画像形成装置
【課題】不適切な取り出しや返却によって印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、印刷ジョブを実行して排紙トレイに排出した記録紙(印刷物)がその一部のみを取り出された場合に(ステップS115;No)、警告処理により(ステップS117)、警報を発生する。たとえば、印刷ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙の一部を誤って取り出した場合などの警告では、その誤って取り出した記録紙を排紙トレイに返却するように促すことができ、記録紙がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【解決手段】画像形成装置は、印刷ジョブを実行して排紙トレイに排出した記録紙(印刷物)がその一部のみを取り出された場合に(ステップS115;No)、警告処理により(ステップS117)、警報を発生する。たとえば、印刷ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙の一部を誤って取り出した場合などの警告では、その誤って取り出した記録紙を排紙トレイに返却するように促すことができ、記録紙がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成ジョブに係る画像を記録紙に形成して排紙部に排出する画像形成装置に係り、特に、排紙部に排出した記録紙の不適切な取り出しや返却を検知して報知する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリントやコピーによる印刷の指示を受けて記録紙に画像を形成する画像形成装置においては、排紙トレイに排出した記録紙(印刷物)の取り間違いを検知して報知する技術が知られている。たとえば、特許文献1には、画像形成装置がユーザの端末装置から指示された印刷を実行して排紙トレイに排出した記録紙を、他のユーザが誤って取り出した後に返却したことを検知すると、印刷を指示した端末装置にその旨を通知して記録紙の取り間違いが発生したことをその端末装置のユーザに報知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−109345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排紙トレイにおける記録紙の不適切な取り出しや返却は、実際には様々なケースがある。たとえば、複数枚の印刷を行う画像形成ジョブ(プリントジョブ/コピージョブ)や、複数の排紙トレイを備える画像形成装置では、以下の3つの事例が挙げられる。
【0005】
(1)画像形成ジョブで印刷された複数枚の記録紙のうちの一部のみが取り出される場合(記録紙がジョブ単位で取り出されない場合)。
(2)他人の画像形成ジョブの記録紙を誤って取り出した後にその一部のページ(枚数)のみが返却される場合(記録紙がジョブ単位で返却されない場合/記録紙が返却されてジョブ単位に戻らない場合)。
(3)記録紙が排出先の排紙トレイから一旦取り出されて異なる排紙トレイに返却される場合。
【0006】
このような場合は、その行為を行ったユーザに警告して記録紙のジョブ単位での取り出しや返却が行われるようにしたり、記録紙が元の排紙トレイに戻されるようにしたりすることが望ましい。
【0007】
また、特許文献1の技術は、ジョブ単位での記録紙の取り出しや返却を検知したり、排紙トレイ間での記録紙の移動を検知したりすることは考慮されていないため、(1)〜(3)の事例に対応することができない。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、不適切な取り出しや返却によって印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止することができる画像形成装置を提供することを目的としている。また、排出先の排紙部から一旦取り出された印刷物が異なる排紙部に返却されたままの状態になることを防止することができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が減少した場合に、前記減少したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一部のみ取り出されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0011】
上記発明では、画像形成ジョブに係る画像を形成して排紙部に排出した記録紙がその一部のみを取り出されて排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態となった場合に警告を行う。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙の一部を誤って取り出した場合などの警告では、その誤って取り出した記録紙を排紙部に返却するように促すことができる。このような不適切な取り出しが起きた場合に、印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0012】
[2]画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が増加した場合に、前記増加したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一旦取り出された後に返却されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0013】
上記発明では、画像形成ジョブに係る画像を形成して排紙部に排出した記録紙が一旦取り出された後に返却されて排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態となった場合に警告を行う。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙を誤って取り出した後にその一部を返却した場合などの警告では、残りの記録紙を排紙部に返却するように促すことができる。このような不適切な返却が起きた場合に、印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0014】
[3]画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙の排出先に選択される複数の排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該記録紙の排出先の排紙部を示す排紙部情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記複数の排紙部別に、その排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報と前記記憶部に記憶されているタグ識別情報とを比較し、前記排出先の排紙部に排出された記録紙が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0015】
上記発明では、画像形成ジョブに係る画像を形成して排出先の排紙部に排出した記録紙が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された場合に警告を行う。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙を誤って取り出した後に異なる排紙部に返却した場合などの警告では、その記録紙を元の排紙部に返却するように促すことができる。これにより、印刷物が異なる排紙部に返却されたままの状態になることを防止できる。
【0016】
[4]前記画像形成ジョブを依頼するユーザの端末装置と通信する通信部を備え、
前記制御部は、ユーザから依頼された画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に発生した前記異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、該画像形成ジョブを依頼したユーザの端末装置に前記通信部を通じて前記異常状態の発生通知を行う
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0017】
上記発明では、排紙部で記録紙に発生した異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、その記録紙に対応する画像形成ジョブを依頼したユーザの端末装置に異常状態の発生通知を行う。この通知は、たとえば、[1]および[2]の発明においては、依頼ジョブの記録紙の一部が他のユーザによって持ち去られたなどの内容にしてもよい。[3]の発明においては、依頼ジョブの記録紙が他のユーザにより排出先の排紙部から取り出されて異なる排紙部に返却されたままの状態になっているなどの内容にしてもよい。
【0018】
このような通知を行うことで、ジョブの依頼ユーザにその記録紙(印刷物)に異常が発生したことを、記録紙の取得に訪れる前に知らせられるようになる。これにより、異常を知らずに取得に訪れた依頼ユーザが自分の記録紙を探さなければならなくなるといった無駄な労力を払わなくて済むようにできる。
【0019】
また、異常状態が所定時間内に解消された場合は通知を行わないことで、たとえば、記録紙を誤って取り出したことにすぐに気が付いて適切に返却した場合などの無用な通知を除外することができる。
【0020】
[5]ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部と、
ユーザに対して報知を行うための報知部と、
を備え、
前記制御部は、画像形成ジョブを依頼したユーザのユーザ識別情報と、前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に前記異常状態が発生したことを示す履歴情報とを対応付けて記憶し、
前記取得部によってユーザ識別情報が取得されたとき、該ユーザ識別情報に対応付けて前記履歴情報が記憶されている場合は、前記報知部により報知を行う
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0021】
上記発明では、当該画像形成装置を訪れたユーザからユーザ識別情報を取得してそのユーザを識別し、そのユーザから依頼された画像形成ジョブの記録紙に異常状態の発生を示す履歴がある場合は報知を行う。これにより、異常状態が発生された記録紙に係るジョブの依頼ユーザにその記録紙には異常が発生していること、または、異常が発生していたことを報知することができる。
【0022】
[6]ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記取得部によって取得されたユーザ識別情報に基づいてユーザを識別すると共に、該ユーザが自分の依頼した画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に対して前記異常状態を発生させた場合は前記発生通知を行わない
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0023】
上記発明では、当該画像形成装置を訪れたユーザからユーザ識別情報を取得してそのユーザを識別し、そのユーザが自分の依頼した画像形成ジョブの記録紙に対して異常状態を発生させた場合は通知を行わないようにする。
【0024】
たとえば、自分の依頼ジョブによる大量の記録紙や、自分の複数の依頼ジョブによる記録紙を排紙部から取り出す場合などには、その記録紙を非ジョブ単位で複数回に分けて取り出すようなことがある。複数の排紙部から自分の記録紙を取り出す場合などには、下段の排紙部から取り出した記録紙を上段の排紙部の記録紙の上に載せて、その上段の排紙部からまとめて取り出すようなこともある。
【0025】
このように、依頼ユーザ本人が自分の記録紙に対して発生させた異常状態は、自覚している可能性があるので通知しないようにする。このような必要性の低い通知を行わないことでユーザに不快感を与えなくて済むようになる。
【発明の効果】
【0026】
[1]に記載の発明によれば、印刷物がその一部を排紙部から取り出された場合に警告を行うことで、その印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0027】
[2]に記載の発明によれば、印刷物が排紙部から一旦取り出されてその一部を返却された場合に警告を行うことで、その印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0028】
[3]に記載の発明によれば、排出先の排紙部に排出した印刷物が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された場合に警告を行うことで、その印刷物が異なる排紙部に返却されたままの状態になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複合機の機構系の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る複合機が備える排紙トレイの概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る複合機の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る履歴データベースの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る複合機の画像形成動作を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る複合機の記録紙取り出し動作のメインルーチンを示す流れ図である。
【図7】図6のメインルーチンにおける警告処理1のサブルーチンを示す流れ図である。
【図8】図6のメインルーチンにおける警告処理2のサブルーチンを示す流れ図である。
【図9】図6のメインルーチンにおける返却処理のサブルーチンを示す流れ図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る履歴データベースに、印刷ジョブの依頼ユーザ本人に対して通知を行わない場合の情報が記憶された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複合機(MFP;Multi Function Peripheral/Multi Function Printer)10の機構系の構成を示している。
【0032】
複合機10は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得し、その画像データを保存したり外部端末へ送信したりするスキャン機能、原稿を読み取り、かつその読み取りで得た画像データに基づいて原稿の複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、外部端末から受信した印刷データをラスタライズして得た画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能、電子メールサーバを経由して外部端末に電子メールを送信する電子メール機能などを備えている。
【0033】
複合機10がユーザから依頼(指示)されて実行する画像形成ジョブには、上記のコピー機能を用いて実行するコピージョブやプリンタ機能を用いて実行する印刷ジョブ(プリントジョブ)などが含まれる。ユーザは、コピージョブの場合は複合機10を操作して実行を依頼し、印刷ジョブの場合は端末を操作して複合機10に実行を依頼する。
【0034】
また複合機10は、印刷出力した記録紙の取り出しや返却を記録紙毎に識別してその履歴を管理したり、その取り出しや返却を行ったユーザを識別したりする機能を備えている。これらは、非接触(近距離無線通信)による個体識別技術(RFID(Radio Frequency IDentification)技術)を用いて、RFIDタグ付きの記録紙を識別したり、RFIDタグを組み込んだID(IDentification)カードを所持するユーザを識別したりすることで行うようになっている。
【0035】
RFIDタグ付きの記録紙は、RFIDタグにユニークなタグID(タグ識別情報)が記憶されており、そのタグIDによって識別される。IDカードは、身分証明用などとして各ユーザに配布(貸与)されるものであり、カード内のRFIDタグにはユニークなユーザID(ユーザ識別情報)が記憶されている。IDカードを所持するユーザは、そのユーザIDによって識別される。
【0036】
