説明

画像形成装置及び画像形成システム

【課題】本発明は、スリープモード機能を有し消費電力を減少しつつ、スリープモードの復帰から印刷動作が完了するまでの時間を短縮することができる画像形成装置、外部端末及び画像形成システムを提供する。
【解決手段】印刷エンジン170において印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する画像形成装置10であって、画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部64と、スリープモードからレディモードに復帰し印刷エンジン170を用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間を算出し、展開終了時刻から印刷準備時間を差し引いた印刷エンジンの印刷準備開始時刻を算出する準備開始時刻算出部60と、展開終了時刻及び印刷準備開始時刻を刻むタイムクロック1311と、印刷準備開始時刻に印刷エンジン170の準備動作を開始する印刷エンジン開始命令部1312とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成システムに関し、特に印刷エンジンにおいて印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する画像形成装置及びこれを含む画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭内やオフィス内において、パーソナルコンピュータ等の外部端末にプリンタが接続され、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)が構築されている。LANにおいては、複数の外部端末に対して1台のプリンタを共有し使用することができるので、プリンタを有効に活用することができる。また、単に印刷機能だけを備えたプリンタだけにとどまらず、最近ではファクシミリ機能やスキャナ機能を併せ持つ複合型のプリンタが使用されている。
【0003】
家庭内やオフィスに設置されるプリンタにはインクジェットジェツトプリンタが多く採用されている。インクジェットプリンタにおいては、高速印刷が可能でかつランニングコストが安く、モノクロ印刷やカラー印刷を大量に行うことができる特徴がある。
【0004】
LANにおいて、複数の外部端末のいずれかから印刷ジョブが送信され、この印刷ジョブがプリンタにおいて受信されると、プリンタはこの受信された印刷ジョブに従い印刷動作を実行する。プリンタにおいて、この印刷動作を実行する状態とは、主にコントローラ、パネル、用紙供給システム、搬送システム、インク循環システム等の大半の各部ユニットに電源が供給されるレディモードである。
【0005】
プリンタが常時レディモードに設定されていると、プリンタの消費電力は大幅に増大する。そこで、印刷ジョブが一定時間受信されない場合、プリンタをスリープモード(省電力待機状態)に遷移させることによってプリンタの消費電力を減少する技術が知られている。スリープモードは電源が切られていない状態であって無印刷動作状態であり、コントローラ等の大半の各部ユニットには電源が供給されていない。複数の外部端末とプリンタとによって構築されるLANにおいて、プリンタは、何時、どの外部端末から印刷ジョブを受信するかわからないので、スリープモードの機能を有するプリンタは消費電力の軽減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−175353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の外部端末、プリンタ及びそれらを組み込むLANにおいては、以下の点について配慮がなされていなかった。外部端末においてユーザの操作によって生成された画像情報にはプリンタにおいて印刷する前にラスタイメージプロセッサ(RIP:raster image processor)処理が施され、印刷ジョブが生成される。例えば、A4版サイズの用紙において数百枚から数千枚に匹敵する大容量の画像情報にRIP処理を施し印刷ジョブを生成した場合には、印刷ジョブの生成に長時間を要し、外部端末から印刷ジョブをプリンタに送信する前にプリンタがスリープモードに遷移することがある。プリンタは印刷ジョブを受信するとスリープモードから復帰するが、復帰直後にレディモードに遷移し、用紙供給システムの準備動作、搬送システムの準備動作、インク循環システムの準備動作等のメカニカルユニットの準備動作を経た後でないと、印刷ジョブに従って印刷動作を行うことができない。このため、プリンタにおいては、スリープモードから復帰し実際に印刷動作が行われ、印刷動作が完了するまで(印刷物を得るまで)には時間が掛かる。
【0008】
上記特許文献1には、プリンタドライバの印刷タブの操作をトリガとしてスリープモードから復帰させ、スリープモードの復帰から印刷動作が完了するまでの時間を短縮する発明が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、スリープモードの復帰後に用紙供給システムの準備動作等のメカニカルユニットの準備動作が行われているので、結局のところレディモードの復帰から印刷動作が完了するまでに十分な時間短縮にはならない。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、スリープモード機能を有し消費電力を減少しつつ、スリープモードの復帰から印刷動作が完了するまでの時間を短縮することができる画像形成装置、外部端末及び画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の特徴は、印刷エンジンにおいて印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する画像形成装置であって、画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部と、スリープモードからレディモードに復帰し印刷エンジンを用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間を算出し、展開終了時刻から印刷準備時間を差し引いた印刷エンジンの印刷準備開始時刻を算出する準備開始時刻算出部と、展開終了時刻及び印刷準備開始時刻を刻むタイムクロックと、印刷準備開始時刻に印刷エンジンの準備動作を開始する印刷エンジン開始命令部とを備える。
【0011】
