説明

画像形成装置とプログラム

【課題】 コントローラの起動開始前にエンジンの起動を開始する場合に、そのエンジンの誤った起動を抑制する。
【解決手段】 エンジン制御部10は、コントローラ12によって通信が確立される前に起動方法設定部13によって設定されたエンジン11の起動方法に関する情報を、予め設定された待ち時間が経過した後に参照し、その参照したエンジン11の起動方法に関する情報に基いてエンジン11を起動する。また、起動方法設定部13にエンジン11の起動方法に関する情報を参照しても設定されていなかった場合、エンジン11の起動方法を判断し、その判断結果に基づいてエンジン11を起動する。上記判断は、エンジン11の温度変化量、あるいはエンジン11の前回調整動作実施日時に基いて行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置と、その画像形成装置を制御するコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写、ファックス通信、プリント、スキャン等の複数の機能が組み込まれた画像形成装置(「複合機(マルチファンクションペリフェラル、MFP)」と呼ばれる)が多く使用されるようになっている。
この種の画像形成装置は、通常、電源の投入後に、使用することなくある一定時間が経過すると、待機モード、予熱モード、低電力モード、スリープモードと順に高い省エネの状態に移行して待機するように制御している。
【0003】
そして、省エネ待機状態になった状態で、複写、印刷、通信等の機能の利用のために、操作パネルに備えられる電源ボタンを押下、ADFへの原稿セット、圧版動作、又は外部端末からの電子データを受信した場合には、システムの機能を復帰するようにしている。
上記システムの機能の復帰では、省エネ効率を考慮して必要な複写、印刷等の機能(アプリケーション)を実現する機器(スキャナ装置、印刷装置、通信装置等)のみを起動させることにより、消費電力を抑えることができる。
【0004】
しかし、上述のように必要な機能のみの復帰を実施するには、画像形成装置の全体を制御するコントローラの起動を待たねばならず、それによって画像形成装置の起動時間に大きく影響する機器のエンジンの起動が遅れることが懸念される。
そこで従来、コントローラから機器のエンジンの機械動作を司るエンジン制御部に対する通信の確立前に、エンジン制御部にエンジンの起動を指示することにより、エンジン制御部は、コントローラの起動を待たずにエンジンの起動を開始することで起動時間を短縮するようにした画像形成装置(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の画像形成装置では、コントローラ自体の起動に時間がかかった場合、エンジン制御部に対してエンジンの起動方法を指示するための専用信号の設定が間に合わずに、エンジンの起動開始を早めても本来想定した立上げ方を実施できないという問題があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、コントローラの起動開始前にエンジンの起動を開始する場合に、そのエンジンの誤った起動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上記の目的を達成するため、機械的動作を行う機器と、上記機器の機械的動作を制御する機器制御手段と、上記機器制御手段との間の通信を確立し、その確立された上記通信を用いて上記機器に関する処理を制御する処理制御手段と、上記機器制御手段が上記機器を起動するときの起動方法に関する情報を設定する起動方法設定手段を有し、上記機器制御手段に、上記処理制御手段によって上記通信が確立される前に上記起動方法設定手段によって設定された上記機器の起動方法に関する情報を、予め設定された待ち時間が経過した後に参照し、その参照した上記機器の起動方法に関する情報に基いて上記機器を起動する手段を設けた画像形成装置を提供する。
【0007】
また、上記のような画像形成装置において、上記機器制御手段に、上記機器の起動方法に関する情報を参照すると、即時に上記機器を起動する手段を設けるとよい。
さらに、上記のような画像形成装置において、上記機器制御手段に、上記機器の起動方法に関する情報を参照しても設定されていなかった場合、上記機器の起動方法を判断し、その判断結果に基づいて上記機器を起動する手段を設けるとよい。
【0008】
また、上記のような画像形成装置において、上記機器の起動方法の判断は、上記機器の起動方法に関する情報に基いて判断するようにするとよい。
さらに、上記のような画像形成装置において、上記機器の起動方法に関する情報を、上記機器の温度変化量、あるいは上記機器の前回調整動作実施日時にするとよい。
さらにまた、コンピュータに機械的動作を行う機器を備えた画像形成装置を制御させて、上記のような画像形成装置として機能させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0009】
この発明による画像形成装置は、コントローラの起動開始前にエンジンの起動を開始する場合に、そのエンジンの誤った起動を抑制することができる。