複合機10は、操作表示部16と、原稿給紙トレイ17aにセットされた原稿(原稿M)を1枚ずつ送り出して搬送し、読取位置Sを通過させて原稿排紙トレイ17bに排出する自動原稿搬送装置17と、この自動搬送される原稿を読取位置Sで光学的に読み取って画像データを取得したり、プラテンガラス18aの上に載置された原稿を光学的に読み取って画像データを取得したりするスキャナ部18と、入力された画像データに基づく画像(画像形成ジョブに係る画像)を記録紙(記録紙P)に形成して排出する画像形成部としてのプリンタ部30とを備えている。
【0037】
プリンタ部30は、複数(本例では3段)の給紙ユニット31(給紙装置)と、搬送装置32と、感光体ドラム33と、帯電装置34と、レーザーユニット35と、現像装置36と、転写装置37、分離装置38、クリーニング装置39と、定着装置40と、複数(本例では2段)の排紙トレイ41(41a、41b)などを備え、給紙ユニット31から記録紙Pを供給して搬送装置32により搬送し、感光体ドラム33〜定着装置40の動作による電子写真プロセスによって記録紙Pに画像を形成して排紙トレイ41に排出するレーザープリンタなどとして構成されている。ここでは、排紙トレイ41に排出された記録紙の取り出しや返却を記録紙毎に識別してその履歴を管理するために、RFIDタグ付きの記録紙を使用するようにしている。以下では、RFIDタグ付きの記録紙を「RFID記録紙」と略称する場合がある。
【0038】
排紙トレイ41(41a、41b)には、トレイ上からの取り出しやトレイ上への返却によって通過する記録紙(RFID記録紙)を検出するための複数の検出センサ42(42a、42b)が設けられている。プリンタ部30内から排紙トレイ41に記録紙を排出するための排出口(排紙トレイ41の近傍)には、RFIDタグと交信(無線通信)してRFIDタグに記憶されているID情報(タグID/ユーザID)を取得するRFIDセンサ43(43a、43b)が設けられている。
【0039】
図2は、検出センサ42およびRFIDセンサ43の位置を示す排紙トレイ41を上方から見た図(平面図)である。
【0040】
排紙トレイ41は、平面視矩形状で記録紙Pよりも大きくされている。検出センサ42は、光の強度変化を利用して物体(記録紙)を検出する透過型や反射型などの汎用の光電センサなどで構成されており、排紙トレイ41に排出された記録紙(RFID記録紙)Pに掛からない位置、ここでは排紙トレイ41の周縁部近傍に所定の間隔で配置されている。検出センサ42は、本例のように複数箇所に点状に配置するほかに、線状(ライン状)に配置するなどしてもよい。
【0041】
RFIDセンサ43は、排紙トレイ41に存在する記録紙Pに付いているRFIDタグのタグIDを読み取る読取部としての機能と、排紙トレイ41に接近したユーザが所持しているIDカード内のRFIDタグのユーザIDを読み取って取得する取得部としての機能とを果たす。
【0042】
RFIDタグは、情報記憶機能(データ記憶機能)と交信機能(無線通信機能)を備えた電子荷札であり、交信を行うためのアンテナと情報(データ)の記憶や送信制御などを行うIC(Integrated Circuit)チップを内蔵している。RFIDタグは、アンテナで電磁波を受信するとICチップに電力が供給されてICチップが動作し、記憶されている情報をアンテナから送信するようになっている。
【0043】
RFIDセンサ43は、RFIDタグと交信を行うためのアンテナと交信制御部を備え、交信制御部がアンテナから電磁波を放射してRFIDタグに電力を供給し、RFIDタグから送信される情報をアンテナで受信するようになっている。RFIDセンサ43の指向性やRFIDタグとの交信可能距離は、固定されていてもよく、変更可能とされていてもよい。RFIDセンサ43によるRFIDタグの読取範囲(検知範囲)は、この指向性や交信可能距離の条件によって決定される。
【0044】
本実施の形態では、RFIDタグの読取範囲Rが排紙トレイ41の平面サイズ(最大サイズ)を含む範囲となっており、RFIDセンサ43は排紙トレイ41上に存在する全てのRFID記録紙のタグIDを読み取れるようになっている。さらに、排紙トレイ41に接近したユーザが所持しているIDカードのユーザIDも読み取れるようになっている。
【0045】
また、排紙トレイ41(41a、41b)は、電磁波シールド材料で形成される、あるいは、電磁波シールドコーティングが施されるなどにより、電磁波をシールド(遮蔽)する機能を備えている。これにより、図1に示した上段の排紙トレイ41a(第1排紙トレイ)近傍に設けられたRFIDセンサ43aと、下段の排紙トレイ41b(第2排紙トレイ)近傍に設けられたRFIDセンサ43bとの間で電磁波干渉が起こることなく、RFID記録紙のタグIDをトレイ毎に読み取れるようになっている。
【0046】
図3は、複合機10の制御系の構成を示している。複合機10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力バッファ14と、ハードディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)15と、操作表示部16と、自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder;ADF)17と、スキャナ部18と、プリンタ部30と、ユーザ認証部19と、データベース管理部20と、報知部21と、タイマー部22と、ネットワークI/F(Interface)部23と、検出センサ42(42a、42b)と、RFIDセンサ43(43a、43b)とがバス24を介して接続されて構成される。
【0047】
CPU11は、ROM12に格納されているプログラムに基づいて複合機10の動作を制御する。RAM13は、CPU11がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。
【0048】
入出力バッファ14は、複合機10内の各部でデータがやり取りされるときの処理速度や転送速度の差を補うために、入力されたデータや出力するデータを一時的に記憶するバッファ機能を果たす。ハードディスク装置15は、各種の保存データなどを格納するほか、原稿のコピー(複写印刷)や外部端末から指示された印刷における画像データなども保存する。
【0049】
操作表示部16は、操作画面、設定画面、警告画面、報知画面(メッセージ画面)などの各種の画面を表示する機能、およびユーザから各種の操作を受ける機能を果たす。ここでは、表示機能を担う液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)と、該液晶ディスプレイの表面に形成され、押下された座標位置を検出するタッチパネルや、テンキー、スタートボタン、各種操作スイッチなどで構成される。
【0050】
ユーザ認証部19は、ユーザ認証を行うための認証用データ(認証情報)を取得する機能を果たす。ユーザ認証としては、たとえば、ユーザの所持するIDカードなどに記憶されている認証用データを接触式または非接触式のカードリーダなどで読み取って、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行うカード認証技術、ユーザの指紋や指静脈などの生体情報を認証用データとして生体認証ユニットなどで読み取って、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行う生体認証技術、ユーザが認証用データとしてのパスワードを操作表示部16から入力して、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行うパスワード認証技術などの汎用の各種の認証技術を単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0051】
データベース管理部20は、ユーザデータベース50および履歴データベース60を格納すると共にそれらのデータベースに対する情報(データ)の記憶、更新、消去といった管理を行う機能を果たす。ユーザデータベース50には、複合機10の使用を許可されたユーザの情報が記憶されている。たとえば、ユーザ毎に、ユーザIDと、認証情報と、設定情報と、ユーザの使用する端末(ユーザ端末)の電子メールアドレスなどが対応付けられて記憶されている。履歴データベース60には、排紙トレイ41に排出されたRFID記録紙の取り出しや返却の履歴を保存するための各種の情報が記憶される。
【0052】
報知部21は、ユーザに対して警告、報知、通知を行う機能を果たす。警告は、警報(警告音)の発生や警告灯の点灯などで行う。このために、報知部21は警報発生器(アラーム発生器)、発光器(ランプ)からなる警告灯などを備えた構成としてもよい。報知は、メッセージの音声出力や表示などで行う。音声出力を行うために、報知部21はスピーカなどの音声出力器を備えた構成としてもよい。表示による報知は、報知部21が操作表示部16にメッセージ画面を表示するなどして行う。通知は、メッセージを記載した電子メールをユーザの端末に送信することで行う。この通知は、報知部21がユーザ端末宛てのメッセージメールを作成しネットワークI/F部23を通じて送信することにより行う。
【0053】
メッセージメールは、通知の対象となる事象(排紙トレイにおける記録紙の不適切な取り出しや返却)が発生してその事象が解消されずに所定時間を経過すると自動的に送信される。この所定時間は、固定時間としてもよく(たとえば5分)、ユーザが任意の時間を設定できるように構成してもよい。また、所定時間内に通知の対象となる事象が解消された場合に、メッセージメールによる通知を受け取るか否かは、ユーザが設定できるようになっている。これらの設定情報は、データベース管理部20内のユーザデータベース50に記憶される。
【0054】
タイマー部22は、設定された時間をカウントする機能を果たす。ここでは、メッセージメールを自動送信する時間(所定時間)などをカウントするために使用される。
【0055】
ネットワークI/F部23は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークと接続してネットワーク上の外部端末や電子メールサーバなどと通信する機能を果たす。たとえば、スキャナ部18で読み取って得た画像データを外部端末へ送信する場合や外部端末から印刷データ(印刷ジョブ)を受信する場合、電子メール(メッセージメール)を外部端末へ送信する場合などに使用される。
【0056】
図4は、履歴データベース60の構成を示している。
【0057】
履歴データベース60には、RFIDセンサ43(43a、43b)によって読み取られたRFID記録紙のタグIDと、画像形成ジョブ(印刷ジョブ/コピージョブ)の実行依頼を受けたときにCPU11が発行したジョブIDとが対応付けて記録される。さらに、画像形成ジョブを依頼したユーザ(図では「依頼ユーザ」と表記)のユーザIDと、排紙トレイ41(41a、41b)からRFID記録紙を取り出したユーザ(図では「取出ユーザ」と表記)のユーザIDと、RFID記録紙の排出先となる排紙トレイ41を示す排出先情報と、RFIDセンサ43によってタグIDが読み取られることにより検知されたRFID記録紙が存在する排紙トレイ41を示す検知情報と、排紙トレイ41からのRFID記録紙の取り出し履歴を示す取出履歴情報と、CPU11が報知部21による警告などを行うか否かを判定した結果を示す総合判定情報とが対応付けて記録される。
【0058】
依頼ユーザのユーザIDは、印刷ジョブ(プリントジョブ)の場合には、ユーザ端末から受信した印刷ジョブに付加されているユーザIDとなる。コピージョブの場合には、その実行依頼を受け付ける直前のユーザ認証によって認証していたユーザのユーザIDとなる。RFID記録紙を取り出したユーザのユーザIDは、RFID記録紙の取り出しを検知したときに、排紙トレイ41の近くにいるユーザのIDカードからRFIDセンサ43が取得しているユーザIDとなる。これらのユーザIDは、図では便宜的に「ユーザA」などのユーザ名で示している。
【0059】
排出先情報は、「トレイ1」が第1排紙トレイ(上段の排紙トレイ41a)を示し、「トレイ2」が第2排紙トレイ(下段の排紙トレイ41b)を示す。検知情報は、「トレイ1」が第1排紙トレイに対応するRFIDセンサ43aによってRFID記録紙が検知されたこと、すなわち、RFID記録紙が第1排紙トレイ上に存在していることを示し、「トレイ2」が第2排紙トレイに対応するRFIDセンサ43bによってRFID記録紙が検知されたこと、すなわち、RFID記録紙が第2排紙トレイ上に存在していることを示す。「無」がRFIDセンサ43a、43bによってRFID記録紙が検知されないこと、すなわち、RFID記録紙が第1および第2のいずれの排紙トレイ上にも存在していないことを示す。この検知情報は、印刷の行われたRFID記録紙が排紙トレイ41に排出されたときと、排紙トレイ41から取り出されたときと、排紙トレイ41に返却されたときとに更新される。
【0060】
取出履歴情報は、「有」がRFID記録紙の取り出しが行われたこと(取り出し履歴有り)を示し、「−」がRFID記録紙の取り出しが行われていないこと(取り出し履歴無し)を示す。総合判定情報は、「OK」が合格判定であることを示し、「NG」が不合格判定であることを示し、「−」が未判定であることを示す。この総合判定情報が「NG」の場合に、警告などが行われる。
【0061】
履歴データベース60は、上記の印刷が行われたRFID記録紙毎の情報をジョブIDに対応付けて記憶することにより、排紙トレイ41に排出されたRFID記録紙の取り出しや返却に関する履歴などをジョブ単位で管理するようになっている。
【0062】
詳細には、RFID記録紙のジョブ単位での取り出しや返却の履歴、および、RFID記録紙の排出先(取出元)や返却先の履歴と、警告などを行うか否かの判定結果とを管理するようになっている。また、ジョブ単位の取り出しや返却は、1回の行為だけで完了しない場合もある。たとえば、大量の記録紙を2回以上に分けて取り出すような場合や、複数のユーザによって分散されて持ち出された記録紙が返却された場合などである。そのような複数回の行為によって完了するジョブ単位の取り出しや返却の履歴も管理できるようになっている。
【0063】
また、履歴データベース60に記憶された各情報は、画像形成ジョブを実行してから所定時間(たとえば、5分〜30分など)が経過するとそのジョブ単位で自動的に消去される。この所定時間は、ユーザが設定できるように構成してもよい。
【0064】
次に、複合機10の動作について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る複合機10は、画像形成ジョブに係る画像を形成して排紙トレイ41に排出した記録紙(RFID記録紙)の不適切な取り出しや返却を検知して警告などを行う。このような不適切な取り出しや返却は、一般には、排紙トレイに複数ジョブの記録紙が排出されて積載されているような場合や、複数の排紙トレイに記録紙が排出されているような場合に起こりやすくなる。
【0066】
前者の場合には、たとえば、ユーザが排紙トレイ上の紙束の中から自分のジョブにおける複数枚の記録紙を探して取り出す際に、気が付かずに一部を取り忘れたり、誤って他人の記録紙まで取り出したりするようなことが起こり得る。また、他人の記録紙を複数枚取り出してしまったことに気が付いてその記録紙を返却する際に、誤って一部しか返却しないようなことも起こり得る。
【0067】
また、紙束量が多いときや自分が複数のジョブを依頼したときには、排紙トレイ上では探しにくいため、一旦、紙束(全ての記録紙)を取り出し、その紙束の中から探し出した自分の記録紙のみを抜き取って残りの記録紙を元の排紙トレイに返却するようなこともある。その際に、自分の複数枚の記録紙の一部を取り忘れて返却してしまったり、誤って他人の記録紙まで抜き取って返却してしまったりすることが起こり得る。また、自分が依頼した複数ジョブの記録紙の間に他人のジョブの記録紙が紛れ込んでいることに気が付かずに、その他人の記録紙を誤って持ち去ってしまうようなことが起こり得る。
【0068】
後者の場合(複数の排紙トレイに記録紙が排出されているような場合)には、誤って取り出した他人の記録紙や、意図して取り出した全ての記録紙のうちの自分のもの以外を排紙トレイに返却する際に、取出元とは異なる排紙トレイに返却してしまうようなことが起こり得る。たとえば、下段の排紙トレイから取り出した記録紙を誤って上段の排紙トレイに返却してしまうような場合などである。
【0069】
