説明

画像形成装置

【課題】液体を無駄に消費することがなく経済的であるにもかかわらず、効果的なノズルの吐出機能の維持・回復を図ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数のノズル2b・2b・2b・・・がノズル面2aに形成されている記録ヘッド2を、記録用紙Pに沿って移動させ、同記録用紙Pに対して複数のノズル2b・2b・2b・・・から液滴を吐出させる画像形成装置1であって、少なくとも記録ヘッド2の移動方向における記録用紙Pから外れた位置に、この位置に移動した記録ヘッド2のノズル面2aに対向し、断続的に空気の吸引又は吹き付けを行うことによってノズル2b・2b・2b・・・内のインクのメニスカスを振動させる振動発生部4・4・4・・・を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を記録媒体に向け吐出し、文字や図形等を記録媒体表面に記録する画像形成装置に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出して文字や図形等を記録する画像形成装置は、例えば、インクジェットプリンタのように、記録媒体の幅方向に往復移動が可能なキャリッジと、キャリッジに搭載され、インク滴を吐出する複数のノズルを設けた記録ヘッドとを備えている。そして、キャリッジを、記録媒体に対して往復移動させつつ、記録ヘッドの複数のノズルからインク滴を記録媒体に向けて吐出し、記録媒体表面にインクドットで文字や画像等を形成することで記録を行っている。
【0003】
このような画像形成装置において、高画質化及び記録スピードの高速化を実現するための一手段として、例えば、吐出するインク滴を微小化することにより高画質化を図る方法や、キャリッジの移動速度を速めることにより記録スピードの高速化を図る方法がある。しかし、インク滴を微小化しようとすれば、ノズル径が小さくなり、ノズル内のインクの乾燥による増粘の影響で吐出特性が早期に低下しやすくなる。また、キャリッジの移動速度を速めると、インクの水分の蒸発がすすんで乾燥しやすくなるので、インクの増粘を招き画質を低下させることになる。
【0004】
そこで、ノズル内のインクの増粘を低減して吐出機能の維持・回復を図る処理、例えば、記録とは無関係に、ノズルからインクを吐出してノズル内の増粘したインクを排出する、いわゆる捨て吐出と呼ばれているフラッシング処理などが行われている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−192862号公報(第6及び7頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなフラッシング処理は、大量のインクを無駄に消費してしまうので、有効なノズルの吐出機能の維持・回復処理とは言い難い面がある。
【0006】
そこで本発明は、液体を無駄に消費することがなく経済的であるにもかかわらず、効果的なノズルの吐出機能の維持・回復を図ることができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の画像形成装置は、複数のノズルがノズル面に形成されている記録ヘッドを、記録媒体に沿って移動させ、同記録媒体に対して前記複数のノズルから液滴を吐出させる画像形成装置において、少なくとも前記記録ヘッドの移動方向における前記記録媒体から外れた位置に、この位置に移動した前記記録ヘッドの前記ノズル面に対向し、空気の吸引又は吹き付けを行うことによって前記ノズル内の液体のメニスカスを振動させる振動発生部を設けることを特徴としている。
【0008】
この請求項1の画像形成装置によると、前記振動発生部に、空気の吸引又は吹き付けを行わせることで、前記ノズル内の液体のメニスカスを振動させるので、それによって、ノズル内の液体が撹拌され、液体の増粘が低減される。したがって、前記、前記ノズルの吐出機能の維持・回復を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の画像形成装置は、振動発生部を、記録ヘッドの移動方向に複数個設けて、記録媒体の幅に応じて選択的に使用することを特徴としている。
【0010】
