説明

画像形成装置用導電性弾性部材、及び画像形成装置

【課題】抵抗値の環境変動や通電変動が小さく、均一な抵抗値を安定的に得ることができる画像形成装置用の導電性弾性部材、及び該導電性弾性部材を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】弾性樹脂材料にイオン導電性物質としてリチウムイミドを添加配合して抵抗値を7〜9[logΩ]に調整した弾性体を主体としてなる画像形成装置用導電性弾性部材であって、上記弾性樹脂材料として、イソシアナート成分とポリマーポリオール成分とを反応硬化させたポリウレタンであり、かつ前記ポリマーポリオール成分中の親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの比が質量比で親水ポリマー/疎水ポリマー=20/80〜30/70で、抵抗値が11〜13[logΩ]のポリウレタンを用いたことを特徴とする画像形成装置用導電性弾性部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンターなどの画像形成装置において、帯電、現像、転写、中間転写、トナー供給、クリーニングなどを行うための導電性弾性部材に関し、特にカラー画像を形成する際に感光ドラムからトナー像を自己の表面に一旦転写保持し、これを記録媒体へと転写する中間転写部材として好適に用いられる導電性弾性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンター等のOA機器には、帯電、現像、転写、中間転写、トナー層形成、トナー搬送、トナー攪拌、クリーニング、定着、紙搬送等を行うためのベルト、ローラ、ドラム、ブレード等の部材が使用されている。
【0003】
これらの部材は、多くの場合、軟らかさが要求され、ゴム状弾性体やフォーム体を主体として形成される。また、これらの用途では、通常4〜10[logΩ]程度の導電性が要求される場合が多く、その場合、導電剤の添加により上記ゴム状弾性体やフォーム体に導電性を付与して用いられる。
【0004】
ここで、上記ゴム状弾性体やフォーム体を構成する材料としては、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等の固形ゴム加硫物や、ポリオールをイソシアナートにより硬化させたポリウレタンなどが用いられている。また、上記導電剤としてはカーボンブラック、金属酸化物等の電子導電剤や、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第4級アンモニウム塩の塩化物、過塩素酸化物、ホウフッ化物、アルキル硫酸化物、カルボン酸化物等のイオン導電剤が用いられている(特許文献1:特開2000−26719号公報)。
【0005】
この場合、画像形成装置用導電性弾性部材には、抵抗値が上記の所定値でバラツキなく安定していることが要求されるが、導電剤として電子導電剤を用いた場合、低抵抗化が比較的容易であるが、抵抗値のバラツキが生じやすく、連続通電により抵抗値が上昇し易い欠点がある。一方、イオン導電剤は、バラツキの無い均一な抵抗値を有する弾性体やフォーム体を得ることができ、連続通電による抵抗値の上昇も少ないが、温度/湿度環境の変動による抵抗値の変動幅が大きく、この場合環境変動幅を小さくしようとすると通電上昇が悪化する傾向がある。また、イオン導電剤は低抵抗化が難しく、低抵抗を得ようとすると通電上昇が悪くなってしまうのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−26719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、抵抗値の環境変動や通電変動が小さく、均一な抵抗値を安定的に得ることができる画像形成装置用の導電性弾性部材、及び該導電性弾性部材を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、弾性樹脂材料にイオン導電性物質を添加配合して抵抗値を7〜9[logΩ]に調整した弾性体を得、この弾性体で画像形成装置用の導電性弾性部材を製造する場合に、上記弾性樹脂材料として、イソシアナート成分とポリマーポリオール成分とを反応硬化させたポリウレタンであり、かつ前記ポリマーポリオール成分中の親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの比が質量比で親水ポリマー/疎水ポリマー=20/80〜30/70で、抵抗値が11〜13[logΩ]のポリウレタンを用いることにより、抵抗値の環境変動特性、通電変動特性に優れた導電性弾性部材を得ることができ、特にイオン導電性物質としてリチウムイミドを用いた場合に、これら変動特性に優れ、かつ抵抗値の均一性に優れ、良好な性能を安定的に発揮し得る導電性弾性部材が得られ、高性能な転写部材等として好適に用いられることを見出し、本発明を完成したものである。
【0009】
