説明

画像形成装置

【課題】 ともに交流成分を含む帯電バイアスと現像バイアスの干渉を抑制しつつ、現像特性にも配慮した画像形成装置を提供する。
【解決手段】 接触帯電部材に印加する交流成分の周波数をfch(Hz)、現像剤担持体に印加する交流成分の周波数をfde(Hz)、nを2以上の自然数とし、|fch-fde|、|fch-n・fde|、|n・fch-fde|のうち最小となるものをfxで定義したとき、像形成速度V(mm/sec)との間にfx≦2・10^-6・V^3なる関係を満足するようなfch、fdeを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用するプリンタや複写機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、レーザビームプリンタや複写機に代表される電子写真方式を採用する画像形成装置が広く普及している。
【0003】
図10に一般的な画像形成装置の一例の概略構成を示した。本例の画像形成装置は電子写真方式を採用するプリンタである。10は潜像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。感光ドラム10はその回転過程で帯電装置11による所定の極性・電位の一様な帯電処理を受け、次いで露光装置12による像露光19を受ける。これにより感光ドラム面に画像に対応した静電潜像が形成される。次いでその静電潜像は現像装置13により現像されてトナー像として顕像化される。その感光ドラム面のトナー像が不図示の給紙部から給送された紙等の記録媒体14に対して転写装置15にて転写される。トナー像の転写を受けた記録媒体14は感光ドラム面から分離されて定着装置16へ導入されてトナー像の定着処理を受けて画像形成物として排紙される。記録媒体分離後の感光ドラム面はクリーニング装置17により転写残トナーを掻き取られて清掃され、繰り返して作像に供される。
【0004】
画像形成装置は、上記の手段を用い、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返して、画像形成を行っている。
【0005】
帯電装置11としては、ローラ型、ブレード型などの帯電部材を感光ドラム表面に接触させ、該接触帯電部材に電圧を印加して感光ドラム表面の帯電を行う接触帯電方式が広く採用されている。特に、ローラ型の帯電部材(帯電ローラ)を用いた接触帯電方式は、長期にわたって、安定した帯電を行うことができる。
【0006】
接触帯電部材としての帯電ローラに対しては、帯電バイアス印加手段から帯電バイアス電圧が印加される。該帯電バイアス電圧は直流電圧のみでも良いが、特開昭63−149669号公報に示されるような、所望のドラム上暗電位Vdに相当する直流電圧Vdcに、直流電圧印加時放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧(Vpp)をもつ交流電圧を重畳したバイアス電圧が用いられる場合が多い。
【0007】
この帯電方法は、感光ドラム上を均一帯電するのに優れており、直流電圧に対して交流電圧を重畳印加することによって感光ドラム上の局所的な電位ムラが解消され、感光ドラム表面の帯電電位Vdは、直流印加電圧値Vdcに均一に収束する。
【0008】
また、現像装置は、トナーを現像スリーブ上に担持して現像領域たる感光ドラムとの対向域に搬送し、現像スリーブに現像バイアス電圧を印加して感光ドラム上の潜像にトナーを飛翔させている。この際、現像バイアス電圧には直流電圧のみでも良いが、交流バイアス電圧を重畳した直流電圧を印加することにより、画質が向上することがよく知られている。
【0009】
しかしながら、上記のような画像形成装置において帯電バイアスや現像バイアスとして交流電圧を印加する場合、以下のような問題があることが知られている。
【0010】
接触帯電部材に印加する交流電圧の周波数(以下帯電周波数と記す)に関しては、像形成速度(以下、プロセススピードと記す)、画像の解像度に応じて選択が行われる。周波数によっては、感光ドラムの十分な帯電が行えなかったり、画像の繰り返しピッチと帯電周期が干渉して周期的な濃度ムラ(いわゆるモアレ)が発生したりする。均一帯電性の面から一般にプロセススピードが高くなるほど、高い帯電周波数を用いるのが普通であり、さらには画素の繰り返し周期と干渉しないように考慮する必要がある。
