説明

画像形成装置及び電子写真感光体

【課題】耐クラック性に優れ、かつ電気特性が良好な、単層型感光層を有する正帯電型電子写真感光体を提供することにより、接触帯電方式に於ける優れた画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置において、帯電部材が電子写真感光体に接触させて帯電させる接触帯電部材であり、電子写真感光体が導電性基体上に単層型感光層を有する正帯電型電子写真感光体であって、感光体が下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする画像形成装置。


(一般式(1)中、R〜Rは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは、結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンターの画像形成装置に関する。詳しくは、接触帯電方式に於いて耐クラック性に優れ、且つ、電気特性の良好な画像形成装置、及びそれに搭載される正帯電型電子写真感光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、複写機、各種プリンターなどの分野で広く使われている。
電子写真技術の中核となる感光体については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が使用されている。
有機系電子写真感光体においては、電荷キャリアの発生と移動の機能を別々の化合物に分担させる、いわゆる機能分離型の感光体が、材料選択の余地が大きく、感光体の特性の制御がし易いことから、開発の主流となっている。層構成の観点からは、電荷発生剤と電荷輸送剤を同一の層中に有する単層型感光体と、別々の層(電荷発生層と電荷輸送層)中に分離、積層する積層型感光体が知られている。
【0003】
このうち積層型感光体は、感光体設計上からは、層ごとに機能の最適化が計りやすく、特性の制御も容易なことから現行感光体の大部分はこのタイプになっている。このような積層型感光体のほとんどのものは、基体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層をこの順序で有している。該電荷輸送層においては、好適な電子輸送材料がきわめて少ないのに対して、正孔輸送材料は特性の良好な材料が数多く知られている。しかし、このような正孔輸送材料を用いた積層型感光体においては、帯電においては負帯電方式が採用されるが、負のコロナ放電により感光体を帯電させる場合には発生するオゾンが環境および感光体特性に悪影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
それに対し、単層型の感光層の場合は、帯電に於いては正帯電方式が採用される。正帯電感光体を使用する際には、電気特性面では負帯電の積層型感光体より劣るものが多いものの、負帯電型で顕著なオゾン発生が低減されるという利点を有し、実用化されている。この他にも単層型感光体は、塗布工程が少なくなる、半導体レーザー光に対する干渉縞が生じ難い、等の利点がある。
【0005】
単層型感光体では、以上のような利点に加え、さらに、感光層の表面近傍で入射光のほとんどが吸収され、電荷が発生するので、照射光の感光層中での拡散はほとんど無視でき、さらに帯電後の表面電荷中和に至るまでの電荷の移動距離が積層型感光体に比べ少ないという利点が挙げられる。このため、光および電荷キャリアの拡散による画像ボケが起きづらく、高解像度が期待できるだけでなく、感光層の膜厚をより厚くした場合にも、電荷および入射光の拡散の度合いがさほど変わらず、解像度もあまり低下しないという特徴を有する。(特許文献1〜5参照)
一方で、単層型電子写真感光体は、感光層中に電荷発生物質と電荷輸送物質を同時に含むため、層の強度としては必ずしも充分でなく、後述するような 感光層のひび割れとい
う問題を有する。この場合、層の強度を実質的に支配するのは感光層のバインダー樹脂である。
【0006】
感光層のバインダー樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂が用いられている。数あるバインダー樹脂のなかではポリカーボネート樹脂が比較的
優れた性能を有しており、これまで種々のポリカーボネート樹脂が開発され実用に供されている(特許文献6〜10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−77054号公報
【特許文献2】特開昭61−188543号公報
【特許文献3】特開平2−228670号公報
【特許文献4】特公平7−97223号公報
【特許文献5】特公平7−97225号公報
【特許文献6】特開昭50−98332号公報
【特許文献7】特開昭59−71057号公報
【特許文献8】特開昭59−184251号公報
【特許文献9】特開平5−21478号公報
【特許文献10】特開平6−75389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子写真感光体は、プリンターの中では通常、電子写真カートリッジの形で存在し、一般的にはそのカートリッジには、クリーニングブレードや帯電器、場合によっては現像器やトナーも一緒に組み込まれている。近年、帯電器や現像器は接触のローラタイプのものが主流であり、特に帯電ローラについては安価化が進んでおり、可塑剤等の染み出しが懸念される低品質のものが使用される場合もある。
【0009】
一方、電子写真カートリッジが市場に販売される場合、部材(例えば帯電ローラ)と感光体が接触した状態で存在することが多い。その場合、接触部材から染み出してきた不純物等の影響で、感光層がダメージを受けることがある。一般的にはこの問題は、感光層のひび割れ(クラック)となって現れ、前述したように感光層中に電荷発生物質と電荷輸送物質を同時に含む単層型の感光体では、積層型に比べてその問題が深刻であった。
【0010】
従来の感光体ではこの問題があるために、単層型感光層のバインダー樹脂の選定に限界があり、クラックの問題が解消したとしても、必ずしも電気特性が充分に得られないという問題があった。
本発明は、このような課題を解決すべくなされたものである。
即ち、本発明の目的は耐クラック性に優れ、かつ電気特性が良好な、単層型感光層を有する正帯電型電子写真感光体を提供することにより、接触帯電方式に於ける優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、単層型感光層に特定の構造を有するポリカーボネート樹脂を含有させることにより、十分な耐クラック性を有し、且つ、良好な電気特性を示すことを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明の要旨は、電子写真感光体、電子写真感光体に帯電させるための帯電部材、電子写真感光体に静電荷潜像を形成させるための露光手段、及び潜像を可視化するための現像手段とを有する画像形成装置において、
該帯電部材が電子写真感光体に接触させて帯電させる接触帯電部材であり、
該電子写真感光体が導電性基体上に単層型感光層を有する正帯電型電子写真感光体であって、
該感光体が下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする画像形成装置に存する。
【0012】
【化1】

