説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】画像形成装置が特定のPCとセッションを確立しているときでも、他のPCからのPDLデータを受信する。
【解決手段】PC11が画像形成装置10にセッションの確立要求を出し(S101)、その確立要求に対し画像形成装置10が応答してセッションを確立する(S102)。PC12からPDLデータが送信されると(S105)、画像形成装置10はPDLデータを検知してPC11と確立しているセッションを切断する処理を行う(S106)。セッションを切断すると、画像形成装置はPC12から送信されたPDLデータの印刷処理を行い(S107)、その印刷処理が終了したら切断したPC11とのセッションを再度確立し直す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
複数のホスト装置とネットワーク接続可能な画像形成装置及び画像形成方法に関し、特に、ホスト装置と通信を行うためのセッションを確立中に、他のホスト装置からの印刷データを検知したとき、そのセッションを切断又は無効にして、前記印刷データを受信し、印刷できるようにした画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台のPC(Personal Computer)などのホスト装置と一台又は複数台のレーザプリンタなどの画像形成装置とをLAN(Local Area Network)などを介して接続し、ホスト装置から印刷データを送信して画像形成装置で印刷できるネットワークシステムが知られている。
【0003】
このようなネットワークシステムにおいて、複数台の画像形成装置を設置しているとき、一台のホスト装置から印刷データを送信して印刷要求を行う際に、ユーザは複数台の画像形成装置からすぐに印刷できる画像形成装置、即ち待ち状態の印刷ジョブが少ない画像形成装置を選択することができる。
しかしながら、すぐに印刷できる画像形成装置を選択して印刷データを送信し、印刷要求を行っても、その印刷要求の前の印刷処理によって用紙切れやトナー切れなどが発生すると、実際にはすぐに印刷を行うことができない。即ち、すぐに印刷できる画像形成装置をユーザが確実に選択することは難しいという問題がある。
【0004】
そこで、ホスト装置から複数台の画像形成装置に、印刷可能か否かを確認する応答要求を出し、最初に印刷可能である応答が返ってきた画像形成装置のみに印刷データを送信することで複数台の画像形成装置のうち、すぐに印刷できる画像形成装置を自動的に選択することができ、印刷待ち時間を解消することができる情報処理装置及び印刷制御装置及びデータ処理方法及び記憶媒体が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、複数台の画像形成装置を設置していないとき、即ち、一台の画像形成装置を複数台のホスト装置で利用するときは、画像形成装置を選択することはできず、あるホスト装置から複数ページや複数ジョブなどの大量の印刷要求があると、それらの大量の印刷処理が終了してからでなければ他のホスト装置からの印刷要求は実行できない。
従って、他のホスト装置からの印刷要求が急を要する印刷であるときや、少量のページの印刷であるときでも、大量印刷が終了するのを待たなければいけないという問題があった。
【0006】
そこで、ユーザが印刷データ毎に優先度を設定することができ、ある印刷データを印刷中に、画像形成装置がより優先度が高い印刷データを受信したときは、印刷中のジョブを中断し、優先度の高い印刷データを先に印刷することができる印刷システムが提案されている(特許文献2参照)。
この印刷システムによれば、画像形成装置が大量印刷を行っているときでも、大量印刷が終了するのを待たずに優先度の高い印刷データを割り込ませることができ、急を要する印刷などを先に処理することができる。
【0007】
ところで、ホスト装置で作成した文書などをページ単位で印刷する際に、この文書の例えば文字の位置や文字種を画像形成装置に指示するためのプログラミング言語であるPDL(Page Description Language)において、ホスト装置が印刷データをプリンタドライバでPDLデータ(PDLで記述された印刷データ)に変換して画像形成装置に送信する際に、ホスト装置と画像形成装置とでセッション(データを交換するために2つの装置間で作成される論理的な接続)を確立し、張り続けることが必要なPDLがある。
【0008】
図10はセッションを張り続ける必要があるPDLを説明するための図である。
図に示しているPC102とプリンタ101を繋ぐ直線は確立したセッションを表しており、PC102とプリンタ101はセッションを張り続けながら通信を行っている。一方、PC103が他のPDLに変換された印刷データ(以下、他のPDLデータという)の送信を試みていることを示している(図中矢印)。