【0011】
また、特開平04−066973号公報によれば、帯電周波数と現像バイアス電圧の周波数(以下現像周波数と記す)の干渉によっても周期的な濃度ムラが発生することが報告されている。該公報では、帯電周期の微少な電位のムラと現像周期の現像特性の変化により干渉が生じると述べている。さらに、特開平09−190024号公報においては、画像形成装置の同じ高圧基板より帯電バイアスと現像バイアスを発生させる場合においても、帯電バイアスと現像バイアスの干渉が起こると述べている。
【特許文献1】特開昭63−149669号公報
【特許文献2】特開平04−066973号公報
【特許文献3】特開平09−190024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年のプリンタ及び複写機に代表される電子写真方式を採用する画像形成装置においてはスピードアップがめざましい。ゆえに、従来例で述べた画像形成装置のような場合、プロセススピードアップに伴い、帯電周波数を高くしないと感光ドラムの均一な帯電が実現できないため、ほぼプロセススピードに比例して帯電周波数を上げてきている。一方、現像周波数に関しては、トナーの小径化に伴うカブリ防止のため高くなる傾向にはあるものの、現像性そのものも低下するため、あまり高くすることは出来ない。すると、帯電周波数と現像周波数とが近い領域で使われることになり、前記干渉の問題が今まで以上に大きくなってくる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、プロセススピードが高くなった場合でも帯電と現像の干渉の影響を小さくしつつ画質の維持が図れる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記に示した課題は、下記に示した構成を特徴とする画像形成装置たる本発明によって解決可能である。
(1)潜像担持体たる感光体と、該感光体に接触し帯電を行う接触帯電部材と、現像剤を現像領域まで搬送する現像剤担持体を含み感光体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置と、
直流バイアスに交流バイアスを重畳して前記接触帯電部材に印加する第1の高圧電源と、直流バイアスに交流バイアスを重畳して前記現像剤担持体に印加する第2の高圧電源を備える画像形成装置において、接触帯電部材に印加する交流成分の周波数をfch(Hz)、現像剤担持体に印加する交流成分の周波数をfde(Hz)、nを2以上の自然数とし、|fch-fde|、|fch-n・fde|、|n・fch-fde|のうち最小となるものをfxで定義したとき、像形成速度V(mm/sec)との間にfx≦2・10^-6・V^3なる関係を満足するようなfch、fdeを用いることを特徴とする画像形成装置。
(2)像形成速度Vが250(mm/sec)以上であることを特徴とする(1)に記載の画像形成装置。
【0015】
(作用)
とくに、250mm/sec以上といったようなプロセススピードが高い画像形成装置において帯電周波数と現像周波数との干渉が起こりにくい周波数の組み合わせを広げることが出来るので、濃度、ライン幅などの画像特性に応じたバイアス設定が行える画像形成装置とすることが出来る。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、プロセススピードが高く、帯電バイアスと現像バイアスとを同一の基板より生成するような画像形成装置において帯電周波数近傍の周波数を現像周波数として使うことができるので、帯電周波数との干渉の影響を小さくしつつ現像性や画質に考慮した現像周波数を選択できるようになる。また、250(mm/sec)以上のプロセススピードで動作する画像形成装置に対しては干渉の影響の小さい帯電周波数と現像周波数の組み合わせを増やすことが可能になるので特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施例の特徴は、250mm/sec以上といった速いプロセススピードで動作可能な画像形成装置において、帯電周波数と現像周波数の干渉の影響を小さくした周波数設定を提供できる点にある。