【0013】
(一般式(1)中、R、R、R及びRは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは、結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。)
また、本発明の別の要旨は、上述の画像形成装置に使用される電子写真感光体に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接触部材に対する耐クラック性が良好で、かつ、電気特性に優れた単層型感光層を有する正帯電型電子写真感光体を得ることができ、接触帯電方式の優れた画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す図。
【図2】本発明で用いる帯電部材の一例を説明する説明図。
【図3】帯電ブラシの説明図。
【図4】実施例1で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線による粉末X線回折スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<導電性基体>
導電性基体としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料やアルミニウム、ニッケル、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙などが主として使用される。形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性基体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
【0017】
導電性基体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、導電性基体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。
【0018】
<下引き層>
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂単独、あるいは、樹脂に金属酸化物等の粒子や有機顔料を分散したものなどが用いられる。
【0019】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0020】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0021】
一方、特に単層型感光体の場合は、積層型感光体に於ける電荷発生層を、下引き層の代用とすることもできる。この場合は、フタロシアニン顔料やアゾ顔料をバインダー樹脂中に分散して塗布したものなどが好適に用いられる。この場合、特に電気特性が優れる場合があり、好ましい。
バインダー樹脂に対する顔料の添加比は任意に選べるが、10wt%から500wt%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
【0022】
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性から0.1μmから25μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明の画像形成装置に用いられる電子写真感光体の感光層は、特定構造を有する共重合ポリカーボネート樹脂を含有し、該樹脂は感光体の導電性支持体上に設けられる感光層のバインダー樹脂として用いられる。
【0023】
本発明の感光層の具体的な構成としては、導電性支持体上に、電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層を有する分散型(単層型)感光体が挙げられる。本発明における、下記の一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂は、該感光体の導電性支持体上に設けられる感光層中のバインダー樹脂として用いられる。
【0024】
【化2】

