説明

画像形成装置

【課題】印刷時のミスによるインクや用紙等の消費を抑えることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】複数枚からなる印刷ジョブの一部を試行ページとして印刷し、その後、印刷ジョブの続行が指示された場合に印刷ジョブを完了させる。これにより、印刷された一部のページを見て印刷内容を確認し、その結果に応じて印刷ジョブを続行若しくは中断することができる。これにより、印刷ミス(例えば印刷対象ファイルの選択ミスや印刷設定の入力ミス等)によるインクや用紙等の消費を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特にリムーバブルメディアやその他の記憶媒体に格納された電子ファイルを印刷する機能を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リムーバブルメディアに格納された電子ファイルを、コンピュータ(PC)などの情報端末を使用せずに印刷する機能を備えたプリンタが開発されている。この種のプリンタではリムーバブルメディアをプリンタに装着することにより、簡単にリムーバブルメディアに格納された電子ファイルを印刷することが可能である。また、電子ファイルとして、デジタルスチルカメラなどで作成されたビットマップ画像ファイルだけではなく、PC上などで作成されたPDFファイルなどのドキュメントファイルも印刷対象とすることができるようになっている。
【0003】
こうしたプリンタでは、ユーザが操作パネルに設けられたディスプレイで電子ファイルの内容や印刷条件等を確認しながら、各種ボタンにより印刷対象とする電子ファイルを選択したり、印刷条件の設定を行ったりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−168206公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プリンタに搭載されるディスプレイやボタン等のユーザインターフェイスは、コスト等の関係から、PC等に搭載されるユーザインターフェイスに比べると、貧弱なものになりがちである。そのため、ユーザが電子ファイルの内容を十分に確認できずに誤った電子ファイルを印刷対象として選択してしまったり、あるいは印刷条件の設定を誤ったりして、その結果意図しない印刷物が出力されてしまうおそれがあった。特にドキュメントファイル等の複数ページからなる電子ファイルや、複数部の印刷を行う際には、上記のような印刷ミスを犯すと、インクや用紙等が大量に消費されることになり、損失が大きい。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、印刷時のミスによるインクや用紙等の消費を抑えることが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る画像形成装置は、印刷対象のファイルを選択可能な選択手段と、前記選択手段により選択されたファイルを印刷対象とする印刷ジョブを入力可能な入力手段と、前記印刷ジョブの続行を指示可能な指示手段と、前記入力手段により入力された複数枚からなる印刷ジョブの一部を試行ページとして印刷し、その後、前記指示手段により前記印刷ジョブの続行が指示された場合に前記印刷ジョブを完了させる試行印刷を実行する印刷手段と、前記試行印刷を実行するか否かを設定する設定手段と、を備え、前記印刷手段は、前記入力手段より印刷ジョブが入力された際に、前記設定手段により前記試行印刷を実行しない設定とされている場合には、前記試行ページを印刷せずに前記印刷ジョブを実行し、前記設定手段は、前記印刷ジョブの印刷条件が初期値から変更されている場合は前記試行印刷を実行する設定とし、前記初期値から変更されてない場合は前記試行印刷を実行しない設定とすることを特徴とする。
【0008】
第1の発明によれば、印刷された一部のページを見て印刷内容を確認し、その結果に応じて印刷ジョブを続行若しくは中断することができる。これにより、印刷ミス(例えば印刷対象ファイルの選択ミスや印刷設定の入力ミス等)によるインクや用紙等の消費を抑えることができる。また、試行ページを印刷する必要がない場合には試行印刷を実行させないことができるため、都合がよい。さらに、印刷設定が初期値から変更された場合には印刷内容の確認の必要性が高いと考えられ、そのような場合にのみ試行印刷が実行されるため、使い勝手が良い。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記設定手段は、常に前記試行印刷を実行する第1選択肢、常に前記試行印刷を実行しない第2選択肢、及び、前記印刷ジョブの印刷条件が初期値から変更されている場合は前記試行印刷を実行し、前記初期値から変更されてない場合は前記試行印刷を実行しない第3選択肢から選択された選択肢に従って、前記試行印刷を実行するか否かを設定する。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記印刷手段は、前記試行ページとして一つの印刷ジョブに対し1枚のみを印刷する。
