説明

画像形成装置

【課題】簡単な構成で搬送ベルトによる感光体ドラムからの離接を高速、円滑、且つ確実に行い、用紙先端による感光体ドラム表面の損傷を防止し高寿命を実現する画像形成装置を提供する。
【解決手段】搬送ベルト4の昇降機構35は転写ローラ13と上押さえローラ14とを一体的に連結する連結部材32と、連結部材32を下方に牽引するソレノイド33と、その牽引が解除されたとき、連結部材32を上方に付勢する付勢部材34とで構成される。搬送ベルト4にて搬送されて用紙3の先端が転写部に到達する前にソレノイド33の牽引により搬送ベルト4が下降し感光体ドラム7と搬送ベルト4との間に所定の間隙が形成される。その後、用紙3の先端が転写部を通過し用紙3の転写開始先頭位置が感光体ドラム7に当接する位置にくるタイミングで牽引が解除され上押さえローラ14と転写ローラ13とともに搬送ベルトが感光体ドラム7との当接位置まで上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単な構成で搬送ベルトによる感光体ドラムからの離接を高速、円滑、且つ確実に行うことができ、用紙等の被転写体の先端による感光体ドラム表面の損傷を防止し、感光体ドラムの高寿命を実現する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体に形成したトナー像を用紙に転写して定着することにより用紙に文字や画像を形成する電子写真式のプリンタが知られている。通常、上記の感光体は、ドラム型であり、その周面上に露光ヘッドにより静電潜像を形成され、その静電潜像を現像器によってトナー像化され、そのトナー像を転写器によって用紙上に転写される。
【0003】
上記のトナー像の転写では、用紙を搬送する搬送ベルトに対し下方から当接している転写器(通常は転写ローラ)が、常時搬送ベルトをドラム型の感光体(感光体ドラム)に圧接させている。
【0004】
ところで、用紙へのトナー像の転写では、転写ローラから印加される転写電流(又は転写電圧)によって行われるが、同じ転写電流(又は転写電圧)を印加しても、用紙の厚さや紙質によって転写機能に強弱が現れる。特に、OHP紙を使用した場合には、ときとして中抜け(転写された画像の一部に在るべきトナーが存在しない現象)が発生する。
【0005】
一般に文字等の中抜けは、転写時において、用紙と感光体ドラム間の圧力が強い場合に発生するから、この事を踏まえて、OHP紙に印字を実行するときには、OHP紙と感光体ドラムの間に普通紙のときよりも大きな間隙を持たせて、この間隙によってOHP紙自体の厚み分を相殺(吸収)させて感光体ドラムへの圧接力を軽減させ、これによって、中抜け現象を軽減させるようとする転写装置の構成が開示されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
また、被転写材と感光体ドラムとの離接を主なる題材として、なかでも被転写材がOHP紙のときに行われる離接の動作を、転写ベルトユニット全体による場合と、転写ローラのみによる場合に分けて、実施例をより具休的に挙げて開示しているものもある。(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開平07−160130号公報
【特許文献2】特開平07−168466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、画像形成にトナーを用いる電子写真式の画像形成装置においては、搬送ベルトと感光体ドラムとが常時圧接していると、被転写材である用紙が転写部に搬送されてきたときに、先ず用紙の先端が感光体ドラムの表面に衝突する。
【0008】
この状態が長期間にわたって続くと、感光体ドラムの表面が損傷して高画質の画像形成機能が損なわれ、感光体ドラムの寿命を低下させる。この問題を解消するには、用紙が転写部に搬送されてきたときに用紙の先端を瞬間的に感光体ドラムの表面から離して、その後すぐに当接させる必要がある。
【0009】
ところが、このような用紙の先端を瞬間的に感光体ドラムの表面から離した後に直ぐに当接させる離接の方法を開示したものは現在まで見当たらない。
【0010】
