説明

画像形成装置・転写方法・トナー

【課題】転写チリを高精度に防止することができ、シャープ性に優れた画像を得ることができるようにする。
【解決手段】感光体1と転写ローラ52との間に1〜10N/cmの圧力を加え、この加圧力に対応して変形しにくいようにトナー硬度を高め(7〜12)に設定する。転写ローラ52に弾性層52bを設け、感光体1と転写紙Pとの接触率を多くし、感光体1と転写ローラ52間の転写バイアス電流を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置、該画像形成装置における転写方法、該画像形成装置に用いられるトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真方式の画像形成法では、多くの工程が必要である。コピーの場合はスキャナーや光学系で原稿の画像を電気信号に変換する。プリンターの場合は直接プロッターに信号で入力する。
電気信号に基づいて書き込み手段により、像担持体としての感光体にレーザー光が照射され、帯電している感光体上に静電潜像を形成する。その潜像に対し、現像工程でトナーに代表される有色微粉末を静電的に付着させて可視像とする。
更に転写工程で記録媒体としての転写紙にトナー像が静電的に転写される。最近、カラーの分野では中間転写体上に3〜4色のトナー像を重ね転写し、転写紙に一括転写する方式も多く用いられている。最終的に定着工程で転写紙上にトナーを熱などにより溶融、固着させ、画像を形成する。
【0003】
画像品質について検討した場合、上記のすべての工程で画像の劣化が発生する。特に現像、転写の各工程での画像の劣化が大きいことは周知の通りである。
現像工程では、感光体潜像に対し、感光体上のトナー周りの電界によりトナーは静電的に付着するため、潜像より広範囲に現像されたり、キャリアの摺擦によりかすれたりして、静電潜像に対し画像の劣化が発生する。最近の技術では、トナーの小径化、球形化、キャリアの小径化などで、改善されてきている。
転写工程では、トナー像が形成された感光体と同期して搬送された転写紙を感光体に当接させ、電界により感光体から転写紙にトナー像を静電的に転移させるようになっている。
しかしながらこの転写工程の前後での転写紙と感光体の密着前後の近接部位で静電的にチリ、滲みなどによる画像劣化が大きくなる。
定着工程でも画像の劣化が生じるが、近年定着ローラの弾性化や定着ニップ狭幅化等により改善されている。
【0004】
従来から、転写工程での画質改善提案が種々なされている。例えば、特開2000−155472号公報では転写ローラの位置や接触圧が規定されている。特開2000−221800号公報ではフロートローラを感光体に加圧する改善提案がされており、特開2001−209255号公報では中間転写体の体積固有抵抗とトナー物性を規定した改善提案がされている。
特開平7−5776号公報では、アモルファスシリコーン感光体を用い、トナーとしてカプセルトナーを用いて圧力ローラに転写バイアスを印加する方法が提案されている。特開平5−107796号公報や特開平6−230599号公報などにはカプセルトナーを用いて圧力ローラで定着する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
カプセルトナーを用いて圧力ローラで定着する方法の場合、カプセルトナーは実用的には問題が大きい。特に、現像と定着の両立が確立されておらず、またコストが高すぎるなどの問題があり、汎用的に利用されていないのが現状である。
近年、重合法トナーが採用されており、画像の均一化の改良がされているが、転写時のチリ、滲み、と言った放電による画像劣化は改善されていない。
【0006】
そこで、本発明は、転写チリや滲みを高精度に防止することができ、シャープ性に優れた画像を得ることができる画像形成装置、転写方法、該画像形成装置に用いられるトナーの提供を、その主な目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
まず、転写工程での課題としての転写チリの発生メカニズムを図8に基づいて説明する。転写工程では、転写領域Bの前後で記録媒体としての転写紙Pと像担持体としての感光体1が接触していない領域A、Cで電界の影響で転写チリが発生する。図8において、符号1aは感光層を、Tはトナー又はトナー層を、80は転写手段としての転写ローラを示している。
領域Aでは転写最適領域前での転写紙P上の電荷と電界により、トナーTが感光体1から転写紙P上に飛翔し、チリの原因となる。領域Cでは、転写により帯電した転写紙Pは感光体1と静電的に付着している。転写後に分離する際に剥離放電が発生し、これもチリの原因となる。
【0008】
次に、上記目的を達成するための本発明の趣旨を以下に説明する。本発明では、通常(従来)の静電転写より強い圧接力で、且つ通常(従来)の静電転写より弱い電界で転写することを最大の特徴とする。このため、転写ローラの材質は硬い弾性体構造が必要であり、転写紙の体積抵抗より低い体積抵抗が良い。加圧力が大きいことに対応してトナーは硬度の大きいトナーを用いる。
更に転写電界がトナーの移動(転写)と同一方向にのみかかるように、転写ローラの表面抵抗は体積抵抗より高い方が良い。転写紙表面は繊維質が互いに絡み合って構成されている為、凸凹形状であって、均一な凸凹でもない。通常使われる転写紙、例えばType6000紙(リコー製)はその表面を観察すると40μm程度の凹凸があり、ミクロ的に見ると転写時搬送された転写紙が感光体と接するのは凸部分のみであって凹部は離れている。
【0009】
一方トナー粒径は通常6μm程度と凹部のエアーギャップ(40μm)と比べて約1/7倍程度あるから、この部分(凹部)にあるトナーは転写紙と接することもなく、移動(転写)するためには凸部分より強い(高い)電界の作用が必要となる。従来はこの様な状態で強い電界の下、転写が行われていたため、転写後感光体から転写紙が分離する時、剥離放電が起こり転写チリや滲み等が発生していた。
これは図8で示したように、転写紙が感光体に接する直前でも発生するため、転写電界は弱くすることが転写時の画質向上には重要となる。放電は凹部と感光体間(N/Pの場合は主に非画像部)や凸部と凹部間でも起き、転写されるべき位置のトナーが放電方向に向かって移動してしまうため、転写チリや滲みが発生してしまう。
本発明は下記式(1)、(2)で表される転写のメカニズムに基づき、転写効率を下げることなく転写電界を弱めることが可能な様に加圧力を増大させ、この加圧力に対しても画像の劣化のない改良されたトナーとの組み合わせにより新規な転写方式を実現するものである。
更に、剥離放電時のトナーのチリに強い凝集性の高いトナーを用いる。物性的な結着力が強いトナー同士が加圧と静電気力によって結合されると、一旦転写したトナーは剥離放電が起こっても再び移動し難くなる。
【0010】



【0011】
従来の加圧力より高い圧力を用いたことで転写紙の凸部での感光体との接触部分が増し、そのことで見かけ上の転写紙の誘電厚み(dp/εp)やエアーギャップgが狭くなり、同じ電界効果を得るための印加電圧を抑えることが可能となる。
しかし、凹部のエアーギャップgは全て無くなる訳ではないので、これについてはトナーの凝集力を組み合わせることで転写ずれを抑制する。
更に、高い圧力を用いたことでトナーが変形しにくいように、凝集性とトナー硬度の最適値を規定する。更に、弱い電界で転写性能を維持する為、抵抗の高い絶縁トナーを採用する。
