説明

画像形成装置及び状態監視プログラム

【課題】装置の状態監視プログラムに注意を払うことなくユーザがアプリケーションプログラムを開発、搭載することが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置1は、画像形成処理に係るプログラムを記憶、入力する主記憶部24及び外部記憶部25と、主記憶部24または外部記憶部25に記憶、入力された前記プログラムを使用して画像形成処理を実行しながらユーザアプリ36による主記憶部24、外部記憶部25、CPU22の使用状態、及びユーザアプリ36自体の動作状態を監視してエラーを検出する制御部21と、を備える。これにより、ユーザアプリ36に診断関数等を組み込むことなく、画像形成装置1は状態監視アプリ37によって主記憶部24、外部記憶部25、CPU22、及びユーザアプリ36自体の動作状態を監視してエラーを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やスキャナなどの画像形成処理を実行する際に動作するアプリケーションプログラムの監視を行う画像形成装置に関する。また、この画像形成装置で実行される状態監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ファクシミリといった画像形成装置の一般的な構成は、原稿表面の画像を読み取る画像読取部や、原稿を画像読取部に向けて送り出す原稿搬送装置、印刷前の用紙を積載して収容する給紙カセット、トナー像を形成する画像形成部、トナー像を用紙に転写する転写部、未定着トナー像を用紙に定着させる定着部などからなる。
【0003】
近年、画像形成装置を利用する上での利便性を向上させるため、ユーザを含むメーカ以外の第三者が独自に画像形成装置用のアプリケーションプログラム(以下、単に「プログラム」と称することがある)の開発を望む場合がある。この要望に応えるため、画像形成装置にはコピーやプリンタ、ファクシミリ、スキャナといった基本的な機能に加えて、ユーザを含むメーカ以外の第三者の所望の処理を実行するカスタムアプリケーションプログラムを搭載できるようになっているものがある。
【0004】
これにより、画像形成装置のメーカは画像形成装置に搭載できるアプリケーションプログラムを作成するためのインターフェース仕様を公開することがある。公開された仕様を参照して、ユーザを含むメーカ以外の第三者はカスタム化されたアプリケーションプログラムを開発する。開発されたカスタムアプリケーションプログラムは、例えば画像形成装置内の記憶装置に記憶される。
【0005】
画像形成装置に搭載可能なカスタムアプリケーションプログラムの例としては、スキャナ機能にOCR技術(Optical Character Recognition、光学文字認識技術)を連携させてスキャンした名刺を電子データ化するプログラムがある。これにより、スキャンするだけで名刺の文字データが抽出され、手入力することなく名刺を電子データ化することが可能である。同様のカスタムアプリケーションプログラムの例として、スキャンした紙文書を電子データ化するプログラムがある。このプログラムを用いると、文書の画像データをテキスト付きPDFに変換して、テキストを編集することが可能である。
【0006】
このような基本機能とは別のアプリケーションプログラムを任意に搭載させることが可能な画像形成装置の一例を特許文献1に見ることができる
【0007】
ここで、画像形成装置には自身のハードウェアやプログラムが適正な動作を行っているか否かを監視する機能を設けたものがある。プログラムについてはコピーやファクシミリなどの基本機能のほか、ユーザを含むメーカ以外の第三者が任意に搭載するアプリケーションプログラムの動作も監視する必要がある。このため、特許文献1に記載された画像形成装置ではユーザを含むメーカ以外の第三者が開発、搭載するアプリケーションプログラムに診断関数を組み込むようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−78688号公報(第7頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたプログラムの診断方法ではユーザを含むメーカ以外の第三者がアプリケーションプログラムを開発する際、画像形成装置のメーカ側の要求に応じた診断関数をアプリケーションプログラムに組み込む必要があるので、手間がかかる。そして、診断項目について変更、追加が生じた場合、その都度ユーザを含むメーカ以外の第三者が搭載するアプリケーションプログラムにも修正を加える必要があり、一層手間がかかる上、装置の運用において問題が発生する可能性もある。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、画像形成装置にユーザを含むメーカ以外の第三者がカスタムアプリケーションプログラムを任意に搭載する場合であっても、装置の状態監視プログラムに注意を払うことなくアプリケーションプログラムを開発、搭載することが可能な使い勝手の良い画像形成装置を提供することを目的とする。また、状態監視のための関数などを組み込むことなくユーザを含むメーカ以外の第三者が開発、搭載したカスタムアプリケーションプログラムの動作状態を監視することが可能な状態監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するため、本発明は画像形成装置において、プログラムが入力され、記憶する記憶部と、前記記憶部に入力、記憶された前記プログラムを使用して画像形成に係る処理を実行する制御部と、を備え、前記制御部は、前記プログラムのうちメーカ外で開発されたカスタムプログラムを使用するとき、前記カスタムプログラムによる前記記憶部、前記制御部の使用状態、及び前記カスタムプログラム自体の動作状態を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、画像形成装置は記憶部、制御部の使用状態、及びカスタムプログラムの動作状態を監視してエラーを検出する。
