説明

画像形成装置及び処理液塗布装置

【課題】ローラ端部から液ダレを生じて装置内部が汚れる。
【解決手段】被記録媒体に処理液201を塗布する塗布ローラ232と、塗布ローラ232上の液膜を薄くするスクイーズローラ233とを有し、被記録媒体に処理液201を塗布した後には、スクイーズローラ233と塗布ローラ232との間に保持された処理液201が所定量以下になるまでの間、スクイーズローラ233を塗布動作時と同じ方向に回転させる制御を行い、塗布ローラ232とスクイーズローラ233の端部からローラを伝って流れ落ちる処理液を処理液トレイ234に回収し続ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及び処理液塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれる。また、「画像形成装置」には液体吐出方式のものに限らず、電子写真方式で画像形成を行なうものなども含まれるが、以下では液体吐出方式の画像形成装置で説明する。
【0004】
このような液体吐出方式の画像形成装置においては、色材を含むインクを液滴化して画像形成を行うために、液滴で形成されるドットがひげ状に乱れるフェザリング、異なる色のインク滴が隣接して用紙に打たれた場合に、各色が相互に混ざり合って色境界が不鮮明になるカラーブリード等の不具合が生じることがあり、更に印字後の紙上の液滴が乾くまでに時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、従来から特許文献1に記載されているようにインクと反応して滲み防止を促す前処理液を塗布ローラで塗布したり、特許文献2に記載されているように前処理液を液体吐出ヘッドからミスト状に吐出させて塗布したりすることが行われる(その他、特許文献3も参照)。また、処理液を泡にして塗布する装置も知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−137378号公報
【特許文献2】特開2005−138502号公報
【特許文献3】特開2003−205673号公報
【特許文献4】特開2009−012394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、処理液をローラで被記録媒体に塗布するようにした場合、塗布状態から非塗布状態に移行したときに、ローラの両端部から処理液が溢れて装置内部への液だれが生じるという課題がある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、処理液を塗布しないときの装置内部への液だれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布装置と、を備え、
前記塗布装置は、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記被記録媒体に前記処理液を塗布した後には、前記スクイーズローラと前記塗布ローラとの間に保持された前記処理液が所定量以下になるまでの間、前記スクイーズローラを塗布動作時と同じ方向に回転させる制御を行う手段と、を有している
構成とした。
【0010】
ここで、前記スクイーズローラに供給され、前記スクイーズローラから回収される処理液を貯留する処理液トレイを有する構成とできる。
【0011】
また、前記処理液トレイは、前記塗布ローラの前記搬送ローラと対向しない端部領域において、前記塗布ローラと前記スクイーズローラの下方を常に覆う位置に配されている構成とできる。
【0012】
また、前記被記録媒体に前記処理液を塗布した後、前記処理液トレイから前記スクイーズローラへの前記処理液の供給を停止し、前記スクイーズローラを回転させる制御を行う構成とできる。
【0013】
また、前記処理液を塗布するときには、前記塗布ローラと前記スクイーズローラとの間に前記処理液を保持する谷部分が上方向になる位置で塗布を行ない、
前記処理液を塗布した後には、前記塗布ローラと前記スクイーズローラとの少なくとも一方は、前記処理液を保持する谷部分が横方向になる位置になるように移動して前記処理液を前記処理液トレイに回収し、前記谷部分に保持された前記処理液を所定量以下とする構成とできる。
【0014】
この場合、前記処理液を巻き込む谷部分が横方向になる位置になるように移動させるとき、前記スクイーズローラを中心にして前記塗布ローラを移動させる構成とできる。
【0015】
本発明に係る処理液塗布装置は、
被記録媒体に処理液を塗布する処理液塗布装置であって、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記被記録媒体に前記処理液を塗布した後には、前記スクイーズローラと前記塗布ローラとの間に保持された前記処理液が所定量以下になるまでの間、前記スクイーズローラを塗布動作時と同じ方向に回転させる制御を行う手段と、を有している
構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置によれば、被記録媒体に前記処理液を塗布した後には、スクイーズローラと塗布ローラとの間に保持された処理液が所定量以下になるまでの間、スクイーズローラを塗布動作時と同じ方向に回転させる構成としたので、非塗布状態に移行するときに処理液を回収し、処理液を塗布しないときの装置内部への液だれを防止することができる。
【0017】
本発明に係る処理液塗布装置によれば、被記録媒体に前記処理液を塗布した後には、スクイーズローラと塗布ローラとの間に保持された処理液が所定量以下になるまでの間、スクイーズローラを塗布動作時と同じ方向に回転させる構成としたので、非塗布状態に移行するときに処理液を回収し、処理液を塗布しないときの装置内部への液だれを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の一例を示す全体構成図である。
【図2】同実施形態における塗布装置の塗布部の詳細な説明に供する塗布動作時の模式的側面説明図である。
【図3】同じく塗布動作時の側断面説明図である。
【図4】同じく塗布動作時の状態を処理液トレイを透過状態で表して示す斜視説明図である。
【図5】同じく待機時の側断面説明図である。
【図6】同じく待機時の斜視説明図である。
【図7】同画像形成装置の制御部の概要の説明に供するブロック説明図である。
【図8】同塗布装置の動作説明に供するフロー図である。
【図9】図7に続く説明に供するフロー図である。
【図10】本発明の第2実施形態における塗布装置の動作説明に供するフロー図である。
【図11】比較例1の塗布部の模式的側面説明図である。
【図12】同比較例1の塗布部のローラ部分の斜視説明図である。
【図13】同じくローラ部分の平面説明図である。
【図14】比較例2の塗布部の模式的側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成図である。
この画像形成装置は、被記録媒体である用紙100に液滴を吐出して画像を形成する画像形成手段としての記録ヘッドユニット101と、用紙100を搬送する搬送ベルト102と、用紙100を収容する給紙トレイ103と、記録ヘッドユニット101よりも用紙搬送方向上流側で被塗布部材である用紙100に処理液を塗布する本発明に係る処理液塗布装置200とを備えている。
【0020】
記録ヘッドユニット101は、液滴を吐出する複数のノズルを用紙幅相当分の長さに配列したノズル列を有するライン型液体吐出ヘッドから構成され、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を記録ヘッド101y、101m、101c、101kを備えている。なお、シリアル型画像形成装置として記録ヘッドをキャリッジに搭載する構成とすることもできる。
【0021】
搬送ベルト102は、無端状ベルトであり、搬送ローラ121とテンションローラ122との間に掛け渡されて周回するように構成している。この搬送ベルト102に対する用紙100の保持は、例えば静電吸着、空気の吸引による吸着などを行う構成とすることやその他の公知の搬送手段を用いることができる。また、ローラ対による搬送手段を用いることもできる。
【0022】
給紙トレイ103に収容された用紙100はピックアップローラ131で1枚ずつ分離給紙されて搬送ローラ対132によってレジストローラ対133に送られ、レジストローラ対133から所定のタイミングで搬送ローラ対134によって搬送路135を介して塗布装置200に送られ、塗布装置200で処理液が塗布されて搬送ベルト102上に送り込まれて保持される。
【0023】
そして、搬送ベルト102の周回移動で搬送されてヘッドユニット101から各色の液滴が吐出されて画像が形成され、その後排紙トレイ104に排出される。
【0024】
塗布装置200は、処理液201を収容した容器202と、この容器202から処理液201を圧送するポンプ203と、ポンプ203で供給路204を介して供給された処理液201を被記録媒体である用紙100に塗布する塗布部208とを備えている。
【0025】
ここで、処理液201は、用紙100の表面に塗布することで用紙100の表面を改質する改質材である。例えば、処理液201は、予め用紙100(前述したように材質としての紙に限定されない。)にムラなく塗布しておくことで、インクの水分を速やかに用紙100に浸透させると共に色成分を増粘させ、更には乾燥も早めることによって滲み(フェザリング、ブリーディング等)や裏抜けを防止し、生産性(単位時間当たりの画像出力枚数)をあげることを可能にする定着剤(セット剤)である。
【0026】
この処理液201は、組成的には、例えば界面活性剤(アニオン系、カチオン系、ノニオン系のいずれか、若しくはこれらを2種類以上混合させたもの)に対して、水分の浸透を促進するセルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース等)とタルク微粉体の様な基剤を加えた溶液等を挙げることができる。更に微粒子を含有することもできる。
【0027】
次に、本発明の第1実施形態における塗布装置の塗布部の詳細について図2ないし図6を参照して説明する。なお、図2は同塗布部の塗布動作時の模式的側面説明図、図3は同じく塗布動作時の側断面説明図、図4は同じく塗布動作時の状態を処理液トレイを透過状態で表して示す斜視説明図、図5は同じく非塗布動作(塗布動作を行わない)時の側断面説明図、図6は同じく非塗布動作時の斜視説明図である。
【0028】
塗布部208は、用紙100を搬送する搬送ローラ235と、搬送ローラ235に対向して用紙100に処理液201を塗布する塗布ローラ232と、塗布ローラ232上の処理液201の液膜を薄くするスクイーズローラ233と、処理液201を供給、回収する処理液トレイ234とを有している。なお、各ローラの回転方向は図2の矢示方向である。
【0029】
これらのローラは、搬送ローラ235に塗布ローラ232が接し、塗布ローラ232にスクイーズローラ233が接して配置されている。また、スクイーズローラ233は処理液トレイ234の処理液201に浸されるように配置されている。
【0030】
そして、この塗布部208においては、塗布ローラ232、スクイーズローラ233及び処理液トレイ234がユニット化(一体化)されてローラユニット236として構成され、ローラユニット236は、図示しない駆動手段(後述するモータ516)によって図示しない駆動伝達機構を介して、図3及び図4に示す状態(塗布状態又は塗布位置という。)と、図5及び図6に示す状態(待機(未塗布)状態又は待機(未塗布)位置という。)との間(図2の矢印A方向)で揺動可能(移動可能)に配設されている。なお、図4の領域Aは処理液トレイ234の開口部に対応して塗布ローラ232と搬送ローラ235が接触する部分を示している。
【0031】
すなわち、処理液201を被記録媒体100に塗布する塗布動作時には、図3及び図4に示す塗布位置に移動されて、スクイーズローラ233と塗布ローラ232は横方向に配置され接触し、処理液201を巻き込むローラ233,232で形成される谷部分は上方向となる。
【0032】
この塗布状態では、スクイーズローラ233を回転することで処理液トレイ234から処理液201が汲み上げられて、スクイーズローラ233と塗布ローラ232で形成される谷部分に処理液201bが溜まり、また、谷部分に溜められた処理液201bは塗布ローラ232とスクイーズローラ233が加圧接触していることで、両ローラ233,232のニップ部(接触部)を通過するときに薄い液膜となり、処理液201が搬送ローラ235と塗布ローラ232との間を通過する被記録媒体上に塗布される。
【0033】
また、処理液201を塗布しないとき(待機時)には、図5及び図6に示す待機位置に移動されて、スクイーズローラ233と塗布ローラ232は上下方向に配置され、処理液201を巻き込むローラ233,232で形成される谷部分は横方向となるので、谷部分に溜まっていた処理液201は自重で処理液トレイ234上に落下して回収される。
【0034】
ここで、処理液トレイ234は、塗布位置及び待機位置のいずれでも、塗布ローラの搬送ローラと対向しない端部領域において、常に塗布ローラ232とスクイーズローラ233の下方側を覆う位置に配される。このような配置とすることで、塗布に寄与しないために液が厚く溜まったローラの端部領域から装置内を汚すことなく速やかに処理液を回収することができる。
【0035】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7を参照して説明する。
主制御部501は、この画像形成装置全体の制御を司るCPU、ROM、RAM、I/O等からなるマイクロコンピュータなどによって構成される。この主制御部501は受領した画像データを処理して印刷制御部502に転送し、印刷制御部502は画像データに応じてヘッドドライバ503を介して記録ヘッド101を駆動制御し、画像データに応じて液滴を吐出させる。また、主制御部501は、モータ駆動部504を介して搬送ベルト102を周回移動させる搬送モータ505を駆動制御して、被記録媒体100を搬送させる。
【0036】
塗布制御部510は、本発明における制御する手段を兼ね、塗布装置200の各部の制御を司る。この塗布制御部510は、主制御部501からの塗布要求を受けて処理液塗布動作を制御するため、ポンプ駆動部511を介してポンプ203を駆動し、ローラ駆動部512を介して塗布ローラ232、スクイーズローラ233を回転させるモータ513を駆動制御し、ユニット駆動部515を介してローラユニット236を揺動(回動)させるモータ516を駆動制御する。
【0037】
このように構成した実施形態における塗布装置の動作について図8及び図9のフロー図を参照して説明する。
まず、図8を参照して、画像出力(塗布)要求を受信すると、塗布装置200の塗布部208が待機(未塗布)状態か否かを判別し、待機状態であるときには、ローラユニット236を回動させてローラ232、233の位置を塗布状態に移動させる。
【0038】
そして、処理液トレイ234(図では「液トレイ」と表記する。以下同じ。)に所定量の処理液201があるか否かを判別し、所定量の処理液201がないときにはポンプ203を駆動して容器202(図では「タンク」と表記する。以下同じ。)から処理液201を所定量になるまで処理液タンク234に供給(補充)する。
【0039】
その後、塗布装置200を稼動して、塗布部208のスクイーズローラ233と塗布ローラ232を回転させ、被記録媒体への塗布を実行する。塗布要求枚数が複数あり、要求枚数の出力が完了していない時は、再度処理液トレイ234に所定量の処理液201があるか否かを判別し、所定量の処理液201がないときにはポンプ203を駆動して容器202から処理液201を所定量になるまで処理液タンク234に供給(補充)して、所定量に維持する。
【0040】
そして、図9に示すように、要求枚数の出力が完了したときには、塗布装置200は一次待機状態になる。この一次待機状態では、少なくともスクイーズローラ233は塗布時と同じ方向に回転させた状態とする。
【0041】
これにより、塗布ローラ232とスクイーズローラ233の端部からローラを伝って流れ落ちる処理液を処理液トレイ234に回収し続ける。すなわち、この状態でスクイーズローラ233の回転を停止してしまうと、ローラを伝って流れ落ちる処理液は処理液トレイ234へと回収されず、塗布ローラ232側に回りこみ、塗布ローラ232表面に処理液201が厚く付着した領域が形成されてしまう。しかし、このようにスクイーズローラ233を回転し続けることにより、ローラ端部に達した処理液はスクイーズローラ233に付着して速やかに処理液トレイ234内に回収され、処理液トレイ234内の処理液201と一緒にされるため、塗布ローラ232側に回り込むことを防止できる。
【0042】
なお、この動作時にはスクイーズローラ233の回転により、処理液は処理液トレイ234からローラ233,232で形成される谷部分に継続して供給されるため、処理液201bが枯渇することはなく、常に次の画像出力要求に対応できる状態に維持できる。
【0043】
その後、所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けたときには上記の処理を繰り返し、所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けないときには、ローラユニット236を回動させてローラ232、233の位置を待機状態に移動させる。このようにすることで、ローラ233,232で形成される谷部分の処理液201bは処理液トレイ234に流れ落ち、塗布ローラ232はスクイーズローラ233よりも上方に配置されるため、端部から流れ落ちる処理液201が付着することもない。
【0044】
このローラ232、233を待機状態に移動させるとき、スクイーズローラ233を回転させたまま、スクイーズローラ233を回転中心として、塗布ローラ232がスクイーズローラ233の上方に位置するまで移動(回動)させる。前述の通り、待機状態の位置であれば、谷部分の処理液201bは処理液トレイ234に流れ落ち、塗布ローラ232への処理液は付着しないことから、待機状態に移動が完了した後はスクイーズローラ233の回転を停止してもかまわない。
【0045】
さらに、所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けたときには、再度ローラ232、233の位置を塗布状態に移動させて、上記の処理を繰り返す。
【0046】
また、待機状態への移動後所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けないときには、処理液トレイ234内の処理液201を容器202に回収する。
【0047】
このように、被記録媒体に処理液を塗布した後、スクイーズローラと塗布ローラとの間に保持された処理液が所定量以下になるまでの間、スクイーズローラを塗布時と同じ方向に回転させる構成とすることで、非塗布状態に移行するときに処理液を回収し、処理液を塗布しないときの装置内部への液だれを防止することができる。
【0048】
また、処理液を塗布するときには、塗布ローラとスクイーズローラが接触し、処理液を巻き込む谷部分が上方向になる位置で塗布を行い、処理液を塗布しないときには、塗布ローラとスクイーズローラとの少なくとも一方が処理液を巻き込む谷部分が横方向になる位置になるように移動され、処理液トレイは、塗布ローラの搬送ローラと対向しない端部領域において、塗布ローラとスクイーズローラの下方を常に覆う位置に配される構成とすることで、処理液を塗布しないときの装置内部への液だれを防止し、処理液の有効利用を図れ、またローラの変質を低減することができる。
【0049】
つまり、塗布時には、処理液201は前述したようにスクイーズローラ233の表面に沿ってすくい上げられ、塗布ローラ232との谷部分に溜まる。このとき、塗布に使われなかった処理液は、ローラ表面に沿って移動し、塗布ローラ232側は塗布ローラを一周して谷部分に戻り、スクイーズローラ側は下方の処理液トレイ234中の処理液201に浸漬されて回収されることで処理液として再利用される。
【0050】
また、スクイーズローラ233と塗布ローラ232が横方向に配置され待機状態で塗布動作が停止(異常状態)した場合、塗布に使われず塗布ローラ232側に残った処理液201で処理液トレイ234に戻せない一部は液トレイ250に収容する。
【0051】
このように塗布ローラの下方を覆う位置にまで処理液トレイ(液トレイ250)が形成されることにより、異常時にも画像形成装置を処理液で汚すことがない。なお、この液トレイ250は塗布ローラ232の搬送ローラ100と対向しない端部領域にのみ設けている。ここで、対向領域では液層は薄膜で形成されているため、短時間で液だれが生じることがないのに対し、端部領域では液膜が厚く、短時間の停止で液だれが生じる。したがって、このように対向しない領域にのみ設けたとしても十分な効果を得ることができる。
【0052】
また、待機時には、スクイーズローラ233と塗布ローラ232は縦方向(上下方向)に配置することで、スクイーズローラ233と塗布ローラ232表面、及び谷部分に残る全ての処理液201を処理液トレイ234に回収し、塗布動作再開時に再利用することができる。
【0053】
また、スクイーズローラ233と塗布ローラ232が横方向に配置された状態で塗布動作が停止(異常状態)した後、塗布を再開するときにも、一旦スクイーズローラ233と塗布ローラ232を待機位置(上下方向)に移動させることで、スクイーズローラ233と塗布ローラ232表面、及び谷部分にある全ての処理液201と液トレイ250に収納されている処理液201を処理液トレイ234に回収して、塗布動作再開時に再利用することができる。
【0054】
また、未塗布状態が長時間続く場合、ポンプ203を可逆ポンプで構成し、あるいは、処理液排出経路を別途追加し、処理液トレイ234に回収した処理液201を容器202内に戻すことで、処理液201による各ローラの変質を一層低減することができるとともに、処理液201自体の変質を防止することもできる。
【0055】
ここで、比較例1について図11ないし図13を、比較例2について図14を参照して説明する。
比較例1は、液トレイ534内の処理液201をスクイーズローラ233で汲み上げ、規制ローラ536で液膜層201aの状態にして、スクイーズローラ233で塗布ローラ232に供給するものである。
【0056】
この比較例1の構成では、スクイーズローラ233から移送される処理液201は、スクイーズローラ233と塗布ローラ232との谷部分に処理液201bとして溜まる。この状態で、待機状態になってローラ233,232が停止したとき、谷部分に溜まった処理液201bがローラ両端部から液201dで示すように溢れ、この状態が長く続くと、液ダレ201gとして装置内部に滴下するという不都合が生じる。
【0057】
比較例2は、スクイーズローラ233の上方に塗布ローラ232を配置し、塗布ローラ233の上方に搬送ローラ235を配置して、ローラ233、232が停止したときには、ローラ233、232の処理液を重力で下方の液トレイ234に落下させるようにした構成である。
【0058】
この比較例2の構成では、用紙への処理液の塗布は用紙の下面に行われることになる。しかしながら、インクジェット記録装置などの前処理として処理液を塗布する場合には、処理液の塗布はなるべく印字直前の方が好ましい。これは、処理液とインクとの反応が液体の状態で行うことができるからである。そのため、インクジェット記録装置で処理液を塗布する場合、通常は被記録媒体の上面に対して処理液を塗布することが好ましい。比較例2の構成にあっては、このようなインクジェット記録装置における処理液塗布の要求に応えることができない。
【0059】
そこで、本実施形態においては、塗布動作を行なうときにはローラ233、232を横方向に配置し、待機時にはローラ233、232を上下方向に配置し、処理液トレイ234は常にローラ233の下方に配置される構成とすることで、待機時のローラ端部からの液垂れを防止し、ローラから処理液を回収できるようにしている。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態における塗布装置の制御について図8及び図10のフロー図を参照して説明する。
図8において要求枚数の出力が完了したときには、図10に示すように、塗布装置200は一次待機状態になる。この一次待機状態では、少なくともスクイーズローラ233は塗布時と同じ方向に回転させた状態とする。これにより、塗布ローラ232とスクイーズローラ233の端部からローラを伝って流れ落ちる処理液を処理液トレイ234に回収し続ける。この際、スクイーズローラは処理液トレイ234に処理液を回収すると同時に、ローラ233,232で形成される谷部分に処理液201を供給してしまうため、スクイーズローラ233にブレード等を当接し、前記谷部分に行かないようにすることで、谷部分の処理液201bを減少させることができる。
【0061】
そして、処理液の回収が完了したか否かを判別し、処理液の回収が完了したときにはスクイーズローラ232を停止する。ここで、処理液の回収が完了したか否かは、例えば、回収前の処理液を反射型センサの反射光の量で、あるいは複数本の電極ピン間の通電状態などで検知してもよいし、あらかじめ処理液の回収にかかる所定の時間を計測しておき、所定の時間が経過したときに処理液が回収されたと判別するようにしてもよい。
【0062】
その後、所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けたときには図8に記載の処理を繰り返し、所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けないときには、ローラユニット236を回動させてローラ232、233の位置を待機状態に移動させる。
【0063】
さらに、所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けたときには、再度ローラ232、233の位置を塗布状態に移動させて、図8に記載の処理を繰り返す。
【0064】
また、待機状態への移動後所定時間内に次の画像出力(塗布)要求を受けないときには、処理液トレイ234内の処理液201を容器202に回収する。
【0065】
このように構成すれば、一次待機状態に移行した後スクイーズローラの回転を早期に停止することができる。スクイーズローラ233、塗布ローラ232の磨耗を抑え、装置寿命を延ばすとともに、消費電力の低減も図ることができる。
【0066】
なお、上記実施形態では処理液塗布装置が画像形成前の用紙に対して処理液を塗布する構成で説明しているが、記録ヘッドユニットの下流側で画像形成が行われた用紙上に処理液を塗布する構成とすることもできる。
【0067】
また、本発明に係る画像形成装置は、例えば電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。例えば、紙等の媒体上のトナー等の樹脂を含有する微粒子を乱すことなく、かつ当該樹脂微粒子を付着した媒体に定着液を塗布後は素早く樹脂微粒子の媒体への定着が行われ、更に媒体に残油感が発生しない程度の微量塗布が可能な樹脂微粒子の定着液を用いた、定着方法及び定着装置、並びに画像形成方法及び画像形成装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0068】
100 被記録媒体(用紙)
101 記録ヘッドユニット
102 搬送ベルト
103 給紙トレイ
200 処理液塗布装置
201 処理液
208 塗布部
232 塗布ローラ
233 スクイーズローラ
234 処理液トレイ
235 搬送ローラ
236 ローラユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布装置と、を備え、
前記塗布装置は、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記被記録媒体に前記処理液を塗布した後には、前記スクイーズローラと前記塗布ローラとの間に保持された前記処理液が所定量以下になるまでの間、前記スクイーズローラを塗布動作時と同じ方向に回転させる制御を行う手段と、を有している
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記スクイーズローラに供給され、前記スクイーズローラから回収される処理液を貯留する処理液トレイを有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記処理液トレイは、前記塗布ローラの前記搬送ローラと対向しない端部領域において、前記塗布ローラと前記スクイーズローラの下方を常に覆う位置に配されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記被記録媒体に前記処理液を塗布した後、前記処理液トレイから前記スクイーズローラへの前記処理液の供給を停止し、前記スクイーズローラを回転させる制御を行うことを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記処理液を塗布するときには、前記塗布ローラと前記スクイーズローラとの間に前記処理液を保持する谷部分が上方向になる位置で塗布を行ない、
前記処理液を塗布した後には、前記塗布ローラと前記スクイーズローラとの少なくとも一方は、前記処理液を保持する谷部分が横方向になる位置になるように移動して前記処理液を前記処理液トレイに回収し、前記谷部分に保持された前記処理液を所定量以下とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記処理液を巻き込む谷部分が横方向になる位置になるように移動させるとき、前記スクイーズローラを中心にして前記塗布ローラを移動させることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
被記録媒体に処理液を塗布する処理液塗布装置であって、
前記被記録媒体に処理液を塗布する塗布ローラと、
前記塗布ローラ上の液膜を薄くするスクイーズローラと、
前記被記録媒体に前記処理液を塗布した後には、前記スクイーズローラと前記塗布ローラとの間に保持された前記処理液が所定量以下になるまでの間、前記スクイーズローラを塗布動作時と同じ方向に回転させる制御を行う手段と、を有している
ことを特徴とする処理液塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−255256(P2011−255256A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129481(P2010−129481)
【出願日】平成22年6月5日(2010.6.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】