説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】データ処理量を削減させ、効率的に画像形成処理を行なうことを目的とする。
【解決手段】ページを構成するブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る垂直方向の移動量の絶対値の総和を求める垂直方向移動量算出手段と、ブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る水平方向の移動量の絶対値の総和を求める水平方向移動量算出手段と、垂直方向の移動量の絶対値の総和と、水平方向の移動量の絶対値の総和と、を比較する比較手段と、比較手段における比較の結果に基づいて、ブロック単位毎に回転制御を行う回転制御手段と、を有することによって前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に対し、PostScriptやPDF等のPDLで記述された印刷データ(描画データ)が入力されると、その印刷データが解釈されて各ページの画像データが形成される。入力される印刷データは、複数種類のオブジェクト(描画オブジェクト)の集合として構成される。描画オブジェクトとしては、例えば、図形、テキスト、その他の画像等がある。
【0003】
出力される画像データは、1ページのラスタ画像、又は圧縮形式の画像等である。画像形成装置が出力する画像は、必要に応じて一旦記憶装置に蓄積され、ページ合成や回転等の画像処理が行われた後、多くの場合、プリンタエンジンに送出され、印刷される。
【0004】
画像形成にかかる時間を削減する手法として、必要な画像形成過程を並列化する方法が考えられている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0005】
特許文献1では、線又は短冊状に分割した描画領域に対して並列処理を行う装置が開示されている。また、特許文献2では、描画対象となる二次元領域を複数のブロックに分割する画像処理装置が開示されている。
【0006】
また、ハードウェアパイプライン構成で、画像を水平方向に走査線単位で辺情報を抽出しながら画像処理を行い、高速かつ少ないバッファメモリ消費量を実現する方法がある。以下、この処理をUFR(Ultra Fast Rendering)という。
【0007】
【特許文献1】特開平9−167242号公報
【特許文献2】特開平4−170686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したUFRでは、水平方向(x座標方向)への走査線単位で描画オブジェクトの辺情報を抽出することで、辺情報の生成を行う。しかしながら、画像の種類によっては水平方向で走査する辺情報の数が多くなり、その結果、データ処理量が増大し、効率的に画像形成処理が行なえない問題があった。
【0009】
本発明は前記の問題点に鑑みなされたもので、データ処理量を削減させ、効率的に画像形成処理を行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、前記問題を解決するため、本発明は、ページを構成するブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る垂直方向の移動量の絶対値の総和を求める垂直方向移動量算出手段と、前記ブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る水平方向の移動量の絶対値の総和を求める水平方向移動量算出手段と、前記垂直方向の移動量の絶対値の総和と、前記水平方向の移動量の絶対値の総和と、を比較する比較手段と、前記比較手段における比較の結果に基づいて、前記ブロック単位毎に回転制御を行う回転制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
係る構成とすることにより、ブロック単位毎に描画オブジェクトの軌跡に係る、水平方向移動量の絶対値の総和と、垂直方向移動量の絶対値の総和とを求め、比較し、比較結果に応じて、ブロックの回転制御を行うことができる。
【0012】
したがって、例えば、比較の結果、垂直方向移動量の絶対値の総和が、水平方向移動量の絶対値の総和より大きいブロックについては、90度回転させることができる。90度回転させることによって、このブロック上の描画オブジェクトは、垂直方向移動量の絶対値の総和が、回転前に比べて少なくなる。つまり、水平方向に走査線単位で辺情報を抽出するUFRにおいて、走査線が描画オブジェクトを横切る確率が低くなる。よって、データ処理量を削減させ、効率的に画像形成処理を行なうことができる。
【0013】
また、前記問題を解決するため、本発明は、画像形成方法としてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、データ処理量を削減させ、効率的に画像形成処理を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1は、画像形成装置の一例のハードウェア構成図(その1)である。画像形成装置は、例えばPostScriptやPDF等のPDLで記述された印刷データを入力とし、PDLに基づいて画像データを形成する。