更に、高い圧力を可能とするには転写ローラを剛体とする必要があるが、転写紙はローラと接する部分も凸凹形状であるから、応力を分散し均一に押圧できるように、十分な加圧力を保ちながら転写紙の凸凹面に対応できる弾性体構造とする。
更に、凝集力の高いトナーを採用することで感光体への付着力も増す(トナー・トナー間だけでなく、トナー・感光体やトナー・転写紙間においても)ため、感光体の表面抵抗を小さくしてトナーの離型性を良くし、転写性の向上を図る。
【0012】
上記技術的思想の下、請求項1記載の発明では、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する画像形成装置において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、該加圧力に対応して予めトナーの硬度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写する、という構成を採っている。
【0013】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の画像形成装置において、上記圧力が、1〜10N/cmである、という構成を採っている。
【0014】
請求項3記載の発明では、請求項2記載の画像形成装置において、上記トナーの硬度が7〜12である、という構成を採っている。
【0015】
請求項4記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記転写手段の体積抵抗が、上記記録媒体の体積抵抗と同程度から1/100程度である、という構成を採っている。
【0016】
請求項5記載の発明では、請求項4記載の画像形成装置において、上記転写手段の表面抵抗はその体積抵抗よりも高い、という構成を採っている。
【0017】
請求項6記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記トナー周りの電界は、上記記録媒体がリークする電流以下であって且つ静電転写が可能な電流以上の電流を印加することにより得られる、という構成を採っている。
【0018】
請求項7記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記転写手段が、表面に硬度が60〜80度の弾性層を有している、という構成を採っている。
【0019】
請求項8記載の発明では、請求項7記載の画像形成装置において、上記弾性層は、加圧による変形量の10倍以上の厚みを有している、という構成を採っている。
【0020】
請求項9記載の発明では、請求項7又は8記載の画像形成装置において、上記転写手段がローラであり、内側に導電性の芯金を有している、という構成を採っている。
【0021】
請求項10記載の発明では、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記トナーの凝集度が20〜50%である、という構成を採っている。
【0022】
請求項11記載の発明では、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する画像形成装置において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、予めトナーの凝集度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写する、という構成を採っている。
【0023】
請求項12記載の発明では、請求項11記載の画像形成装置において、上記トナーの凝集度が20〜50%である、という構成を採っている。
【0024】
請求項13記載の発明では、請求項1乃至12のうちの何れか1つに記載の画像形成装置において、上記トナーの体積固有抵抗が1×10Ωcm以上の絶縁性トナーである、という構成を採っている。
【0025】
請求項14記載の発明では、請求項1乃至13のうちの何れか1つに記載の画像形成装置において、上記像担持体の表面の摩擦係数が0.7以下である、という構成を採っている。
【0026】
請求項15記載の発明では、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する転写方法において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、該加圧力に対応して予めトナーの硬度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することとした。
【0027】
請求項16記載の発明では、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する転写方法において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、予めトナーの凝集度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することとした。
【0028】
請求項17記載の発明では、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に且つ圧力を加えて転写する画像形成装置に用いられるトナーにおいて、硬度が7〜12である、という構成を採っている。
【0029】
請求項18記載の発明では、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に且つ圧力を加えて転写する画像形成装置に用いられるトナーにおいて、凝集度が20〜50%である、という構成を採っている。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施形態を図1乃至図7に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて本実施形態における画像形成装置の全体構成の概要を説明する。画像形成装置は周知の電子写真方式を用いており、内部に像担持体としてのドラム状の感光体を備えている。感光体1の周囲には矢印で示す回転方向に沿って、電子写真複写工程を実施する帯電手段2、露光手段3、現像手段4、転写搬送手段5、クリーニング手段6及び定着手段7が配置されている。
露光手段3は、画像読み取り装置31により読み取られた原稿の画像信号を基に、ポリゴンミラー32でレーザー光をスキャンさせミラー33で反射して感光体1上に静電潜像を形成する。感光体1としては有機感光体の他、アモルファスシリコーン等の既存の感光体を用いることができる。
【0031】
感光体1上に形成された静電潜像は、現像ローラ41を有する現像手段4によってトナー像として可視像化される。給紙トレイ101、106に収容された記録媒体としての転写紙Pは給紙ローラ102、107で給紙され、搬送ローラ対103、108によりレジストローラ対104に向けて搬送される。
転写紙Pはレジストローラ対104で一旦停止されて斜めずれを修正された後、感光体1上に形成されたトナー像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングでレジストローラ対104により転写部位へ向けて搬送される。
