドの表面は感光体のドラム径(R)と、ギャップ量(g)101との和(R+g)を半径とする円柱面(円柱面の内面)にしてある。またフレーム112にはコーン(スリバチ状凹部)状のセード113が設けられている。セード113はこの例ではコーン状に設けられており、セード113の素地が黒でも良いが、好ましくは銀メッキなどで鏡面化され、反射率を高めた構成が好ましい。このコーン状のセード113の指向性半減角θは60°近傍(例えば60±2°)とすると、光量が50%と保証できるので、θを60°近傍(60±2°)とする。基板110には各LEDは斜め方向に配置される。これは、発光手段により発光した光が現像工程、露光工程を邪魔しないように、上流側に光が行かないようにするためである。
【0012】
続いて、図2を用いて、基板に配線されるLEDの回路について説明する。
図1で示したA1〜A15の行の端子は、電源に連結される。電源部は+5〜+12Vの大容量の電源となっている。一方、図1に示す各列の端子B1〜B3は、図2に示すように、スイッチング素子SW1〜SW3を介して、接地される。なお、図示していないが、スイッチング素子として、通常のトランジスタを用いることができ、またこれらを集積させてICとし、これをたとえば基板110上に搭載したり、制御部100−2に搭載することもできる。なお公知のスイッチング素子を用いてもよい。また本発明の転写前露光ユニットの制御部200は、少なくともI/O部210を有している。制御部200内に、MPUなどを有することもでき、制御部200内に、接地端子を有することができる。制御部200がMPUを有する場合、たとえば画像形成装置本体の制御部内のCPU(ホスト)からの信号を受け、制御部200がゲストとして動作し、各列のスイッチング素子(ここではSW1〜SW3)のON/OFFを制御するようにすることができる。
【0013】
この各LEDのスイッチング時間は、オンが10mS程度であり、オフが20mS程度でこのスイッチングON−OFFによりLEDは駆動することができる(図3参照)。このために電源の出力電流は充分に供給できるように、余裕を持って設定されている。なお、このオン、オフは例示である。また、各LED光量は、プロセス上、充分飽和する光量で露光できるように、制御される。
電流制限抵抗(各1〜5kΩ)が、各LEDに直列に接続されている(図示せず)。また、コントロール付属回路を制御部200あるいは基板110に搭載して電流を制御することもできる。
【0014】
<転写前露光:発光手段の制御方法>
本発明の発光手段の制御方法について、本発明に使用される転写前露光ユニットを用いたシーケンス(基本駆動シーケンス)図(図3)により、説明する。
画像形成プロセスを開始するに当たり、まず最初に感光体を一様に帯電することが行われる(一様帯電工程)。一様に帯電された感光体面は、次いで、光書込により画像情報の書き込みを行って、潜像を形成し(走査工程(書込工程))、トナーを用いて潜像が現像される(現像工程)。そしてトナーにより形成された現像を有する感光体面に転写前露光が行われ(転写前露光工程)、転写体に現像が転写される転写工程が行われる。図3では、前記した光書込から、転写工程前までの工程に行なわれる一次転写バイアスまでを説明するためのものである。
【0015】
ここでは、転写前露光(PTL)ユニットのB1〜B3列は排他的に駆動する。すなわちこの図では転写前露光ユニットにおける列がB1〜B3の3列として説明する。列の数は前記したように説明のためであり、複数であればよく、その数は制限されない。たとえば図示するように、B1列からB3列まで点灯するようにPTLユニットにバイアスが印加されるが、最初にB1列が点灯するとし、B1列が点灯している期間(例えば10mS)は、他のB2〜B3列のLEDは点灯しない。
そしてB1列が所定期間を過ぎてOFFになると、次にその次の列であるB2列のLEDが点灯する。これによりB3列は点灯しない。最後にB2列のLEDがOFFになるとその次の列であるB3列のLEDの点灯が開始されるようになっている。このように、本発明の転写前露光ユニットでは、感光体の回転方向順に列ごとに設けられたLEDが短時間で点灯可能としたので、LEDの定格電流を超えた電流値を各LEDに流すことができるため、電力消費量や感光体の光疲労を防ぐことができる。
【0016】