【0012】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の使用状態を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えばハードディスクドライブ(HDD)の記憶容量などを監視してエラーが検出される。
【0013】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の一時的な使用状態を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えばメモリ(例えばRAM)の使用容量などを監視してエラーが検出される。
【0014】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記プログラムを利用して演算処理を行う演算部を備え、前記カスタムプログラムの動作に係る制御部や前記演算部への負荷を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、演算部(例えばCPU)の負荷率などを監視してエラーが検出される。
【0015】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、予め設定され前記記憶部に記憶された動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えば画像形成装置メーカが動作保証していない関数等をカスタムプログラムが使用することなどを監視してエラーが検出される。
【0016】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、予め設定され前記記憶部に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えば一定時間内における使用回数の制限を超えて関数等をカスタムプログラムが使用している場合などを監視してエラーが検出される。
【0017】
また、上記構成の画像形成装置において、前記制御部は、検出した前記エラーの発生を報知することとした。この構成によれば、エラーが検出されると、ユーザや管理者等はそれを把握できる。
【0018】
前記の課題を解決するため、本発明は状態監視プログラムにおいて、プログラムを記憶部に入力し、記憶させる記憶処理と、前記記憶部に入力、記憶された前記プログラムを制御部に実行させる画像形成処理と、前記プログラムのうちメーカ外で開発されたカスタムプログラムを使用するとき、前記カスタムプログラムによる前記記憶部、前記制御部の使用状態、及びカスタムプログラム自体の動作状態を監視してエラーを検出するエラー検出処理と、をコンピュータに実行させることとした。この構成によれば、状態監視プログラムは記憶部、制御部の使用状態、及びカスタムプログラムの動作状態を監視してエラーを検出する。
【0019】
また、上記構成の状態監視プログラムにおいて、前記エラー検出処理は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の使用状態を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えばハードディスクドライブ(HDD)の記憶容量などを監視してエラーが検出される。
【0020】
また、上記構成の状態監視プログラムにおいて、前記エラー検出処理は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の一時的な使用状態を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えばメモリ(例えばRAM)の使用容量などを監視してエラーが検出される。
【0021】
また、上記構成の状態監視プログラムにおいて、前記エラー検出処理は、前記カスタムプログラムの動作に係る制御部や演算部への負荷を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えばCPU負荷率などを監視してエラーが検出される。
【0022】
また、上記構成の状態監視プログラムにおいて、前記エラー検出処理は、予め設定され前記記憶部に記憶された動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えば画像形成装置メーカが動作保証していない関数等をカスタムプログラムが使用することなどを監視してエラーが検出される。
【0023】
また、上記構成の状態監視プログラムにおいて、前記エラー検出処理は、予め設定され前記記憶部に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することとした。この構成によれば、例えば一定時間内における使用回数の制限を超えて関数等をカスタムプログラムが使用している場合などを監視してエラーが検出される。