転写部位へ送られた転写紙Pは、転写搬送手段5における転写手段としての転写ローラ52と感光体1との間に印加される転写バイアスにより、トナー像を静電転写される。トナー像を転写された転写紙Pは転写搬送手段5の搬送ベルト53により定着手段7へ搬送され、定着される。定着が終了した転写紙Pは排紙ローラ対105により排紙トレイ110へ排出される。
【0032】
転写後、感光体1上に残留したトナーや汚れはクリーニング手段6により清掃される。クリーニング手段6は、クリーニングブレード61と、クリーニングブラシ62と、摩擦係数低減剤63を有している。クリーニング後の感光体1は図示しない除電ランプにより表面電位を初期化され、次の作像工程に備えられる。
転写ローラ52は、金属ローラ52aと、該金属ローラ52aの表面に形成された弾性層を有している。搬送ベルト53は駆動ローラ54と従動ローラ55により回転駆動され、その表面をベルトクリーニング手段56によりクリーニングされる。
定着手段7は、内部にハロゲンランプ等の加熱源74を備えた定着ローラ71と、同じく内部にハロゲンランプ等の加熱源73を備えた加圧ローラ72を有している。定着ローラ71と加圧ローラ72は、面圧が9.3N/cmの加圧力で圧接されて約10mmの定着ニップ幅を形成している。定着手段7は図示しない駆動手段により駆動力を受けて転写紙Pを挟持搬送する。この際、定着ローラ71は加熱源74によって所定の温度に制御されており、転写紙P上のトナー像は両ローラ間を通過するときに圧力を受けながら溶融し、ニップ部を出て冷却されることによって永久像として転写紙Pに定着される。
【0033】
次に、図2に基づいて転写ローラ52の構成と加圧構造を説明する。転写ローラ52は、ステンレス(SUS)や鉄(Fe)等からなる直径20〜30mmの芯金としての金属ローラ52aと、この金属ローラ52aの表面に形成された弾性層52bを有している。弾性層52bは、EPDM、シリコーン、NBR、ウレタン等の材料でソリッド状に形成されている。
弾性層52bは、0.1〜1.0mmの厚みで硬度60〜80度(AskerC/1kg荷重時)、体積抵抗1×10〜1×1011Ωcmに設定されている。弾性層52bの表面抵抗は体積抵抗より1〜2桁高い抵抗の範囲が最適である。
【0034】
ここで、転写ローラ52の体積抵抗は転写紙Pの体積抵抗より小さい値を採用するのが良い。同程度、好ましくは、1/10程度から1/100の体積抵抗とすることで、環境変動やローラ劣化に対しても転写紙Pにかかる電界は安定する。
転写紙Pの抵抗が小さいと転写紙Pの変化に、印加するバイアス電源が追従しないとか、安定供給出来ない等の不具合が発生する。又、転写ローラ52の表面抵抗は体積抵抗より高くしなければならない。このことにより、圧力と同一方向の電界の作用のみでトナーを転写するが可能となる。
表面抵抗が体積抵抗より低ければ、従来のベルトを用いた転写方式のように印加するバイアスはローラの表面を流れ易くなって、感光体1上のトナーの転写効率が悪くなるばかりか転写されたトナーが転写紙Pを移動し易くなって、滲み画像の原因となる。本実施形態では表面抵抗を10倍〜100倍にしたローラを用いた。
【0035】
図3に基づいて、印加するバイアスのレベルを決定する手法を説明する。図3は、図1で示した画像形成装置を用いて、転写ローラ52の芯金52aと感光体1の導電層(ベース層)の間に図示しないローラバイアス印加用の直流電源を接続した構成での実験データである。
感光体1と転写ローラ52の間に転写紙(Type6000(リコー製))が通紙されたとき、バイアス印加用の直流電源を作動させ、この時に流れる電流と通紙下流方向に配置した表面電位計にて転写紙の電位を測定したものである。
図3から理解されるように、転写紙はバイアス電圧の増加と共に帯電し、限界電圧を超えると電位の変化がなくなる。この推移は転写紙を流れる電流とも相関しており、限界点での電流は約1.0μA/cmである。
限界点とは転写紙が許容できる電荷量の上限値であり、この電荷量以上のバイアス電圧分は転写紙を通して感光体にリークしていることを意味している。
【0036】
すなわち、このリーク電流以上の成分があると感光体上のトナーの電荷に影響を与えたり、剥離放電の原因になることが証明された。一方、転写効率においても、この限界点をピークに効率は悪化する訳だが、画像形成装置の線速度による位相遅れがあって、実際のピークは限界点を越えた電流値にあり、従来は転写効率最大値に設定されることが常識的に行われていた。
しかも、この限界点は転写圧や転写紙種類・環境等で変化するので、従来は変化しても十分な転写効率が得られるように、又制御の煩雑性から限界点以上の電流に設定されることが常識的に行われていた。
【0037】
本発明者らは、転写紙がリークすること、そしてこのリーク以上の電流が印加される領域が転写時の転写チリや滲みの原因であること、剥離放電の領域であることを発見した。この事実に基づいて、静電転写方式では従来想定できなかった転写圧を高めることで上記限界点以下の電流領域でも、良好な転写効率を得ることを可能とし、併せて画質の向上を達成しようというものである。
画像形成装置の位相遅れも考慮すると、リーク開始電流値を範囲内として、+20%〜−50%程度が最適電流範囲と言える。それ以上では転写チリや滲みが発生し、以下は転写効率が悪化して本発明の趣旨である転写圧を高めても十分な転写性を確保できない。
転写ローラ52の弾性層52bの硬度は低いと下記する転写圧が得られない。本実施形態の特徴である高い転写圧を達成するためには、硬度が50度以上あればよく、硬度80度を越えると転写紙の凸凹面に対応できず、応力を分散した均一押圧ができない。
【0038】
また、弾性層52bの厚みは加圧したことで変形した量の10倍程度、好ましくは5倍以上が必要である。薄くなるとローラ芯金の影響が出現して、上記硬度が実質的に得られない。一方、厚くなれば硬度を保つことは可能だが、ローラの体積抵抗が実質的に高くなって、上記体積抵抗が得られない。
弾性層52bはローラ硬度の他、体積抵抗等々で決定される範囲内であれば公知の弾性材料が可能であるが、その厚みは概ね3mmが上限である。
以下の実施例では転写ローラ52として、直径20mmのアルミニウム製のパイプ上に1.0mm厚のEPDM層を設けた弾性ローラを用いた。このときの硬度は65度、体積抵抗は使用する転写紙(Type6000(リコー製);体積抵抗1×10Ωcm)に合わせて1×10Ωcmである。
【0039】
図2に示すように、転写ローラ52の加圧は、ローラの両端に設けられた軸受52cとバネ52dによりなされ、感光体1に押圧されている。以降、加圧力の測定は転写ローラ52前後のバネ押圧力の合計を転写ローラ52の長さで割った値で表示する。単位はN/cmで示す。
【0040】
次に、図4に基づいて感光体1と転写ローラ52間の加圧時のトナー周りの空隙について説明する。
図4(a)は、従来における圧力1N/cm以下の転写部位における加圧状態を示す図である。転写紙Pは微小面積では硬く、広い面積では変形(曲がり)する特性を有している。従来のように圧力が弱いと、転写紙Pの繊維の凹凸で表面、裏面における数点の凸部で受けて(接触して)搬送される。
その結果、トナーTや感光体1と転写紙Pの接触点が少なく、感光体1と転写ローラ52の表面の間の空隙が多い状態となる。