【0011】
第3の発明によれば、印刷ミスがあった場合に、インクや用紙等の消費を最小限に抑えることができる。
【0012】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、前記印刷ジョブに含まれる複数のページの中から所定の抽出条件を満たすページを抽出する抽出手段を備え、前記印刷手段は、前記抽出手段により抽出されたページの少なくとも一部を前記試行ページとして印刷する。
【0013】
第4の発明によれば、ファイル内容を確認しやすいページを抽出することで、ユーザが内容確認を行うためのページを探す手間を省くことができる。
【0014】
第5の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、前記印刷手段により前記試行ページとして印刷するページを指定する指定手段を備える。
【0015】
第5の発明によれば、例えば特定のページを見れば、印刷されたファイルの内容が容易に把握できるというような場合に都合がよい。
【0016】
第6の発明は、第1から第5のいずれか一つの発明において、前記印刷手段は、前記印刷ジョブの続行が指示された場合に、既に印刷されたページを除く全てのページを印刷する。
【0017】
第6の発明によれば、印刷ジョブの続行が指示された場合に、印刷ジョブに含まれるページのうち、印刷済みのページを除く全てのページを印刷するため、インクや用紙等の無駄な消費を無くすことができる。
【0018】
第7の発明は、第1から第6のいずれか一つの発明において、前記印刷ジョブに基づいて前記印刷対象のファイルから前記印刷手段に供給される印刷データを生成する画像処理を行う画像処理手段を備え、前記画像処理手段は、前記印刷手段により印刷ジョブに含まれる試行ページが印刷された後、前記指示手段により指示がなされるまでの間に、その印刷ジョブに基づく画像処理を実行する。
【0019】
第7の発明によれば、印刷ジョブの続行を指示した場合に、その印刷が完了するまでの
時間を短縮することができる。
【0020】
第8の発明は、第1から第7のいずれか一つの発明において、試行ページの変更を行う変更手段と、前記印刷手段は、前記試行ページを印刷した後、前記変更手段により試行ページが変更された場合には、印刷ジョブに含まれる別のページを試行ページとして印刷する。
【0021】
第8の発明によれば、試行ページとして印刷されたページで、十分に内容の確認ができない場合には、別のページを試行ページとして印刷することができるため、使い勝手がよい。また、一度に多数のページを試行ページとして印刷する場合に比べて、インクや用紙等の消費を抑えることができる。
【0022】
第9の発明は、第1から第8のいずれか一つの発明において、前記印刷手段は、一つの印刷ジョブについて前記試行印刷を実行する際に、他の印刷ジョブを実行しない専有モードで動作し、前記試行ページを印刷後、前記指示手段から所定期間指示がない場合に前記専有モードを解除する。
【0023】
第9の発明によれば、試行ページを印刷した後、何らかの事情で指示の入力が行われない場合に、印刷ジョブの実行を中断し、専有モードを解除することで、他のユーザの作業に支障が生じることを回避できる。
【0024】
第10の発明は、第1から第9のいずれか一つの発明において、前記印刷手段は、前記印刷ジョブの印刷条件が、集約印刷若しくは両面印刷である場合には、前記試行印刷の際に、その印刷ジョブにおいて前記試行ページとされるページと同じ被記録媒体上に印刷されるページを前記試行ページとともに印刷する。
【0025】
第10の発明によれば、集約印刷または両面印刷を行う場合に、印刷ジョブにおいて試行ページとされるページと同じ被記録媒体上に印刷されるページが試行ページと共に印刷される。従って、試行ページとして印刷された印刷物でも、印刷ジョブとして印刷されるものと同様となる。
【0026】
第11の発明は、第1から第10のいずれか一項に記載の画像形成装置において、前記印刷手段が前記試行ページを印刷後、印刷ジョブの実行を中断した場合に、その印刷ジョブに含まれるページのうちいずれが印刷済みかを示す印刷中断情報を記憶する記憶手段を備える。
【0027】
第11の発明によれば、例えば、印刷ジョブを中断した場合に、後で印刷中断情報を参照することで、印刷していないページのみを印刷すること等ができる。
【0028】
第12の発明は、第11の発明において、前記印刷手段は、前記印刷中断情報を参照して、中断された印刷ジョブに含まれるページのうち印刷済みのページを除くページのみを印刷可能である。
【0029】
第12の発明によれば、例えば複数のファイルからそれぞれ一部のページのみを印刷しておき、後に、必要なファイルの未印刷ページを印刷するといった使い方ができる。これにより、始めから全ページを印刷する場合に比べて無駄を無くすことできる。