本発明の第2の特徴は、第1の特徴に係る画像形成装置において、印刷エンジンは、記録媒体を格納する給紙トレイユニットと、給紙トレイユニットから供給される記録媒体をプリントヘッドに搬送する搬送ユニットと、プリントヘッドに印刷用のインクを循環させるインク循環ユニットとを備え、準備開始時刻算出部は、給紙トレイユニットの動作に必要な第1の動作準備時間を算出する給紙トレイ動作準備時間算出部と、搬送ユニットの動作に必要な第2の動作準備時間を算出する搬送動作準備時間算出部と、インク循環ユニットの動作に必要な第3の動作準備時間を算出するインク循環動作準備時間算出部とを備え、最も長い第1の動作準備時間、第2の動作準備時間、第3の動作準備時間のいずれかを印刷準備開始時間として印刷準備開始時刻を算出することである。
【0012】
本発明の第3の特徴は、第1の特徴又は第2の特徴に係る画像形成装置おいて、準備開始時間算出部は、第1の印刷情報の展開に要する展開時間に基づき算出される展開終了時刻に対して、第1の印刷情報の展開開始時刻よりも後に展開が開始され、第1の印刷情報に比べて容量が小さく、かつ展開終了時刻よりも前に印刷動作が終了する第2の印刷情報が存在するとき、第1の印刷情報よりも先に第2の印刷情報の印刷を実行する。
【0013】
本発明の第4の特徴は、画像形成システムにおいて、画像情報を印刷情報に展開する印刷ジョブ生成処理部と、印刷ジョブ生成処理部において印刷情報の展開に要する展開時間を算出する展開時間算出部と、展開時間算出部において算出された展開時間を送信する第1の通信処理部とを有する外部端末と、印刷エンジンにおいて印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する画像形成装置であって、第1の通信処理部から送信された展開時間を受信する第2の通信処理部と、第2の通信処理部において受信された展開時間に基づき画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部と、スリープモードからレディモードに復帰し印刷エンジンを用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間を算出し、展開終了時刻から印刷準備時間を差し引いた印刷エンジンの印刷準備開始時刻を算出する準備開始時刻算出部と、展開終了時刻及び印刷準備開始時刻を刻むタイムクロックと、印刷準備開始時刻に印刷エンジンの準備動作を開始する印刷エンジン開始命令部とを有する画像形成装置とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の特徴に係る画像形成装置によれば、印刷動作が行われないときにスリープモードに遷移し、電力消費を減少することができるとともに、展開終了時刻算出部を用いて画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出することによってスリープモードからレディモードへの復帰時刻(展開終了時刻と同時刻)を算出し、準備開始時刻算出部を用いて印刷準備開始時間を算出して展開終了時刻よりも印刷準備開始時間前の印刷準備開始時刻を算出し、タイムクロックにおいて印刷準備開始時刻に到達したときに印刷エンジン開始命令部から印刷エンジンの準備動作を開始させることができるので、印刷情報が受信され次第即座に印刷動作を行うことができる。すなわち、第1の特徴に係る画像形成装置においては、スリープモードからの復帰時刻を算出してそれよりも前段階において印刷エンジンの準備動作を行うので、スリープモードからの復帰時刻(本来のスリープモードの復帰タイミング)と同時刻若しくは極めて短時間において印刷エンジンの印刷動作を実現することができる。
【0015】
本発明の第2の特徴に係る画像形成装置によれば、第1の特徴に係る画像形成装置により得られる効果に加えて、給紙トレイユニット、搬送ユニット、インク循環ユニットのうち最も長い第1の動作準備時間、第2の動作準備時間、第3の動作準備時間のいずれかに基づき、印刷エンジンの印刷準備開始時刻を算出することができるので、スリープモードからの復帰時刻から極めて短時間において印刷エンジンを用いて印刷動作を行うことができる。
【0016】
本発明の第3の特徴に係る画像形成装置によれば、第1の特徴又は第2の特徴に係る画像形成装置により得られる効果に加えて、第1の印刷情報の印刷の実行終了を待たずに第2の印刷情報の印刷の実行を終了することができるので、有効に利用することができる。
【0017】
本発明の第4の特徴に係る画像形成システムによれば、第1の特徴に係る画像形成装置により得られる効果と第3の特徴に係る外部端末により得られる効果とを組み合わせた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1に係る画像形成システム及びそれに組み込まれる画像形成装置及び外部端末の構成図である。
【図2】実施例1に係る画像形成装置の具体的な構成図である。
【図3】実施例1に係る画像形成装置のインク循環ユニットの構成図である。
【図4】実施例1に係る外部端末の制御方法を説明するフローチャートである。
【図5】実施例1に係る画像形成装置の制御方法を説明するフローチャートである。
【図6】実施例1に係る外部端末及び画像形成装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る外部端末及び画像形成装置の動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。
【0020】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例1は、画像形成装置としてインク循環システムを有する複合型インクジェットプリンタを用い、この画像形成装置、複数の外部端末及びLANを通じてこれらが接続される画像形成システムに本発明を適用した例を説明するものである。なお、画像形成装置をこの複合型インクジェットプリンタに限定するものではなく、非複合型インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、熱転写プリンタ等の各種プリンタに本発明を適用することができる。
【0022】
[画像形成システムの構成]
図1に示すように、実施例1に係る画像形成システム1は、画像形成装置10及び外部端末8を備え、これら画像形成装置10及び外部端末8を通信経路9によって接続している。画像形成装置10はここではインク循環システムを有する複合型カラーインクジェットプリンタである。外部端末8は複数の外部端末81、82、83、…を有し、これらには少なくともデスクトップ型パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(PDA:personal digital assistance)等が含まれる。外部端末8は、画像情報を作成し、又は画像情報を保持し(記憶し)、この画像情報を印刷情報に変換して印刷ジョブを生成し、この印刷ジョブを画像形成装置10に送信可能な機能を少なくとも有する。
