画像形成装置
【課題】複数のヘッドが並べて配列された記録ヘッドを用いる場合に、省スペースで、効率的な気泡排出を行うことが難しい。
【解決手段】ヘッドモジュール51の複数のヘッド101にインクを分配して供給する分岐部材54を備え、分岐部材54は、インクを収容する液体空間201と気体空間202とを有し、液体空間201と気体空間202とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間202の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材203で仕切られ、気体空間202には電磁弁204を介して気体空間202内を減圧する減圧ポンプ205が接続されている。
【解決手段】ヘッドモジュール51の複数のヘッド101にインクを分配して供給する分岐部材54を備え、分岐部材54は、インクを収容する液体空間201と気体空間202とを有し、液体空間201と気体空間202とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間202の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材203で仕切られ、気体空間202には電磁弁204を介して気体空間202内を減圧する減圧ポンプ205が接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
特に、ライン型画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、複数のヘッドを並べて構成した記録ヘッドと、インクを収容するメインタンクと、メインタンクから供給されるインクを収容し、記録ヘッドに供給する可撓性部材(例えば可撓性フィルム)で形成された密閉式サブタンクを含む脱気インクを扱えるインク供給系と、記録ヘッドの複数のヘッドにインクを分配して供給する(分岐する)供給部材としての分岐部材(ディストリビュータタンク)と、ディストリビュータタンクに溜まった気泡をインク供給経路から排出するための手段を備えるものが知られている。
【0005】
ところで、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させ画像を形成する画像形成装置においては、液体吐出ヘッドのノズルダウン(吐出不能)や吐出不良が発生すると形成される画像にいわゆるドット抜け(スジ)が発生し高品質の画像が得られない。このノズルダウンや吐出不良の原因として、インク流路内に気泡が入り込むことによって、気泡が流路抵抗となる場合があり、吐出動作が不安定になったり、気泡が滞留することにより、インクが吐出されない、いわゆる不吐出状態(ノズルダウン)になる。
【0006】
そこで、従来、例えば、液体貯蔵手段から液体噴射ヘッドに供給する液体通路に液体保留手段を配置し、液体保留手段は、液体を格納する液体格納部と、気体を透過可能な液体遮断部を介して液体格納部と連通している気体格納部と、気体格納部の気圧を低下させる減圧手段と、気体格納部を外部の気体と遮断する気体格納部遮断手段とを有し、噴射ヘッド側液体通路を遮断した後に、減圧手段を駆動するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−288770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術では、複数のヘッドを配列した記録ヘッドを用いてライン型画像形成装置を構成した場合、省スペース化と気泡排出の効率化を両立させることが困難であるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特に複数のヘッドが並べて配列された記録ヘッドを用いる場合に、省スペースで、効率的な気泡排出を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のヘッドを並べて配置した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材と、を備え、
前記供給部材は、前記インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、前記液体空間と気体空間とは、前記インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、前記気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、
前記供給部材の前記気体空間には、前記気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、
前記液体空間内の気泡を、前記透気性部材を介して前記気体空間内に排出させる
構成とした。
【0011】
ここで、前記供給部材の液体空間内のインク中の溶存気体量を検出する手段と、検出された溶存気体量に基づいて前記減圧手段を駆動する手段とを備えている構成とできる。
【0012】
この場合、前記減圧手段を予め定めた所定時間駆動する構成とできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像形成装置によれば、記録ヘッドの複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材は、インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、液体空間と気体空間とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、供給部材の気体空間には、気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、液体空間内の気泡を、透気性部材を介して気体空間内に排出させる構成としたので、効率的な気泡排出を省スペースで行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成を説明する概略構成図である。
【図2】同装置の模式的平面説明図である。
【図3】ヘッドモジュールの一例を示す説明図である。
【図4】ヘッドの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態の説明に供する1つの記録ヘッド部分の説明図である。
【図6】同じく分岐部材の斜視説明図である。
【図7】同じく透気性部材の一例を示す説明図である。
【図8】同じく透気性部材の他の例を示す説明図である。