即ち、弾性樹脂材料の抵抗値をイオン導電性物質を添加して画像形成用途に適した7〜9[logΩ]に調整する場合に、弾性樹脂材料として上記特定のポリウレタンを用いて、その抵抗値を11〜13[logΩ]と比較的高い抵抗値とする一方で、導電剤の添加量を比較的多くして所定の抵抗値を得るようにすることによって、良好な環境変動特性、通電変動特性が得られ、この導電性弾性樹脂材料を用いて導電性弾性部材を構成することにより、これら変動特性に優れ、かつ抵抗値の均一性に優れ、良好な性能を安定的に発揮し得る導電性弾性部材が得られることを見い出したものである。また、リチウムイミドは、抵抗値の環境安定性に優れるものの、そのままでは通電による抵抗上昇が比較的大きいイオン導電剤であるが、上記特定のポリウレタンとの組み合わせにより、抵抗値の通電変動特性が改善され、特に環境変動特性、通電特性に優れた導電性弾性体が得られることが見い出されたものである。
【0010】
従って、本発明は、弾性樹脂材料にイオン導電性物質としてリチウムイミドを添加配合して抵抗値を7〜9[logΩ]に調整した弾性体を主体としてなる画像形成装置用導電性弾性部材であって、上記弾性樹脂材料として、イソシアナート成分とポリマーポリオール成分とを反応硬化させたポリウレタンであり、かつ前記ポリマーポリオール成分中の親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの比が質量比で親水ポリマー/疎水ポリマー=20/80〜30/70で、抵抗値が11〜13[logΩ]のポリウレタンを用いたことを特徴とする画像形成装置用導電性弾性部材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性弾性部材によれば、抵抗値の環境変動や通電変動が小さく、均一な抵抗値を安定的に得ることができ、良好な性能を安定的に発揮し得る。従って、この導電性弾性部材を中間転写部材として用いた本発明の画像形成装置は、良好な画像を安定的に得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】中間転写部材を用いた画像形成装置の一例を示す該略図である。
【図2】実施例,比較例における各ローラの抵抗値の通電上昇を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の画像形成装置用導電性弾性部材は、上記のように、弾性樹脂材料にイオン導電性物質を添加配合して抵抗値を7〜9[logΩ]に調整した弾性体を主体とするものである。
【0014】
ここで、上記弾性樹脂材料としては、その抵抗値が11〜13[logΩ]、好ましくは11.5〜12.5[logΩ]のものであり、本発明では、イソシアナート成分とポリマーポリオール成分とを反応硬化させたポリウレタンが用いられる。
【0015】
この場合、上記ポリマーポリオールとしては、親水性ポリマーと疎水性ポリマーとを、親水ポリマー/疎水ポリマー=20/80〜30/70(質量比)の割合で含有するものが用いられ、特にイオン導電物質として環境による抵抗変動が少ないリチウムイミド等を用いた場合には、良好な環境変動特性を十分に維持しつつ通電による抵抗値変動を効果的に抑制して、非常に良好な抵抗安定性を得ることができる。その理由は次の通りと推察される。
【0016】
即ち、リチウムイミドなどの環境変動の少ないイオン導電性物質は、通常通電耐久性におとり、連続通電により抵抗値が上昇してしまうことが多く、このようなイオン導電性物質は解離度、移動度がともに高い電解質と考えられるが、周囲の環境を疎水性とすることで解離を抑制すると共に、分極が進むと非解離の電解質が解離してイオンを供給して、通電による抵抗値の上昇を抑制するためと推察される。
【0017】
上記親水性ポリマーとしてしは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオールや、ポリオールにアクリロニトリル又はアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したアクリロニトリル系ポリマーポリオールが好ましく用いられる。
【0018】
上記アクリロニトリル系ポリマーポリオールを用いる場合、アクリロニトリル及び/又はスチレンをグラフト重合させるポリオールとしては、ポリエーテルポリオールが耐湿性等の点から好ましく、特にエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオールが好適に用いられる。この場合、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオールの付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率は、特に制限されるものではないが、エチレンオキサイドの比率が20〜30質量%であることが好ましく、エチレンオキサイドの比率が高すぎると環境による抵抗値の変動幅が大きくなりやすい。更に、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましく用いられる。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの配列は、ランダムであるのが好ましい。このポリエーテルポリオールの分子量は、特に制限されるものではないが、2官能の場合は重量平均分子量で80〜1000の範囲のものが好ましく、3官能の場合は重量平均分子量で300〜1500の範囲のものが好ましい。