【0030】
第13の発明は、第1から第12のいずれか一つの発明において、可搬記憶媒体と通信接続可能な接続手段を備え、前記選択手段は、前記可搬記憶媒体に記憶されたファイルから印刷対象のファイルを選択可能である。
【0031】
第13の発明によれば、可搬記憶媒体は、一般的には、常時コンピュータ等に接続されているものではないため、そこに記憶されたファイルの内容を確認しづらく、印刷ミスの可能性が比較的高いと考えられるため、本発明を適用する効果が高い。
【0032】
第14の発明は、第1から第13のいずれか一つの発明において、前記印刷手段は、複数ページから構成されるファイルを印刷対象とする印刷ジョブを実行可能である。
【0033】
第14の発明によれば、ドキュメントファイル等の複数ページからなるファイルの印刷を行う際に本発明を適用することで、印刷ミスにより無駄な消費が生じることを効果的に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、複数枚からなる印刷ジョブの一部を試行ページとして印刷し、その後、印刷ジョブの続行が指示された場合に印刷ジョブを完了させる。これにより、印刷された一部のページを見て印刷内容を確認し、その結果に応じて印刷ジョブを続行若しくは中断することができる。これにより、印刷ミス(例えば印刷対象ファイルの選択ミスや印刷設定の入力ミス等)によるインクや用紙等の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態における複合機の外観を示す斜視図
【図2】複合機の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】試行印刷機能設定処理の流れを示すフローチャート
【図4】ダイレクト印刷処理の流れを示すフローチャート
【図5】メモリ内ファイル選択時処理の流れを示すフローチャート
【図6】メモリ内ファイル選択時処理の流れを示すフローチャート
【図7】印刷対象ページ決定処理の流れを示すフローチャート
【図8】試行印刷の実行例を説明する図
【図9】中断ファイル管理テーブルの例を示す図
【図10】中断ファイル選択時処理の流れを示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に本発明の一実施形態について図1から図10を参照して説明する。
【0037】
(複合機の外観構成)
図1は、本発明の画像形成装置の一例である複合機1の外観を示す斜視図である。この複合機1は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能などを備えた多機能周辺装置である。
【0038】
複合機1は、図1に示すように、本体部2の上方に原稿を読み取るための読取部3を備えている。読取部3の前部には、複数のボタンを有しユーザによる各種の入力操作が可能な操作部4(選択手段、入力手段、指示手段、変更手段、設定手段の一例)と、液晶ディスプレイ等を有する表示部5と、USB接続部6(接続手段の一例)とが設けられている。
【0039】
(複合機の電気的構成)
図2は、複合機1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。複合機1は、同図に示すように、CPU10(印刷手段、抽出手段、画像処理手段の一例)、ROM11、RAM12(記憶手段の一例)、NVRAM(不揮発性メモリ)13、ネットワークインターフェイス14、ファクシミリインターフェイス15、既述のUSB接続部6を備え、こ
れらに印刷部16(印刷手段の一例)や、既述の読取部3、操作部4、表示部5などが接続されている。
【0040】
ROM11には、この複合機1の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU10は、ROM11から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM12またはNVRAM13に記憶させながら各部の制御を行う。
【0041】
ネットワークインターフェイス14は、通信回線(図示せず)を介して外部のコンピュータ等に接続され、このネットワークインターフェイス14を介して相互のデータ通信が可能となっている。ファクシミリインターフェイス15は、電話回線(図示せず)に接続され、このファクシミリインターフェイス15を介して外部のファクシミリ装置等とファクシミリデータの通信が可能となっている。USB接続部6には、USBメモリ20(可搬記憶媒体の一例)等が着脱可能に接続される。印刷部16は、印刷データに基づいて用紙などの被記録媒体上に画像を形成する。
【0042】
(試行印刷機能設定処理)