【0024】
また、上記構成の状態監視プログラムにおいて、前記エラー検出処理で検出した前記エラーの発生を報知する報知処理をコンピュータに実行させることとした。この構成によれば、エラーが検出されると、ユーザや管理者等はそれを把握できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構成によれば、記憶部、制御部の使用状態、及びプログラムの動作状態を監視してエラーを検出するので、カスタムプログラムに診断関数等を組み込む必要がない。これにより、画像形成装置にユーザを含むメーカ以外の第三者がアプリケーションプログラムを任意に搭載する場合であっても、装置の状態監視プログラムに注意を払うことなくアプリケーションプログラムを開発することが可能になり、使い勝手の良い画像形成装置を提供することができる。また、状態監視のための関数などを組み込むことなくユーザを含むメーカ以外の第三者が開発、搭載したカスタムプログラムの動作状態を監視することが可能な状態監視プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の模型的垂直断面正面図である。
【図2】図1の画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】図1の画像形成装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図4】画像形成装置の状態監視に係る処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図1〜図4に基づき説明する。
【0028】
最初に、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置について、図1〜図3を用いてその構造の概略を説明しつつ、画像出力処理を説明する。図1は画像形成装置の模型的垂直断面正面図、図2は画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図、図3は画像形成装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷タイプのものである。
【0029】
図1に示すように、画像形成装置1の本体2の内部下方には給紙カセット3が配置されている。給紙カセット3はその内部に印刷前のカットペーパーなどの用紙Pを積載して収容している。そして、この用紙Pは図1において給紙カセット3の左上方に向け、1枚ずつ分離されて送り出される。給紙カセット3は本体2の正面側から水平に引き出すことが可能である。
【0030】
本体2の内部であって給紙カセット3の左方には第1用紙搬送部4が備えられている。第1用紙搬送部4は本体2の左側面に沿って略垂直に形設されている。そして、第1用紙搬送部4は給紙カセット3から送り出された用紙Pを受け取り、本体2の左側面に沿って垂直上方に二次転写部5まで搬送する。
【0031】
給紙カセット3の上方であって第1用紙搬送部4が形設された本体2の左側面とは反対側の側面である右側面の箇所には手差し給紙部6が備えられている。手差し給紙部6には給紙カセット3に入っていないサイズの用紙や、厚紙、OHPシートのように1枚ずつ手で送り込みたいものが載置される。
【0032】
手差し給紙部6の左方には第2用紙搬送部7が備えられている。第2用紙搬送部7は給紙カセット3のすぐ上方にあって、手差し給紙部6から第1用紙搬送部4まで略水平に延びて第1用紙搬送部4に合流している。そして、第2用紙搬送部7は手差し給紙部6から送り出された用紙を受け取り、略水平に第1用紙搬送部4まで搬送する。
【0033】
一方、画像形成装置1の本体2の上面には原稿搬送装置8が、その下方の本体2内部には画像読取部9が備えられている。ユーザが原稿の複写を行う場合には、文字や図形、模様などの画像が描かれた原稿を、原稿搬送装置8に積載したり、画像読取部9上面のコンタクトガラス9a上に載置したりする。原稿搬送装置8では1枚或いは複数枚の原稿が1枚ずつ分離して送り出され、画像読取部9によってその画像が読み取られる。コンタクトガラス9a上の原稿に対しては、画像読取部9内で光を走査させることによって画像が読み取られる。
【0034】
原稿画像の読み取り、すなわち画像形成の開始は本体2の上部であって画像読取部9の正面側に備えられた操作パネル10を用いて実行される。操作パネル10はユーザによる印刷に使用する用紙の種類やサイズ、部数、拡大縮小、両面印刷の有無といった印刷条件設定や、ファクシミリにおける送信先設定などを受け付ける。
【0035】
操作パネル10は、図3に示すように、その中央部に液晶表示部10aを備えている。液晶表示部10aにはその上方に重ね合わされた形でタッチパネル部(図示せず)が設けられている。液晶表示部10aは入力や設定、指示などの項目を、液晶を用いて表示している。タッチパネル部はユーザが指などで接触することにより液晶表示部10aに表示された項目の選択やキーの入力を受け付ける。
【0036】
原稿の画像データの情報は後述の制御部や画像処理部を経由して画像処理が施された後、第2用紙搬送部7の上方であって、本体2の中央部に配置された露光装置11に送られる。露光装置11により、画像データに基づいて制御されたレーザ光Lが画像形成部12に向かって照射される。