感光体とゴム層(弾性層52b)の無いローラ間に0.5N/cmの加圧力を加え、転写紙P(リコー製Type6200)を挟み、ギャップを測定した。また、1.0N/cmの加圧で同様に測定した結果、20μmの差があった。つまり、加圧によって空隙が20μm減ったことになる。
【0041】
その様子、すなわち本実施形態における加圧状態を図4(b)に示す。加圧によって転写紙Pの凸部と感光体1、転写ローラ52が多く接触するようになる。その結果、空隙が小さくなり、トナーTと転写紙P間の距離が平均的に狭くなり、式(2)の分母項のg(エアーギャップ)が小さくなる。さらにトナー層Tの厚みが一定でトナー表面の粗さも均一であれば、平均の空隙が小さくなって本実施形態の効果を得ることができることは式(2)から明らかである。
以上のように空隙g(エアーギャップ)を小さくすることで、転写ローラ52と感光体1にかかる電位差を小さくしても転写紙Pにかかる電界は従来と同じ電界が得られ、転写時の剥離放電による転写チリを減少させることができる。
【0042】
次に、本実施形態における感光体1について説明する。感光体1は、その表面摩擦係数が0.7以下であることが好ましい。表面摩擦係数が0.7以上の場合、転写の際、トナーとの離型性が悪くなり転写効率が悪化する。
特に本発明では、比較的凝集力の高いトナーを使用するため、表面摩擦係数を低くする必要がある。
感光体1の表面摩擦係数を低くする方法として、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩を感光体1の表面に均一に塗布することが考案されているが、最も一般的な手段はトナー中に添加する方法である。
表面摩擦係数の測定は協和界面化学(株)社製、全自動摩擦摩耗解析装置を用いて測定した。このときの接触子として3mmステンレス球を用いた。
本実施形態では導電性支持体上に感光層と金属酸化物を含有した保護層を設けた感光体も使用できる。金属酸化物を含有した保護層を設けた感光体を用いた場合、機械的強度が強いため、感光体の膜削れが少なく、安定した画像品質を得ることができる。
【0043】
また、感光体の保護層中に含有する金属酸化物としては、アルミナ、酸化チタン、シルカの中から選ばれる一種であることが望ましい。保護層は耐摩耗性を向上する目的で、フッ素樹脂、シリコーン樹脂中にシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズなどの各種金属酸化物を添加したものが用いられるが、特に膜削れ防止効果が高いアルミナ、酸化チタン、シリカが好ましい。
【0044】
次に、本実施形態におけるトナー特性、材料、製造方法について詳細に述べる。
本実施形態で用いられるトナーの硬度は7〜12、好ましくは8〜11である。硬度が7以下の場合、トナー粒子同士が接した場合、塑性変形するため、トナー同士の接触面積が増加し、トナーの凝集力が強くなり、トナー層を均一化することが難しくなる。また、12以上の場合、転写工程での問題はないが、定着工程において定着性が悪化する恐れがある。
トナーの硬度を調整するためには、いくつかの方法があるが、最も効果が高い方法は結着樹脂によるものである。結着樹脂はトナーを構成する成分の中で、最も比率が大きいため、トナーの硬度をコントロールするには効果的である。結着樹脂の硬度を大きくするには、分子量、架橋成分(ゲル)、架橋度などを大きくする。この方法は単独または組み合わせにて行う。また、カーボンブラック、無機微粉末などの添加剤を内添させてもトナー硬度を大きくすることは可能である。
逆にトナー硬度を小さくするには、結着樹脂の分子量、架橋成分(ゲル)、架橋度などを小さくする。また、定着性改良のために添加するワックス類もトナー硬度を小さくすることができる。但し、ワックス類はトナー中の分散状態によってもトナー硬度が異なるため、分散をコントロールすることが重要となる。
【0045】
トナー硬度の測定方法を以下に述べる。
測定装置:微小圧縮試験機 MCTM−500:島津製作所製
測定方法:溶融したトナーを圧延冷却し平板状とする。次にその表面を#1200の紙やすりを用いて研磨し、平滑にする。荷重を1.0gf加えて5回測定を行ない、その平均値を硬度とする。
また、トナーの凝集力はある程度大きい方が好ましい。トナーの凝集度は20〜50%、好ましくは30〜40%である。トナーの凝集力が小さすぎると、トナー粒子が単独で動きやすいため、転写時や剥離放電が発生した時にトナーが電界の乱れに沿って移動する為、滲みやチリが出やすい。
トナーの凝集度が高いと、トナー同士の付着力も強い反面、感光体1とのトナー付着力も大きくなり、転写効率の悪化となる。従って、上述の感光体表面摩擦係数との組み合わせで、感光体1へのトナー付着の悪化しない程度のトナー凝集度を上限とすることで本発明の効果が発揮される。
【0046】
トナーの凝集力は凝集度(%)として表すことができる。凝集度の値が大きいほど、トナーの凝集力が強いと言える。凝集度の測定方法を以下に述べる。
測定装置:パウダテスタ PT−N型 ホソカワミクロン株式会社製
操作方法:以下の点を除いて、基本的には「パウダテスタ PT−N型」の取り扱い説明書に従う。変更点は
1.使用ふるい:75μm、45μm、22μm
2.振動時間:30秒
である。
また、本実施形態におけるトナーの体積固有抵抗は1×10Ωcm以上が好ましい。1×10Ωcm以下の場合は、転写効率が悪くなるため、本発明に使用するトナーとしては画像品質が悪化し、適しない。
トナーの体積固有抵抗の測定は、トナー3.0gを6t/cmの荷重をかけ、直径40mmの円盤状のペレットにしたものをTR−10C型誘電体損測定器(安藤電気株式会社)にて測定する。なお周波数は1KHz、ratioは11×10−9である。
【0047】
本実施形態のトナーで使用される結着樹脂としては、従来公知の樹脂が全て使用可能である。例えば、スチレン、ポリ−α−スチルスチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂などが挙げられる。
本実施形態のトナーでは離型剤として公知のものが全て使用できるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用することができる。
また外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
本実施形態のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
【0048】
本実施形態のトナーに使用される着色剤としては、従来からトナー用着色剤として使用されてきた顔料及び染料の全てが適用される。具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、オイルブラック、アゾオイルブラックなど特に限定されない。
本実施形態のトナーの製造方法は、従来公知の方法でよく、結着樹脂、磁性体、離型剤、着色剤、その他場合によつては帯電制御剤等をミキサー等を用いて混合し、熱ロール、エクストルーダー等の混練機を用い混練した後、冷却固化し、これをジェットミル、ターボジェット、クリプトロン等の粉砕で粉砕し、その後分級し得られる。
上記トナーに無機無粉末、脂肪酸金属塩などを添加するにはスーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いる。
【0049】