複合機10は、これらの不適切な取り出しや返却による異常状態を検知すると、警報を出してその異常状態を起こした(不適切な行為を行った)ユーザにそのことを気付かせ、適切な行為を促すように動作する。異常状態の詳細は、(1)画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一部のみ取り出されて(非ジョブ単位で取り出されて)排紙トレイ41にジョブ単位に揃わない状態、(2)画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一旦取り出された後に返却されて(非ジョブ単位で返却されて)排紙トレイ41にジョブ単位に揃わない状態、(3)画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が排出先の排紙トレイ41(排紙トレイ41a、41bのうちの一方)から一旦取り出されて異なる排紙トレイ41(排紙トレイ41a、41bのうちの他方)に返却された状態である。
【0070】
また、排紙トレイ41から一旦取り出されて返却された記録紙は、排紙トレイ41に排出されたときの状態(取り出し前の初期状態)とは異なっている可能性がある。たとえば、記録紙のページ順、表裏、上下の向きなどが正しくない可能性がある。また、一部が他の画像形成ジョブの記録紙の間に紛れ込んでしまっている場合などもある。そこで、複合機10は、他のユーザなどが排紙トレイ41から一旦取り出した後に適切に返却した場合でも、その記録紙に対応する画像形成ジョブを依頼したユーザに注意が必要である旨を電子メール(メッセージメール)で通知したり(要注意通知)、そのユーザによる当該記録紙の取得時に表示や音声で報知したりするようにしている(要注意報知)。
【0071】
先ず、図4の履歴データベース60を用いて動作の概要を説明する。ここでは、ユーザ端末から依頼された印刷ジョブを例としている。また、本図では見易さを考慮して偶数番号のジョブをグレー背景で示している。
【0072】
ユーザAの印刷ジョブ1は、タグ1〜3の3枚の記録紙(RFID記録紙)が第1排紙トレイに排出されて(排出先「トレイ1」)、取り出されていない状態である(取出ユーザ「−」/検知「トレイ1」/取出履歴「−」/総合判定「−」)。
【0073】
次のユーザBの印刷ジョブ2は、タグ4、5の2枚の記録紙が第1排紙トレイに排出され、ユーザB自身によってジョブ単位で取り出されている(取出ユーザ「ユーザB」/検知「無」/取出履歴「有」)。この場合は、印刷ジョブ2の記録紙にジョブ単位で合格判定を行う(総合判定「OK」)。ユーザCの印刷ジョブ3によって第2排紙トレイに排出されたタグ6〜タグ8の3枚の記録紙も、同様に、ユーザC自身によってジョブ単位で取り出されたので合格判定を行う(取出ユーザ「ユーザC」/検知「無」/取出履歴「有」/総合判定「OK」)。
【0074】
次のユーザAの印刷ジョブ4では、たとえば、ユーザBが印刷ジョブ2による自分の記録紙を第1排紙トレイから取り出す際に誤って印刷ジョブ4の3枚の記録紙のうちの1枚(タグ9)を取り出してしまったような場合である。この場合は、ジョブ単位で取り出されていないため、印刷ジョブ4の記録紙に対してジョブ単位で不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。
【0075】
次のユーザDの印刷ジョブ5も同様に、たとえば、ユーザCが印刷ジョブ3による自分の記録紙を第2排紙トレイから取り出す際に誤って印刷ジョブ5の2枚の記録紙のうちの1枚(タグ12)を取り出してしまったような場合である。この場合も、ジョブ単位で取り出されていないため不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。
【0076】
次のユーザEの印刷ジョブ6では、第1排紙トレイに排出された5枚の記録紙のうちの4枚(タグ14〜17)をユーザFが誤って取り出した場合であり、この状態の発生時点で印刷ジョブ5の記録紙に対しジョブ単位で不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。さらに、取り出された4枚のうちの1枚(タグ14)だけが元の第1排紙トレイに返却されて、印刷ジョブ6の記録紙がジョブ単位(5枚)に復帰していないため、ここでも警報を発生する(または警報が継続される)。このケースは、返却されていない残りの3枚(タグ15〜17)がユーザFによって持ち去られた可能性のあるケースである。
【0077】
次の印刷ジョブ7、8では、印刷ジョブ7で第2排紙トレイに排出された自分の記録紙2枚(タグ19、20)をユーザDが取り出したときに、ユーザCによる印刷ジョブ8の記録紙1枚(タグ21)も一緒に取り出してしまったが、第1排紙トレイに返却した場合である。この場合は、印刷ジョブ8の記録紙の取り出しはジョブ単位であるが、返却先が元の排紙トレイではないため不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。
【0078】
次の印刷ジョブ9では、第2排紙トレイに排出されたユーザGの記録紙3枚(タグ22〜24)をユーザHが誤って取り出してしまい、そのうちの1枚(タグ22)を第1排紙トレイに返却した場合である。この場合は、印刷ジョブ9の記録紙の取り出しはジョブ単位であるが、返却先が元の排紙トレイではなく、かつ、ジョブ単位で返却されていないため不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。以上が動作の概要である。
【0079】
図5は、複合機10による印刷動作の流れを示している。ここでも、ユーザ端末から依頼された印刷ジョブを実行する場合の動作を例に説明する。
【0080】
ユーザが端末を操作して複合機10に印刷を依頼(指示)すると、そのユーザ端末は画像データ(印刷データ)およびユーザIDなどを含む印刷ジョブを生成して複合機10に送信する。
【0081】
複合機10においては(Start)、ユーザ端末から印刷ジョブを受信すると(ステップS101)、CPU11はその印刷ジョブに含まれている画像データに基づく印刷を実行する(ステップS102)。詳細には、プリンタ部30を制御して画像データに基づく画像をRFID記録紙に形成し、そのRFID記録紙を排紙トレイ41に排出する。印刷枚数が1枚の印刷ジョブであれば、画像を形成したRFID記録紙を排紙トレイ41に1枚排出する。印刷枚数が複数枚の印刷ジョブであれば、画像を形成したRFID記録紙を排紙トレイ41に複数枚排出する。
【0082】
CPU11は、このRFID記録紙の排出タイミングに合わせ、RFIDセンサ43でタグIDを読み取り取得する(ステップS103)。詳細には、排紙トレイ41aへの排出ではRFIDセンサ43aを作動させてタグIDを読み取り、排紙トレイ41bへの排出ではRFIDセンサ43bを作動させてタグIDを読み取る。なお、この排出するRFID記録紙のタグIDは、たとえば、定着装置40の近傍などに配置した別のRFIDセンサで読み取るようにしてもよい。
【0083】
CPU11は、履歴データベース60に(図4参照)、取得したタグIDと、CPU11が当該ジョブに対して発行したジョブIDと、当該ジョブに付加されているユーザIDと、RFID記録紙の排出先を示す排出先情報(「トレイ1」または「トレイ2」)と、RFID記録紙が検知された排紙トレイを示す検知情報(「トレイ1」または「トレイ2」)とを対応付けて保存し(ステップS104)、本動作を終了する(End)。この動作が終了すると(印刷ジョブの実行完了時点)、履歴データベース60には図4のジョブ1に例示するように、取出ユーザ情報、取出履歴情報、総合判定情報以外の情報が記憶される。また、排出先情報と検知情報とは一致している。
【0084】
図6は、複合機10における記録紙の取得動作の流れを示している。ここでは、1つの印刷ジョブにおけるRFID記録紙がその印刷ジョブの依頼ユーザに取得されるまでの流れで説明する。また、このジョブ依頼ユーザによる取得までの間に、前述した、(1)記録紙の非ジョブ単位での取り出し、(2)記録紙の非ジョブ単位での返却、(3)取り出し元とは異なる排紙トレイへの記録紙の返却、が他のユーザなどによって起こされた場合には、警報を発生したり、ジョブ依頼ユーザに要注意通知/報知を行ったりする流れとなっている。
【0085】
複合機10では(Start)、CPU11は、RFIDセンサ43によってユーザの所持しているIDカードのRFIDタグからユーザIDが取得されるか否かを監視する(ステップS111;No〜ステップS111のループ)。この監視は、排紙トレイ41にユーザが接近したか否かの監視である。
【0086】
RFIDセンサ43によって上記取得が行われた場合は(ステップS111;Yes(ユーザの接近検知))、検出センサ42による排紙トレイ41での記録紙の通過検出(取り出しまたは返却の検出)を監視する(ステップS112;No〜ステップS111;Yes〜ステップS112のループ)。記録紙の通過を検出せずに、ユーザIDを取得できなくなった場合は、すなわち、排紙トレイ41にユーザは接近したがそのユーザが記録紙の取り出しや返却を行わずに離れた場合は、ステップS111へ戻り、再び排紙トレイ41へのユーザの接近を監視する。
【0087】
記録紙の通過を検出した場合は(ステップS112;Yes)、CPU11は、その検出した排紙トレイ41(排紙トレイ41a、41b)に対応するRFIDセンサ43(RFIDセンサ43a、43b)が読み取っているタグIDの変化から(ステップS113)、RFID記録紙が取り出されたか返却されたかを判断する(ステップS114)。
【0088】
CPU11は、取得したタグIDと履歴データベース60のタグIDを比較し、履歴データベース60に対して減少したタグIDがある場合は、そのタグIDのRFID記録紙が取り出されたと判断し(ステップS114;取り出し)、ステップS115へ移行する。この減少となるタグIDは、それ以前に排紙トレイ41に存在していたもの、すなわち、検知情報が「トレイ1」または「トレイ2」のタグIDのみである。また、履歴データベース60における検知情報「無」のタグIDの中に増加したタグIDがある場合は、そのタグIDのRFID記録紙が返却されたと判断し(ステップS114;返却)、ステップS122へ移行する。
【0089】
ステップS115では、CPU11は、履歴データベース60を参照し、減少したタグIDと同じジョブの全てのタグIDを取得していない場合は、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位で取り出されたと判断し(ステップS115;Yes)、履歴データベース60を更新して(ステップS119)、ステップS120へ移行する。履歴データベース60の更新では(図4参照)、CPU11は、減少したタグIDの検知情報を「無」に更新し、取出履歴情報を「有」に更新し、取出ユーザ情報をRFIDセンサ43による取得中のユーザIDに更新する。
【0090】
減少したタグIDと同じジョブのタグIDを1つでも取得している場合は、そのタグIDのRFID記録紙が排紙トレイ41に残っていることになる。CPU11は、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位で取り出されていないと判断し(ステップS115;No)、履歴データベース60を更新する(ステップS116)。ここでは、減少したタグIDの検知情報を「無」に更新し、取出履歴検知情報を「有」に更新し、取出ユーザ情報をRFIDセンサ43による取得中のユーザIDに更新する。さらに、ジョブ単位で取り出されていないと判断したジョブの全てのタグIDの総合判定情報を「NG」に更新し、サブルーチンで警告処理1を行う(ステップS117)。
【0091】
図7は、警告処理1の流れを示している。警告処理1では、CPU11は、報知部21を通じて警報を発生すると共に(ステップS131)、タイマー部22による時間のカウントを開始し、警報発生からの時間が所定時間を経過する前に、排紙トレイ41で記録紙の通過が検出されるか否かを監視する(ステップS132;No〜ステップS133;No〜ステップS132のループ)。
【0092】
たとえば、警報を聞いて自分の記録紙を取り忘れていることに気が付いたユーザであれば、残りの記録紙を更に取り出す可能性が高い。警報を聞いて他人の記録紙を取り出してしまったことに気が付いたユーザであれば、その記録紙を返却する可能性が高い。
【0093】
CPU11は、排紙トレイ41における記録紙の通過を検出した場合は(ステップS132;Yes)、図6のステップS113およびS114と同様のステップS134およびS135を行ってRFID記録紙の取り出し/返却を判断する。
【0094】
取得タグIDの減少によりRFID記録紙が取り出されたと判断した場合は(ステップS135;取り出し)、CPU11は、図6のステップS115と同様のステップS136を行い、ジョブ単位でのRFID記録紙の取り出し(当該ジョブの残りのRFID記録紙の取り出し)が完了したか否かを判断する。ジョブ単位の取り出し完了と判断した場合は(ステップS136;Yes)、CPU11は報知部21による警報を停止し(ステップS140)、図6のステップS119と同様の履歴データベース60の更新を行う(ステップS141)。
【0095】
ジョブ単位の取り出しが完了しなかったと判断した場合は(ステップS136;No)、CPU11は、図6のステップS116と同様の履歴データベース60の更新を行い(ステップS139)、ステップS132へ戻る。
【0096】
一方、取得タグIDの増加によりRFID記録紙が返却されたと判断した場合は(ステップS135;返却)、CPU11は、履歴データベース60を参照し、そのRFID記録紙の返却先(増加したタグIDを検知した排紙トレイ)が排出先と一致していれば元の排紙トレイ41に返却されたと判断し(ステップS137;Yes)、一致していなければ元の排紙トレイ41に返却されていないと判断する(ステップS137;No)。
【0097】
返却NGと判断した場合は、履歴データベース60を更新し(ステップS139)、ステップS132へ戻る。ここでは、増加したタグIDの検知情報をRFID記録紙の返却先となった「トレイ1」または「トレイ2」に更新する。返却OKと判断した場合は、CPU11は、その返却されたRFID記録紙と排紙トレイ41に残っていた同じジョブのRFID記録紙とによってジョブ単位に復帰したか否かを判断する(ステップS138)。
【0098】
CPU11は、履歴データベース60を参照し、増加したタグIDと同じジョブの全てのタグIDのうちの1つでも取得していない場合は、その未取得のRFID記録紙が返却されておらず、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位に復帰していないと判断する(ステップS138;No)。この場合も、返却NGと同様の履歴データベース60の更新を行い(ステップS139)、ステップS132へ戻る。
【0099】
増加したタグIDと同じジョブの全てのタグIDを取得している場合は、CPU11は、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位に復帰したと判断し(ステップS138;Yes)、警報を停止して(ステップS140)、上記の返却NGおよび返却OKと同様の履歴データベース60の更新を行う(ステップS141)。
【0100】
続いて、CPU11は、ジョブ単位での取り出しが完了したジョブ、または、ジョブ単位に復帰したジョブを依頼したユーザの通知設定をユーザデータベース50によって確認する(ステップS142)。通知に設定されていない場合は(ステップS142;No)、メインルーチンに戻る。通知に設定されている場合は、RFID記録紙の返却によってジョブ単位に復帰した場合のみ、CPU11は、ユーザデータベース50からそのユーザの電子メールアドレスを取得して報知部21に入力すると共にメッセージメールの作成および送信を指示し(ステップS143/要注意通知)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0101】
報知部21は、所定のメッセージ、たとえば、依頼された印刷ジョブの記録紙が複合機10の排紙トレイ41から一旦取り出された後に返却されてジョブ単位に復帰したが、ページ順が正しくない可能性があるなどのメッセージを本文欄に記載し、入力された電子メールアドレスを宛先欄に挿入したメッセージメールを作成して送信する。なお、このメッセージメールに当該印刷ジョブに含まれているファイルの名称(ファイル名)などを付加するようにしてもよい。
【0102】
一方、排紙トレイ41で記録紙の通過が検出されることなく所定時間を経過した場合、もしくは、記録紙の通過は検出したがジョブ単位での取り出し完了または返却によるジョブ単位への復帰とならずに所定時間を経過した場合は(ステップS133;Yes)、警報を停止する(ステップS144)。そして、CPU11は、ユーザデータベース50からそのジョブの依頼ユーザの電子メールアドレスを取得して報知部21に入力すると共にメッセージメールの作成および送信を指示し(ステップS145/記録紙持ち去り通知)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0103】