この請求項2の画像形成装置によると、前記記録媒体の幅に対応した前記振動発生部を使用するので、前記記録媒体の幅が狭くなっても記録媒体に近い振動発生部を使用することで、前記記録ヘッドが記録媒体と対峙する位置から、維持・回復動作のために振動発生部へ移動する距離を短くすることができ、記録動作のスループットを向上することができる。
【0011】
請求項3に記載の画像形成装置は、記録媒体の幅サイズを設定する設定装置を設け、記録ヘッドが、設定された幅サイズから外れた位置に移動した際、前記記録媒体近傍の前記振動発生部を使用することを特徴としている。
【0012】
この請求項3の画像形成装置によると、前記設定装置によって設定した記録媒体の幅サイズにもとづいて記録媒体近傍の振動発生部を使用して記録ヘッドの維持・回復動作をすることができる。その結果、記録ヘッドが記録媒体と対峙する位置から、維持・回復動作のために振動発生部へ移動する距離を短くすることができる。
【0013】
請求項4に記載の画像形成装置は、記録媒体の幅サイズを検出する検出手段によって、設定装置の幅サイズを設定することを特徴としている。
【0014】
この請求項4の画像形成装置によると、前記記録媒体のサイズを、前記検出装置で検出し、前記設定装置がその検出結果にもとづいて前記幅サイズを設定し、上記と同様に記録媒体近傍の振動発生部を使用して記録ヘッドの維持・回復動作することができる。
【0015】
請求項5に記載の画像形成装置は、複数のノズルがノズル面に形成されている記録ヘッドを、記録媒体に沿って移動させ、同記録媒体に対して前記複数のノズルから液滴を吐出させる画像形成装置において、少なくとも前記記録ヘッドの移動方向における前記記録媒体から外れた位置に、この位置に移動した前記記録ヘッドの前記ノズル面に対向し、且つ、前記記録ヘッドと相対移動しつつ、継続的に空気の吸引又は吹き付けを行い、対峙する前記ノズル内の液体のメニスカスを順次振動させる振動発生部を設けることを特徴としている。
【0016】
この請求項5の画像形成装置によると、前記記録ヘッドと相対移動する前記振動発生部によって、前記複数のノズル内の液体のメニスカスを順次振動させるので、前記液体の消費を伴わずに、前記ノズルの機能の維持・回復を図ることができる。また、前記振動発生部は、前記記録ヘッドの移動方向の長さを、前記記録ヘッドの前記ノズル面ほどに設ける必要がなく、短縮しコンパクト化を図ることができる。
【0017】
請求項6に記載の画像形成装置は、振動発生部を空気の吸引を行うものとし、前記振動発生部が前記ノズルと対峙した状態で、前記記録ヘッドを、前記ノズル内の前記液体に対してメニスカスを破壊しない程度の圧力を付加するような駆動を行わせることを特徴としている。
【0018】
この請求項6の画像形成装置によると、上記請求項1または5の画像形成装置の作用に加え、前記振動発生部の空気の吸引と前記記録ヘッドの前記圧力の付与とが同時に行われるため、前記ノズル内の液体を、より効果的に振動させることができる。
【0019】
請求項7に記載の画像形成装置は、振動発生部を空気の吸引を行うものとし、前記振動
発生部が前記ノズルと対峙した状態で、前記記録ヘッドを、前記ノズル内の前記液体を僅かに吐出する駆動を行わせ、吐出された前記液体を前記振動発生部に吸引させることを特徴としている。
【0020】
この請求項7の画像形成装置によると、上記請求項1または5の画像形成装置の作用に加え、前記振動発生部の空気の吸引時に、前記ノズル内の極微量の液体(例えば、微細なミスト状)を吐出させることで、より効果的に前記ノズルの機能を維持・回復させることができ、且つ、吐出した微量の液体は、前記振動発生部により吸引され回収されるので、前記記録媒体等への前記液体の付着を回避することができる。
【0021】
請求項8に記載の画像形成装置は、振動発生部を空気の吹き付けを行うものとし、吹き付ける前記空気を、少なくとも大気よりも高湿度とすることを特徴としている。
【0022】
この請求項8の画像形成装置によると、上記請求項1または5の画像形成装置の作用に加え、前記空気を、少なくとも大気よりも高湿度にすることによって、前記ノズル内の液体の乾燥を、極力抑えることができる。
【0023】