【0023】
通信経路9は、例えばオフィス内、複数のオフィス間、オフィスと家庭との間、オフィスと外出先との間等において、外部端末8と画像形成装置10との間を接続するデータ転送経路である。この通信経路9には、有線LAN、無線LAN、インターネット、電話回線、光ケーブル、USB(universal serial bus)ケーブル、SCSI(small computer system interface)規格に基づく例えばIEEE1394ケーブル等の少なくともいずれか1つのデータ転送経路が含まれる。
【0024】
画像形成装置10は複数の外部端末81、82、83、…に共用され使用される。ここでは1つの画像形成装置10を例示しているが、画像形成装置10は1台に限定されるものではなく、複数の外部端末81等に対して2台以上の画像形成装置10が共用されてもよい。
【0025】
[外部端末の構成]
実施例1に係る外部端末8は、図示していない中央演算処理ユニット(CPU)、記憶装置、入力装置、表示装置等の基本的構成に加え、図1に示すように、更に画像情報生成部814、プリンタドライバ810、第1の通信処理部813を備えている。中央演算処理ユニットは、外部端末8の大半の制御を司り、又記憶装置に格納されたプログラムに基づき演算処理を実行する。この外部端末8においては、アプリケーションソフトウエアを用いて、文章、図面、記号、写真等の画像情報を生成することができ、又外部から画像情報を受信することができ、又外部に画像情報を送信することができる。
【0026】
画像情報変換部814は、ユーザからの印刷実行命令に基づき、アプリケーションソフトウエアによって前述の画像情報を拡張メタファイル(EMF:enhance metafile)と呼ばれる中間ファイル形成を有する変換画像情報に変換する。
【0027】
プリンタドライバ810は、画像情報変換部814において生成された変換画像情報を印刷情報に展開し印刷ジョブを生成する印刷ジョブ生成処理部811と、印刷ジョブ生成処理部811において印刷ジョブの生成に要する展開時間を算出する展開時間算出部812とを備えている。
【0028】
印刷ジョブ生成処理部811においては、例えばポストスクリプト(Post Script)のコマンドをラスタイメージ(ビットマップ)に展開するRIP処理が行われ、変換画像情報(単に画像情報と表現する場合がある)が印刷情報に展開され、印刷ジョブが生成される。このRIP処理において、例えばA3版サイズ1枚の領域に生成されたカラー画像情報を印刷情報に展開するためには、外部端末8の中央演算処理ユニット等の性能によって左右されるが、例えば約1秒〜3秒程度の展開時間が必要になる。また、高解像度のビットマップイメージデータが挿入されている場合には、展開時間に数秒を要することがある。
【0029】
展開時間算出部812はこのような印刷ジョブの生成に要する展開時間を算出する。例えば、RIP処理に、A3版サイズ1枚あたり2秒の展開時間を要する場合、300枚分の変換画像情報を印刷情報に展開し印刷ジョブを生成するには約10分の展開時間が必要になる。展開時間算出部812はこのような印刷ジョブの展開時間を算出する。展開時間算出部812において算出された展開時間は、第1の通信処理部813、通信経路9のそれぞれを通じて画像形成装置10に送信される。
【0030】
[画像形成装置の構成]
図1に示すように、実施例1に係る画像形成装置10は、その印刷エンジン170において印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する機能を有し、外部端末8から送信された展開時間に基づき画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部64と、スリープモードからレディモードに復帰し印刷エンジン170を用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間を算出し、展開終了時刻よりも印刷準備時間前の印刷エンジン170の印刷準備開始時刻を算出する準備開始時刻算出部60と、展開終了時刻及び印刷準備開始時刻を刻むタイムクロック1311と、印刷準備開始時刻に印刷エンジンの準備動作を開始する印刷エンジン開始命令部1312とを備えている。更に、画像形成装置10は、主電源スイッチ181と、電源ユニット182と、第2の通信処理部130、パネルユニット131、制御部(コントローラ)6、記憶部16、スキャナユニット151及びファクシミリユニット152を備えている。
【0031】
画像形成装置10の主電源スイッチ181には商用電源が接続され、この主電源スイッチ181は画像形成装置10の全体の電源のON、OFFを行うスイッチである。詳細には、主電源スイッチ181は、画像形成装置10をOFF状態からスタンバイモードに遷移し、又OFF状態以外(例えばスタンバイモード、スリープモード、レディモード等)からOFF状態に遷移するためのスイッチである。電源ユニット182は、主電源スイッチ181を通して供給される電源の調節を行い、この調節された電源を第2の通信処理部130、パネルユニット131、制御部6、記憶部16、印刷エンジン170、スキャナユニット151、ファクシミリユニット152の各ユニットに供給する。
【0032】
ここで、実施例1において、OFF状態とは、主電源スイッチ181がOFFの状態であって、各ユニットのすべてに電力が供給されていない状態である。スタンバイモードとは、主電源スイッチ181をOFFからONに操作した状態であって、電源ユニット182及びパネルユニット131にのみ電力が供給される状態である。また、スタンバイモードにおいては、パネルユニット131の表示部の表示はOFF状態にある。
【0033】
スリープモードとは、主電源スイッチ181及び図示しない電源キーがON状態(電源が切られていない状態)であって、無印刷動作状態(印刷処理が行われない状態)である。このスリープモードは、予め設定された一定時間なんらかの操作が無い場合、或いは予め設定された一定時間印刷ジョブが受信されない場合等に、自動的に遷移した省電力待機状態(電力削減状態)である。
【0034】
ローパワーモードとは、パネルユニット131の表示部の表示はOFF状態(例えば、液晶型表示部の場合にはバックライトがOFF状態)であり、電力消費が大きい印刷エンジン170等の動作を実行しない状態である。レディモードとは、画像形成装置10の制御部6及び印刷エンジン170を含む大半のユニットに電力が供給された状態であって、即座に印刷ジョブに従って印刷動作が実行可能な状態である。
【0035】