以下実施例により本発明を説明するが、トナー処方を下記し、そのときのトナー特性を表1に記載する。また、実施例では使用したトナーを「トナー処方No」で記載する。
[トナー処方No1]
ポリエステル樹脂                       44重量部
(重量平均分子量:310000、Tg:65℃)
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体           40重量部
(重量平均分子量:85000、Tg:68℃)
カルナウバワックス                       5重量部
カーボンブラック                       10重量部
(#44:三菱化学)
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)      1重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて130℃で混練後、機械式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径8.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)0.2重量%を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は8、凝集度は45%、体積固有抵抗は8.5×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0050】
[トナー処方No2]
ポリエステル樹脂                       71重量部
(重量平均分子量:185000、Tg:67℃)
カルナウバワックス                       3重量部
(平均粒径:300μm)
四三酸化鉄                          15重量部
(EPT−1000:戸田工業)
カーボンブラック                       10重量部
(#44:三菱化学)
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)      1重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて160℃で混練後、機械式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径5.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)1.0重量%を混合しトナーを得た。このトナーの硬度は11、凝集度は8.0%、体積固有抵抗は5.5×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0051】
[トナー処方No3]
スチレン/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体                              55重量部
(組成比:75/10/15 重量平均分子量:210000 Tg:57℃)
ポリエステル樹脂                       23重量部
(重量平均分子量:160000 Tg:64℃)
ポリエチレンワックス                     10重量部
(分子量900)
カーボンブラック(#44:三菱化学)             10重量部
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)      2重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて90℃で混練後、気流式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径7.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)0.2重量%を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は6、凝集度は55.0%、体積固有抵抗は8.8×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0052】
[トナー処方No4]
ポリエステル樹脂                       79重量部
(重量平均分子量:274000、Tg:68℃)
ポリエチレンワックス                      3重量部
(分子量900)
カーボンブラック                       15重量部
(#44:三菱化学)
電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)       3重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて150℃で混練後、気流式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径9.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)1.0重量%を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は14、凝集度は8.5%、体積固有抵抗は4.2×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0053】
[トナー処方No5]
ポリエステル樹脂                       49重量部
(重量平均分子量:310000、Tg:65℃)
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体           35重量部
(重量平均分子量:85000、Tg:68℃)
カルナウバワックス                       4重量部
カーボンブラック                       10重量部
(#44:三菱化学)
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)       2量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて130℃で混練後、機械式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径8.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)0.75重量%を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は10、凝集度は15%、体積固有抵抗は9.5×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0054】
[トナー処方No6]
ポリエステル樹脂                       73重量部
(重量平均分子量:185000、Tg:67℃)
カルナウバワックス                       5重量部
(平均粒径:300μm)