【0019】
上記ポリマーポリオールと共に他のポリオール成分を併用することもできる。他のポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオールとしてはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオールが例示される。この場合、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したポリエーテルポリオールは、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質としてエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができる。
【0020】
なお、親水性ポリマーとしてポリエーテルポリオールを用いる場合、その主鎖の酸素含有率が18〜36質量%であることが好ましい。
【0021】
次に、疎水性ポリマーとしては、特に制限されるものではないが、ポリイソプレンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0022】
この疎水性ポリマーは、特に制限されるものではないが、水酸基間の分子量が1000〜4000であることが好ましく、また主鎖の酸素含有率が0.1〜18質量%であることが好ましい。
【0023】
親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの含有比率は、上述のように親水ポリマー/疎水ポリマー=20/80〜30/70(質量比)とされるが、この場合、親水ポリマーが上記比率よりも多いと(疎水ポリマーが少ないと)、得られるポリウレタンの抵抗値が低くなりやすく、上述した本発明の抵抗値を達成し得ない場合がある。
【0024】
上記ポリオール成分とともに、本発明の目的が損なわれない範囲で、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、アジピン酸等の酸成分とエチレングリコール等のグリコール成分を縮合して得られるポリエステルポリオール、ε一カプロラクタムを開環重合して得られるポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やそれらの誘導体を併用することもできる。
【0025】
次に、上記ポリマーポリオールと反応させるイソシアナートとしては、特に制限はなく、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート又はそれらの誘導体などの公知のイソシアナートを用いることができる。より具体的には、トリレンジイソシアナート又はその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアナート,2,4−トリレンジイソシアナート,2,6−トリレンジイソシアナート,2,4−トリレンジイソシアナートと2,6−トリレンジイソシアナートの混合物、それらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボシイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が挙げられる。ジフェニルメタンジイソシアナート又はその誘導体としては、ジアミノジフェニルメタン又はその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアナートが挙げられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体があり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアナート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアナートが例示される。またこれらのジフェニルメタンジイソシアナート又はその誘導体を変性して得られた誘導体、例えばポリオール等で変性したウレタン変性物,ウレチジオン形成による二量体,イソシアヌレート変性物,カルボシイミド/ウレトンイミン変性物,アロハネート変性物,ウレア変性物,ビュレット変性物等も用いることができ、これらの中ではウレタン変性物,カルボシイミド/ウレトンイミン変性物が好ましく用いられる。
【0026】
これらのイソシアナートは、トリレンジイソシアナート又はその誘導体,ジフェニルメタンジイソシアナート又はその誘導体を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ヘキサメチレンジイソシアナート等の各種脂肪族イソシアナートやイソホロンジイソシアナート等の脂環族イソシアナート又はそれらの誘導体を併用することもできる。上記イソシアネートの配合量は、上記ポリオール成分の官能基数などに応じて適宜設定され、に制限されるものではないが、通常はNCO Indexで0.9〜1.3、特に1〜1.1とすることが好ましく、NCO Indexが低すぎると、硬度が低くなり過ぎて、製品毎の目標硬度が得られない場合があり、一方NCO Indexが高すぎると硬度が高くなりすぎて、同じく製品毎の目標硬度が得られない場合がある。