第2の通信処理部130は、通信経路9に接続され、画像形成装置10と外部端末8(の第1の通信処理部813)との間において情報の送信、受信を行う。実施例1に係る画像形成装置10において、第2の通信処理部130は、外部端末81の展開時間算出部812において算出された展開時間に関する情報を第1の通信処理部813から通信経路9を通して受信する。また、第2の通信処理部130は、外部端末8において作成された画像情報等の電子情報を記憶した可搬性記憶装置、例えばUSBメモリ、IC(integrated circuits)カード、SD(secure digital)カード等の差込スロットを備え、これらの可搬性記憶装置から電子情報の読み出し書き込みを行える機能を備えてもよい。
【0036】
パネルユニット131は、ユーザが直接画像形成装置10を操作し、例えば印刷、複写等の印刷動作又はスキャナユニット151やファクシミリユニット152を利用した画像読み取り動作を行うための操作制御部である。パネルユニット131には、図示しないが、例えば動作状態等を表示する表示部、操作を行うタッチパネル、キー、ボタン等が組み込まれている。
【0037】
実施例1において、パネルユニット131は、前述のタイムクロック1311と、印刷エンジン開始命令部1312とを備えている。タイムクロック1311には例えばリアルタイムクロック(RTC:real time clock)が使用されている。RTCは、電源ユニット182から電源が供給されているときはこの電源を使用し、電源ユニット182からの電源の供給が遮断されると内蔵電池から電源を供給し、常に時を刻む(常時駆動される)。印刷エンジン開始命令部1312は、タイムクロック1311を常に監視し、準備開始時刻算出部60を用いて算出された印刷準備開始時刻に到達したときに印刷エンジン170に準備動作を開始する指令を出力する(電気信号を与えて起動する)。また、印刷エンジン開始命令部1312は印刷エンジン170だけでなく、その他の各ユニットの動作、具体的には制御部6の動作を開始する指令を出力する。従って、スリープモード状態においても、印刷エンジン開始命令部1312から出力される指令に基づき、印刷エンジン170、制御部6等は動作を開始することができる。
【0038】
記憶部16には例えば大記憶容量を有するハードディスクが使用されている。記憶部16には、実施例1において、第2の通信処理部130を通して受信された印刷ジョブや、画像形成装置10の制御に必要なプログラム等が格納されている。
【0039】
印刷エンジン170は、記録媒体を格納する給紙トレイユニット100と、給紙トレイユニット100から供給される記録媒体をプリントヘッド(2)に搬送する搬送ユニット3と、プリントヘッドに印刷用のインクを循環させるインク循環ユニット7とを少なくとも備えている。この印刷エンジン170の各ユニットの具体的な構成は後述する。
【0040】
制御部6は、第2の通信処理部130、パネルユニット131、記憶部16、印刷エンジン170、スキャナユニット151、ファクシミリユニット152等の大半の各ユニットに接続され、これらの各ユニットの制御を司る。更に、制御部6は前述の準備開始時刻算出部60を備え、この準備開始時刻算出部60は、給紙トレイユニット100の動作に必要な第1の動作準備時間を算出する給紙トレイ動作準備時間算出部61と、搬送ユニット3の動作に必要な第2の動作準備時間を算出する搬送動作準備時間算出部62と、インク循環ユニット7の動作に必要な第3の動作準備時間を算出するインク循環動作準備時間算出部63と、外部端末81の展開時間算出部812において算出され送信された展開時間に基づき画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部64とを備える。準備開始時刻算出部60は、第1の動作準備時間、第2の動作準備時間、第3の動作準備時間の最も長いいずれかを印刷準備開始時間として印刷準備開始時刻を算出する機能を有する。
【0041】
ここで、動作準備時間とは、スリープモードから復帰し印刷エンジン170において即座に印刷動作が行えるまでに要する、ユニットの動作準備時間である。
【0042】
また、スキャナユニット151は、用紙等に印刷された画像を画像情報として制御部6の図示しないデータベース又は記録部160に取り込む機能を有する。ファクシミリユニット152は、スキャナユニット151によって取り込まれた画像情報を通信経路9又は図示しない電話回線を利用して送信する、或いは外部ファクシミリからの画像情報を受信する機能を有する。
【0043】
実施例1に係る画像形成装置10においては、特に給紙トレイユニット100、搬送ユニット3、インク循環ユニット7のメカニカル動作を伴うユニットの稼働に伴い消費電力が増大する。従って、スリープモード機能を有する画像形成装置10は、印刷動作や印刷ジョブの受信をしていないときに電源を供給せずに停止状態にあるので、電力消費を大幅に減少可能である。
【0044】
[画像形成装置の具体的構成:給紙トレイユニット及び搬送ユニットの構成]
図2に示すように、実施例1に係る画像形成装置10は、印刷を行う記録媒体100Pを供給し、この記録媒体100Pに印刷を行い、この印刷された記録媒体100Pを排出する搬送ユニット3を有する。搬送ユニット3は、給紙トレイユニット100(100A−100E)から供給される記録媒体100Pを搬送経路に導く給紙ローラ31と、記録媒体100Pの位置合わせや斜行修正を行うレジストローラ32と、搬送経路であって印字部に配設された搬送ベルト37と、搬送経路中に配設された搬送ローラ33と、切換機構34と、スイッチバック機構36等を備えている。ここで、記録媒体100Pは用紙、封筒、フイルム、ディスク等のいずれかである。
【0045】
給紙トレイユニット100は、画像形成装置10の符号を付けていない筐体の左側側面にこの筐体から外側に突出する着脱自在に配設された給紙台100Aと、筐体内部に配設された複数の給紙トレイ100B−100Eとを備えている。これらの給紙台100A−100Eには印刷前の記録媒体100Pが格納されている。また、画像形成装置10の筐体の左側上部には排紙台100Fが配設されている。排紙台100Fには印刷後の記録媒体100Pが排出される。
【0046】
画像形成装置10は、搬送経路中の印字部において、給紙トレイユニット100から供給される記録媒体100Pの搬送方向に対して直交する方向に多数のノズルが配列されたプリントヘッド2を複数備えている。それぞれのプリントヘッド2は、ブラックインク、シアンインク、マゼンダインク、イエローインクを吐出し、ライン単位において印刷動作を行う。実施例1に係る画像形成装置10は、インクジェット方式を採用するカラーインクジェット型画像形成装置である。
【0047】
実施例1に係る画像形成装置10は、更にインク循環ユニット7を備えている。インク循環ユニット7に関しては後に詳述する。
【0048】
なお、実施例1に係る画像形成装置10は、ライン単位において印刷動作を行う方式だけに限定されるものではなく、ライン方向に走査して印刷動作を行うシリアル方式に適用してもよい。