四三酸化鉄                          10重量部
(EPT−1000:戸田工業)
カーボンブラック                       10重量部
(#44:三菱化学)
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)      2重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて160℃で混練後、機械式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径6.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)1.0重量%を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は11、凝集度は38.0%、体積固有抵抗は9.8×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0055】
[トナー処方No7]
ポリエステル樹脂                       56重量部
(重量平均分子量:310000、Tg:65℃)
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体           35重量部
(重量平均分子量:85000、Tg:68℃)
カルナウバワックス                       3重量部
カーボンブラック                        5重量部
(#44:三菱化学)
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)      1重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて80℃で低温混練後、機械式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径8.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)1.0重量%を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は10、凝集度は25.0%、体積固有抵抗は3.5×10Ωcmであった。
感光体の表面摩擦係数:0.75
【0056】
[トナー処方No8]
ポリエステル樹脂                      56重量部
(重量平均分子量:310000、Tg:65℃)
スチレン−n−ブチルアクリレート共重合体          35重量部
(重量平均分子量:85000、Tg:68℃)
カルナウバワックス                      3重量部
カーボンブラック                       5重量部
(#44:三菱化学)
荷電制御剤(スピロンブラックTR−H:保土ヶ谷化学)     1重量部
以上の処方で2軸エクストルーダーを用いて80℃で低温混練後、機械式粉砕機により粉砕、分級し重量平均粒径8.5μmとした後ヘンシェルミキサーを用い、シリカ(R−972 日本アエロジル)1.0重量%とステアリン酸亜鉛微粉末0.20重量部を混合しトナーを得た。
このトナーの硬度は10、凝集度は35.0%、体積固有抵抗は1.8×10Ωcmであった。
このトナーを用いた時の感光体の表面摩擦係数は0.60であった。
上記トナーの特性を表1に示す。
【0057】
【表1】



【0058】
次に本発明での転写率、定着性、転写チリ、転写白抜けの評価方法について説明する。評価機はリコーImagioMF7070の転写部を改造して用いた。ユニット構成は図1で示した装置の構成と同じである。
現像として二成分方式の現像装置を用い、転写はローラ転写で行い、ベルト搬送され、定着は面圧:9.3N/cmの加圧力、温度は165〜185℃で定着を行った。この装置を用いて、600dpiのドットから形成されたグレースケールを中心としたテストチャート(図5参照)をプリントアウトしてサンプル画像を得た。
【0059】
<転写率の評価>
現像された感光体1上のチャートを転写し、転写紙Pが転写搬送ベルト53上にある時に機械を停止する。チャートの黒ベタ部に着目し、感光体1上の黒ベタ部の転写残トナー量を粘着テープで剥がし、感光体1上の残トナー量を求める。
一方転写されたトナーは黒ベタ部を切り取りトナーを圧縮エアーで吹き飛ばす。吹き飛ばし前後の重さより転写されたトナー量を求め、下記式
(転写トナー量/(転写トナー+残トナー量))×100   (%)
で転写率(%)を求める。転写率の許容値は一般環境下で70%以上である。転写率80%以上は「○」と判定する。同じく70〜79%は「△」、69%以下は「×」と示した。許容レベルは「△」以上である。
【0060】
<定着性の評価>
次に、定着性はスミア法で行う。ID:0.6〜0.8のハーフトーン部で8.8N/φ15の重りに付着した布を転写紙Pの上に載せ、5往復擦ったときの布上の濃度で評価を行った。
問題無いレベル0.3以下は「○」、許容できるレベルである0.5以下は「△」で表示し、0.51以上のレベルは「×」と評価した。
【0061】
<転写チリ、転写白抜けの評価>
転写チリと転写白抜けは汎用的な評価法が確立していないため、サンプルとランク見本とを目視での官能評価法で行った。転写チリのランク見本は図7に転写白抜けのランク見本は図6に示した。
ランク3の画像の「△」が許容レベルであり、それ以上は「OK」、「△」に満たないものは「NG」である。
【0062】
以下実施例により本発明を説明する。
[実施例1]
図1と同様のテスト機はリコーイマジオMF7070の転写部を改造して用いた。感光体1と転写ローラ52の接触が安定するように転写ローラ52の表面に硬度65度(AskerC/1kg荷重時)、1×10Ωcmのゴム層(弾性層)を設けた。図2で示したバネ52dによる転写圧力を0.5、1.0、5.0、10.0N/cmの4水準、転写ローラ52と感光体1間に印加する電圧を制御して、流れる電流を0.03、0.05、0.2、0.3μA/cmの4水準でプリンタにより、図5のテストチャートをプリントした。
使用した転写紙PはType6000(リコー製)であり、使用した現像剤はトナー処方No8である。評価は転写率、転写チリ、転写白ぬけで確認した。それぞれの結果を表2、表3、表4に示す。現状値、すなわち従来値は転写電流0.3〜0.4μA/cmで加圧力は1N/cm前後の条件である。
【0063】
【表2】



【0064】
【表3】



【0065】
【表4】



【0066】
表2、3、4から転写率は0.05μA未満では電流不足で不良である。圧力が小さく、電流も小さいと転写率が低下する。転写チリでは、転写電流が0.3μA以上で放電によるチリが大きくなる。また転写圧力が10N/cmでは転写白ぬけが発生しかかっている。その結果転写率でも低下している。
以上の結果、最適条件として、圧力で1〜10N/cm、転写バイアス電流で0.05〜0.2μA/cmの組み合わせを選択できる。好ましくは圧力で1.0〜5.0N/cm、電流で0.1〜0.15μA/cmが最適であった。
【0067】
[実施例2]