【0017】
図1に示されるように画像形成装置は、入力処理部としてのブロック分割部1と、一つ以上の画像処理部2と、描画オブジェクト情報やページ画像データ等が書き込まれるメモリ3とによって構成される。
【0018】
ブロック分割部1は、PDLで記述された印刷データを受け取り、印刷データをPDLの規約に沿って解釈する機能と、非描画命令を実行する機能と、描画オブジェクト毎に描画命令(コマンド群)を切り出す機能と、を有する。また、ブロック分割部1は、描画オブジェクトそのものの情報と、描画オブジェクトとブロックとの対応関係の情報と、をメモリ3に格納する機能を有する。ここでブロックとは、1ページ内を格子状に分割する各領域であり、画像形成装置内で予め定義されている値とする。
【0019】
例えば、ブロック分割部1は、ページ記述言語の印刷データから抽出した座標情報から描画オブジェクトの存在する可能性のある領域(以下、概形という)を求める。そして、ブロック分割部1は、各ブロックが描画オブジェクトの概形を含むか否かによってブロックに関連づける描画オブジェクトを選択する。
【0020】
例えば、ブロック分割部1は、描画オブジェクト毎に、描画オブジェクトが包含する領域に係る領域データを生成し、生成した領域データと、ブロックとの位置関係の重複に基づいて、描画オブジェクトと、ブロックとを関連付ける。
【0021】
画像処理部2は、ハードウェアパイプライン構成で、画像を水平方向に走査線単位で辺情報を抽出しながら画像処理を行い、高速かつ少ないバッファメモリ消費量を実現する。 画像処理部2は、描画コマンド生成部702と、エッジ処理部703と、レベル優先度判定部704と、色生成部705と、色合成部706と、ピクセル展開処理部707とによって構成される。
【0022】
描画コマンド生成部702は、システムバスにアクセスしてジョブを読み込み、符号703〜符号706からなる後段のパイプラインモジュールに対する描画コマンドを発行する。
【0023】
エッジ処理部703は、描画コマンド生成部702によって発行された描画コマンドに従ってジョブに含まれる辺レコードを読み取り、走査線単位で描画オブジェクトの辺情報を抽出する。また、エッジ処理部703は、抽出した辺情報を走査線方向(x座標)の昇順にソートした後、レベル優先度判定部704に前記辺情報をメッセージとして転送する。
【0024】
レベル優先度判定部704は、描画コマンド生成部702によって発行された描画コマンドに従ってジョブに含まれるレベルテーブルと、エッジ処理部703によって生成された辺情報とを読み取る。続いて、レベル優先度判定部704は、走査線毎に各レベルの優先度と、活性化された(描画に影響する)画素範囲とを決定する。そして、レベル優先度判定部704は、各走査線の活性化された画素範囲の情報を優先度順にソートして、他のレベルの画素との関係情報と共に画素範囲情報とし、色生成部705に画素範囲情報を転送する。
【0025】
色生成部705は、描画コマンド生成部702によって発行された描画コマンドに従ってジョブに含まれるフィルテーブルと、レベル優先度決定部704によって生成された画素範囲情報とを読み取る。続いて、色生成部705は、レベル毎に活性化された画素の色を決定し、色合成部706に活性化された画素の色情報をレベル優先度判定部704から転送されてきた画素範囲情報と共に転送する。
【0026】
色合成部706は、描画コマンド生成部702によって発行された描画コマンドに従ってレベル優先度決定部704によって生成された各レベルの画素範囲情報と、色生成部705によって決定された画素の色情報とに基づいて画素単位に色を決定する。そして、色合成部706は、画素の最終的な色を生成する。
【0027】
ピクセル展開部707は、色合成部706によって生成された画素の最終的な色の内、ランレングス形式で表現された画素情報をピクセルに展開し、接続された外部機器に送出する。
【0028】
描画コマンド生成部702は、ブロック分割部1より渡されたブロックに係るブロック情報を用いて画像処理部2が処理する描画コマンド(中間言語)を生成する。描画コマンドは、描画オブジェクトの形状、描画オブジェクトの色情報や描画形式、又はそれらに対するポインタ等を持つ。
【0029】
画像を水平方向に走査線単位で辺情報を抽出しながら画像処理を行っていくことで、高速なハードウェアパイプライン構成を採用することができる。また、少ないバッファメモリで処理が可能となる。
【0030】
この走査線単位で辺情報を抽出しながら画像処理の一例を図2に示す。図2は、走査線単位で辺情報を抽出しながら画像処理を行なう概念図である。画像形成装置は、図2のx0、x1、x2、x3の順に図形(画像)を走査していく。
【0031】