上記の特許文献1又は2における被転写材と感光体ドラムとの離接は、OHP紙の感光体ドラムへの圧接力の低減のみが主題であり、通常はあまり用いないと思われるOHP紙のような特殊紙の転写を良好に行うためのみに、上下に遊動する機構を設けている。
【0011】
このように上下に遊動する動作には、予め設定を予期した上での離接を行う必要があり、特に高速機になると、その動作は非常に迅速に行う必要があるが、離接のための上下運動をユニット全体で行えば振動、共振等の不具合を発生しやすく、また転写ローラのみの上下運動では搬送ベルトに対する強制力がないので離接に確実性が持てないという問題が残されている。
【0012】
いずれの場合も残された問題は、装置の動作が高速になるに従い、解決には大きな困難を伴うことになると考えられる。
【0013】
本発明の課題は、上記従来の実情に鑑み、簡単な構成で搬送ベルトによる感光体ドラムからの離接を高速、円滑、且つ確実に行うことができ、用紙先端による感光体ドラム表面の損傷を防止し、感光体ドラムの高寿命を実現する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像形成装置は、少なくとも、トナー像を担持して回転する像担持体と、被転写体を搬送する搬送ベルトと、該搬送ベルトを介して上記像担持体に対向配置されて転写部を形成し該転写部において上記像担持体に上記搬送ベルトを介して圧接すべく配置された転写装置と、を有する画像形成装置において、上記転写装置よりも上記搬送ベルトの移動下流側に配置され且つ上記搬送ベルトの転写面の上方に配置された上押さえ部材と、該上押さえ部材と上記転写装置とを連結して昇降可能に配設された昇降機構と、を有して構成される。
【0015】
上記昇降機構は、例えば、上記搬送ベルトにより搬送されて上記被転写体の先端が上記転写部に到達する前に下降して上記上押さえ部材と上記転写装置とを下降させ、上記被転写体の先端が上記転写部を通過して上記被転写体の転写開始先頭位置が上記像担持体に当接するタイミングで上記上押さえ部材と上記転写装置とを上昇させるように構成される。
【0016】
この場合、上記昇降機構は、例えば、上記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置され上記上押さえ部材と上記転写装置とを連結して一体化する連結部材と、該連結部材を下方に牽引するソレノイドと、該ソレノイドが牽引を解除したとき上記連結部材を上昇させる付勢部材と、を備えるように構成してもよい。
【0017】
また、上記昇降機構は、例えば、上記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置され上記上押さえ部材と上記転写装置とを連結して一体化する連結部材と、該連結部材を昇降させるカム機構と、上記一体化された上記上押さえ部材と上記転写装置を常に上方に付勢する付勢部材と、を備えるように構成することもできる。
【0018】
また、上記上押さえ部材は、例えば、除電電圧発生部に接続され、上記昇降機構により上記転写装置とともに上昇駆動されたとき、上記像担持体に当接して、上記被転写体に上記トナー像を転写した後の上記像担持体の除電を行うように構成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単な構成で搬送ベルトによる感光体ドラムからの離接を高速、円滑、且つ確実に行うことができ、用紙等の被転写体の先端による感光体ドラム表面の損傷を防止し、感光体ドラムの高寿命を実現する画像形成装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1における画像形成装置の内部構成を簡略に示す模式的側断面図である。尚、同図は、例としてタンデム型のカラー画像形成装置を示している。
【0021】
同図に示すカラー画像形成装置1は、例えばデスクトップ型のパソコン用ラックに載置可能な程度の大きさの小型のカラー画像形成装置であり、本体基部の底部には用紙カセット2を着脱自在に備えている。用紙カセット2には多枚数の用紙3が載置・収容されている。
【0022】
このカラー画像形成装置1の内部のほぼ中央には、用紙を搬送するベルトユニットの主要部材である搬送ベルト4が前後に偏平なループ状に配置されている。搬送ベルト4は、駆動ローラ5と従動ローラ6に掛け渡されて、図の矢印a及びbで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0023】