請求項9に記載の画像形成装置は、複数のノズルがノズル面に形成されている記録ヘッドを、記録媒体に沿って移動させ、同記録媒体に対して前記複数のノズルから液滴を吐出させる画像形成装置において、少なくとも前記記録ヘッドの移動方向における前記記録媒体から外れた位置に、この位置に移動した前記記録ヘッドの前記ノズル面に対向し、空気の吸引及び吹き付けを交互に行うことによって前記ノズル内の液体のメニスカスを振動させる振動発生部を設けることを特徴としている。
【0024】
この請求項9の画像形成装置によると、前記振動発生部に、空気の吸引及び吹き付けを交互に行わせることによって、前記ノズル内の液体のメニスカスを振動させるので、前記液体の消費を伴わずに、前記ノズルの吐出機能の維持・回復を図ることができる。
【0025】
請求項10に記載の画像形成装置は、振動発生部が空気を吸引する状態で、記録ヘッドに、前記ノズル内の液体に対してメニスカスを破壊しない程度の圧力を付加する駆動を行わせることを特徴としている。
【0026】
この請求項10の画像形成装置によると、上記請求項9の画像形成装置の作用に加え、前記振動発生部の空気の吸引と前記記録ヘッドの前記圧力の付与とが同時に行われるため、前記ノズル内の液体を、より効果的に振動させることができる。
【0027】
請求項11に記載の画像形成装置は、振動発生部が空気を吸引する状態で、前記記録ヘッドに、前記ノズル内の前記液体を僅かに吐出する駆動を行わせ、吐出された前記液体を前記振動発生部に吸引させることを特徴としている。
【0028】
この請求項11の画像形成装置によると、上記請求項9の画像形成装置の作用に加え、前記振動発生部の空気の吸引時に、前記ノズル内の極微量の液体(例えば、微細なミスト状)を吐出させることで、より効果的に前記ノズルの吐出機能を維持・回復させることができ、且つ、吐出した微量の液体は、前記振動発生部により吸引され回収されるので、前記記録媒体等への前記液体の付着を回避することができる。
【0029】
請求項12に記載の画像形成装置は、吹き付ける前記空気を、少なくとも大気よりも高湿度とすることを特徴としている。
【0030】
この請求項12の画像形成装置によると、上記請求項9の画像形成装置の作用に加え、
前記空気を、少なくとも大気よりも高湿度にすることによって、前記ノズル内の液体の乾燥を、極力抑えることができる。
【0031】
請求項13に記載の画像形成装置は、記録媒体を記録ヘッドと対向する位置に支持するプラテンをさらに備え、振動発生部は、プラテンから記録ヘッドの移動方向に延長され記録媒体から外れた部分に、空気が流通する開口を備えるとともにその開口を通して空気を流通させるポンプ手段を備えていることを特徴としている。
【0032】
この請求項13の画像形成装置によると、記録媒体を支持したプラテンの延長部分に設けた開口からノズル面に、ポンプ手段により空気を吸引又は吹き付けることで、ノズル内の液体のメニスカスを振動させることができる。またプラテンの延長部分に開口を設けるので、記録ヘッドの移動に障害となるものをおくことなく、振動発生部の構成を簡単にすることができる。
【0033】
請求項14に記載の画像形成装置は、記録媒体を前記記録ヘッドと対峙する位置に支持するプラテンをさらに備え、振動発生部は、プラテンから記録ヘッドの移動方向に延長され記録媒体から外れた部分に、空気が流通する開口を備えるとともにその開口を通して空気を流通させるポンプ手段を備え、プラテンは、記録媒体側の面に開口する開口を備え、ポンプ手段は、振動発生部の開口とプラテンの開口との双方から空気の吸引が可能であることを特徴としている。
【0034】
この請求項14の画像形成装置によると、ポンプ手段により空気を吸引することで、プラテンに記録媒体を吸着し、記録媒体の平面度を高め記録品質を向上させること、及びノズル内の液体のメニスカスを振動させることの両方を達成することができる。またプラテンの延長部分に開口を設けるので、記録ヘッドの移動に障害となるものをおくことなく、振動発生部の構成を簡単にすることができる。
【0035】
請求項15に記載の画像形成装置は、プラテン及び振動発生部の開口は、1つの平面上に記録ヘッドの移動方向にわたって複数設けられ、記録媒体の幅に応じて、プラテンに対して記録媒体を吸着するための開口、あるいは振動発生部の開口として適宜に使い分けられることを特徴としている。
【0036】
この請求項15の画像形成装置によると、1つの平面上に複数開口が設けられているので、各種の幅の記録媒体をプラテンに吸着させ、その記録媒体近傍の開口を使用して記録ヘッドの維持・回復動作をすることができ、記録ヘッドが移動する距離を短くし、記録動作のスループットを向上することができる。