このような排他的に駆動する方式を採用し、かつパルス電流を印加するようにした本発明の前記した発光手段の制御方法では、各LED毎の電力消費量を抑制し、かつ、長時間の電流放出による疲労を防止可能としたので、長期間に渡って使用可能なPTLユニットを提供可能となった。すなわち本発明ではジャンクション温度(LEDのPN接合部の温度)を増加しないように、パルス動作としているので、パルス電流印加時(ON期間)には定格電流を越えた電流値で動作させることにより、LEDからの出射光量を定格電流による動作時よりも増加させて稼働させることができ、他方、電流休止期間(OFF期間)にはクールダウンするようにデューティー比(ON期間/(ON期間+OFF期間))を適宜設定し、使用する各LEDの寿命を低下させないようにした。またデューティー比(ON期間/(ON期間+OFF期間))を適宜変更して消費電力も抑制可能としたので、地球環境にも大いに貢献可能としている。
本発明の転写前露光ユニットでは、LEDの列毎に感光体の回転方向順(順方向)に点灯可能なようにするため、前記したように、排他的にONして感光体の転写前露光を行うようにしている。このため本発明の転写前露光法では、露光面に対して等光量の照射光を用いて高強度で露光を行うことができるため(たとえば後述する図10(C)参照)、低強度露光光によるチリによる弊害などを有効に防止することができる。
【0017】
なお前記した排他的な列毎のLEDの点滅は、図2に示すように、各列毎にI/Oポートと連結され、CPUにより列毎の管理をするように構成することにより、行うことができる。たとえばCPUでは感光体上での現像処理した位置を基準として所定位置に達すると転写前露光ユニット(PTL)にバイアスが印加されたB1〜B3の列にON状態となった場合に、まずB1に係る列にあるスイッチング素子SW1に閉じるように(すなわちONとなるように)信号を出し、その他のスイッチ素子は開(すなわちOFF)とする。そして所定時間が経過すると、隣の列のスイッチ素子に閉となるように信号を出すことにより、他のスイッチ素子は排他的に働いてスイッチ素子を開にする。
このようにして、以降、同様に排他的論理信号により、各スイッチ素子の開閉が行われ、各列毎に制御される。なお、このような制御は1例であり、このような排他的論理による制御が可能であればよく、本発明の転写前露光法を実行可能である。また本発明では各列のLEDを個別に管理し、各列のLEDの点滅(点灯/消灯)を感光体面上で連続する感光体の面を露光して感光体全面を走引するように制御して、転写前露光法を行うように制御することもできる。本発明では、発光手段の制御方法は、連続するLED列の点滅を前記した順方向ではなく逆方向に点滅させて感光体面を露光すると、感光体を連続的に転写前露光が行い得る場合も包含している。
【0018】
[転写前露光ユニットを有する画像形成装置]
次に前記した転写前露光ユニットを有する画像形成装置について、図4に示す概略構成を参照しながら説明する。
本発明に用いられる転写前露光ユニットを有する画像形成装置は、図9に示す作像装置12に用いられる感光体10(この図4では感光体として10BK(黒色用感光体)により説明)の周りには、感光体10を一様に帯電する帯電装置と、一様に帯電した感光体表面に潜像を形成するための光走査ユニットと、形成された潜像をトナーを用いて現像する現像装置と、現像装置15により現像された画像を転写する転写手段とを有して構成され、本発明の画像形成装置では、前記転写手段の前(転写手段の上流側)、現像装置の下流の間に、転写前露光ユニット100を有して構成される。
転写前露光ユニット(PTL)100は、感光体10BK(黒色用感光体)に対して、間隙部(ギャップ)101を介して設置されている。転写前ユニットは、前記した本発明の転写前露光ユニット(PTL)が、画像形成装置本体に、取り外し可能に取り付けられる。
【0019】
図4に示すように、発光装置として本発明の転写前露光装置100を用い、また駆動装置100−2を用いている。ここで、転写前露光装置100は感光体に対して、ギャップ101を1mm以下とする。前記転写露光装置100の近接部の材料は、高抵抗の材料、あるいは高誘電率(高ε)の材料は除外される。これは感光体10の帯電などにより発光装置100−1自身がチャージアップを少なくし、放電による画像チリなどを防ぐためである。
なお、転写前露光装置100は堅固に取り付けられる。また感光体10などはユーザーメンテナンス品とできるため、エンドユーザーの交換性を重視することができる。本発明に用いられる除電ユニットとして、転写前露光装置100は寿命も長く、非ユーザーメンテナンス品を用いる事が望ましく、取り付けも強固に行うことができる。
【0020】
[本発明の画像形成装置における除電とチリとの関係]
次に、本発明の転写前露光ユニットを有する画像形成装置と、従来の装置との、除電と転写チリについて、図5を用いて説明する。
図5は、帯電(一様帯電)から、光書込(光走査)、現像、1次転写、除電の各工程を有する本発明と従来の装置における工程での転写前露光(PTL)工程を説明するための図である。