【図9】同じく4個の記録ヘッド分の配置例を示す斜視説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態の説明に供する1つの記録ヘッド部分の説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態の説明に供する1つの記録ヘッド部分の説明図である。
【図12】同画像形成装置の制御部の一例を示すブロック説明図である。
【図13】同制御部による気泡排出処理の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0016】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュール51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5のヘッドモジュール51にインクを供給するサブタンクで構成されるインクタンクユニット8と、インクタンクユニット8にインクを供給するメインタンクユニット9とを備えている。
【0017】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0018】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送手段としての搬送ベルト43と、搬送ベルト43の裏面側に配設されたプラテン部材(ベルト案内部材)45を備えている。この搬送ベルト43の表面には図示しないが複数の吸引孔が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0019】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44によって発生される吸引力により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0020】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0021】
画像形成ユニット5は、図3及び図4に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102をノズル面104に2列配列した複数のヘッド101を一列に配列し、各ヘッド101にインクを分配供給する供給部材である分岐部材54とともに一体化したヘッドモジュール51A、51B、51C、51Dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材52に取付けられて配置されている記録ヘッドユニット50を備えている。なお、1つのヘッドモジュール51の複数のヘッド101で構成される部分が1つの「記録ヘッド」である。
【0022】
ここでは、ヘッドモジュール51A、51Bの2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドモジュール51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドモジュール51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0023】
この画像形成ユニット5の上流側にはインクタンクユニット8のサブタンク(インクタンク)81(図示の都合上1つのインクタンクのみ符号を付している。)が配置され、供給チューブ82を介してサブタンク81からインクが各ヘッドモジュール51の分岐部材54に供給され、インクタンク81とヘッドモジュール51との水頭差によりヘッドモジュール51の各ヘッドに対する負圧が形成される。このインクタンクユニット8は画像形成ユニット5とともに矢示A方向に移動可能に配置されている。なお、インクタンク81からヘッドモジュール51に対する供給チューブ82は分かり易くするためヘッドモジュール51の上方から接続して状態で図示しているが、実際はヘッドモジュール51の長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)の端部に接続される。
【0024】
さらに、インクタンク81の上流側にはインク収容手段であるメインタンクユニット9が配置され、メインタンク(インクカートリッジ)91から供給チューブ92を介してインクがサブタンク81に供給される。
【0025】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0026】
維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の記録ヘッドユニット50を構成する各ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61は、ヘッドモジュール51の各ヘッド101に対応してノズル面をキャッピングするキャップ部材62及びノズル面を払拭するワイピング部材(ワイパ部材)64などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッド101のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0027】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41Bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0028】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0029】
次に、この画像形成装置における本発明の第1実施形態について図5を参照して説明する。なお、図5は同実施形態の説明に供する1つの記録ヘッドに対応する気泡排出機構(手段)の説明図である。
分岐部材54は、インクを収容する液体空間201と気体空間202とを有し、液体空間201と気体空間202とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間202の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材203で仕切られている。そして、分岐部材54の気体空間202には電磁弁204を介して気体空間202内を減圧する減圧手段としての真空ポンプで構成した減圧ポンプ205が接続されている。なお、減圧ポンプ205は1又は複数備えることができる。
【0030】