【0049】
[画像形成装置の印刷動作]
図2に示すインクジェット型画像形成装置10の印刷動作は、前述の制御部6を用いて以下の通り実行される。まず最初に、給紙トレイユニット100から供給された記録媒体100Pは、図示しないモータによって駆動される給紙ローラ31によって搬送経路に導かれ、レジストローラ32に搬送される。レジストローラ32は、搬送された記録媒体100Pの供給方向先端の位置合わせ、斜行修正等を行う。記録媒体100Pは、所定のタイミングにおいてプリントヘッド2が配列された印字部の方向に搬送される。
【0050】
レジストローラ32から搬送された記録媒体100Pは搬送ベルト37によってプラテンプレート4上に更に搬送される。プラテンプレート4上において、記録媒体100Pは吸引装置5からの吸引力によって搬送ベルト3の表面上に吸引されながら搬送される。印字部に搬送された記録媒体100Pにはプリントヘッド2から各色インクが吐出され、カラー印刷、モノクロ印刷又はグレースケール印刷が行われる。
【0051】
印刷が完了した記録媒体100Pは、搬送ローラ33によって搬送され、片面印刷の場合にはそのまま排紙台100Fに導かれて排紙される。また、両面印刷の場合には、片面印刷済みの記録媒体100Pが切換機構122を通してスイッチバック機構36に導かれ、この記録媒体100Pは印刷面を反転させて再び印字部に搬送される。片面印刷の場合と同様に、記録媒体100Pは再度印字部に搬送され、印刷を行った後に排紙台100Fに排紙される。
【0052】
[インク循環ユニットの具体的構成]
実施例1に係る画像形成装置10のインク循環ユニット7は、図3に示すように、プリントヘッド2と、インクの貯溜を行う第1のタンク(上流タンク又は第1のサブタンク)71及び第2のタンク(下流タンク又は第2のサブタンク)72と、インク循環経路700と、インクを貯溜し第2のタンク72にインクを補充するインクボトル73と、第2のタンク72に接続された圧力調整器74と、第2のタンク72に貯溜されたインクを第1のタンク71に循環させるインク循環ポンプ75と、インク循環経路701に配設された加熱装置76及び冷却装置77とを備えている。インク循環経路700は、第1のタンク71に貯溜されたインクをプリントヘッド2に供給するインク供給経路701、プリントヘッド2から回収されたインクを第2のタンク72に回収させるインク回収経路702、第2のタンク72に貯溜されたインクを第1のタンク71に循環させるインク回収経路703のそれぞれが直列に接続されて構築されている。
【0053】
第1のタンク71には、第2のタンク72に貯溜されたインク又はインクボトル73から補充されたインクがインク回収経路703を通して循環され、この循環されたインクが貯溜される。インク回収経路703においてインクはインク循環ポンプ75を用いて強制的に循環される。この第1のタンク71には大気開放経路711が接続され、この大気開放経路711には制御部6によって開閉動作が制御される大気開放弁が配設されている。この大気開放弁の開閉動作に基づき、第1のタンク71に貯溜され循環されるインクの圧力が調整される。第1のタンク71はプリントヘッド2に供給されるインクの流量並びに圧力を一定に保持する機能を有している。第1のタンク71はインク供給経路701の一端に接続されている。インク供給経路701の他端はインク分配器21を通してプリントヘッド2に接続されている。
【0054】
インク分配器21は、第1のタンク71からインク供給経路701を通して複数のプリントヘッド2のそれぞれに均等にインクを供給する機能を有する。インク分配器21は、プリントヘッド2の直前に配設され、プリントヘッド2にインクを供給する点においてインク供給経路に属し、インク循環経路700を構築する。
【0055】
また、複数のプリントヘッド2のそれぞれはインク集配器22を通してインク回収経路702の一端に接続され、このインク回収経路702の他端は第2のタンク72に接続されている。インク集配器22は、プリントヘッド2において使用されない余剰のインクを回収し、第2のタンク72に循環する機能を有する。インク集配器22は、プリントヘッド2の直後に配設され、プリントヘッド2からインクを回収する点においてインク回収経路に属し、インク循環経路700を構築する。
【0056】
実施例1において、印刷動作に使用される直前の最も正確なインク温度を測定するために、インク分配器21には温度計(温度センサ)210が配設されている。温度計210を用いて測定されたインク温度は制御部6に送られる。また、プリント動作に使用される直後の最も正確なインク温度を測定するために、インク集配器22には温度計(温度センサ)220が配設されている。温度計220を用いて測定されたインク温度は制御部6に送られる。
【0057】
複数のプリントヘッド2のそれぞれのインク吐出ノズルが配列されたノズル面側には、ヘッドキャップ23が配設されている。このヘッドキャップ23はヘッドキャップ駆動部24に接続されている。ヘッドキャップ23は、必要に応じてプリントヘッド2のノズル面を塞ぎ、インクの吐き出しを停止させるとともに、インク循環経路700内を経路外に対して閉じる機能を有する。ヘッドキャップ23の動作は、制御部6からの制御信号に基づき、ヘッドキャップ駆動部24によって実行される。
【0058】
第2のタンク72にはプリントヘッド2においてプリントに使用されなかった余剰のインクが回収され貯溜される。インク回収経路702の他端側には制御部6によって開閉動作が制御される開閉弁が配設されている。第2のタンク72には、圧力調整経路707を通して、第2のタンク72内の圧力を調整する圧力調整器74が接続されている。圧力調整器74は、必ずしもこの構成に限定されるものではないが、実施例1において、簡易な構成を有しかつ製作費用を減少することができる、伸縮動作に伴い加圧又は減圧を行うベローズ機構により構成されている。圧力調整器74は、制御部6に接続され、この制御部6からの制御信号に基づき圧力調整を行う。この圧力調整器74は、プリントヘッド2に適正な負圧を掛ける負圧調整器としての主機能を有する。また、圧力調整経路707には大気開放経路708が接続され、この大気開放経路708には制御部6によって開閉動作が制御される大気開放弁が配設されている。第2のタンク72は、基本的に第1のタンク71と同様に、循環されるインクの流量並びに圧力(ここでは負圧)を一定に保持する機能を有している。
【0059】
第2のタンク72にはインク補充経路706を通してインクボトル73が接続されている。インク補充経路706には制御部6によって開閉動作が制御される補充量調整弁が配設されている。インクボトル73は循環されるインク量が減少した場合にインクを補充する機能を有している。
【0060】