報知部21は、所定のメッセージ、たとえば、依頼された印刷ジョブの記録紙の一部が複合機10の排紙トレイ41から持ち去られた可能性があるなどのメッセージを本文欄に記載し、入力された電子メールアドレスを宛先欄に挿入したメッセージメールを作成して送信する。なお、このメッセージメールにもファイル名などを付加してよい。
【0104】
図7の警告処理1から図6のメインルーチンに戻ると、CPU11は、警告処理1においてジョブ単位での取り出しが完了していなかった場合は(ステップS118;No)、ステップS111へ戻る。この場合は、警報発生から所定時間が経過しており、この時点でユーザIDを取得している場合はそのユーザを対象に、再度、ステップS112以降の動作を行う。ユーザIDを取得していない場合は、既にユーザが複合機10から離れており、ユーザの接近を再び監視することになる。
【0105】
ジョブ単位での取り出しが完了していた場合は(ステップS118;Yes)、CPU11は、履歴データベース60を参照し、その取り出しを行った取出ユーザと、ジョブ単位で取り出された記録紙(RFID記録紙)に対応するジョブの依頼ユーザが一致するか否かを判断する(ステップS120)。
【0106】
一致する場合は(ステップS120;Yes)、ジョブ単位での記録紙の取り出しを依頼ユーザ本人が行ったことになる。この場合は、ステップS124へ移行する。一致しない場合は(ステップS120;No)、ジョブ単位での記録紙の取り出しを他のユーザが行ったことになる。この場合は、ステップS119からの移行では総合判定情報を「NG」に更新し(ステップS118から移行ではステップS116で既に総合判定情報が「NG」にされている)、サブルーチンで警告処理2を行う(ステップS121)。
【0107】
図8は、警告処理2の流れを示している。警告処理2は、RFID記録紙のジョブ単位での返却のみを監視する点が警告処理1と異なり、他は基本的に同じ動作である。
【0108】
その相違点について説明すると、CPU11は、図7のステップS131〜S134と同様のステップS151〜S154を行い、他のユーザによって取り出されたRFID記録紙が元の排紙トレイ41に、ジョブ単位で一括返却される、または、複数回に分けて返却されジョブ単位に復帰することを(ステップS155)、警報発生から所定時間が経過するまでの間、監視するように動作する。このステップS155以降のステップS156〜S162は、警告処理1の対応するステップS139〜S145と同様の動作である。
【0109】
なお、ステップS162によるジョブ依頼ユーザへの通知(メッセージ)は、ジョブ単位で取り出された記録紙が1枚も返却されない場合には、その印刷ジョブの全記録紙が持ち去られた旨の通知とし、一部の記録紙が返却された場合には、その印刷ジョブの一部の記録紙が持ち去られた旨の通知などにしてもよい。
【0110】
図8の警告処理2から図6のメインルーチンに戻ると、ステップS111へ戻る。この時点でユーザIDを取得している場合はそのユーザを対象に、再度、ステップS112以降の動作を行う。ユーザIDを取得していない場合は、既にユーザが複合機10から離れており、ユーザの接近を再び監視することになる。
【0111】
ステップS117の警告処理1やステップS121の警告処理2を経由してジョブ単位の一部の記録紙が取り出されたままの状態になった場合には、その記録紙が後に返却される可能性がある。たとえば、他人の記録紙を誤って持ち去ってしまったことを自分の席に戻ってから気が付いたユーザなどが、その記録紙を持って複合機10を訪れ排紙トレイ41に返却するようなケースなどである。
【0112】
このような場合は、ステップS114で返却となり(取得タグIDの増加)、CPU11は、履歴データベース60を更新し(ステップS122)、サブルーチンで返却処理を行う(ステップS123)。履歴データベース60の更新では、CPU11は、増加したタグIDの検知情報をRFID記録紙の返却先となった「トレイ1」または「トレイ2」に更新する。
【0113】
図9は、返却処理の流れを示している。返却処理では、CPU11は、図7の警告処理1におけるステップS137と同様のステップS171を行って返却先が適切か否かを判断する。適切であると判断した場合は(ステップS171;Yes)、図8の警告処理2におけるステップS155と同様のステップS172を行って、ジョブ単位での一括返却または複数回に分けての返却によるジョブ単位への復帰を判断する。
【0114】
ジョブ単位に揃った場合は(ステップS172;Yes)、CPU11は、ユーザデータベース50からそのジョブ単位に揃った印刷ジョブの依頼ユーザの電子メールアドレスを取得して報知部21に入力すると共にメッセージメールの作成および送信を指示し(ステップS173/記録紙返却完了通知)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0115】
報知部21は、たとえば、前に通知した、持ち去られた可能性のあった記録紙が返却されてジョブ単位に揃った旨のメッセージを本文欄に記載し、入力された電子メールアドレスを宛先欄に挿入したメッセージメールを作成して送信する。
【0116】
ステップS171で返却先が適切でないと判断した場合と(ステップS171;No)、ステップS172でジョブ単位に揃わなかった場合は(ステップS172;No)、CPU11は、報知部21による警報の発生を一定時間(数秒)だけ行う(ステップS174)。この警報により、返却先の適切でないRFID記録紙が取り出されたり、ジョブ単位で返却されなかったそのRFID記録紙が再び取り出されたりする可能性がある。
【0117】
ここで、CPU11は、今回返却された上記のRFID記録紙の取り出し、すなわち、タグIDの減少を検知した場合は(ステップS175;Yes)、履歴データベース60におけるそのタグIDの検知情報を「無」に更新してリセットし(ステップS176)、メインルーチンに戻る(Return)。RFID記録紙の取り出しを検知しなかった場合は(ステップS175;No)、そのままメインルーチンに戻る(Return)。
【0118】
図9の返却処理から図6のメインルーチンに戻ると、ステップS111へ戻る。ここで再び、不適切な返却先によって一旦取り出されたRFID記録紙が返却されたり、ジョブ単位に復帰しなかった際のその残りのRFID記録紙が返却されたりした場合などには、ステップS114で返却側へ移行し、ステップS122およびS123を繰り返すことになる。
【0119】
ステップS124へは、印刷ジョブの依頼ユーザ本人がその記録紙をジョブ単位で取り出した状態で移行してきている。CPU11は、依頼ユーザ本人によって取り出されたRFID記録紙(タグID/ジョブID)の取出履歴を履歴データベース60で確認する。取出履歴がない場合には(ステップS124;No)、CPU11は、図4のジョブ2、3に例示するように、履歴データベース60におけるそのジョブの取出ユーザを依頼ユーザのユーザIDに、検知情報を「無」に、取出履歴を「有」に、総合判定情報を「OK」にそれぞれ更新し(ステップS126)、本動作を終了する(End)。また、ステップS117の警告処理1を経由して依頼ユーザ本人による取出履歴がある場合も(ステップS124;No)、同様の情報更新を行って(ステップS126)、本動作を終了する(End)。
【0120】
他のユーザによる取出履歴がある場合には(ステップS124;Yes)、CPU11は、その依頼ユーザ本人がジョブ単位で取り出したRFID記録紙は注意が必要である旨(たとえば、ページ順が正しくない可能性があるなど)の報知を、報知部21(操作表示部16)を通じて行い(ステップS125)、同様の情報更新を行って(ステップS126)、本動作を終了する(End)。
【0121】
また、図7の警告処理1におけるステップS143のジョブ依頼ユーザへの通知は、そのジョブ依頼ユーザ本人が前述の異常状態を発生させて所定時間内に解消させた場合には行わないようにしてもよい。
【0122】
図10の履歴データベース60では、その通知を行わないジョブ10〜15を、図4の通知を行うジョブ4〜6、8、9と対比させて示している。この図10に示すように、前述した、(1)記録紙の非ジョブ単位での取り出し、(2)記録紙の非ジョブ単位での返却、(3)取り出し元とは異なる排紙トレイへの記録紙の返却、がジョブの依頼ユーザ本人によって行われた場合には、総合判定情報は「SAFE」となり、これらの異常状態が所定時間内に解消した場合は、CPU11は、警告処理1におけるステップS143ではその依頼ユーザの端末にメッセージメールを送信しないように動作する。
【0123】
このように、本実施の形態に係る複合機10では、排紙トレイ41から印刷物がジョブ単位で取り出されない、または、ジョブ単位で返却されないなどの場合に警告を行うことで、印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙トレイ41に残ることを防止できる。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのような不適切な取り出しや返却を行った場合には、警告により印刷物をジョブ単位に戻すように促すことができる。これにより、ジョブの依頼ユーザがその印刷物をジョブ単位で取得できなくなることを防止できる。
【0124】
また、排出先の排紙トレイ41から印刷物が一旦取り出されて異なる排紙トレイ41に返却された場合に警告を行うことで、印刷物が排出先とは異なる排紙トレイ41に返却されたままの状態になることを防止できる。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのような行為を行った場合には、警告により印刷物を元の排紙トレイ41に戻すように促すことができる。これにより、ジョブの依頼ユーザがその印刷物を排出先以外の排紙トレイ41まで探したり、その印刷物が紛失または廃棄などされて取得できなくなったりすることを防止できる。
【0125】
また、複合機10は、排紙トレイ41で印刷物に発生した上記の異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、その印刷物に対応するジョブを依頼したユーザの端末に異常状態の発生を通知する。これにより、ジョブの依頼ユーザにその印刷物に異常が発生したことを、印刷物の取得に訪れる前に知らせられるようになり、異常を知らずに取得に訪れた依頼ユーザが自分の印刷物を探さなければならなくなるといった無駄な労力を払わなくて済むようにできる。また、異常状態が所定時間内に解消された場合は通知を行わないことで(通知不要設定の場合)、たとえば、印刷物を誤って取り出したことにすぐに気が付いて適切に返却した場合などの無用な通知を除外することができる。
【0126】
また、依頼ユーザ本人が印刷物を取り出したときに、その印刷物に他のユーザによる取出履歴がある場合はその旨の報知を行う。これにより、その印刷物に何らかの以上が発生していたとしても、それが他のユーザの取り出しによって引き起こされたものであることを依頼ユーザに認識(納得)してもらうことができる。
【0127】
また、依頼ユーザ本人が自分の印刷物に上記の異常状態を発生させた場合はそのことを自覚している(意図的に行っている)可能性が高いので、その依頼ユーザの端末には通知を行わないようにする(図10参照)。このような必要性の低い通知を行わないことで、ユーザに不快感(鬱陶しさ)を与えなくて済むようになる。
【0128】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0129】
たとえば、上述した実施の形態ではユーザが端末から依頼した印刷ジョブ(プリントジョブ)を例に説明したが、ジョブの種類はこれに限らない。ユーザが操作表示部16を通して指示したコピージョブなどを対象にしてもよい。コピージョブでは、ユーザ認証によってユーザが識別され、そのユーザのユーザIDが印刷ジョブと同様に、タグIDなどと対応付けられて履歴データベース60に記憶される。
【0130】
また、排紙トレイ41に排出されたRFID記録紙の取り出しや返却は、検出センサ42とRFIDセンサ43で検知するようにしているが、RFIDセンサ43のみで検知することも可能である。たとえば、実施の形態で説明したRFIDセンサ43で取得されるタグIDの変化(増減)をCPU11が常時監視するなどによって可能となる。
【0131】
また、RFIDセンサ43は、RFID記録紙のタグIDを読み取る読取部としての機能と、ユーザのIDカードからユーザIDを取得する取得部としての機能とを兼ね備えた構成としていが、専用の取得部を別途設けることにより、読取部としてのみ機能させるようにしてもよい。
【0132】
また、本発明は実施の形態で説明した複合機に限らず、プリンタ機や複写機など他の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0133】
10…複合機(MFP)
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…入出力バッファ
15…ハードディスク装置
16…操作表示部
17…自動原稿搬送装置
17a…原稿給紙トレイ
17b…原稿排紙トレイ
18…スキャナ部
18a…プラテンガラス
19…ユーザ認証部
20…データベース管理部
21…報知部
22…タイマー部
23…ネットワークI/F部
24…バス
30…プリンタ部
31…給紙ユニット
32…搬送装置
33…感光体ドラム
34…帯電装置
35…レーザーユニット
36…現像装置
37…転写装置
38…分離装置
39…クリーニング装置
40…定着装置
41(41a、41b)…排紙トレイ
42(42a、42b)…検出センサ
43(43a、43b)…RFIDセンサ
50…ユーザデータベース
60…履歴データベース
M…原稿
P…記録紙(RFID記録紙)
R…読取範囲
S…読取位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成ジョブに係る画像を記録紙に形成して排紙部に排出する画像形成装置に係り、特に、排紙部に排出した記録紙の不適切な取り出しや返却を検知して報知する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリントやコピーによる印刷の指示を受けて記録紙に画像を形成する画像形成装置においては、排紙トレイに排出した記録紙(印刷物)の取り間違いを検知して報知する技術が知られている。たとえば、特許文献1には、画像形成装置がユーザの端末装置から指示された印刷を実行して排紙トレイに排出した記録紙を、他のユーザが誤って取り出した後に返却したことを検知すると、印刷を指示した端末装置にその旨を通知して記録紙の取り間違いが発生したことをその端末装置のユーザに報知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−109345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排紙トレイにおける記録紙の不適切な取り出しや返却は、実際には様々なケースがある。たとえば、複数枚の印刷を行う画像形成ジョブ(プリントジョブ/コピージョブ)や、複数の排紙トレイを備える画像形成装置では、以下の3つの事例が挙げられる。
【0005】
(1)画像形成ジョブで印刷された複数枚の記録紙のうちの一部のみが取り出される場合(記録紙がジョブ単位で取り出されない場合)。
(2)他人の画像形成ジョブの記録紙を誤って取り出した後にその一部のページ(枚数)のみが返却される場合(記録紙がジョブ単位で返却されない場合/記録紙が返却されてジョブ単位に戻らない場合)。
(3)記録紙が排出先の排紙トレイから一旦取り出されて異なる排紙トレイに返却される場合。
【0006】
このような場合は、その行為を行ったユーザに警告して記録紙のジョブ単位での取り出しや返却が行われるようにしたり、記録紙が元の排紙トレイに戻されるようにしたりすることが望ましい。
【0007】
また、特許文献1の技術は、ジョブ単位での記録紙の取り出しや返却を検知したり、排紙トレイ間での記録紙の移動を検知したりすることは考慮されていないため、(1)〜(3)の事例に対応することができない。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、不適切な取り出しや返却によって印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止することができる画像形成装置を提供することを目的としている。また、排出先の排紙部から一旦取り出された印刷物が異なる排紙部に返却されたままの状態になることを防止することができる画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が減少した場合に、前記減少したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一部のみ取り出されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0011】