図3に、図1に示したブロック分割部1に入力されるPostScirpt言語で記述された印刷データの一例を示す。また、この印刷データによって描画されるデータを図4に示す。符号201、符号202、符号203は各描画オブジェクトの描画命令に相当し、それぞれ円オブジェクト302、三角形オブジェクト304、曲線オブジェクト306を描画する。
【0032】
図5、図6、図7にブロック分割部1が生成する描画オブジェクト情報の一例を示す。図5は、円オブジェクト302、三角形オブジェクト304、曲線オブジェクト306の概形(領域情報)を示す図である。図6は、各描画オブジェクトの情報を格納する描画オブジェクトテーブルの一例を示す図である。図7は、ブロックと、各描画オブジェクトとの対応関係を示す対応テーブル(対応関係情報)の一例を示す図である。
【0033】
ブロック分割部1は、図6に示される描画オブジェクトテーブルと、図7に示される対応テーブルとを作成し、CPU4に作成終了を通知する。CPU4は、図6に示される描画オブジェクトテーブルと、図7に示される対応テーブルとを参照し、各ブロックに含まれる描画オブジェクト情報を中間言語形式に変換して画像処理部2に分配する。
【0034】
以下、図3の例を用いて、ブロック分割部1の動作を説明する。
図3の符号204は、これから描画しようとしている図形の形状を定義している記述部分である。ここでは、中心の座標が(160、340)で半径70 の円オブジェクト302が定義されている。
【0035】
ブロック分割部1は、新しい描画オブジェクトの定義が開始されると、新しい描画オブジェクトを図6に示される描画オブジェクトテーブルに記録する。符号201の場合、ブロック分割部1は、描画オブジェクトテーブルのエントリ501に、円オブジェクト302の描画命令列(符号201)へのポインタを渡す。
【0036】
ブロック分割部1は、このようにPDLへのポインタを渡す他、描画オブジェクトの描画情報を実際にコピーしてもよい。
【0037】
符号204の解釈終了後、ブロック分割部1は、描画オブジェクトの中心座標(160、340)と、半径70とから、符号204が示す描画オブジェクトが取りうるX及びY座標の範囲を計算する。これは、図4の矩形領域301に相当する。この円のXの最小値は、(X、Y)=(160−70、340−70)=(90、270)、同様に最大値は(X、Y)=(160+70、340+70)=(230、410)となる。よって概形はエントリ400に示されるようになる。また、ブロック分割部1が、描画オブジェクト情報を描画オブジェクトテーブルのエントリ501に記録したので、エントリ400はポインタ403を持つ。
【0038】
矩形領域301が求まると、ブロック分割部1は、座標計算を行い、矩形301を含む描画領域300内のブロック(ブロック307、308、309、310、311、312、313、314、315)を求める。ブロック分割部1は、これらのブロックを、オブジェクト302を含む可能性があるブロックであると判定する。
【0039】
図7に示される対応テーブルは、描画領域300内の各ブロック内に存在する可能性があるオブジェクト(オブジェクトの情報)を保持している。図7に示される対応テーブルのブロック番号は、図4の左上からX方向にブロック番号を0、1、2、3、・・・としている。
【0040】
ブロック分割部1は、矩形領域301を含む可能性があるエントリとして、ブロック番号0、1、2、4、5、6、8、9、10に、描画オブジェクトテーブへのポインタ0(符号403)をコピーする。
【0041】
再び、図3の説明に戻り、符号205で示される記述部分は、描画の際に用いる色の指定であり、ここでは緑が指定されている。
【0042】
符号206で示される記述部分は、図形内部の塗り潰し命令であり、ここでは、その前に定義されている円の内部を緑色で塗り潰す処理が指示されている。
【0043】
符号207は、三角形オブジェクト304の形状を定義している記述部分である。
最初に、moveto命令によってペン座標を(X、Y)=(180、280)に移動させるよう定義されている。また、ここから、順にlineto命令によって座標(120、 70)、(315、170)、(180、280)に直線を引き、三角形を描くよう定義されている。
【0044】
ブロック分割部1は、符号201のときと同様に、新しい描画オブジェクトを図6に示される描画オブジェクトテーブルに記録する。新しい描画オブジェクトは、図6に示される描画オブジェクトテーブルのエントリ502に記録される。このエントリには、ブロック分割部1によって、符号202へのポインタが渡される。
【0045】
符号207で示される記述部分で定義されているオブジェクトは直線から構成される図形である。よって、ブロック分割部1は、符号207で示される記述部分の解釈を終了するまで、描画オブジェクトの各頂点の最大値及び最小値を単純に更新し続けることでオブジェクトを包含する矩形領域を特定することができる。
【0046】