【発明の効果】
【0037】
請求項1の画像形成装置は、液体の消費を伴わずに効果的なノズルの吐出機能の維持・回復処理を行うことができる。
【0038】
請求項2乃至4の画像形成装置は、記録ヘッドの移動距離を短くすることができるので、記録動作のスループットを向上することができる。
【0039】
請求項5の画像形成装置は、液体の消費を伴わずに効果的なノズルの吐出機能の維持・回復処理を行うことができる。
【0040】
請求項6の画像形成装置は、上記請求項1または5の画像形成装置の効果に加え、ノズル内の液体を、より効果的に振動させることができるため、効果の高いノズルの吐出機能の維持・回復処理を行うことができる。
【0041】
請求項7の画像形成装置は、上記請求項1または5の画像形成装置の効果に加え、ノズル内の液体を、より効果的に振動させることができ、しかも、僅かに吐出された液体は、振動発生部により回収されるため、効果の高いノズルの吐出機能の維持・回復処理を、液体による汚れを伴わずに行うことができる。
【0042】
請求項8の画像形成装置は、上記請求項1または5の画像形成装置の効果に加え、ノズルの吐出機能の維持・回復処理の効果を、向上させることができる。
【0043】
請求項9の画像形成装置は、液体の消費を伴わずに効果的なノズルの吐出機能の維持・回復処理を行うことができる。
【0044】
請求項10の画像形成装置は、上記請求項9の画像形成装置の効果に加え、ノズル内の液体を、より効果的に振動させることができるため、効果の高いノズルの吐出機能の維持・回復処理を行うことができる。
【0045】
請求項11の画像形成装置は、上記請求項9の画像形成装置の効果に加え、ノズル内の液体を、より効果的に振動させることができ、しかも、僅かに吐出された液体は、振動発生部により回収されるため、効果の高いノズルの吐出機能の維持・回復処理を、液体による汚れを伴わずに行うことができる。
【0046】
請求項12の画像形成装置は、上記請求項9の画像形成装置の効果に加え、ノズルの吐出機能の維持・回復の効果を、向上させることができる。
【0047】
請求項13の画像形成装置は、振動発生部の構成を簡単にすることができる。
【0048】
請求項14の画像形成装置は、記録媒体の平面度を高め記録品質を向上させること、及びノズルの吐出機能の維持・回復の効果の両方を達成することができる。
【0049】
請求項15の画像形成装置は、各種の幅の記録媒体の平面度を高め記録品質を向上させ、またノズルの吐出機能の維持・回復を記録ヘッドの短い距離の移動で達成し、記録動作のスループットを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
本発明にかかる画像形成装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は画像形成装置1の概念図を示しており、記録媒体搬送方向から見た正面図を示している。
【0051】
図1において、キャリッジ3は、記録ヘッド2を搭載し、矢印Xで表している記録用紙Pの幅方向(主走査方向)に公知の走査装置により往復移動可能になっている。記録用紙Pは、長尺部材7中のプラテン7aによって下側から支持されており、紙面に対して直交する副走査方向に公知の搬送装置により搬送される。
【0052】
キャリッジ3の記録用紙Pと対向する側には、記録ヘッド2が搭載されており、この記録ヘッド2の記録用紙Pと対向するノズル面2aには、インクを吐出する複数のノズル2b・2b・2b・・・が、吐出するインクの色ごとにそれぞれ副走査方向の列をなし、主走査方向Xに所定の間隔で並列に形成されている。
【0053】
長尺部材7は、主走査方向Xにおいて、記録可能な最大記録用紙の幅に、少なくとも記録ヘッド2の主走査方向Xにおける長さの2倍を加えた長さを有する。また、紙面と直交する方向(副走査方向)の幅は、少なくとも記録ヘッド2のノズル2bの各列の副走査方
向の長さを有する。長尺部材7は、長さ方向の中央部において、記録用紙Pの幅に対応する部分をプラテン7aとし、その両側の延長部分7bを、後述する振動発生部4の一部としている。
【0054】
