説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】ユーザが満足することのできる印刷品位を維持しながら、隠蔽用着色剤の消費量を抑えることのできる技術を提供すること。
【解決手段】第1の画像、及び、第1の画像の少なくとも一部に重ねて印刷される第2の画像を含む印刷データに基づいて、第1の画像を印刷するための第1の画像データ、第1の画像に重ねて印刷する隠蔽画像を印刷するための隠蔽画像データ、及び、第2の画像を印刷するための第2の画像データを含む印刷画像データを生成する印刷画像データ生成部133と、印刷画像データに基づいて印刷を行う印刷部145と、を備え、印刷画像データ生成部133は、第2の画像の種類に応じて、隠蔽画像を印刷する際の着色剤の使用レベルを特定し、印刷部145は、特定された使用レベルに応じて、隠蔽画像を印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ANOTO(登録商標)コーポレーション製の電子ペンシステム及びグリッドマーク株式会社製のGRID ONPUT(登録商標)のような技術では、媒体上に所定のドットパターンのパターン画像を形成し、このパターン画像に赤外光又は紫外光を照射し、その反射光を光学読み取り手段で読み取ることで、このパターン画像から情報を取得する技術がある。例えば、GRID ONPUTでは、ドットパターンによりドットコードが示されており、このようなドットパターンを読み取ることで、これにより示された文字、音声又は画像等を取得することができる。
以上のような技術では、媒体上に、細かいドットをいくつも印刷するため、そのドットによって、その上に印刷される表示画像の印刷品位が低下する場合がある。このため、隠蔽用着色剤でドットのパターン画像を塗り潰した上に、文字及び画像等を印刷することによって、印刷品位を向上させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。通常、隠蔽用着色剤は、白色や媒体色に近い色の不透明トナー又は不透明インクが用いられる。また、この技術では、高い印刷品位が求められない場合でも、高い印刷品位が求められる場合と同じように、隠蔽用着色剤が消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−224144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、全てのドットパターンに対して、隠蔽用着色剤により、同じように塗り潰している。このため、隠蔽用着色剤の使用量が多く、無駄であった。
そこで、本発明は、ユーザが満足することのできる印刷品位を維持しながら、隠蔽用着色剤の消費量を抑えることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、第1の画像、及び、当該第1の画像の少なくとも一部に重ねて印刷される第2の画像を含む印刷データに基づいて、前記第1の画像を印刷するための第1の画像データ、前記第1の画像に重ねて印刷する隠蔽画像を印刷するための隠蔽画像データ、及び、前記第2の画像を印刷するための第2の画像データを含む印刷画像データを生成する印刷画像データ生成部と、前記印刷画像データに基づいて印刷を行う印刷部と、を備え、前記印刷画像データ生成部は、前記第2の画像の種類に応じて、前記隠蔽画像を印刷する際の着色剤の使用レベルを特定し、前記印刷部は、前記特定された使用レベルに応じて、前記隠蔽画像を印刷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、ユーザが満足することのできる印刷品位を維持しながら、隠蔽用着色剤の消費量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態1及び2に係る印刷システムの概略構成図である。
【図2】実施の形態1におけるホスト装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】実施の形態1における印刷装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】実施の形態1におけるドットパターン画像の概略図である。
【図5】実施の形態1における画像トナー量レベル情報を示す概略図である。
【図6】実施の形態1における印刷画像データの概略図である。
【図7】実施の形態1における印刷部の構成の一例を示す概略構成図である。
【図8】実施の形態1における読み取り装置の一例を示す概略図である。
【図9】実施の形態1におけるホスト装置で行われる処理を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態1における印刷装置の印刷画像データ生成部で行われる処理を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態1において、媒体に形成されたトナー層の一例を示す縦断面図である。
【図12】実施の形態2における印刷装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図13】実施の形態2における面積トナー量レベル情報を示す概略図である。
【図14】実施の形態2における印刷装置の印刷画像データ生成部で行われる処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1.
実施の形態1は、第1の画像であるドットパターンのパターン画像を、隠蔽用着色剤である隠蔽用トナーにて塗り潰す際に、第2の画像である表示画像の種類に応じて、使用されるトナー量を調整することで、隠蔽用トナーの消費量を抑える技術である。以下に、実施の形態1について、図面を参照して説明する。
【0009】
(構成の説明)
図1は、実施の形態1に係る印刷システム100の概略構成図である。印刷システム100は、ホスト装置110と、画像形成装置としての印刷装置130とを備える。ホスト装置110と印刷装置130とは、信号ケーブル170等の電気的接続手段により接続されている。なお、図1の括弧内の符号は、実施の形態2における構成を示す。
【0010】
ホスト装置110は、ユーザから印刷実行指示を受けると、印刷装置130に対して指示された印刷データを送信する。図2は、ホスト装置110の構成を概略的に示すブロック図である。ホスト装置110は、アプリケーション部111と、ドライバ部112と、IF(InterFace)部115と、入力部116とを備える。
【0011】
アプリケーション部111は、入力部116を介して、ユーザが入力した情報に基づいて、印刷対象となるカラーの表示画像及びドットパターン画像を含む出力データを生成する。ここで、本実施の形態においては、表示画像は、媒体に印刷されることで、可視化されることが要求される画像であり、ドットパターン画像は、媒体に印刷されるが、必ずしも可視化されることが要求されない画像である。また、表示画像には、テキスト(文字)、グラフィック(線画)及びピクチャ(絵又は写真)の少なくとも1つが含まれる。そして、アプリケーション部111は、生成した出力データをドライバ部112に与える。
【0012】
ドライバ部112は、アプリケーション部111で生成された出力データから印刷データを生成し、この印刷データを送信する処理を行う。図2に示されているように、ドライバ部112は、PDL(Page Description Language)データ生成部113と、データ送信部114とを備える。
PDLデータ生成部113は、アプリケーション部111で生成された出力データから、PDLで記述された印刷データを生成する。