このようにして求まる概形が、図4の矩形領域303で示される。ブロック分割部1は、3つの頂点の座標から、X及びYの最小値は(X、Y)=(120、70)、最大値は(X、Y)=(315、280)であることがわかる。ブロック分割部1は、図5に示すエントリ401にこれらの値を記録する。また、ブロック分割部1が、描画オブジェクト情報を描画オブジェクトテーブルのエントリ502に記録したので、エントリ401はポインタ404を持つ。
【0047】
符号207の概形が求まると、ブロック分割部1によって、図7に示される対応テーブルが更新される。ブロック分割部1は、矩形領域303を含む可能性があるエントリとして、ブロック番号9、10、11、13、14、15、17、18、19に、描画オブジェクトテーブルへのポインタ1(符号404)をコピーする。
【0048】
再び、図3の説明に戻り、符号208の記述部分は、符号207で定義した三角形の色を定義する。ここでは、赤が指定されている。
【0049】
符号209で示される記述部分は、三角形を符号208で定義した赤色に塗り潰す処理が指示されている。
【0050】
符号210は、曲線306のベジエ曲線の描画を指示している記述部分である。ここでは最初に、ペン座標を(30、20)に移動させるよう定義されている。そして、(30、20)と、(85、120)と、(160、60)と、(140、20)との4点で囲まれるベジエ曲線を描くよう定義されている。
【0051】
ブロック分割部1は、符号201や、符号202のときと同様に、新しい描画オブジェクトを図6に示される描画オブジェクトテーブルに記録する。新しい描画オブジェクトは、図6に示される描画オブジェクトテーブルのエントリ503に記録される。このエントリには、ブロック分割部1によって、符号203へのポインタが渡される。
【0052】
符号210で示される記述部分で定義されているオブジェクトは、ベジエ曲線で構成される図形である。よって、ブロック分割部1は、符号207のときと同様に、各制御点のX及びYの最小値及び最大値から描画オブジェクトを包含する矩形領域を特定することができる。
【0053】
このようにして求まる概形が、図4の矩形領域305で示される。ブロック分割部1は、4つの頂点の座標から、X及びYの最小値は(X、Y)=(30、20)、最大値は(X、Y)=(160、120)であることがわかる。ブロック分割部1は、図5に示すエントリ402にこれらの値を記録する。また、ブロック分割部1が、描画オブジェクト情報を描画オブジェクトテーブルのエントリ503に記録したので、エントリ402はポインタ405を持つ。
【0054】
符号210の概形が求まると、ブロック分割部1によって、図7に示される対応テーブルが更新される。ブロック分割部1は、矩形領域305を含む可能性があるエントリとして、ブロック番号13、17に、描画オブジェクトテーブルへのポインタ2(符号405)をコピーする。
【0055】
再び、図3の説明に戻り、符号211の記述部分は、以上で定義した処理を1ページとして出力することを指示する命令である。この命令によって、描画ブロック分割部1は、1ページの描画終了を検知する。描画が終了すると、ブロック分割部1は、CPU4に描画終了(テーブルの作成終了)を通知する。
【0056】
以上のようにPostScriptによる図形記述では、書き込むべき図形についての定義や、色の指定等の描画処理におけるオプションの指示と、描画の種類の指定と、描画処理の実行指示と、からなっている。この実行指示をブロック分割部1が解釈し、対応テーブルと、描画オブジェクトテーブルとを作成した時点で、各ブロック間の依存関係は解消できる。
【0057】
この時点では、各ブロックは、例えばブロック307のように実際には描画されない描画オブジェクト情報(ブロック307の例では円オブジェクト302の情報)をもつ場合がある。このような余分な描画オブジェクト情報は、画像処理部2のエッジ検出処理部3において、描画オブジェクトと、スキャンライン及び/又はブロック境界との正確な交点を求める時点で除外される。また、各ブロックは描画オブジェクトがブロック内に存在する場合、必ず描画オブジェクトの情報をもつため、ブロック全体に描画オブジェクトが覆い被さっているような場合でも正しく描画を行うことができる。
【0058】
(実施形態2)
本実施形態では、上述した実施形態1と異なる点について主に説明を行なう。図8は、画像形成装置の一例のハードウェア構成図(その2)である。図8に示される画像形成装置は、図1に示した画像形成装置に比べて、回転制御部5と、記憶部6と、が含まれている。
【0059】
回転制御部5は、ブロック毎に、描画オブジェクトの軌跡に関して、Y方向(垂直方向)移動量の絶対値の総和と、X方向(水平方向)移動量の絶対値の総和と、を求める。次に、回転制御部5は、Y方向移動量の絶対値の総和(Y方向の軌跡の積分値)と、X方向移動量の絶対値の総和(X方向の軌跡の積分値)と、を比較する。そして、回転制御部5は、Y方向移動量の絶対値の総和が、X方向移動量の絶対値の総和より大きいか否かを判断する。つまり、回転制御部5は、以下に示す(式1)が成り立つか否かを計算する。
Y方向移動量の絶対値の総和 > X方向移動量の絶対値の総和 ・・・(式1)
