説明

画像形成装置

【課題】排気口からの臭い成分の流出を防止することができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】排気口37を備えた本体ケース2と、本体ケース2の内部に設けられ、未定着像を担持するシート材を加熱することにより未定着像をシート材に定着させる定着部と、該定着部において未定着像の定着の際に発生する臭い成分を含む気体を、排気口37に導く排気経路と、排気経路の途中に設けられ、前記未定着像の定着の際に発生する臭い成分を分解する機能を、加熱により生じる熱触媒41とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ等の画像形成装置(以下「プリンタ」という)の使用時において、プリンタから発生する臭気が問題となっている。
現状においても、環境基準が設定され、十分な対策が行われているものの、例えば、プリンタの近くで作業を行う状況が多く見受けられるSOHO(在宅、小規模オフィス)や、環境対策が特に望まれている公共施設および教育機関などでは、臭いに対する対策が望まれている。
【0003】
従来、例えば、トナーそのものの改善によって、トナー自体から発生する臭い(臭気)および定着ローラなどを用いた加熱などによりトナーを定着する際に発生する臭いを抑える技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、トナー材料を改善しても完全に臭いを取り去ることは現時点では難しく、用いられるトナーも特殊なもの(添加する材料が特殊なもの)であることから、そのコストが懸念される。
また、画像形成装置(レーザープリンタ)は、装置そのものが高温状態で使用されることから、定着装置部分での臭いが停滞することもあり、プリンタの排気系からの臭いの流出も完全に防ぐことは難しい。
【0004】
【特許文献1】特開2000−330326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、排気口からの臭い成分の流出を防止することができる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の画像形成装置は、排気口を備えたケーシングと、
前記ケーシング内部に設けられ、未定着像を担持する記録媒体を加熱することにより前記未定着像を記録媒体に定着させる定着部と、
該定着部において前記未定着像の定着の際に発生する臭い成分を含む気体を、前記排気口に導く排気経路と、
前記排気経路の途中に設けられ、前記未定着像の定着の際に発生する臭い成分を分解する機能を、加熱により生じる触媒とを備えたことを特徴とする。
これにより、臭い成分を効率よく分解することができるため、(臭い成分に対する優れた触媒作用(分解作用)を発揮することができるため)、排気口からの臭い成分の流出を防止することができる。また、保守作業の軽減を図ることができ、コストの低減を図ることができる。
【0007】
本発明の画像形成装置では、前記触媒は、主として貴金属で構成されていることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に臭い成分を効率よく分解することができる。
本発明の画像形成装置では、前記貴金属は、白金を主成分とするものであることが好ましい。
このものは、触媒作用に優れる。
【0008】
本発明の画像形成装置では、前記触媒は、主として金属酸化物で構成されていることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に臭い成分を効率よく分解することができる。
本発明の画像形成装置では、前記金属酸化物は、酸化ニッケル、酸化コバルトまたは酸化チタンを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に臭い成分を効率よく分解することができる。
【0009】
本発明の画像形成装置では、前記定着部は、中空状の定着ローラと、前記定着ローラに圧接される加圧ローラとの接触部で構成され、
前記定着ローラの内部が、前記排気経路の一部を構成していることが好ましい。
これにより、確実に臭い成分が、ローラの内部を通過する。
本発明の画像形成装置では、前記定着ローラの内部に熱源を有し、
前記熱源によって前記触媒を加熱するよう構成されていることが好ましい。
これにより、別個に熱源を設けることがなく、装置全体の小型化を図ることができる。
【0010】
本発明の画像形成装置では、前記触媒は、前記定着ローラの内周面に設けられていることが好ましい。
これにより、確実に触媒を加熱することができる。
本発明の画像形成装置では、前記排気経路内に、前記臭い成分を吸着する機能を有するフィルターを備えることが好ましい。
これにより、臭い成分の吸着性と臭い成分に対する分解作用とが得られるため、より確実に、排気口からの臭いの流出を防止することができる。
【0011】