上記発明では、画像形成ジョブに係る画像を形成して排紙部に排出した記録紙がその一部のみを取り出されて排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態となった場合に警告を行う。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙の一部を誤って取り出した場合などの警告では、その誤って取り出した記録紙を排紙部に返却するように促すことができる。このような不適切な取り出しが起きた場合に、印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0012】
[2]画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が増加した場合に、前記増加したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一旦取り出された後に返却されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0013】
上記発明では、画像形成ジョブに係る画像を形成して排紙部に排出した記録紙が一旦取り出された後に返却されて排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態となった場合に警告を行う。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙を誤って取り出した後にその一部を返却した場合などの警告では、残りの記録紙を排紙部に返却するように促すことができる。このような不適切な返却が起きた場合に、印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0014】
[3]画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙の排出先に選択される複数の排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該記録紙の排出先の排紙部を示す排紙部情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記複数の排紙部別に、その排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報と前記記憶部に記憶されているタグ識別情報とを比較し、前記排出先の排紙部に排出された記録紙が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【0015】
上記発明では、画像形成ジョブに係る画像を形成して排出先の排紙部に排出した記録紙が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された場合に警告を行う。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのジョブの記録紙を誤って取り出した後に異なる排紙部に返却した場合などの警告では、その記録紙を元の排紙部に返却するように促すことができる。これにより、印刷物が異なる排紙部に返却されたままの状態になることを防止できる。
【0016】
[4]前記画像形成ジョブを依頼するユーザの端末装置と通信する通信部を備え、
前記制御部は、ユーザから依頼された画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に発生した前記異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、該画像形成ジョブを依頼したユーザの端末装置に前記通信部を通じて前記異常状態の発生通知を行う
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0017】
上記発明では、排紙部で記録紙に発生した異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、その記録紙に対応する画像形成ジョブを依頼したユーザの端末装置に異常状態の発生通知を行う。この通知は、たとえば、[1]および[2]の発明においては、依頼ジョブの記録紙の一部が他のユーザによって持ち去られたなどの内容にしてもよい。[3]の発明においては、依頼ジョブの記録紙が他のユーザにより排出先の排紙部から取り出されて異なる排紙部に返却されたままの状態になっているなどの内容にしてもよい。
【0018】
このような通知を行うことで、ジョブの依頼ユーザにその記録紙(印刷物)に異常が発生したことを、記録紙の取得に訪れる前に知らせられるようになる。これにより、異常を知らずに取得に訪れた依頼ユーザが自分の記録紙を探さなければならなくなるといった無駄な労力を払わなくて済むようにできる。
【0019】
また、異常状態が所定時間内に解消された場合は通知を行わないことで、たとえば、記録紙を誤って取り出したことにすぐに気が付いて適切に返却した場合などの無用な通知を除外することができる。
【0020】
[5]ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部と、
ユーザに対して報知を行うための報知部と、
を備え、
前記制御部は、画像形成ジョブを依頼したユーザのユーザ識別情報と、前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に前記異常状態が発生したことを示す履歴情報とを対応付けて記憶し、
前記取得部によってユーザ識別情報が取得されたとき、該ユーザ識別情報に対応付けて前記履歴情報が記憶されている場合は、前記報知部により報知を行う
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0021】
上記発明では、当該画像形成装置を訪れたユーザからユーザ識別情報を取得してそのユーザを識別し、そのユーザから依頼された画像形成ジョブの記録紙に異常状態の発生を示す履歴がある場合は報知を行う。これにより、異常状態が発生された記録紙に係るジョブの依頼ユーザにその記録紙には異常が発生していること、または、異常が発生していたことを報知することができる。
【0022】
[6]ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記取得部によって取得されたユーザ識別情報に基づいてユーザを識別すると共に、該ユーザが自分の依頼した画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に対して前記異常状態を発生させた場合は前記発生通知を行わない
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【0023】
上記発明では、当該画像形成装置を訪れたユーザからユーザ識別情報を取得してそのユーザを識別し、そのユーザが自分の依頼した画像形成ジョブの記録紙に対して異常状態を発生させた場合は通知を行わないようにする。
【0024】
たとえば、自分の依頼ジョブによる大量の記録紙や、自分の複数の依頼ジョブによる記録紙を排紙部から取り出す場合などには、その記録紙を非ジョブ単位で複数回に分けて取り出すようなことがある。複数の排紙部から自分の記録紙を取り出す場合などには、下段の排紙部から取り出した記録紙を上段の排紙部の記録紙の上に載せて、その上段の排紙部からまとめて取り出すようなこともある。
【0025】
このように、依頼ユーザ本人が自分の記録紙に対して発生させた異常状態は、自覚している可能性があるので通知しないようにする。このような必要性の低い通知を行わないことでユーザに不快感を与えなくて済むようになる。
【発明の効果】
【0026】
[1]に記載の発明によれば、印刷物がその一部を排紙部から取り出された場合に警告を行うことで、その印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0027】
[2]に記載の発明によれば、印刷物が排紙部から一旦取り出されてその一部を返却された場合に警告を行うことで、その印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙部に残ることを防止できる。
【0028】
[3]に記載の発明によれば、排出先の排紙部に排出した印刷物が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された場合に警告を行うことで、その印刷物が異なる排紙部に返却されたままの状態になることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複合機の機構系の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る複合機が備える排紙トレイの概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る複合機の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る履歴データベースの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る複合機の画像形成動作を示す流れ図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る複合機の記録紙取り出し動作のメインルーチンを示す流れ図である。
【図7】図6のメインルーチンにおける警告処理1のサブルーチンを示す流れ図である。
【図8】図6のメインルーチンにおける警告処理2のサブルーチンを示す流れ図である。
【図9】図6のメインルーチンにおける返却処理のサブルーチンを示す流れ図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る履歴データベースに、印刷ジョブの依頼ユーザ本人に対して通知を行わない場合の情報が記憶された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置としての複合機(MFP;Multi Function Peripheral/Multi Function Printer)10の機構系の構成を示している。
【0032】
複合機10は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得し、その画像データを保存したり外部端末へ送信したりするスキャン機能、原稿を読み取り、かつその読み取りで得た画像データに基づいて原稿の複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、外部端末から受信した印刷データをラスタライズして得た画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能、電子メールサーバを経由して外部端末に電子メールを送信する電子メール機能などを備えている。
【0033】
複合機10がユーザから依頼(指示)されて実行する画像形成ジョブには、上記のコピー機能を用いて実行するコピージョブやプリンタ機能を用いて実行する印刷ジョブ(プリントジョブ)などが含まれる。ユーザは、コピージョブの場合は複合機10を操作して実行を依頼し、印刷ジョブの場合は端末を操作して複合機10に実行を依頼する。
【0034】
また複合機10は、印刷出力した記録紙の取り出しや返却を記録紙毎に識別してその履歴を管理したり、その取り出しや返却を行ったユーザを識別したりする機能を備えている。これらは、非接触(近距離無線通信)による個体識別技術(RFID(Radio Frequency IDentification)技術)を用いて、RFIDタグ付きの記録紙を識別したり、RFIDタグを組み込んだID(IDentification)カードを所持するユーザを識別したりすることで行うようになっている。
【0035】
RFIDタグ付きの記録紙は、RFIDタグにユニークなタグID(タグ識別情報)が記憶されており、そのタグIDによって識別される。IDカードは、身分証明用などとして各ユーザに配布(貸与)されるものであり、カード内のRFIDタグにはユニークなユーザID(ユーザ識別情報)が記憶されている。IDカードを所持するユーザは、そのユーザIDによって識別される。
【0036】
複合機10は、操作表示部16と、原稿給紙トレイ17aにセットされた原稿(原稿M)を1枚ずつ送り出して搬送し、読取位置Sを通過させて原稿排紙トレイ17bに排出する自動原稿搬送装置17と、この自動搬送される原稿を読取位置Sで光学的に読み取って画像データを取得したり、プラテンガラス18aの上に載置された原稿を光学的に読み取って画像データを取得したりするスキャナ部18と、入力された画像データに基づく画像(画像形成ジョブに係る画像)を記録紙(記録紙P)に形成して排出する画像形成部としてのプリンタ部30とを備えている。
【0037】
プリンタ部30は、複数(本例では3段)の給紙ユニット31(給紙装置)と、搬送装置32と、感光体ドラム33と、帯電装置34と、レーザーユニット35と、現像装置36と、転写装置37、分離装置38、クリーニング装置39と、定着装置40と、複数(本例では2段)の排紙トレイ41(41a、41b)などを備え、給紙ユニット31から記録紙Pを供給して搬送装置32により搬送し、感光体ドラム33〜定着装置40の動作による電子写真プロセスによって記録紙Pに画像を形成して排紙トレイ41に排出するレーザープリンタなどとして構成されている。ここでは、排紙トレイ41に排出された記録紙の取り出しや返却を記録紙毎に識別してその履歴を管理するために、RFIDタグ付きの記録紙を使用するようにしている。以下では、RFIDタグ付きの記録紙を「RFID記録紙」と略称する場合がある。
【0038】
排紙トレイ41(41a、41b)には、トレイ上からの取り出しやトレイ上への返却によって通過する記録紙(RFID記録紙)を検出するための複数の検出センサ42(42a、42b)が設けられている。プリンタ部30内から排紙トレイ41に記録紙を排出するための排出口(排紙トレイ41の近傍)には、RFIDタグと交信(無線通信)してRFIDタグに記憶されているID情報(タグID/ユーザID)を取得するRFIDセンサ43(43a、43b)が設けられている。
【0039】
図2は、検出センサ42およびRFIDセンサ43の位置を示す排紙トレイ41を上方から見た図(平面図)である。
【0040】
排紙トレイ41は、平面視矩形状で記録紙Pよりも大きくされている。検出センサ42は、光の強度変化を利用して物体(記録紙)を検出する透過型や反射型などの汎用の光電センサなどで構成されており、排紙トレイ41に排出された記録紙(RFID記録紙)Pに掛からない位置、ここでは排紙トレイ41の周縁部近傍に所定の間隔で配置されている。検出センサ42は、本例のように複数箇所に点状に配置するほかに、線状(ライン状)に配置するなどしてもよい。
【0041】
RFIDセンサ43は、排紙トレイ41に存在する記録紙Pに付いているRFIDタグのタグIDを読み取る読取部としての機能と、排紙トレイ41に接近したユーザが所持しているIDカード内のRFIDタグのユーザIDを読み取って取得する取得部としての機能とを果たす。
【0042】
RFIDタグは、情報記憶機能(データ記憶機能)と交信機能(無線通信機能)を備えた電子荷札であり、交信を行うためのアンテナと情報(データ)の記憶や送信制御などを行うIC(Integrated Circuit)チップを内蔵している。RFIDタグは、アンテナで電磁波を受信するとICチップに電力が供給されてICチップが動作し、記憶されている情報をアンテナから送信するようになっている。
【0043】
RFIDセンサ43は、RFIDタグと交信を行うためのアンテナと交信制御部を備え、交信制御部がアンテナから電磁波を放射してRFIDタグに電力を供給し、RFIDタグから送信される情報をアンテナで受信するようになっている。RFIDセンサ43の指向性やRFIDタグとの交信可能距離は、固定されていてもよく、変更可能とされていてもよい。RFIDセンサ43によるRFIDタグの読取範囲(検知範囲)は、この指向性や交信可能距離の条件によって決定される。
【0044】
本実施の形態では、RFIDタグの読取範囲Rが排紙トレイ41の平面サイズ(最大サイズ)を含む範囲となっており、RFIDセンサ43は排紙トレイ41上に存在する全てのRFID記録紙のタグIDを読み取れるようになっている。さらに、排紙トレイ41に接近したユーザが所持しているIDカードのユーザIDも読み取れるようになっている。