【0060】
図9は、ブロックの回転制御を説明するための図である。図9に示されるように、回転制御部5は、(式1)が成り立つと判定すると、ブロックを90度回転するよう制御する。一方、回転制御部5は、(式1)が成り立たないと判定すると、ブロックを回転させない。
【0061】
回転制御部5は、ブロック毎に、回転を行なったか否かの情報(臨時回転情報)を記憶部6に格納する。なお、回転制御部5は、この臨時回転情報を、図7に示したテーブルに格納するようにしてもよい。
【0062】
このような処理を行うことで、ブロック上の描画オブジェクトはY方向の移動量の絶対値の総和が、X方向の移動量の絶対値の総和より少ない状態となる。よって、画像を水平方向に走査線単位で辺情報を抽出しながら処理を行っていくUFRにおいて、走査線が描画オブジェクトを横切る(Y方向の描画移動と交わる)確率が低くなる。特にオブジェクトが一つのブロック内に完全に内包される場合には、確実に、ブロック内で走査線が描画オブジェクトを横切る回数が減少する。
【0063】
よって、データ処理量を削減させ、効率的に画像形成処理を行なうことができる。
【0064】
回転制御部5は、臨時回転情報に基づいて、90度回転させたブロックに係る、ピクセル展開処理部707より出力されたピクセルマップデータは、90度逆に回転させる。
【0065】
本実施形態では、説明の簡略化のため、三角形の描画オブジェクトを用いて説明を行なった。しかしながら(式1)は、ベジェスプライン等、任意の自由曲線の指示座標に関して適用でき、極めて容易に計算できる。よって、例えば1ページ全体にベジェ曲線がスパゲティのように描かれているような複雑な図形であったとしても、容易かつ高速に計算ができる。
【0066】
(実施形態3)
本実施形態では、上述した実施形態2と異なる点について主に説明を行なう。上述した実施形態2では、ブロック毎に、描画オブジェクトの軌跡に関して、Y方向(垂直方向)移動量の絶対値の総和と、X方向(水平方向)移動量の絶対値の総和と、を求めて、(式1)が成り立つか否かを判断した。
【0067】
しかしながら、描画オブジェクトに係る複数のブロックを一つの矩形領域と考え、矩形領域毎に、描画オブジェクトの軌跡に関して、Y方向(垂直方向)移動量の絶対値の総和と、X方向(水平方向)移動量の絶対値の総和と、を求めてもよい。そして、この矩形領域毎に(式1)が成り立つか否かを判断し、矩形領域に係るブロックを矩形領域単位又はブロック単位に回転させるようにしてもよい。
【0068】
本実施形態における、移動量の絶対値の総和の計算の一例を、図3及び図4を用いて説明する。
上述したように、符号207は、三角形オブジェクト304の形状を定義している記述部分である。最初に、moveto命令によってペン座標を(X、Y)=(180、280)に移動させるよう定義されている。また、ここから、順にlineto命令によって座標(120、 70)、(315、170)、(180、280)に直線を引き、三角形を描くよう定義されている。
【0069】
この場合、回転制御部5は、Y方向の移動量の絶対値の総和を
Y方向の移動量の絶対値の総和 = |70 − 280| + |170 − 70| + |280 − 170| = 420と算出する。
【0070】
また、回転制御部5は、X方向の移動量の絶対値の総和を
X方向の移動量の絶対値の総和 = |120 − 180| + |315 −120| + |180 − 315| = 390と算出する。
【0071】
したがって、この場合、回転制御部5は、(式1)が成り立つと判断する。
【0072】
回転制御部5は、(式1)が成り立つと判断すると、三角形オブジェクト304に関する矩形領域303に係るブロックを矩形領域単位又はフロック単位で回転させる。
【0073】
以上、上述した各実施形態によれば、データ処理量を削減させ、効率的に画像形成処理を行なうことができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】画像形成装置の一例のハードウェア構成図(その1)である。
【図2】走査線単位で辺情報を抽出しながら画像処理を行なう概念図である。
【図3】PostScirpt言語で記述された印刷データの一例を示す図である。
【図4】図3に示される印刷データで描画されるデータの一例を示す図である。
【図5】円オブジェクト302、三角形オブジェクト304、曲線オブジェクト306の概形(領域情報)を示す図である。
【図6】各描画オブジェクトの情報を格納する描画オブジェクトテーブルの一例を示す図である。
【図7】ブロックと、各描画オブジェクトとの対応関係を示す対応テーブル(対応関係情報)の一例を示す図である。
【図8】画像形成装置の一例のハードウェア構成図(その2)である。
【図9】ブロックの回転制御を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
1 ブロック分割部
2 画像処理部
3 メモリ
4 CPU
5 回転制御部