図5(a)は除電(転写前露光)が無い状態を示すグラフであり、ポテンシャル井戸Δの電位は高めに持続し、潜像には電位ポテンシャルによるトナーの押し込み電界が発生している。この(a)は転写前露光ユニット(PTL)を使用しない場合であり、地肌電位(Vd)と書込み電位(VL)の差Δは大きい。
図5(b)は従来の弱光量の転写前露光(PTL)ユニットを用いた場合を示す。この場合、例えば、BKトナー(黒色トナー)を用いた場合を例にすると、転写前露光ユニットの露光光をトナーが吸収し、かつ転写前露光(PTL)ユニットの光は不透過である(すなわち遮光する)。よって、転写前露光(PTL)ユニットによる転写前露光を行っても地肌部の電位は下がらない。これにより、トナーの無い地肌部位の電位が下がるが、トナーが存在している感光体の地肌部位の電位は下がらず、転写チリを推進する電界が生じる。この(b)はVd部を僅かに下げるが、あまり効果的ではない。
【0021】
図5(c)は強い光量の転写前露光ユニットを使った場合を示す図であり、ただしこの図では低密度(低露光強度)光を用い、これを長時間照射する場合を示したものである。この図に示すようなトナーに遮光されるような低密度光の使用では、ポテンシャル井戸Δの電位は逆転するため、チリトナーが生じ、またトナーのない部分では露光光により感光体が所定値を超えて露光されることにより、感光体に残留電位が溜まり、残像を生じることとなる。また長時間行うと、内部に残留電位がたまりやすくなるので、強い強度の光照射を長時間行うと、残像が発生しやすい。
図5(d)は本発明の転写前露光(PTL)ユニットを用いて正常な転写前露光工程を行った場合を示す図である。この(d)は本発明で用いられる転写前露光ユニット(PTL)を用いた結果を示し、強力なPTLを短時間照射すること(高強度の光を用いて短時間に露光する)によって効果を得ることが判る。
この内部電荷の消滅では、規定される光の量は、
積分光量:∫((光量*時間)光束)dtで示される。
【0022】
この図に示すように、高強度の光を短時間に照射した場合(10ms程度で例えば定格電流の1桁多いオーバードライブ駆動の条件で光源を光らせる場合)、トナー層中を転写前露光光が透過し、トナー下の感光体まで光がとどくことによって感光体の電位を下げる。重要な点は、除電光量は受けた光量の前記した積分(積分光量の式)で効くことである。このため、一気にトナーが存在する感光体の電位も地肌電位も同じに下げるように、強い光量が短時間で照射される本発明の発光手段の制御方法が有効であることが判る。
このように、本発明の発光手段の制御方法は、トナー層を透過できるほどの強い光量の光を、積分光量を満たしながら、しかも間隙的に短時間で照射することにより、現像後におけるトナー上の電位とトナーの存在していない感光体表面の電位との差Δ値をほぼ0となるようにし、このΔ値は1次転写電位と同程度の電位かそれより低いので、感光体上に残像を形成しにくくすることができる。
このように本発明では、感光体の周りに、現像装置を上流側に、一次転写装置を下流側に有する電子写真方式の画像形成装置用の、複数の発光源を前記感光体の回転方向に複数列配置した発光部と前記発光部を制御する制御手段とを有して構成されている転写前露光(PTL)ユニットを有する画像形成装置により、転写前露光(PTL)ユニットの前記した制御が行なわれることによって図5(d)に示すような転写前露光が行われる。
【0023】
本発明では、近年のトナーの付着量が低下した現像条件によりトナー量の改善がなされ、トナー下の感光体に漏れる電流も増えて、転写チリを増加させずに、除電を終えることが可能である。
従来の露光方法では、単に、大光量のLEDを用い、しかも感光体の表面全体に照射するユニットは、コストが膨大にかかってしまうが、本発明では、光源として複数のLEDを複数列にして用い、各列のLEDの点灯時間と消灯時間との比(duty比)を適宜設定して駆動させ、LEDの熱衝撃による劣化を防止している。このように本発明では、この点灯の際にLEDの高負荷駆動(オーバードライブ)を行い、その照射光を転写前露光光として無駄なく用いるように、工夫している。
従来の転写前露光(PTL)法では、LEDを含む点光源では、照射時に照射対象を露光する場合、弱光量の部分が存在することが問題である。これは、拡散キャップにより照射角度を広げても、中心の光量(すなわち最短距離g:ギャップを介しての照射光量)が所定光量に満たないと意味がなくなること、また、画像形成装置などの回転感光体に、低光量の光が現像工程あるいは走査工程中に照射されると、画像が乱れてしまうことにあった。具体的には、本発明の制御方法により、所定光量を超える光を短時間に現像工程後で、転写前に照射することにより、1次転写時のスムーズな転写の移行と、チリトナーの防止と、除電時の残留電位の減少とが、一挙に可能となった。