データ送信部114は、PDLデータ生成部113で生成された印刷データを、IF部115を介して、印刷装置130に送信する処理を行う。
【0013】
IF部115は、印刷装置130との間でデータを送受信する。例えば、IF部115は、印刷データを印刷装置130に送信する。
入力部116は、ユーザから情報の入力を受け付ける。
【0014】
ホスト装置110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置と、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の可搬性を有する記憶媒体に対して情報を読み書きする読取/書込装置と、キーボードやマウスなどの入力装置と、ディスプレイなどの出力装置と、印刷装置130にに接続するためのインターフェースとを備えた一般的なコンピュータで実現できる。
例えば、アプリケーション部111及びドライバ部112は、外部記憶装置に記憶されている所定のプログラムをメモリにロードしてCPUで実行することで実現可能であり、入力部116は、CPUが入力装置を利用することで実現可能であり、IF部115は、CPUがインターフェースを利用することで実現可能である。
【0015】
図3は、印刷装置130の構成を概略的に示すブロック図である。印刷装置130は、IF部131と、通信部132と、印刷画像データ生成部133と、制御部144と、印刷部145とを備える。
【0016】
IF部131は、ホスト装置110との間でデータを送受信する。例えば、IF部131は、ホスト装置110から印刷データを受信する。
通信部132は、IF部131を介して、通信処理を行う。例えば、通信部132は、IF部131が受信した印刷データを受け取り、印刷画像データ生成部133に与える。
【0017】
印刷画像データ生成部133は、ホスト装置110から送信されてきた印刷データより、印刷部145で画像形成させる画像を示す印刷画像データを生成する。図3に示すように、印刷画像データ生成部133は、印刷データ解析部134と、ドットパターンデータ生成部138と、隠蔽データ生成部139と、YMCデータ生成部141と、記憶部142と、印刷画像データ生成部143とを備える。
【0018】
印刷データ解析部134は、通信部132から与えられた印刷データを解析すると共に、ドットパターンデータ生成部138及びYMCデータ生成部141に、印刷データに含まれているオブジェクトの描画情報を生成するために必要なデータを与える。図3に示すように、印刷データ解析部134は、判定部135と、ドットパターン判別部136と、オブジェクト判別部137とを備える。
【0019】
判定部135は、印刷データに含まれているオブジェクトを順次選択し、選択されたオブジェクトの種別を判定する。そして、判定部135は、選択されたオブジェクトがドットパターンのオブジェクトである場合には、ドットパターン判別部136に処理を行わせ、選択されたオブジェクトがドットパターンのオブジェクト以外である場合には、オブジェクト判別部137に処理を行わせる。
【0020】
ドットパターン判別部136は、判定部135からの指示に応じて、印刷データのうち、判定部135により選択されたオブジェクト(ドットパターンのオブジェクト)に対応するデータを抽出し、抽出されたデータをドットパターンデータ生成部138に与える。
【0021】
オブジェクト判別部137は、判定部135からの指示に応じて、印刷データのうち、判定部135により選択されたオブジェクト(テキストのオブジェクト、グラフィックのオブジェクト又はピクチャのオブジェクト)に対応するデータをYMCデータ生成部141に与える。
【0022】
ドットパターンデータ生成部138は、ドットパターン判別部136から与えられたデータを解析して、ドットパターン画像を描画するために必要な描画情報を生成する。そして、ドットパターンデータ生成部138は、生成された描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに格納する。ここで、ディスプレイリストは、PDLで記述されている印刷データに従ってラスタライズを行うための中間コードを含む描画情報を記憶しておくためのデータテーブルである。
図4は、ドットパターン画像DOPI(DOt Pattern Image)の概略図である。図4に示されているように、本実施の形態におけるドットパターン画像DOPIは、直径Xが50〜100μm程度のサイズのドットで形成されたパターン画像である。そして、ドットパターン画像DOPIでは、例えば、配置されたドットの組み合わせにより、文字情報等を読み取ることができる。なお、図4に示されている一点鎖線は、格子点に配置されているドットを特定するための補助線であって、実際にはドットパターン画像DOPIには含まれない。
【0023】
図3の説明に戻り、隠蔽データ生成部139は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに基づいて、ドットパターン画像に重ねて印刷される隠蔽画像に使用されるトナーの使用レベルを特定する。
例えば、隠蔽データ生成部139は、画像トナー量レベル記憶部140を備える。そして、隠蔽データ生成部139は、画像トナー量レベル記憶部140に記憶されている画像トナー量レベル情報に基づいて、隠蔽画像のトナーの使用レベルを特定する。
図5は、画像トナー量レベル情報171を示す概略図である。画像トナー量レベル情報171は、画像の種類毎にトナー量レベルを特定するテーブル形式の情報である。
図示するように、画像トナー量レベル情報171は、種類欄171aと、トナー量レベル情報欄171bとを備える。
種類欄171aは、画像の種類を格納する。画像の種類は、当該画像に対応するオブジェクトの種別と、当該画像の属性情報とから分類されるものである。
トナー量レベル欄171bは、トナーの使用レベルを特定するためのトナー量レベルを格納する。
本実施の形態においては、隠蔽データ生成部139は、トナー量レベル情報171において、ドットパターン画像毎に、当該ドットパターン画像に重ねて印刷される画像の種類に対応するトナー量レベルを特定する。そして、隠蔽データ生成部139は、特定されたトナー量レベルを、当該ドットパターン画像に重ねて印刷される隠蔽画像におけるトナーの使用レベルとしている。
【0024】
例えば、図5に示されているレコードR1のように、画像に対応するオブジェクトの種別がテキストであり、画像の文字サイズが規定のサイズより大きい場合には、隠蔽画像を印刷する際のトナー量が少なくても、ドットパターンにより文字が見づらくなることはないと考えられる。このため、レコードR1では、使用するトナー量が極めて少なくなっていても問題はない。従って、レコードR1では、トナー量レベルが最も小さい「1」となっている。なお、画像に複数のサイズの文字が使用されている場合には、使用されている最も小さい文字のサイズで判断されるものとする。
レコードR2のように、画像に対応するオブジェクトの種別がテキストであり、画像の文字サイズが規定のサイズより小さい場合は、隠蔽画像を印刷する際のトナー量が極めて少ないと、ドットパターンにより文字が見づらくなると考えられる。このため、レコードR2では、使用するトナー量を、少し多くすることが望ましい。従って、レコードR2では、トナー量レベルがレコードR1の次に小さい「2」となっている。