【0045】
また、排紙トレイ41(41a、41b)は、電磁波シールド材料で形成される、あるいは、電磁波シールドコーティングが施されるなどにより、電磁波をシールド(遮蔽)する機能を備えている。これにより、図1に示した上段の排紙トレイ41a(第1排紙トレイ)近傍に設けられたRFIDセンサ43aと、下段の排紙トレイ41b(第2排紙トレイ)近傍に設けられたRFIDセンサ43bとの間で電磁波干渉が起こることなく、RFID記録紙のタグIDをトレイ毎に読み取れるようになっている。
【0046】
図3は、複合機10の制御系の構成を示している。複合機10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力バッファ14と、ハードディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)15と、操作表示部16と、自動原稿搬送装置(Auto Document Feeder;ADF)17と、スキャナ部18と、プリンタ部30と、ユーザ認証部19と、データベース管理部20と、報知部21と、タイマー部22と、ネットワークI/F(Interface)部23と、検出センサ42(42a、42b)と、RFIDセンサ43(43a、43b)とがバス24を介して接続されて構成される。
【0047】
CPU11は、ROM12に格納されているプログラムに基づいて複合機10の動作を制御する。RAM13は、CPU11がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。
【0048】
入出力バッファ14は、複合機10内の各部でデータがやり取りされるときの処理速度や転送速度の差を補うために、入力されたデータや出力するデータを一時的に記憶するバッファ機能を果たす。ハードディスク装置15は、各種の保存データなどを格納するほか、原稿のコピー(複写印刷)や外部端末から指示された印刷における画像データなども保存する。
【0049】
操作表示部16は、操作画面、設定画面、警告画面、報知画面(メッセージ画面)などの各種の画面を表示する機能、およびユーザから各種の操作を受ける機能を果たす。ここでは、表示機能を担う液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display;LCD)と、該液晶ディスプレイの表面に形成され、押下された座標位置を検出するタッチパネルや、テンキー、スタートボタン、各種操作スイッチなどで構成される。
【0050】
ユーザ認証部19は、ユーザ認証を行うための認証用データ(認証情報)を取得する機能を果たす。ユーザ認証としては、たとえば、ユーザの所持するIDカードなどに記憶されている認証用データを接触式または非接触式のカードリーダなどで読み取って、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行うカード認証技術、ユーザの指紋や指静脈などの生体情報を認証用データとして生体認証ユニットなどで読み取って、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行う生体認証技術、ユーザが認証用データとしてのパスワードを操作表示部16から入力して、予め登録されている認証情報と照合し個人認証を行うパスワード認証技術などの汎用の各種の認証技術を単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0051】
データベース管理部20は、ユーザデータベース50および履歴データベース60を格納すると共にそれらのデータベースに対する情報(データ)の記憶、更新、消去といった管理を行う機能を果たす。ユーザデータベース50には、複合機10の使用を許可されたユーザの情報が記憶されている。たとえば、ユーザ毎に、ユーザIDと、認証情報と、設定情報と、ユーザの使用する端末(ユーザ端末)の電子メールアドレスなどが対応付けられて記憶されている。履歴データベース60には、排紙トレイ41に排出されたRFID記録紙の取り出しや返却の履歴を保存するための各種の情報が記憶される。
【0052】
報知部21は、ユーザに対して警告、報知、通知を行う機能を果たす。警告は、警報(警告音)の発生や警告灯の点灯などで行う。このために、報知部21は警報発生器(アラーム発生器)、発光器(ランプ)からなる警告灯などを備えた構成としてもよい。報知は、メッセージの音声出力や表示などで行う。音声出力を行うために、報知部21はスピーカなどの音声出力器を備えた構成としてもよい。表示による報知は、報知部21が操作表示部16にメッセージ画面を表示するなどして行う。通知は、メッセージを記載した電子メールをユーザの端末に送信することで行う。この通知は、報知部21がユーザ端末宛てのメッセージメールを作成しネットワークI/F部23を通じて送信することにより行う。
【0053】
メッセージメールは、通知の対象となる事象(排紙トレイにおける記録紙の不適切な取り出しや返却)が発生してその事象が解消されずに所定時間を経過すると自動的に送信される。この所定時間は、固定時間としてもよく(たとえば5分)、ユーザが任意の時間を設定できるように構成してもよい。また、所定時間内に通知の対象となる事象が解消された場合に、メッセージメールによる通知を受け取るか否かは、ユーザが設定できるようになっている。これらの設定情報は、データベース管理部20内のユーザデータベース50に記憶される。
【0054】
タイマー部22は、設定された時間をカウントする機能を果たす。ここでは、メッセージメールを自動送信する時間(所定時間)などをカウントするために使用される。
【0055】
ネットワークI/F部23は、LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワークと接続してネットワーク上の外部端末や電子メールサーバなどと通信する機能を果たす。たとえば、スキャナ部18で読み取って得た画像データを外部端末へ送信する場合や外部端末から印刷データ(印刷ジョブ)を受信する場合、電子メール(メッセージメール)を外部端末へ送信する場合などに使用される。
【0056】
図4は、履歴データベース60の構成を示している。
【0057】
履歴データベース60には、RFIDセンサ43(43a、43b)によって読み取られたRFID記録紙のタグIDと、画像形成ジョブ(印刷ジョブ/コピージョブ)の実行依頼を受けたときにCPU11が発行したジョブIDとが対応付けて記録される。さらに、画像形成ジョブを依頼したユーザ(図では「依頼ユーザ」と表記)のユーザIDと、排紙トレイ41(41a、41b)からRFID記録紙を取り出したユーザ(図では「取出ユーザ」と表記)のユーザIDと、RFID記録紙の排出先となる排紙トレイ41を示す排出先情報と、RFIDセンサ43によってタグIDが読み取られることにより検知されたRFID記録紙が存在する排紙トレイ41を示す検知情報と、排紙トレイ41からのRFID記録紙の取り出し履歴を示す取出履歴情報と、CPU11が報知部21による警告などを行うか否かを判定した結果を示す総合判定情報とが対応付けて記録される。
【0058】
依頼ユーザのユーザIDは、印刷ジョブ(プリントジョブ)の場合には、ユーザ端末から受信した印刷ジョブに付加されているユーザIDとなる。コピージョブの場合には、その実行依頼を受け付ける直前のユーザ認証によって認証していたユーザのユーザIDとなる。RFID記録紙を取り出したユーザのユーザIDは、RFID記録紙の取り出しを検知したときに、排紙トレイ41の近くにいるユーザのIDカードからRFIDセンサ43が取得しているユーザIDとなる。これらのユーザIDは、図では便宜的に「ユーザA」などのユーザ名で示している。
【0059】
排出先情報は、「トレイ1」が第1排紙トレイ(上段の排紙トレイ41a)を示し、「トレイ2」が第2排紙トレイ(下段の排紙トレイ41b)を示す。検知情報は、「トレイ1」が第1排紙トレイに対応するRFIDセンサ43aによってRFID記録紙が検知されたこと、すなわち、RFID記録紙が第1排紙トレイ上に存在していることを示し、「トレイ2」が第2排紙トレイに対応するRFIDセンサ43bによってRFID記録紙が検知されたこと、すなわち、RFID記録紙が第2排紙トレイ上に存在していることを示す。「無」がRFIDセンサ43a、43bによってRFID記録紙が検知されないこと、すなわち、RFID記録紙が第1および第2のいずれの排紙トレイ上にも存在していないことを示す。この検知情報は、印刷の行われたRFID記録紙が排紙トレイ41に排出されたときと、排紙トレイ41から取り出されたときと、排紙トレイ41に返却されたときとに更新される。
【0060】
取出履歴情報は、「有」がRFID記録紙の取り出しが行われたこと(取り出し履歴有り)を示し、「−」がRFID記録紙の取り出しが行われていないこと(取り出し履歴無し)を示す。総合判定情報は、「OK」が合格判定であることを示し、「NG」が不合格判定であることを示し、「−」が未判定であることを示す。この総合判定情報が「NG」の場合に、警告などが行われる。
【0061】
履歴データベース60は、上記の印刷が行われたRFID記録紙毎の情報をジョブIDに対応付けて記憶することにより、排紙トレイ41に排出されたRFID記録紙の取り出しや返却に関する履歴などをジョブ単位で管理するようになっている。
【0062】
詳細には、RFID記録紙のジョブ単位での取り出しや返却の履歴、および、RFID記録紙の排出先(取出元)や返却先の履歴と、警告などを行うか否かの判定結果とを管理するようになっている。また、ジョブ単位の取り出しや返却は、1回の行為だけで完了しない場合もある。たとえば、大量の記録紙を2回以上に分けて取り出すような場合や、複数のユーザによって分散されて持ち出された記録紙が返却された場合などである。そのような複数回の行為によって完了するジョブ単位の取り出しや返却の履歴も管理できるようになっている。
【0063】
また、履歴データベース60に記憶された各情報は、画像形成ジョブを実行してから所定時間(たとえば、5分〜30分など)が経過するとそのジョブ単位で自動的に消去される。この所定時間は、ユーザが設定できるように構成してもよい。
【0064】
次に、複合機10の動作について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る複合機10は、画像形成ジョブに係る画像を形成して排紙トレイ41に排出した記録紙(RFID記録紙)の不適切な取り出しや返却を検知して警告などを行う。このような不適切な取り出しや返却は、一般には、排紙トレイに複数ジョブの記録紙が排出されて積載されているような場合や、複数の排紙トレイに記録紙が排出されているような場合に起こりやすくなる。
【0066】
前者の場合には、たとえば、ユーザが排紙トレイ上の紙束の中から自分のジョブにおける複数枚の記録紙を探して取り出す際に、気が付かずに一部を取り忘れたり、誤って他人の記録紙まで取り出したりするようなことが起こり得る。また、他人の記録紙を複数枚取り出してしまったことに気が付いてその記録紙を返却する際に、誤って一部しか返却しないようなことも起こり得る。
【0067】
また、紙束量が多いときや自分が複数のジョブを依頼したときには、排紙トレイ上では探しにくいため、一旦、紙束(全ての記録紙)を取り出し、その紙束の中から探し出した自分の記録紙のみを抜き取って残りの記録紙を元の排紙トレイに返却するようなこともある。その際に、自分の複数枚の記録紙の一部を取り忘れて返却してしまったり、誤って他人の記録紙まで抜き取って返却してしまったりすることが起こり得る。また、自分が依頼した複数ジョブの記録紙の間に他人のジョブの記録紙が紛れ込んでいることに気が付かずに、その他人の記録紙を誤って持ち去ってしまうようなことが起こり得る。
【0068】
後者の場合(複数の排紙トレイに記録紙が排出されているような場合)には、誤って取り出した他人の記録紙や、意図して取り出した全ての記録紙のうちの自分のもの以外を排紙トレイに返却する際に、取出元とは異なる排紙トレイに返却してしまうようなことが起こり得る。たとえば、下段の排紙トレイから取り出した記録紙を誤って上段の排紙トレイに返却してしまうような場合などである。
【0069】
複合機10は、これらの不適切な取り出しや返却による異常状態を検知すると、警報を出してその異常状態を起こした(不適切な行為を行った)ユーザにそのことを気付かせ、適切な行為を促すように動作する。異常状態の詳細は、(1)画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一部のみ取り出されて(非ジョブ単位で取り出されて)排紙トレイ41にジョブ単位に揃わない状態、(2)画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一旦取り出された後に返却されて(非ジョブ単位で返却されて)排紙トレイ41にジョブ単位に揃わない状態、(3)画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が排出先の排紙トレイ41(排紙トレイ41a、41bのうちの一方)から一旦取り出されて異なる排紙トレイ41(排紙トレイ41a、41bのうちの他方)に返却された状態である。
【0070】
また、排紙トレイ41から一旦取り出されて返却された記録紙は、排紙トレイ41に排出されたときの状態(取り出し前の初期状態)とは異なっている可能性がある。たとえば、記録紙のページ順、表裏、上下の向きなどが正しくない可能性がある。また、一部が他の画像形成ジョブの記録紙の間に紛れ込んでしまっている場合などもある。そこで、複合機10は、他のユーザなどが排紙トレイ41から一旦取り出した後に適切に返却した場合でも、その記録紙に対応する画像形成ジョブを依頼したユーザに注意が必要である旨を電子メール(メッセージメール)で通知したり(要注意通知)、そのユーザによる当該記録紙の取得時に表示や音声で報知したりするようにしている(要注意報知)。
【0071】
先ず、図4の履歴データベース60を用いて動作の概要を説明する。ここでは、ユーザ端末から依頼された印刷ジョブを例としている。また、本図では見易さを考慮して偶数番号のジョブをグレー背景で示している。
【0072】
ユーザAの印刷ジョブ1は、タグ1〜3の3枚の記録紙(RFID記録紙)が第1排紙トレイに排出されて(排出先「トレイ1」)、取り出されていない状態である(取出ユーザ「−」/検知「トレイ1」/取出履歴「−」/総合判定「−」)。
【0073】
次のユーザBの印刷ジョブ2は、タグ4、5の2枚の記録紙が第1排紙トレイに排出され、ユーザB自身によってジョブ単位で取り出されている(取出ユーザ「ユーザB」/検知「無」/取出履歴「有」)。この場合は、印刷ジョブ2の記録紙にジョブ単位で合格判定を行う(総合判定「OK」)。ユーザCの印刷ジョブ3によって第2排紙トレイに排出されたタグ6〜タグ8の3枚の記録紙も、同様に、ユーザC自身によってジョブ単位で取り出されたので合格判定を行う(取出ユーザ「ユーザC」/検知「無」/取出履歴「有」/総合判定「OK」)。
【0074】
次のユーザAの印刷ジョブ4では、たとえば、ユーザBが印刷ジョブ2による自分の記録紙を第1排紙トレイから取り出す際に誤って印刷ジョブ4の3枚の記録紙のうちの1枚(タグ9)を取り出してしまったような場合である。この場合は、ジョブ単位で取り出されていないため、印刷ジョブ4の記録紙に対してジョブ単位で不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。
【0075】
次のユーザDの印刷ジョブ5も同様に、たとえば、ユーザCが印刷ジョブ3による自分の記録紙を第2排紙トレイから取り出す際に誤って印刷ジョブ5の2枚の記録紙のうちの1枚(タグ12)を取り出してしまったような場合である。この場合も、ジョブ単位で取り出されていないため不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。
【0076】
次のユーザEの印刷ジョブ6では、第1排紙トレイに排出された5枚の記録紙のうちの4枚(タグ14〜17)をユーザFが誤って取り出した場合であり、この状態の発生時点で印刷ジョブ5の記録紙に対しジョブ単位で不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。さらに、取り出された4枚のうちの1枚(タグ14)だけが元の第1排紙トレイに返却されて、印刷ジョブ6の記録紙がジョブ単位(5枚)に復帰していないため、ここでも警報を発生する(または警報が継続される)。このケースは、返却されていない残りの3枚(タグ15〜17)がユーザFによって持ち去られた可能性のあるケースである。
【0077】