加熱装置76及び冷却装置77はインク循環経路700に沿って配設されている。加熱装置76及び冷却装置77は良好な印刷結果を得ることができる温度にインクを調整する機能を有する。加熱装置76には実施例1において熱電ヒータが使用されている。冷却装置77は、熱交換によってインクの温度を下げる冷却フィンと熱気の吸引若しくは冷気の送風によってインク温度を下げる冷却ファンとを併用して構成されている。
【0061】
ここで、図3に示すインク循環ユニット7は1色分である。実施例1に係る画像形成装置10はカラーインクジェット型画像形成装置であるので、図示しないが同様のインク循環ユニット7は他に3つ組み込まれ、画像形成装置10には合計4個のインク循環ユニット7が組み込まれている。
【0062】
[インク循環ユニットのインク循環動作]
図3に示すインク循環ユニット7の全体のインク循環動作は以下の通りである。まず、第1のタンク71に貯溜されたインクがインク供給経路701、インク分配器21のそれぞれを通してプリントヘッド2に供給される。第1のタンク71からインク供給経路701を通してプリントヘッド2に供給されるインクは、加熱装置76又は冷却装置77を通して良好な印刷結果を得られる温度に調整される。
【0063】
プリントヘッド2においては記録媒体100Pに印刷を行うために供給されたインクが消費される。印刷に使用されなかった余剰のインクはインク集配器22を通して回収され、この回収されたインクはインク回収経路702を通して第2のタンク72に回収され貯溜される。第2のタンク72に貯溜されたインクはインク回収経路703、インク循環ポンプ75を通して第1のタンク71に強制的に循環される。インク回収経路703を通して第1のタンク71に循環され回収されたインクは、再度プリントヘッド2に供給するために貯溜される。
【0064】
ここで、インク分配器21に配設された温度計210又はインク集配器22に配設された温度計220の少なくともいずれか一方を用いてインクの温度が測定される。インク温度が低く、良好な印刷結果を得ることができない場合には、制御部6は加熱装置76を駆動し、循環されるインクが温められる。インク温度が高く、やはり良好な印刷結果を得ることができない場合には、制御部6は冷却器77を駆動し、循環されるインクが冷却される。
【0065】
また、インク循環ユニット7において、第1のタンク71内に貯溜されたインク量、第2のタンク72に貯溜されたインク量は符号を省略した液面検出センサを用いて管理されている。印刷動作が継続して実行され、インクが消費されることによって第1のタンク71又は第2のタンク72に貯溜されたインク量が減少し規定値に満たない場合には、制御部6は補充量調整弁を開き、インクボトル73からインク補充経路706を通して第2のタンク72にインクの補充が行われる。
【0066】
[画像形成装置のスリープモード復帰時の印刷動作の制御方法]
次に、実施例1に係る画像形成システム1において、画像形成装置10のスリープモード復帰時の印刷動作の制御方法は以下の通りである。
【0067】
(1)外部端末の制御方法:展開時間の算出方法
図4及び図6に示すように、実施例1に係る外部端末81において、まず最初に画像情報が生成される(S1)。画像情報は、文字、図面、記号、写真等の電子情報であり、外部端末81によって作成した画像情報、通信経路9を通じて外部端末81に取り込んだ画像情報、可搬性記憶装置から外部端末81に取り込んだ画像情報のいずれも含まれる。
【0068】
ユーザは外部端末81のプリンタドライバ810の操作を行い、印刷開始が指示される(S2)。印刷開始が指示されると、外部端末81の画像情報変換部814において画像情報が中間ファイル形式の変換画像情報に変換され、展開時間算出部812において変換画像情報から印刷情報に展開し印刷ジョブを生成するのに要する展開時間が算出される(S3)。ここでは、RIP処理に要する時間が算出される。RIP処理に要する時間は、外部端末8の処理能力、1ビット当たりの変換画像情報を印刷情報に展開するのに要する単位時間、印刷情報に展開される画像情報の容量等に基づき算出される。算出された展開時間は第1の通信処理部813から通信経路9を通して画像形成装置10に送信される(S4)。
【0069】
外部端末81の印刷ジョブ生成処理部811において、変換画像情報から印刷情報に展開され(RIP処理が実行され)、印刷ジョブが生成される(S5)。印刷ジョブは、第1の通信処理部813から通信経路9を通して画像形成装置10に送信される(S6)。
【0070】
(2)画像形成装置の制御方法:印刷準備開始時刻の算出方法
図5及び図6に示すように、実施例1に係る画像形成装置10において、まず最初に外部端末81から送信された展開時間に関する情報が第2の通信処理部130において受信される(S11)。この情報は画像形成装置10の制御部6内に構築された準備開始時刻算出部60の展開時刻算出部64に出力され、展開時刻算出部64において展開終了時刻が算出される(S12)。この展開終了時刻は、外部端末81において変換画像情報から印刷情報に展開し印刷ジョブが生成される時刻(展開が完了する時刻)であり、この印刷ジョブが画像形成装置10に送信され、画像形成装置10がスリープモードの状態にあるとき、本来、スリープモードから復帰しレディモードに遷移する時刻である。展開終了時刻は、外部端末8から印刷開始の指示(S2)が出された時刻を基準として、外部端末8の展開時間算出部812において算出された展開時間を経過した時刻である。
【0071】
ここで、準備開始時刻算出部60において、画像形成装置10がスリープモードに遷移する時刻に対して、展開終了時刻が早いか遅いか(前か後ろか)が判定される(S13)。ここで、スリープモードは、一定時間(一定期間)、印刷ジョブの受信や操作を行わないときに遷移する通常のスリープモード、省電力化を目的として設定された日時から一定時間(一定期間)スケジュール運転の一環として強制的に遷移するスリープモードのいずれも含まれる。スリープモードに遷移する時刻に対して展開終了時刻が早い場合、つまりレディモード中に展開終了時刻になる場合には、画像形成装置10の印刷エンジン170が印刷動作を即座に実行することができる状態にあるので、印刷ジョブの受信待ちとなる。外部端末81から印刷ジョブが送信され、画像形成装置10において印刷ジョブが受信される(S22)と、印刷ジョブに従い印刷動作が行われ、記録媒体100Pに印刷が行われる(S23)。
【0072】