レコードR3のように、画像に対応するオブジェクトの種別がグラフィックであり、画像に含まれる線の太さが規定の太さより太い場合は、隠蔽画像を印刷する際のトナー量が少なくても、ドットパターンにより線が見づらくなることはないと考えられる。このため、レコードR3では、使用するトナー量を少し少なくしても問題はない。例えば、本実施の形態においては、レコードR3では、トナー量レベルがレコードR2と同様に「2」となっている。
レコードR4のように、画像に対応するオブジェクトの種別がグラフィックであり、画像の線の太さが規定の太さより細い場合は、隠蔽画像を印刷する際のトナー量が少ないと、ドットコードにより線が見づらくなると考えられる。このため、レコードR4では、使用するトナー量を少し多くする必要がある。このため、レコードR4では、トナー量レベルがレコードR3よりも大きい「3」となっている。
レコードR5のように、画像に対応するオブジェクトの種別がピクチャである場合は、写真等であるため、隠蔽画像を印刷する際のトナー量が少ないと、ドットパターンにより写真等がくすんだように見えてしまうため、使用するトナー量を多くする。従って、レコードR5では、トナー量レベルが最も大きい「4」となっている。
ここで、本実施の形態においては、例えば、トナー量レベルが「4」の場合に、通常の印刷で使用されるトナー量と同様のトナー量で印刷が行われるものとし、トナー量レベルが小さくなるにつれて、使用されるトナー量が少なくなるものとするが、このような例に限定されるものではない。
【0025】
図3の説明に戻り、また、隠蔽データ生成部139は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに基づいて、ドットパターン画像に重ねて印刷される隠蔽画像の描画情報を生成し、そのディスプレイリストに格納する処理を行う。
さらに、隠蔽データ生成部139は、上述のようにして決定された、隠蔽画像のトナーの使用レベルに応じて、隠蔽画像の印刷濃度を調整するために必要な制御情報である印刷濃度情報を生成する。
【0026】
YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータを解析して、表示画像を描画するために必要な描画情報を生成する。そして、YMCデータ生成部141は、生成された描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに格納する。
【0027】
記憶部142は、ディスプレイリストと、印刷濃度情報と、ディスプレイリストから印刷画像データ生成部143が生成した印刷画像データとを記憶する。
【0028】
印刷画像データ生成部143は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに格納されている描画情報に従ってラスタライズを行うことにより、印刷画像データを生成する。そして、印刷画像データ生成部143は、生成された印刷画像データを記憶部142に記憶させる。
図6は、印刷画像データ172の概略図である。印刷画像データ172は、ドットパターン画像データ172aと、隠蔽画像データ172bと、Y画像データ172cと、M画像データ172dと、C画像データ172eとにより構成されている。ここで、Y画像データ172cは、表示画像のうちのイエロー成分で形成されるY画像の画像データである。M画像データ172dは、表示画像のうちのマゼンタ成分で形成されるM画像の画像データである。C画像データ172eは、表示画像のうちのシアン成分で形成されるC画像の画像データである。
【0029】
制御部144は、印刷装置130の動作を統括的に制御する。例えば、制御部144は、印刷画像データ生成部133で生成された印刷画像データ及び印刷濃度情報を、印刷部145に与えて、画像を形成させる処理を行う。
【0030】
印刷部145は、制御部144より与えられた印刷画像データ及び印刷濃度情報に基づいて、媒体に画像を形成する。図3に示すように、印刷部145は、現像制御部146と、K現像部147と、W現像部148と、Y現像部149と、M現像部150と、C現像部151とを備える。
【0031】
現像制御部146は、制御部144の制御に基づき、K現像部147、W現像部148、Y現像部149、M現像部150及びC現像部151の各々を統括的に制御する。
【0032】
K現像部147は、図6に示されている印刷画像データ172に含まれているドットパターン画像データ172aに基づいて、ドットパターン画像を形成するドットパターン画像現像部である。本実施の形態においては、ドットパターンをブラック(Black)のトナーで印刷するようにしているが、このような色のトナーに限定されるものではない。
W現像部148は、印刷画像データ172に含まれている隠蔽画像データ172bに基づいて、隠蔽画像を形成する隠蔽画像現像部である。本実施の形態においては、隠蔽画像を白(White)のトナーで印刷するようにしているが、このような色のトナーに限定されるものではない。なお、現像制御部146は、隠蔽画像の印刷を行う際には、印刷濃度情報で示されている印刷濃度となるように、W現像部148を制御する。
【0033】
Y現像部149は、印刷画像データ172に含まれているY画像データ172cに基づいて、イエロー画像を形成するイエロー画像現像部である。
M現像部150は、印刷画像データ172に含まれているM画像データ172dに基づいて、マゼンタ画像を形成するマゼンタ画像現像部である。
C現像部151は、印刷画像データ172に含まれているC画像データ172eに基づいて、シアン画像を形成するシアン画像現像部である。
なお、Y現像部149、M現像部150及びC現像部151は、カラー画像を現像するカラー画像現像部であり、また、ユーザが表示することを意図した表示画像を現像する表示画像現像部でもある。
【0034】
図7は、印刷部145の構成の一例を示す概略構成図である。各現像部は、形成する画像色の違い以外は構成が同じであるため、ここでは、K現像部147を用いて構成を説明する。
【0035】
K現像部147は、感光体ドラム147aと、帯電ローラ147bと、LED(Light Emitting Diode)ヘッド147cと、トナー収容器147dと、トナー供給ローラ147eと、現像ローラ147fとを備える。
感光体ドラム147aは、表面に静電潜像を形成し、この静電潜像にトナーを付着させることでトナー像を形成する像担持体である。
帯電ローラ147bは、感光体ドラム147aを帯電させる。
LEDヘッド147cは、印刷画像に応じた光を照射することで感光体ドラム147aの表面を露光し、静電潜像を形成させる露光手段である。
トナー収容器147dは、ブラックのKトナーを収容する。
トナー供給ローラ147eは、トナー収容器147dに収容されたKトナーを現像ローラ147fに搬送する。
現像ローラ147fは、トナーを感光体ドラム147aに付着させることで、トナー像を形成させる。
【0036】
なお、W現像部148のトナー収容器148d、Y現像部149のトナー収容器149d、M現像部150のトナー収容器150d、及び、C現像部151のトナー収容器151dには、それぞれ、ホワイトのWトナー、イエローのYトナー、マゼンタのMトナー、及び、シアンのCトナーを収容する。
ここで、本実施の形態においては、Kトナーは、黒色の顔料であり、近赤外光を吸収する性質を有するカーボンブラックが用いられるものとする。一方、Wトナー、Yトナー、Mトナー及びCトナーには、近赤外光を透過する性質を有する顔料が用いられる。
【0037】
また、印刷部145は、給紙ローラ181A、181Bと、転写ベルト182と、転写ローラ183A、183B、183C、183D、183Eと、定着器184A、184Bと、排紙ローラ185A、185Bとを備える。
給紙ローラ181A、181Bは、図示せぬ媒体供給部から媒体180を給紙する。