【0018】
(1)画像形成装置の構成と動作の概略
図2は本実施例の画像形成装置の概略構成図である。本実施例の画像形成装置は、電子写真方式を採用し、プロセスカートリッジを着脱可能としたプリンタである。
【0019】
10は潜像担持体たる回転ドラム型の電子写真感光体(感光ドラム)である。本例の感光ドラム10は、支持体となるアルミニウムの基体に、電荷発生層、さらには電荷輸送層を形成してなる。なお、ここでは電荷輸送層にはポリカーボネート樹脂を用いている。感光ドラム10は、不図示の駆動用モータによって矢印の方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0020】
感光ドラム10はその回転過程において、帯電装置によって負の所定電位になるように一様な帯電処理を受ける。本実施例での帯電装置は、帯電部材として帯電ローラ11を用いた接触帯電装置である。
【0021】
帯電ローラ11は、両端部を軸受け11−1により回転自在に保持されるとともに、加圧バネ11−2などの押圧手段によって、感光ドラム10の中心方向へ押圧され、感光ドラム10に対して従動回転する。帯電ローラ11に対しては、帯電バイアス電源21から、加圧バネ11−2、導電性軸受け11−1を介してバイアス電圧が印加される。帯電バイアス電圧には、放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧(Vpp)を有する交流電圧に、所望のドラム上電位Vdに相当する直流電圧Vdcを重畳印加する方式が用いられている。この帯電方法は、直流電圧に交流電圧を重畳印加することによって、感光ドラム上の局所的な電位ムラを解消し、感光ドラム上を直流印加電圧Vdcに等しい電位Vdに均一帯電することを狙いとしている。
【0022】
次いで、露光装置12による像露光を受ける。露光装置12は、均一帯電された感光ドラム10に静電潜像を形成するものであり、本例では、半導体レーザスキャナを用いている。露光装置12は、画像形成装置内のホスト装置(不図示)から送られてくる画像信号に対応して変調されたレーザ光19を出力して、後述するプロセスカートリッジCの露光窓部aを通して感光ドラム10の均一帯電面を走査露光(像露光)する。感光ドラム表面は露光箇所の電位の絶対値が帯電電位の絶対値に比べて低くなることによって、画像情報に応じた静電潜像が順次形成される。
【0023】
さらに、その静電潜像は反転現像装置13により現像され、感光ドラム10上においてトナー像として顕像化される。現像装置13は、感光ドラム10上の静電潜像を現像剤たるトナー13−1で現像することによって、静電潜像を可視化(反転現像)するものであり、本例では、ジャンピング現像方式を用いている。この方式では、不図示の現像バイアス電源から現像スリーブ13−3に対して交流と直流を重畳した現像バイアス電圧を印加することによって、現像剤層厚規制部材13−2と現像スリーブ13−3の接触箇所で摩擦帯電により負極性に帯電されたトナー13−1を感光ドラム表面の静電潜像に反転現像する。
【0024】
その感光ドラム面のトナー像が不図示の給紙部から給送された紙等の記録媒体(以下、転写材と記す)14に対して転写装置にて転写される。本例では、転写ローラ15を用いた接触転写装置を採用している。転写ローラ15は感光ドラム10に対して感光ドラム中心方向に不図示の押圧バネなどの付勢手段によって押圧されている。転写材14が搬送されて転写工程が開始されると、不図示の転写バイアス電源から転写ローラ15に対して正極性の転写バイアス電圧が印加され、負極性に帯電している感光ドラム10上のトナーは転写材14上に転写される。
【0025】
トナー像の転写を受けた転写材14は感光ドラム面から分離されて定着装置16へ導入されてトナー像の定着処理を受けて画像形成装置本体外へ排出される。定着装置16は、転写材14に転写されたトナー像を転写材上に永久画像に定着するものである。
【0026】