【0027】
本発明で用いられる弾性樹脂材料は、上述のように、その抵抗値が11〜13[logΩ]のものであるが、この場合この抵抗値は、後述する導電剤を添加しない状態で、目的とする部材と同等に成形した場合の抵抗値であり、その測定条件は、22℃、55%RHの環境下で1000Vの電圧を印加した際の抵抗値である。
【0028】
次に、この弾性樹脂材料に添加される導電剤としては、イオン導電性物質が用いられ、本発明では、上述した特定ポリウレタンとの組み合わせでリチウムイミドが用いられる。
【0029】
導電剤の配合量は、弾性樹脂材料の抵抗値が7〜9[logΩ]の範囲になるように、用途等により求められる導電性に応じて適宜設定され、特に制限されるものではないが、通常、上記弾性樹脂材料100質量部に対して0.003〜0.006質量部とすることが好ましく、0.004〜0.005質量部とすることが特に好ましい。なお、導電剤の添加により調整する抵抗値の測定方法は、上記の場合と同様に、22℃、55%RHの環境下で1000Vの電圧を印加した際の抵抗値である。
【0030】
本発明では、上記導電剤を含む弾性樹脂材料にこれを良好に硬化させるための硬化触媒を配合することができる。硬化触媒としては、トリエチルアミン,ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン,テトラメチルプロパンジアミン,テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン,ペンタメチルジプロピレントリアミン,テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン,ジメチルピペラジン,メチルエチルピペラジン,メチルモルホリン,ジメチルアミノエチルモルホリン,ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール,ジメチルアミノエトキシエタノール,トリメチルアミノエチルエタノールアミン,メチルヒドロキシエチルピペラジン,ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル,エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート,ジブチル錫ジアセテート,ジブチル錫ジラウレート,ジブチル錫マーカプチド,ジブチル錫チオカルボキシレート,ジブチル錫ジマレエート,ジオクチル錫マーカプチド,ジオクチル錫チオカルボキシレート,フェニル水銀プロピオン酸塩,オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが例示され、これらの1種又は2種以上を用いることができ、これらの中では有機錫触媒が特に好ましく用いられる。
【0031】
本発明の導電性弾性部材を構成する弾性樹脂材料は、用途に応じてエラストマーであってもフォーム体であってもよいが、フォーム状のポリウレタンとする場合には、フォーム材のセルを安定させるためにポリウレタン組成物に各種界面活性剤やシリコーン整泡剤を配合することが好ましい。シリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分からなるものが好ましく用いられる。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく用いられ、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤,アニオン性界面活性剤,両性界面活性剤等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル,各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリウレタン材料100質量部に対して2〜5質量部とすることが好ましく、3〜4質量部とすることがさらに好ましい。
【0032】
更に、上記弾性樹脂材料には、各種充填材、着色顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの公知の添加物を必要に応じて適量配合することができる。
【0033】
本発明の導電性弾性部材を構成する上記弾性樹脂材料は、上記のようにエラストマーであってもフォーム体であってもよいが、特に制限されるものではないが、ポリウレタンを用いる場合にはフォーム体とすることが本発明の効果が顕著であり好ましい。この場合の発泡方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば水、有機溶剤、各種代替フロン等の発泡剤による方法、機械的な攪拌により気泡を混入する方法などを用いることができる。また、発泡倍率や嵩密度などは、用途に応じて適宜設定すればよく、特に制限されるものではないが、通常、発泡倍率は最大セル径で50〜200μm、特に50〜100μm、嵩密度は0.1〜0.9g/mL、特に0.4〜0.6g/mL程度であることが好ましい。
【0034】