このPDLを使用したときのセッションは、常に接続状態を維持しているため、印刷を行っていないときでも、他のホスト装置などからの他のPDLデータを受け付けない。そのため、PC103が送信する他のPDLデータは、PC102とプリンタ101間のセッションが切断されない限り、プリンタ101に受信されず、印刷が行われないため非常に効率が悪い。
【0009】
ところで、このPDLを複数のホスト装置が使用するときは、画像形成装置はこのセッションを複数のホスト装置と繋ぐことができる。
図11は複数のホスト装置とセッションを確立した画像形成装置を説明する図である。
図示のように、プリンタ101は計6台のPC106〜111とすべて同一のPDLを使用して、セッションを確立している。しかしながら、通信できるセッションは一つであり、例えばPC106と通信しているときは、プリンタ101は他のPCからPDLデータを受信しない。
【0010】
特許文献2に記載された印刷システムでは、印刷データに優先度を設定することができるが、ホスト装置と画像形成装置間に上記セッションが確立しているときは、画像形成装置は印刷データ自体を受信することができないため、優先度が印刷データに設定されていても、それを利用して割込印刷を行うことができない。
従って、一台の画像形成装置を複数台のホスト装置で利用するときに、このセッションを張り続ける必要があるPDLを使用して通信を行うと、画像形成装置が印刷を行っていないときにその他のホスト装置がPDLデータを送信しても、通信中のセッションが切断されない限り印刷が行えず、印刷効率が悪いという問題がある。
【特許文献1】特開2002−202874号公報
【特許文献2】特開2005−267176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、その目的は、たとえセッションを張り続ける必要があるPDLを使用しているときであっても、印刷処理が行われていないときは、他のホスト装置からPDLデータによる印刷ができるようして、ユーザが印刷処理を待つ時間を減らし、ひいては印刷効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、ホスト装置とセッションを確立して通信する通信手段と、該通信手段の制御を行う制御手段を備えた画像形成装置であって、画像形成装置に送信された印刷データを検知する検知手段を有し、前記ホスト装置と前記通信手段とのセッション確立中に前記検知手段が印刷データを検知したとき、前記制御手段は、ホスト装置とのセッションを切断又は無効にして前記通信手段が前記印刷データを受信するように制御することを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された画像形成装置において、前記ホスト装置と前記通信手段とのセッション確立中に前記検知手段で検知した印刷データ送信用プロトコルと前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルとの一致、不一致を判定するプロトコル判定手段を有し、該プロトコル判定手段が不一致と判定したとき、前記制御手段はホスト装置とのセッションを切断又は無効にするように制御することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載された画像形成装置において、ホスト判定手段を有し、該ホスト判定手段は、前記プロトコル判定手段が一致と判定したとき、前記検知手段で検知した印刷データが前記ホスト装置からのものか他のホスト装置からのものかを判定し、前記他のホスト装置からの印刷データであると判定したとき、前記制御手段は前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にするように制御することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載された画像形成装置において、前記ホスト判定手段は、前記検知手段で検知した印刷データが前記ホスト装置からのものか他のホスト装置からのものかをIPアドレス又はMACアドレスに基づいて判定することを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された画像形成装置において、
画像形成装置に入力されたプロトコルの優先度を設定する優先度設定手段と、設定された優先度を記憶する記憶手段と、前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度と前記検知手段で検知した印刷データ送信用プロトコルの優先度の高低を判定する優先度判定手段と、前記優先度判定手段が、前記検知手段で検知した印刷データ送信用プロトコルの優先度が前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度よりも高いと判定したとき、前記制御手段は前記セッションを切断又は無効にするように前記通信手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