長尺部材7には、そのほぼ全長及び全幅にわたって多数の開口12・12・12・・・が形成されている。各開口12は、長尺部材7を上面(記録用紙P及び記録ヘッド2と対峙する側)から下面に貫通しており、その下面を覆うように配置されたダクト10を介してポンプ手段11に連結されている。ポンプ手段11としては、空気を移送する公知の各種回転羽根、回転ピストンなどが利用できる。ポンプ手段11を駆動することで、各開口12をとおして長尺部材7の上面側から空気を吸引できる。
【0055】
記録用紙Pの幅に対応する領域(プラテン7a)に位置する各開口12は、上記吸引によって、記録用紙Pを長尺部材7に密着させる作用を行い、これによって、記録用紙Pの平面度を高め、記録品質を向上させることができる。
【0056】
記録用紙Pの幅外の領域(延長部分7b)に位置する各開口12は、ここに記録ヘッド2が対峙して位置するとき、上記吸引動作によって、ノズル面2aと延長部分7bとの間を負圧にする作用を行う。ノズル2b内のインクのメニスカスMは、図5に示すようにこの負圧により下方へ引っ張られ、また負圧が弱まることでインクに本来作用している公知の背圧によりノズル内側へ凹む、つまり振動する。このメニスカスMに対する負圧の断続は、ポンプ手段11の断続的な駆動、またはキャリッジ3の移動に基づくノズル2bと開口12との相対移動によって実現することができる。メニスカスMを適数回振動させることによって、ノズル2b内のインクを撹拌させ、空気と接触しているインクの乾燥を防ぐことができる。
【0057】
ポンプ手段11の吸引力や開口12の口径は、ノズル2bの個数、口径、インクの粘性、表面張力などの物性、ノズル面2aと延長部分7bとの間隔(この実施の形態では約2mm)などによって適宜決定される。吸引力は、環境温度によって調整される。
【0058】
延長部分7b、開口12、ダクト10及びポンプ手段11は、メニスカスMを振動させる振動発生手段4を構成する。この実施の形態では、ポンプ手段11を全開口12・12・12・・・に共通に設けているが、開口12毎、あるいは複数の開口12のグループ毎に設けることもできる。つまり、開口12毎に1つの振動発生手段4を構成する考えることができる。また、記録用紙Pの幅が変わると、その幅外に位置する開口12の個数が変わることになり、複数の振動発生手段4のうちノズル面2aと対峙するものが、メニスカスMの振動用として選択的に使用されることになる。
【0059】
キャリッジ3の往復移動は、制御装置8によって制御される。この制御装置8は、記録用紙Pに記録を行う際、設定装置6で行われた記録用紙Pの幅サイズ設定に基づいて、キャリッジ3を、記録用紙Pの幅サイズの範囲で往復移動させる制御を行う。また、制御装置8は、ノズル2b・2b・2b・・・の吐出機能を維持・回復させる処理を行う際、記録ヘッド2のノズル面2aの主走査方向における長さ分だけ、記録用紙Pから外れた位置に移動するよう制御する。設定装置6は、この実施の形態では、画像形成装置1に設けた操作パネル上からキー操作で記録用紙Pのサイズの選択を行うか、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータで文書データとともに設定される記録用紙Pのサイズデータを受信して、記録用紙Pの幅サイズを設定する。
【0060】
この画像形成装置1で記録用紙Pに記録を行う場合、記録用紙Pが供給されると、制御装置8は、ポンプ手段11を駆動して、各開口12から空気の吸引を行わせる。そして、制御装置8は、キャリッジ3を設定装置6の幅サイズ設定に基づいてその幅範囲内で往復
移動させながら、記録ヘッド2の複数のノズル2b・2b・2b・・・から、記録用紙Pに向かってインクの液滴を吐出し、記録用紙P表面に文字や図形等からなる画像をインクドットで形成し記録を行う。
【0061】
この往復移動を1回又は数回行うごとに、制御装置8はキャリッジ3を、記録用紙Pの外に移動して、記録ヘッド2のノズル面2aと振動発生部4の開口12とを対峙させる。このとき、キャリッジ3を、最大幅の記録用紙Pの外の位置に移動させてもよいが、好ましくは、上記幅サイズ設定に基づいて記録用紙Pの側端から直近の開口12の位置もしくは適数個の開口12を置いた位置を、ノズル面2aの記録用紙側の端とするように移動させる。そして制御装置8は、キャリッジ3を停止した状態(開口12とノズル2bの軸線は一致していなくてもよい)で、ポンプ手段11の駆動を断続的に行わせて、複数のノズル2b・2b・2b・・・内のインクのメニスカスを振動させる。