転写材分離後の感光ドラム面はクリーニング装置17により転写残トナーを掻き取られて清掃され、次の画像形成動作に画像不良が発生しないようにしている。本例のクリーニング装置17は、ウレタンゴムを板金に支持する構成としたクリーニングブレードを用いている。クリーニングブレードは、転写工程時に感光ドラム10から転写材14に転写し切れなかった転写残トナーをドラム上から回収するものであり、一定の圧力で感光ドラム10に当接し転写残トナーを回収することによって感光ドラム表面を清掃する。クリーニング工程終了後、感光ドラム表面は再び帯電工程に入る。
【0027】
画像形成装置は、上記の手段を用い、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返して画像形成を行う。
【0028】
Cは画像形成装置本体20に対して着脱交換自在のプロセスカートリッジである。本例のプロセスカートリッジCは、潜像担持体としての感光ドラム10と、感光ドラム10に対する接触帯電部材としての帯電ローラ11と、現像装置13と、クリーニング装置17の4つのプロセス機器を内包させてプロセスカートリッジとしてある。
【0029】
プロセスカートリッジCは画像形成装置本体20のカートリッジドア(本体ドア)18を開閉して画像形成装置本体20に対して着脱される。装着はカートリッジドア18を開いて画像形成装置本体20内にプロセスカートリッジCを所定の要領にて挿入装着してカートリッジドア18を閉じ込むことでなされる。プロセスカートリッジCは画像形成装置本体20に対して所定の配置で装着されることで画像形成装置本体20側と機械的・電気的に連結した状態になる。
【0030】
プロセスカートリッジCの画像形成装置本体20からの取り外しはカートリッジドア18を開いて画像形成装置本体20内のプロセスカートリッジCを所定に引き抜くことでなされる。プロセスカートリッジCは抜き外された状態時にはドラムカバー(不図示)が閉じ位置に移動していて感光ドラム10の露出下面を隠蔽保護している。また露光窓部aもシャッタ板(不図示)で閉じ状態に保持されている。ドラムカバーとシャッタ板はプロセスカートリッジCが画像形成装置本体20内に装着された状態においてはそれぞれ開き位置に移動して保持される。
【0031】
ここで、プロセスカートリッジとは、少なくとも帯電手段、及びクリーニング手段と電子写真感光体とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱可能とするものであるものをいう。本実施例のプロセスカートリッジは、加えて現像手段を含んで一体化し画像形成装置本体に対して着脱可能としている。
【0032】
(2)周波数の干渉について
まず、空間周波数、及び帯電周波数、現像周波数のそれぞれ、さらにはこれら相互の干渉について説明する。
【0033】
プロセススピード(像形成速度)V(mm/sec)、解像度w(ドット/inch)のとき、nドットピッチでレーザのような画像信号をOn−Offさせた縞模様画像に起きる空間周波数faは、fa=V/((1/w)・25.4・n)で与えられる。
【0034】
帯電バイアスの交流成分の周波数をfch(Hz)、現像バイアスの交流成分の周波数をfde(Hz)、プロセススピードをV(mm/sec)とすると、特開平04−066973号公報などでも述べられているように、感光ドラム上の表面電位の微少な周期的変化がV/fch(mm)ピッチで、現像特性の微少な周期的変化がV/fde(mm)ピッチで繰り返されることになる。
【0035】
以上を考えると、空間周波数と帯電周波数の干渉については、f1=(1/w)・0.423・n、f2=fch、m=2以上の自然数としたときに|f1-f2|、|f1-m・f2|、|m・f1-f2|が干渉の周波数として生じることになる。
【0036】
同様にして空間周波数と現像周波数についてもf1=(1/w)・25.4・n、f3=fde、m=2以上の自然数としたときに|f1-f3|、|f1-m・f3|、|m・f1-f3|帯電周波数と現像周波数についてもf2=fch、f3=fde、m=2以上の自然数としたときに|f2-f3|、|f2-m・f3|、|m・f2-f3|というように干渉の周波数として生じる。