請求項6の発明は、印刷データを受信し、受信した印刷データの画像形成を行う画像形成方法であって、ホスト装置とセッションを確立する工程と、画像形成装置に送信された印刷データを検知する工程と、前記ホスト装置とセッション確立中に前記検知工程で印刷データを検知したときに、前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、を備えることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項6に記載された画像形成方法において、前記ホスト装置とセッション確立中に前記検知工程で検知した印刷データのプロトコルと前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルとの一致、不一致を判定するプロトコル判定工程と、前記不一致と判定したとき、前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、を備えることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6又は7に記載された画像形成方法において、前記プロトコル判定工程にて一致と判定したとき、前記検知工程にて検知した印刷データが前記ホスト装置からのものか他のホスト装置からのものかを判定するホスト判定工程と、前記ホスト判定工程にて他のホスト装置からの印刷データであると判定したとき、前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
請求項9の発明は、請求項6ないし8のいずれかに記載された画像形成方法において、画像形成装置に入力されるプロトコルの優先度を設定する優先度設定工程と、設定されたプロトコルの優先度をメモリに記憶させる工程と、前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度と前記検知工程にて検知した印刷データに使用されているプロトコルとの優先度の高低を判定する優先度判定工程と、前記優先度判定工程にて前記検知工程で検知した印刷データに使用されているプロトコルの優先度が前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度よりも高いと判定したとき前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、備えることを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載された画像形成方法において、前記ホスト装置とのセッションを切断したとき、前記画像形成装置に送信された印刷データの画像形成が終了後、前記セッションを再確立する工程を備えることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セッションを張り続ける必要があるPDLを使用しているときでも他のホスト装置からのPDLデータの印刷ができるため、ユーザが印刷処理を待つ時間を減らし、ひいては印刷効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る一実施形態における画像形成装置を、添付図面を用いて説明する。
図1は本実施形態に係る画像形成装置の要部のブロック図である。
画像形成装置はCPU1、RAM2、ROM3、画像メモリ4、I/F(インターフェース)部5、操作パネル制御部6、操作パネル7を備えている。CPU1はメモリに格納されている、例えば後述するプロトコル判定プログラムや優先度判定プログラムを読み込んで、印刷制御を実行する制御手段である。
RAM2はCPU1がプログラムを実行するときの一時的なプログラムの記憶場所であり、画像形成装置の各種設定データなどを格納する場所である。ROM3は、CPU1が実行する各種プログラムを格納している。画像メモリ4はホスト装置などから受信した画像データを一時保存しておく領域である。I/F部5は画像形成装置がホスト装置と通信するための通信手段である。
操作パネル7は、外部表示機能としてメッセージ等を表示したり、ユーザが情報等を入力する表示手段及び入力手段であり、操作パネル制御部6は操作パネル7から入力された情報を処理するCPU1の機能であり、操作パネル7に入力された情報などを画像形成装置に設定する設定手段である。
【0015】
図2は本実施形態に係る画像形成装置と複数台のPCが接続されている状態を説明する図である。
画像形成装置10は3台のPC11〜13とネットワーク14を介して接続しており、各PC11〜13と画像形成装置10間でセッションを確立して、通信を行うことができる。