【0037】
露光装置11の上方には計4台の画像形成部12が、さらにそれら各画像形成部12の上方には中間転写体を無端ベルトの形で用いた中間転写ベルト13が備えられている。中間転写ベルト13は複数のローラに巻き掛けられて支持され、図示しない駆動装置により図1において時計方向に回転する。
【0038】
4台の画像形成部12は、図1に示すように中間転写ベルト13の回転方向に沿って回転方向上流側から下流側に向けて一列にして配置された所謂タンデム方式である。4台の画像形成部12とは、上流側から順にイエロー用の画像形成部12Y、マゼンタ用の画像形成部12M、シアン用の画像形成部12C、及びブラック用の画像形成部12Bである。これらの画像形成部12には、各色に対応する現像剤供給容器及び搬送手段(図示せず)により現像剤(トナー)が補給される。
【0039】
なお、以下の説明において、特に限定する必要がある場合を除き、画像形成部12の「Y」「M」「C」「B」の識別記号は省略するものとする。また、画像形成装置1はカラー印刷と白黒印刷とを選択可能であるが、特に指定する場合を除きカラー印刷を実施するものとする。
【0040】
各画像形成部12では、露光装置11によって照射されたレーザ光Lにより原稿画像の静電潜像が形成され、この静電潜像からトナー像が現像される。トナー像は、各画像形成部12の上方に備えられた一次転写部14で、中間転写ベルト13表面に一次転写される。そして、中間転写ベルト13の回転とともに所定のタイミングで各画像形成部12のトナー像が中間転写ベルト13に転写されることにより、中間転写ベルト13表面にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたカラートナー像が形成される。
【0041】
中間転写ベルト13が用紙搬送路に懸かる箇所には二次転写部5が配置されている。中間転写ベルト13表面のカラートナー像は第1用紙搬送部4によって同期をとって送られてきた用紙Pに、二次転写部5に形成される二次転写ニップ部で転写される。
【0042】
二次転写後、中間転写ベルト13表面に残留するトナーなどの付着物は中間転写ベルト13に対してイエロー用の画像形成部12Yの回転方向上流側に設けられた中間転写ベルト13用のクリーニング装置15によってクリーニングされ、回収される。
【0043】
二次転写部5の上方には定着部16が備えられている。二次転写部5にて未定着トナー像を担持した用紙Pは定着部16へと送られ、熱ローラと加圧ローラとによりトナー像が加熱、加圧されて定着される。
【0044】
定着部16の上方には用紙案内装置17が備えられている。定着部16から排出された用紙Pは両面印刷を行わない場合、用紙案内装置17から画像形成装置1の上部に設けられた胴内用紙排出部18に排出される。
【0045】
用紙案内装置17から胴内用紙排出部18に向かって用紙Pが排出されるその排出口部分はスイッチバック部19としての機能を果たす。両面印刷を行う場合にはこのスイッチバック部19において定着部16から排出された用紙Pの搬送方向が切り替えられる。そして、用紙Pは用紙案内装置17を通過し、定着部16の左方、及び転写部5の左方に設けられた両面印刷用用紙搬送路20を通して下方に送られ、再度第1用紙搬送部4を経て二次転写部5へと送られる。
【0046】
また、画像形成装置1は装置全体の動作制御のため、図2に示すようにその本体2内にCPU22やその他の図示しない電子部品で構成された制御部21を備えている。制御部21は中央演算処理装置であるCPU22と画像処理部23とを利用し、RAMなどで構成される主記憶部24に記憶、入力されたプログラム、データに基づき画像読取部9、画像形成部12、中間転写ベルト13、定着部16などといった構成要素を制御して一連の画像形成処理を実現する。そして、画像読取部9で読み取られた原稿表面の画像を原稿画像データファイルとして記憶する、例えばHDDなどで構成される外部記憶部25を備えている。
【0047】
また、画像形成装置1は電話回線やネットワーク回線を利用して外部機器と画像データの授受を行うための通信部26を備えている。通信部26は電話回線を利用して通信するファクシミリ通信部27と、ネットワーク回線を利用して通信するネットワークI/F(インターフェース)部28とを備えている。
【0048】
図2に示すハードウェア資源の基本的な制御を行うため、画像形成装置1は、図3に示すように制御ファームウェア30を備えている。制御ファームウェア30は制御部21の図示しないROMやフラッシュメモリに記憶されている。この制御ファームウェア30に基づいてOS(オペレーティングシステム)31が動作する。OS31は主記憶部24や外部記憶部25の管理、操作パネル10に関する入出力制御など、アプリケーションプログラムが利用する基本的な機能を提供して画像形成装置1全体を管理、制御している。
【0049】
画像形成装置1のコピー、プリンタ、ファクシミリ、及びスキャナの各機能はOS31上で動作するアプリケーションプログラムであるコピーアプリ32、プリンタアプリ33、FAXアプリ34、及びスキャナアプリ35が各々の目的に対応した作業を実行する。アプリケーションプログラムとしてはコピーアプリ32、プリンタアプリ33、FAXアプリ34、及びスキャナアプリ35といった基本的な機能を担うものの他、ユーザアプリ36としてユーザが個別に開発したカスタムプログラム(例えば前述のスキャンした名刺や紙文書を電子データ化するプログラム等)を搭載させることができる。