【0025】
一般式(1)中、R、R、R及びRは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは、結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。
一般式(1)で表される繰り返し構造は、共重合ポリカーボネート樹脂全体のモル比率で少なくとも10%以上含有していればよく、好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上含有していれば良い。また、上限は共重合ポリカーボネート樹脂全体の70%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下含有していることが好ましい。
【0026】
前記一般式(1)で表される繰り返し構造の共重合成分としては、下記構造式(2)で表される繰り返し構造が好ましい。さらには、前記一般式(1)が下記構造式(3)で表されることが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
共重合体中、上記構造式(2)の占めるモル比率が上記一般式(1)の占めるモル比率よりも大きいことが好ましく、上記構造式(2)の占めるモル比率が上記一般式(1)の占めるモル比率の2倍以上であることがさらに好ましい。
上記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリカーボネート樹脂において、それぞれ、粘度平均分子量は、感光層を塗布形成するのに適するよう、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が低下し実用的でなく、300,000以上であると、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難である。
【0029】
上述した本発明の樹脂は電子写真感光体に用いられ、該感光体の導電性支持体上に設け
られる感光層中のバインダー樹脂として用いられる。
<その他の樹脂>
本発明は、一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリカーボネート樹脂に他の樹脂を併用して用いても良い。
【0030】
この併用する樹脂はとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これら樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。併用する樹脂の混合割合は、特に限定されないが、本発明の効果を十分に得るためには、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましく、特には他の樹脂を併用しないことが好ましい。
【0031】
<感光層>
単層型感光層の場合には、バインダー樹脂中に、電荷輸送物質が溶解または分散され、電荷発生物質が分散され、同一の層となる。具体的には、例えば電荷輸送物質、電荷発生物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
【0032】
バインダー樹脂と電荷輸送物質の割合は、通常、バインダー樹脂100重量部に対して30〜200重量部、好ましくは40〜150重量部の範囲で使用される。
前記電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知の電荷輸送物質を用いてもよい。
【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
また、電荷発生物質としては例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。
【0037】
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などがあげられる。特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit. Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
【0038】
この場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
【0039】
これらの電荷輸送物質及び電荷発生物質が、本発明に係るポリカーボネート樹脂を含むバインダー樹脂に結着した形で感光層が形成される。感光層は、単一の層から成っているのが好ましい形態だが、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。後者の場合でも、層中の材料の働きから、単層型感光体と呼ぶ。
感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
【0040】
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で保護層を設けても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
【0041】
<電子写真感光体の調製方法>
本実施の形態が適用される電子写真感光体の調製方法は特に限定されないが、通常、この感光体を構成する層は、電子写真感光体の感光層形成方法として公知な、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法等により支持体上に塗布して形成される。これらの中でも生産性の高さから浸漬塗布方法が好ましい。
【0042】
該層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。
<画像形成装置>
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0043】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム
状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0044】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが本発明はこれに限るものではなく、接触帯電を行うものであればどのような形態のものでも構わない。以下帯電手段について詳細に説明する。
前記潜像保持部材に帯電を行う帯電部材の形状はブラシ状、ブレード状、フィルム状或いはローラ状等潜像保持部材に接触すればその形態は問わない。例えば帯電装置がローラ状の場合、通常少なくとも芯材とその周囲を覆う帯電部材から構成される。帯電部材としては潜像保持部材に密着させて接触させる必要から、比較的硬度が低い導電性または半導電性の弾性体が好ましく、例えばゴム材にカーボンなどの導電性粒子或いはその他の半導電性粒子を含有させた導電性ゴムが使用される。また帯電部材を支持部材と表面部材に分けて、支持部材に適当に硬度を持たせ潜像保持部材への密着性を保ちながら、表面部材で適度な電気抵抗を保持させた機能分離型帯電部材を使用することもできる。ローラ状の帯電部材を用いた態様を図2で詳細に説明する。
【0045】
図2中、Aは潜像保持部材であり、形状はドラム状、シート状或いはベルト状などいずれでもよい。Bは帯電部材を支える芯材である。この芯材の両端は潜像保持部材に帯電部材を接触させるために適当な圧力印加装置、たとえば金属バネなどで支えられた軸受け に保持される。そしてこの芯材の軸受け或いは他の電気的接触手段を使ってバイアス電位が印加される。芯材の材質としては導電性を持つものならば何でもよく通常は金属が使われる。金属の例として鉄、銅、真鍮、ステンレス材、アルミニウムなどがある。その他の導電性の有機材料例えばカーボンを練り込んだ樹脂成型品等を用いることもできる。