搬送ベルト4の上循環部には、4個の感光体ドラム7(7m、7c、7y、7k)が用紙搬送方向上流側から下流側(図の右から左方向)に多段式に並設されている。そして、各感光体ドラム7を夫々取り囲むようにして(以下、代表的に感光体ドラム7kの周囲装置についてのみ符号を付して示す)、クリーナ8、帯電ローラ9、光書込ヘッド11、現像器ユニット12の現像ローラ12b、及び転写装置としての転写ローラ13が配置されている。
【0024】
感光体ドラム7mに対応する現像器ユニット12から感光体ドラム7kに対応する現像器ユニット12まで、各現像器ユニット12のトナー容器12a内には、減法混色の三原色であるマゼンタ(m)、シアン(c)及びイエロー(y)の各色トナーと、文字や画像の黒色部分等の印字に専用されるブラック(k)のトナーが夫々収容されている。
【0025】
上記4個の光書込ヘッド11は、不図示の支持部材を介して画像形成装置本体フレームに支持されている。転写ローラ13は、ベルトユニットに所属する部材として配置されている。
【0026】
また、ベルトユニットには、転写ローラ13よりも搬送ベルト4の移動下流側(図の左側)に配置され且つ搬送ベルト4の転写面(感光体ドラム7に当接する上面)の上方に配置された上押さえ部材としての上押さえローラ14を備え、転写ローラ13よりも搬送ベルト4の移動上流側には搬送ベルト4を下から支持する固定補助ローラ15が配設されている。
【0027】
上記の各感光体ドラム7間にある固定補助ローラ15は、搬送ベルト4を下部から持ち上げることによって、感光体ドラム7に対して上流側と下流側で搬送ベルト4がやや巻き付くような状態にすることが目的で配置されている。
【0028】
このように、感光体ドラム7に対して上流側と下流側で搬送ベルト4がやや巻き付くような状態にすることによって、搬送ベルト4で搬送される用紙3に良好な転写画像を形成できることが知られている。また、下流側において搬送ベルト4を上に押し上げることは、用紙3が感光体ドラム7に巻き付いてしまうことを防止する効果もあることは既に知られている。
【0029】
ところで、このような固定補助ローラ15の機能を有効とするような構成を有するベルトユニットにおいて、転写ローラ13のみが搬送ベルト4の下部で離接することは容易であるが、搬送ベルト4も伴って感光体ドラム7から離接を行うためには、固定補助ローラ15によって持ち上げられている搬送ベルト4を強制的に下方へ押え込む必要がある。
【0030】
本例では、転写ローラ13が搬送ベルト4の下部に離隔する際に、搬送ベルト4を強制的に下方へ押え込むために、転写ローラ13と一体に動作する上押さえローラ14を設けている。
【0031】
これら転写ローラ13と上押さえローラ14は、詳しくは後述するが、昇降機構を介して連結されており、必要に応じて昇降機構により駆動され、搬送ベルト4を上下から挟む形で、ともに上下に昇降する。
【0032】
また、上記の上押さえローラ14の材質としては、ソリッドでも発泡でも良い。例えば、シリコンゴム、EPDM、NBR等の一般搬送用ローラとして用いられる部材でよい。また、電気抵抗は1E4Ω〜1E9Ωが良好である。これは電気的に帯電しやすい部材の近くに配置されるのでリーク対策として適度な抵抗値が必要となるからである。
【0033】
図1において、搬送ベルト4は、下流側端部裏面に圧接するテンションローラ16によって常に外側に付勢されて適度の張力を保っている。搬送ベルト4の上循環部の上流側端部は、用紙搬入部を形成している。
【0034】
搬送ベルト4より搬送方向上流側には、待機ローラ対17、その下方の給紙案内路18には、2組の搬送ローラ対19及び21が配設され、給紙案内路18の下端部に給送ローラ対22が配設される。その給送ローラ対22の下方に、用紙カセット2の給紙端が位置しており、この給紙端上方に給紙ローラ23が配設されている。
【0035】
一方、搬送ベルト4の用紙搬送方向下流(図の左方)には、搬送ベルト4に対し駆動ローラ5方向に圧接するベルトクリーナ31が配設されている。ベルトクリーナ31は搬送ベルト4の主として両端部に残留するトナーを除去する。
【0036】