本複合機1は、USBメモリ20等に記憶されたファイルをコンピュータ(PC)などの情報端末装置を使用せずに印刷するダイレクト印刷処理を実行することが可能である。また、複合機1は、後述するように、ダイレクト印刷処理の際、印刷ジョブに含まれる一部のページを先に印刷する試行印刷機能を備えている。次に、ダイレクト印刷時における試行印刷機能の動作状態を設定するために実行される試行印刷機能設定処理について説明する。図3は、試行印刷機能設定処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
試行印刷機能設定処理は、ユーザにより操作部4から所定の指示が入力されることにより開始される。CPU10は、試行印刷機能設定処理を開始すると、まず表示部5に試行印刷機能をオンにするか、オフにするかを選択するための画面を表示する(S101)。ユーザによる操作部4からの入力により「オフ」が選択された場合(S102:No)には、試行印刷機能を「オフ」に設定する(S103、詳細には設定値をNVRAM13に記憶する。以下同様)。
【0044】
また、「オン」が選択された場合(S102:Yes)には、表示部5に「印刷条件がデフォルトから変更された場合に試行印刷機能をオンにする」かあるいは「試行印刷機能を常にオンにする」かを選択するための選択肢を表示する(S104)。そして、ユーザにより「試行印刷機能を常にオンにする」が選択された場合(S105:Yes)には、試行印刷機能を「常にオン」に設定し(S106)、それが選択されなかった場合(S105:No)には、試行印刷機能を「条件変更時にオン」に設定する(S107)。
【0045】
(ダイレクト印刷処理)
図4は、ダイレクト印刷処理の流れを示すフローチャートであり、図5,6は、ダイレクト印刷処理内で実行されるメモリ内ファイル選択時処理の流れを示すフローチャート、図7は、メモリ内ファイル選択時処理内で実行される印刷対象ページ決定処理の流れを示すフローチャートである。また、図8は、試行印刷の実行例を説明する図であり、図9は、中断ファイル管理テーブルの例を示す図、図10は、ダイレクト印刷処理内で実行される中断ファイル選択時処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
ダイレクト印刷処理は、ユーザがUSB接続部6にUSBメモリ20等を装着し、操作部4からダイレクト印刷の実行指示を入力することにより開始される。CPU10は、ダイレクト印刷処理を開始すると、図4に示すように、まず専有モードを開始する(S201)。この専有モードでは、操作部4から他のジョブ(コピーやダイレクト印刷などの印刷ジョブの他、スキャンやファクシミリ送信等のジョブ)の入力を受け付けない状態とな
る。さらに、この専有モード実行中に、ネットワークインターフェイス14を介して外部のコンピュータ等から印刷ジョブやファクシミリ送信等のその他のジョブが入力された場合には、そのジョブを直ぐには実行せずにキューに登録し、専有モードの解除後にキューに登録されたジョブを実行する。
【0047】
CPU10は、続いてRAM12に記憶された中断ファイル管理テーブルに中断ファイル(後述する)が登録されているかを判断する(S202)。中断ファイルが登録されていない場合(S202:No)には、表示部5にUSBメモリ20内に記憶されたファイルのリストを表示する(S203)。
【0048】
また、中断ファイルが登録されている場合(S202:Yes)には、USBメモリ20内のファイルリストに加え、「中断ファイルの印刷」を指示するための項目を選択肢として表示する(S204)。S203またはS204にて操作部4からの入力によりファイルリストのいずれかのファイルが選択された場合(S205:Yes)には、以下に述べるメモリ内ファイル選択時処理を実行し(S206)、S205にて「中断ファイルの印刷」が選択された場合(S205:No)には、後述する中断ファイル選択時処理を実行する(S207)。
【0049】
CPU10は、図5及び図6に示すメモリ内ファイル選択時処理を開始すると、まず表示部5に印刷条件の設定画面を表示する(S301)。ここで、ユーザは、用紙サイズ、集約印刷、両面印刷などの各種の印刷条件を操作部4により設定することができる。より具体的には、用紙サイズの設定では、「A4縦」「A4横」「A3縦」等の選択肢から一つを選択することができ、集約印刷の設定では、「1in1(用紙1枚の片面に1ページを印刷する。即ち集約印刷を行わない。)」「2in1」「4in1」等の選択肢から一つを選択することができ、さらに両面印刷の設定では、「オン」または「オフ」のいずれかを選択することができる。
【0050】
また、各印刷条件は、例えば用紙サイズ「A4縦」、集約印刷「1in1」、両面印刷「オフ」の値がそれぞれ初期値(デフォルト)として設定されており、それらを変更する必要がない場合にはそのままそれらの値を設定することができる。操作部4から設定完了を入力すると、前述のファイルリストから選択されたファイルを印刷対象とし、設定された印刷条件に基づく印刷を指示する印刷指令、すなわち印刷ジョブが登録(入力)される。
【0051】
