説明

画像形成装置及びプログラム

【課題】水平打ち方式の装置でインターレース印字を行うとき、着弾滴に重力が作用して下側の滲みが上側よりも広がり、画像品質が低下する。
【解決手段】往路でドットDfを形成し、復路で往路のドットDf、Df間にドットDbを形成するとき、往路で吐出する液滴If、Ifの滴量に対して、当該液滴If,IfによるドットDf、Df間に打ち込む、復路で吐出させる液滴Ibの滴量を少なくすることで、復路のドットDbへの重力の影響を低減して重力方向への滲みが少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びプログラムに関し、特に液滴を水平方向又は水平方向に対して傾斜する方向に吐出させて画像を形成する画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
ところで、液体吐出方式の画像形成装置として、被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送し、被記録媒体に対して水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッドを往復移動させながら、記録ヘッドから液滴を吐出させて被記録媒体に画像を形成させる構成のものが一般的であった(特許文献1ないし3など)。
【0005】
なお、近時は、被記録媒体を水平方向に搬送しながら、記録ヘッドから鉛直方向に沿う方向下方に向けて液滴を吐出して画像を形成する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−338175号公報
【特許文献2】特開平06−071897号公報
【特許文献3】特開平11−204288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したように被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送し、被記録媒体に対して水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する方式(以下、これを「水平打ち方式」という。)を採用し、いわゆるインターレース方式で画像を形成すると、被記録媒体に着弾した液滴の滲みが重力の影響を受けて重力方向に大きくなり、画像品質が劣化するという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、水平打ち方式における画像品質の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向して被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送する手段と、
前記記録ヘッドを往復移動させながら、前記記録ヘッドから液滴を吐出させて前記被記録媒体に画像を形成させる制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、
前記記録ヘッドの第1の走査で吐出させた媒体搬送方向の少なくとも2つの液滴の間に、前記記録ヘッドの第2の走査で液滴を吐出させるとき、前記第2の走査で吐出させる液滴の滴量を前記第1の走査で吐出させた液滴の滴量よりも少なくする制御を行う
構成とした。
【0010】
ここで、前記被記録媒体の送り量を前記第2の走査で吐出させる液滴の着弾位置に応じて補正する構成とできる。
【0011】
また、前記被記録媒体の送り量を前記画像の種類に応じて補正する構成とできる。
【0012】
また、前記第2の走査で吐出させる液滴の滴数を前記第1の走査で吐出させた液滴の滴数よりも多くする構成とできる。
【0013】
本発明に係るプログラムは、
被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送しながら、前記被記録媒体に対して記録ヘッドから水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出させて前記被記録媒体に画像を形成させる処理をコンピュータに行わせるプログラムであって、
前記記録ヘッドの第1の走査で吐出させた媒体搬送方向の少なくとも2つの液滴の間に、前記記録ヘッドの第2の走査で液滴を吐出させるとき、前記第2の走査で吐出させる液滴の滴量を前記第1の走査で吐出させた液滴の滴量よりも少なくする処理をコンピュータに行わせる
構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置及びプログラムによれば、被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送し、被記録媒体に対して記録ヘッドから水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出させて被記録媒体に画像を形成するときに、記録ヘッドの第1の走査で吐出させた媒体搬送方向の少なくとも2つの液滴の間に、記録ヘッドの第2の走査で液滴を吐出させるとき、第2の走査で吐出させる液滴の滴量を第1の走査で吐出させた液滴の滴量よりも少なくする構成としたので、水平打ち方式における画像品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部の側面説明図である。