ここで、分岐部材54は、図6に示すように、液体空間201を形成する液体格納部211と気体空間202を形成する気体減圧部材212とを透気性部材203を介して接着剤で接合して構成している。液体格納部211と気体減圧部材212は、気体透過性の低い材料、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の合成樹脂で形成している。
【0031】
この場合、分岐部材の液体空間201の天面となる透気性部材203は高さ方向に傾斜して配置されている。
【0032】
また、透気性部材203の一例としては、図7に示すように、アルミ、SUSなどで形成したメッシュ状の剛性の高いベース部材221と、このベース部材221の周囲を覆うように成型した気体透過性の高い材料、例えばシリコンゴムなどからなる透気部材222とで構成している。これにより、透気性部材203は、液体空間201から気体空間202へインクを通さずに気体のみを通過させ、かつ、ベース部材221によって気体空間202側が減圧されても形状を保持することができる。
【0033】
また、透気性部材203の他の例としては、図8に示すように、アルミ、SUSなどで形成したメッシュ状の剛性の高いベース部材221と、ポリアセタールなどの透気性を有する補強材224と、シリコン系やフッ素系膜などからなる透気性フィルム225とを積層して構成している。この場合、透気性フィルム225側が液体空間201に接する側に配置されている。また、補強材224は気体空間202が減圧された場合に透気性フィルム225の変形を防止するためのものであり、透気性フィルム225が液体を完全に遮断できる場合には透気性のみを有する材料で形成することができる。
【0034】
そして、上記画像形成装置においては、図9に示すように、4つの記録ヘッド51A〜51Dについてそれぞれ分岐部材54を備えて、上述した気泡排出機構を備えている。
【0035】
このように構成したので、電磁弁204を開放して減圧ポンプ205を駆動することで、気体空間202内の気圧を大気圧より低くすることによって、液体空間201に収容されているインクに溶け込んでいる気体が、透気性部材203を介して減圧された気体空間202に排出される。
【0036】
この場合、1枚の透気性部材203を複数のヘッド101に対応させて配置していることで、インクの自由表面の面積が大きくなり、インク中からの気体除去の効率を高めることができる。また、液体空間201は流速が低い箇所であるので、比較的低い負圧でも効率良く気泡排出を行うことができる。
【0037】
そして、分岐部材54に液体空間201と気体空間202を一体化した構造としているので、気泡排出を行う気泡排出機構を効率良く省スペースで配置することができる。
【0038】
このように、記録ヘッドの複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材は、インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、液体空間と気体空間とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、供給部材の気体空間には、気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、液体空間内の気泡を透気性部材を介して気体空間内に排出させる構成とすることで、効率的な気泡排出を省スペースで行うことができるようになる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態の説明に供する1つの記録ヘッドに対応する分岐部材の説明図である。
ここでは、前記第1実施形態において液体空間201の天面を形成する透気性部材204を傾斜させて配置していたのに対し、液体空間201の天面を形成する透気性部材204を液体空間201の底面と同様な方向(この例では水平方向)に配置している。その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0040】
このように構成しても、前記第1実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0041】
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して説明する。なお、図11は同実施形態の説明に供する1つの記録ヘッドに対応する分岐部材の説明図である。
ここでは、液体格納部材211で形成される液体空間201の天面を傾斜面231とし、傾斜面231の最も上部に透気性部材203を配置して、この透気性部材203の上方に気体空間202を形成する気体減圧部材212を配置している。
【0042】
このように構成した場合、液体空間201内のインク中で生じる気泡は仕切り部材231が傾斜しているために、仕切り部材231に沿って斜め上方に移動して透気性部材203の部分に達する。そこで、気体空間202を減圧することによって気泡は透気性部材203を介して気体空間202内に排出される。このようにすれば、減圧すべき気体空間202の容積が小さくなり、効率的な減圧を行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。まず、上記画像形成装置における制御部の概要について図12に示すブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この装置全体の制御を司る本発明に係る空吐出動作の制御を行う手段を兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0044】
また、記録ヘッドユニット50を構成する各ヘッドモジュール51の各ヘッド101を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含むヘッド駆動制御部508と、記録ヘッド51の各ヘッド101を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、画像形成ユニット5を移動させる画像形成ユニット移動モータ510を駆動するための画像形成ユニット移動モータ駆動部511と、搬送ベルト移動モータ512を駆動するための搬送ベルト移動モータ駆動部513と、吸引ファン44に対する吸引モータ514を駆動する吸引モータ駆動部515と、各種センサからの情報を入力するI/O516を有している。
【0045】
ここで、I/O516にはセンサ情報として、分岐部材54の液体空間201内の溶存気体量を検出する溶存気体量検知手段531からの検知信号、その他、図示しない環境温度や環境湿度を検出する環境センサ、記録ヘッドユニット50に備えた用紙を検知する用紙センサなどの各種情報が入力される。