【0037】
それぞれの周波数について簡単に説明する。
【0038】
画素の繰り返しピッチによる空間周波数は、図3にもあるようにレーザ照射されている部分とされていない部分とで構成されている。例は、aドットbスペースの横線(繰り返し周期:n(=a+b))の場合を示している。レーザ照射されたところは電位がVl1となっておりドットを形成する部分に対応し、照射されていない部分は電位がVdのままでスペースとなる部分に対応する。この現れた電位差|Vd-Vl1|を現像装置によって現像するので、電位差に応じた空間周波数も比較的明瞭に再現されるといえる。
【0039】
これに対し、帯電周波数については、交流電圧を印加している関係上マクロ的に見れば一様な電位Vdに収束しているように見えるが、図4にも示したように帯電周波数に応じた微少な電位の変動ΔVdが残ることになる。故に、この微少な電位変動を現像装置によって現像することになるが、先に述べた画素の繰り返しピッチで見られるような電位差に比べれば小さい電位差であり、帯電ムラが目視で分からないよう十分に高い帯電周波数を用いるので、空間周波数に比べると判りにくくなる。
【0040】
さらに、現像周波数については、現像周波数に応じた微少な現像特性の変化が生じている。しかし、実際に現像に供されるトナーの粒径や帯電量は一様ではなく、ある程度ばらつきを持つことはよく知られている。粒径が異なれば、見た目上現像された画像に出てくる周期性は薄れることになる。また、帯電量が異なれば、ドラム上では確実な周期性を持っていたとしても転写の際に転写材に転写されるかドラム上に残留するかといった違いが生じ、結果的にこれも転写材上の画像に出てくる周期性が薄れることになる。以上述べてきたように、個々の周波数の特性及び、トナーの現像特性を考えると、もっとも顕著に表れる可能性があるのは、空間周波数と帯電周波数の干渉であり、もっとも見えにくいのは、帯電周波数と現像周波数の干渉であると考えられる。
【0041】
しかし、実際には帯電周波数と現像周波数の干渉は目視で分かるレベルのものが発生することがある。これは、一般に帯電や現像といった高圧関係のバイアスはスペースやコスト等を考え、同一の基板より生成されている場合が多いために、帯電バイアスに現像バイアスの成分が載ってしまうことにより起こると考えられる。
【0042】
プロセススピードV(mm/sec)の画像形成装置において、帯電周波数fch(Hz)、現像周波数fde(Hz)で用いる場合、干渉ピッチとしては、うなりの周波数Δfが、mを2以上の自然数として|fch-fde|、|fch-m・fde|、|m・fch-fde|から得られるので、V/Δfより得られる。図5に示したように、先の帯電周波数の項の説明と同様、今度はV/Δfピッチで微少な帯電ムラが生じることになるので、電位差が生じ、この電位差が現像されてしまう。そして、Δfは帯電周波数fchよりも十分に小さな値を取り得るために目視で判るレベルのものが発生してしまうのである。
【0043】
(3)プロセススピードとの依存性
電子写真方式を採用する画像形成装置においては、近年プロセススピードアップが著しいが、これに際しては、プロセススピードが上がった分だけ帯電周波数をアップさせる方法が良く採られている。これにより、プロセススピードアップに伴う空間周波数と帯電周波数の関係を維持することで、両者の干渉の影響を小さくしているのである。
【0044】
一方、現像周波数においては、プロセススピードが上がっても相応分現像周波数を上げることは極めて少ない。これは現像周波数の変化による現像性の変化が大きいこと、トナーそのものに依存する面が大きいことなどが挙げられる。一般に本例の画像形成装置で示したようにジャンピング現像を採用する場合、現像周波数としては1400〜3000Hzの値の範囲で大きく変化することはない。むやみに周波数を高くしてしまうと濃度や階調性が損なわれることになり、画質が低下する。
【0045】
すると、プロセススピードのアップに伴い、帯電周波数と現像周波数とが極めて近い値で使われるケースが出てくる。例えば、プロセススピード300(mm/sec)のとき、帯電周波数として2700Hzを用いる画像形成装置(以下、本体A)とする。なお、比較のため、プロセススピード150(mm/sec)、帯電周波数1350Hzとした画像形成装置(以下、本体B)を用いて説明する。