【0050】
また、画像形成装置1は上記ハードウェア資源やソフトウェア(プログラム)を監視してエラーを検出するプログラムである状態監視アプリ37を搭載している。状態監視アプリ37は例えば画像形成装置1の起動後、ユーザアプリ36による主記憶部24や外部記憶部25、制御部21の使用状態、及びユーザアプリ36自体の動作状態を監視する。
【0051】
次に、状態監視アプリ37による画像形成装置1の状態監視に係る動作について、図2及び図3に加えて図4に示すフローに沿って説明する。図4は画像形成装置の状態監視に係る動作を示すフローチャートである。
【0052】
図4に示す動作フローのスタートは例えば画像形成装置1の主電源投入後など、制御部21が駆動を開始した時点である。制御部21は状態監視アプリ37を動作させて常時、ユーザアプリ36による主記憶部24や外部記憶部25、制御部21の使用状態、及びユーザアプリ36自体の動作状態を監視している。これにより、図4のステップ#101において制御部21はユーザアプリ36がHDDなどで構成される外部記憶部25上で所定サイズを超過していないかどうか判定する。
【0053】
外部記憶部25には例えばアプリケーションプログラム自体が記憶され、さらにアプリケーションプログラムがデータ等を記憶させることがある。アプリケーションプログラム自体のサイズが比較的大きい場合や、プログラムが動作時に記憶領域を多く使用する場合には外部記憶部25の記憶領域の多くを占有することになる。これにより、他のアプリケーションプログラムが動作し難くなるなど、画像形成装置1の処理能力に悪影響を及ぼす虞がある。
【0054】
したがって、ステップ#101では、例えば外部記憶部25の全容量が1GBでユーザが記憶させることができるユーザアプリ36の数が5個である場合、プログラムが使用するサイズが200MBを超過すると制御部21がこれをエラーとして検出する(ステップ#101のYes)。なお、ユーザが外部記憶部25に記憶させることができるユーザアプリ36の数やエラーとして検出されるプログラムの使用サイズは主記憶部24や外部記憶部25に予め記憶され、管理者等が任意に変更することができる。
【0055】
外部記憶部25の使用状態についてエラーを検出しなかった場合(ステップ#101のNo)、制御部21はユーザアプリ36がRAMなどで構成される主記憶部24上で所定サイズを超過していないかどうか判定する(ステップ#102)。外部記憶部25の場合と同様、アプリケーションプログラムが主記憶部24の記憶領域の多くを占有すると、他のアプリケーションプログラムが動作し難くなるなど、画像形成装置1の処理能力に悪影響を及ぼす虞がある。
【0056】
したがって、ステップ#102では、例えば主記憶部24の全容量が10MBでユーザが記憶させることができるユーザアプリ36の数が5個である場合、プログラムが使用するサイズが2MBを超過すると制御部21がこれをエラーとして検出する(ステップ#102のYes)。なお、ユーザが主記憶部24に記憶させることができるユーザアプリ36の数やエラーとして検出されるプログラムの使用サイズは主記憶部24や外部記憶部25に予め記憶され、管理者等が任意に変更することができる。
【0057】
主記憶部24の使用状態についてエラーを検出しなかった場合(ステップ#102のNo)、制御部21はユーザアプリ36が動作するときのCPU22に対する負荷が所定負荷率を超過していないかどうか判定する(ステップ#103)。外部記憶部25や主記憶部24の場合と同様、アプリケーションプログラムがCPU22の多くを占有すると、他のアプリケーションプログラムが動作し難くなるなど、画像形成装置1の処理能力に悪影響を及ぼす虞がある。
【0058】
したがって、ステップ#103では、例えばスキャナアプリ35などの他のプログラムの動作と同時期にユーザアプリ36を動作させ、CPU負荷率30%以上の状態が一定時間継続すると制御部21がこれをエラーとして検出する(ステップ#103のYes)。なお、CPU負荷率やその継続時間は主記憶部24や外部記憶部25に予め記憶され、管理者等が任意に変更することができる。
【0059】
CPU負荷率についてエラーを検出しなかった場合(ステップ#103のNo)、制御部21は動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用するユーザアプリ36が存在しないかどうか判定する(ステップ#104)。このようなユーザアプリ36には、例えば画像形成装置1のメーカが動作保証していない関数(API(Application Programming Interface))が使用されているアプリケーションプログラムが該当する。ユーザアプリ36がメーカ保証外のAPIを使用していると、制御部21はユーザアプリ36の動作を制御、管理できなくなり、誤動作の原因になる虞がある。
【0060】
したがって、ステップ#104では、例えばメーカ保証外のAPIが1回でも使用されていると制御部21がこれをエラーとして検出する(ステップ#104のYes)。なお、メーカに動作保証された命令または関数またはルーチンやそれらの使用回数は主記憶部24や外部記憶部25に予め記憶され、管理者等が任意に変更することができる。
【0061】