また、この発明によるプログラムは、コンピュータに画像形成装置を制御させて、コントローラの起動開始前にエンジンの起動を開始する場合に、そのエンジンの誤った起動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図2に示すプロッタ装置の制御部の主要な機能構成を示す機能ブロック図である。
【図2】この発明の一実施例に係る複合機の外観を示す図である。
【図3】図2に示すプロッタ装置の制御部によるエンジン起動時の処理を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図2は、本実施例に係る複合機の外観を示す図である。
この複合機は、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置であるプロッタ装置1、シート格納装置2と3、シート後処理装置4〜6の各ユニットで構成されている。
プロッタ装置1は、例えば、電子写真式記録装置やインクジェット式記録装置で構成され、画像情報をシート格納装置2と3から給紙される用紙へ印刷し、その印刷した用紙を排出口から排出して、後段のシート後処理装置4へ搬送する。
【0012】
シート格納装置2と3は、それぞれ画像情報を印刷するための用紙を格納する装置である。そのシート格納装置2は、プロッタ装置1の下側に接続され、用紙の収納量がシート格納装置3よりも小容量である格納装置であり、シート格納装置3は、プロッタ装置1と並んで接続され、用紙の収納量が大容量の格納装置である。
これらのシート格納装置2、3は、異なるサイズの用紙を格納した複数の給紙段(各給紙段にはそれぞれ同一サイズの用紙が格納される)を備えており、プロッタ装置1へそれらの用紙を給紙する。
【0013】
シート後処理装置4〜6は、プロッタ装置1から排出された画像情報の印刷後の用紙に対して各種の仕上げ加工である後処理を施す装置である。
このように、本実施例に係る印刷システムは、プロッタ装置1に、複数種類の後処理をするためのシート後処理装置を接続している。
【0014】
このシート後処理装置4〜6としては、例えば、製本用の表紙や合紙を挿入するための挿入装置と、パンチ処理をするためのパンチ装置と、製本するために用紙を折るための折り装置と、印刷後の複数枚の用紙からなる用紙束に対してステイプル処理をするためのステイプル装置と、テープ製本、リング製本、シュア製本をするための製本装置と、製本された用紙を最終的なサイズに断裁するための断裁装置がある。
【0015】
また、図示を省略するが、ステイプル処理用のステイプラ、無線綴じ製本のための接着剤、テープ製本のためのテープ、リング製本のためのリング、シュア製本のためのバインドストリップを含むそれらの各消耗品を格納する消耗品格納ユニットも備えている。
【0016】
さらに、ステイプル装置を設けた場合、そのステイプル処理では、印刷物の綴じ枚数によってステイプルをカットする際にステイプル切り屑が発生し、パンチ装置を設けた場合は、そのパンチ処理で印刷した用紙にパンチ穴を開ける際にパンチ屑が発生し、製本装置を設けた場合は、製本処理で三方仕上げ裁ちや無線綴じのミーリング処理の際に断裁屑が発生するので、それらのステイプル切り屑、パンチ屑、断裁屑のような残滓を格納するための残滓回収ユニットも備えている。
【0017】
図1は、図2に示したプロッタ装置1の制御部の主要な機能構成を示す機能ブロック図である。
この制御部は、CPU、ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータによって実現され、CPUがRAMを作業領域としてROMに記憶されたプログラムを実行することにより、エンジン制御部10とコントローラ12の機能部を実現する。
【0018】
コントローラ12は、この複合機の全体の制御を司ると共に、エンジン制御部10との間の通信を確立し、その確立された通信を用いてスキャナ、プリンタの各機器のエンジンに関する処理を制御する処理制御手段の機能を果たす。また、起動方法設定部13も有し、その起動方法設定部13は、エンジン制御部10が機器を起動するときの起動方法に関する情報を設定する起動方法設定手段の機能を果たす。
【0019】
エンジン制御部10は、機器の機械的動作を制御する機器制御手段と、コントローラ12によって通信が確立される前に起動方法設定部13によって設定されたスキャナ、プリンタの各機器のエンジンの起動方法に関する情報を、予め設定された待ち時間(ウエイト時間)が経過した後に参照し、その参照した機器の起動方法に関する情報に基いて機器を起動する手段の機能を果たす。
【0020】
次に、この複合機におけるエンジン11の起動時の処理を説明する。
図3は、この複合機の制御部によるエンジン11の起動時の処理を示すフローチャート図である。
エンジン制御部10は、ステップ(図中「S」で示す)1で、プログラミングの初期化、及び図1のエンジン11のハードを駆動可能な状態確認のみの初期化処理をする。
【0021】
続いて、エンジン11の起動方法(調整動作実施有無)の設定情報を確認するが、この設定情報は図1のコントローラ12が判断して起動方法設定部13が設定するため、コントローラ12自体が起動していない場合には初期値のままとなっている。
そのため、エンジン制御部10は、ステップ2で、予め設定された待ち時間をウエイトし、そのウエイト時間が経過して起動方法設定参照タイミングか否かを判断し、起動方法設定参照タイミングでない場合(Nの場合)、この判断処理を繰り返し、起動方法設定参照タイミングの場合(Yの場合)、ステップ3へ進む。