続いて、試行印刷機能がオフに設定されているかを判断し(S302)、S103の処理によってオフに設定されている場合(S302:Yes)には、印刷対象として選択されたファイルの全ページについて画像処理を行い、生成した印刷データを印刷部16に引き渡して、印刷ジョブに含まれる全ページの印刷を実行する(S303)。その後、このメモリ内ファイル選択時処理を抜け、専有モードを解除して(図4のS208)、ダイレクト印刷処理を終了する。これにより、他の印刷ジョブ等のジョブを処理可能な状態となる。
【0052】
また、図5のS302にて、試行印刷機能がオフ以外に設定されている場合(S302:No)には、S106の処理によって試行印刷機能が「常にオン」に設定されているかを判断する(S304)。S107の処理によって「条件変更時にオン」が設定されている場合(S304:No)には、印刷条件がデフォルトから変更されているかを判断する(S305)。そして、印刷条件がデフォルトから変更されていない場合(S305:No)には、S303に進み、印刷ジョブに含まれる全ページの印刷を行う。
【0053】
また、S305にて、印刷条件がデフォルトから変更されている場合(S305:Ye
s)、若しくはS304にて、S106の処理によって試行印刷機能が「常にオン」に設定されている場合(S304:Yes)には、表示部5に「試行印刷」及び「全ページ印刷」の2つの選択肢を表示する(S306)。そして、操作部4の操作により「全ページ印刷」が選択された場合(S307:Yes)には、S303に進み、印刷ジョブに含まれる全ページを印刷する。
【0054】
また、「試行印刷」が選択された場合(S307:No)には、以下に示す印刷対象ページ決定処理を実行する(S308)。なお、上述のS306,S307の処理(「全ページ印刷」の選択肢表示)をなくし、S305にて、印刷条件がデフォルトから変更されている場合(S305:Yes)、若しくはS304にて、試行印刷機能が「常にオン」に設定されている場合(S304:Yes)には、常にS308以下の処理(試行印刷処理)を実行するように構成しても良い。
【0055】
CPU10は、S308の印刷対象ページ決定処理を開始すると、図7に示すように、まず表示部5に試行印刷を行うページ(試行ページ)を選定するための方法を選択するための画面を表示する(S401)。ここでは、例えば「指定ページのみ」「指定ページまで」「先頭ページ」「カラー文字含む最初のページ」「画像を含む最初のページ」等の選択肢が表示され、ユーザはそれらの項目のうちから一つを操作部4により選択することができる。
【0056】
そして、「指定ページのみ」または「指定ページまで」が選択された場合(S402:Yes)には、表示部5に試行ページとして指定するページの番号を入力するための画面を表示し、そこでユーザにより操作部4から入力されたページ番号を取得する(S403)。これにより、「指定ページのみ」が選択された場合には、印刷ジョブに含まれるページのうち、入力された番号のページが試行ページとして選定され、「指定ページまで」が選択された場合には、最初のページから入力された番号のページまでのページが試行ページとして選定される。
【0057】
また、S401にて、「カラー文字を含む最初のページ」または「画像を含む最初のページ」が選択された場合(S404:Yes)には、印刷対象のファイルの内容を検索し、印刷ジョブに含まれるページのうち、それぞれの条件(抽出条件の一例)に当てはまるページを試行ページとして抽出する(S405)。なお、条件に当てはまるページが見つからない場合には、例えば、最初のページを試行ページとして選定する。また、S401にて「先頭ページ」が選択された場合(S404:No)には、印刷ジョブに含まれるページのうちの最初のページを試行ページとして選定する(S406)。
【0058】
次に、CPU10は、試行ページの印刷時に印刷対象とするページを決定する(S407)。ここで、処理中の印刷ジョブにおいて、印刷条件として集約印刷または両面印刷が設定され、かつ試行ページとして選定されたページと同じ用紙上に試行ページ以外のページが印刷される場合には、そのページを試行ページとともに印刷対象とする。また、印刷ジョブにおいて、印刷条件として集約印刷及び両面印刷のいずれも設定されていない場合(即ち用紙1枚につき1ページのみを印刷する場合)、若しくは、試行ページとして選定されたページと同じ用紙上に試行ページ以外のページが印刷されない場合には、試行ページのみを印刷対象とする。
【0059】
例えば、図8に示すように、印刷ジョブの5ページ目が試行ページとして選定された場合に、集約印刷が「2in1」、両面印刷が「オン」の設定であると、5ページ目と同じ用紙上に印刷される6,7,8ページ目が5ページ目とともに印刷対象となる。
【0060】
そして、CPU10は、上記のようにして印刷対象のページとして決定されたページに
基づいて画像処理を行い、生成した印刷データを印刷部16に引き渡して印刷を行う(図5のS309)。これにより、試行ページを含む印刷対象のページが印刷条件に従って用紙に印刷されるため、ユーザは、印刷されたページを見て印刷対象のファイルの選択が正しいか、あるいは印刷条件の設定が適切かどうかを判断することができる。