【0062】
この実施の形態は、記録用紙Pの両側で、ノズル2b・2b・2b・・・の吐出機能の維持・回復処理を行える構成になっているが、片側のみで同様の処理を行うようにすることも可能である。
【0063】
設定装置6は、記録用紙Pの幅サイズを検出する検出手段を用いて幅サイズの設定を行うことができる。図2は検出手段の一例を示す。キャリッジ3は、記録用紙Pに対峙するセンサ9を備える。公知にようにキャリッジ3を記録用紙Pの幅方向に移動させ、センサ9からの検出信号とキャリッジ3の移動量とに基づいて記録用紙Pの幅サイズを検出し、設定装置6は、この検出結果を記録用紙Pの幅サイズとして設定する。
【0064】
図3は、他の実施の形態を示す。この実施の形態は、長尺部材7にほぼ全長にわたって形成された多数の開口12を、キャリッジ3の移動方向に複数のグループに分け、そのグループ毎にダクト10a〜10eを介して、独立したポンプ手段11a〜11eに接続している。制御装置8は、設定された記録用紙Pの幅サイズに基づいて、各ポンプ手段11a〜11eを選択的に駆動する。
【0065】
つまり、制御装置8は、記録用紙Pの幅に対応する開口12のグループに接続したポンプ手段(図3では11b〜11d)を吸引駆動して、記録用紙Pをプラテン7aに密着させ、記録動作を行う。また、制御装置8は、ノズル2bの吐出機能を維持・回復させるため、キャリッジ3を記録用紙Pの幅外へ移動させたとき、ノズル面2aと対峙する開口12のグループに接続したポンプ手段(図3では11e)を吸引駆動して、ノズル2bのメニスカスを振動させる。ノズル2bの吐出機能を維持・回復処理を行わないとき、記録用紙Pの幅外のポンプ手段を駆動させないように制御することができる。
【0066】
上記構成において、記録用紙Pの幅が小さく、ポンプ手段11b、11cのみを記録用
紙P用に使用するとき、それに隣接するポンプ手段11dは、ノズル2bの吐出機能を維持・回復のために使用することができる。
【0067】
図3の構成の場合、ノズル面2aと対向する開口12のグループに接続したポンプ手段(図3では11e)は、吸引でなく、吹き出しを行うようにすることができる。つまり、開口12から吹き出す空気をノズル2b内のメニスカス断続的に当てることで、そのメニスカスを振動させ、ノズル2bの吐出機能を維持・回復させる。記録用紙Pの幅が大きい場合は、例えばポンプ手段11dを吸引駆動して記録用紙Pを吸引し、記録用紙Pの幅が小さい場合は、そのポンプ手段11dを逆転駆動して開口12から空気を吹き出させ、ノズル2b内のメニスカスに当てる。
【0068】
図4は、さらに他の実施の形態を示す。この実施の形態は、長尺部材7の長手方向両端
近傍にのみ複数の開口12を設け、記録用紙Pと対応する位置には開口を設けていない。両端の各開口12のグループには、ダクト10f〜10gを介してポンプ手段11f〜11gを接続している。制御装置8は、記録用紙Pの幅サイズに基づいてキャリッジ3を往復移動し、記録動作を行う。また、制御装置8は、ノズル2bの吐出機能を維持・回復させるため、キャリッジ3を移動させ、ノズル面2aが開口12の一方のグループに対峙した状態で、そのグループに接続したポンプ手段(図4では11f)を駆動して、ノズル2bのメニスカスを振動させる。
【0069】
この構成では、ポンプ手段には、吸引、吹き出しのどちらをさせてもよい。吹き出しをさせる場合、好ましくは、ダクト10f〜10gに加湿装置13を配置し、メニスカスに吹き付ける空気を大気よりも高湿度にする。これにより、ノズル2b内のインクの乾燥を極力抑えることができる。加湿装置13としては、例えば、多孔質材に水分を含ませ、これを貫通する空気を加湿するもの、あるいはダクト中に水分を噴霧するものなどを利用できる。この加湿装置は、図3の実施の形態においてポンプ手段で吹き出しを行うものにも適用できる。
【0070】
図3及び図4の実施の形態においては、ノズル2b・2b・2b・・・内のインクのメニスカスを振動させる際、ポンプ手段で空気を吸引又は吹き出しのいずれかをさせるのではなく、空気の吸引と吹き出しとを所定周期で交互に行わせることができる。このように、空気の吸引及び吹き付けを交互に行わせることでメニスカスを振動させるため、上記第1の実施形態と同様、インクの消費を伴わずに、ノズル2b・2b・2b・・・の吐出機能の維持・回復を図ることができる。