【0016】
本実施形態において、画像形成装置10はセッションを張り続ける必要があるPDLを使用して一台又は複数台のPCと通信しているときに、セッションを張って通信しているPCとは別のPC(以下、別のPCという)からPDLデータが送信されたときは、確立しているセッションを切断するか、または切断せずにセッションを張って通信しているPCとの送受信のみを無効にして、別のPCからPDLデータを受信し、印刷することができる。
なお、本実施形態では確立しているセッションを切断するか、切断せずに受信のみをできない状態にするかを操作パネル7から設定でき、操作パネル制御部6により、操作パネル7に入力された設定情報をRAM2に保存する。
【0017】
図3は画像形成装置10において、PCとセッションを確立しているときに別のPCから画像形成装置10へのPDLデータの送信があったとき、確立しているセッションを切断するように設定している場合における画像形成装置10の処理を説明するための模式図である。
なお、この処理は図2に示したネットワーク14上で行われており、以下説明する処理に関しても同様である。
図3Aは、PC11と画像形成装置10とがセッションを張り続ける必要があるPDLを使用して通信を行っている際に、PC12からPDLデータが送信された状態を示している。
PC12から画像形成装置10へPDLデータが送信されると、画像形成装置10へ送信されたPDLデータを検知するCPU1内の検知手段がPDLデータを検知して、画像形成装置10は確立しているセッションを切断する処理を実行し、PC12からPDLデータを受信する。なお、図中はさみのマークはセッションを切断する処理を模式的に示している。
【0018】
図3Bは、確立しているセッションを切断する設定において、PC12から送信されたPDLデータの印刷処理が終了した状態を示している。
PC12から送信されたPDLデータの印刷処理が終了すると、画像形成装置10は切断したPC11とのセッションを再度確立し直す処理を実行する。なお、図中バンドエイドのマークは切断されたセッションを確立し直す処理を模式的に示している。
【0019】
図4は画像形成装置10において、PCとセッションを確立しているときに別のPCから画像形成装置10へのPDLデータの送信があったとき、確立しているセッションを切断せずに無効にして、セッションを確立しているPCとの送受信のみを行えないようにする設定における画像形成装置10の処理を説明するための模式図である。
図4は、図3Aと同様にPC11と画像形成装置10とがセッションを張り続ける必要があるPDLを使用して通信を行っている際に、PC12からPDLデータが送信された状態を示している。
PC12から画像形成装置10へPDLデータが送信されると、前述した検知手段がPDLデータを検知して、画像形成装置10は確立しているセッションは切断せずに、PC11との送受信を無効にし、PC12からのPDLデータを受信する。
なお、PC11との送受信を無効にしたときに、PC11から画像形成装置10へPDLデータが送信されたときは、画像形成装置10はそのPDLデータは受信せず、エラーメッセージ等をPC11へ返す。
【0020】
ここで、図3に示した画像形成装置10の処理においては、画像形成装置10に別のPCからPDLデータが画像形成装置10に送信されたとき、PCと確立しているセッションを切断する設定にして、PC12からPDLデータが画像形成装置10に送信されたとき、PC12から送信されたPDLデータの印刷が終了した際には、画像形成装置10はPC11と再度セッションを確立しないとPC11からのPDLデータの印刷処理を再開することはできない。
【0021】
図4に示した画像形成装置10の処理においては、画像形成装置10に別のPCからPDLデータが画像形成装置10に送信されたとき、PCと確立しているセッションは切断せずにPCとの送受信のみを無効にする設定にして、PC12から送信されたPDLデータの印刷が終了した際には、セッションを切断していないので、PC12からのPDLデータの印刷が終了すれば、すぐにPC11との通信を再開することができる。
つまり、セッションを切断しない方が、新たにセッションを繋ぎ直す必要が無いため、通信再開までのスピードは速いが、セッションの切断を行う方がセッションの接続中にデータの盗聴などが行われることがないため、セキュリティの面では優れている。従って、セッションを切断する設定にするか、セッションを切断せずにPCとの送受信のみを無効にする設定にするかはユーザの判断による。
【0022】
図5は画像形成装置がPCとセッションを確立して通信をしているときに、他のPCからPDLデータが送信されたときの画像形成装置及び各PCの処理を示すシーケンス図である。