【0022】
このように、起動方法設定を予め決められた所定時間待った後に参照することにより、コントローラ12の起動遅れによる起動方法が未設定のままの情報に基いて誤ったエンジン起動とならないことを抑制することができる。
ステップ3で、図1のコントローラ12の起動方法設定部13の起動方法設定情報を参照し、ステップ4で、図1のコントローラ12の起動方法設定部13の起動方法設定情報に画質調整動作の実施が有るか否かを判断する。
【0023】
ステップ4で画質調整動作の実施が有ると判断したら(Yの場合)、ステップ5で画質調整動作を実施し、ステップ6で即時に図1のエンジン11の立上げ処理を行ってこの処理を終了し、印刷可能状態へと移行する。
また、ステップ4で画質調整動作の実施がないと判断したら(Nの場合)、ステップ7で調整動作実施判断として画質調整動作を実施するか否かを判断する。
【0024】
このように、起動方法設定情報が画質調整動作についての設定が無い場合には、コントローラ12の起動遅れによる起動方法未設定をケアするために、エンジン制御部10内で保持する情報(エンジン11の温度変化量又はエンジン11に対する前回調整実施日時の差異をスレッシュホールドとする)を元に画質調整動作を実施するか否かを判断する。
ステップ7で画質調整動作を実施すると判断した場合(Yの場合)、ステップ5で画質調整動作を実施し、ステップ6で即時に図1のエンジン11の立上げ処理を行ってこの処理を終了し、印刷可能状態へと移行する。
【0025】
また、ステップ7で画質調整動作を実施しないと判断した場合(Nの場合)、ステップ6で即時に図1のエンジン11の立上げ処理を行ってこの処理を終了し、印刷可能状態へと移行する。
このようにして、コントローラの起動開始前にエンジンの起動を開始する場合に、そのエンジンの誤った起動を抑制することができる。
また、コントローラ起動が遅れた場合には、コントローラの設定を見捨ててエンジン制御部が起動方法を判断してエンジンを起動するので、適正な起動処理を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明による画像形成装置とプログラムは、ファクシミリ装置、プリンタ、複写機、複合機を含む画像形成装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:プロッタ装置 2、3:シート格納装置 4〜6:シート後処理装置 10:エンジン制御部 11:エンジン 12:コントローラ 13:起動方法設定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2007−301765号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的動作を行う機器と、
前記機器の機械的動作を制御する機器制御手段と、
前記機器制御手段との間の通信を確立し、該確立された前記通信を用いて前記機器に関する処理を制御する処理制御手段と、
前記機器制御手段が前記機器を起動するときの起動方法に関する情報を設定する起動方法設定手段とを有し、
前記機器制御手段に、前記処理制御手段によって前記通信が確立される前に前記起動方法設定手段によって設定された前記機器の起動方法に関する情報を、予め設定された待ち時間が経過した後に参照し、該参照した前記機器の起動方法に関する情報に基いて前記機器を起動する手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記機器制御手段に、前記機器の起動方法に関する情報を参照すると、即時に前記機器を起動する手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記機器制御手段に、前記機器の起動方法に関する情報を参照しても設定されていなかった場合、前記機器の起動方法を判断し、該判断結果に基づいて前記機器を起動する手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記機器の起動方法の判断は、前記機器の起動方法に関する情報に基いて判断することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記機器の起動方法に関する情報は、前記機器の温度変化量であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記機器の起動方法に関する情報は、前記機器の前回調整動作実施日時であることを特徴とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項7】
コンピュータに機械的動作を行う機器を備えた画像形成装置を制御させて、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−153033(P2012−153033A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14708(P2011−14708)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】