ポリウレタンフォームで部材を製造する際の配合及び加熱硬化は、上記ポリオール成分、イソシアナート成分、導電剤、反応触媒及び所望により用いられる各種添加成分を混合撹絆し、必要に応じて上記方法により気泡を混入させ、所定のモールド等に注型するか又はブロック状に自由発泡させるなどの操作を行った後、加熱硬化させる方法が好ましく用いられる。また、予め、ポリオール成分とイソシアナート成分とを反応させてイソシアナート基を有するプレポリマーを調製し、これをエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンや分子量400〜5000程度のポリオールなどの鎖延長剤を用いて硬化させるプレポリマー法も用いることができる。
【0035】
本発明の導電性弾性部材は、上記イオン導電性物質の添加により抵抗値を調整した上記弾性樹脂材料を主体とするものであり、ローラ状、ベルト状、ブレード状、ドラム状等の種々の形態に成形され、複写機やプリンターなどの画像形成装置の帯電部材、現像部材、転写部材、中間転写部材、トナー供給部材、クリーニング部材などとして用いられるものであるが、特にローラ状又はドラム状の中間転写部材として特に好適である。
【0036】
本発明の導電性弾性部材を転写部材として用いた具体例を例示すれば、図1に示した画像形成装置を例示することができる。即ち、図1中、1はドラム状の感光体であり、図中矢印方向に回転するようになっている。この感光体1は、一次帯電器2によって帯電され、次いで画像露光3により露光部分の帯電が消去されて静電潜像がこの感光体1上に形成され、更に静電潜像が現像器現像され、トナー画像が感光体1上に形成される。そして、上記トナー画像が形成された感光体1に転写ローラ(転写部材)25が当接し、そのニップ部に給紙カセット9から紙等の記録媒体24が給送され、これと同時に二次転写バイアスが転写ローラ25に印加され、トナー画像が感光体1から記録媒体24に転写され、更にこの記録媒体24は定着器15へ導入されて記録媒体24上のトナー画像が加熱定着され、最終画像となる。そして、トナー画像を記録媒体24へと転写した後の感光体1は、表面の転写残留トナーがクリーニングブレード14により除去され、初期状態に戻り次の画像形成に備えるようになっている。
【0037】
本発明の導電性弾性部材は、このようなローラ状の上記転写部材25として好適に用いられるものである。このように、ローラ状の部材とする場合、通常は金属製の芯金の周囲に上記弾性樹脂材料からなる弾性体を成形してローラ状に形成される。この場合、芯金の周囲に弾性体を形成する方法としては、芯金を予めモールド内部に配設しておき弾性体原料を注型硬化する方法や、弾性体を所定の形状に成型した後接着する方法を用いることができる。いずれの場合も、必要に応じて芯金と弾性体との間に接着層を設けることができ、導電性塗料からなる接着剤やホットメルトシート等を用いることができる。本発明の導電性弾性部材の成型方法は、既に述べた所定の形状のモールドに注型する方法の他、ブロックから切削加工により所定の寸法に切り出す方法、研磨処理により所定の寸法にする方法、あるいはこれらの方法を適宜組み合わせる方法などを用いることができる。
【0038】
また、本発明の導電性弾性部材は、非汚染性に優れ、感光ドラムなどに長時間密着した状態が続いても感光ドラムなどの相手部材を汚染することはなく、通常は汚染防止を目的とした表皮層の形成は必要ないが、その用途等に応じて上記弾性樹脂材料からなる弾性体の表面に表皮層を形成することもできる。更に、本発明の導電性弾性部材は、上記弾性樹脂材料からなる弾性体を主体としていればよく、その用途や形状等に応じて適宜な芯材を用いるなど、公知の構成を付加することは差し支えない。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
表1に示した成分を機械攪拌により発泡させながら混合し、この混合物を直径6mmの金属製シャフトを中心に配置したモールド内に注型し、90℃で3時間加熱硬化させ、直径16.5mm、長さ215mmのウレタフォームローラを得た。同表に示された各成分の詳細は下記の通りであり、またいずれのローラもイオン導電剤の添加により抵抗値を7.9[logΩ](22℃、55%RH、1000V印加時)に調整した。なお、表中の配合量は重量部である。
【0040】
[ポリマーポリオール]
疎水性ポリオール
ポリイソプレンポリオール(OH基間の分子量:約2500)
親水性ポリオール
グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドをランダムに付加した、官能基数が3、重量平均分子量5000のポリエーテルポリオール(主鎖の酸素含有率:29質量%)。
[整泡剤]
シリコーン整泡剤
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物でOH価が32mgKOH/gであるシリコーン整泡剤。
[顔料]
黒色着色料
黒色顔料をポリオールに分散させてなるOH価45mgKOH/gの黒色着色料。
[触媒]
ジブチル錫ジラウレート。
[イオン導電剤]
リチウムイミド
[イソシアナート]
変性MDI
ジフェニルメタンジイソシアナートと、ウレタン変性ジフェニルメタンジイソシアナートと、カルボシイミド変性ジフェニルメタンジイソシアナートの混合物であり、イソシアナート含有率は26.3質量%。
【0041】
得られた各ローラにつき、下記方法により環境変化による抵抗値の変動幅(環境変動幅)、連続通電による抵抗値の上昇(通電上昇)、ポリウレタンフォームの抵抗値を測定、評価した。結果を表1に示す。
[環境変動幅]
L/L環境(10℃、15%RH)、N/N環境(22℃、55%RH)、H/H環境(28℃、85%RH)の各環境下で、シャフト/ローラ表面間に10μAの電流を通電して抵抗値を測定し、測定した抵抗値を対数換算した上で最大値と最小値との差を変動幅とした。なお、各ローラは、製造時の導電剤配合によりN/N環境(22℃、55%RH)下で約107.9Ωの抵抗値を示すように調製されている。
[通電上昇]
ローラを30rpmで回転するφ30mmのアルミニウムドラム上で従動回転させながら、10μAの電流を50時間連続通電し、初期の抵抗値と50時間後の抵抗値を対数換算し、その差を通電上昇値とした。また、抵抗値の変化をグラフとして図2に示した。
[ポリウレタンフォームの抵抗値]
導電剤(リチウムイミド)を添加せずに形成したローラの抵抗値をN/N環境(22℃、55%RH)下で1000Vの電圧を印加して測定した。
【0042】
【表1】


*1:図2に示したグラフの通り、比較例1〜3の各ローラは、いずれも30時間以内に抵抗値が測定機器の測定限界(8.8[logΩ])に達してしまい。50時間後の抵抗値を測定することができなかった。
【0043】
表1に示されているように、ポリマーポリオール成分中の親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの比を調整してポリウレタンフォームの抵抗値を11〜13[logΩ]とした本発明のローラは、抵抗値の環境変動や通電変動が小さく、均一な抵抗値を安定的に得ることができ、良好な性能を安定的に発揮し、像形成装置用導電性弾性部材として好適に用いられるものであることが確認された。
【符号の説明】
【0044】
1 感光ドラム
14 クリーニングブレード
15 定着器
2 帯電器
24 記録媒体
25 転写ローラ
4 現像器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性樹脂材料にイオン導電性物質としてリチウムイミドを添加配合して抵抗値を7〜9[logΩ]に調整した弾性体を主体としてなる画像形成装置用導電性弾性部材であって、
上記弾性樹脂材料として、イソシアナート成分とポリマーポリオール成分とを反応硬化させたポリウレタンであり、かつ前記ポリマーポリオール成分中の親水性ポリマーと疎水性ポリマーとの比が質量比で親水ポリマー/疎水ポリマー=20/80〜30/70で、抵抗値が11〜13[logΩ]のポリウレタンを用いたことを特徴とする画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項2】
上記親水性ポリマーとして、アクリロニトリル系ポリマーポリオールを含有する請求項1記載の画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項3】
上記親水性ポリマーとして、ポリエーテルポリオールを含有する請求項1記載の画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項4】
上記親水性ポリマー中の主鎖の酸素含有率が18〜36質量%である請求項3記載の画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項5】
上記疎水性ポリマーとして、水酸基間の分子量が1000以上の主鎖を持つポリオールを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項6】
上記疎水性ポリマーの主鎖の酸素含有率が0.1〜18質量%である請求項5記載の画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項7】
感光ドラムからトナー像を記録媒体へと転写する転写部材である請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像形成装置用導電性弾性部材。
【請求項8】
感光ドラムに形成されたトナー像を記録媒体へと転写して記録媒体上に画像を形成する画像形成装置において、前記転写操作を行う転写部材として請求項7記載の導電性弾性部材を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−43842(P2011−43842A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224827(P2010−224827)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【分割の表示】特願2004−356494(P2004−356494)の分割
【原出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】