一方、スリープモードに遷移する時刻に対して展開終了時刻が遅い場合、つまりスリープモード中に展開終了時刻になる場合には、まずスリープモードに遷移する時刻に到達したか否かが判定される(S14)。スリープモードに遷移する時刻に到達すると、スリープモードからレディモードに復帰し印刷エンジン170を用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間が算出される(S15)。この印刷準備時間の算出とは、準備開始時刻算出部60の給紙トレイ動作準備時間算出部61において給紙トレイユニット100の動作に必要な第1の動作準備時間を算出し、搬送動作準備時間算出部62において搬送ユニット3の動作に必要な第2の動作準備時間を算出し、インク循環動作準備時間算出部63においてインク循環ユニット7の動作に必要な第3の動作準備時間を算出することを意味する。
【0073】
給紙トレイ動作準備時間算出部61において算出される第1の動作準備時間は、図2に示す給紙トレイユニット100の準備に要する時間であり、例えば10秒〜20秒である。搬送動作準備時間算出部62において算出される第2の動作準備時間は、図2に示す給紙ローラ31等の各種ローラを駆動するモータの準備に要する時間、搬送ベルト37の準備に要する時間等に基づき算出され、例えば例えば20秒〜30秒である。
【0074】
インク循環動作準備時間算出部63において算出される第3の動作準備時間は、インク循環ユニット7の準備に要する時間であり、例えば数十秒から数十分である。第3の動作準備時間は、図3に示すインク循環ユニット7の圧力調整器74、インク循環ポンプ75、加熱装置76、冷却装置77のそれぞれの準備に要する時間に基づき算出されるが、温度変化によってインク粘度が変動し、印刷品質に影響を及ぼすので、以下の方法に基づき算出される。
【0075】
まず、画像形成装置10がスリープモードに遷移したときにインク循環ユニット7のインク分配器21に装着された温度計210又はインク集配器22に装着された温度計220を用いてインクの温度を測定する。この測定結果はインク循環動作準備時間算出部63に出力される。印刷品質を保証する適正なインクの温度(例えば20℃〜25℃)に対して測定されたインク温度が低い場合には、加熱装置76を用いて加熱し、インクが適正な温度になるまでに要する時間が算出される。スリープモードに遷移したときのインクの測定温度とその温度から適正な温度に達するまでに要する時間とを関連付けたテーブルをインク循環動作準備時間算出部63内又は記憶部16に格納しておけば、簡易に時間を算出することができる。また、印刷品質を保証する適正なインクの温度に対して測定されたインク温度が高い場合には、冷却装置77を用いて冷却し、インクが適正な温度になるまでに要する時間が算出される。
【0076】
印刷準備時間には、第1の動作準備時間、第2の動作準備時間、第3の動作準備時間のいずれも採用することができるが、展開終了時刻から印刷エンジン170の印刷動作が開始されるまでの時間を最も短くするために、実施例1においては、最も長い第3の動作準備時間が採用される。
【0077】
印刷準備時間が算出されると、準備開始時刻算出部60において、展開終了時刻から印刷準備時間を差し引いた印刷エンジン170の印刷準備開始時刻が算出される(S16)。この印刷準備開始時刻は、図6に示すように、外部端末81から印刷ジョブが画像形成装置10に送信されたときに即座に印刷動作が行えるように、本来のスリープモード復帰タイミングを繰り上げた(前倒しにした)時刻である。
【0078】
画像形成装置10がスリープモードに遷移する(S17)と、制御部6において印刷準備開始時刻に到達したか否かが監視される(S18)。この監視は、図1に示すパネルユニット131に備えたタイマクロック1311を用いて行われる。
【0079】
印刷準備開始時刻に到達すると、パネルユニット131に備えた印刷エンジン開始命令部1312から印刷エンジン170の準備動作を開始する命令が出力され、印刷エンジン170の準備動作が開始される(S19)。印刷エンジン170の準備動作の開始に伴い、図6に示すように、印刷エンジン170はスリープモードから復帰し実質的にレディモードに遷移し、印刷エンジン170に電源が供給される。この時点において制御部6はスリープモード状態にあるが、前述の各種時刻の算出は制御部6がスリープモードに遷移する前に行われる。
【0080】
展開終了時刻(スリープモードからの復帰時刻)に到達したか否かが監視される(S20)。展開終了時刻に到達すると(S21)、同時刻において外部端末81においては印刷ジョブの生成が完了しているので、外部端末81から印刷ジョブが送信される。更に、同時刻において、印刷エンジン170の準備動作が終了し、印刷エンジン170は印刷動作可能の状態になる。
【0081】
画像形成装置10において印刷ジョブが受信される(S22)と、印刷ジョブに従い印刷動作が行われ、記録媒体100Pに印刷が行われる(S23)。
【0082】
[実施例1の特徴]
以上説明したように、実施例1に係る画像形成装置10においては、印刷動作が行われないときにスリープモードに遷移し、電力消費を減少することができる。更に、画像形成装置10においては、展開終了時刻算出部64を用いて画像情報(変換画像情報)から印刷情報への展開終了時刻を算出することによってスリープモードからレディモードへの復帰時刻(展開終了時刻と同時刻)を算出し、準備開始時刻算出部60を用いて印刷準備開始時間を算出して展開終了時刻よりも印刷準備開始時間前の印刷準備開始時刻を算出し、タイムクロック1311において印刷準備開始時刻に到達したときに印刷エンジン開始命令部1312から印刷エンジン170の準備動作を開始させることができるので、印刷ジョブが受信され次第即座に印刷動作を行うことができる。すなわち、画像形成装置100においては、スリープモードからの復帰時刻を算出してそれよりも前段階において印刷エンジン170の準備動作を行うので、スリープモードからの復帰時刻(本来のスリープモードの復帰タイミング)と同時刻若しくは極めて短時間において印刷エンジン170の印刷動作を実現することができる。
【0083】
また、実施例1に係る画像形成装置10においては、給紙トレイユニット100、搬送ユニット3、インク循環ユニット7のうち最も長い第1の動作準備時間、第2の動作準備時間、第3の動作準備時間のいずれかに基づき、印刷エンジン170の印刷準備開始時刻を算出することができるので、スリープモードからの復帰時刻から極めて短時間において印刷エンジン170を用いて印刷動作を行うことができる。
【0084】
また、実施例1に係る外部端末81においては、印刷ジョブ生成処理部811において画像情報(変換画像情報)から印刷情報を展開するとともに展開時間算出部812において展開時間を算出し、この展開時間を第1の通信処理部813を用いて送信することができる。この展開時間は、画像形成装置10においてスリープモードからレディモードへの復帰時刻の算出要素として使用される。
【0085】
更に、実施例1に係る画像形成システム1においては、画像形成装置10により得られる効果と外部端末81により得られる効果とを組み合わせた効果を得ることができる。