転写ベルト182は、給紙された媒体180を搬送する。
転写ローラ183A、183B、183C、183D、183Eは、各現像部の感光体ドラムに対向して設けられ、各現像部で形成されたトナー像を媒体180に転写させる。
定着器184A、184Bは、媒体180に転写されたトナー像を加熱及び加圧することで媒体180に定着させる。
排紙ローラ185A、185Bは、定着器184A、184Bによりトナー像が定着された媒体180を印刷装置130の外部に排出する。
【0038】
そして、図示せぬ媒体供給部から給紙ローラ181A、181Bを介して給紙された媒体180は、転写ベルト182により搬送される過程において、各現像部において形成されたトナー像が順次転写される。なお、本実施の形態においては、媒体180の搬送方向上流側から下流側にかけて、K現像部147で形成されたドットパターン画像のトナー像、W現像部148で形成された隠蔽画像のトナー像、Y現像部149で形成されたイエロー画像のトナー像、M現像部150で形成されたマゼンタ画像のトナー像、及び、C現像部151で形成されたシアン画像のトナー像が媒体180に順次転写される。そして、各現像部において形成されたトナー像が媒体180に転写された後、定着器184A、184Bは、媒体180に熱及び圧力を付与することによりトナー画像を定着させる。トナー画像が定着された媒体180は、排紙ローラ185A、185Bにより印刷装置130外部に排出される。
【0039】
以上のようにして、印刷装置130で印刷が施された媒体180からは、図8に示すように、読み取り装置190を用いることにより、所定の情報を読み取ることができる。
図8に示されている読み取り装置190は、図示せぬ発光部と、受光部と、を備える。
そして、発光部が照射した所定の波長の照射光に対する、媒体180からの反射光を受光部が読み取ることで、受光部は、媒体180に印刷されたパターン画像を読み取ることができる。
なお、読み取り装置190は、所定の波長の光の発光と受光を行うことのできる装置であればよい。例えば、図8に示されているように、読み取り装置190は、ペン型の装置として、ペン先で発光と受光を行う装置であってもよく、また、フラットベット型のスキャナ等であってもよい。ここで、本実施の形態においては、読み取り装置190で発光し、受光する光は、例えば、近赤外光(波長:800nm〜1000nm)であるものとする。この近赤外光は、Kトナーとして使用されるカーボンブラックにより吸収される。
【0040】
(動作の説明)
次に、実施の形態1に係る画像形成システム100の処理動作について説明する。
図9は、ホスト装置110で行われる処理を示すフローチャートである。
まず、ホスト装置110の入力部116がユーザによる印刷開始指示の入力を受けると、アプリケーション部111は、例えば、入力部116を介してユーザにより作成された表示画像及びドットパターン画像に基づいて、これらを示すスプールファイルを生成する(S10)。ここで、本実施の形態においては、表示画像は、ピクチャ、グラフィック及びテキストのうち、少なくとも何れか1つを含むものとする。ここで、ピクチャ、グラフィック及びテキストは、表示画像のデータの種別である。そして、アプリケーション部111は、生成されたスプールファイルをドライバ部112に与える。スプールファイルは、印刷データを生成するための中問データである。
【0041】
次に、アプリケーション部111からスプールファイルが与えられると、ドライバ部112のPDLデータ生成部113は、スプールファイルに基づき、表示画像に含まれているデータの種別に対応したオブジェクトを生成する(S11)。また、PDLデータ生成部113は、スプールファイルに基づき、ドットパターン画像のオブジェクトを生成する(S12)。
【0042】
さらに、PDLデータ生成部113は、印刷装置130に対して描画を指示するためのプログラム言語で、各オブジェクトの種別と、配置等の属性とを含む印刷ジョブデータを生成し、この印刷ジョブデータと、ステップS11及びS12で生成されたオブジェクトとを備える印刷データを生成する(S13)。ここで、ステップS12で生成されたドットパターン画像のオブジェクトの種別は、ピクチャ、グラフィック及びテキストとは異なるドットパターン画像のオブジェクトに特有のものとする。また、各オブジェクトの配置は、例えば、各オブジェクトの開始位置及びサイズを特定することができるものとする。そして、PDLデータ生成部113は、生成された印刷データをデータ送受信部114に与える。
【0043】
次に、データ送受信部114は、PDLデータ生成部113から与えられた印刷データを、IF部115を介して、印刷装置130に送信する処理を行う(S14)。
【0044】
図10は、印刷装置130の印刷画像データ生成部133で行われる処理を示すフローチャートである。
ホスト装置110で生成され、送信された印刷データは、印刷装置130のIF部131において受信される。受信された印刷データは、制御部144からの指示に応じて、通信部132から印刷画像データ生成部133に与えられる。
そして、印刷画像データ生成部133では、通信部132から与えられた印刷データを、印刷データ解析部134の判定部135が取得する(S20)。
【0045】
判定部135は、取得された印刷データを解析して、描画情報が生成されていないオブジェクトを1つ選択して、印刷ジョブデータを参照することで、選択されたオブジェクトの種別を判別する(S21)。そして、判定部135は、選択されたオブジェクトがドットパターンである場合には、ステップS22の処理に進む。判定部135は、選択されたオブジェクトがテキストである場合には、ステップS24の処理に進む。判定部135は、選択されたオブジェクトがグラフィックである場合には、ステップS26の処理に進む。判定部135は、選択されたオブジェクトがピクチャである場合には、ステップS28の処理に進む。
【0046】
ステップS22では、ドットパターン判別部136は、受信された印刷データから、選択されたオブジェクト(ドットパターン)に対応する部分のデータを抽出して、抽出されたデータをドットパターンデータ生成部138に与える。そして、ドットパターンデータ生成部138は、ドットパターン判別部136から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクトから生成されるドットパターン画像が印刷されるドットパターン印刷エリアを計算する。ドットパターン印刷エリアは、例えば、印刷される媒体180のX軸及びY軸の座標で示される。
次に、ドットパターンデータ生成部138は、ドットパターン判別部136から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクト(ドットパターン)を描画するために必要な描画情報を生成して、この描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに記憶する(S23)。なお、この描画情報には、ステップS22で算出された印刷エリアを示すドットパターン印刷エリア情報と、選択されたオブジェクトがドットパターンであることを示す種別情報を含む属性情報と、が含まれるものとする。
【0047】
ステップS24では、オブジェクト判別部137は、受信された印刷データから、選択されたオブジェクト(テキスト)に対応する部分のデータを抽出して、抽出されたデータをYMCデータ生成部141に与える。そして、YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクトから生成されるテキスト画像が印刷されるテキスト印刷エリアを計算する。テキスト印刷エリアは、例えば、印刷される媒体180のX軸及びY軸の座標で示される。