また、搬送ベルト4の用紙搬送方向の横下流側には、断熱性の匡体24内に組み付けられた圧接ローラ25、発熱ローラ26を駆動ローラ27に掛け渡された定着熱ベルト28等から成る定着器29が設けられる。
【0037】
また、搬送ベルト4と用紙カセット2の間には適宜の回路基盤を装着した不図示の電装部が配設され、その回路基盤には複数の電子部品からなる制御装置が搭載されている。制御装置は、特には図示しないがコントローラ部とエンジン部からなる。
【0038】
コントローラ部は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(読出し専用メモリ)、EEPROM(再書込み可能な読出し用メモリ)、フレームメモリ、イメージデータ転送回路等からなり、ホストコンピュータ等から入力される印刷データを解析し、印字用データを作成してエンジン部に転送する。
【0039】
エンジン部は、CPUやROM等を備え、入力側にはコントローラ部からのデータや指令信号、不図示の温度センサの出力、用紙検知センサの出力等が入力し、出力側には不図示のモータを駆動するモータドライバ、そのモータの駆動を各部に伝達する駆動系を切り替えるクラッチドライバ、光書込みヘッド11を上記印字用データに基づいて駆動する印字ドライバ、帯電ローラ9、転写ローラ13、上押さえローラ14等に所定のバイアス電流(又はバイアス電圧)を供給するバイアス電源ドライバ等が接続されている。
【0040】
エンジン部はコントローラ部からのデータや指令信号、各種のセンサの出力等に基づいて各部を駆動制御する。
【0041】
図2(a),(b) は、上述した転写ローラ13と上押さえローラ14、及び昇降機構との関係と、その動作状態を、感光体ドラム7及び搬送ベルト4と共に示す側面図である。尚、図2(a),(b) には、図1と同一の構成部分には図1と同一の番号を付与して示している。
【0042】
図2(a),(b) に示すように、転写ローラ13と上押さえローラ14は、搬送ベルト4の幅方向(図の奥行き方向)両側において昇降機構35を介して連結されている。
【0043】
昇降機構35は、搬送ベルト4の幅方向両側にそれぞれ配置されるL字形の連結部材32と、この連結部材32を下方に牽引して同図(a) の矢印cで示すように連結部材32を下降させるソレノイド33と、ソレノイド33が牽引を解除したとき、連結部材32を上方に付勢して、同図(b) の矢印dで示すように連結部材32を上昇させる付勢部材34とで構成される。
【0044】
この昇降機構35により駆動されて、転写ローラ13と上押さえローラ14は、必要に応じて、同図(a) に示す離間位置と同図(b) に示す圧接位置の上下位置に昇降する。
【0045】
続いて上記構成のタンデム型カラー画像形成装置(装置本体)1の動作を、上述した図1及び図2(a),(b) を再び参照しながら説明する。先ず、図1に示す装置本体1に電源が投入され、使用する用紙の紙質、枚数、印字モード、その他の指定がキー入力あるいは接続するホスト機器からの信号として入力されると印字(印刷)が開始される。
【0046】
給紙ローラ23が用紙カセット2に載置収容されている用紙3を一枚取り出し、給紙案内路18の案内により給送ローラ対22、搬送ローラ対21及び19を介して待機ローラ対17へ給送する。
【0047】
待機ローラ対17は回転を一時停止して、その挟持部に用紙3の先端を当接させて用紙の進行を制止すると共に斜行を矯正し、搬送タイミングを待機する。
【0048】
駆動ローラ5が反時計回り方向に回転し、従動ローラ6が従動して同じく反時計回り方向に回転する。これによりベルト4は、上循環部が4個の感光体ドラム7に当接して全体が反時計回り方向へ循環移動する。
【0049】
これと共に感光体ドラム7を中心に配置された諸装置が印字タイミングに合わせて順次駆動される。感光体ドラム7は時計回り方向に回転し、帯電ローラ9は、感光体ドラム7周面に一様な高マイナス電荷を付与して電位を初期化する。
【0050】
光書込ヘッド11は、その感光体ドラム7周面に画像信号に応じて露光を行って電位を減衰させる。これにより、上記初期化による高マイナス電位部と、露光によって減衰した低マイナス電位部からなる静電潜像が、感光体ドラム7周面に形成される。
【0051】