本シーケンス図は、図2に示したPC11が画像形成装置10とセッションを確立し、そこでPC12がPDLデータを送信するときの処理を示している。なお、このときの画像形成装置10は、他のPC(セッションを確立していないPC)からPDLデータを受信したときは、セッションを切断する設定になっている。
【0023】
まず、PC11は画像形成装置10にセッションの接続要求を出す(S101)。画像形成装置10はセッションの接続要求に対して応答し(S102)、セッションを確立する。
セッションが確立すると、PC11は画像形成装置10に対してPDLデータを送信する(S103)。なお、このPDLデータは、セッションを張り続ける必要があるPDLデータとする。
画像形成装置10はPC11から受信したPDLデータの印刷処理を行う(S104)。なお、画像形成装置10が印刷処理を行っている間は、他のPCからのPDLデータは受信しない。
【0024】
印刷処理が終了すると、PC12がPDLデータを画像形成装置10に送信する。検知手段がPDLデータを検知すると、画像形成装置10は印刷処理を行っていないため、セッションの切断処理を行い(S106)、PC12から受信したPDLデータの印刷処理を行う(S107)。
なお、印刷処理が終了した後、図示していないが、画像形成装置10はPC11とのセッションの再確立を行う。
以上の処理で、セッション確立中に他のPCからPDLデータが送信されたとき、他のPCからのPDLデータの印刷処理を行う。
【0025】
また、本実施形態では、PCが画像形成装置とセッションを確立している際に、画像形成装置にPDLデータが送信されたとき、そのPDLとセッションを確立しているPCが使用しているPDLとが同一か否かを判定して、異なるPDLのときにセッションの切断または送受信の無効処理(以下、セッションの切断などという)を実行し、送信されたPDLデータの印刷処理を行うことができる。
画像形成装置は、PCとの通信にPDL毎に異なる特定のプロトコル(通信手順)を使用しているため、プロトコルが同じであれば使用しているPDLも同じであり、プロトコルが異なれば使用しているPDLも異なる。
従って、PDLが同一か否かを判定するためには、そのPDLデータを送信するために用いているプロトコルが同一か否かによって判定し、プロトコルが同一か否かは、CPU1内のプロトコル判定手段が、プロトコルの識別情報(例えばLPR:Line PRinter daemon protocol)を読み取って、どのプロトコルを用いているかを判別して、判定する。
【0026】
また、画像形成装置とセッションを確立したPCは、複数のプロトコルを使用してPDLデータを送信することはできない。そのため、前述した判定においてPDLが異なると判定したとき、即ち画像形成装置とセッションを確立して通信しているPCが使用しているプロトコルと、送信されたPDLデータに使用されているプロトコルが異なるときは、画像形成装置とセッションを確立しているPCとは異なるPCから送信されたPDLデータであると判別される。
一方、前述した判定においてPDLが同一と判定したとき、即ち画像形成装置とセッションを確立して通信しているPCが使用しているプロトコルと、送信されたPDLデータに使用されているプロトコルが同一であるときは、PDLデータの送信元は画像形成装置とセッションを確立しているPCであることも考えられる。このときは、セッションの切断等の処理を行う必要がなく、そのまま印刷処理を実行できるため、そのPDLデータの送信元が画像形成装置とセッションを確立しているPCと同一か否かを判定する必要がある。
【0027】
PDLデータの送信元がセッションを確立しているPCと同一か否かは、CPU1内のホスト判定手段が、そのPDLデータに含まれているIP(Internet Protocol)アドレスやMAC(Media Access Control)アドレスなどの情報を読み取って判定する。即ち、セッションを確立しているPCのPDLデータに含まれているIPアドレス又はMACアドレスが、送信されたPDLデータに含まれているIPアドレス又はMACアドレスと同一か否かによって、PCが同一か否かを判定する。
【0028】
図6はセッションを確立している画像形成装置にPDLデータが送信されたときのPDL及び送信元の判定処理を説明するための模式図である。
図6Aは、PC11と画像形成装置10とがセッションを張り続ける必要があるPDL(図の例ではA−PDLとする)を使用して通信を行っている際に、画像形成装置10にPDLデータが送信された状態を示している。
画像形成装置10はセッションを確立しているPC11との通信において例えばプロトコルAを使用しており、PDLはA−PDLを使用している。このプロトコルの種類は、画像形成装置10とPC11がセッションを確立するときに使用されるプロトコルの識別情報からプロトコル判定手段にて判定される。