【0046】
現像周波数が2700Hzであれば、本体Aでは帯電周波数と現像周波数が一致し、本体Bでは帯電周波数の2倍と現像周波数が一致するので、両者の干渉による濃度ムラは発生しない。しかし、現像周波数が2700Hzから少しでもずれると、ともに干渉縞による濃度ムラが発生する。その様子を図6に示した。図6は、横軸に|帯電周波数−現像周波数|(本体Aの場合)、|帯電周波数×2−現像周波数|(本体Bの場合)で計算されるΔf、縦軸に計算される干渉縞のピッチをプロットしたものである。本体Aのプロットを画像上認識できた場合を○、認識できなかった場合を●、同様に本体Bの場合で認識できた場合を□、認識できなかった場合をぬりつぶし□とプロットしている。
【0047】
このピッチは十分に長いか十分に短い値であれば、視覚的に判別不能であるため、画像上に現れることはない。そこで、図6からも明らかなように、プロセススピードが高いと同じΔfでも帯電周波数近傍での干渉縞のピッチが大きくなるため、視覚上認識しにくくなることがわかる。
【0048】
しかし、図の一部を拡大した図7を見てみると本体Bでは認識できるピッチである6mmのピッチが、本体Aでは認識できないことから、同じΔfでも干渉縞のピッチが広がるだけでは説明がつかないことになる。
【0049】
これについては、下記のような理由が考えられる。
【0050】
図8は、現像が行われるスリーブ−感光ドラム近傍の断面図である。図8のような構成の場合、図8の斜線で示したXの領域で現像が行われると考えられる。プロセススピードが高い本体Aの場合、本体Bに比べてこの領域Xを通過する時間は半分になるため、交流成分印加でのトナーの往復運動が制限されることになり、現像周波数に対応した周期性が本体Bに比べ弱くなる。さらに、干渉ピッチが長くなっても現像周波数に対応した周期性が弱くなる。故にピッチとして現れにくくなると考えられる。むしろ短い干渉ピッチの方が現像領域Xでの強め合いが行われると考えられるため、画に現れやすくなると考えられるが、同じ干渉ピッチであるならば現像領域Xの通過時間の違いから本体Bに比べ本体Aの方がより見えにくくなる。
【0051】
以上から、本体Aでは本体Bでは使用できない2650Hzや2750Hzといった値を現像周波数として用いても問題ないことになる。
【0052】
また、現像性の観点から見てみると、白地に飛ぶトナー(以下、カブリと記す)は現像周波数アップに伴い劇的に低下する。一方、現像周波数アップに伴い濃度及びライン幅も低下する。ライン幅や濃度については暗部電位や明部電位、及び現像バイアスDC値を変化させることで補正することも考えられるが、高濃度域のつぶれや低濃度域の白飛びが懸念され、画質が劣化することになる。
【0053】
よって、従来のように干渉の影響を小さくするために、帯電周波数と現像周波数を大きく違う値にすると、この場合はカブリ悪化や濃度低下・ライン幅細化を招くことになり、好ましくない。先にも述べたように、現像周波数を2700Hzとすれば干渉の問題はないことは既に示されているが、本実施例の本体Aではプロセススピードが高いため現像周波数2650Hzとすることが可能である。よって、細線や孤立ドットなどの再現性を向上させつつ、濃度やカブリの問題も無い構成とすることが出来る。
【0054】
以上をまとめると以下のような表1を得る。
【0055】
表1は、現像周波数は下記条件の下で4ドットのライン幅を200μmにするような暗部電位Vd、明部電位Vl、現像バイアスDC値を調整し、そのバイアス条件下で細線パターンや階調性パターン、実用画像等を出力し画像の比較を行った結果である。
【0056】
凡例は、良好なレベル:◎、まずまずなレベル:○、改善要と思われるレベル:△、受け入れられないレベル:×として示した。
【0057】
【表1】

【0058】
画質等を総合的に判断すると、現像周波数2650Hzが最も優れているといえる。
【0059】
(4)プロセススピードと認識可能な干渉ピッチの関係