次の印刷ジョブ7、8では、印刷ジョブ7で第2排紙トレイに排出された自分の記録紙2枚(タグ19、20)をユーザDが取り出したときに、ユーザCによる印刷ジョブ8の記録紙1枚(タグ21)も一緒に取り出してしまったが、第1排紙トレイに返却した場合である。この場合は、印刷ジョブ8の記録紙の取り出しはジョブ単位であるが、返却先が元の排紙トレイではないため不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。
【0078】
次の印刷ジョブ9では、第2排紙トレイに排出されたユーザGの記録紙3枚(タグ22〜24)をユーザHが誤って取り出してしまい、そのうちの1枚(タグ22)を第1排紙トレイに返却した場合である。この場合は、印刷ジョブ9の記録紙の取り出しはジョブ単位であるが、返却先が元の排紙トレイではなく、かつ、ジョブ単位で返却されていないため不合格判定を行い(総合判定「NG」)、警報の発生などを行う。以上が動作の概要である。
【0079】
図5は、複合機10による印刷動作の流れを示している。ここでも、ユーザ端末から依頼された印刷ジョブを実行する場合の動作を例に説明する。
【0080】
ユーザが端末を操作して複合機10に印刷を依頼(指示)すると、そのユーザ端末は画像データ(印刷データ)およびユーザIDなどを含む印刷ジョブを生成して複合機10に送信する。
【0081】
複合機10においては(Start)、ユーザ端末から印刷ジョブを受信すると(ステップS101)、CPU11はその印刷ジョブに含まれている画像データに基づく印刷を実行する(ステップS102)。詳細には、プリンタ部30を制御して画像データに基づく画像をRFID記録紙に形成し、そのRFID記録紙を排紙トレイ41に排出する。印刷枚数が1枚の印刷ジョブであれば、画像を形成したRFID記録紙を排紙トレイ41に1枚排出する。印刷枚数が複数枚の印刷ジョブであれば、画像を形成したRFID記録紙を排紙トレイ41に複数枚排出する。
【0082】
CPU11は、このRFID記録紙の排出タイミングに合わせ、RFIDセンサ43でタグIDを読み取り取得する(ステップS103)。詳細には、排紙トレイ41aへの排出ではRFIDセンサ43aを作動させてタグIDを読み取り、排紙トレイ41bへの排出ではRFIDセンサ43bを作動させてタグIDを読み取る。なお、この排出するRFID記録紙のタグIDは、たとえば、定着装置40の近傍などに配置した別のRFIDセンサで読み取るようにしてもよい。
【0083】
CPU11は、履歴データベース60に(図4参照)、取得したタグIDと、CPU11が当該ジョブに対して発行したジョブIDと、当該ジョブに付加されているユーザIDと、RFID記録紙の排出先を示す排出先情報(「トレイ1」または「トレイ2」)と、RFID記録紙が検知された排紙トレイを示す検知情報(「トレイ1」または「トレイ2」)とを対応付けて保存し(ステップS104)、本動作を終了する(End)。この動作が終了すると(印刷ジョブの実行完了時点)、履歴データベース60には図4のジョブ1に例示するように、取出ユーザ情報、取出履歴情報、総合判定情報以外の情報が記憶される。また、排出先情報と検知情報とは一致している。
【0084】
図6は、複合機10における記録紙の取得動作の流れを示している。ここでは、1つの印刷ジョブにおけるRFID記録紙がその印刷ジョブの依頼ユーザに取得されるまでの流れで説明する。また、このジョブ依頼ユーザによる取得までの間に、前述した、(1)記録紙の非ジョブ単位での取り出し、(2)記録紙の非ジョブ単位での返却、(3)取り出し元とは異なる排紙トレイへの記録紙の返却、が他のユーザなどによって起こされた場合には、警報を発生したり、ジョブ依頼ユーザに要注意通知/報知を行ったりする流れとなっている。
【0085】
複合機10では(Start)、CPU11は、RFIDセンサ43によってユーザの所持しているIDカードのRFIDタグからユーザIDが取得されるか否かを監視する(ステップS111;No〜ステップS111のループ)。この監視は、排紙トレイ41にユーザが接近したか否かの監視である。
【0086】
RFIDセンサ43によって上記取得が行われた場合は(ステップS111;Yes(ユーザの接近検知))、検出センサ42による排紙トレイ41での記録紙の通過検出(取り出しまたは返却の検出)を監視する(ステップS112;No〜ステップS111;Yes〜ステップS112のループ)。記録紙の通過を検出せずに、ユーザIDを取得できなくなった場合は、すなわち、排紙トレイ41にユーザは接近したがそのユーザが記録紙の取り出しや返却を行わずに離れた場合は、ステップS111へ戻り、再び排紙トレイ41へのユーザの接近を監視する。
【0087】
記録紙の通過を検出した場合は(ステップS112;Yes)、CPU11は、その検出した排紙トレイ41(排紙トレイ41a、41b)に対応するRFIDセンサ43(RFIDセンサ43a、43b)が読み取っているタグIDの変化から(ステップS113)、RFID記録紙が取り出されたか返却されたかを判断する(ステップS114)。
【0088】
CPU11は、取得したタグIDと履歴データベース60のタグIDを比較し、履歴データベース60に対して減少したタグIDがある場合は、そのタグIDのRFID記録紙が取り出されたと判断し(ステップS114;取り出し)、ステップS115へ移行する。この減少となるタグIDは、それ以前に排紙トレイ41に存在していたもの、すなわち、検知情報が「トレイ1」または「トレイ2」のタグIDのみである。また、履歴データベース60における検知情報「無」のタグIDの中に増加したタグIDがある場合は、そのタグIDのRFID記録紙が返却されたと判断し(ステップS114;返却)、ステップS122へ移行する。
【0089】
ステップS115では、CPU11は、履歴データベース60を参照し、減少したタグIDと同じジョブの全てのタグIDを取得していない場合は、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位で取り出されたと判断し(ステップS115;Yes)、履歴データベース60を更新して(ステップS119)、ステップS120へ移行する。履歴データベース60の更新では(図4参照)、CPU11は、減少したタグIDの検知情報を「無」に更新し、取出履歴情報を「有」に更新し、取出ユーザ情報をRFIDセンサ43による取得中のユーザIDに更新する。
【0090】
減少したタグIDと同じジョブのタグIDを1つでも取得している場合は、そのタグIDのRFID記録紙が排紙トレイ41に残っていることになる。CPU11は、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位で取り出されていないと判断し(ステップS115;No)、履歴データベース60を更新する(ステップS116)。ここでは、減少したタグIDの検知情報を「無」に更新し、取出履歴検知情報を「有」に更新し、取出ユーザ情報をRFIDセンサ43による取得中のユーザIDに更新する。さらに、ジョブ単位で取り出されていないと判断したジョブの全てのタグIDの総合判定情報を「NG」に更新し、サブルーチンで警告処理1を行う(ステップS117)。
【0091】
図7は、警告処理1の流れを示している。警告処理1では、CPU11は、報知部21を通じて警報を発生すると共に(ステップS131)、タイマー部22による時間のカウントを開始し、警報発生からの時間が所定時間を経過する前に、排紙トレイ41で記録紙の通過が検出されるか否かを監視する(ステップS132;No〜ステップS133;No〜ステップS132のループ)。
【0092】
たとえば、警報を聞いて自分の記録紙を取り忘れていることに気が付いたユーザであれば、残りの記録紙を更に取り出す可能性が高い。警報を聞いて他人の記録紙を取り出してしまったことに気が付いたユーザであれば、その記録紙を返却する可能性が高い。
【0093】
CPU11は、排紙トレイ41における記録紙の通過を検出した場合は(ステップS132;Yes)、図6のステップS113およびS114と同様のステップS134およびS135を行ってRFID記録紙の取り出し/返却を判断する。
【0094】
取得タグIDの減少によりRFID記録紙が取り出されたと判断した場合は(ステップS135;取り出し)、CPU11は、図6のステップS115と同様のステップS136を行い、ジョブ単位でのRFID記録紙の取り出し(当該ジョブの残りのRFID記録紙の取り出し)が完了したか否かを判断する。ジョブ単位の取り出し完了と判断した場合は(ステップS136;Yes)、CPU11は報知部21による警報を停止し(ステップS140)、図6のステップS119と同様の履歴データベース60の更新を行う(ステップS141)。
【0095】
ジョブ単位の取り出しが完了しなかったと判断した場合は(ステップS136;No)、CPU11は、図6のステップS116と同様の履歴データベース60の更新を行い(ステップS139)、ステップS132へ戻る。
【0096】
一方、取得タグIDの増加によりRFID記録紙が返却されたと判断した場合は(ステップS135;返却)、CPU11は、履歴データベース60を参照し、そのRFID記録紙の返却先(増加したタグIDを検知した排紙トレイ)が排出先と一致していれば元の排紙トレイ41に返却されたと判断し(ステップS137;Yes)、一致していなければ元の排紙トレイ41に返却されていないと判断する(ステップS137;No)。
【0097】
返却NGと判断した場合は、履歴データベース60を更新し(ステップS139)、ステップS132へ戻る。ここでは、増加したタグIDの検知情報をRFID記録紙の返却先となった「トレイ1」または「トレイ2」に更新する。返却OKと判断した場合は、CPU11は、その返却されたRFID記録紙と排紙トレイ41に残っていた同じジョブのRFID記録紙とによってジョブ単位に復帰したか否かを判断する(ステップS138)。
【0098】
CPU11は、履歴データベース60を参照し、増加したタグIDと同じジョブの全てのタグIDのうちの1つでも取得していない場合は、その未取得のRFID記録紙が返却されておらず、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位に復帰していないと判断する(ステップS138;No)。この場合も、返却NGと同様の履歴データベース60の更新を行い(ステップS139)、ステップS132へ戻る。
【0099】
増加したタグIDと同じジョブの全てのタグIDを取得している場合は、CPU11は、そのジョブのRFID記録紙がジョブ単位に復帰したと判断し(ステップS138;Yes)、警報を停止して(ステップS140)、上記の返却NGおよび返却OKと同様の履歴データベース60の更新を行う(ステップS141)。
【0100】
続いて、CPU11は、ジョブ単位での取り出しが完了したジョブ、または、ジョブ単位に復帰したジョブを依頼したユーザの通知設定をユーザデータベース50によって確認する(ステップS142)。通知に設定されていない場合は(ステップS142;No)、メインルーチンに戻る。通知に設定されている場合は、RFID記録紙の返却によってジョブ単位に復帰した場合のみ、CPU11は、ユーザデータベース50からそのユーザの電子メールアドレスを取得して報知部21に入力すると共にメッセージメールの作成および送信を指示し(ステップS143/要注意通知)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0101】
報知部21は、所定のメッセージ、たとえば、依頼された印刷ジョブの記録紙が複合機10の排紙トレイ41から一旦取り出された後に返却されてジョブ単位に復帰したが、ページ順が正しくない可能性があるなどのメッセージを本文欄に記載し、入力された電子メールアドレスを宛先欄に挿入したメッセージメールを作成して送信する。なお、このメッセージメールに当該印刷ジョブに含まれているファイルの名称(ファイル名)などを付加するようにしてもよい。
【0102】
一方、排紙トレイ41で記録紙の通過が検出されることなく所定時間を経過した場合、もしくは、記録紙の通過は検出したがジョブ単位での取り出し完了または返却によるジョブ単位への復帰とならずに所定時間を経過した場合は(ステップS133;Yes)、警報を停止する(ステップS144)。そして、CPU11は、ユーザデータベース50からそのジョブの依頼ユーザの電子メールアドレスを取得して報知部21に入力すると共にメッセージメールの作成および送信を指示し(ステップS145/記録紙持ち去り通知)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0103】
報知部21は、所定のメッセージ、たとえば、依頼された印刷ジョブの記録紙の一部が複合機10の排紙トレイ41から持ち去られた可能性があるなどのメッセージを本文欄に記載し、入力された電子メールアドレスを宛先欄に挿入したメッセージメールを作成して送信する。なお、このメッセージメールにもファイル名などを付加してよい。
【0104】
図7の警告処理1から図6のメインルーチンに戻ると、CPU11は、警告処理1においてジョブ単位での取り出しが完了していなかった場合は(ステップS118;No)、ステップS111へ戻る。この場合は、警報発生から所定時間が経過しており、この時点でユーザIDを取得している場合はそのユーザを対象に、再度、ステップS112以降の動作を行う。ユーザIDを取得していない場合は、既にユーザが複合機10から離れており、ユーザの接近を再び監視することになる。
【0105】
ジョブ単位での取り出しが完了していた場合は(ステップS118;Yes)、CPU11は、履歴データベース60を参照し、その取り出しを行った取出ユーザと、ジョブ単位で取り出された記録紙(RFID記録紙)に対応するジョブの依頼ユーザが一致するか否かを判断する(ステップS120)。
【0106】
一致する場合は(ステップS120;Yes)、ジョブ単位での記録紙の取り出しを依頼ユーザ本人が行ったことになる。この場合は、ステップS124へ移行する。一致しない場合は(ステップS120;No)、ジョブ単位での記録紙の取り出しを他のユーザが行ったことになる。この場合は、ステップS119からの移行では総合判定情報を「NG」に更新し(ステップS118から移行ではステップS116で既に総合判定情報が「NG」にされている)、サブルーチンで警告処理2を行う(ステップS121)。
【0107】
図8は、警告処理2の流れを示している。警告処理2は、RFID記録紙のジョブ単位での返却のみを監視する点が警告処理1と異なり、他は基本的に同じ動作である。
【0108】
その相違点について説明すると、CPU11は、図7のステップS131〜S134と同様のステップS151〜S154を行い、他のユーザによって取り出されたRFID記録紙が元の排紙トレイ41に、ジョブ単位で一括返却される、または、複数回に分けて返却されジョブ単位に復帰することを(ステップS155)、警報発生から所定時間が経過するまでの間、監視するように動作する。このステップS155以降のステップS156〜S162は、警告処理1の対応するステップS139〜S145と同様の動作である。
【0109】
なお、ステップS162によるジョブ依頼ユーザへの通知(メッセージ)は、ジョブ単位で取り出された記録紙が1枚も返却されない場合には、その印刷ジョブの全記録紙が持ち去られた旨の通知とし、一部の記録紙が返却された場合には、その印刷ジョブの一部の記録紙が持ち去られた旨の通知などにしてもよい。
【0110】
図8の警告処理2から図6のメインルーチンに戻ると、ステップS111へ戻る。この時点でユーザIDを取得している場合はそのユーザを対象に、再度、ステップS112以降の動作を行う。ユーザIDを取得していない場合は、既にユーザが複合機10から離れており、ユーザの接近を再び監視することになる。
【0111】
ステップS117の警告処理1やステップS121の警告処理2を経由してジョブ単位の一部の記録紙が取り出されたままの状態になった場合には、その記録紙が後に返却される可能性がある。たとえば、他人の記録紙を誤って持ち去ってしまったことを自分の席に戻ってから気が付いたユーザなどが、その記録紙を持って複合機10を訪れ排紙トレイ41に返却するようなケースなどである。
【0112】
このような場合は、ステップS114で返却となり(取得タグIDの増加)、CPU11は、履歴データベース60を更新し(ステップS122)、サブルーチンで返却処理を行う(ステップS123)。履歴データベース60の更新では、CPU11は、増加したタグIDの検知情報をRFID記録紙の返却先となった「トレイ1」または「トレイ2」に更新する。
【0113】
図9は、返却処理の流れを示している。返却処理では、CPU11は、図7の警告処理1におけるステップS137と同様のステップS171を行って返却先が適切か否かを判断する。適切であると判断した場合は(ステップS171;Yes)、図8の警告処理2におけるステップS155と同様のステップS172を行って、ジョブ単位での一括返却または複数回に分けての返却によるジョブ単位への復帰を判断する。