次に、YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクト(テキスト)を描画するために必要な描画情報を生成して、この描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに記憶する(S25)。なお、この描画情報には、ステップS24で算出された印刷エリアを示すテキスト印刷エリア情報と、選択されたオブジェクトがテキストであることを示す種別情報及び選択されたオブジェクトに含まれるテキストのフォントサイズを示す属性情報と、が含まれるものとする。
【0048】
ステップS26では、オブジェクト判別部137は、受信された印刷データから、選択されたオブジェクト(グラフィック)に対応する部分のデータを抽出して、抽出されたデータをYMCデータ生成部141に与える。そして、YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクトから生成されるグラフィック画像が印刷されるグラフィック印刷エリアを計算する。グラフィック印刷エリアは、例えば、印刷される媒体180のX軸及びY軸の座標で示される。
次に、YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクト(グラフィック)を描画するために必要な描画情報を生成して、この描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに記憶する(S27)。なお、この描画情報には、ステップS26で算出された印刷エリアを示すグラフィック印刷エリア情報と、選択されたオブジェクトがグラフィックであることを示す種別情報及び選択されたオブジェクトに含まれる線の太さを含む属性情報と、が含まれるものとする。
【0049】
ステップS28では、オブジェクト判別部137は、受信された印刷データから、選択されたオブジェクト(ピクチャ)に対応する部分のデータを抽出して、抽出されたデータをYMCデータ生成部141に与える。そして、YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクトから生成されるピクチャ画像が印刷されるピクチャ印刷エリアを計算する。ピクチャ印刷エリアは、例えば、印刷される媒体180のX軸及びY軸の座標で示される。
次に、YMCデータ生成部141は、オブジェクト判別部137から与えられたデータに基づいて、選択されたオブジェクト(ピクチャ)を描画するために必要な描画情報を生成して、この描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに記憶する(S29)。なお、この描画情報には、ステップS28で算出された印刷エリアを示すピクチャ印刷エリア情報と、選択されたオブジェクトがピクチャであることを示す種別情報を含む属性情報と、が含まれるものとする。
【0050】
次に、判定部135は、印刷データに含まれている全てのオブジェクトについて、描画情報が生成されたか否かを判断する(S30)。そして、判定部135は、印刷データに含まれている全てのオブジェクトについて描画情報が生成された場合、言い換えると、描画情報が生成されていないオブジェクトが存在しない場合(S30:Yes)には、ステップS31の処理に進む。一方、判定部135は、印刷データに含まれている全てのオブジェクトについては描画情報が生成されていない場合、言い換えると、描画情報が生成されていないオブジェクトが存在する場合(S30:No)には、ステップS21の処理に戻る。
【0051】
ステップS31では、隠蔽データ生成部139は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストから、対応する隠蔽画像の描画情報を生成していないドットパターンエリア情報を一つ取得する。
【0052】
次に、隠蔽データ生成部139は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストを参照して、取得されたドットパターンエリア情報で示されるエリアに印刷される、ドットパターン以外の画像を特定する(S32)。
そして、隠蔽データ生成部139は、特定された画像の属性情報から、特定された画像の種類を特定する。さらに、隠蔽データ生成部139は、画像トナー量レベル情報記憶部140に記憶されている画像トナー量レベル情報171から、特定された種類に対応する画像トナー量レベルを特定する(S33)。なお、ステップS32で特定された画像が複数ある場合には、隠蔽データ生成部139は、それぞれに対応して特定された複数のトナー量レベルのうち、最も高いものをステップS33で特定する。
【0053】
次に、隠蔽データ生成部139は、ステップS31で取得されたドットパターンエリア情報で示されるエリアに隠蔽画像を描画するために必要な描画情報を生成して、この描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに記憶する(S34)。ここで、隠蔽データ生成部139は、隠蔽画像が、ステップS33で特定されたトナー量レベルに応じたトナー量で印刷されるようにする。例えば、本実施の形態においては、隠蔽データ生成部139は、特定されたトナー量レベルが高いほど、隠蔽画像が濃く印刷されるように、印刷濃度を示した印刷濃度情報を記憶部142に記憶させる。この印刷濃度情報は、隠蔽画像が印刷されるエリア毎(対応するドットパターンエリア毎)に、当該エリアの印刷濃度を特定するものである。
【0054】
次に、隠蔽データ生成部139は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに含まれている全てのドットパターンエリア情報について、隠蔽画像の描画情報を生成したか否かを判断する(S35)。そして、隠蔽データ生成部139は、全てのドットパターンエリア情報について隠蔽画像の描画情報を生成した場合、言い換えると、対応する隠蔽画像の描画情報が生成されていないドットパターンエリア情報が存在しない場合(S35:Yes)には、ステップS36の処理に進む。一方、隠蔽データ生成部139は、全てのドットパターンエリア情報については隠蔽画像の描画情報を生成していない場合、言い換えると、対応する隠蔽画像の描画情報が生成されていないドットパターンエリア情報が存在する場合(S35:No)には、ステップS31の処理に戻る。
【0055】
ステップS36では、印刷画像データ生成部143は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに格納されている描画情報に従ってラスタライズを行うことにより、図6に示されているような印刷画像データ172を生成する。例えば、印刷画像データ生成部143は、ドットパターンの描画情報に従ってドットパターン画像データ172aを生成する。印刷画像データ生成部143は、隠蔽画像の描画情報に従って隠蔽画像データ172bを生成する。印刷画像データ生成部143は、テキスト、グラフィック及びピクチャの描画情報に従って、Y画像データ172c、M画像データ172d及びC画像データ172eを生成する。なお、印刷画像データ生成部143は、このようにして生成された印刷画像データ172を記憶部142に記憶させる。
【0056】
以上のようにして、印刷画像データ172は、記憶部142に記憶される。そして、制御部144は、記憶部142に記憶された印刷画像データ172内に格納された各画像データ及び印刷濃度情報に応じて、現像制御部146に対して画像形成の指示を与える。