【0046】
Cはローラ状の支持部材であり、潜像保持部材に密着して接触し回転する。回転の駆動力は外部から加えてもよく、又は潜像保持部材との接触摩擦力で自由に回転させても良い。支持部材の材質としては導電性或いは半導電性を持つものなら何でも良い。通常は潜像保持部材と密着させて接触させる必要から、比較的表面硬度が低い弾性体であるゴム材、例えばNBR,EPDM,シリコーン樹脂、ネオプレンあるいは天然のゴム材及びこれらのゴムにカーボン等の導電性粒子或いは半導電性粒子を練り込んだ導電性ゴム等が使用される。もちろん良好な密着性が保たれるようによく精密加工された表面を持てば、ゴムのような弾性体以外の材料を用いても良い。しかるにこのような接触帯電装置を用いた場合、帯電の均一性が問題となり、帯電部材の電気伝導度が大きすぎると潜像保持部材の帯電ムラが生じて、正規現像時は黒部分の画像ムラ、反転現像時は白部分のカブリとなる画像欠陥になる。逆に電気伝導度が小さすぎると帯電不良が生じて像担持体が十分に帯電されない。従って、支持体の抵抗率としては102 〜1015Ωcmが好ましく、特に104 〜1012Ωcmが好ましい。
【0047】
Dは表面部材で機能分離型帯電部材を使用する場合に設けられる。材質としてはポリアミド樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、その他種々のポリエステル樹脂などが主成分として使用される。表面部材の抵抗率としては103 〜1014Ωcmが好ましく、特に105 〜1012Ωcmが好ましい。表面部材の膜厚は、帯電部材としての摩耗による耐久性を考慮すると厚い方が良いが、厚くしすぎると潜像保持部材への帯電能が悪くなるので通常0.01〜1000μm 、好ましくは0.1 〜500 μm の範囲で使用される。表面部材の製法としては支持部材の上にデイップ法、スプレー法、真空蒸着法、プラズマコーテイング法等で形成される。
【0048】
潜像保持部材を帯電させるために、帯電部材、すなわち芯材に印加する電圧としては直流電圧のみ、或いは直流に交流を重畳しても良い。交流としては周期的に変化する電圧で
あれば何でも良い。電圧の範囲としては直流電圧の場合、正または負の100〜4000V、好ましくは300〜3000Vである。重畳する交流電圧としてはピーク間電圧が100〜4000V、好ましくは300〜3000Vである。
【0049】
ブラシ状接触帯電器としては通常回転しながら使う回転型と、平板上にブラシを固定して使う固定型とに分けられるがいずれの方式も用いることができる。いずれの場合もブラシの特性としては直径約10μm、抵抗率103 〜107 Ωcmのものが一般的である。図3に代表的なブラシ状帯電器の構成例を示す。
図1に戻って装置の他の構成について説明する。
【0050】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
【0051】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0052】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0053】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は0.05〜5N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0054】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
【0055】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0056】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0057】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0058】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば+600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0059】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、正極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0060】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除
電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0061】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例及び参考例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。
<樹脂の製造>
まず、粘度平均分子量の測定について説明する。
【0063】
樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、2
0.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=t/t0−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
<感光体ドラムの製造>
実施例1
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランをボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して得られた疎水性処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとなし、該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液とした。
【0064】
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、外径30mm、長さ247mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダー上に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.2μmとなるように下引き層を得た。
次に、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図4に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン5部をトルエン70部と共にサンドグラインドミルにより分散した。同様に下記構造で示される電子輸送物質8部をトルエン112部と共にサンドグラインドミルにより分散した。一方、下記構造で示される正孔輸送物質を60部と、下記構造の繰り返し単位(1−1)からなる本発明に係るポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量22,000)100部をトルエン420部に溶解し、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05部を加え、これに上記の2種の分散液を、ホモジナイザーにより均一になるように混合した。このように調整した塗布液を、上述の下引き層上に、乾燥後の膜厚が25μmになるように浸漬塗布し、正帯電単層型の電子写真感光体Aを得た。
【0065】
尚、実施例で用いられる共重合ポリカーボネート樹脂は商品名「APEC」としてバイエル社から市販されている樹脂であり、更に精製はせず入手したままの状態で使用した。
【0066】
【化7】