【0061】
続いてCPU10は、表示部5に「印刷中断」「残りページ印刷」「全ページ印刷」「再試行」「終了」等、次に行う動作を指示するための選択肢を表示し(S310)、そして、印刷準備処理を行う(S311)。ここでは、印刷ジョブに含まれる未印刷のページに基づいて印刷データを生成する画像処理を行い、一定期間経過後に操作部4のボタンの押し下げを確認する(S312)。
【0062】
そして、操作部4から入力がない場合(S312:No)には、所定のタイムアウト期間が経過したかを判断し(S313)、タイムアウト期間が経過していない場合(S313:No)には、S311に戻って画像処理を続行し、一定期間経過後にS312にて再び操作部4のボタンの入力があるかを確認する。
【0063】
操作部4のボタンの入力がないままタイムアウト期間が経過した場合(S313:Yes)、若しくはS310にて「印刷中断」が選択された場合(S314:Yes)には、画像処理を中断し、処理中の印刷ジョブに関する情報を中断ファイル管理テーブル(印刷中断情報の一例)に登録する。この中断ファイル管理テーブルは、RAM12に記憶されており、図9に示すように、印刷対象のファイル(中断ファイルという)の名称と、印刷条件の設定値と、印刷済みのページ番号とが記録される。その後、このメモリ内ファイル選択時処理を抜け、図4のS209に進んで専有モードを解除してから、ダイレクト印刷処理を終了する。
【0064】
S310の動作選択画面にて、「残りページ印刷」が選択された場合(S316:Yes)には、印刷ジョブに含まれるページのうち既に印刷したページを除くページを印刷する(S317)。この場合には、先に印刷されたページと後に印刷されたページとを合わせて全てのページを得ることができる。
【0065】
また、S310の動作選択画面にて、「全ページ印刷」が選択された場合(S318:Yes)には、先に印刷したページを含めて印刷ジョブに含まれる全てのページを印刷する(S319)。この場合には、元のファイルの全てのページが順序を変更しない状態で出力される。
【0066】
また、S310の動作選択画面にて、「再試行」が選択された場合(S320:Yes)には、S308に戻り、再び印刷対象ページ決定処理(図7参照)を実行する。これにより、ユーザが試行ページとして印刷されたページを見ても、印刷対象のファイルの選択が正しいか等の判断ができないような場合には、「再試行」を選択することで、他のページを試行ページとして出力することができる。
【0067】
S310の動作選択画面にて「終了」が選択された場合(S320:No)、若しくはS317、S319にて印刷が終了した場合には、このファイル選択時処理を抜け、図4のS209にて専有モードを解除してから、ダイレクト印刷処理を終了する。
【0068】
さて、前述のように、図4において、中断ファイル管理テーブルに登録された中断ファイルが有った場合には(S202:Yes)、USBメモリ20内のファイルリストに加え、「中断ファイル印刷」との項目が表示される(S204)。ここで、「中断ファイル印刷」が選択された場合(S205:No)には、以下の中断ファイル選択時処理が実行される(S207)。
【0069】
CPU10は、中断ファイル選択時処理を開始すると、図10に示すように、まず表示部5に中断ファイル管理テーブルに登録された中断ファイルのリストを表示する(S501)。そのリストの中から、ユーザが操作部4により一つの中断ファイルを選択すると(S502)、中断ファイル管理テーブルの情報に基づいて、選択された中断ファイルを印刷対象として未印刷のページをもとの印刷条件に従って印刷する(S503)。なお、ここでは、未印刷のページだけでなく、中断ファイルの全ページの印刷を指示できるようにしても良い。
【0070】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、複数枚からなる印刷ジョブの一部を試行ページとして印刷し、その後、印刷ジョブの続行が指示された場合に印刷ジョブを完了させる。これにより、印刷された一部のページを見て印刷内容を確認し、その結果に応じて印刷ジョブを続行若しくは中断することができる。これにより、印刷ミス(例えば印刷対象ファイルの選択ミスや印刷設定の入力ミス等)によるインクや、現像剤、用紙等の消費を抑えることができる。
【0071】
また、試行ページとして一つの印刷ジョブに対し1枚のみを印刷することで、印刷ミスがあった場合に、インクや用紙等の消費を最小限に抑えることができる。
【0072】
また、印刷ジョブに含まれる複数のページの中から抽出条件を満たすページを抽出し試行ページとして印刷する。これにより、ファイル内容を確認しやすいページを抽出することで、ユーザが内容確認を行うためのページを探す手間を省くことができる。
【0073】