【0114】
ジョブ単位に揃った場合は(ステップS172;Yes)、CPU11は、ユーザデータベース50からそのジョブ単位に揃った印刷ジョブの依頼ユーザの電子メールアドレスを取得して報知部21に入力すると共にメッセージメールの作成および送信を指示し(ステップS173/記録紙返却完了通知)、メインルーチンに戻る(Return)。
【0115】
報知部21は、たとえば、前に通知した、持ち去られた可能性のあった記録紙が返却されてジョブ単位に揃った旨のメッセージを本文欄に記載し、入力された電子メールアドレスを宛先欄に挿入したメッセージメールを作成して送信する。
【0116】
ステップS171で返却先が適切でないと判断した場合と(ステップS171;No)、ステップS172でジョブ単位に揃わなかった場合は(ステップS172;No)、CPU11は、報知部21による警報の発生を一定時間(数秒)だけ行う(ステップS174)。この警報により、返却先の適切でないRFID記録紙が取り出されたり、ジョブ単位で返却されなかったそのRFID記録紙が再び取り出されたりする可能性がある。
【0117】
ここで、CPU11は、今回返却された上記のRFID記録紙の取り出し、すなわち、タグIDの減少を検知した場合は(ステップS175;Yes)、履歴データベース60におけるそのタグIDの検知情報を「無」に更新してリセットし(ステップS176)、メインルーチンに戻る(Return)。RFID記録紙の取り出しを検知しなかった場合は(ステップS175;No)、そのままメインルーチンに戻る(Return)。
【0118】
図9の返却処理から図6のメインルーチンに戻ると、ステップS111へ戻る。ここで再び、不適切な返却先によって一旦取り出されたRFID記録紙が返却されたり、ジョブ単位に復帰しなかった際のその残りのRFID記録紙が返却されたりした場合などには、ステップS114で返却側へ移行し、ステップS122およびS123を繰り返すことになる。
【0119】
ステップS124へは、印刷ジョブの依頼ユーザ本人がその記録紙をジョブ単位で取り出した状態で移行してきている。CPU11は、依頼ユーザ本人によって取り出されたRFID記録紙(タグID/ジョブID)の取出履歴を履歴データベース60で確認する。取出履歴がない場合には(ステップS124;No)、CPU11は、図4のジョブ2、3に例示するように、履歴データベース60におけるそのジョブの取出ユーザを依頼ユーザのユーザIDに、検知情報を「無」に、取出履歴を「有」に、総合判定情報を「OK」にそれぞれ更新し(ステップS126)、本動作を終了する(End)。また、ステップS117の警告処理1を経由して依頼ユーザ本人による取出履歴がある場合も(ステップS124;No)、同様の情報更新を行って(ステップS126)、本動作を終了する(End)。
【0120】
他のユーザによる取出履歴がある場合には(ステップS124;Yes)、CPU11は、その依頼ユーザ本人がジョブ単位で取り出したRFID記録紙は注意が必要である旨(たとえば、ページ順が正しくない可能性があるなど)の報知を、報知部21(操作表示部16)を通じて行い(ステップS125)、同様の情報更新を行って(ステップS126)、本動作を終了する(End)。
【0121】
また、図7の警告処理1におけるステップS143のジョブ依頼ユーザへの通知は、そのジョブ依頼ユーザ本人が前述の異常状態を発生させて所定時間内に解消させた場合には行わないようにしてもよい。
【0122】
図10の履歴データベース60では、その通知を行わないジョブ10〜15を、図4の通知を行うジョブ4〜6、8、9と対比させて示している。この図10に示すように、前述した、(1)記録紙の非ジョブ単位での取り出し、(2)記録紙の非ジョブ単位での返却、(3)取り出し元とは異なる排紙トレイへの記録紙の返却、がジョブの依頼ユーザ本人によって行われた場合には、総合判定情報は「SAFE」となり、これらの異常状態が所定時間内に解消した場合は、CPU11は、警告処理1におけるステップS143ではその依頼ユーザの端末にメッセージメールを送信しないように動作する。
【0123】
このように、本実施の形態に係る複合機10では、排紙トレイ41から印刷物がジョブ単位で取り出されない、または、ジョブ単位で返却されないなどの場合に警告を行うことで、印刷物がジョブ単位に揃わない半端な状態で排紙トレイ41に残ることを防止できる。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのような不適切な取り出しや返却を行った場合には、警告により印刷物をジョブ単位に戻すように促すことができる。これにより、ジョブの依頼ユーザがその印刷物をジョブ単位で取得できなくなることを防止できる。
【0124】
また、排出先の排紙トレイ41から印刷物が一旦取り出されて異なる排紙トレイ41に返却された場合に警告を行うことで、印刷物が排出先とは異なる排紙トレイ41に返却されたままの状態になることを防止できる。たとえば、ジョブの依頼ユーザとは異なるユーザがそのような行為を行った場合には、警告により印刷物を元の排紙トレイ41に戻すように促すことができる。これにより、ジョブの依頼ユーザがその印刷物を排出先以外の排紙トレイ41まで探したり、その印刷物が紛失または廃棄などされて取得できなくなったりすることを防止できる。
【0125】
また、複合機10は、排紙トレイ41で印刷物に発生した上記の異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、その印刷物に対応するジョブを依頼したユーザの端末に異常状態の発生を通知する。これにより、ジョブの依頼ユーザにその印刷物に異常が発生したことを、印刷物の取得に訪れる前に知らせられるようになり、異常を知らずに取得に訪れた依頼ユーザが自分の印刷物を探さなければならなくなるといった無駄な労力を払わなくて済むようにできる。また、異常状態が所定時間内に解消された場合は通知を行わないことで(通知不要設定の場合)、たとえば、印刷物を誤って取り出したことにすぐに気が付いて適切に返却した場合などの無用な通知を除外することができる。
【0126】
また、依頼ユーザ本人が印刷物を取り出したときに、その印刷物に他のユーザによる取出履歴がある場合はその旨の報知を行う。これにより、その印刷物に何らかの以上が発生していたとしても、それが他のユーザの取り出しによって引き起こされたものであることを依頼ユーザに認識(納得)してもらうことができる。
【0127】
また、依頼ユーザ本人が自分の印刷物に上記の異常状態を発生させた場合はそのことを自覚している(意図的に行っている)可能性が高いので、その依頼ユーザの端末には通知を行わないようにする(図10参照)。このような必要性の低い通知を行わないことで、ユーザに不快感(鬱陶しさ)を与えなくて済むようになる。
【0128】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0129】
たとえば、上述した実施の形態ではユーザが端末から依頼した印刷ジョブ(プリントジョブ)を例に説明したが、ジョブの種類はこれに限らない。ユーザが操作表示部16を通して指示したコピージョブなどを対象にしてもよい。コピージョブでは、ユーザ認証によってユーザが識別され、そのユーザのユーザIDが印刷ジョブと同様に、タグIDなどと対応付けられて履歴データベース60に記憶される。
【0130】
また、排紙トレイ41に排出されたRFID記録紙の取り出しや返却は、検出センサ42とRFIDセンサ43で検知するようにしているが、RFIDセンサ43のみで検知することも可能である。たとえば、実施の形態で説明したRFIDセンサ43で取得されるタグIDの変化(増減)をCPU11が常時監視するなどによって可能となる。
【0131】
また、RFIDセンサ43は、RFID記録紙のタグIDを読み取る読取部としての機能と、ユーザのIDカードからユーザIDを取得する取得部としての機能とを兼ね備えた構成としていが、専用の取得部を別途設けることにより、読取部としてのみ機能させるようにしてもよい。
【0132】
また、本発明は実施の形態で説明した複合機に限らず、プリンタ機や複写機など他の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0133】
10…複合機(MFP)
11…CPU
12…ROM
13…RAM
14…入出力バッファ
15…ハードディスク装置
16…操作表示部
17…自動原稿搬送装置
17a…原稿給紙トレイ
17b…原稿排紙トレイ
18…スキャナ部
18a…プラテンガラス
19…ユーザ認証部
20…データベース管理部
21…報知部
22…タイマー部
23…ネットワークI/F部
24…バス
30…プリンタ部
31…給紙ユニット
32…搬送装置
33…感光体ドラム
34…帯電装置
35…レーザーユニット
36…現像装置
37…転写装置
38…分離装置
39…クリーニング装置
40…定着装置
41(41a、41b)…排紙トレイ
42(42a、42b)…検出センサ
43(43a、43b)…RFIDセンサ
50…ユーザデータベース
60…履歴データベース
M…原稿
P…記録紙(RFID記録紙)
R…読取範囲
S…読取位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が減少した場合に、前記減少したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一部のみ取り出されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が増加した場合に、前記増加したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一旦取り出された後に返却されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙の排出先に選択される複数の排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該記録紙の排出先の排紙部を示す排紙部情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記複数の排紙部別に、その排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報と前記記憶部に記憶されているタグ識別情報とを比較し、前記排出先の排紙部に排出された記録紙が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成ジョブを依頼するユーザの端末装置と通信する通信部を備え、
前記制御部は、ユーザから依頼された画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に発生した前記異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、該画像形成ジョブを依頼したユーザの端末装置に前記通信部を通じて前記異常状態の発生通知を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部と、
ユーザに対して報知を行うための報知部と、
を備え、
前記制御部は、画像形成ジョブを依頼したユーザのユーザ識別情報と、前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に前記異常状態が発生したことを示す履歴情報とを対応付けて記憶し、
前記取得部によってユーザ識別情報が取得されたとき、該ユーザ識別情報に対応付けて前記履歴情報が記憶されている場合は、前記報知部により報知を行う
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記取得部によって取得されたユーザ識別情報に基づいてユーザを識別すると共に、該ユーザが自分の依頼した画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に対して前記異常状態を発生させた場合は前記発生通知を行わない
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項1】
画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が減少した場合に、前記減少したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一部のみ取り出されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙が排出される排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該画像形成ジョブのジョブ識別情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報が増加した場合に、前記増加したタグ識別情報と同一のジョブ識別情報に対応付けて前記記憶部に記憶されているタグ識別情報と前記読取部が読み取っているタグ識別情報とを比較し、該ジョブ識別情報の画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙が一旦取り出された後に返却されて前記排紙部にジョブ単位に揃わない異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像形成ジョブに係る画像をRFIDタグ付きの記録紙に形成する画像形成部と、
前記画像形成部により画像を形成された記録紙の排出先に選択される複数の排紙部と、
前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報と該記録紙の排出先の排紙部を示す排紙部情報とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記複数の排紙部別に、その排紙部に存在する記録紙に付いているRFIDタグのタグ識別情報を読み取る読取部と、
ユーザに対して警告を行うための警告部と、
前記読取部が読み取っているタグ識別情報と前記記憶部に記憶されているタグ識別情報とを比較し、前記排出先の排紙部に排出された記録紙が一旦取り出されて異なる排紙部に返却された異常状態であると判断した場合に、前記警告部により警告を行う制御部と、
を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成ジョブを依頼するユーザの端末装置と通信する通信部を備え、
前記制御部は、ユーザから依頼された画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に発生した前記異常状態が解消されずに所定時間を経過した場合は、該画像形成ジョブを依頼したユーザの端末装置に前記通信部を通じて前記異常状態の発生通知を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部と、
ユーザに対して報知を行うための報知部と、
を備え、
前記制御部は、画像形成ジョブを依頼したユーザのユーザ識別情報と、前記画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に前記異常状態が発生したことを示す履歴情報とを対応付けて記憶し、
前記取得部によってユーザ識別情報が取得されたとき、該ユーザ識別情報に対応付けて前記履歴情報が記憶されている場合は、前記報知部により報知を行う
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
ユーザからユーザ識別情報を取得する取得部を備え、
前記制御部は、前記取得部によって取得されたユーザ識別情報に基づいてユーザを識別すると共に、該ユーザが自分の依頼した画像形成ジョブに係る画像の形成された記録紙に対して前記異常状態を発生させた場合は前記発生通知を行わない
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図4】
【図10】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図4】
【図10】
【公開番号】特開2010−175860(P2010−175860A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18794(P2009−18794)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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