6 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページを構成するブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る垂直方向の移動量の絶対値の総和を求める垂直方向移動量算出手段と、
前記ブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る水平方向の移動量の絶対値の総和を求める水平方向移動量算出手段と、
前記垂直方向の移動量の絶対値の総和と、前記水平方向の移動量の絶対値の総和と、を比較する比較手段と、
前記比較手段における比較の結果に基づいて、前記ブロック単位毎に回転制御を行う回転制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記回転制御手段は、前記比較手段における比較の結果、前記垂直方向の移動量の絶対値の総和が、前記水平方向の移動量の絶対値の総和より大きい場合、前記ブロックを90度回転させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記回転制御手段は、前記ブロックに関する描画が実行された後、前記90度回転させた前記ブロックを元に戻すことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
ページ内の描画オブジェクト毎に描画命令を抽出し、前記ブロックと、前記描画オブジェクトと、を関連付けるブロック分割手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ブロック分割手段は、
前記描画オブジェクト毎に、描画オブジェクトが包含する領域に係る領域データを生成する領域データ生成手段と、
前記領域データと、前記ブロックとの位置関係の重複に基づいて、前記描画オブジェクトと、前記ブロックとを関連付ける関連付け手段と、
を有することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置における画像形成方法であって、
ページを構成するブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る垂直方向の移動量の絶対値の総和を求める垂直方向移動量算出ステップと、
前記ブロック単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る水平方向の移動量の絶対値の総和を求める水平方向移動量算出ステップと、
前記垂直方向の移動量の絶対値の総和と、前記水平方向の移動量の絶対値の総和と、を比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおける比較の結果に基づいて、前記ブロック単位毎に回転制御を行う回転制御ステップと、
を有すること
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
少なくともページを構成するブロックを一つ以上含む、描画オブジェクトに係る領域単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る垂直方向の移動量の絶対値の総和を求める垂直方向移動量算出手段と、
前記領域単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る水平方向の移動量の絶対値の総和を求める水平方向移動量算出手段と、
前記垂直方向の移動量の絶対値の総和と、前記水平方向の移動量の絶対値の総和と、を比較する比較手段と、
前記比較手段における比較の結果に基づいて、前記領域単位又は前記ブロック単位毎に回転制御を行う回転制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置における画像形成方法であって、
少なくともページを構成するブロックを一つ以上含む、描画オブジェクトに係る領域単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る垂直方向の移動量の絶対値の総和を求める垂直方向移動量算出ステップと、
前記領域単位毎に、描画オブジェクトの軌跡に係る水平方向の移動量の絶対値の総和を求める水平方向移動量算出ステップと、
前記垂直方向の移動量の絶対値の総和と、前記水平方向の移動量の絶対値の総和と、を比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおける比較の結果に基づいて、前記領域単位又は前記ブロック単位毎に回転制御を行う回転制御ステップと、
を有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−200141(P2007−200141A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−19511(P2006−19511)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】