図示のように、PC11と画像形成装置10がセッションを確立して通信をしているときに、PDLデータが画像形成装置10に送信されると、前述した検知手段がPDLデータを検知して、既に説明したプロトコル判定手段が画像形成装置10に送信されたPDLデータに使用されているプロトコルが、プロトコルAと同一か否かを判定する。
図6Bは、画像形成装置に送信されたPDLデータが使用しているプロトコルがプロトコルAと同一であると判定された状態を示している。
このとき、画像形成装置に送信されたPDLデータに含まれているIPアドレスなどの情報から、前述したホスト判定手段がPC11と、画像形成装置に送信されたPDLデータの送信元が同一か否かを判定する。
【0029】
図7はセッション確立中の画像形成装置にPDLデータが送信されたときの画像形成装置の処理のフロー図である。
なお、CPU1がROM3に記憶されているプロトコル判定プログラムを読み込んで、以下説明するプロトコルの判定処理を実行する。
まず、画像形成装置はPDLデータを前述した検知手段が検知したかどうかを判定し(S201)、検知していないと判定したときは(S201、NO)、ステップS201の処理を繰り返す。即ちステップS201はPDLデータの検知を待機する処理を示している。
PDLデータを検知すると(S201、YES)、画像形成装置が印刷処理中か否かを判定する(S202)。即ち、セッションを確立しているホスト装置から送信されたPDLデータを印刷している最中か否かを判定する。画像形成装置が印刷処理中であれば(S202、YES)、印刷処理を行わずに終了する。
【0030】
画像形成装置が印刷処理中でなければ(S202、NO)、PDLデータを送信するために使用しているプロトコルが、セッションを確立しているPCとの通信に使用しているプロトコルと同一か否かを、前述したプロトコル判定手段にて判定する(S203)。プロトコルが異なると判定したときは(S203、NO)、確立しているセッションの切断などの処理を行い(S206)、PDLデータの印刷処理を行う(S205)。
【0031】
プロトコルが同一であると判定したときは(S203、YES)、次にPDLデータの送信元のホスト装置がセッションを確立しているホスト装置と同一か否かを、前述したホスト判定手段にて判定する(S204)。ホスト装置が異なると判定したときは(S204、NO)、確立しているセッションの切断などの処理を行い(S206)、受信したPDLデータの印刷処理を行う(S205)。
ホスト装置が同一と判定したときは(S204、YES)、確立しているセッションの切断などの処理は行わずに、PDLデータを受信し、印刷処理を行う(S205)。
【0032】
また、本実施形態では、画像形成装置はPDLデータの通信に使用するプロトコルに優先度を設定することで、CPU1内の優先度判定手段がセッションを確立したPCとの通信で使用しているプロトコルの優先度とセッション確立中に送信されるPDLデータの通信で使用しているプロトコルの優先度を比較して、PDLデータの通信で使用しているプロトコルの優先順位の方が高いときは印刷処理を行い、低いときは印刷処理を行わないように制御することができる。
【0033】
図8Aは画像形成装置のプロトコルの優先度の設定画面の例を示している。
図示のように、操作パネル6に表示された優先度の設定例として、一番高い優先度である「1」にプロトコルC、優先度「2」にプロトコルA、優先度「3」にプロトコルBが設定されている。即ち、優先度が高い順に、プロトコルC、プロトコルA、プロトコルBと設定されている。
各優先度に設定されている各プロトコルは、この設定画面において、ユーザが設定することができる。
なお、ここで設定された優先度は図1に示した操作パネル制御部6(優先度設定手段)によって制御され、RAM2に記憶される。
【0034】
図8Bは、図8Aに示したプロトコルの優先度が画像形成装置に設定された状態においてセッションを確立している画像形成装置にPDLデータが送信されたときの印刷処理を説明するための模式図である。
図示のように、PC11は画像形成装置10とセッションを確立してプロトコルAを使用してA−PDLデータの通信をしており、PC12はプロトコルBを使用してB−PDLデータを、PC13はプロトコルCを使用してC−PDLデータを画像形成装置10に送信している。
このとき、プロトコルBはプロトコルAよりも優先度が低いため、B−PDLは仮に画像形成装置が印刷処理中でなくても印刷できない(図中×印)。一方、プロトコルCはプロトコルAよりも優先度が高いため、C−PDLは画像形成装置が印刷処理中でなければ印刷される(図中○印)。
【0035】
図9はプロトコルに優先度が設定された状態においてセッション確立中の画像形成装置にPDLデータが送信されたときの画像形成装置の処理のフロー図である。
なお、CPU1がROM3に記憶されている優先度判定プログラムを読み込んで、以下説明する優先度の判定処理を実行する。
ステップS301とステップS302の処理は図7において既に説明したステップS201とステップS202の処理と同一であるため説明を省略する。