【0071】
また、各実施の形態において、ノズル2bの吐出機能の維持・回復をする位置で、開口12から継続的に空気の吸引又は吹き付けを行う一方、ノズル2bを開口12に対して移動させるようにしてもよい。つまり、図5に示すように、キャリッジ3を移動させてノズル2bと開口12との距離を変えることで、ノズル2bに作用する吸引又は吹きつけの空気圧力を変動させ、メニスカスを振動させる。例えば、各実施の形態の図に示すように、ノズル面2aの全面を複数の開口12に対峙させた状態で、キャリッジ3を微小範囲だけ往復移動させる。また、ノズル面2aの主走査方向Xにおける長さよりも短い範囲のみに開口12を設け、この上方をキャリッジ3を通過させ、各ノズル2bを開口12に接近、離隔させることで、インクのメニスカスを振動させるようにしてもよい。なお、プラテン7aと延長部分7bとを別部品とし、延長部分7bをノズル面2aとほぼ平行に運動させ、開口12をノズル2bに対して移動させることでも、同様の効果を得ることができる。
【0072】
上記の各実施の形態において、ポンプ手段11が空気の吸引を行うものである場合、ノズル面2aと開口12とが対峙した状態で、開口12がノズル2b近傍の空気を吸引するタイミングに合わせて、記録ヘッド2に駆動を行わせるようにしてもよい。この記録ヘッド2の駆動は、ノズル2bからインクを吐出する方向の駆動であって、上記の吸引力が加わってもノズル2b内のインクを吐出しない、つまりメニスカスを破壊しない程度の圧力を付与する駆動である。これにより効果的にメニスカスを振動させ、吐出機能の維持・回復処理を行うことができる。
【0073】
また、上記の記録ヘッド2の駆動において、ノズル2bからインクが極少量吐出される程度に記録ヘッド2を駆動するように構成することもできる。このとき、吐出されたインクをポンプ手段で吸引させ、公知の廃インク溜等に貯留させる。このように吐出した極微量のインクを吸引回収することで、記録用紙P等のインク汚れを回避できる。
【0074】
本発明の画像形成装置は、記録媒体として紙だけでなく、樹脂シート、布などを適用することができ、またインク以外に他の種類の着色液、機能液など各種液体を用いることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の実施の形態を示す概略図。
【図2】上記実施の形態における設定装置6に、記録用紙の幅を設定するための検出手段を説明する概略図。
【図3】他の実施の形態を示す概略図。
【図4】さらに他の実施の形態を示す概略図。
【図5】さらに他の実施の形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0076】
1 画像形成装置
2 記録ヘッド
2a ノズル面
2b ノズル
3 キャリッジ
4 振動発生部
6 設定装置
7a プラテン
8 制御装置
10 ダクト
11 ポンプ手段
12 開口
P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルがノズル面に形成されている記録ヘッドを、記録媒体に沿って移動させ、同記録媒体に対して前記複数のノズルから液滴を吐出させる画像形成装置において、
少なくとも前記記録ヘッドの移動方向における前記記録媒体から外れた位置に、この位置に移動した前記記録ヘッドの前記ノズル面に対向し、空気の吸引又は吹き付けを行うことによって前記ノズル内の液体のメニスカスを振動させる振動発生部が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記振動発生部が前記記録ヘッドの移動方向に複数個設けられており、前記記録媒体の幅に応じて選択的に使用されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体の幅サイズを設定する設定装置を備え、前記記録ヘッドが設定された前記幅サイズから外れた位置に移動した際、前記記録媒体近傍の前記振動発生部を使用することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記設定装置は、前記記録媒体の幅サイズを検出する検出手段によって前記幅サイズを設定することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。