予め設定され主記憶部24等に記憶された動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用するユーザアプリ36の存在についてエラーを検出しなかった場合(ステップ#104のNo)、制御部21は予め設定され主記憶部24等に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用するユーザアプリ36が存在しないかどうか判定する(ステップ#105)。このようなユーザアプリ36には、例えば一定時間内における使用回数の制限を超えてAPIを頻繁に使用している場合などが該当する。例えばログインのAPIを連続して呼び出してログインを試み、ログイン失敗が続く場合、不正なログインを実行している虞がある。
【0062】
したがって、ステップ#105では、例えばAPI毎に一定時間内に使用できる回数を制限し、その制限を超えると制御部21がこれをエラーとして検出する(ステップ#105のYes)。なお、API毎の連続使用に係る制限時間やその間の使用回数は主記憶部24や外部記憶部25に予め記憶され、管理者等が任意に変更することができる。
【0063】
予め設定され記憶部24等に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用するユーザアプリ36の存在についてエラーを検出しなかった場合(ステップ#105のNo)、制御部21は再び外部記憶部25の使用状態についてエラーがないかどうか判定する(ステップ#101)。このようにして状態監視アプリ37に基づき、制御部21はユーザアプリ36による主記憶部24や外部記憶部25、制御部21の使用状態、及びユーザアプリ36自体の動作状態を繰り返し監視している。
【0064】
ステップ#101〜ステップ#105のいずれかの条件についてエラーを検出したとき(ステップ#101〜ステップ#105のYes)、制御部21はそのエラーの程度に基づいて報知等を実行させる(ステップ#106〜ステップ#108)。
【0065】
画像形成装置1への影響が大きいと判断されるエラーには例えば動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用するユーザアプリ36の存在、すなわちユーザアプリ36がメーカ保証外のAPIを使用している場合(ステップ#104のYes)が該当し、制御部21は通信部26を使用し、ネットワークを介してメーカにエラーを報知する(ステップ#106)。そして、画像形成装置1の状態監視に係る動作フローが終了する(図4のエンド)。画像形成装置1への影響が大きいと判断されるのでこの後、例えば画像形成装置1を停止させる。
【0066】
画像形成装置1への影響が中程度である判断されるエラーには例えば外部記憶部25や主記憶部24、CPU22といったハードウェア資源の使用状態に関するエラー(ステップ#101〜ステップ#103の各Yes)が該当し、制御部21は操作パネル10を使用して管理者やユーザにエラーを報知する(ステップ#107)。そしてこの後、引き続き装置を運転させて状態監視アプリ37による状態監視を続ける(ステップ#101)。
【0067】
画像形成装置1への影響が中程度にも該当しないと判断されるエラーには例えば予め設定され記憶部24等に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用するユーザアプリ36の存在、すなわちユーザアプリ36がAPIを連続使用している場合(ステップ#105のYes)が該当し、制御部21はエラーを主記憶部24や外部記憶部25に記憶しておく(ステップ#108)。そしてこの後、引き続き装置を運転させて状態監視アプリ37による状態監視を続ける(ステップ#101)。
【0068】
なお、画像形成装置1への影響度はエラー毎に予め設定されており、各エラーとエラー検出後の処理方法(ステップ#106〜ステップ#108)が対応付けて主記憶部24や外部記憶部25に記憶されている。
【0069】
このようにして、主記憶部24、外部記憶部25、CPU22の使用状態、及びユーザアプリ36の動作状態を監視してエラーを検出するので、ユーザアプリ36に診断関数等を組み込む必要がない。これにより、画像形成装置1にユーザがユーザアプリ36を任意に搭載する場合であっても、装置の状態監視プログラム37に注意を払うことなくユーザアプリ36を開発することが可能になり、使い勝手の良い画像形成装置1を提供することができる。また、状態監視のための関数などを組み込むことなくユーザが開発、搭載したユーザアプリ36の使用状態を監視することが可能なプログラムである状態監視アプリ37を提供することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0071】
例えば、本発明の上記実施形態における画像形成装置1は、中間転写ベルトを用いてトナー像を用紙に転写するカラー印刷用の画像形成装置であるが、発明の適用対象となる画像形成装置がこのような種類に限定されるわけではなく、中間転写ベルトを用いない画像形成装置や白黒印刷用の画像形成装置であっても構わない。
【0072】
また、上記実施形態では、記憶部、制御部、及びプログラムの使用状態の監視について、外部記憶部25における記憶サイズ、主記憶部24における記憶サイズ、CPU22の負荷率、メーカ動作保証外のAPIを使用するユーザアプリ36の存在、及び使用制限を超過してAPIを使用するユーザアプリ36の存在を監視することにしているが、記憶部、制御部、及びプログラムの使用状態とはこれらに限定されるわけではなく、他の状態を監視することにしても構わない。