【0067】
実施例2
バインダー樹脂として下記構造(1−2)の繰り返し単位を持つポリカーボネート樹脂100部用いた以外は、実施例1と同様にして、感光体Bを得た。
【0068】
【化8】

【0069】
実施例3
CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、図4に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10部を1,2−ジメトキシエタン150部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理を行ない顔料分散液を作成した。こうして得られた160部の顔料分散液を、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名#6000C)の5%1,2−ジメトキシエタン溶液100部と適量の1,2−ジメトキシエタンに加え、最終的に固形分濃度4.0%の分散液を作製した。
【0070】
この分散液を、外径30mm、長さ247mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダー上に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように下引き層を得た。
この上に、実施例1と同様の感光層を25μm塗布することで、感光体Cを得た。
比較例1
バインダー樹脂として、下記構造(3)の繰り返し単位のみを有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量20,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体Dを得た。
【0071】
【化9】

【0072】
比較例2
バインダー樹脂として、下記構造(4)で表されるビスフェノールZの繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体Eを得た。
【0073】
【化10】

【0074】
比較例3
バインダー樹脂として、下記構造(5)の繰り返し単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,000)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光体Fを得た。
【0075】
【化11】

【0076】
参考例1
実施例1で作製した下引き層形成用塗布液を、外径30mm、長さ247mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダー上に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が1.2μmとなるように下引き層を得た。
次に、実施例3で作製したオキシチタニウムフタロシアニンの分散液を、下引き層を形成したシリンダー上に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を得た。
【0077】
続いて、実施例1で用いた正孔輸送物質50重量部、繰り返し単位(1−1)からなる共重合ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量22,000)100重量部、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン8重量部、トリベンジルアミン0.1重量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05重量部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0078】
この電荷輸送層形成用塗布液に先に電荷発生層を形成したシリンダーを浸漬塗布して、乾燥後の膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体A‘とする。
参考例2
電荷輸送層のバインダー樹脂として実施例2で用いた繰り返し単位(1−2)を有する共重合ポリカーボネート樹脂100部用いた以外は、参考例1と同様にして、感光体B’を得た。
【0079】
参考例3
電荷輸送層のバインダー樹脂として、比較例1で用いた繰り返し単位(3)を有するポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量20,000)を用いた以外は、参考例1と同様にして感光体D’を得た。
参考例4
電荷輸送層のバインダー樹脂として、比較例2で用いた繰り返し単位(4)で表されるビスフェノールZのポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,000)を用いた以外は、参考例1と同様にして感光体E’を得た。
【0080】
参考例5
電荷輸送層のバインダー樹脂として、比較例3で用いた繰り返し単位(5)を有する共重合ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,000)を用いた以外は、参考例1と同様にして感光体F’を得た。
作製した感光体ドラムA〜Fについて、以下の電気特性試験とクラック試験、画像特性試験を、また、感光体ドラムA’〜F’についてはクラック試験のみを行ない、これらの結果を表1にまとめた。
【0081】
<電気特性試験>
日本画像学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、日本画像学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体ドラムを一定回転数60rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が+700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを1.5μJ/cm2で露光したときの露光後表面電位(以下、VLと呼ぶことがある)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を100msとした。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。
【0082】
<クラック試験>
上記感光体ドラムを、市販されているブラザー社製DR400感光体カートリッジに装着し、帯電ローラと圧接していることを確認した。このカートリッジを55℃、40%の環境室に120時間放置したあとに取り出し、感光体の表面を観察し、クラック発生の有無を確認した。
【0083】
<画像特性試験>
上記クラック試験を終えたドラムを再度DR400カートリッジに組み込み、同じくブラザー社製プリンターであるHL−1240に装着し、ハーフトーン画像を出力した。その画質について、評価した。
【0084】
【表1】

【0085】
以上の結果より、参考例1〜5で示されるように、積層型の感光層に於いては、いずれのバインダー樹脂を選定しても、帯電ローラ由来のクラックは発生しなかった。
一方で、正帯電方式で用いられる単層型の感光層に於いては、本発明に係るポリカーボネート樹脂を含有した場合に限り、耐クラック性と電気特性の両方が確保されていることがわかる。
【0086】
すなわち、本発明の単層型電子写真感光体を用いた場合に限り、接触帯電方式の正帯電
型画像形成装置として、優れた画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(定着ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙
A 潜像保持部材
B 芯材
C ローラ状支持部材
D 表面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体、電子写真感光体に帯電させるための帯電部材、電子写真感光体に静電荷潜像を形成させるための露光手段、及び潜像を可視化するための現像手段とを有する画像形成装置において、
該帯電部材が電子写真感光体に接触させて帯電させる接触帯電部材であり、
該電子写真感光体が導電性基体上に単層型感光層を有する正帯電型電子写真感光体であって、
該感光層が下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする画像形成装置。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、R及びRは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは、結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。)
【請求項2】
該ポリカーボネート樹脂が、上記一般式(1)と下記構造式(2)との共重合体である、請求項1に記載の画像形成装置。
【化2】

【請求項3】
該ポリカーボネート樹脂中に於いて、上記構造式(2)の占めるモル比率が上記一般式(1)の占めるモル比率よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
該ポリカーボネート樹脂中に於いて、上記構造式(2)の占めるモル比率が上記一般式(1)の占めるモル比率の2倍以上であることを特徴とする、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
上記一般式(1)が下記構造式(3)で表される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【化3】

【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置に搭載される、電子写真感光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−22256(P2012−22256A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161814(P2010−161814)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】