このような指示を受けた現像制御部146は、ドットパターン画像をK現像部147にて、隠蔽画像をW現像部148にて、Y画像をY現像部149にて、M画像をM現像部150にて、C画像をC現像部151にて、画像形成するように、K現像部147、W現像部148、Y現像部149、M現像部150及びC現像部151を制御する。なお、現像制御部146は、W現像部148に対しては、制御部144から与えられる印刷濃度情報に従って、印刷濃度制御を行う。
【0057】
次に、図7を参照して、印刷画像データ172に基づいて、印刷装置130で画像を形成する際の動作について説明する。
【0058】
制御部144からの印刷開始指示を受けると、現像制御部146は、図示せぬ高圧電源を制御することにより、K現像部147内の帯電ローラ147bに負の電圧を印加させ、感光体ドラム147aの表面を負に帯電させる。
そして、現像制御部146は、LEDヘッド147cを制御することにより、ドットパターン画像データに基づいて、光を感光体ドラム147aの表面に照射させる。
感光体ドラム147aは回転しながら、LEDヘッド147cから照射された光を受光する。これにより、感光体ドラム147aでは、光を受光した部分、すなわち、ドットパターン画像が形成される部分における負の帯電量が減少し、静電潜像が形成される。
【0059】
また、K現像部147のトナー収容器147dに収容されたKトナーは、トナー供給ローラ147e及び現像ローラ147fにより感光体ドラム147aへと搬送される過程において、負の電荷を与えられ、感光体ドラム147aの表面の負の帯電量が減少している部分にのみ付着する。
【0060】
そして、上記動作と同時に、制御部144は、図示せぬ給紙・搬送制御部、ローラ類駆動制御部等へ印刷開始指示を出し、媒体180を印刷部145へと搬送させる。給紙ローラ181A、181Bにより搬送された媒体180がK現像部147に到達すると、転写ベルト182内部に設けられた転写ローラ183Aに図示せぬ高圧電源から印加された正の電圧により発生する電界の作用により、Kトナーにて形成されたドットパターン画像が、感光体ドラム147aの表面から媒体180に転写される。
【0061】
引き続き、現像制御部146は、隠蔽画像データ、Y画像データ、M画像データ及びC画像データに基づき、W現像部148にてWトナー、Y現像部149にてYトナー、M現像部150にてMトナー及びC現像部151にてCトナーを用いた各トナー像が感光体ドラム148a、149a、150a、151aの表面上に形成され、転写ベルト182により搬送される媒体180に順次転写される。このとき、現像制御部146は、W現像部148において、印刷濃度情報で示される印刷濃度に応じて、LEDヘッド148cの照射強度を制御することにより、感光体ドラム148aに付着されるトナー量を制御する。なお、Wトナー、Yトナー、Mトナー及びCトナーには所定の波長の光(本実施の形態においては、近赤外光)を透過する顔料が用いられている。
転写ベルト182により、図7中の矢印方向に搬送された媒体180には、定着器184A、184Bにより熱及び圧力が付与されることで、トナー像が定着される。そして、トナー像が定着された媒体180は、排紙ローラ185A、185Bにより印刷装置130外部へと排出され、画像形成動作は完了する。
【0062】
以上のようにして、媒体180に形成されたトナー層の例を図11に示す。図11は、媒体180に形成されたトナー層の一例を示す縦断面図である。図示するように、媒体180には、K現像部147でKトナーにて形成されたドットパターン画像186を覆うように、W現像部148でWトナーにより隠蔽画像187が形成されるため、ドットコードを隠蔽することができる。また、Wトナーで形成されている隠蔽画像187の上に、Y現像部149、M現像部150及びC現像部151で、各トナーにて表示画像としてのYMC画像188が形成される。この際、W現像部148で形成される隠蔽画像187の厚さYは、YMC画像188に応じて変わり、使用されるトナー量が調整される。例えば、YMC画像188がテキスト画像等である部分には、ドットパターンを確実に隠蔽しなくても画像を認識することができると考えられるため、使用されるトナー量が少し少なめ(厚さYが薄め)になる。一方、YMC画像188が写真等である部分、及び、YMC画像188が細い線又は小さな点を含むグラフィック画像等である部分には、ドットパターンを確実に隠蔽しなければ、きれいな印刷結果が得られないと考えられるため、使用されるトナー量が少し多め(厚さYが厚め)になる。
【0063】
以上のように、実施の形態1によれば、各ドットパターン画像に対して重ねて印刷される通常画像のオブジェクトの種類に応じて、隠蔽画像を印刷する際のトナーの量をコントロールするため、隠蔽画像を印刷する際に使用されるトナーの量の消費を抑えることができる。
【0064】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態1では、ドットパターンに重ねて印刷される画像に対応するオブジェクトの種類で、隠蔽画像に使用されるトナー量を調整しているが、隠蔽画像に使用されるトナー量が従来技術よりも少なくなる(隠蔽画像が薄くなる)部分が発生してしまう。
ドットパターンに隠蔽画像を重ねて印刷することの効果には、ドットパターンを隠蔽し、表示画像の印刷品位を上げることの他に、ドットパターンに隠蔽画像を被せて、ドットパターンを保護することという効果もある。例えば、頻繁に読み取り装置190(図8参照)で触れる場所等は、読み取り装置190がドットパターンに触れることで、ドットパターンが剥がれてしまうことがあり、隠蔽画像でドットパターンを覆うことにより、ドットパターンが剥がれてしまうことを防止することができる。特にドットパターンが印刷されているエリアが狭い場合には、読み取り装置190に接触する部分が集中するため、ドットパターンが剥がれてしまう可能性が高いという問題がある。この点、ドットパターンが印刷されているエリアが広い場合には、人の心理として、なるべくきれいな部分で読み取ろうとするため、まんべんなく読み取り装置190をドットパターンエリアに接触させるものと思われ、ドットパターンの剥がれ落ちが少ないと考えられる。
このため、実施の形態2においては、ドットパターン画像に重ねて印刷される画像に対応するオブジェクトの種類に加え、ドットパターン画像の面積によって、ドットパターンを塗り潰す隠蔽画像に使用されるトナー量を調整する。
【0065】
(構成の説明)
図1に示すように、実施の形態2に係る印刷システム200は、ホスト装置110と、印刷装置230とを備える。実施の形態2に係る印刷システム200は、印刷装置230において、実施の形態1に係る印刷システム100と異なっている。
【0066】
図12は、実施の形態2における印刷装置230の構成を概略的に示すブロック図である。印刷装置230は、IF部131と、通信部132と、印刷画像データ生成部233と、制御部144と、印刷部145とを備える。実施の形態2における印刷装置230は、印刷画像データ生成部233において、実施の形態1における印刷装置130と異なっている。
【0067】
印刷画像データ生成部233は、印刷データ解析部134と、ドットパターンデータ生成部138と、隠蔽データ生成部239と、YMCデータ生成部141と、記憶部142と、印刷画像データ生成部143とを備える。実施の形態2における印刷画像データ生成部233は、隠蔽データ生成部239において、実施の形態1における印刷画像データ生成部133と異なっている。