本発明の画像形成装置では、前記定着ローラの内部に、前記臭い成分を吸着する機能を有するフィルターを備え、前記触媒は、前記フィルターの内部または表面に担持されることが好ましい。
これにより、臭い成分の吸着性と臭い成分に対する分解作用とが得られるため、より確実に、排気口からの臭いの流出を防止することができる。また、装置の小型化が図れる。
【0012】
本発明の画像形成装置では、前記フィルターは、多孔質体で構成されていることが好ましい。
これにより、より高い臭い成分の吸着性が得られる。
本発明の画像形成装置では、前記フィルターは、主として炭素系物質で構成されていることが好ましい。
これにより、さらに高い臭い成分の吸着性が得られる。また、高い熱伝導性を有するため、フィルターを定着ローラの内部に設けた場合は、熱源からの熱を効率よく触媒に伝達させることができる。
【0013】
本発明の画像形成装置では、前記触媒は、粉末状のものであることが好ましい。
これにより、触媒の表面積を増大させることができ、臭い成分と触媒とが接触する頻度をより高めることができる。
本発明の画像形成装置では、前記粉末状の前記触媒は、その平均粒径が、1〜100μmであることが好ましい。
これにより、触媒の表面積を十分に大きくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の画像形成装置について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す側面断面図である。
画像形成装置1は本体ケース(ケーシング)2を有し、装置1の前面に開閉可能に装着される前面カバー2aを備えている。本体ケース2内には、感光体ドラムからなる像担持体3が配設され、図示しない駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。この像担持体3の周囲には、その回転方向に沿って、像担持体3を一様に帯電するための帯電装置4、像担持体3上に静電潜像を形成するための露光装置5、静電潜像を現像するためのロータリー現像装置6、像担持体3上に形成された単色のトナー像を一次転写するための中間転写装置7が配設されている。
【0015】
ロータリー現像装置6は、イエロー用現像装置6Y、マゼンタ用現像装置6M、シアン用現像装置6Cおよびブラック用現像装置6Kが支持フレーム9に装着され、支持フレーム9は図示しない駆動モータにより回転駆動される構成になっている。これらの複数の現像装置6Y、6M、6C、6Kは、像担持体3の所定量の回転毎に或る現像装置の現像ローラ6aが選択的に像担持体3に対向するように回転移動するようにされている。なお、各現像装置6Y、6M、6C、6Kには各色のトナーが収納されたトナー収納部が形成されている。
【0016】
中間転写装置7は、駆動ローラ10および従動ローラ11と、両ローラ10、11に巻架され図示矢印方向に駆動される中間転写ベルト12と、ベルト12の裏面で像担持体3に対向して配設された一次転写ローラ13と、ベルト12上の残留トナーを除去する転写ベルトクリーナ14と、駆動ローラ10に対向して配設され、中間転写ベルト12上に形成された4色フルカラー像をシート材(記録媒体)上に転写するための二次転写ローラ15とからなっている。
【0017】
露光装置5の下方には電源機器16が配設され、また本体ケース2の底部には給紙カセット17が配設され、給紙カセット17内のシート材は、ピックアップローラ18、シート材搬送路19、二次転写ローラ15、定着装置20を経て排紙トレイ21に搬送されるように構成されている。なお、給紙カセット17は把手17bにより装置前方に引き出し可能に装着されているとともに、用紙サイズが大きい場合に対応できるように、装置後方に突出するように引き出し可能に補助カセット17aが装着されている。
【0018】
上記構成からなる画像形成装置の作用について説明する。図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体3、現像装置6の現像ローラ6aおよび中間転写ベルト12が回転駆動し、先ず、像担持体3の外周面が帯電装置4によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体3の外周面に、露光装置5によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
【0019】
像担持体3上に形成された潜像位置には、イエロー用現像装置6Yが回動してその現像ローラ6aが当接し、これによってイエローの静電潜像のトナー像が像担持体3上に形成され、次に、像担持体3上に形成されたトナー像は一次転写ローラ13により中間転写ベルト12上に転写される。このとき、二次転写ローラ15は中間転写ベルト12から離間されている。
【0020】