【0086】
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る画像形成装置10、外部端末8及び画像形成システム1において、複数の外部端末81、82からそれぞれ異なる容量を有する印刷が画像形成装置10に送信されたときの制御方法を説明するものである。
【0087】
図7に示すように、外部端末81において大容量を有する画像情報が生成されこの外部端末81からこの画像情報について印刷開始指示が行われた後に、他の外部端末82において小容量を有する画像情報が生成されこの外部端末82からこの画像情報について印刷開始指示が行われた場合であって、外部端末81において生成される印刷ジョブ(P1)に係る展開終了時刻に対して、外部端末82において生成される印刷ジョブ(P2)の印刷動作が完了する時刻が前のときには、画像形成装置10の準備開始時間算出部60は印刷ジョブ(P2)の印刷を印刷ジョブ(P1)の印刷よりも先に行う。
【0088】
外部端末81において印刷ジョブ(P1)の生成には時間を要するので、画像形成装置10において展開時間内の印刷を行うことができない。この印刷ジョブ(P1)の生成中に印刷ジョブ(P2)の印刷が完了するのであれば、印刷ジョブ(P2)を優先的に印刷することによって、画像形成装置10を有効に活用することができる。
【0089】
(その他の実施例)
上記のように、本発明を実施例1及び実施例2によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、スリープモード機能を有し消費電力を減少しつつ、スリープモードの復帰から印刷動作が完了するまでの時間を短縮することができる画像形成装置、外部端末及び画像形成システムに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…画像形成システム、2…プリントヘッド、3…搬送ユニット、6…制御部、60…準備開始時刻算出部、61…給紙トレイ動作準備時間算出部、62…搬送動作準備時間算出部、63…インク循環動作準備時間算出部、64…展開終了時刻算出部、7…インク循環ユニット、71…第1のタンク、72…第2のタンク、73…インクボトル、74…圧力調整器、75…インク循環ポンプ、76…加熱装置、77…冷却装置、8、81〜83…外部端末、810…プリンタドライバ、811…印刷ジョブ生成処理部、812…展開時間算出部、813…第1の通信処理部、814…画像情報変換部、9…通信経路、10…画像形成装置、100…給紙トレイユニット、130…第2の通信処理部、131…パネルユニット、1311…タイマクロック、1312…印刷エンジン開始命令部、151…スキャナユニット、152…ファクシミリユニット、16…記憶部、170…印刷エンジン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷エンジンにおいて印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する画像形成装置であって、
画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部と、
前記スリープモードから前記レディモードに復帰し前記印刷エンジンを用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間を算出し、前記展開終了時刻から前記印刷準備時間を差し引いた印刷エンジンの印刷準備開始時刻を算出する準備開始時刻算出部と、
前記展開終了時刻及び前記印刷準備開始時刻を刻むタイムクロックと、
前記印刷準備開始時刻に前記印刷エンジンの準備動作を開始する印刷エンジン開始命令部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷エンジンは、
記録媒体を格納する給紙トレイユニットと、
前記給紙トレイユニットから供給される前記記録媒体をプリントヘッドに搬送する搬送ユニットと、
前記プリントヘッドに印刷用のインクを循環させるインク循環ユニットと、を備え、
前記準備開始時刻算出部は、
前記給紙トレイユニットの動作に必要な第1の動作準備時間を算出する給紙トレイ動作準備時間算出部と、
前記搬送ユニットの動作に必要な第2の動作準備時間を算出する搬送動作準備時間算出部と、
前記インク循環ユニットの動作に必要な第3の動作準備時間を算出するインク循環動作準備時間算出部と、を備え、
最も長い前記第1の動作準備時間、前記第2の動作準備時間、前記第3の動作準備時間のいずれかを前記印刷準備開始時間として前記印刷準備開始時刻を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記準備開始時間算出部は、第1の印刷情報の展開に要する展開時間に基づき算出される展開終了時刻に対して、前記第1の印刷情報の展開開始時刻よりも後に展開が開始され、前記第1の印刷情報に比べて容量が小さく、かつ前記展開終了時刻よりも前に印刷動作が終了する第2の印刷情報が存在するとき、前記第1の印刷情報よりも先に前記第2の印刷情報の印刷を実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像情報を印刷情報に展開する印刷ジョブ生成処理部と、
前記印刷ジョブ生成処理部において前記印刷情報の展開に要する展開時間を算出する展開時間算出部と、
前記展開時間算出部において算出された前記展開時間を送信する第1の通信処理部と、を有する外部端末と、
印刷エンジンにおいて印刷動作を行うレディモードと印刷動作を行わずに消費電力を減少するスリープモードとの間を遷移する画像形成装置であって、
前記第1の通信処理部から送信された前記展開時間を受信する第2の通信処理部と、
前記第2の通信処理部において受信された前記展開時間に基づき画像情報から印刷情報への展開終了時刻を算出する展開終了時刻算出部と、
前記スリープモードから前記レディモードに復帰し前記印刷エンジンを用いて印刷動作が行えるまでの印刷準備時間を算出し、前記展開終了時刻から前記印刷準備時間を差し引いた印刷エンジンの印刷準備開始時刻を算出する準備開始時刻算出部と、
前記展開終了時刻及び前記印刷準備開始時刻を刻むタイムクロックと、
前記印刷準備開始時刻に前記印刷エンジンの準備動作を開始する印刷エンジン開始命令部と、を有する画像形成装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139860(P2012−139860A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292873(P2010−292873)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】