【0024】
次に図6により、本発明の転写前露光ユニットを有する画像形成装置と、従来の画像形成装置との効果の相違点について説明する。
図6(A)は転写前露光(PTL)ユニットの光量と転写チリとの関係を従来のものと比較した図であり、縦軸は転写チリのランクであり、高いほど転写チリが少ない(たとえばチリ量を顕微鏡で拡大してチリサイズのドットをμm2当たりのチリ個数をカウントする。そのカウント数が小さいほど、ランクが高い)ことを示している。(B)は除電光量と転写率との関係を従来のものと比較した図であり、(C)は、除電光量と逆転写量との関係を従来のものと比較した図である。(B)、(C)の縦軸は[%]である。(B)の転写率は多いほど効率的であることを示している。また(C)は、逆転写量が多いほど非効率的になり、画質もかなり悪化することを示している。いずれの図も実線は本発明で用いたPTLであり、点線は従来のものを示す。図6(A)〜(C)に示すように、従来のPTLに対してPTLの光量を上げていくと、逆転写率が下がることが示される。(B)、(C)は、たとえば天秤を用いてその量(重量(g))を測定することができる。
以上、転写ちりを防止しつつ、感光体の除電を行い、結果として、逆転写などの量を減らすことができる。
【0025】
図7(A)〜(C)は本発明で用いられる転写前露光ユニットでの露光時間と光量との関係を説明するための模式図である。また(D)は本発明のPTLにおいて感光体面の走査方向を示す図である。図1(B)に示すように、各LED111は、次の行に対していわゆる千鳥足状に配列している。そして各行は、斜めに配列されている。転写前露光ユニットは、列毎に前記したようにオーバードライブ駆動により各列の光源のLED111(サブ発光装置)が、たとえば感光体の回転方向順に点灯してトナー像が存在する転写前の感光体面上に露光される。
この露光の状態は以下に説明する図6(C)に示すように、サブ発光装置毎に間隙的に発光することにより、図6(D)に示すように、感光体面上を照射して転写前露光が行われる。斜めに配列された各行のLED111は強い照射強度の光照射により、感光体面でトナーが存在している部分(画像部分)でもトナーを透過して感光体面に光が到着することができる。これによってトナー表面もトナー像の部分の感光体面もほぼ電位が同じになる。また画像の存在しない感光体面でも強い光が照射されるが、短時間であり、光照射による感光体のダメージも少なくて済む。
上記したように、サブ発光装置は次の列のものと斜めに位置している。このようにすると感光体面を連続的に照射できるとともに、各光源の密度が列に左右されずにほぼ一定と出来、感光体への光照射強度が等しいものとすることができ、また上流方向に散乱光などが前の列に対して千鳥状に配置されているが後ろの列に対しては連続的になっているので後方向には、直接光も、また散乱光も照射されにくい構造となっている。
【0026】
図7(A)は、従来のPTLの光量の特性曲線と時間との関係を示す図であり、図7(B)は、従来のPTLに比べて、強光度のLEDの光量の特性曲線を示す。図7(B)は絶対値も大きいが、裾野も広いブロードな特性曲線を有している光源の特性曲線である。この特性曲線に示すように、特性曲線の裾野の部分に弱光部が残っている。
本発明では、図7(C)に示すように、例えば3列のサブ発光装置があるとし、各列毎に、ほぼ一定以上の強度を得ることができるようにされている構成とすることができる。なお、図7(C)では、拡散型LEDを使った例を示す。以上により、感光体上では、素早く大きい光量を受ける事により、転写前露光により、感光体面もトナー表面も短時間高強度露光が達成される。
【0027】
[その他の実施形態例]
図8は、本発明で用いる転写前露光ユニットの光源部分の他の例を示す図であり、セード130’をより好ましく簡易化したものである。
各LEDにおいて、上流側に光を漏らさないように遮蔽物130を配置した。この遮蔽物はシート状の遮光材料を用いて得られる。このような遮蔽物であるセード130の構成を追加することにより、転写前露光装置の構造が簡単になるので好ましい。
本実施形態は転写前露光ユニットの光源が異なる形状を有する以外は、前記した実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0028】
[画像形成装置のPTLユニット以外の部位]