【0046】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル517が接続されている。
【0047】
ここで、制御部500は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称す)等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F506で受信する。
【0048】
そして、CPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にてデータの並び替え処理等(場合によっては、画像処理の一部の処理)を行ってヘッド駆動制御部508に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、該印刷ラスタデータをこの装置に転送するようにしている。
【0049】
ヘッド駆動制御部508は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ509にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ509に送出する。
【0050】
このヘッド駆動制御部508は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM502で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0051】
また、ヘッドドライバ509は、ヘッド駆動制御部508からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部508からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的にヘッドユニット51のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンを形成する。
【0052】
また、主制御部500は、溶存気体量検知手段531の検知信号に基づいて分岐部材54のインク中の溶存気体量を検出し、検出した溶存気体量に基づいて前述した電磁弁204の開閉制御及び減圧ポンプ205の駆動制御を行う。
【0053】
なお、溶存気体量検出手段は、例えば、電解液などを用いた溶存酸素計によってインク中の溶存酸素量を直接的に測定するもの、あるいは、インクの電気伝導率を測定し、この測定された電気伝導率に基づいて溶存酸素量を予測するものなどで構成することができ、これらの場合、溶存気体量検知手段351は溶存酸素計や電気伝導率測定手段で構成される。
【0054】
そこで、制御部による気泡排出処理の一例について図13のフロー図を参照して説明する。
電源ONでこの処理を開始し、溶存気体量検知手段351の検知結果を取り込んで分岐部材54の液体空間201のインク中の溶存気体量を検出し、検出された溶存気体量が予め定めた設定値未満であるか否かを判別し、設定値未満であれば、そのまま印字処理に移行する。
【0055】
これに対して、検出された溶存気体量が予め定めた設定値未満でなければ(以上であれば)、操作パネル517に脱気終了時間を表示した後、電磁弁204を開放して予め定めた所定時間減圧ポンプ205を駆動し、分岐部材54の気体空間202内を減圧することでインク中の気体を気体空間202側へ移動(排出)させる処理を行い、液体空間201のインク中の溶存気体量を検出して検出された溶存気体量が予め定めた設定値未満であるか否かを再度判別し、溶存気体量が予め定めた設定値未満になるまで、上記の処理を繰り返し、溶存気体量が予め定めた設定値未満になったときに印字処理に移行する。なお、減圧ポンプ205の非駆動時には電磁弁204を閉じて気体空間202を密閉状態にする。
【0056】
この場合、検出した溶存気体量から所望の溶存気体量を得るまでの減圧手段(減圧の駆動時間が容易に推測可能であるので、必要な時間のみ減圧手段の駆動を行うことで、制御が簡単になる。また、上記気体排出完了推測時間を操作パネルなどに表示することで、ユーザに与える待機時間のストレスの軽減を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
4…搬送ユニット
5…画像形成ユニット
43…搬送ベルト
44…吸引ファン
50…記録ヘッドユニット
51、51Y、51M、51C、51K…ヘッドモジュール
54…分岐部材(供給部材)
101…ヘッド
102…ノズル
201…液体空間
202…気体空間
203…透気性部材
205…減圧ポンプ
211…液体格納部材
212…気体減圧部材
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0004】
特に、ライン型画像形成装置(以下、単に「インクジェット記録装置」ともいう。)において、複数のヘッドを並べて構成した記録ヘッドと、インクを収容するメインタンクと、メインタンクから供給されるインクを収容し、記録ヘッドに供給する可撓性部材(例えば可撓性フィルム)で形成された密閉式サブタンクを含む脱気インクを扱えるインク供給系と、記録ヘッドの複数のヘッドにインクを分配して供給する(分岐する)供給部材としての分岐部材(ディストリビュータタンク)と、ディストリビュータタンクに溜まった気泡をインク供給経路から排出するための手段を備えるものが知られている。
【0005】
ところで、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出させ画像を形成する画像形成装置においては、液体吐出ヘッドのノズルダウン(吐出不能)や吐出不良が発生すると形成される画像にいわゆるドット抜け(スジ)が発生し高品質の画像が得られない。このノズルダウンや吐出不良の原因として、インク流路内に気泡が入り込むことによって、気泡が流路抵抗となる場合があり、吐出動作が不安定になったり、気泡が滞留することにより、インクが吐出されない、いわゆる不吐出状態(ノズルダウン)になる。
【0006】
そこで、従来、例えば、液体貯蔵手段から液体噴射ヘッドに供給する液体通路に液体保留手段を配置し、液体保留手段は、液体を格納する液体格納部と、気体を透過可能な液体遮断部を介して液体格納部と連通している気体格納部と、気体格納部の気圧を低下させる減圧手段と、気体格納部を外部の気体と遮断する気体格納部遮断手段とを有し、噴射ヘッド側液体通路を遮断した後に、減圧手段を駆動するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−288770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術では、複数のヘッドを配列した記録ヘッドを用いてライン型画像形成装置を構成した場合、省スペース化と気泡排出の効率化を両立させることが困難であるという課題がある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、特に複数のヘッドが並べて配列された記録ヘッドを用いる場合に、省スペースで、効率的な気泡排出を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のヘッドを並べて配置した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材と、を備え、
前記供給部材は、前記インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、前記液体空間と気体空間とは、前記インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、前記気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、
前記供給部材の前記気体空間には、前記気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、
前記液体空間内の気泡を、前記透気性部材を介して前記気体空間内に排出させる
構成とした。
【0011】
ここで、前記供給部材の液体空間内のインク中の溶存気体量を検出する手段と、検出された溶存気体量に基づいて前記減圧手段を駆動する手段とを備えている構成とできる。
【0012】
この場合、前記減圧手段を予め定めた所定時間駆動する構成とできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像形成装置によれば、記録ヘッドの複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材は、インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、液体空間と気体空間とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、供給部材の気体空間には、気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、液体空間内の気泡を、透気性部材を介して気体空間内に排出させる構成としたので、効率的な気泡排出を省スペースで行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す全体構成を説明する概略構成図である。
【図2】同装置の模式的平面説明図である。
【図3】ヘッドモジュールの一例を示す説明図である。
【図4】ヘッドの一例を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態の説明に供する1つの記録ヘッド部分の説明図である。
【図6】同じく分岐部材の斜視説明図である。
【図7】同じく透気性部材の一例を示す説明図である。
【図8】同じく透気性部材の他の例を示す説明図である。
【図9】同じく4個の記録ヘッド分の配置例を示す斜視説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態の説明に供する1つの記録ヘッド部分の説明図である。
【図11】本発明の第3実施形態の説明に供する1つの記録ヘッド部分の説明図である。
【図12】同画像形成装置の制御部の一例を示すブロック説明図である。
【図13】同制御部による気泡排出処理の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する概略構成図、図2は同装置の模式的平面説明図である。
【0016】
この画像形成装置はライン型画像形成装置であり、装置本体1と、用紙Pを積載し給紙する給紙トレイ2と、印刷された用紙Pを排紙積載する排紙トレイ3と、用紙Pを給紙トレイ2から排紙トレイ3まで搬送する搬送ユニット4と、搬送ユニット4によって搬送される用紙Pに液滴を吐出し印字する記録ヘッドを構成するヘッドモジュール51を含む画像形成ユニット5と、印刷終了後又は所要のタイミングで画像形成ユニット5の各記録ヘッドの維持回復を行う維持回復機構であるヘッドクリーニング装置6と、ヘッドクリーニング装置6を開閉する搬送ガイド部7と、画像形成ユニット5のヘッドモジュール51にインクを供給するサブタンクで構成されるインクタンクユニット8と、インクタンクユニット8にインクを供給するメインタンクユニット9とを備えている。
【0017】
装置本体1は、図示しない前後側板及びステーなどで構成されており、給紙トレイ2上に積載されている用紙Pは、分離ローラ21及び給紙ローラ22によって1枚ずつ搬送ユニット4に給紙される。
【0018】
搬送ユニット4は、搬送駆動ローラ41Aと搬送従動ローラ41Bと、これらのローラ41A、41B間に掛け回された無端状の搬送手段としての搬送ベルト43と、搬送ベルト43の裏面側に配設されたプラテン部材(ベルト案内部材)45を備えている。この搬送ベルト43の表面には図示しないが複数の吸引孔が形成されており、搬送ベルト43の下部には用紙Pを吸引する吸引ファン44が配置されている。また、搬送駆動ローラ41A、搬送従動ローラ41B上部には、それぞれ搬送ガイドローラ42A、42Bが図示しないガイドに保持されて、自重にてベルト43に当接している。
【0019】
搬送ベルト43は、搬送駆動ローラ41Aが図示しないモータにより回転されることで周回移動し、用紙Pは搬送ベルト43上に吸引ファン44によって発生される吸引力により吸い付けられ、搬送ベルト43の周回移動によって搬送される。なお、搬送従動ローラ41B、搬送ガイドローラ42A、42Bは搬送ベルト43に従動して回転する。
【0020】
搬送ユニット4の上部には用紙Pに印字する液滴を吐出する複数のヘッドモジュール51で構成される画像形成ユニット5が矢示A方向(及び逆方向)に移動可能に配置されている。この画像形成ユニット5は、維持回復動作時(クリーニング時)にはクリーニング装置6上方まで移動され、画像形成時には図1の位置に戻される。
【0021】
画像形成ユニット5は、図3及び図4に示すように、液滴を吐出する複数のノズル102をノズル面104に2列配列した複数のヘッド101を一列に配列し、各ヘッド101にインクを分配供給する供給部材である分岐部材54とともに一体化したヘッドモジュール51A、51B、51C、51Dが、用紙搬送方向に沿って並べてラインベース部材52に取付けられて配置されている記録ヘッドユニット50を備えている。なお、1つのヘッドモジュール51の複数のヘッド101で構成される部分が1つの「記録ヘッド」である。
【0022】
ここでは、ヘッドモジュール51A、51Bの2つのノズル列の一方でイエロー(Y)の液滴を、他方でマゼンタ(M)の液滴を吐出し、また、ヘッドモジュール51C、51Dの2つのノズル列の一方でシアン(C)の液滴を、他方でブラック(K)の液滴を吐出する。つまり、この画像形成ユニット5は、同じ色の液滴を吐出する2つのヘッドモジュール51が用紙搬送方向に並べて配置され、2つのヘッドモジュール51で用紙幅相当の1列分のノズル列が構成されている構成としている。
【0023】
この画像形成ユニット5の上流側にはインクタンクユニット8のサブタンク(インクタンク)81(図示の都合上1つのインクタンクのみ符号を付している。)が配置され、供給チューブ82を介してサブタンク81からインクが各ヘッドモジュール51の分岐部材54に供給され、インクタンク81とヘッドモジュール51との水頭差によりヘッドモジュール51の各ヘッドに対する負圧が形成される。このインクタンクユニット8は画像形成ユニット5とともに矢示A方向に移動可能に配置されている。なお、インクタンク81からヘッドモジュール51に対する供給チューブ82は分かり易くするためヘッドモジュール51の上方から接続して状態で図示しているが、実際はヘッドモジュール51の長手方向(用紙搬送方向と直交する方向)の端部に接続される。
【0024】
さらに、インクタンク81の上流側にはインク収容手段であるメインタンクユニット9が配置され、メインタンク(インクカートリッジ)91から供給チューブ92を介してインクがサブタンク81に供給される。
【0025】
搬送ユニット4の下流側には用紙Pを排紙トレイ3に排紙する搬送ガイド部7が設けられている。搬送ガイド部7にて案内されて搬送される用紙Pは排紙トレイ3に排紙される。排紙トレイ3は、用紙Pの幅方向を規制する対のサイドフェンス31と用紙Pの先端を規制するエンドフェンス32を備えている。
【0026】
維持回復機構(ヘッドクリーニング装置)6は、画像形成ユニット5の記録ヘッドユニット50を構成する各ヘッドモジュール51に対応して、4列分のクリーニング手段61A〜61Dが配置され、1つのクリーニング手段61は、ヘッドモジュール51の各ヘッド101に対応してノズル面をキャッピングするキャップ部材62及びノズル面を払拭するワイピング部材(ワイパ部材)64などで構成されている。なお、各クリーニング手段61のキャップ部材62は各列毎に独立して上下動させることができる構成としている。さらに、クリーニング手段61の下方には、キャップ部材62でヘッド101のノズル面をキャッピングした状態でノズルからインクを吸引するための吸引手段である吸引ポンプ63A〜63Dが配置されている。
【0027】
また、この画像形成装置においては、印刷終了後、液滴を吐出するヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面をクリーニング手段61でキャッピングした状態でノズルからインクを吸引する場合、あるいは、ヘッドモジュール51の各ヘッドのノズル面に付着したインクをワイピング部材で清掃する場合は、図1にも示すように、印刷停止後、搬送ユニット4全体が搬送従動ローラ41Bを支点に矢印B方向に回動し、画像形成ユニット5との間の空間を画像形成時よりも大きくすることで、画像形成ユニット5の移動スペースを確保するようにしている。このとき、ヘッドクリーニング装置6上部に配置されている搬送ガイド部7の搬送ガイド板71も支点72にて矢印C方向上方に回動され、ヘッドクリーニング装置6の上方が開放される。
【0028】
そして、搬送ユニット4と搬送ガイド部7がそれぞれ解放(解除)された後に、画像形成ユニット5が用紙通紙方向(矢示A方向)に移動し、ヘッドクリーニング装置6上方で停止され、クリーニング手段61が上昇して各ヘッドモジュール51のクリーニング動作(維持回復動作)に移行する。
【0029】
次に、この画像形成装置における本発明の第1実施形態について図5を参照して説明する。なお、図5は同実施形態の説明に供する1つの記録ヘッドに対応する気泡排出機構(手段)の説明図である。
分岐部材54は、インクを収容する液体空間201と気体空間202とを有し、液体空間201と気体空間202とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間202の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材203で仕切られている。そして、分岐部材54の気体空間202には電磁弁204を介して気体空間202内を減圧する減圧手段としての真空ポンプで構成した減圧ポンプ205が接続されている。なお、減圧ポンプ205は1又は複数備えることができる。
【0030】
ここで、分岐部材54は、図6に示すように、液体空間201を形成する液体格納部211と気体空間202を形成する気体減圧部材212とを透気性部材203を介して接着剤で接合して構成している。液体格納部211と気体減圧部材212は、気体透過性の低い材料、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の合成樹脂で形成している。
【0031】
この場合、分岐部材の液体空間201の天面となる透気性部材203は高さ方向に傾斜して配置されている。
【0032】
また、透気性部材203の一例としては、図7に示すように、アルミ、SUSなどで形成したメッシュ状の剛性の高いベース部材221と、このベース部材221の周囲を覆うように成型した気体透過性の高い材料、例えばシリコンゴムなどからなる透気部材222とで構成している。これにより、透気性部材203は、液体空間201から気体空間202へインクを通さずに気体のみを通過させ、かつ、ベース部材221によって気体空間202側が減圧されても形状を保持することができる。
【0033】
また、透気性部材203の他の例としては、図8に示すように、アルミ、SUSなどで形成したメッシュ状の剛性の高いベース部材221と、ポリアセタールなどの透気性を有する補強材224と、シリコン系やフッ素系膜などからなる透気性フィルム225とを積層して構成している。この場合、透気性フィルム225側が液体空間201に接する側に配置されている。また、補強材224は気体空間202が減圧された場合に透気性フィルム225の変形を防止するためのものであり、透気性フィルム225が液体を完全に遮断できる場合には透気性のみを有する材料で形成することができる。
【0034】
そして、上記画像形成装置においては、図9に示すように、4つの記録ヘッド51A〜51Dについてそれぞれ分岐部材54を備えて、上述した気泡排出機構を備えている。
【0035】
このように構成したので、電磁弁204を開放して減圧ポンプ205を駆動することで、気体空間202内の気圧を大気圧より低くすることによって、液体空間201に収容されているインクに溶け込んでいる気体が、透気性部材203を介して減圧された気体空間202に排出される。
【0036】
この場合、1枚の透気性部材203を複数のヘッド101に対応させて配置していることで、インクの自由表面の面積が大きくなり、インク中からの気体除去の効率を高めることができる。また、液体空間201は流速が低い箇所であるので、比較的低い負圧でも効率良く気泡排出を行うことができる。
【0037】
そして、分岐部材54に液体空間201と気体空間202を一体化した構造としているので、気泡排出を行う気泡排出機構を効率良く省スペースで配置することができる。
【0038】
このように、記録ヘッドの複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材は、インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、液体空間と気体空間とは、インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、供給部材の気体空間には、気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、液体空間内の気泡を透気性部材を介して気体空間内に排出させる構成とすることで、効率的な気泡排出を省スペースで行うことができるようになる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態の説明に供する1つの記録ヘッドに対応する分岐部材の説明図である。
ここでは、前記第1実施形態において液体空間201の天面を形成する透気性部材204を傾斜させて配置していたのに対し、液体空間201の天面を形成する透気性部材204を液体空間201の底面と同様な方向(この例では水平方向)に配置している。その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0040】
このように構成しても、前記第1実施形態と同様な作用効果が得られる。
【0041】
次に、本発明の第3実施形態について図11を参照して説明する。なお、図11は同実施形態の説明に供する1つの記録ヘッドに対応する分岐部材の説明図である。
ここでは、液体格納部材211で形成される液体空間201の天面を傾斜面231とし、傾斜面231の最も上部に透気性部材203を配置して、この透気性部材203の上方に気体空間202を形成する気体減圧部材212を配置している。
【0042】
このように構成した場合、液体空間201内のインク中で生じる気泡は仕切り部材231が傾斜しているために、仕切り部材231に沿って斜め上方に移動して透気性部材203の部分に達する。そこで、気体空間202を減圧することによって気泡は透気性部材203を介して気体空間202内に排出される。このようにすれば、減圧すべき気体空間202の容積が小さくなり、効率的な減圧を行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。まず、上記画像形成装置における制御部の概要について図12に示すブロック説明図を参照して説明する。
この制御部500は、この装置全体の制御を司る本発明に係る空吐出動作の制御を行う手段を兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0044】
また、記録ヘッドユニット50を構成する各ヘッドモジュール51の各ヘッド101を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含むヘッド駆動制御部508と、記録ヘッド51の各ヘッド101を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、画像形成ユニット5を移動させる画像形成ユニット移動モータ510を駆動するための画像形成ユニット移動モータ駆動部511と、搬送ベルト移動モータ512を駆動するための搬送ベルト移動モータ駆動部513と、吸引ファン44に対する吸引モータ514を駆動する吸引モータ駆動部515と、各種センサからの情報を入力するI/O516を有している。
【0045】
ここで、I/O516にはセンサ情報として、分岐部材54の液体空間201内の溶存気体量を検出する溶存気体量検知手段531からの検知信号、その他、図示しない環境温度や環境湿度を検出する環境センサ、記録ヘッドユニット50に備えた用紙を検知する用紙センサなどの各種情報が入力される。
【0046】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル517が接続されている。
【0047】
ここで、制御部500は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称す)等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データを含む印刷データ等をケーブル或いはネットを介してホストI/F506で受信する。
【0048】
そして、CPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にてデータの並び替え処理等(場合によっては、画像処理の一部の処理)を行ってヘッド駆動制御部508に画像データを転送する。なお、画像出力するための印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)への変換は、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップデータに展開し印刷データのビットマップデータ(印刷ラスタデータ)を作成した上で、該印刷ラスタデータをこの装置に転送するようにしている。
【0049】
ヘッド駆動制御部508は、印刷ラスタデータを受け取ると、このドットパターンデータ(印刷ラスタデータ)を、クロック信号に同期して、ヘッドドライバ509にシリアルデータで送出し、また所定のタイミングでラッチ信号をヘッドドライバ509に送出する。
【0050】
このヘッド駆動制御部508は、駆動波形(駆動信号)のパターンデータを格納したROM(ROM502で構成することもできる。)と、このROMから読出される駆動波形のデータをD/A変換するD/A変換器を含む波形生成回路及びアンプ等で構成される駆動波形発生回路を含む。
【0051】
また、ヘッドドライバ509は、ヘッド駆動制御部508からのクロック信号及び画像データであるシリアルデータを入力するシフトレジスタと、シフトレジスタのレジスト値をヘッド駆動制御部508からのラッチ信号でラッチするラッチ回路と、ラッチ回路の出力値をレベル変化するレベル変換回路(レベルシフタ)と、このレベルシフタでオン/オフが制御されるアナログスイッチアレイ(スイッチ手段)等を含み、アナログスイッチアレイのオン/オフを制御することで駆動波形に含まれる所要の駆動波形を選択的にヘッドユニット51のアクチュエータ手段に印加してヘッドを駆動し、画像データを印刷してドットパターンを形成する。
【0052】
また、主制御部500は、溶存気体量検知手段531の検知信号に基づいて分岐部材54のインク中の溶存気体量を検出し、検出した溶存気体量に基づいて前述した電磁弁204の開閉制御及び減圧ポンプ205の駆動制御を行う。
【0053】
なお、溶存気体量検出手段は、例えば、電解液などを用いた溶存酸素計によってインク中の溶存酸素量を直接的に測定するもの、あるいは、インクの電気伝導率を測定し、この測定された電気伝導率に基づいて溶存酸素量を予測するものなどで構成することができ、これらの場合、溶存気体量検知手段351は溶存酸素計や電気伝導率測定手段で構成される。
【0054】
そこで、制御部による気泡排出処理の一例について図13のフロー図を参照して説明する。
電源ONでこの処理を開始し、溶存気体量検知手段351の検知結果を取り込んで分岐部材54の液体空間201のインク中の溶存気体量を検出し、検出された溶存気体量が予め定めた設定値未満であるか否かを判別し、設定値未満であれば、そのまま印字処理に移行する。
【0055】
これに対して、検出された溶存気体量が予め定めた設定値未満でなければ(以上であれば)、操作パネル517に脱気終了時間を表示した後、電磁弁204を開放して予め定めた所定時間減圧ポンプ205を駆動し、分岐部材54の気体空間202内を減圧することでインク中の気体を気体空間202側へ移動(排出)させる処理を行い、液体空間201のインク中の溶存気体量を検出して検出された溶存気体量が予め定めた設定値未満であるか否かを再度判別し、溶存気体量が予め定めた設定値未満になるまで、上記の処理を繰り返し、溶存気体量が予め定めた設定値未満になったときに印字処理に移行する。なお、減圧ポンプ205の非駆動時には電磁弁204を閉じて気体空間202を密閉状態にする。
【0056】
この場合、検出した溶存気体量から所望の溶存気体量を得るまでの減圧手段(減圧の駆動時間が容易に推測可能であるので、必要な時間のみ減圧手段の駆動を行うことで、制御が簡単になる。また、上記気体排出完了推測時間を操作パネルなどに表示することで、ユーザに与える待機時間のストレスの軽減を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
4…搬送ユニット
5…画像形成ユニット
43…搬送ベルト
44…吸引ファン
50…記録ヘッドユニット
51、51Y、51M、51C、51K…ヘッドモジュール
54…分岐部材(供給部材)
101…ヘッド
102…ノズル
201…液体空間
202…気体空間
203…透気性部材
205…減圧ポンプ
211…液体格納部材
212…気体減圧部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のヘッドを並べて配置した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材と、を備え、
前記供給部材は、前記インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、前記液体空間と気体空間とは、前記インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、前記気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、
前記供給部材の前記気体空間には、前記気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、
前記液体空間内の気泡を、前記透気性部材を介して前記気体空間内に排出させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給部材の液体空間内のインク中の溶存気体量を検出する手段と、検出された溶存気体量に基づいて前記減圧手段を駆動する手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記減圧手段を予め定めた所定時間駆動することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項1】
液滴を吐出する複数のヘッドを並べて配置した記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの前記複数のヘッドに対してインクを分配して供給する供給部材と、を備え、
前記供給部材は、前記インクを収容する液体空間と気体空間とを有し、前記液体空間と気体空間とは、前記インクを通過させず、かつ、気体を通過させ、前記気体空間の圧力変化に対して形状を保持する透気性部材で仕切られており、
前記供給部材の前記気体空間には、前記気体空間内を減圧する減圧手段が接続されて、
前記液体空間内の気泡を、前記透気性部材を介して前記気体空間内に排出させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記供給部材の液体空間内のインク中の溶存気体量を検出する手段と、検出された溶存気体量に基づいて前記減圧手段を駆動する手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記減圧手段を予め定めた所定時間駆動することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−179538(P2010−179538A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24220(P2009−24220)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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