【0068】
隠蔽データ生成部239は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに基づいて、ドットパターン画像に重ねて印刷される隠蔽画像のトナーの使用レベルを特定する。実施の形態1においては、隠蔽データ生成部139は、画像トナー量レベル記憶部140に記憶されている画像トナー量レベル情報171に基づいて、隠蔽画像に用いられるトナーの使用レベルを特定したが、実施の形態2においては、面積トナー量レベル記憶部252に記憶されている面積トナー量レベル情報にも基づいて、隠蔽画像に用いられるトナーの使用レベルを特定する。
【0069】
図13は、面積トナー量レベル情報273を示す概略図である。面積トナー量レベル情報273は、ドットパターン画像の面積毎にトナー量レベルを特定するテーブル形式の情報である。
図示するように、面積トナー量レベル情報273は、面積欄273aと、トナー量レベル情報欄273bとを備える。
面積欄273aは、ドットパターン画像の面積の範囲を格納する。
トナー量レベル欄273bは、トナーの使用レベルを特定するためのトナー量レベルを格納する。
【0070】
例えば、図13のレコードR21に示されているように、ドットパターン画像の面積が、5平方cm以上の場合には、読み取り装置190を広範囲に当てることができるため、ドットパターンを隠蔽画像で保護する必要性はないと考えられる。従って、レコードR21では、トナー量レベルは、「0」とする。
レコードR22のように、ドットパターン画像の面積が、5平方cm未満から3平方cm以上の場合は、読み取り装置190は、ある程度決められた範囲に当てられることとなる。このため、ドットパターンを保護する必要性が多少あると考えられるため、トナー量レベルは、最低のレベルである「1」とする。
レコードR23のように、ドットパターン画像の面積が、3平方cm未満から1.5平方cm以上の場合は、読み取り装置190は、レコードR22の場合よりも決められた範囲に当てられることとなる。従って、ドットパターンを保護する必要性がレコードR22の場合よりも高いと考えられるため、トナー量レベルは、レコードR22の場合よりも高い「2」とする。
レコードR24のように、ドットパターン画像の面積が、1.5平方cm未満の場合は、読み取り装置190は、狭い範囲に頻繁に当てられることになる。従って、ドットパターンを保護する必要性が最も高いため、トナー量レベルは、最も高い「3」とする。
【0071】
そして、隠蔽データ生成部239は、ドットパターン画像毎に、当該ドットパターン画像が含まれる範囲に重ねて印刷される画像の種類に対応するトナー量レベルを画像トナー量レベル情報171から特定する。また、隠蔽データ生成部239は、ドットパターン画像毎に、当該ドットパターン画像の面積に対応するトナー量レベルを面積トナー量レベル情報273から特定する。そして、隠蔽画像データ生成部239は、画像トナー量レベル情報から特定されたトナー量レベルと、面積トナー量レベル情報273から特定されたトナー量レベルとを加算することで、当該ドットパターン画像に重ねて印刷される隠蔽画像におけるトナーの使用レベルを特定する。
【0072】
図12の説明に戻り、また、隠蔽データ生成部239は、記憶部142に記憶されているディスプレイリストに基づいて、ドットパターン画像に重ねて印刷される隠蔽画像の描画情報を生成し、ディスプレイリストに格納する処理を行う。さらに、隠蔽データ生成部239は、上述のようにして決定された、隠蔽画像のトナー量レベルに応じて、隠蔽画像の濃度を調整するために必要な制御情報である印刷濃度情報を生成する。
【0073】
図14は、印刷装置230の印刷画像データ生成部233で行われる処理を示すフローチャートである。図14に示されているステップS20〜S33、S35及びS36の処理は、図10の同じ符号で示されているステップでの処理と同様である。
【0074】
隠蔽データ生成部239は、ステップS33において、画像トナー量レベル情報記憶部140に記憶されている画像トナー量レベル情報171から、画像トナー量レベルを特定した後に、ステップS40の処理に進む。
【0075】
ステップS40では、隠蔽データ生成部239は、抽出されたドットパターン印刷エリアの面積を算出する。そして、隠蔽データ生成部239は、面積トナー量レベル記憶部252に記憶されている面積トナー量レベル情報273から、算出された面積に対応するトナー量レベルを特定する。
【0076】
次に、隠蔽データ生成部239は、ステップS33で特定されたトナー量レベルと、ステップS40で特定されたトナー量レベルとを用いて、最終的なトナー量レベルを算出する(S41)。例えば、隠蔽データ生成部239は、ステップS33で特定されたトナー量レベルと、ステップS40で特定されたトナー量レベルとを加算することにより、トナーの使用レベルを算出する。なお、ここでは、ステップS33で特定されたトナー量レベルと、ステップS40で特定されたトナー量レベルとを加算しているが、このような例に限定されるものではなく、ステップS33で特定されたトナー量レベルを一定とした場合に、ステップS40で特定されたトナー量レベルが大きいほど、トナーの使用レベルが大きくなり、かつ、ステップS40で特定されたトナー量レベルを一定とした場合に、ステップS33で特定されたトナー量レベルが大きいほど、トナーの使用レベルが大きくなるものであれば、トナーの使用レベルをどのように決定してもよい。
【0077】
次に、隠蔽データ生成部239は、ステップS31で取得されたドットパターンエリア情報で示されるエリアに隠蔽画像を描画するために必要な描画情報を生成して、この描画情報を記憶部142に記憶されているディスプレイリストに記憶する(S42)。ここで、隠蔽データ生成部239は、隠蔽画像が、ステップS41で算出されたトナーの使用レベルに応じたトナー量で印刷されるようにする。例えば、本実施の形態においても、隠蔽データ生成部239は、算出された使用レベルが高いほど、隠蔽画像が濃く印刷されるように、印刷濃度を示す印刷濃度情報を記憶部142に記憶させる。
そして、隠蔽データ生成部239は、ステップS35の処理に進む。
【0078】
以上のように、実施の形態2によれば、各ドットパターン画像に対し、その面積が広いところは、対応する隠蔽画像に使用されるトナー量を少なくし、一方、その面積が狭いところは、対応する隠蔽画像に使用されるトナー量を多くすることにより、隠蔽画像に使用されるトナー量の消費を抑えながら、ドットパターン画像が剥がれ落ちてしまうことを防止することができる。
【0079】
以上に記載した実施の形態1及び2においては、隠蔽データ生成部139、239が、隠蔽画像の印刷濃度を示す印刷濃度情報を生成することで、隠蔽画像に使用されるトナー量を制御しているが、このような制御に限定されるものではない。例えば、隠蔽データ生成部139、239が、隠蔽画像用の描画情報を生成する際に、印刷される隠蔽画像の模様を変更することにより、トナーの使用量を制御することも可能である。例えば、隠蔽画像を印刷するエリアに含まれる画素のうち、トナーを用いて印刷される画素の数を増減させることにより、トナーの使用量を制御することもできる。一例として、図5に示されているように、トナー量レベルが「1」〜「4」の場合には、隠蔽画像を印刷するエリアに含まれる、縦横隣接する4つの画素のうち、トナー量レベルが「1」の場合には1つの画素においてホワイトの印刷が行われるようにし、トナー量レベルが「2」の場合には2つの画素においてホワイトの印刷が行われるようにし、トナー量レベルが「3」の場合には3つの画素においてホワイトの印刷が行われるようにし、及び、トナー量レベルが「4」の場合には4つの画素においてホワイトの印刷が行われるように隠蔽画像の模様を形成することで、それぞれのトナー量レベルに応じたトナーの使用量で印刷を行うことができる。