ステップS302において画像形成装置が印刷処理中ではないと判定したときは(S302、NO)、前述したプロトコル判定手段が送信されたPDLデータのプロトコルの優先度とセッションの通信において使用しているプロトコルの優先度が同一か否かを判定する(S303)。
【0036】
プロトコル判定手段がプロトコルの優先度が同一と判定したときは(S303、YES)、次にPDLデータの送信元(ホスト装置)がセッションを接続しているホスト装置と同一か否かを判定する(S304)。
なお、ホスト装置が同一か否かは既に説明したように、ホスト判定手段がPDLデータに含まれているIPアドレスなどを読み取って判別する。
ホスト装置が異なると判定したときは(S304、NO)、印刷処理を行わずに終了する。
ホスト装置が同一と判定したときは、セッションの切断などの処理は行わずに、送信されたPDLデータの印刷処理を実行する(S305)。
【0037】
一方、ステップS303の処理において、プロトコルの優先度が異なると判定したときは(S303、NO)、送信されたPDLデータのプロトコルの優先度がセッションの通信において使用しているプロトコルの優先度より高いか否かを判定する(S304)。
送信されたPDLデータのプロトコルの優先度の方が低いと判定したときは(S306、NO)、印刷処理を行わずに終了する。
送信されたPDLデータのプロトコルの優先度の方が高いときは(S306、YES)、確立されているセッションの切断などを行い(S307)、送信されたPDLデータの印刷処理を行う(S305)。
【0038】
以上で説明した処理によって、ホスト装置と画像形成装置がセッションを確立して通信しているときでも、印刷処理中でないときは、セッションの切断などを行うことで他のホスト装置から送信したPDLデータの印刷を行うことができる。
また、送信されたPDLデータのIPアドレスなどからホスト装置を判別することで、セッションをすでに確立しているホスト装置からのPDLデータの送信、即ち、追加の印刷要求で余計なセッションの切断などを行わないようにすることができる。
さらに、プロトコルに優先順位を設定できることで、ユーザが優先したいPDLデータを優先して印刷することができ、画像形成装置の使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の要部のブロック図である。
【図2】画像形成装置と複数台のPCが接続されている状態を説明する図である。
【図3】確立しているセッションを切断する設定における画像形成装置の処理を説明するための模式図である。
【図4】確立しているセッションを切断せずにPCとの送受信のみを行えないようにする設定における画像形成装置の処理を説明するための模式図である。
【図5】他のPCからPDLデータが送信されたときの画像形成装置及び各PCの処理を示すシーケンス図である。
【図6】画像形成装置にPDLデータが送信されたときのPDL及び送信元の判定処理を説明するための模式図である。
【図7】画像形成装置にPDLデータが送信されたときの画像形成装置の処理のフロー図である。
【図8】図8Aはプロトコルの優先度の設定画面の例を示した図である。図8Bは優先度設定してセッションを確立している画像形成装置にPDLデータが送信されたときの印刷処理を説明するための模式図である。
【図9】プロトコルに優先度が設定された状態において画像形成装置にPDLデータが送信されたときの画像形成装置の処理のフロー図である。
【図10】セッションを張り続ける必要があるPDLを説明するための図である。
【図11】複数のホスト装置とセッションを確立した画像形成装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・CPU、2・・・RAM、3・・・ROM、4・・・画像メモリ、5・・・I/F部、6・・・操作パネル制御部、7・・・操作パネル、10、101・・・画像形成装置、11〜13、102、103、106〜111・・・PC、14・・・ネットワーク、112・・・PDLデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置とセッションを確立して通信する通信手段と、該通信手段の制御を行う制御手段を備えた画像形成装置であって、
画像形成装置に送信された印刷データを検知する検知手段を有し、前記ホスト装置と前記通信手段とのセッション確立中に前記検知手段が印刷データを検知したとき、前記制御手段は、ホスト装置とのセッションを切断又は無効にして前記通信手段が前記印刷データを受信するように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記ホスト装置と前記通信手段とのセッション確立中に前記検知手段で検知した印刷データ送信用プロトコルと前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルとの一致、不一致を判定するプロトコル判定手段を有し、該プロトコル判定手段が不一致と判定したとき、前記制御手段はホスト装置とのセッションを切断又は無効にするように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載された画像形成装置において、