上記の処理が画像形成信号の第2色目、第3色目、第4色目に対応して、像担持体3と中間転写ベルト12の1回転による潜像形成、現像、転写が繰り返され、画像形成信号の内容に応じた4色のトナー像が中間転写ベルト12上において重ねられて転写される。そして、このフルカラー画像が二次転写ローラ15に達するタイミングで、シート材が搬送路19から二次転写ローラ15に供給され、このとき、二次転写ローラ15が中間転写ベルト12に押圧されるとともに二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト12上のフルカラートナー像がシート材上に転写される。そして、このシート材上に転写されたトナー像は定着装置20により加熱加圧され定着される。中間転写ベルト12上に残留しているトナーは転写ベルトクリーナ14によって除去される。
なお、両面プリントの場合には、定着装置20を出たシート材は、その後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路22を経て、再び二次転写ローラ15に供給され、中間転写ベルト12上のフルカラートナー像がシート材上に転写され、再び定着装置20により加熱加圧され定着される。
【0021】
図2は、図1に示す画像形成装置における定着装置の側面断面図、図3は、画像形成装置における排気経路を示す正面図である。
図2において、定着装置20は定着ハウジング23を有し、定着ハウジング23内には中空状の定着ローラ24が図示矢印方向に回動可能に配設されている。
定着ローラ24は、内部に、ハロゲンヒータ等の加熱源241を備える筒体242を有している。
また、定着ローラ24に対して略水平方向に加圧ローラ25が圧接して配設され、図示矢印方向に回動可能にされている。定着ハウジング23の入口側にはシート材のガイド部材26が配設され、出口側にはガイド部材27が配設されている。
【0022】
本実施形態では、定着ローラ24と加圧ローラ25との圧接面により、定着部が構成されている。
定着ローラ24の上部には、トナー像が定着されたシート材を定着ローラ24から剥離するための剥離部材29が配設され、剥離部材29の先端は定着ローラ24に対して微少間隙をもって位置するようにされている。定着ハウジング23には支持軸30が固定されており、支持軸30には定着ローラ24の両端部に対向する位置に2つの支持部材31が回動自在に装着され、また、支持部材31の先端と定着ハウジング23間には支持部材31を押圧するバネ部材32が設けられている。
【0023】
そして、2つの支持部材31間には前記剥離部材29が固定される。以上の構成により支持部材31の先端は定着ローラ24に当接され、剥離部材29の先端は定着ローラ24に対して微少なクリアランスをもって位置するようにされている。また、加圧ローラ25側にも剥離部材33が配設されている。そして、定着ハウジング23の上部には遮蔽部材34が固定され、その端部は支持部材31の上部に当接されている。この構成により、定着ハウジング23の定着ローラ24側の上部開口を遮蔽することができ、熱効率を向上させることができる。
【0024】
図3に示すように、画像形成装置1は、本体ケース2の一方の側面に形成された給気口35と、他方の側面に形成された排気口37と、排気口37に排気を導く排気ダクト38とを有している。
本実施形態では、給気口35と、定着装置20の筒体242の空間と、排気ダクト38の空間と、排気口37とにより排気経路の主要部が構成されている。
また、排気ダクト38内に排気ファン36が配設されている。排気ファン36は、排気経路内の空気を強制的に排気する。
【0025】
筒体242の内表面(内周面)、すなわち排気経路の途中には、触媒として熱触媒41が設けられている。
熱触媒41は、室温雰囲気ではCO(一酸化炭素)や有機物の吸着作用が強いが熱源241によって加熱されることにより、吸着有機物が脱離して酸素が吸着出来るようにようになり、電子を励起して電子と正孔とが発生し、これらの電子と正孔とから活性酸素(O)と水酸基ラジカル(OH)などの強力な酸化剤が発生する。これらの酸化剤は、熱触媒の表面で、臭い成分を酸化して例えば、二酸化炭素や水等とに分解する。
これにより、画像形成装置1から排出される空気中から臭い成分が消失または減少する。このため、使用者が実質的に臭気を感じなくなる。
なお、臭い成分の主なものは、潜像(未定着像)の定着の際に発生するものであり、臭いの原因であるトナーに用いられる樹脂のモノマー成分等が挙げられる。
【0026】
熱触媒41は、例えば、粉末状、燐片状、小塊状(ペレット状)、ハニカム状として用いることができるが、粉末状であるのが好ましい。これにより、熱触媒41の比表面積が大きくなり、臭い成分と触媒とが接触する頻度をより高めることができる。このため、熱触媒41における臭い成分の分解の効率が向上する。
熱触媒41が、粉末である場合、その平均粒径は、特に限定されないが、1〜100μmであるのが好ましく、1〜10μmであるのがより好ましい。これにより、熱触媒41の表面積を十分に大きくすることができる。
【0027】