現像ユニット12の現像ローラ12bは、静電潜像の低電位部にトナー容器12aのトナーを転移させて感光体ドラム7周面上にトナー像を形成(反転現像)する。
【0052】
最上流の感光体ドラム7m周面上のトナー像の先端が、搬送ベルト4との対向部に回転搬送されてくるタイミングで、その対向部に用紙3の印字開始位置が一致するように待機ローラ対17が回転を開始して用紙3を用紙搬入部へ給送する。
【0053】
用紙3は、搬送ベルト4に静電的に吸着されて、感光体ドラム7mと転写ローラ13により形成されている最初の転写部へ搬送される。
【0054】
このとき、昇降機構35は制御部からの指示により、ソレノイド33を牽引方向に駆動して、搬送ベルト4により搬送されてくる用紙3の先端が転写部に到達する前に下降させ、連結部材32を介し上押さえローラ14と転写ローラ13とを、図2(a) に示すように下降させ、感光体ドラム7と搬送ベルト4との間に所定の間隙を形成する。
【0055】
用紙3の先端には、画像の印刷であれば例えば5mm程度、文章の印刷であれば例えば最大25mmの余白が画像データ印刷情報によって設定される。制御部は、その画像データ印刷情報に基づいて用紙3の印刷開始先頭位置を認識する。
【0056】
この認識に基づいて、昇降機構35に制御部から再び指示が送信される。この制御部からの指示に基づいて、昇降機構35は、用紙3の先端が転写部を通過して用紙3の転写開始先頭位置が感光体ドラム7に当接する位置にくるタイミングで上昇し、上押さえローラ14と転写ローラ13とを上昇させる。
【0057】
これにより、図2(b) に示すように、転写ローラ13が搬送ベルト4を押し上げて、搬送ベルト4上の、図示を省略した用紙3の転写開始先頭位置を感光体ドラム7の下部周面に当接させる。このとき、感光体ドラム7上に現像されているトナー像の転写先頭部が用紙3の転写開始先頭位置に当接するタイミングとなっている。
【0058】
転写ローラ13は、不図示の転写バイアス電源から出力される転写電流(又は転写電圧)を搬送ベルト4を介して用紙3に印加する。これにより、感光体ドラム7m上のマゼンタトナー像が用紙3に転写される。
【0059】
続いて、感光体ドラム7cと転写ローラ13により形成されている上流から2番目の転写部においてシアントナー像が転写され、更に感光体ドラム7yと転写ローラ13により形成されている上流から3番目の転写部でイエロートナー像が転写される。
【0060】
更に、感光体ドラム7kと転写ローラ13により形成されている最下流の転写部でブラックトナー像が転写されて、4色のトナー像が用紙3上に順次塗り重ねられる。
【0061】
このようにして4色のトナー像を転写された用紙3は、搬送ベルト4から分離されて定着器29に搬入される。定着器29は熱と圧力とにより、トナー像を用紙3に定着させる。この画像定着後、用紙3は不図示の搬出ローラ対により、機外の排紙トレー上に排出される。
【0062】
このように、本例では転写部よりも搬送ベルト4の循環移動方向下流側で且つ搬送ベルト4の転写面(用紙吸着搬送面)の上方に上押さえローラ14を配置し、この上押さえローラ14を連結部材32により転写ローラ13と一体的に連結して、両部材を昇降させる簡単な構成の昇降機構を設ける。
【0063】
これにより、上下に搬送ベルト4を挟み込む形で上下の昇降による離接動作を行うことができ、したがって、搬送ベルト4の位置制御を効率よく行えるだけでなく、昇降時のタイミングや応答性能に非常に優れた機構を発揮することができ、感光体ドラム7からの搬送ベルト4の離接が円滑、迅速かつ確実に行われる。
【0064】
このような構成によって、用紙3の先端の転写部への突入のタイミングで搬送ベルト4を引き下げて、用紙3の先端が感光体ドラム7の周面に突き当たる衝撃を防止し、転写開始先頭位置が転写部にくるタイミングで搬送ベルト4を上昇させて正常に転写を開始させる動作を、円滑、迅速かつ確実に行うことができる。
【0065】
このように、本例の昇降機構を備えた画像形成装置1では、用紙3の先端が感光体ドラム7の周面に突き当たることがないので長期の使用においても感光体ドラム7に損傷を発生させることがなく感光体ドラム7の寿命を長期化させることができて経済的であるとともに、長期にわたる高画質の維持に貢献することができる。
【0066】