本出願人らが検討した、さらにプロセススピードをふった(帯電周波数はプロセススピードに応じて変化させた値を用いた)ときに、認識できる最大の干渉ピッチを示したのが図9であり、干渉ピッチから計算されるうなりの周波数でプロットし直したのが図1である。図1のプロットを近似するとプロセススピードをV(mm/sec)としたときに、帯電周波数fchと現像周波数fdeから算出されるうなりの周波数fxが、fx≒2・10^-6・V^3なる関係で近似できる。故に、
fx≦2・10^-6・V^3 (1)
なる関係を満たすfch、fdeの組み合わせであれば、視覚的に認識できる干渉ピッチよりも大きな干渉ピッチとなるので、帯電と現像の干渉が画に現れないようにできることが分かる。先に述べたプロセススピード300mm/sec、帯電周波数2700Hz、現像周波数2650Hzの場合は、うなりの周波数50Hzに対し、(1)の右項は54となり、(1)の関係を満足する。
【0060】
以上より、プロセススピードV(mm/sec)の時に、式(1)を満たすような帯電周波数fch、現像周波数fdeを用いることで、両者の干渉を防ぐことができ、なおかつ現像性を損なわないようにできることが示された。特にプロセススピード250(mm/sec)以上といった高速で動作する画像形成装置に対して、干渉の影響が小さくて済む現像周波数範囲を広げることができることになり、現像性などとのバランスをとりやすくできるため非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】プロセススピードとうなりの周波数の関係
【図2】第1実施例の画像形成装置を示す図
【図3】空間周波数を概念的に説明した図
【図4】感光ドラム上での帯電周期の電位ムラを説明した図
【図5】感光ドラム上での帯電と現像のうなりにより生じる電位ムラを説明した図
【図6】帯電周波数(本体A)、帯電周波数の2倍(本体B)と現像周波数で生じるうなりの周波数に対し、干渉により生じる干渉ピッチをプロットした図
【図7】図6の一部を拡大して示した図
【図8】現像スリーブ−感光ドラム対向域の現像領域を表した概念図
【図9】プロセススピードと認識できる干渉ピッチの関係
【図10】一般的な画像形成装置を示した図
【符号の説明】
【0062】
10 感光ドラム
11 帯電手段
11−1 軸受け
11−2 ・加圧バネ
12 露光手段
13 現像装置
13−1 トナー
13−2 現像剤層厚規制部材
13−3 現像スリーブ
14 転写材
15 転写手段
16 定着手段
17 クリーニング手段
18 カートリッジドア
19 レーザ露光
20 画像形成装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、潜像担持体たる感光体と、該感光体に接触し帯電を行う接触帯電部材と、現像剤を現像領域まで搬送する現像剤担持体を含み感光体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置と、
直流バイアスに交流バイアスを重畳して前記接触帯電部材に印加する第1の高圧電源と、
直流バイアスに交流バイアスを重畳して前記現像剤担持体に印加する第2の高圧電源を備える画像形成装置において、
接触帯電部材に印加する交流成分の周波数をfch(Hz)、現像剤担持体に印加する交流成分の周波数をfde(Hz)、nを2以上の自然数とし、
|fch−fde|、|fch−n・fde|、|n・fch−fde|のうち最小となるものをfxで定義したとき、像形成速度V(mm/sec)との間にfx≦2・10^−6・V^3なる関係を満足するようなfch、fdeを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
像形成速度Vは250(mm/sec)以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−235190(P2006−235190A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48916(P2005−48916)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】