また、試行ページとして印刷するページを指定することができるため、例えば特定のページを見れば、印刷されたファイルの内容が容易に把握できるというような場合に都合がよい。
【0074】
また、印刷ジョブの続行が指示された場合に、印刷ジョブに含まれるページのうち、印刷済みのページを除く全てのページを印刷することで、インクや用紙等の無駄な消費を無くすことができる。
【0075】
また、試行ページが印刷された後、操作部4から指示が入力されるまでの間に、画像処理を実行するため、印刷ジョブの続行を指示した場合に、その印刷が完了するまでの時間を短縮することができる。
【0076】
また、試行ページとして印刷されたページで、十分に内容の確認ができない場合には、別のページを試行ページとして印刷することができるため、使い勝手がよい。また、一度に多数のページを試行ページとして印刷する場合に比べて、インクや用紙等の消費を抑えることができる。
【0077】
また、試行ページを印刷した後、何らかの事情で指示の入力が行われない場合に、印刷ジョブの実行を中断し、専有モードを解除することで、他のユーザの作業に支障が生じることを回避できる。
【0078】
また、試行ページを印刷する必要がない場合には試行印刷を実行させないことができるため、都合がよい。
【0079】
また、印刷条件の設定が初期値(デフォルト)から変更された場合には印刷内容の確認の必要性が高いと考えられ、そのような場合にのみ試行印刷が実行されるようにすることで、使い勝手が良好になる。
【0080】
また、集約印刷または両面印刷を行う場合に、印刷ジョブにおいて試行ページとされるページと同じ被記録媒体上に印刷されるページが試行ページと共に印刷される。従って、試行ページとして印刷された印刷物でも、印刷ジョブとして印刷されるものと同様となる。
【0081】
また、試行ページの印刷後に印刷ジョブの実行を中断した場合に、その印刷ジョブに含まれるページのうちいずれが印刷済みかを示す情報が中断ファイル管理テーブルとして記憶される。これにより、例えば、印刷ジョブを中断した場合に、後で中断ファイル管理テーブルの情報を参照することで、印刷していないページのみを印刷すること等ができる。
【0082】
さらに、中断ファイル管理テーブルを参照して、中断された印刷ジョブに含まれるページのうち印刷済みのページを除くページのみを印刷可能である。従って、例えば複数のファイルからそれぞれ一部のページのみを印刷しておき、後に、必要なものだけを全ページ印刷するといった使い方ができる。これにより、始めから全ページを印刷する場合に比べて無駄を無くすことできる。
【0083】
また、USBメモリ20に記憶されたファイルから印刷対象のファイルを選択することができる。USBメモリ20のような可搬記憶媒体は、一般的には、常時コンピュータ等に接続されているものではないため、そこに記憶されたファイルの内容を確認しづらく、印刷ミスの可能性が比較的高いと考えられるため、本発明を適用する効果が高い。
【0084】
また、ドキュメントファイル等の複数ページからなるファイル(例えばPDF、TIFF、DOCファイル等)の印刷を行う際に本発明を適用することで、印刷ミスにより無駄な消費が生じることを効果的に防ぐことができる。
【0085】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、USBメモリに記憶されたファイルを印刷対象とするものを示したが、本発明によれば、可搬記憶媒体としてメモリカードやポータブルハードディスクドライブ等に記憶されたファイルを印刷対象としても良い。さらに、ネットワークインターフェイス等を介して外部の情報処理装置等に組み込まれたハードディスクドライブ等に記憶されたファイルを印刷対象としても良い。
(2)ダイレクト印刷時の印刷ジョブに含まれる印刷条件として複数部の印刷を設定できるようにしても良い。複数部印刷を行う場合には、例えば、最初の1部を試行ページとして印刷し、その後、印刷の続行が指示された場合に残りの部を印刷するようにしても良い。
【符号の説明】
【0086】
1…複合機(画像形成装置の一例)
4…操作部(選択手段、入力手段、指示手段、変更手段、設定手段の一例)
6…USB接続部(接続手段の一例)
10…CPU(印刷手段、抽出手段、画像処理手段の一例)
12…RAM(記憶手段の一例)
16…印刷部(印刷手段の一例)
20…USBメモリ(可搬記憶媒体の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象のファイルを選択可能な選択手段と、
前記選択手段により選択されたファイルを印刷対象とする印刷ジョブを入力可能な入力手段と、
前記印刷ジョブの続行を指示可能な指示手段と、
前記入力手段により入力された複数枚からなる印刷ジョブの一部を試行ページとして印刷し、その後、前記指示手段により前記印刷ジョブの続行が指示された場合に前記印刷ジョブを完了させる試行印刷を実行する印刷手段と、
前記試行印刷を実行するか否かを設定する設定手段と、
を備え、