【0073】
また、エラーの判定条件を外部記憶部25における記憶サイズについて「200MB以上」、主記憶部24における記憶サイズについて「2MB以上」、CPU22の負荷率について「30%以上」を設定しているが、判定条件はこれらに限定されるわけではなく、他の条件であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、画像形成装置全般において利用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 画像形成装置
10 操作パネル
21 制御部
22 CPU
24 主記憶部
25 外部記憶部
26 通信部
36 ユーザアプリ
37 状態監視アプリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムが入力され、記憶する記憶部と、
前記記憶部に入力、記憶された前記プログラムを使用して画像形成に係る処理を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記プログラムのうちメーカ外で開発されたカスタムプログラムを使用するとき、前記カスタムプログラムによる前記記憶部、前記制御部の使用状態、及び前記カスタムプログラム自体の動作状態を監視してエラーを検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の使用状態を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の一時的な使用状態を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記プログラムを利用して演算処理を行う演算部を備え、前記カスタムプログラムの動作に係る制御部や前記演算部への負荷を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、予め設定され前記記憶部に記憶された動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、予め設定され前記記憶部に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、検出した前記エラーの発生を報知することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
プログラムを記憶部に入力し、記憶させる記憶処理と、
前記記憶部に入力、記憶された前記プログラムを制御部に実行させる画像形成処理と、
前記プログラムのうちメーカ外で開発されたカスタムプログラムを使用するとき、前記カスタムプログラムによる前記記憶部、前記制御部の使用状態、及びカスタムプログラム自体の動作状態を監視してエラーを検出するエラー検出処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする状態監視プログラム。
【請求項9】
前記エラー検出処理は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の使用状態を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項8に記載の状態監視プログラム。
【請求項10】
前記エラー検出処理は、前記カスタムプログラムによる前記記憶部の一時的な使用状態を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の状態監視プログラム。
【請求項11】
前記エラー検出処理は、前記カスタムプログラムの動作に係る制御部や演算部への負荷を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載の状態監視プログラム。
【請求項12】
前記エラー検出処理は、予め設定され前記記憶部に記憶された動作保証された命令または関数またはルーチンとは異なる命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項8〜請求項11のいずれか1項に記載の状態監視プログラム。
【請求項13】
前記エラー検出処理は、予め設定され前記記憶部に記憶された制限の範囲を超えて命令または関数またはルーチンを使用する前記カスタムプログラムの存在を監視してエラーを検出することを特徴とする請求項8〜請求項12のいずれか1項に記載の状態監視プログラム。
【請求項14】
前記エラー検出処理で検出した前記エラーの発生を報知する報知処理をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項8〜請求項13のいずれか1項に記載の状態監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−155547(P2011−155547A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16346(P2010−16346)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】