また、このように転写部における用紙3先端の感光体ドラム7表面への離接を行うことによって、用紙3先端の非画像部における転写電圧の印加を行わないことによる先端吸着防止効果を得ることができ、これにより、高速機においても搬送ベルト終端で行われる用紙剥離の不良で用紙ジャムが発生することのない画像形成装置を提供することができる。
【0067】
(実施形態2)
図3は、実施形態2における画像形成装置1の転写ローラ13と上押さえローラ14及び昇降機構との関係とその動作状態を感光体ドラム7及び搬送ベルト4と共に示す側面図である。
【0068】
尚、図3には、図1及び図2(a),(b) と同一の構成部分には図1及び図2(a),(b) と同一の番号を付与して示している。また、図3には、図2(a),(b) では図示しなかった固定補助ローラ15も示している。また、連結部材32は極く簡単に線図で示している。
【0069】
図3に示す本例の昇降機構36は、搬送ベルト4の幅方向両側にそれぞれ配置され、上押さえローラ14と転写ローラ13とを連結して一体化する連結部材32と、連結部材32を昇降させるカム機構37と、一体化された上押さえローラ14と転写ローラ13を、転写ローラ13を介して常に上方に付勢する付勢部材34とで構成されている。
【0070】
上記のカム機構37は、カム回転軸38と、このカム回転軸38に支持されて180度ごとに回転する又は回動する偏心楕円形のカム39と、カム39に摺接してカム39の180度ごとの回転又は回動に応じて上下動するカムフォロア41とで構成される。上記の連結部材34の下方に延在する端部は、図ではカム39の陰になって見えないが、カムフォロア41に連結されている。
【0071】
カム39は、回転中心が偏心している楕円形のカムであり、図3に示す状態では、カムフォロア41はカム39の回転中心から長手方向の長いほうの周に当接して最下部に位置している。これにより、連結部材34、この連結部材34により一体化されている上押さえローラ14及び転写ローラ13は最下方に引き下げられている。
【0072】
このとき、図3に示すように感光体ドラム7の下部周面と搬送ベルト4との間に形成される間隙は、図2(a) に示した感光体ドラム7の下部周面と搬送ベルト4との間に形成される間隙と同一となるように設定されている。
【0073】
上記の状態から、カム39が図3の矢印eで示すように180度回転すると、カムフォロア41がカム39の回転中心から長手方向の短いほうの周に当接して最上部に位置するようになる。これにより、連結部材34、この連結部材34により一体化されている上押さえローラ14及び転写ローラ13は、付勢部材34の付勢力を受けて最上方に押し上げられる。これにより搬送ベルト4が感光体ドラム7の下部周面に圧接する。
【0074】
本例の場合も、画像形成処理に際して、用紙3の先端が感光体ドラム7の周面に突き当たることがないので長期の使用においても感光体ドラム7に損傷を発生させることがなく感光体ドラム7の寿命を長期化させることができて経済的である。
【0075】
(実施形態3)
図4(a),(b) は、実施形態4における画像形成装置1の転写ローラ13と上押さえローラ14及び昇降機構35との関係とその動作状態を感光体ドラム7及び搬送ベルト4と共に示す側面図である。尚、図4には、図1乃至図3と同一の構成部分には図1乃至図3と同一の番号を付与して示している。
【0076】
図4(a),(b) に示す昇降機構35において、図2(a),(b) に示した昇降機構35と異なる点は、上押さえローラ14が、接地接続されていることである。尚、接地接続だけでなく、除電電圧発生部に接続して積極的な除電電圧の印加を行っても良い。
【0077】
図4(a),(b) に示す構成において、図2(b) のときと同様に、図4(b) に示すように昇降機構35により転写ローラ13及び搬送ベルト4とともに上押さえローラ14が上昇すると、感光体ドラム7の周面に上押さえローラ14が当接する。
【0078】
本例では、接地接続又は除電電圧発生部に接続されている上押さえローラ14が、用紙3にトナー像を転写した後の感光体ドラム7の除電を行うので、帯電9による初期化が均一かつ円滑に行われて、均一で高画質のトナー像の現像を続行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施形態1における画像形成装置の内部構成を簡略に示す模式的側断面図である。