実施例1と同じ方法で、トナー処方1〜8のトナーを用いて現像剤を作製した。この時のキャリアは重量平均粒径50μの球形フェライトを用い、表面にシリコーン樹脂をコートし熱乾燥したものを用いた。現像剤濃度はキャリアに対し5.0w%混合した。
転写の加圧力は3N/cm、転写電流は0.1μA/cmに設定し図5のテストチャートをプリントした。使用した転写紙PはType6000(リコー製)であり、評価は転写率、転写チリで確認した。その結果を表5に示す。
【0068】
【表5】



【0069】
表5から感光体1の摩擦係数は単独の効果より、むしろトナーの凝集力との関係で転写率に影響を与えることが判る。トナー体積抵抗が低いと転写率に影響するが、転写チリには大きく関係しない。トナー硬度が高いほど転写チリには有利だが、トナー凝集力との関係で加圧力を変更しないと改善されない。
例えば、トナー処方No3の場合は転写電流を0.1μA/cmから0.05μA/cmにすることで転写チリランクは「△」から「○」に改善された。
【0070】
上記実施形態では転写手段として転写ローラを例示したが、無端状のベルトであっても同様の機能を得ることができる。
また、上記実施形態では、複数の条件を同時に備えた構成で説明したが、トナー硬度とは無関係にトナー凝集度を高めに設定するなど、個々の条件の単独設定における構成でも従来に比べて転写チリを低減できる。
【0071】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する画像形成装置において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、該加圧力に対応して予めトナーの硬度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写する構成としたので、十分な加圧力を与えることで、転写紙と感光体の接触点を多くして転写効率を上げることができるとともに、結果的に転写電界を小さくできて転写紙電荷を小さくでき、分離時に剥離放電しない程度に減少させることができる。これにより画像劣化のない高品位の画質を得ることができる。
更に、最適なトナー硬度の設定により、高い圧力を用いたことによるトナーの変形を抑制することができ、転写時のチリ、滲み等の画像劣化を抑制できる。
【0072】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の画像形成装置において、上記圧力が、1〜10N/cmである構成としたので、加圧力の最適化により転写時のチリ、滲み等の画像劣化を高精度に低減できる。
【0073】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の画像形成装置において、上記トナーの硬度が7〜12である構成としたので、トナー硬度の最適化によりトナーの変形による画像劣化を来たすことなく転写時のチリ、滲み等の画像劣化を高精度に低減できる。
【0074】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記転写手段の体積抵抗が、上記記録媒体の体積抵抗と同程度から1/100程度である構成としたので、記録媒体にかかる電界を安定させることができる。
【0075】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の画像形成装置において、上記転写手段の表面抵抗はその体積抵抗よりも高い構成としたので、加圧力と同一方向の電界の作用のみでトナーを転写することが可能となり、転写効率を高めることができる。
【0076】
請求項6記載の発明によれば、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記トナー周りの電界は、上記記録媒体がリークする電流以下であって且つ静電転写が可能な電流以上の電流を印加することにより得られる構成としたので、少ない転写エネルギーで良好な転写効率を得ることができるとともに、転写チリを低減できる。
【0077】
請求項7記載の発明によれば、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記転写手段が、表面に硬度が60〜80度の弾性層を有している構成としたので、転写紙と感光体との接触率が向上させることができ、転写効率を向上させることができる。
【0078】
請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の画像形成装置において、上記弾性層は、加圧による変形量の10倍以上の厚みを有している構成としたので、転写紙と感光体との接触率が向上させることができ、転写効率を向上させることができる。
【0079】
請求項9記載の発明によれば、請求項7又は8記載の画像形成装置において、上記転写手段がローラであり、内側に導電性の芯金を有している構成としたので、転写電流を低く抑えることができる。
【0080】
請求項10記載の発明によれば、請求項1又は2記載の画像形成装置において、上記トナーの凝集度が20〜50%である構成としたので、剥離放電時のトナー飛散を抑制でき、転写チリを低減できる。
【0081】
請求項11記載の発明によれば、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する画像形成装置において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、予めトナーの凝集度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写する構成としたので、像担持体と記録媒体間のエアーギャップがあってもトナーのランダム移動を抑制でき、転写チリを低減できる。
【0082】
請求項12記載の発明によれば、請求項11記載の画像形成装置において、上記トナーの凝集度が20〜50%である構成としたので、像担持体と記録媒体間のエアーギャップがあってもトナーのランダム移動を高精度に抑制でき、転写チリを低減できる。
【0083】
請求項13記載の発明によれば、請求項1乃至12のうちの何れか1つに記載の画像形成装置において、上記トナーの体積固有抵抗が1×10Ωcm以上の絶縁性トナーである構成としたので、トナー凝集度を高めたことによる転写率低下を抑制でき、転写チリを低減できる。
【0084】
請求項14記載の発明によれば、請求項1乃至13のうちの何れか1つに記載の画像形成装置において、上記像担持体の表面の摩擦係数が0.7以下である構成としたので、トナー凝集度の高いトナーを使用してもトナーと感光体の離型性を向上させることができ、転写効率を高めることができる。
【0085】
請求項15記載の発明によれば、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する転写方法において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、該加圧力に対応して予めトナーの硬度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することとしたので、十分な加圧力を与えることで、転写紙と感光体の接触点を多くして転写効率を上げることができるとともに、結果的に転写電界を小さくできて転写紙電荷を小さくでき、分離時に剥離放電しない程度に減少させることができる。これにより画像劣化のない高品位の画質を得ることができる。