前記印刷手段は、前記入力手段より印刷ジョブが入力された際に、前記設定手段により前記試行印刷を実行しない設定とされている場合には、前記試行ページを印刷せずに前記印刷ジョブを実行し、
前記設定手段は、前記印刷ジョブの印刷条件が初期値から変更されている場合は前記試行印刷を実行する設定とし、前記初期値から変更されてない場合は前記試行印刷を実行しない設定とすることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記設定手段は、常に前記試行印刷を実行する第1選択肢、常に前記試行印刷を実行しない第2選択肢、及び、前記印刷ジョブの印刷条件が初期値から変更されている場合は前記試行印刷を実行し、前記初期値から変更されてない場合は前記試行印刷を実行しない第3選択肢から選択された選択肢に従って、前記試行印刷を実行するか否かを設定する。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段は、前記試行ページとして一つの印刷ジョブに対し1枚のみを印刷する。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷ジョブに含まれる複数のページの中から所定の抽出条件を満たすページを抽出する抽出手段を備え、
前記印刷手段は、前記抽出手段により抽出されたページの少なくとも一部を前記試行ページとして印刷する。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段により前記試行ページとして印刷するページを指定する指定手段を備える。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段は、前記印刷ジョブの続行が指示された場合に、既に印刷されたページを除く全てのページを印刷する。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷ジョブに基づいて前記印刷対象のファイルから前記印刷手段に供給される印刷データを生成する画像処理を行う画像処理手段を備え、
前記画像処理手段は、前記印刷手段により印刷ジョブに含まれる試行ページが印刷された後、前記指示手段により指示がなされるまでの間に、その印刷ジョブに基づく画像処理を実行する。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
試行ページの変更を行う変更手段と、
前記印刷手段は、前記試行ページを印刷した後、前記変更手段により試行ページが変更された場合には、印刷ジョブに含まれる別のページを試行ページとして印刷する。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段は、一つの印刷ジョブについて前記試行印刷を実行する際に、他の印刷ジョブを実行しない専有モードで動作し、前記試行ページを印刷後、前記指示手段から所定期間指示がない場合に前記専有モードを解除する。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段は、前記印刷ジョブの印刷条件が、集約印刷若しくは両面印刷である場合には、前記試行印刷の際に、その印刷ジョブにおいて前記試行ページとされるページと同じ被記録媒体上に印刷されるページを前記試行ページとともに印刷する。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段が前記試行ページを印刷後、印刷ジョブの実行を中断した場合に、その印刷ジョブに含まれるページのうちいずれが印刷済みかを示す印刷中断情報を記憶する記憶手段を備える。
【請求項12】
請求項11の画像形成装置において、
前記印刷手段は、前記印刷中断情報を参照して、中断された印刷ジョブに含まれるページのうち印刷済みのページを除くページのみを印刷可能である。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
可搬記憶媒体と通信接続可能な接続手段を備え、
前記選択手段は、前記可搬記憶媒体に記憶されたファイルから印刷対象のファイルを選択可能である。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の画像形成装置において、
前記印刷手段は、複数ページから構成されるファイルを印刷対象とする印刷ジョブを実行可能である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−36584(P2010−36584A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230228(P2009−230228)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2007−194399(P2007−194399)の分割
【原出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】