【請求項5】
複数のノズルがノズル面に形成されている記録ヘッドを、記録媒体に沿って移動させ、同記録媒体に対して前記複数のノズルから液滴を吐出させる画像形成装置において、
少なくとも前記記録ヘッドの移動方向における前記記録媒体から外れた位置に、この位置に移動した前記記録ヘッドの前記ノズル面に対向し、且つ、前記記録ヘッドと相対移動しつつ、継続的に空気の吸引又は吹き付けを行い、対峙する前記複数のノズル内の液体のメニスカスを順次振動させる振動発生部が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記振動発生部が空気の吸引を行うものであり、前記振動発生部が前記ノズルと対峙した状態で、前記記録ヘッドが前記ノズル内の前記液体に対してメニスカスを破壊しない程度の圧力を付加する駆動を行うことを特徴とする請求項1または5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記振動発生部が空気の吸引を行うものであり、前記振動発生部が前記ノズルと対峙した状態で、前記記録ヘッドが前記ノズル内の前記液体を僅かに吐出する駆動を行い、吐出された前記液体を前記振動発生部が吸引することを特徴とする請求項1または5に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記振動発生部が空気の吹き付けを行うものであり、吹き付ける前記空気が、少なくとも大気よりも高湿度であることを特徴とする請求項1または5記載の画像形成装置。
【請求項9】
複数のノズルがノズル面に形成されている記録ヘッドを、記録媒体に沿って移動させ、同記録媒体に対して前記複数のノズルから液滴を吐出させる画像形成装置において、
少なくとも前記記録ヘッドの移動方向における前記記録媒体から外れた位置に、この位置に移動した前記記録ヘッドの前記ノズル面に対向し、空気の吸引及び吹き付けを交互に行うことによって前記ノズル内の液体のメニスカスを振動させる振動発生部が設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記振動発生部が空気を吸引する状態で、前記記録ヘッドが前記ノズル内の液体に対してメニスカスを破壊しない程度の圧力を付加する駆動を行うことを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記振動発生部が空気を吸引する状態で、前記記録ヘッドが前記ノズル内の前記液体を僅かに吐出する駆動を行い、吐出された前記液体を前記振動発生部が吸引することを特徴とする請求項9記載の画像形成装置。
【請求項12】
吹き付ける前記空気が、少なくとも大気よりも高湿度であることを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記記録媒体を前記記録ヘッドと対向する位置に支持するプラテンをさらに備え、
前記振動発生部は、前記プラテンから前記記録ヘッドの移動方向に延長され前記記録媒体から外れた部分に、前記空気が流通する開口を備えるとともにその開口を通して前記空気を流通させるポンプ手段を備えていることを特徴とする請求項1から12のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記記録媒体を前記記録ヘッドと対峙する位置に支持するプラテンをさらに備え、
前記振動発生部は、前記プラテンから前記記録ヘッドの移動方向に延長され前記記録媒体から外れた部分に、前記空気が流通する開口を備えるとともにその開口を通して前記空気を流通させるポンプ手段を備え、
前記プラテンは、前記記録媒体側の面に開口する開口を備え、前記ポンプ手段は、前記振動発生部の開口と前記プラテンの開口との双方から空気の吸引が可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記プラテン及び前記振動発生部の開口は、1つの平面上に前記記録ヘッドの移動方向にわたって複数設けられ、前記記録媒体の幅に応じて、前記プラテンに対して前記記録媒体を吸着するための開口、あるいは前記振動発生部の開口として適宜に使い分けられることを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate