説明

画像形成装置

【課題】現像剤の添加剤による転写後の残像の発生を抑えることができる画像形成装置を得る。
【解決手段】画像形成装置10は、感光体22と、感光体22の潜像を現像する現像ロール32と、現像されたトナー像を中間転写ベルト14に転写する転写ロール35と、転写後の感光体22表面の残留トナーを回収するためのブラシロール50と、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔVを制御する給電部54及び制御部18とを有している。ここで、現像ロール32の表面の単位面積当りのキャリア比率Cが大きいとき、制御部18は振幅ΔVを増加させる。これにより、感光体22表面に残留する添加剤Kが除去され、添加剤Kに起因する残像の発生を抑えられる。また、振幅ΔVの設定範囲を決めておくことで放電生成物の発生を抑えられるので、感光体22の摩耗を抑えて長期間使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、感光体の表面に現像剤像(トナー像)を形成して記録用紙に転写した後、感光体の表面に残留したトナーをブレード、ブラシロール等の回収部材で掻き落して除去している。ここで、帯電したトナーを静電引力を用いて除去するため、ブラシロールに電圧を印加したものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1の画像形成装置は、感光体の回転方向でブラシロール及びブレードの下流側にトナー量検知センサが設けられており、トナー量検知センサで検知された感光体表面の残留トナー量に応じて、ブラシロールに印加する電圧を変更している。
【0004】
特許文献2の画像形成装置は、入力された画像信号に基づいて平均画像密度を求め、この平均画像密度に応じて、ブラシロールに印加する電圧を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−345208
【特許文献2】特開2006−276065
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、現像剤の添加剤による転写後の残像の発生を抑えることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、装置本体に回転可能に設けられ、表面に潜像が形成される潜像形成体と、前記潜像形成体の潜像を現像される現像粒子と磁力により穂立ちして該現像粒子を現像させる磁性粒子と添加剤とを有する現像剤で顕在化して現像剤像を形成する現像剤像形成部材と、前記現像剤像形成部材で形成された現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、前記潜像形成体の表面に接触して設けられ、転写後の前記潜像形成体の表面に残留する現像剤を回収する回収部材と、前記潜像形成体の表面に接触して回転可能に設けられ、転写後の前記潜像形成体の表面に残留する現像剤の回収を促進させる回収促進剤を前記潜像形成体に供給する供給部材と、前記現像剤像形成部材の現像剤像形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率の変化に合わせて振幅を変更した交流電圧を前記供給部材に印加する電圧印加手段と、を有する。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記現像剤像形成部材の現像剤像形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率が、予め設定された設定比率よりも前記現像粒子が少ない側に変化したとき、前記電圧印加手段が、予め設定された印加電圧よりも振幅の大きい交流電圧を印加する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記現像剤形成部材に供給される現像剤を貯留する現像剤貯留部が設けられ、前記現像剤貯留部には、貯留された現像粒子量を検出する現像粒子量検出手段が設けられ、前記現像粒子量検出手段で検出された現像粒子量から現像剤中の現像粒子量と磁性粒子量の比率を求めて前記電圧印加手段で印加される交流電圧の振幅を変更する。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記現像剤像形成部材の現像剤像形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率が、予め設定された設定比率よりも前記現像粒子が多い側に変化したとき、前記電圧印加手段が予め設定された振幅の交流電圧を前記供給部材に印加し、予め設定された設定比率よりも前記現像粒子が少ない側に変化したとき、前記電圧印加手段が予め設定された振幅よりも大きい振幅の交流電圧を前記供給部材に印加する。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記転写部で転写される記録媒体の枚数を計数する計数手段と、前記計数手段で計数される記録媒体の枚数に合わせて前記電圧印加手段が印加する交流電圧の振幅を設定する電圧設定部と、が設けられている。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記装置本体の内部の温度及び湿度を検知する温湿度検知手段が設けられ、前記電圧印加手段は、該温湿度検知手段で検知された温度及び湿度に合わせて、前記供給部材に印加する交流電圧の振幅を補正する。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記電圧印加手段が、一の画像が形成される第1画像形成工程と、二の画像が形成される第2画像形成工程の間で交流電圧の振幅を変化させる。
【0014】
請求項8に係る発明は、前記電圧印加手段は、前記供給部材に印加する交流電圧の周波数を変更可能に設けられ、前記現像剤像形成部材の現像剤形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率の変化に合わせて、振幅及び周波数を変更した交流電圧を前記供給部材に印加する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、現像剤の添加剤による転写後の残像の発生を抑えることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、現像剤の添加剤による転写後の残像の発生を抑えることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、現像粒子量と磁性粒子量を実測しなくても、現像粒子と磁性粒子の比率の検出が行える。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、潜像形成体表面の放電生成物の発生量を低減できる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、回収部材に印加する交流電圧の変更を短時間で行える。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、潜像形成体表面の放電生成物の発生量を低減できる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、記録媒体内での画像の濃度変化を低減することができる。
【0022】
請求項8に係る発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、潜像形成体の表面に残留した現像剤の回収量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成ユニットの全体図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る制御部と画像形成装置内の各部との接続状態を示す模式図である。
【図4】(a)本発明の第1実施形態に係る現像ロール表面のトナー比率とキャリア比率の関係を示すグラフである。(b)本発明の第1実施形態に係る現像ロール表面のキャリア比率とブラシロールへの印加電圧の振幅の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施形態に係るブラシロールへの印加電圧の波形の模式図である。
【図6】(a)本発明の第1実施形態に係る感光体と現像ロールの間の現像領域を示す模式図である。(b)本発明の第1実施形態に係る磁気ブラシの穂立ち状態を示す模式図である。
【図7】(a)、(b)本発明の第1実施形態に係るトナーとキャリアの比率が異なるときの磁気ブラシ中のトナーとキャリアの存在状態を示す模式図である。
【図8】(a)、(b)本発明の第1実施形態に係る磁気ブラシで感光体表面の添加剤を除去する状態を示す模式図である。(c)、(d)本発明の第1実施形態に係る磁気ブラシで感光体表面の添加剤が除去されない状態を示す模式図である。
【図9】(a)〜(f)本発明の第1実施形態に係る感光体表面で添加剤による残像が発生する過程を示した模式図及び感光体の表面電位のグラフである。
【図10】(a)、(b)本発明の第1実施形態に係るブラシロールへの印加電圧の変更前又は変更後のクリーニングユニットにおけるトナー及び添加剤回収状態を示す模式図である。
【図11】本発明の第1実施形態の他の実施例に係るブラシロールへの印加電圧の波形の模式図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る制御部と画像形成装置内の各部との接続状態を示す模式図である。
【図13】本発明の第2実施形態に係るブラシロールへの印加電圧の波形の模式図である。
【図14】(a)、(b)本発明の第2実施形態に係るブラシロールへの印加電圧の変更前又は変更後のクリーニングユニットにおけるトナー及び添加剤回収状態を示す模式図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る画像形成ユニットの全体図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る制御部と画像形成装置内の各部との接続状態を示す模式図である。
【図17】本発明の第3実施形態に係る装置内温湿度とブラシロールへの印加電圧の振幅の関係を示すグラフである。
【図18】本発明の第4実施形態に係る画像形成ユニットの全体図である。
【図19】本発明の第4実施形態に係る制御部と画像形成装置内の各部との接続状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の画像形成装置の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1には、画像形成装置10の各構成が概略的に示されている。画像形成装置10には、装置本体としての筐体12の内側に無端ベルト状の中間転写ベルト14が配設されている。中間転写ベルト14は、複数のローラ16に張架されモータ(図示省略)の駆動により矢印E方向に搬送される。また、中間転写ベルト14の上方には、中間転写ベルト14の搬送方向Eに沿って複数の画像形成ユニット20が設けられており、中間転写ベルト14の下方には、画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部18が設けられている。
【0025】
画像形成ユニット20は、カラー画像形成に対応しており、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色に対応したトナー像を形成する画像形成ユニット20Y、20M、20C、20Kで構成されている。なお、Y、M、C、Kを区別する必要がある場合は、符号の後にY、M、C、Kの何れかを付して説明し、Y、M、C、Kを区別する必要が無い場合は、符号の後のY、M、C、Kを省略する。各画像形成ユニット20は、中間転写ベルト14に接して矢印F方向に回転可能に支持された感光体22を備えており、感光体22は端部で接地されている。
【0026】
図2に示すように、感光体22の周囲の一部には、感光体22の表面を帯電させるための帯電器24が感光体22表面と隙間をあけて設けられている。帯電器24は、ケースで覆われたワイヤー24Aとグリッド24Bとを有するスコロトロン方式の帯電手段であり、給電部(図示省略)によって予め設定された電圧が印加されることにより、感光体22表面を負極性の電位となるように帯電させる。
【0027】
感光体22の回転方向Fで帯電器24よりも下流側には、露光器26が設けられている。露光器26は、複数のLED(発光ダイオード)が配列されたLEDアレイを含んで構成されており、帯電器24により帯電された感光体22の表面へ、画像データに基づいて変調した照射光Lを照射する。これにより、感光体22の表面に静電潜像(潜像)が形成される。
【0028】
感光体22の回転方向Fで露光器26よりも下流側には、現像器30が設けられている。現像器30は、感光体22に向けて開口部28Aが形成された筺体28を有しており、筺体28内には、負極性に帯電する特性を有する樹脂製のトナー(現像粒子)と、磁性を有するキャリア(磁性粒子)とを含む現像剤Gが内部に貯留されている。また、筐体28内には、中空円筒状の現像ロール32が、開口部28Aを介して外周面を感光体22の表面と対向させて回転可能に設けられており、モータ(図示省略)によって矢印方向に回転駆動されるようになっている。ここで、現像ロール32には、給電手段(図示省略)によって電圧が印加され、感光体22との間に電位差が設定されている。
【0029】
現像ロール32の内側には、予め設定された複数の磁極を構成するように複数の磁石(図示省略)が固定されている。現像器30では、この複数の磁石の磁力によって、現像ロール32表面の現像剤G中のキャリアを穂立ちさせて磁気ブラシを形成し、磁気ブラシに静電付着したトナーを感光体22との電位差により感光体22の静電潜像に供給して、トナー像(現像剤像)を形成するようになっている。
【0030】
また、現像器30内には、板状又は円筒状の薄層形成部材(図示省略)が現像ロール32と隙間を空けて設けられている。これにより、現像ロール32が回転すると、現像ロール32の外周面に付着した現像剤Gの層厚が薄層形成部材で規制され、現像ロール32の外周面に現像剤層GAが形成されるようになっている。
【0031】
さらに、現像器30内には、筺体28内の現像剤G中のトナー濃度を検出するトナーセンサ33が設けられている。トナーセンサ33は、一定体積の現像剤G内の透磁率を検出するものであり、トナーセンサ33で検出された透磁率が、予め設定された設定透磁率より小さい場合は現像剤G中のトナー濃度が高く、設定透磁率よりも大きい場合はトナー濃度が低くなったことを表している。
【0032】
ここで、現像剤Gには、トナーとキャリアの他にも現像剤G自体の流動性を高める等の目的からSiO等の添加剤が添加されている。添加剤は、球形に近い形状をしており、トナー及びキャリアよりも小粒径で重量比率が低くなっている。このため、トナーセンサ33で検出される現像剤G中のトナー濃度は、合計重量(トナー重量+キャリア重量)に対するトナー重量の比率(トナー比率T)を表していることになる。また、合計重量(トナー重量+キャリア重量)に対するキャリア重量の比率をキャリア比率Cとすると、T+C=100%とみなすことができる。この関係式を用いて、制御部18では、トナーセンサ33で検出されたトナー比率Tからキャリア比率Cを求めるようになっている。
【0033】
なお、トナーセンサ33で検出されるのは筐体28内に貯留された現像剤Gのトナー比率Tであるが、貯留された現像剤Gは現像ロール32の回転によって感光体22に供給されるため、感光体22と現像ロール32の間の現像剤Gにおけるトナー比率Tも同様の比率となる。このため、本発明の実施形態におけるトナー比率T及びキャリア比率Cは、現像ロール32表面の単位面積(1平方センチメートル)あたりの比率を表している。
【0034】
一方、感光体22の回転方向Fで現像器30よりも下流側には、転写ロール35が設けられている。転写ロール35は、制御部18(図1参照)によってトナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっており、感光体22の表面のトナー像を中間転写ベルト14上に転写させる。ここで、各画像形成ユニット20によって形成された異なる色のトナー像は、互いに重なり合うように中間転写ベルト14上に転写される。これにより、中間転写ベルト14上にカラーのトナー像が形成される。
【0035】
感光体22の回転方向Fで転写ロール35よりも下流側には、クリーニングユニット40が設けられている。クリーニングユニット40は、感光体22に向けて開口部42Aが形成された筐体42を有している。また、クリーニングユニット40内には、感光体22表面に残留した現像剤G等の回収を促進するために潤滑剤J(回収促進剤)を感光体22表面に供給する潤滑剤供給手段46と、回収された残トナー等を貯留部(図示省略)に搬送する搬送部材52とが設けられている。
【0036】
潤滑剤供給手段46は、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)等を直方体状に成形した潤滑剤Jと、潤滑剤Jを保持する板状の保持部材48と、潤滑剤Jの下方に位置し、回転して潤滑剤Jを掻き取って感光体22の表面に供給する供給部材としてのブラシロール50と、ブラシロール50の回転方向で潤滑剤Jよりも下流側に設けられ、掻き取られた潤滑剤Jの飛散を抑えるカバー部材51とを備えている。潤滑剤Jは、感光体22の回転軸方向と長手方向が平行となるように配置されている。また、潤滑剤Jは、一方の面(図2では下面)がブラシロール50に対向し、反対側の面(上面)が保持部材48の板状部48Aの先端側に固定されている。
【0037】
保持部材48は、潤滑剤Jが固定された板状部48Aと、感光体22の回転軸方向を長手方向として両端部が筐体42に回転自在に支持された軸部48Bとで構成されている。これにより、潤滑剤Jの下面がブラシロール50に自重で押し付けられるようになっている。なお、潤滑剤Jは、ブラシロール50による掻き取りが進むにつれて軸部48Bを回転中心として下方側に移動する。
【0038】
ブラシロール50は、導電性を有し筐体42に回転可能に支持され断面形状が円形の軸部50Aと、軸部50Aの外周面から放射状に延びるブラシ繊維50Bとを有し、ブラシ繊維50Bが、潤滑剤Jの下面及び感光体22の表面に接触するように配置されている。また、軸部50Aの軸方向は、感光体22の回転軸方向に沿っており、ブラシロール50が感光体22と同方向に駆動回転するようになっている。ブラシロール50の軸部50Aには、制御部18(図1参照)により印加電圧が管理された電圧印加手段としての給電部54が配線を介して接続されている。
【0039】
ここで、感光体22が回転すると、ブラシロール50が感光体22と同方向に駆動回転し、ブラシ繊維50Bによって潤滑剤Jが掻き取られる。掻き取られた潤滑剤Jは、カバー部材51で堰き止められて飛散が抑えられ、ブラシ繊維50Bに付着する。そして、ブラシ繊維50Bに付着した潤滑剤Jは、ブラシ繊維50Bが感光体22の表面に接触した際に感光体22の表面に供給される。
【0040】
一方、筐体42の開口部42Aの外側上縁部には、ブレード44の一端が取付けられている。ブレード44は、弾性体の一例としてのゴム(例えば、ウレタンゴム、天然ゴム等)を板状に成形したものであり、感光体22の回転方向Fに対して逆方向に延びて他端部側が接触している。これにより、感光体22の表面に残留した残留トナー等が、ブレード44の端部によって筺体42内へ掻き落とされるようになっている。
【0041】
ブレード44で掻き落とされたトナーは、筐体42内に回転可能に設けられたオーガからなる搬送部材52により筐体42内の一方の側面に搬送され、排出口(図示省略)から排出されて、別途設けられた残トナー回収装置(図示省略)に搬送されるようになっている。また、ブレード44は、ブラシロール50により感光体22の表面に供給された潤滑剤Jを一端部で引き延ばして、潤滑剤Jの塗布層を形成するようになっている。
【0042】
ここで、感光体22表面の残トナーは、ブレード44の掻き落としによってクリーニングユニット40内に回収されるが、これだけではなく、ブラシロール50と感光体22の接触によっても回収が行われる。このため、ブラシロール50は、トナーの回収機能も有している。
【0043】
感光体22の回転方向Fでクリーニングユニット40よりも下流側には、発光して感光体22表面の電荷を除去する除電ランプ53が設けられている。なお、感光体22の回転方向Fで除電ランプ53よりも下流側に帯電器24が配置されており、除電ランプ53の発光により電荷が除去された感光体22に対して、帯電器24による帯電が行われるようになっている。
【0044】
一方、図1に示すように、中間転写ベルト14の搬送方向Eで4つの画像形成ユニット20よりも下流側には、転写装置60が設けられている。転写装置60は、中間転写ベルト14の内側に配置された第1ロール56と、中間転写ベルト14の外側に配置され第1ロール56と対向する第2ロール58とを有しており、第1ロール56と第2ロール58の少なくとも一方に電源(図示省略)から電圧を印加することで、第1ロール56と第2ロール58の間に電位差を生じさせ、中間転写ベルト14から記録用紙Pへのトナー像の転写を行うようになっている。
【0045】
ここで、画像形成装置10は、筐体12内で中間転写ベルト14の下方側に用紙収容部62が設けられており、用紙収容部62内には、記録用紙Pが収容されている。用紙収容部62の記録用紙Pは、搬送ロール(図示省略)で転写装置60に向けて搬送されると共に、位置合せロール64によって先端位置の通過タイミングが管理されている。そして、中間転写ベルト14上に形成されたトナー像は、第1ロール56と第2ロール58の間(A)に送りこまれ、搬送されてきた記録用紙Pに転写される。
【0046】
なお、中間転写ベルト14の外側で第1ロール56と対向する位置には、クリーニングロール66が配設されており、転写装置60で記録用紙Pに転写されずに中間転写ベルト14上に残留した残留トナーが、クリーニングロール66によって回収されるようになっている。
【0047】
また、記録用紙Pの搬送経路で転写装置60の下流側には、通電により発熱するヒータを内包した加熱ロール68と、加熱ロール68表面を加圧する加圧ロール69とからなる定着装置70が設けられている。ここで、定着装置70に搬送された記録用紙Pは、加熱ロール68と加圧ロール69とによって挟持搬送されることにより、記録用紙P上のトナーが溶融すると共に記録用紙Pに定着される。これにより、記録用紙P上に所望の画像が形成される。画像が形成された記録用紙Pは、画像形成装置10の外側へ排出される。
【0048】
一方、図3に示すように、制御部18は、画像形成装置10(図1参照)の各部を動作させるのに必要な各種設定値が記憶された記憶部36を有している。記憶部36は、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の半導体記憶素子で構成されている。
【0049】
記憶部36には、感光体22の回転制御を行うためのモータ(図示省略)の設定値や、帯電器24、現像ロール32、転写ロール35、及びブラシロール50に印加する電圧の設定値等が記憶されている。また、制御部18は、前述の給電部54を有しており、入力部34に入力された情報に基づいて、給電部54からブラシロール50への印加電圧を変更するようになっている。なお、中間転写ベルト14、露光器26、転写装置60、定着装置70の動作についても制御部18で行われるが、図示を省略している。
【0050】
次に、制御部18で決定されるブラシロール50への印加電圧について説明する。
【0051】
図4(a)には、現像ロール32(図2参照)表面の単位面積あたりのトナー比率Tと、キャリア比率Cとの関係を表すグラフAが示されている。前述のようにT+C=100%の関係があるので、グラフAにおいてトナー比率TがT1からT2へ減少すると、キャリア比率はC1からC2へ増加することになる。
【0052】
一方、図4(b)には、現像ロール32表面の単位面積あたりのキャリア比率Cと、ブラシロール50(図2参照)に印加する交流電圧の振幅ΔVとの関係を表すグラフBが示されている。ここで、キャリア比率CがC1からC2へ増加すると、磁気ブラシとしての剛性が高くなり、後述する残像発生メカニズムにより現像剤Gの添加剤による転写後の残像発生量が多くなる。
【0053】
このため、制御部18では、トナー比率がT1からT2に減少し、キャリア比率CがC1からC2に増加したとき、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅をΔV1(本実施形態では1.0kV)からΔV2(本実施形態では1.5kV)へ増加させて、添加剤の回収量を増やすように設定されている。なお、制御部18では、逆の場合にも対応するように設定されており、トナー比率がT2からT1に増加し、キャリア比率CがC2からC1に減少したとき、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅をΔV2からΔV1へ減少させる。
【0054】
ここで、図2において、ブラシロール50へ印加する交流電圧の振幅ΔVが大きい状態で印加を継続してしまうと、過剰な交流電圧を印加し続けることになり、NOx等の放電生成物が発生して感光体22表面に付着することになる。この放電生成物は、感光体22とブレード44との接触による摩擦力を増加させるため、ブラシロール50へ印加する交流電圧の振幅ΔVには、放電生成物が発生しにくいように上限値が設定されている。
【0055】
図5には、ブラシロール50へ印加する交流電圧の振幅ΔVがΔV1からΔV2に変更されるときの交流電圧波形が模式図で示されている。ここで、Δt1、Δt2は、変更前後の交流電圧の1周期を表しておりΔt1=Δt2となっている。そして、1/Δt1、1/Δt2が各波形の周波数となる。なお、V1は基準電圧を表しており、本実施形態における交流電圧の周波数は、1/Δt1=1/Δt2=800Hzとしている。
【0056】
また、Δt3は1枚目の記録用紙Pにおける画像形成工程(一の画像形成工程)の所要時間であり、Δt5は2枚目の記録用紙Pにおける画像形成工程(二の画像形成工程)の所要時間である。ここで、Δt3=Δt5である。Δt4は一の画像形成工程と二の画像形成工程の間の休止時間を表しており、制御部18(図3参照)では、この休止時間の間に印加電圧の振幅ΔVをΔV1からΔV2へ変更するように設定されている。
【0057】
次に、磁気ブラシの状態変化に対する感光体22表面の残留粒子の除去(スキャベンジ)状態について説明する。
【0058】
図6(a)、(b)に示すように、感光体22と現像ロール32の対向領域では間隔dの現像ギャップが形成されており、複数の穂立ちしたキャリアCからなる磁気ブラシがこの現像ギャップ中を移動することで現像が行われる。ここで、現像ギャップ中の中央の現像領域Qでは、磁気ブラシによって、感光体22表面の残留粒子のスキャベンジと感光体22表面へのトナーTの供給(現像)とが行われている。なお、図6(a)、(b)ではトナーTの図示を省略している。
【0059】
図7(a)に示すように、トナーTが少ない状態、即ちキャリア比率が高い状態では、各キャリアC間に侵入するトナーTの量が少ないため、キャリアCの粒子間距離が短く、キャリアCの粒子間に作用する磁気相互力が強くなって剛結状態となり、磁気ブラシとしての剛性(磁気ブラシの変形しにくさ)が高くなる。これにより、磁気ブラシによる感光体22表面の残留粒子のスキャベンジ力が大きくなる。
【0060】
ここで、図8(a)、(b)に示すように、キャリア比率が高く、磁気ブラシのスキャベンジ力が大きい状態では、感光体22表面に静電引力により付着した残留粒子としての添加剤K(現像剤Gの添加剤)が、磁気ブラシの移動により感光体22表面から除去される。
【0061】
一方、図7(b)に示すように、トナーTが多い状態、即ちキャリア比率が低い状態では、各キャリア間に侵入するトナーTの量が多いため、キャリアCの粒子間距離が長く、キャリアCの粒子間に作用する磁気相互力が弱まり、磁気ブラシとしての剛性が低くなる。これにより、磁気ブラシによる感光体22表面の残留粒子のスキャベンジ力が小さくなる。
【0062】
ここで、図8(c)、(d)に示すように、キャリア比率が低く、磁気ブラシのスキャベンジ力が小さい状態では、磁気ブラシが移動しても感光体22表面の添加剤Kを除去しにくいため、そのまま感光体22表面に添加剤Kが残留することになる。なお、図8(a)〜(d)において、感光体22は電荷発生層及び電荷輸送層を有しているが、説明を省略する。
【0063】
次に、記録用紙Pの現像剤像(画像)の残像発生メカニズムについて、図9(a)〜(f)を用いて説明する。図9(a)〜(f)には、感光体22表面の電位のグラフ及び感光体22の断面図がそれぞれ示されている。
【0064】
図9(a)に示すように、感光体22表面で特に小領域のベタ画像が形成された部位では、クリーニングユニット40及び除電ランプ53(図2参照)を通過した時点で添加剤Kが残留していることがある。このとき、負極性(−)に帯電した添加剤Kと正極性(+)の電荷を有する感光体22とが中和状態となって安定しているため、感光体22の表面電位はVAで安定している。
【0065】
続いて、図9(b)に示すように、画像形成工程が開始されると、帯電器24(図2参照)によって感光体22表面が負極性に帯電される。このとき、添加剤Kが付着した部位は中和状態となっているため、添加剤Kの表面も負極性に帯電し、感光体22の表面電位はVH(VAよりも負側)となる。
【0066】
続いて、図9(c)に示すように、露光器26(図2参照)によって照射光Lが照射された感光体22表面の露光領域(画像領域)Sでは、表面の負極性の電荷が輸送されて無くなり、添加剤Kが付着したままの状態となる。このとき、添加剤Kが付着した部位は電気的に中立状態となっているため、感光体22の露光領域Wの表面電位はVL(VHよりも正側)となる。
【0067】
続いて、図8(a)、(b)に示したように感光体22と現像ロール32の対向領域において、現像ロール32表面の磁気ブラシにより感光体22表面の添加剤Kが除去されると、図9(d)に示すように、感光体22表面の添加剤Kが付着していた部位では、正の電荷のみが残った状態となる。このとき、感光体22表面の正の電荷のみが残った部位では、表面電位がVB(VLよりも正側)となる。
【0068】
続いて、図9(e)に示すように、現像ロール32(図2参照)により感光体22表面の露光領域WにトナーT(1層目をTA、2層目をTBとする)が供給され、現像が行われる。このとき、露光領域Wの本来の表面電位はVLであり、トナーは1層目のTAだけ現像されればよいが、添加剤Kが付着していた部位では表面電位がVBとなっているため、VL−VBの電位差分だけ余計にトナーTが付着して2層目のTBが形成される。
【0069】
続いて、図9(f)に示すように、転写ロール35(図2参照)によって記録用紙P上にトナーTが転写される。このとき、記録用紙P上では、前述の2層目のトナーTBが過剰に付着しているため、画像に濃度差が現れる。この画像の濃度差が残像である。このように、本発明の実施形態における残像とは、感光体22表面に付着した添加剤Kを磁気ブラシが除去することにより発生するものである。
【0070】
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。
【0071】
図1に示すように、画像形成が開始されると、画像形成装置10では、制御部18によって各部の動作制御が行われ、各感光体22の表面が各帯電器24によって帯電される。そして、各露光器26から出力画像に対応した照射光Lが、帯電後の各感光体22の表面に照射され、各感光体22上に各色分解画像に応じた静電潜像が形成される。この静電潜像に対して、各現像器30が選択的に各色、すなわちY、M、C、Kのトナーを付与し、各感光体22上にY〜K色のトナー像が形成される。
【0072】
続いて、各感光体22上のトナー像は、各転写ロール35により中間転写ベルト14上に順次転写されて重ね合わされ、カラートナー像が形成される。そして、カラートナー像は、中間転写ベルト14の移動により転写装置60に搬送される。そのタイミングに同期して位置合せロール64から記録用紙Pが搬送され、記録用紙P上にカラートナー像が転写(最終転写)される。
【0073】
カラートナー像が転写された記録用紙Pは、定着装置70に搬送され、加熱ロール68と加圧ロール69とのニップ部を通過する。その際、加熱ロール68と加圧ロール69とから与えられる熱と圧力の作用により、カラートナー像が記録用紙Pに定着される。定着後、記録用紙Pは画像形成装置10の外側へ排出され、1枚目の記録用紙Pへのカラー画像形成が終了する。
【0074】
一方、図5及び図10(a)に示すように、画像形成が開始されて感光体22が回転すると、感光体22に接触しているブラシロール50が感光体22と同方向に駆動回転し、ブラシ繊維50Bが潤滑剤Jから微粒粉体状の潤滑剤JAを掻き取って感光体22の表面に供給する。そして、感光体22の表面に付着した潤滑剤JAは、ブレード44の端部で引き延ばされ薄層化される。
【0075】
また、ブラシロール50には、給電部54から交流電圧(振幅ΔV1=1.0kv、周波数800Hz)が印加される。感光体22表面に付着した残トナーは、感光体22表面とブラシロール50の間の電位変化(極性変化)により振動攪拌され付着力が低下すると共に潤滑剤JAに付着する。これにより、感光体22表面の残トナーTが、潤滑剤JAと共にブレード44で回収され、トナーTの回収が促進される。なお、添加剤Kの一部は、感光体22とブレード44の間を通過することになる。
【0076】
ここで、トナーセンサ33(図2参照)により検出されたトナー比率Tが、予め設定された比率よりも低下していたとき、1枚目の記録用紙Pの画像形成と2枚目の記録用紙Pの画像形成の間の休止時間Δt4において、制御部18(図3参照)が交流電圧の振幅ΔV1をΔV2に増加させる。この交流電圧の振幅の増加により、ブレード44通過前の感光体22表面の添加剤Kは振動攪拌され付着力が弱まる。
【0077】
そして、図10(b)に示すように、ブレード44による添加剤Kの回収率が上がり、現像ロール32との対向領域まで搬送される添加剤Kの総量が減少する。これにより、トナー比率Tが低下してキャリア比率Cが増加し磁気ブラシの剛性が高い状態であっても、感光体22表面に添加剤Kがほとんど存在しないため、添加剤Kによる残像の発生が抑えられる。
【0078】
なお、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔV1がΔV2へ増加することにより、感光体22の表面とブラシロール50の間で放電が発生して放電生成物Sが生成されることになるが、予め放電生成物Sの影響の出ない範囲で振幅ΔV2が設定されているため、感光体22表面に存在する放電生成物Sの量は極僅かとなっている。
【0079】
一方、現像器30(図2参照)にトナーTが補給され、トナーセンサ33で検出されるトナー比率Tが設定比率と同じ、もしくは設定比率よりも増加(キャリア比率Cが低下)したときは、磁気ブラシによる添加剤Kの掻き取り作用が低くなる。このため、逆の手順により、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔV2を振幅ΔV1へ減少させる。これにより、放電生成物Sの発生量が抑えられると共に感光体22表面とブレード44との接触部に作用する摩擦力が低下し、感光体22表面の摩耗量が低減されるので、感光体22の長期間の使用が可能となる。
【0080】
なお、本実施形態では、ブラシロール50に印加する交流電圧の周波数を変更しなかったが、他の実施例として、図11に示すように、振幅をΔV1からΔV2に増加させるときに周波数fを1/Δt1から1/Δt6(但しΔt1>Δt6)へ増加させて振動数を増加させ、添加剤Kをより多く回収するように設定してもよい。
【0081】
印加電圧の振幅ΔV及び周波数fの変更は、PWM(Pulse Width Modulation)制御によって行われ、即ち、入力された直流電圧を刻んでパルス状にし、パルスの数、間隔、幅等を制御して目的とする振幅ΔV、周波数fの交流出力を得る。
【0082】
次に、本発明の画像形成装置の第2実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0083】
図12には、第2実施形態の画像形成装置80の制御部86の構成が示されている。画像形成装置80は、前述の第1実施形態の画像形成装置10(図1参照)において計数部82及び電圧設定部84が追加され、制御部18が制御部86に置き換えられた構成となっている。なお、トナーセンサ33が制御部86に接続されているが、本実施形態では、現像器30内のトナー量の減少を検出するためだけに用いており、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔV及び周波数fの変更には用いていない。
【0084】
計数部82は、画像形成装置80で画像形成された記録用紙Pの累積枚数をカウントするカウンタであり、累積枚数の情報が電圧設定部84に送られるようになっている。なお、計数部82は、例えば、現像ロール32(図2参照)の端部にロータリーエンコーダを設けて、現像ロール32の累積回転数を計数することにより、累積枚数を求めるようにしてもよい。
【0085】
電圧設定部84は、画像形成の累積枚数と、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔV及び周波数fとの対応表が設定されており、計数部82から入力された累積枚数を対応表と照合し、給電部54に振幅ΔV及び周波数fを設定するようになっている。
【0086】
なお、ここでは、画像形成の累積枚数が1000枚を超えるような、画像形成装置80の長期間使用時点での交流電圧の振幅ΔV及び周波数fの変更を想定している。画像形成の累積枚数が1000枚を超える状態では、現像器30(図2参照)にトナー供給するトナーボトル(図示省略)で事前にトナーと混合されているキャリアが現像器30へ供給され、現像器30に存在するキャリアの劣化の程度が一定に収束する。これにより、穂立ちしたキャリアの剛性が一定値に収束する。また、外添剤としてトナーTに混合されたZnSt粒子と潤滑剤供給手段46のZnStとが感光体22の表面へ供給されているが、画像形成の累積枚数が1000枚を超える状態では、感光体22とブレード44のニップに存在するZnSt量が一定値に収束安定する。これらの理由により、磁気ブラシの剛性が低下することになるので、図13に示すように、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔVをΔV2からΔV1へ減少させ、周波数fを1/Δt6から1/Δt1(ただしΔt1>Δt6)へ減少させるように設定している。なお、振幅ΔV及び周波数fの変更タイミングは、画像形成工程の休止時間Δt4に行う。
【0087】
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。
【0088】
図12、13、14(a)に示すように、画像形成が開始されて感光体22が回転すると、感光体22に接触しているブラシロール50が感光体22と同方向に駆動回転し、潤滑剤JAが感光体22の表面に供給される。そして、感光体22の表面に付着した潤滑剤JAは、ブレード44の端部で引き延ばされ薄層化される。
【0089】
また、ブラシロール50には、給電部54から交流電圧(振幅ΔV2=1.5kV、周波数f=900Hz)が印加される。感光体22表面に付着した残トナーTは、感光体22表面とブラシロール50の間の電位変化(極性変化)により振動攪拌され付着力が低下すると共に潤滑剤JAに付着する。これにより、感光体22表面の残トナーTが、潤滑剤JAと共にブレード44で回収され、トナーTの回収が促進される。
【0090】
さらに、交流電圧の振幅がΔV2と大きく振動攪拌力が強いため、添加剤Kの感光体22表面への付着力が弱まりブレード44による添加剤Kの回収率が上がって、現像ロール32との対向領域まで搬送される添加剤Kの総量が減少する。これにより、感光体22表面に添加剤Kがほとんど存在しなくなるため、添加剤Kによる残像の発生が抑えられる。
【0091】
なお、感光体22の表面とブラシロール50の間で放電が発生して放電生成物Sが生成されるが、予め放電生成物Sの影響の出ない範囲で振幅ΔV2が設定されているため、感光体22表面に存在する放電生成物Sの量は僅かであり、感光体22の摩耗量は抑えられている。
【0092】
一方、図12、13、14(b)に示すように、計数部82でカウントされた値が例えば1000枚を超えたとき、電圧設定部84では、画像形成工程の休止時間Δt4において、ブラシロール50に印加される給電部54の交流電圧の振幅ΔVをΔV2からΔV1に減少させ、周波数fを1/Δt6から1/Δt1に減少させる。これにより、放電生成物Sの発生量が低減されると共に、感光体22表面とブレード44との接触部に作用する摩擦力が低下し、感光体22表面の摩耗量が低減されるので、感光体22の長期間の使用が可能となる。
【0093】
なお、ブラシロール50に印加される交流電圧の振幅ΔVが低下するため、ブレード44と感光体22の間を通過する添加剤Kの量は増加することになる。しかし、現像器30における磁気ブラシの剛性が低下しており、添加剤Kの掻き取り作用が低くなっているため、残像の発生は抑えられている。
【0094】
次に、本発明の画像形成装置の第3実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0095】
図15には、第3実施形態としての画像形成装置90の画像形成ユニット92が示されている。また、図16には、画像形成装置90の制御部94の構成が示されている。画像形成装置90は、第1実施形態の画像形成装置10(図1参照)において、トナーセンサ33に換えて温湿度センサ96が接続され、制御部18が制御部94に置き換えられた構成となっている。なお、各色に応じたY、M、C、Kの符号は省略している。
【0096】
温湿度センサ96は、筐体12内で現像器30の近くに配設されており、筐体12内の温度及び湿度を測定して制御部94に温度及び湿度の測定値を出力する。また、制御部94は、温度Tと湿度Hの表が記憶部36に記憶されており、例えば、温度がT1で湿度がH1のとき、装置内温湿度TH1が選択されるようになっている。
【0097】
さらに、制御部94は、装置内温湿度THに基づいて、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔV及び周波数fを変更するようになっている。なお、振幅ΔV及び周波数fの変更タイミングは、画像形成工程の休止時間となっている。
【0098】
図17は、画像形成装置90における装置内温湿度THと、ブラシロール50(図15参照)に印加される交流電圧の振幅ΔVとの関係を表すグラフCが示されている。グラフCでは、装置内温湿度TH1のときに振幅ΔV4、装置内温湿度TH2のときに振幅ΔV3となっている(ΔV3<ΔV4)。なお、図示は省略するが、振幅ΔV3のときの周波数fを1/Δt1、振幅ΔV4のときの周波数を1/Δt6としている。
【0099】
グラフCにおいて、装置内温湿度TH2が高温多湿状態であり、装置内温湿度TH1が低温低湿状態であるとすると、装置内温湿度TH1の方が装置内温湿度TH2よりも静電気が発生しやすく、クリーニングユニット40通過後の感光体22表面に残留する添加剤Kの量が増加することになる。このため、装置内温湿度TH1では、装置内温湿度TH2に較べて、ブラシロール50に印加される交流電圧の振幅ΔVがΔV4と大きくなり、周波数fが1/Δt6と高くなるように設定されている。
【0100】
なお、装置内温湿度THが低温低湿(TH1)から高温高湿(TH2)となったとき、現像器30内ではトナーTが凝集しやすくなり、現像ロール32の回転で多くのトナーTが付着して、磁気ブラシ(現像剤G)中のキャリア比率Cが低下することがある。このため、装置内温湿度THの変化は、現像ロール32表面の単位面積当りのトナー比率T及びキャリア比率Cの変化と関連付けられるものである。
【0101】
次に、本発明の第3実施形態の作用について説明する。
【0102】
図15、16、17に示すように、画像形成装置90において、画像形成開始前に装置内温湿度THが温湿度センサ96によって測定される。制御部94では、装置内温湿度TH1に基づいて、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔVをΔV4、周波数fを1/Δt6とする。
【0103】
続いて、画像形成が開始されると、制御部94によって画像形成装置90の各部の動作制御が行われ、帯電、露光、現像、一次転写、二次転写、及び定着の各工程が行われ、記録用紙Pにカラー画像が形成される。
【0104】
一方、クリーニングユニット40では、画像形成が開始されて感光体22が回転すると、感光体22の表面に潤滑剤JAを供給する。そして、感光体22の表面に付着した潤滑剤JAは、ブレード44の端部で引き延ばされ薄層化される。また、ブラシロール50には、給電部54から振幅ΔV4、周波数1/Δt6の交流電圧が印加される。これにより、転写工程が終了した感光体22表面に残留しているトナーT及び添加剤Kは振動攪拌され、これらの大半がブレード44で掻き落とされ回収される。
【0105】
続いて、画像形成装置90で画像形成工程が複数回行われたとき、温湿度センサ96によって装置内温湿度TH2が測定される。そして、制御部94では、装置内温湿度TH2に基づいて、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔVをΔV3に減少させ、周波数fを1/Δt1に低下させる。
【0106】
ここで、クリーニングユニット40では、ブラシロール50に印加される交流電圧の振幅ΔVがΔV3に減少し周波数fが1/Δt1に低下するため、振幅ΔVがΔV4、周波数fが1/Δt6のときと較べると、放電生成物Sの発生量が減少する。これにより、感光体22の表面に作用する摩擦力の増加が抑えられると共に感光体22の表面の摩耗量の増加が抑えられ、感光体22が長期間使用可能となる。
【0107】
なお、振幅ΔVが減少し周波数fが低下するが、画像形成装置90内が高温多湿状態となっており、静電気の発生が抑えられて感光体22表面に残留する添加剤Kの付着力が低下するため、ブレード44で回収される添加剤Kの量が増えて残像の発生が抑えられる。
【0108】
次に、本発明の画像形成装置の第4実施形態を図面に基づき説明する。なお、前述した第1〜第3実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1〜第3実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0109】
図18には、第4実施形態としての画像形成装置100の画像形成ユニット102が示されている。また、図19には、画像形成装置100の制御部104の構成が示されている。画像形成装置100は、第2実施形態の画像形成装置80(図12参照)において、制御部86にさらに温湿度センサ96が接続され、制御部86が制御部104に置き換えられた構成となっている。なお、各色に応じたY、M、C、Kの符号は省略している。
【0110】
制御部104は、電圧設定部84において、計数部82から入力される累積枚数データ、トナーセンサ33から入力されるキャリア比率C、及び温湿度センサ96から入力される温湿度データTHに基づいて、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔV及び周波数fを変更するようになっている。振幅ΔV及び周波数fの変更タイミングは、画像形成工程の休止時間となっている。
【0111】
なお、振幅ΔV及び周波数fの変更値は、例えば、初期設定振幅をΔV0、初期設定周波数をf0とし、Δ累積枚数増加による補正振幅ΔV5、補正周波数Δf1、キャリア比率C増加による補正振幅ΔV6、補正周波数Δf2、温湿度変化による補正振幅ΔV7、補正周波数Δf3としたとき、振幅ΔV=ΔV0+ΔV5+ΔV6+ΔV7、周波数f=f0+Δf1+Δf2+Δf3として求められる。ただし、振幅ΔV及び周波数fの変更値の決定は、このように単純な合計で求められるものだけでは無いため、予め設定表を準備しておき、各条件に合わせて選択するようにしてもよい。
【0112】
次に、本発明の第4実施形態の作用について説明する。
【0113】
図18、19に示すように、画像形成装置100において、画像形成開始前に装置内温湿度THが温湿度センサ96によって測定され、さらに、トナーセンサ33によってキャリア比率Cが測定される。制御部104は、装置内温湿度THとキャリア比率Cに基づいて、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔVをΔV0、周波数fをf0とする。
【0114】
続いて、画像形成が開始されると、制御部104によって画像形成装置100の各部の動作制御が行われ、帯電、露光、現像、一次転写、二次転写、及び定着の各工程が行われ、記録用紙Pにカラー画像が形成される。
【0115】
一方、クリーニングユニット40は、画像形成が開始されて感光体22が回転すると、感光体22の表面に潤滑剤JAを供給する。そして、感光体22の表面に付着した潤滑剤JAは、ブレード44の端部で引き延ばされ薄層化される。また、ブラシロール50には、給電部54から振幅ΔV0、周波数f0の交流電圧が印加される。これにより、転写工程が終了した感光体22表面に残留しているトナーT及び添加剤Kは振動攪拌され、これらの大半がブレード44で掻き落とされ回収される。
【0116】
続いて、画像形成装置100で1000枚程度の画像形成工程が行われたとき、制御部104では、計数部でカウントされた画像形成の累積枚数と、温湿度センサ96によって測定された装置内温湿度THと、トナーセンサ33で測定されたキャリア比率Cとに基づいて、ブラシロール50に印加する交流電圧の振幅ΔVと周波数fを変更する。
【0117】
ここで、クリーニングユニット40では、例えば、ブラシロール50に印加される交流電圧の振幅ΔVが減少し周波数fが低下したとき、感光体22表面の放電生成物Sの発生量が減少する。これにより、感光体22の表面に作用する摩擦力の増加が抑えられると共に感光体22の表面の摩耗量の増加が抑えられ、感光体22が長期間使用可能となる。
【0118】
なお、振幅ΔVが減少し周波数fが低下しても、画像形成装置100内が高温多湿状態となっている場合には、静電気の発生が抑えられて感光体22表面に残留する添加剤Kの付着力が低下するため、ブレード44で回収される添加剤Kの量が増えて残像の発生が抑えられる。
【0119】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0120】
潤滑剤Jはブラシロール50に自重の作用で接触しているため、消費量が増えて質量が減少すると、ブラシロール50との接触圧が低下してブラシロール50及び感光体22への塗布量が低下する可能性がある。このため、ブラシロール50の累積回転数をロータリーエンコーダを用いてカウントし、このカウント数が多くなったときに、印加する交流電圧の振幅ΔVを増加させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 画像形成装置
12 筐体(装置本体)
14 中間転写ベルト(転写部)
18 制御部(電圧印加手段)
22 感光体(潜像形成体)
28 筐体(現像剤貯留部)
32 現像ロール(現像剤像形成部材)
33 トナーセンサ(現像粒子量検出手段)
44 ブレード(回収部材)
50 ブラシロール(供給部材)
54 給電部(電圧印加手段)
60 転写装置(転写部)
80 画像形成装置
82 計数部(計数手段)
84 電圧設定部
86 制御部(電圧印加手段)
90 画像形成装置
94 制御部(電圧印加手段)
96 温湿度センサ(温湿度検知手段)
100 画像形成装置
104 制御部(電圧印加手段)
C キャリア(磁性粒子)
G 現像剤
J 潤滑剤(回収促進剤)
K 添加剤
P 記録用紙(記録媒体)
Q 現像領域(現像剤像形成部)
T トナー(現像粒子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に回転可能に設けられ、表面に潜像が形成される潜像形成体と、
前記潜像形成体の潜像を現像される現像粒子と磁力により穂立ちして該現像粒子を現像させる磁性粒子と添加剤とを有する現像剤で顕在化して現像剤像を形成する現像剤像形成部材と、
前記現像剤像形成部材で形成された現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、
前記潜像形成体の表面に接触して設けられ、転写後の前記潜像形成体の表面に残留する現像剤を回収する回収部材と、
前記潜像形成体の表面に接触して回転可能に設けられ、転写後の前記潜像形成体の表面に残留する現像剤の回収を促進させる回収促進剤を前記潜像形成体に供給する供給部材と、
前記現像剤像形成部材の現像剤像形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率の変化に合わせて振幅を変更した交流電圧を前記供給部材に印加する電圧印加手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記現像剤像形成部材の現像剤像形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率が、予め設定された設定比率よりも前記現像粒子が少ない側に変化したとき、前記電圧印加手段が、予め設定された印加電圧よりも振幅の大きい交流電圧を印加する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像剤形成部材に供給される現像剤を貯留する現像剤貯留部が設けられ、
前記現像剤貯留部には、貯留された現像粒子量を検出する現像粒子量検出手段が設けられ、
前記現像粒子量検出手段で検出された現像粒子量から現像剤中の現像粒子量と磁性粒子量の比率を求めて前記電圧印加手段で印加される交流電圧の振幅を変更する請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像剤像形成部材の現像剤像形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率が、予め設定された設定比率よりも前記現像粒子が多い側に変化したとき、前記電圧印加手段が予め設定された振幅の交流電圧を前記供給部材に印加し、予め設定された設定比率よりも前記現像粒子が少ない側に変化したとき、前記電圧印加手段が予め設定された振幅よりも大きい振幅の交流電圧を前記供給部材に印加する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写部で転写される記録媒体の枚数を計数する計数手段と、
前記計数手段で計数される記録媒体の枚数に合わせて前記電圧印加手段が印加する交流電圧の振幅を設定する電圧設定部と、が設けられた請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記装置本体の内部の温度及び湿度を検知する温湿度検知手段が設けられ、
前記電圧印加手段は、該温湿度検知手段で検知された温度及び湿度に合わせて、前記供給部材に印加する交流電圧の振幅を補正する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電圧印加手段が、一の画像が形成される第1画像形成工程と、二の画像が形成される第2画像形成工程の間で交流電圧の振幅を変化させる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電圧印加手段は、前記供給部材に印加する交流電圧の周波数を変更可能に設けられ、前記現像剤像形成部材の現像剤形成部の単位面積当りの前記現像粒子量と前記磁性粒子量の比率の変化に合わせて、振幅及び周波数を変更した交流電圧を前記供給部材に印加する請求項1、2、3、5、6、7のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−210692(P2010−210692A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53965(P2009−53965)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】