熱触媒41としては、特に限定されないが、例えば、Pt、Pd、Rh、Os、Ru、Ir、Au、Ag等の貴金属や、前記貴金属のうちの少なくとも1種を含む合金、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化チタン、Al(アルミナ)等の金属酸化物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、特に、Pt(白金)を主成分とする貴金属または酸化ニッケル、酸化コバルトまたは酸化チタンを主成分とする金属酸化物が好ましい。これらの熱触媒41は、いずれも特に優れた触媒作用を発揮するものであることから好ましい。
熱触媒41を筒体242の内表面に設ける方法としては、筒体242の構成材料中に熱触媒41を混合して筒体242を形成する方法や、熱触媒41をバインダーと混合して筒体242の内表面に塗布してコート層を形成する方法や、筒体242の内表面に、熱触媒41を付着させたフィルムを貼着する方法などが挙げられる。
【0028】
次に、臭い成分の分解動作(作用)を説明する。
まず、画像形成装置1の電源がONすると、排気ファン36が回転し、これにより、給気口35から排気口37に向かって、空気の流れが形成される。それと並行して加熱源241が加熱され、所定温度に達する。これにより、筒体242内に設けられた熱触媒41は、臭い成分を分解する機能を生じる。この状態において、定着装置20において、トナーの定着動作を行うと、トナーの定着の際に生じた臭い成分が、筒体242の内部に導かれ、熱触媒41と接触する。これにより、臭い成分が、熱触媒41の作用により、例えば、水や二酸化炭素等に分解される。
【0029】
以上説明したように、この画像形成装置1によれば、特に、印刷時の定着装置20における定着部のトナーの定着動作によって発生する臭い成分を効率よく分解することができるため、排気口37からの臭い成分の流出を防止することができる。また、保守作業の軽減を図ることができ、(ほぼメインテナンスフリーであり)、コストの低減を図ることができる。
【0030】
また、熱触媒41の熱源として定着装置20の加熱源241を用いるため、別個に熱源を備える必要がなく、画像形成装置1の小型化を図ることができる。
また、本実施形態では、筒体242の内表面に、粉体の熱触媒41を配設したが、これに限られず、例えば、筒体242の内表面に、熱触媒41を直接溶射方式、スパッタ方式または蒸着方式で成膜する方法などが挙げられる。
【0031】
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態について説明する。
図4は、本発明の画像形成装置の第2実施形態を示す正面図である。
以下、第2実施形態の画像形成装置1について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図4に示すように、第2実施形態の画像形成装置1は、フィルター42を有している点が第1実施形態と異なっている。
【0032】
フィルター42は、フィルター42を介して給気口35側の空間と、排気口37側の空間とを分離するように設置されており、本実施形態では、排気ダクト38の内部に設置されている。
また、フィルター42は、臭い成分が通過する部分である構造部(図示せず)を有している。
【0033】
構造部の形状(形態)は、特に限定されないが、例えば、織布、不織布などが挙げられるが、多孔質体であるのが好ましい。構造部を多孔質体で構成することにより、より高い臭い成分の吸着性が得られる。
また、構造部の構成材料としては、例えば、各種炭素系物質やゼオライト、シリカゲル、アルミナ等の酸化物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが特に、主として炭素系物質で構成されているのが好ましい。これにより、さらに高い、臭い成分の吸着性が得られる。
この画像形成装置1によれば、前述した第1実施形態の画像形成装置1と同様の効果が得られる。
そして、この画像形成装置1では、熱触媒41とフィルター42とを併設することで、排気口37からの臭い成分の流出を、より確実に防止することができる。
【0034】
次に、本発明の画像形成装置の第3実施形態について説明する。
図5および図6は、本発明の画像形成装置の第3実施形態におけるフィルターを示す断面図である。
以下、第3実施形態の画像形成装置1について、前述した第1および第2実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0035】
図5および図6に示すように、第3実施形態の画像形成装置1は、筒体242の内表面に熱触媒41が配置(配設)されず、内部に熱触媒41が担持されたフィルター42が、筒体242の内部に設けられている点が、第1および第2実施形態と異なっている。
本実施形態のフィルター42は、基材112と、この基材112の表面に(臭い成分と接触する部分の少なくとも一部に)担持された粉末状の熱触媒41とを有している。
なお、熱源241の熱が、直接フィルター42に伝達されるよう構成されているのが好ましい。これにより、高い熱伝導性が得られるため、より優れた触媒作用が得られる。
特に、構造部を炭素系物質で構成した場合には、高い熱伝導性を有するため、加熱源241からの熱を効率よく熱触媒41に伝達させることができる。
【0036】
この画像形成装置1によれば、前述した第2実施形態の画像形成装置1と同様の効果が得られる。
そして、この画像形成装置1では、基材112において臭い成分を吸着、捕捉し、さらに、励起された熱触媒41の効果によって、基材112に吸着された臭い成分を分解することができる。これにより、より確実に、排気口37からの臭いの流出を防止することができる。また、フィルター42の吸着能力が飽和することを防止することができ、フィルター42の長寿命化も図ることができる。
なお、本実施形態では、基材112の表面に熱触媒41を担持したが、それに限られず、例えば、基材112の内部に熱触媒41を担持してもよい。
【0037】
以上、本発明の画像形成装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0038】
また、前記各実施形態では、熱触媒41は、筒体242内に設けたが、熱触媒41の配置(配設)箇所は、前記各実施形態に限られず、本発明では、排気経路の途中における室温雰囲気より高い温度環境が得られるところであればよい。
また、前記各実施形態では、定着体として、定着ローラ24や加圧ローラ25等のローラを用いたが、それに限られず、例えば、無端フィルムでもよい。
また、本発明の画像形成装置の用途は、特に限定されず、例えば、レーザープリンタ等の各種プリンタ等に適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
1.画像形成装置の製造
(実施例1)
図1に示すような画像形成装置を製造した。
なお、熱触媒には、Pt粉末(平均粒径2μm)を用いた。
そして、このPt粉末と、ジルコニア水溶液(バインダー)とを混合して、この混合物を定着ローラの筒体の内表面に塗布してPt粉末を配設した。
(実施例2)
熱触媒として、Pt−Ru合金粉末を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示すような画像形成装置を製造した。
【0040】
(実施例3)
図1に示すような画像形成装置を製造した。
なお、熱触媒には、Pt粉末(平均粒径2μm)を用いた。
そして、このPt粉末を溶射方式を用いてコーティングにより定着ローラの筒体の内表面に設けた。
(実施例4)
図4に示すような画像形成装置を製造した。
なお、フィルターには、活性炭(炭素系物質)で構成されたフィルターを用いた。
なお、熱触媒は、前記実施例1と同様にして定着ローラの筒体の内表面に配設した。
【0041】
(実施例5)
図5、6に示すような画像形成装置を製造した。
なお、熱触媒には、Pt粉末(平均粒径2μm)を用いた。
このPt粉末とポリイミド樹脂とを混合して、その混合物をフィルター形状の成形体に成形した。この成形体を大気中、1500℃×2時間で焼成してポリイミド樹脂を炭化させた。これによりPtを含有するフィルターを得た。
(実施例6)
熱触媒として、NiO粉末(平均粒径10μm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図1に示すような画像形成装置を製造した。
【0042】
(比較例1)
定着ローラの筒体の内表面に熱触媒を配設しない以外は、前記実施例1と同様にして図1に示すような画像形成装置を製造した。
(比較例2)
定着ローラの筒体の内表面に熱触媒を配設しない以外は、前記実施例4と同様にして図4に示すような画像形成装置を製造した。
【0043】
2.評価
ボランティアを50人集めて、各画像形成装置から排出される空気の臭いを表1に示すような順番でかいでもらった。
そして、各画像形成装置から排出される空気の臭いについて、以下の4段階の基準に従い評価してもらった。
【0044】
◎:全く嫌な臭いがしない(と感じた)。
○:若干臭いが気になる(と感じた)。
△:若干不快な臭いがする(と感じた)。
×:かなり不快な臭いがする(と感じた)。
結果を下記表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、各実施例の画像形成装置では、いずれも相当数の人が、全く嫌なにおいがしないと判断し、臭い成分が除去されていることが明らかとなった。特に、触媒とフィルターとを併用した画像形成装置(実施例4、5)では、全く嫌な臭いがしないと判断した人数が増加する傾向を示した。
これに対し、各比較例の画像形成装置では、相当数の人が、臭いが気になると判断した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の画像形成装置の第1実施形態を示す側面断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置における定着装置の側面断面図である。
【図3】画像形成装置における排気経路を示す正面図である。
【図4】本発明の画像形成装置の第2実施形態を示す正面図である。
【図5】本発明の画像形成装置の第3実施形態を示す正面図である。
【図6】本発明の画像形成装置の第3実施形態におけるフィルターを示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1……画像形成装置 2……本体ケース 2a……前面カバー 3……像担持体 4……帯電装置 5……露光装置 6……ロータリー現像装置 6a……現像ローラ 6Y……イエロー用現像装置 6M……マゼンダ用現像装置 6C……シアン用現像装置 6K……ブラック用現像装置 7……中間転写装置 9……支持フレーム 10……駆動ローラ 11……従動ローラ 12……中間転写ベルト 13……一次転写ローラ 14……転写ベルトクリーナ 15……二次転写ローラ 16……電源機器 17……給紙カセット 17a……補助カセット 17b……把手 18……ピックアップローラ 19……シート材搬送路 20……定着装置 21……排紙トレイ 22……両面印刷用搬送路 23……定着ハウジング 24……定着ローラ 241……加熱源 242……筒体 25……加圧ローラ 26、27……ガイド部材 29……剥離部材 30……支持軸 31……支持部材 32……バネ部材 33……剥離部材 34……遮断部材 35……給気口 36……排気ファン 37……排気口 38……排気ダクト 41……熱触媒 42……フィルター 112……基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気口を備えたケーシングと、
前記ケーシング内部に設けられ、未定着像を担持する記録媒体を加熱することにより前記未定着像を記録媒体に定着させる定着部と、
該定着部において前記未定着像の定着の際に発生する臭い成分を含む気体を、前記排気口に導く排気経路と、
前記排気経路の途中に設けられ、前記未定着像の定着の際に発生する臭い成分を分解する機能を、加熱により生じる触媒とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記触媒は、主として貴金属で構成されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記貴金属は、白金を主成分とするものである請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記触媒は、主として金属酸化物で構成されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記金属酸化物は、酸化ニッケル、酸化コバルトまたは酸化チタンを主成分とするものである請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記定着部は、中空状の定着ローラと、前記定着ローラに圧接される加圧ローラとの接触部で構成され、
前記定着ローラの内部が、前記排気経路の一部を構成している請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着ローラの内部に熱源を有し、
前記熱源によって前記触媒を加熱するよう構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記触媒は、前記定着ローラの内周面に設けられている請求項6または7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記排気経路内に、前記臭い成分を吸着する機能を有するフィルターを備える請求項1ないし8のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記定着ローラの内部に、前記臭い成分を吸着する機能を有するフィルターを備え、前記触媒は、前記フィルターの内部または表面に担持される請求項6または7に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記フィルターは、多孔質体で構成されている請求項9または10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記フィルターは、主として炭素系物質で構成されている請求項9ないし11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記触媒は、粉末状のものである請求項1ないし12のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記粉末状の前記触媒は、その平均粒径が、1〜100μmである請求項13に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−133426(P2006−133426A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321322(P2004−321322)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】