【0080】
以上に記載した実施の形態1及び2においては、ドットパターンエリア情報で示されるエリアに隠蔽画像を印刷する、言い換えると、ドットパターンが印刷されるエリアと隠蔽画像が印刷されるエリアとが一致するように構成されているが、これらのエリアは必ずしも一致していなくてもよい。
【0081】
また、以上に記載した実施の形態1及び2においては、画像の種類は、当該画像に対応するオブジェクトの種別と、文字のフォント又は線の太さ等の画像の属性情報とに基づいて特定さているが、このような例に限定されるものではなく、例えば、画像の種類が、当該画像に対応するオブジェクトの種別だけから特定されていてもよい。言い換えると、画像の種類は、望まれる印刷品質に応じて、分類されていればよい。
【0082】
以上に記載した実施の形態1及び2においては、本発明を電子写真方式の印刷装置230、230に適用した形態について説明したが、これらの形態に限定されるものではない。例えは、本発明は、インクジェット方式又は熱転写方式の印刷装置(画像形成装置)に適用することも可能である。また、本発明は、複写機、ファクシミリ及び複合機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
100,200:印刷システム、 110:ホスト装置、 111:アプリケーション部、 112:ドライバ部、 115:IF部、 116:入力部、 130,230:印刷装置、 131:IF部、 132:通信部、 133,233:印刷画像データ生成部、 134:印刷データ解析部、 135:判定部、 136:ドットパターン判定部、 137:オブジェクト判別部、 138:ドットパターンデータ生成部、 139,239:隠蔽データ生成部、 140:画像トナー量レベル記憶部、 141:YMCデータ生成部、 142:記憶部、 143:印刷画像データ生成部、 144:制御部、 145:印刷部、 146:現像制御部、 147:K現像部、 148:W現像部、 149:Y現像部、 150:M現像部、 151:C現像部、 252:面積トナー量レベル記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像、及び、当該第1の画像の少なくとも一部に重ねて印刷される第2の画像を含む印刷データに基づいて、前記第1の画像を印刷するための第1の画像データ、前記第1の画像に重ねて印刷する隠蔽画像を印刷するための隠蔽画像データ、及び、前記第2の画像を印刷するための第2の画像データを含む印刷画像データを生成する印刷画像データ生成部と、
前記印刷画像データに基づいて印刷を行う印刷部と、を備え、
前記印刷画像データ生成部は、前記第2の画像の種類に応じて、前記隠蔽画像を印刷する際の着色剤の使用レベルを特定し、
前記印刷部は、前記特定された使用レベルに応じて、前記隠蔽画像を印刷すること
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷画像データ生成部は、前記特定された使用レベルに応じて、前記隠蔽画像の印刷濃度を特定し、
前記印刷部は、前記特定された印刷濃度に従って、前記隠蔽画像の印刷を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記印刷画像データ生成部は、前記特定された使用レベルに応じて、前記隠蔽画像の模様を変更すること
を特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の画像は、1つ以上のオブジェクトにより構成されており、
前記第2の画像の種類は、前記第1の画像に重なるオブジェクトの種別を用いて特定されること
を特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記オブジェクトの種別には、テキスト、グラフィック及びピクチャの少なくとも1つが含まれること
を特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の画像は、1つ以上のオブジェクトにより構成されており、
前記隠蔽画像は、前記第1の画像を構成するオブジェクト毎に重ねて印刷されるものであり、
前記第2の画像の種類は、前記第1の画像を構成するオブジェクト毎に、前記第1の画像に含まれているオブジェクトに重なる、前記第2の画像を構成するオブジェクトの種別を用いて特定され、
前記印刷画像データ生成部は、前記第1の画像を構成するオブジェクト毎に、前記隠蔽画像を印刷する際の着色剤の使用レベルを特定し、
前記印刷部は、前記第1の画像を構成するオブジェクト毎に、前記特定された使用レベルに応じて、前記隠蔽画像を印刷すること
を特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記印刷画像データ生成部は、前記第2の画像の種類及び前記第1の画像が印刷される面積に応じて、前記使用レベルを特定すること
を特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記印刷部は、前記第1の画像を、所定の読み取り装置で読み取ることのできる第1の着色剤で印刷し、前記第2の画像及び前記隠蔽画像を、当該所定の読み取り装置で読み取ることのできない第2の着色剤で印刷すること
を特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1の着色剤は、所定の波長の光を吸収し、
前記第2の着色剤は、前記所定の波長の光を透過すること
を特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記印刷データには、前記第1の画像を識別するための識別情報が含まれており、
前記印刷画像データ生成部は、前記識別情報に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像とを区別すること
を特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記隠蔽画像は、前記第1の画像の上に重ねて印刷することにより、前記第1の画像を保護するものであること
を特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
第1の画像、及び、当該第1の画像の少なくとも一部に重ねて印刷される第2の画像を含む印刷データに基づいて、前記第1の画像を印刷するための第1の画像データ、前記第1の画像に重ねて印刷する隠蔽画像を印刷するための隠蔽画像データ、及び、前記第2の画像を印刷するための第2の画像データを含む印刷画像データを生成する印刷画像データ生成過程と、
前記印刷画像データに基づいて印刷を行う印刷過程と、を有し、
前記印刷画像データ生成過程は、前記第2の画像の種類に応じて、前記隠蔽画像を印刷する際の着色剤の使用レベルを特定する過程であり、
前記印刷過程は、前記特定された使用レベルに応じて、前記隠蔽画像を印刷する過程であること
を特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−70221(P2013−70221A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207158(P2011−207158)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】