次に転写前露光ユニット(PTL)100以外の画像形成装置について、説明する。 画像形成装置として、フルカラー画像形成装置を例にして説明する。図9または10に示すように、当該フルカラー画像形成装置は、像担持体ユニットであるところの4色分の作像装置12Y(イエロー色用作像装置)、12C(シアン色用作像装置)、12M(マゼンダ色作像装置)、12K(黒色作像装置)が、対応する画像形成ステーションに着脱自在に有して構成されている。このような画像形成装置では、レーザー光を照射可能な露光手段としての光学ユニット20、中間転写体ユニット30、給被転写体ユニット40、及び定着ユニット50等を備えている。
各作像装置12Y、12C、12M、12Kの構造は同一であり、それぞれ像担持体としての感光体ドラム10、これに作用するプロセス手段として、感光体ドラムを帯電する帯電装置13、感光体ドラムに残留した現像剤等を除去するクリーニング装置14が一体的に構成されている。これに感光体ドラム12に形成された潜像を現像する現像装置15が連結する構成になっている。また、各作像装置は、後述する開閉式面板の開閉方向(感光体の回転軸方向)に、画像形成装置本体に対して着脱自在な構成になっている。
【0029】
中間転写体ユニット30は、転写媒体(中間転写体)としての転写ベルト31、該転写ベルト31を回転可能に支持する4つのローラ32、33、34−1および34−2、各感光体ドラム12に形成されたトナー像を転写ベルト31に転写する一次転写ローラ35、及び転写ベルト31上に転写されたトナー像を更に記録被転写体Pに転写する二次転写ローラ36を備えている。
給被転写体ユニット40は、給被転写体カセット41或いは手差し給被転写体トレイ42から記録被転写体Pを二次転写領域に搬送する給被転写体ローラ43、レジストローラ44等を備えている。
定着ユニット50は、定着ローラ51及び加圧ローラ52を備え、記録被転写体P上のトナー像に熱と圧を加えることで定着を行う。
上記構成において、まず1色目であるイエローの作像装置12Yにおいて、感光体ドラム10が帯電装置13によって一様に帯電された後、光学ユニット20から照射された走査光(たとえばレーザー光)Lによって潜像が現像装置15によって現像されてトナー像が形成される。
【0030】
感光体ドラム10上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ35の作用によって転写ベルト31上に転写される。一次転写が終了した感光体ドラム10はクリーニング装置14(図10ではクリーニングブレード使用)によってクリーニングされ、次の画像形成に備える。クリーニング装置14によって回収された残留トナーは、作像装置の取り出し方向(感光体ドラム10の回転軸方向)に設置された廃トナー回収ボトル160に貯蔵される。
廃トナー回収ボトル160が満杯になると交換できるように、画像形成装置本体に対し着脱自在になっている。
同様の画像形成工程がC、M、K用の各作像装置12C、12M、12Kにおいても行われて各色のトナー像が形成され、先に形成されたトナー像に順次重ねて転写される。
一方、記録被転写体Pが給被転写体カセット41、又は手差し給被転写体トレイ42によって二次転写領域に搬送され、二次転写ローラ36の作用によって転写ベルト31上に形成されたトナー像が前記記録被転写体Pに転写される。トナー像を転写された記録被転写体Pは定着ユニット50に搬送され、該定着ユニット50の定着ローラ51と加圧ローラ52のニップ部にてトナー像が定着され、排被転写体ローラ55によって排被転写体トレイ56に排被転写体される。
各作像装置12Y、12C、12M、12Kに新しいトナーを供給するために、トナーボトル57Y、57C、57M、57Kを回転させ、パイプを通してトナーが搬送される。
【0031】
続いて一次転写部について説明する。
まず、感光体10BKは黒色(Bk色)の感光体であり、波長760nmあたりに最高感度を持つフタロシアニン系有機感光体である。この感光体は、Al柱管などの導体の柱管上に、UL層(Under Layer:下引層)、CGL層(Charge Generation Layer:電荷生成層)、CTL層(Charge Transfer Layer:電荷輸送層、ドープPC材など)、表面保護層(フッソ系保護層など)で構成されている。
一次転写ローラ36は中抵抗領域の材質で被覆した回動ローラで、ここでは連れ回りに回動する。なお、中抵抗領域とは、上記した回動ローラを片側1kgで平面金属板に押圧してバイアス1kVを軸心−金属板間に与えた場合に、抵抗として106〜109Ωである事を言う。軸の材質は一般的なローラと同様である。被覆部については、ウレタンやEPDM(Ethylene-Propylene-Dien-Terpolymer)などにイオン系導電剤(リチウムイオンやナトリウムイオン)やカーボンブラックなどを配合して抵抗を調節する。
【0032】