【図2】(a),(b) は実施形態1における画像形成装置の転写ローラと上押さえローラ及び昇降機構との関係とその動作状態を感光体ドラム及び搬送ベルトと共に示す側面図である。
【図3】実施形態2における画像形成装置の転写ローラと上押さえローラ及び昇降機構との関係とその動作状態を感光体ドラム及び搬送ベルトと共に示す側面図である。
【図4】(a),(b) は実施形態4における画像形成装置の転写ローラと上押さえローラ及び昇降機構との関係とその動作状態を感光体ドラム及び搬送ベルトと共に示す側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 カラー画像形成装置
2 用紙カセット
3 用紙
4 搬送ベルト
5 駆動ローラ
6 従動ローラ
7(7m、7c、7y、7k) 感光体ドラム
8 クリーナ
9 帯電ローラ
11 光書込ヘッド
12 現像ユニット
12a トナー容器
12b 現像ローラ
13 転写ローラ
14 上押さえローラ
15 固定補助ローラ
16 テンションローラ
17 待機ローラ対
18 給紙案内路
19、21 搬送ローラ対
22 給送ローラ対
23 給紙ローラ
24 筐体
25 圧接ローラ
26 発熱ローラ
27 駆動ローラ
28 定着熱ベルト
29 定着器
31 ベルトクリーナ
32 連結部材
33 ソレノイド
34 付勢部材
35、36 昇降機構
37 カム機構
38 カム回転軸
39 カム
41 カムフォロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、トナー像を担持して回転する像担持体と、被転写体を搬送する搬送ベルトと、該搬送ベルトを介して前記像担持体に対向配置されて転写部を形成し該転写部において前記像担持体に前記搬送ベルトを介して圧接すべく配置された転写装置と、を有する画像形成装置において、
前記転写装置よりも前記搬送ベルトの移動下流側に配置され且つ前記搬送ベルトの転写面の上方に配置された上押さえ部材と、
該上押さえ部材と前記転写装置とを連結して昇降可能に配設された昇降機構と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、
前記搬送ベルトにより搬送されて前記被転写体の先端が前記転写部に到達する前に下降して前記上押さえ部材と前記転写装置とを下降させ、
前記被転写体の先端が前記転写部を通過して前記被転写体の転写開始先頭位置が前記像担持体に当接するタイミングで前記上押さえ部材と前記転写装置とを上昇させる、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、
前記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置され前記上押さえ部材と前記転写装置とを連結して一体化する連結部材と、
該連結部材を下方に牽引するソレノイドと、
該ソレノイドが牽引を解除したとき前記連結部材を上昇させる付勢部材と、
を備えることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記昇降機構は、
前記搬送ベルトの幅方向両側にそれぞれ配置され前記上押さえ部材と前記転写装置とを連結して一体化する連結部材と、
該連結部材を昇降させるカム機構と、
前記一体化された前記上押さえ部材と前記転写装置を常に上方に付勢する付勢部材と、
を備えることを特徴とする請求項2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記上押さえ部材は、除電電圧発生部に接続され、前記昇降機構により前記転写装置とともに上昇駆動されたとき、前記像担持体に当接して、前記被転写体に前記トナー像を転写した後の前記像担持体の除電を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−198738(P2009−198738A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39556(P2008−39556)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】