【図2】同じく搬送路開放状態の側面説明図である。
【図3】同じく立面説明図である。
【図4】同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図5】水平打ち方式と垂直打ち方式のドットの滲みの説明に供する説明図である。
【図6】インターレース方式印字の説明に供する説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態の説明に供する説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態の説明に供する説明図である。
【図9】同じく復路ドットの着弾位置補正の説明に供する説明図である。
【図10】本発明の第3実施形態の説明に供する説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の側面説明図、図2は同じく搬送路開放状態の側面説明図、図3は同じく立面説明図である。
【0017】
この画像形成装置は、シリアル型画像形成装置であり、装置本体の内部に画像形成部2、搬送機構部5等を有し、装置本体の下方側に被記録媒体である用紙10を積載可能な給紙トレイ4を備え、この給紙トレイ4から給紙される用紙10を取り込み、搬送機構5によって用紙10を垂直方向(鉛直方向に沿う方向)に間歇的に搬送しながら、画像形成部2によって水平方向に液滴を吐出させて所要の画像を記録した後、排紙部6を通じて画像が形成された用紙10を更に上方向に搬送して、装置本体の上方側に設けられた排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0018】
また、両面印刷を行うときには、一面(表面)印刷終了後、排紙トレイ7に一部が排出された用紙10を反転部8内に取り込み反転し、搬送機構部5によって用紙10を逆方向に搬送しながら他面(裏面)を印刷可能面として再度搬送機構5に送り込み、他面(裏面)印刷終了後排紙トレイ7に用紙10を排紙する。
【0019】
ここで、画像形成部2は、左右の側板11L、11R間に横架した主ガイド部材21及び従ガイド部材22で、記録ヘッド24を搭載したキャリッジ23を摺動自在に保持し、主走査モータ25によって、駆動プーリ26と従動プーリ27間に渡したタイミングベルト28を介して主走査方向に移動走査する。
【0020】
キャリッジ23には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド24a、24b(区別しないときは上記のとおり「記録ヘッド24」という。)を、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、滴吐出方向を水平方向に向けて装着している。
【0021】
記録ヘッド24は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド24aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド24bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド24としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
【0022】
なお、記録ヘッド24を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、キャリッジ23には、インクと反応することでインクの定着性を高める定着液を吐出する液体吐出ヘッドなども搭載できる。
【0023】
また、キャリッジ23には、図示しないが、記録ヘッド24のノズル列に対応して各色のインクを供給するための図示しないヘッドタンクが搭載され、このヘッドタンクには、装置本体に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)からインクが供給される。
【0024】
また、キャリッジ23の主走査方向に沿って両側板21L、21R間に、所定のパターンを形成したエンコーダスケール121を張装し、キャリッジ23にはエンコーダスケール121のパターンを読取る透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ122を設け、これらのエンコーダスケール121とエンコーダセンサ122によってキャリッジ23の移動を検知するリニアエンコーダ(主走査エンコーダ)123を構成している。
【0025】
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構9を配置している。この維持回復機構9には、記録ヘッド24の各ノズル面をキャピングするための各キャップ92a、92b(区別しないときは「キャップ92」という。)と、ノズル面を矢示方向に移動してワイピングするワイパ部材(ワイパブレード)93と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け94などを備えている。
【0026】
給紙トレイ4の用紙10は、用紙積載部(圧板)41上に積載され、給紙コロ(半月コロ)43と図示しない分離パッドによって1枚ずつ分離されて装置本体内に給紙され、搬送ガイド部材45、46、押さえ部材47のガイド面に沿って、搬送機構部5の搬送ベルト51と押さえローラ48との間に送り込まれ、先端加圧コロ47にて搬送ベルト51に押し付けられながら搬送される。
【0027】
搬送機構部5は、駆動ローラである搬送ローラ52と従動ローラ53との間に掛け渡した無端状の搬送ベルト51と、この搬送ベルト51を帯電させるための帯電ローラ54と、画像形成部2に対向する部分で搬送ベルト51の平面性を維持するプラテン部材55と、搬送ローラ56と、従動ローラ53及び搬送ローラ56に対向する拍車58を有する拍車ユニット57などを有している。
【0028】
搬送ベルト51は、副走査モータ151によってタイミングベルト152及びタイミングプーリ153を介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって、ベルト搬送方向(副走査方向、用紙搬送方向)に周回移動する。
【0029】
また、搬送ローラ52の軸52aには高分解能のコードホイール154を取り付け、このコードホイール154に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ155を設けて、これらのコードホイール154とエンコーダセンサ155によって搬送ベルト51の移動量及び移動位置を検出するロータリエンコーダ(副走査エンコーダ)156を構成している。
【0030】
排紙部6は、搬送ガイド部材61と、排紙ローラ62A及び拍車62Bと、排紙ローラ63A及び拍車63Bとが配置され、画像が形成された用紙10を排紙ローラ63A及び拍車63B間から排紙トレイ7上にフェイスダウンで排紙する。
【0031】
また、反転部8は、排紙トレイ7に一部を排出した用紙10を反転するための連続する反転経路81a〜81cを有し、用紙10を反転経路81aに送り込むために搬送経路を切り替える切替爪83などを有している。反転経路81aは搬送ガイド部材61とガイド部材83aで形成され、反転経路81bは搬送ベルト51とガイド部材84で形成され、反転経路81cは搬送ガイド部材45、46で形成されている。また、反転経路81aには搬送ローラ85及び所要数の拍車88が、反転経路81bには従動ローラ53及び搬送ローラ52に対向して搬送補助ローラ86、87がそれぞれ設けられている。
【0032】
ここで、図2にも示すように、装置本体の前面側には前カバー101が下端部の支軸102を支点として開閉可能に設けられ、前カバー101にはガイド部材83、84、搬送ローラ85、搬送補助ローラ86、87が取付けられている。また、搬送ベルト51、搬送ローラ52、従動ローラ53、搬送ローラ56は搬送ベルトユニット50として一体化され、搬送ローラ52の軸52aを支点として開閉可能(揺動可能)に設けられている。さらに、搬送ガイド部材61も切替爪82側を支点として開閉可能(揺動可能)に設けられている。
【0033】
これにより、前カバー101を開放することで、反転経路81a〜81cを開くことができ、両面印刷時のジャム処理を容易に行なうことができる。更に、前カバー101を開放することで、搬送ベルトユニット50を開いて記録ヘッド24と搬送ベルト51との間を離間させ、また、搬送ガイド部材61を開いて排紙経路60を開くことができるので、ジャム処理が容易になる。
【0034】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ4から用紙10が1枚ずつ分離給紙され、帯電された搬送ベルト51に用紙10が静電吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙10が垂直方向に搬送される。そこで、キャリッジ23を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド24を駆動することにより、停止している用紙10にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙10を所定量搬送後、次の行の記録を行い、記録が終了した用紙10を排紙トレイ7に排紙する。
【0035】
そして、記録ヘッド24のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ23をホーム位置である維持回復機構9に対向する位置に移動して、キャップ92によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0036】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501に本発明に係る制御(処理)を実行させるプログラムを含む各種プログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505などを備えている。
【0037】
また、記録ヘッド24を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ23側に設けた記録ヘッド24を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ23を移動走査する主走査モータ25、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ151を駆動するためのモータ駆動部510、511と、帯電ローラ54にACバイアスを供給するACバイアス供給部512などを備えている。
【0038】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0039】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0040】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0041】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0042】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド24の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド24の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド24を駆動する。このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など滴量の異なる液滴を吐出させて大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0043】
I/O部513は、主走査エンコーダ123、副走査エンコーダ156、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、511、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0044】
また、CPU501は、主走査エンコーダ123を構成するエンコーダセンサ122からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ25に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ25を駆動する。同様に、副走査エンコーダ156を構成するエンコーダセンサ155からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ151対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部211を介して副走査モータ151を駆動する。
【0045】
次に、上記画像形成装置のような水平打ちと、用紙を水平方向に搬送しながら液滴を垂直方向に吐出して画像を形成する方式(この方式を「垂直打ち方式」という。)との着弾滴の滲みについて図5ないし図7を参照して説明する。
まず、垂直打ち方式の場合、図5(b)に示すように、印刷面が水平であることから、用紙(媒体)10上に液滴If、Ib(区別しないときは「液滴I」という。)が着弾したとき、液滴Iを中心にほぼ均等に滲み部分Iaが生じる。これに対し、水平打ち方式の場合、図5(a)に示すように、印刷面が垂直であることから、用紙(媒体)10上に液滴Iが着弾したとき、液滴Iに対して重力が作用するために、重力方向に滲み部分Iaが広がる。この着弾後の液滴Iの滲みによるドットの拡大の程度は、液滴の質量、液滴の速度、環境温度、環境湿度、形成する画像などによって変動する。
【0046】
ここで、例えば1/2インターレース方式で画像を形成する場合、図6に示すように、往路(ヘッドの第1の走査)で画像のドットの半分を用紙に形成する。次に、復路(ヘッドの第2の走査)で残りの半分のドットを、往路で形成したドットの中間に形成する。これによって、ドットの間隔をヘッドのノズル間隔よりも短い距離に狭めることができ、高解像度の画像を形成することができる。
【0047】
このようなインターレース方式による画像形成を水平打ち方式の画像形成装置で行った場合、上述した図5(a)に示すように、往路のドットDf(着弾した液滴Ifとその滲み部分Iaで形成される。)の上に、復路のドットDb(着弾した液滴Ibとその滲み部分Iaで形成される。)が大きく被さることになる。その結果、画像品質に対して色調の変化や解像度の低下などの悪影響を及ぼして、画像品質が低下する。
【0048】
そこで、本発明の第1実施形態について図7の説明図を参照して説明する。
本実施形態では、往路で吐出する液滴If、Ifの滴量に対して、当該液滴If,If間に打ち込む、復路で吐出させる液滴Ibの滴量を少なくしている。滴量を少なくすることにより、重力の影響が少なくなるため、滴量が多いときよりも、液滴着弾後の重力方向への滲みが少なくなる。この結果、復路で形成するドットDbが往路で形成したドットDfに対して及ぼす影響が少なくなる。
【0049】
このような制御(処理)を行うには、例えば、復路で吐出させる液滴の滴量又は往路で吐出させる液滴の滴量に対する復路で吐出させる滴量の補正量(これらを「滴量情報」という。)をNVRAM504などに格納保持しておき、復路での印刷を開始する前に、NVRAM504から滴量情報を読み出して、往路での吐出滴の滴量に対して復路での吐出滴の滴量を少ない滴量に制御して、画像形成を行う。例えば、往路で吐出する滴の滴サイズに対して復路で吐出滴の滴サイズを1段階小さな滴サイズとする制御(処理)を行う。
【0050】
なお、復路のドットを形成する液滴の滴量を少なくすると、復路で形成する画像は通常より明るくなってしまうことがある。ただし、もともと往路で形成されたドットから、復路で形成されるドットの領域へインクの滲みが発生している。つまり、復路のドットを形成する前から復路の形成領域には色が載っている状態である。そこに、復路で滴量を少なくしたドットの領域に色が追加されるため、滴量を少なくしたドットの領域の明るさは、滴量を少なくしたドット単体の明るさに比べて暗くなる。したがって、予め実験などで求められた、画質の劣化を引き起こさない滴量に復路の滴量を設定することで、明るさの変化による画質劣化を防止することができる。
【0051】
このように、被記録媒体を鉛直方向に沿う方向に向けて搬送しながら被記録媒体に対して記録ヘッドから水平方向に向けて液滴を吐出させて被記録媒体に画像を形成するときに、記録ヘッドの第1の走査で吐出させた媒体搬送方向の少なくとも2つの液滴の間に、記録ヘッドの第2の走査で液滴を吐出させるとき、第2の走査で吐出させる液滴の滴量を第1の走査で吐出させた液滴の滴量よりも少なくする構成とすることで、水平打ち方式における画像品質の向上を図る(画質の低下を抑制する)ことができる。
【0052】
なお、上記実施形態では画像形成装置のプログラムによって本発明に係る制御を行っているが、ホスト側のプリンタドライバなどのプログラムによって印刷データ(画像データ)を生成するときに、予め復路で印刷されるドットについては往路で印刷されるドットよりも小さなドットに補正(変換)する処理を行い、補正後の印刷データを画像形成装置に与えるようにすることもできる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態について図8及び図9の説明図を参照して説明する。
まず、液滴の重力方向への滲みは、重力の影響を受けて上下に非対称になる。そのため、図8(a)に示すように、前記第1実施形態のように滴量調整のみを行った場合、復路のドットDbを見ると、液滴Ibの上側領域(da地点)が、液滴Ibの下側(db地点)に比べて、往路のドットDfからより多くの影響を受けることになり、この現象を原因として、画質の劣化が生じるおそれがある。
【0054】
そこで、本実施形態では、図8(b)に示すように、復路のドットDbを形成する液滴Ibの着弾点を重力方向にずらしている。これにより、往路のドットDfの上からの影響、下からの影響を平均化することができ、画質の劣化を低減することができる。
【0055】
ここで、復路のドットDbを形成する液滴Ibの着弾位置について説明すると、図9に示すように、復路のドットDbを形成する液滴Ibの着弾位置は、2点の往路のドットDfの滲みも含めた境界線の中間位置とする(2つのドットからの影響を平均化するため)。往路のドットDfの液滴Ifの半径をa、下方向への滲み量の係数をk、上方向への滲み量の係数をl、ドット間距離をDとすると、求める距離d(往路ドット印字後、復路ドット印字前の用紙送り量)は、次の(1)式で表される。
【0056】
d= (D+a(k+l))/2・・・(1)
【0057】
なお、計数k、lは、液滴の質量、滴速度、紙質、温度、湿度、印刷画像などの環境に依存して変動する係数である。
【0058】
このような着弾位置補正制御を行うには、あらかじめ実験などで得られたa、k、lの値をNVRAM504などに格納しておき、往路の印字が終わり、用紙送りをするときに、NVRAM504に格納されているa、k、lの値を読み出して、この値と既に設定されているドット間距離Dの値から、上記の(1)式を使用して送り量dの値を算出する。そして、算出された送り量dの距離だけ、用紙10を記録ヘッド24に対して相対的に移動(微小区間送り)を行った後、復路印字を行うようにする。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態について図10の説明図を参照して説明する。
本実施形態では、画像の種類に応じて、適用する制御を異ならせている。つまり、液滴の重力の影響による滲み量は、印刷する対象により変化する。典型的な例として文字と写真などの文字以外の画像について説明する。文字はインクの使用量が少なく、ドット同士の間隔も疎であるのに対して、写真、グラフィックなどはインクの使用量が多く、ほとんどの場合、領域全体にドットの間隔が密になる。また、写真やグラフィックなどを形成するような場合、インクミストが多く飛散したり、液滴同士が結合したりする影響から、重力による滲み量の増大が考えられる。そこで、印刷画像が文字であるか文字以外であるかによって、適用する制御を切り替えることによって、文書全体の画質を高めることができる。
【0060】
例えば、例として、文字に対しては通常通りの印刷を行い、文字以外の画像に対しては液滴の着弾位置を補正することで、着弾後の液滴の滲みによる画像品質への影響を軽減する。
【0061】
この場合、キャリッジ23の1スキャン(1走査)内の印刷対象が文字のみの場合、もしくは文字以外の画像のみの場合は、1スキャンで印刷可能であるが、1スキャン内に文字と文字以外の画像が混在する場合は、スキャンを数回行うことが必要となる。すなわち、インターレース処理で、第2実施形態のように復路の着弾位置補正を行う場合、画像の種類に応じて用紙送り量を変更する必要がある。
【0062】
この点について、図10に示すように、文字の領域Aと文字以外の画像の領域Bが1スキャン内に混在する場合を例にして説明する。
まず、往路で文字、文字以外の画像の両方のドットを形成する(図中の丸付き数字1)。次に、通常のドット間距離dだけ用紙を送り(図中の丸付き数字2)、文字領域の復路分ドットを形成する(図中の丸付き数字3)。そして、文字以外の画像の領域については、復路では印字を行わずキャリッジ23の移動のみを行い(図中の丸付き数字4)、復路が終わった時点でドット間距離差分(d1−d)だけ用紙送りを行う(図中の丸付き数字5)。そして、往路で、復路で形成するはずだった文字以外の画像領域のドットを形成する(図中の丸付き数字6)。
【0063】
なお、印刷データのうち、文字データ(もしくは文字以外の画像データ)を示す情報は、画像形成装置に接続されているホスト600側のOSの機能により印刷データに含まれた形で画像形成装置に渡される。この情報を元に、上述したように、画像の種類によって制御を切り替えるようにすればよい。
【0064】
次に、本発明の第4実施形態について図11の説明図を参照して説明する。
本実施形態では、復路の液滴の滴量を少なくするとともに、滴数を増加して、全体的な滴量を確保している。つまり、前記各実施形態で説明したように、復路の液滴の滴量を少なくした場合、ドットの滲みによって滴量不足はある程度は緩和されるが、図11(a)に示すように、通常印刷の小滴の液滴ではカバーできない領域cが生じ、画質が低下するおそれがある。
【0065】
そこで、図11(b)に示すように、往路に対して復路では液滴(ドット)数を多く打つことで、領域cにもドットを形成するようにしている。なお、復路のドットの増加数は、往路のドットの周期を「1」とすると、復路のドットの周期は「2」以上とする。
【0066】
なお、上述した復路の滴量調整(減少、補正)処理は、ROMなどに格納されたプログラムによってコンピュータに行なわせることができ、このプログラムは、記憶媒体に記憶して提供することができ、或はインターネットなどのネットワークを通じてダウンロードすることで提供される。また、上記実施形態で説明した画像形成装置とホスト側(情報処理装置)とを組みあせて画像形成システムを構成することもできる。
【0067】
また、上記実施形態では、用紙を鉛直方向に沿う方向(垂直方向)に搬送し、液滴を水平方向に吐出する例で説明しているが、用紙を鉛直方向に沿う方向(垂直方向)に対して傾斜した方向に搬送し、液滴を水平方向或いは水平方向に対して傾斜した方向に吐出する構成であっても、着弾した液滴の滲みが重力方向の上下で異なることから、本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
2 給紙トレイ
10 用紙(被記録媒体)
23 キャリッジ
24 記録ヘッド
51 搬送ベルト
500 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに対向して被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送する手段と、
前記記録ヘッドを往復移動させながら、前記記録ヘッドから液滴を吐出させて前記被記録媒体に画像を形成させる制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、
前記記録ヘッドの第1の走査で吐出させた媒体搬送方向の少なくとも2つの液滴の間に、前記記録ヘッドの第2の走査で液滴を吐出させるとき、前記第2の走査で吐出させる液滴の滴量を前記第1の走査で吐出させた液滴の滴量よりも少なくする制御を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記被記録媒体の送り量を前記第2の走査で吐出させる液滴の着弾位置に応じて補正することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記被記録媒体の送り量を前記画像の種類に応じて補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の走査で吐出させる液滴の滴数を前記第1の走査で吐出させた液滴の滴数よりも多くすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
被記録媒体を鉛直方向に沿う方向又は鉛直方向に沿う方向に対して傾斜した方向に向けて搬送しながら、前記被記録媒体に対して記録ヘッドから水平方向又は水平方向に対して傾斜した方向に向けて液滴を吐出させて前記被記録媒体に画像を形成させる処理をコンピュータに行わせるプログラムであって、
前記記録ヘッドの第1の走査で吐出させた媒体搬送方向の少なくとも2つの液滴の間に、前記記録ヘッドの第2の走査で液滴を吐出させるとき、前記第2の走査で吐出させる液滴の滴量を前記第1の走査で吐出させた液滴の滴量よりも少なくする処理をコンピュータに行わせる
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−45803(P2012−45803A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189266(P2010−189266)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】