また一次転写ローラの表面硬度はアスカC硬度で15〜70度に調整されている。表層にさらに別樹脂材(フッ素樹脂:商品名テフロン(登録商標)など)で被覆し、長期のトナーフィルミングなどの影響を除いている。なお、接離機構を有してもよいが、その詳細についての説明は略する。 中間転写体31については、ポリイミドまたはPVDF(ポリビニリデンフルオリド)・PC(ポリカーボネート)・ETFE(エチレン−テトラフロロエチレン共重合体)などによる無端ベルト体である。単層あるいは複層のどちらも使用可能である。また、内部にゴム層を持たせても良い。この抵抗は導電材やカーボンブラックにより調節され、転写ローラ同様に中抵抗領域の仕様となる。なお、このベルト材の抵抗値の計測は、ダイヤインスツルメンツ社製のハイレスタUPとその標準プローブUPSなどを用いることにより計測される。
現像装置15において、上のローラは現像ローラであり、下ローラは供給オーガ(螺旋錘)または逆搬送オーガである。
【符号の説明】
【0033】
10(10Y、10C、10M、10Bk) 感光体、11 回収コイル、12 作像装置(12Y Y色用作像装置、12C シアン色用作像装置、12M マゼンタ色用作像装置、12BK 黒色用作像装置)、13 帯電手段(帯電ローラ)、14 クリーニング装置(クリーニングブレード)、15 現像装置、16 潤滑塗布手段(潤滑塗布ブラシ)、18 中間転写ベルトのクリーナー、20 光学ユニット(走査手段)、21 前クリーニング除電ランプ(PCL:Pre-Cleaning Lamp)、22 中間転写ベルトの除電手段、31 中間転写体(転写ベルト)、32 二次転写駆動ローラ、33 二次転写対向ローラ、34−1、34−2 テンションローラ、35 一次転写ローラ、36 二次転写ローラ、41 給被転写体カセット、42 手差し給被転写体トレイ、43 給被転写体ローラ、44 レジストローラ、50 定着ユニット、51 定着ローラ、52 加圧ローラ、55 排被転写体ローラ、56 排被転写体トレイ、57(57Y、57C、57M、57BK) トナーボトル、100 転写前露光装置、100−1、100−2、101 間隙(ギャップ)、110 基板、111 発光素子(発光源)、112 フレーム、113、130、130’ セード、160 廃トナー回収ボトル、L 走査光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開平08−137165号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像が形成される感光体と、前記前記潜像を現像する現像装置と、現像された像が転写される一次転写装置とを有する画像形成装置において、
前記現像装置よりも前記感光体の移動方向下流側かつ前記一次転写装置よりも上流側に、前記感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部と、前記発光源を前記発光列毎に順次発光するように制御する制御部と、を有する発光手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記発光手段は前記複数列配置した各前記発光源を千鳥状に配置することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
各前記発光源の前記感光体回転方向上流側に遮光手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部と、前記発光源を前記発光列毎に順次発光するように制御する制御部とを有する画像形成装置用の発光手段の制御方法であって、
前記発光手段の発光源を、定格電流を超えるオーバードライブ駆動により電流を前記各発光源に流して間隙的に発光させ、前記感光体のトナー像を透過させて前記トナー像の電位と前記透過させた前記感光体表面との電位を同電位になるようにすることを特徴とする画像形成装置用の発光手段の制御方法。
【請求項5】
前記感光体の回転軸方向に複数の発光源を並べた発光列を感光体の移動方向に複数配置した発光部を、排他的に駆動させて前記発光列毎に配置された発光源を発光させることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置用の発光手段の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−243828(P2010−243828A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92922(P2009−92922)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】