ホスト判定手段を有し、該ホスト判定手段は、前記プロトコル判定手段が一致と判定したとき、前記検知手段で検知した印刷データが前記ホスト装置からのものか他のホスト装置からのものかを判定し、前記他のホスト装置からの印刷データであると判定したとき、前記制御手段は前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にするように制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載された画像形成装置において、
前記ホスト判定手段は、前記検知手段で検知した印刷データが前記ホスト装置からのものか他のホスト装置からのものかをIPアドレス又はMACアドレスに基づいて判定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された画像形成装置において、
画像形成装置に入力されたプロトコルの優先度を設定する優先度設定手段と、設定された優先度を記憶する記憶手段と、前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度と前記検知手段で検知した印刷データ送信用プロトコルの優先度の高低を判定する優先度判定手段と、前記優先度判定手段が、前記検知手段で検知した印刷データ送信用プロトコルの優先度が前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度よりも高いと判定したとき、前記制御手段は前記セッションを切断又は無効にするように前記通信手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
印刷データを受信し、受信した印刷データの画像形成を行う画像形成方法であって、
ホスト装置とセッションを確立する工程と、画像形成装置に送信された印刷データを検知する工程と、前記ホスト装置とセッション確立中に前記検知工程で印刷データを検知したときに、前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載された画像形成方法において、
前記ホスト装置とセッション確立中に前記検知工程で検知した印刷データのプロトコルと前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルとの一致、不一致を判定するプロトコル判定工程と、前記不一致と判定したとき、前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された画像形成方法において、
前記プロトコル判定工程にて一致と判定したとき、前記検知工程にて検知した印刷データが前記ホスト装置からのものか他のホスト装置からのものかを判定するホスト判定工程と、前記ホスト判定工程にて他のホスト装置からの印刷データであると判定したとき、前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれかに記載された画像形成方法において、
画像形成装置に入力されるプロトコルの優先度を設定する優先度設定工程と、設定されたプロトコルの優先度をメモリに記憶させる工程と、前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度と前記検知工程にて検知した印刷データに使用されているプロトコルとの優先度の高低を判定する優先度判定工程と、前記優先度判定工程にて前記検知工程で検知した印刷データに使用されているプロトコルの優先度が前記セッションを確立するときに使用されるプロトコルの優先度よりも高いと判定したとき前記ホスト装置とのセッションを切断又は無効にする工程と、備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載された画像形成方法において、
前記ホスト装置とのセッションを切断したとき、前記画像形成装置に送信された印刷データの画像形成が終了後、前記セッションを再確立する工程を備えることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−165413(P2008−165413A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352959(P2006−352959)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】