更に、最適なトナー硬度の設定により、高い圧力を用いたことによるトナーの変形を抑制することができ、転写時のチリ、滲み等の画像劣化を抑制できる。
【0086】
請求項16記載の発明によれば、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する転写方法において、上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、予めトナーの凝集度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することとしたので、像担持体と記録媒体間のエアーギャップがあってもトナーのランダム移動を抑制でき、転写チリを低減できる。
【0087】
請求項17記載の発明によれば、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に且つ圧力を加えて転写する画像形成装置に用いられるトナーにおいて、硬度が7〜12であることとしたので、硬度の最適化によりトナーの変形による画像劣化を来たすことなく転写時のチリ、滲み等の画像劣化を高精度に低減できる。
【0088】
請求項18記載の発明によれば、像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に且つ圧力を加えて転写する画像形成装置に用いられるトナーにおいて、凝集度が20〜50%であることとしたので、像担持体と記録媒体間のエアーギャップがあってもトナーのランダム移動を高精度に抑制でき、転写チリを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における画像形成装置の概要正面図である。
【図2】転写加圧構成を示す要部正面図である。
【図3】転写バイアス印加時の転写紙電位と転写電流の関係を示すグラフである。
【図4】転写時の加圧状態を示す図で、(a)は従来における転写加圧状態を示す模式図、(b)は本発明における転写加圧状態を示す模式図である。
【図5】テストチャートを示す図である。
【図6】転写白抜けランクの見本を示す図である。
【図7】転写チリランクの見本を示す図である。
【図8】転写チリの発生メカニズムを示す模式図である。
【符号の説明】
1 像担持体としての感光体
52 転写手段としての転写ローラ
52a 芯金としての金属ローラ
52b 弾性層
P 記録媒体としての転写紙
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する画像形成装置において、
上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、該加圧力に対応して予めトナーの硬度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、
上記圧力が、1〜10N/cmであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
上記トナーの硬度が7〜12であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
上記転写手段の体積抵抗が、上記記録媒体の体積抵抗と同程度から1/100程度であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像形成装置において、
上記転写手段の表面抵抗はその体積抵抗よりも高いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
上記トナー周りの電界は、上記記録媒体がリークする電流以下であって且つ静電転写が可能な電流以上の電流を印加することにより得られることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
上記転写手段が、表面に硬度が60〜80度の弾性層を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像形成装置において、
上記弾性層は、加圧による変形量の10倍以上の厚みを有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の画像形成装置において、
上記転写手段がローラであり、内側に導電性の芯金を有していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1又は2記載の画像形成装置において、
上記トナーの凝集度が20〜50%であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する画像形成装置において、
上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、予めトナーの凝集度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11記載の画像形成装置において、
上記トナーの凝集度が20〜50%であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちの何れか1つに記載の画像形成装置において、
上記トナーの体積固有抵抗が1×10Ωcm以上の絶縁性トナーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちの何れか1つに記載の画像形成装置において、
上記像担持体の表面の摩擦係数が0.7以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する転写方法において、
上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、該加圧力に対応して予めトナーの硬度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することを特徴とする転写方法。
【請求項16】
像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に転写する転写方法において、
上記像担持体と上記転写手段との間に圧力を加え、且つ、予めトナーの凝集度を高めに設定し、トナー周りの電界を維持したまま上記像担持体と上記記録媒体間の電位差を小さくして転写することを特徴とする転写方法。
【請求項17】
像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に且つ圧力を加えて転写する画像形成装置に用いられるトナーにおいて、
硬度が7〜12であることを特徴とするトナー。
【請求項18】
像担持体上のトナー像を転写手段により記録媒体上に静電的に且つ圧力を加えて転写する画像形成装置に用いられるトナーにおいて、
凝集度が20〜50%であることを特徴とするトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2004−93908(P2004−93908A)
【公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−254965(P2002−254965)
【出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】